特許第5849124号(P5849124)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5849124
(24)【登録日】2015年12月4日
(45)【発行日】2016年1月27日
(54)【発明の名称】基板処理チャンバ用処理キット
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/00 20060101AFI20160107BHJP
【FI】
   C23C14/00 B
【請求項の数】12
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-88675(P2014-88675)
(22)【出願日】2014年4月23日
(62)【分割の表示】特願2008-16967(P2008-16967)の分割
【原出願日】2008年1月28日
(65)【公開番号】特開2014-196563(P2014-196563A)
(43)【公開日】2014年10月16日
【審査請求日】2014年4月23日
(31)【優先権主張番号】11/668,461
(32)【優先日】2007年1月29日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390040660
【氏名又は名称】アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100101502
【弁理士】
【氏名又は名称】安齋 嘉章
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー エム パブロフ
(72)【発明者】
【氏名】イリョング リチャード ホング
【審査官】 伊藤 光貴
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第06051122(US,A)
【文献】 特表2002−514010(JP,A)
【文献】 米国特許第06081414(US,A)
【文献】 特開平08−100260(JP,A)
【文献】 特表2008−522031(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0110620(US,A1)
【文献】 特開平10−259477(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0005348(US,A1)
【文献】 特表2005−517809(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0150720(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/00−14/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板処理チャンバにおいて堆積リング周辺に設置するためのカバーリングであり、堆積リングがチャンバ内において基板支持体と円筒状シールドとの間に配置され、カバーリングが、
(a)基板支持体を取り囲む傾斜上面を備える環状ウェッジを備え、傾斜上面が内側及び外側周縁部と、傾斜上面の外側周縁部周辺にあり、円筒状シールド内に形成されたガスコンダクタンス穴部を遮断するように配置されたバルブ型突起部と、傾斜上面から下方向に延びて堆積リング上に据えられる足場部と、傾斜上面の内側周縁部周辺の突出ブリムを有し、更にカバーリングが、
(b)環状ウェッジから下方向に延びる内側及び外側円筒状バンドを備え、内側円筒状バンドの高さが外側円筒状バンドの高さよりも低く、円筒状シールドとカバーリングとの間の空間又は間隙部が、プラズマが通る回旋状のS型経路又は迷路を形成するカバーリング。
【請求項2】
環状ウェッジの傾斜上面が半径方向内側に向かって傾斜している請求項1記載のカバーリング。
【請求項3】
傾斜上面が少なくとも15度の角度で傾斜している請求項1記載のカバーリング。
【請求項4】
バルブ型突起部が円筒状シールドとの間で間隙部を形成する楕円形の周方向面を備える請求項1記載のカバーリング。
【請求項5】
基板処理チャンバ内における基板支持体に関連付けながらカバーリングの高さを調節するためにカバーリングが昇降可能である請求項1記載のカバーリング。
【請求項6】
カバーリングがチタンを含む請求項1記載のカバーリング。
【請求項7】
チタンの純度が少なくとも99.9パーセントである請求項6記載のカバーリング。
【請求項8】
内側及び外側円筒状バンドが実質的に垂直である請求項1記載のカバーリング。
【請求項9】
ツインワイヤ・アルミニウムアーク溶射コーティングを有する露出面を備える請求項1記載のカバーリング。
【請求項10】
基板処理チャンバにおいてスパッタリングターゲットと基板支持体周辺に設置するための処理キットであり、
(a)スパッタリングターゲットを取り囲むシールドであって、
(1)スパッタリングターゲットと基板支持体を取り囲む円筒状バンドと、
(2)円筒状バンドから半径方向外側に延びる支持出っ張り部と、
(3)支持出っ張り部の下にあり、円筒状バンドから半径方向内側に延びる傾斜段差部と、
(4)傾斜段差部に連結し、基板支持体を取り囲み、第1及び第2脚部を備え、第1脚部が処理ガスの通過が可能な複数のガス穴部を有し、ガス穴部によりガスコンダクタンスの上昇が得られるU型チャネルとを備えるシールドと、
(b)リングアセンブリであって、
(1)基板支持体周辺に在り、基板支持体周辺の傾斜上面を備える環状ウェッジを備えるカバーリングであって、傾斜上面が内側及び外側周縁部と、傾斜上面の外側周縁部周辺にあり、円筒状シールド内に形成されたガスコンダクタンス穴部を遮断するように配置されたバルブ型突起部と、傾斜上面から下方向に延びて堆積リング上に据えられる足場部と、傾斜上面の内側周縁部周辺の突出ブリムと、環状ウェッジから下方向に延びる内側及び外側円筒状バンドを有し、内側円筒状バンドの高さが外側円筒状バンドの高さよりも低く、円筒状シールドとカバーリングとの間の空間又は間隙部が、プラズマが通る回旋状のS型経路又は迷路を形成するカバーリングと、
(2)カバーリングを支持する堆積リングとを備えるリングアセンブリ、とを備える処理キット。
【請求項11】
シールド、カバーリング及び堆積リングのそれぞれがツインワイヤ・アルミニウムアーク溶射コーティングを施した露出面を備える請求項10記載の処理キット。
【請求項12】
(a)基板上にスパッタされる物質を堆積するためのスパッタリングターゲットと、
(b)スパッタリングターゲットに対向する基板支持体と、
(c)スパッタリングターゲットと基板支持体を取り囲むシールドと、
(d)基板支持体周辺に配置された請求項1〜9のいずれか1項記載のカバーリングと、
(e)カバーリングを支持し、基板支持体の受け面上に設置するためのディスクとディスクを取り囲む環状ウェッジを備える堆積リングであって、環状ウェッジが環状ウェッジから内側に延びる円筒状バンドと基板支持体に据えられる足場部を備える堆積リングと、
(f)チャンバへガスを導入するためのガス分散装置と、
(g)ガスを励起してスパッタリングターゲットから物質をスパッタするためのプラズマを形成するガス・エナジャイザと、
(h)チャンバからガスを排気するガス排気口とを備えるスパッタリングチャンバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、基板処理チャンバの処理キットに関連する。
【関連技術の説明】
【0002】
集積回路及びディスプレイの製造においては、半導体ウェハやディスプレイパネル等の
基板を基板処理チャンバ内に配置し、チャンバ内の処理条件を設定して基板上にエッチン
グ材料を堆積する。典型的な処理チャンバは処理区域を包囲する筐体壁部、チャンバ内に
処理ガスを供給するためのガス供給源、基板処理用の処理ガスを励起するためのガス・エ
ナジャイザ、使用済みガスを排気し、かつチャンバ内のガス圧を維持するためのガス排気
口、及び基板を保持するための基板支持体を含むチャンバ構成材を備えている。こういっ
たチャンバには、例えば、スパッタリング(PVD)、化学気相蒸着(CVD)、及びエ
ッチングチャンバを含めることができる。PVDチャンバにおいては、ターゲットを励起
させたガスによりスパッタすることでターゲット材料をスパッタし、これによりターゲッ
トに面している基板上にターゲット材料を堆積している。
【0003】
スパッタリング処理においては、ターゲットからスパッタされた材料がターゲットを取
り囲むチャンバ構成材の縁部にも堆積するため、望ましくない。周縁ターゲット領域は暗
部領域を有し、このエリアにおけるイオン散乱の結果としてスパッタされた材料が再堆積
される。スパッタされた材料のこの領域における蓄積と集積は、こういった蓄積堆積物に
より分解と洗浄又はターゲット及びその周囲の構成材の交換が必要となったり、プラズマ
ショーティング(plasma shorting)やターゲットとチャンバ壁部との間でのアーク放電
が生じる可能性があるので望ましくない。また、これらの堆積が熱応力により剥離し、剥
がれ落ちて内部に落下し、チャンバ及びその構成材を汚染することがよくある。
【0004】
基板支持体及びチャンバ側壁部周囲に配置されたシールド、カバーリング及び堆積リン
グを備えた処理キットが、過剰にスパッタされた材料を受け止め、チャンバ壁部及びその
他の構成材表面を保護し、その上への堆積を防止するためによく使用される。定期的に処
理キットの構成材を分解しチャンバから取外し、蓄積された堆積物を洗浄する。このため
、互いに又は基板と膠着することなく、或いは処理洗浄サイクル間における堆積物の剥落
を生じさすことなくより多くの蓄積堆積物を受け止め、許容するように設計された処理キ
ット構成材を得ることが望ましい。また、処理キットの部品又は構成材が処理チャンバの
内側表面上にスパッタされる堆積物の量が低減されるような形状及び相対位置関係を有す
るのみならず、数がより少ないことが望ましい。
【0005】
チャンバ内でスパッタリング用プラズマに曝露され、シールドとチャンバ構成材との間
の熱伝導不良によりチャンバのライナ及びシールドが過度に高温となった場合には、また
別の問題が生じる。例えば、低熱伝導性材料から成るシールドの温度の調節は困難である
。アダプタ等の支持構成材との接触面における熱抵抗もシールド温度に影響をあたえる。
シールドとアダプタとの間の締め付け力の弱さもまた、シールドの過熱を引き起こす可能
性がある。熱制御をしない限り、連続して基板を処理する間、シールドの温度は待機時の
室温状態と高温との間で循環することになる。高応力下にある金属の処理堆積物がシール
ド上に堆積され大きな温度変化に晒されると、膜のそれ自体への付着力のみならず、シー
ルドへの接着性も、例えば膜とその下のシールドとの間の熱膨張係数の不整合から劇的に
低下する場合がある。基板処理中におけるシールドとライナの温度を低下させることで、
シールド表面からの蓄積堆積物の剥離を軽減することが望ましい。
【0006】
チャンバからのガスコンダクタンス不良により、慣用の基板処理チャンバとPVD処理
では別の問題も生じる。必要な処理ガスの処理キャビティへの供給と使用済み処理ガスの
適切な排気の双方を実行するには高コンダクタンスのガス流経路が必要である。しかしな
がら、チャンバ壁部の内側を覆うシールド及びその他のチャンバ構成材は、実質的にガス
コンダクタンス流を低下させてしまう。これらの構成材にガスコンダクタンスを上昇させ
るために開口部を形成すると、これらのガスコンダクタンス穴部を通ってその同一視線方
向にあるスパッタ堆積物も処理空域から流出し、チャンバ壁部上に堆積されてしまう。ま
た、こういった穴部により処理キャビティ内から周囲のチャンバ領域へとプラズマ漏れが
起こる可能性がある。また、こういった穴部を有するチャンバ構成材は、これに限定され
るものではないが、追加部品の必要性、その相対的な薄さ、複数の部品による累積誤差、
及び接触面における熱伝導性の不良といったその他の欠点を有する。
【0007】
このため、構成材表面からの処理堆積物の剥離を軽減しつつ熱伝導性を上昇させる処理
キット構成材を得ることが望ましい。プラズマ処理中にシールドとライナが過度な高温と
低温との間とを循環しないようにその温度を制御することが更に望ましい。また、処理区
域外での穴部と同一視線方向での堆積を防止しつつ、総体的なガスコンダクタンスを上昇
させ、かつプラズマ漏れを軽減することが望ましい。
【0008】
本発明のこれらの構成、態様、利点は本発明の例を示す以下の説明、添付の特許請求の
範囲、添付図面と関連させてより理解することができる。当然のことながら、構成の各々
は特定の図面についてだけでなく本発明全般に使用でき、本発明はこれらの構成のあらゆ
る組み合わせを含む。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】処理キット構成材及びスパッタリングターゲットを示す基板処理チャンバの実施形態の概略側部断面図である。
図2A】基板処理チャンバ内におけるシールドとリングアセンブリを有する処理キットの斜視図である。
図2B】シールドの簡略上面図である。
図3A】〜
図3B】アダプタに接続されたシールド上部の断面図である。
図4】シールドとリングアセンブリを示す別の構成の基板処理チャンバの概略側部断面図である。
【実施形態の説明】
【0010】
基板104を処理可能な適切な処理チャンバ100の一例が図1に図示されている。チ
ャンバ100はカリフォルニア州サンタクララのアプライドマテリアル社から市販のクリ
ーンW(CLEAN W:商標名)を表わす。しかしながら、本発明と共に別の処理チャ
ンバもまた使用することができる。チャンバ100は処理区域108を包囲する筐体壁部
106を備える。壁部106は側壁部116、底壁部120、及び天井部124を含む。
チャンバ100が、基板104の多様なチャンバ間での搬送を行うロボットアーム等の基
板搬送機構によって相互接続されたチャンバ群を有する複数チャンバプラットフォーム(
図示せず)の一部である場合もある。図1に図示の構成において、処理チャンバ100は
物理気相蒸着つまりPVDチャンバとしても知られるスパッタ堆積チャンバであり、アル
ミニウム、銅、タンタル、窒化タンタル、チタン、窒化チタン、タングステン及び窒化タ
ングステン等の1つ以上の材料を基板104上にスパッタ堆積可能である。
【0011】
チャンバ100は、基板104を支持する台座部134を備える基板支持体130を備
える。台座部134は、頭上のスパッタリングターゲット140のスパッタリング面13
9に実質的に平行な面を有する基板受け面138を有する。台座部134の基板受け面1
38は処理中、基板104を受け止め、支持する。台座部134は静電チャック又は電気
抵抗加熱装置等の加熱装置や熱交換器を含んでいてもよい。動作中、基板104をチャン
バ100の側壁部116の基板装填口142を通してチャンバ100内に導入し、基板支
持体130上に設置する。ロボットアームによる基板支持体130への基板104の載置
中、支持体130は支持体昇降蛇腹部により昇降可能であり、昇降フィンガセンブリを用
いて基板104を支持体130へと昇降することが可能である。プラズマ操作中、台座部
134を電気的に浮遊した電位又は接地状態に維持することが可能である。
【0012】
図2A及び2Bに図示されるように、チャンバ100は、例えば構成材表面からスパッ
タ堆積物を洗い流す、侵食された構成材を交換する又は修復する、又は別の処理にむけて
チャンバ100を適合させるために容易にチャンバ100から取外し可能な多様な構成材
を備えた処理キット200も含む。ある構成において、処理キット200はシールド20
1と基板支持体130の周壁部204近くに設置するリングアセンブリ202を備え、リ
ングアセンブリは基板104の張り出し縁部206の手前で終端している。リングアセン
ブリ202は堆積リング208とカバーリング212とを備える。堆積リング208は支
持体130を取り巻く環状バンド215を備える。カバーリング212は堆積リング20
8を少なくとも部分的に覆っている。堆積リング208及びカバーリング212が連携し
て、支持体130の周壁部204及び基板104の張り出し縁部206上でのスパッタ堆
積物の形成を軽減する。
【0013】
シールド201は、基板支持体130に面しているスパッタリングターゲット140の
スパッタリング面139と基板支持体130の外周とを取り囲む。シールド201はチャ
ンバ100の側壁部116を覆い遮断することで、スパッタリングターゲット140のス
パッタリング面139から発生するスパッタ堆積物の、シールド201背後にある構成材
及び表面への堆積を軽減している。例えば、シールド201は支持体130の表面、基板
104の張り出し縁部206、チャンバ100の側壁部116及び底壁部120を保護可
能である。
【0014】
図2A、2B及び3A、3Bに図示されるように、シールド201は一体構成であり、
スパッタリングターゲット140のスパッタリング面139と基板支持体130とを取り
巻くサイズの直径を有する円筒状バンド214を備える。円筒状バンド214はスパッタ
リングターゲット140のスパッタリング面139を取り巻く上壁部216を有する。支
持出っ張り部219は円筒状バンド214の上壁部216から半径方向外側に向かって延
びている。アダプタ226はOリング溝部222を含んでいてもよく、この溝にOリング
223を設置して、アダプタと絶縁体310との間に真空シールを形成し、シールド20
1からの漏れを防止する。支持出っ張り部219はチャンバ100の側壁部116を取り
巻く環状アダプタ226上に載る設置面224を備える。支持出っ張り部219の設置面
224はピン282を収容できる形状とサイズに構成された複数のスロット228を備え
、これによりシールド201がアダプタ226と整列される。ピン282はアダプタ22
6に圧入してもよい。複数の穴部229を設置し、シールド210をアダプタに連結する
固締具230を収容する。一実施形態において、固締具230はシールド201の穴部2
29とアダプタプレート226の穴部220とを貫通し、保持プレート297の穴部29
5へと螺入される。保持プレート297はステンレススチール製のリングであってもその
他の適切な材料から成るものであってもよい。図2Bではスロット228と穴部229を
それぞれ1つだけ図示しているが、シールド201の周縁には複数のスロット228と穴
部229とを分散して配置する。
【0015】
アダプタ226はシールド210を支持し、基板処理チャンバ100の壁部116周辺
における熱交換器として機能可能である。任意で、アダプタ226は、必要ならシールド
201を加熱又は冷却できるように抵抗加熱装置又は温度制御流体用の導管を含んでいて
もよい。アダプタ226及びシールド201はアセンブリを形成し、これによりシールド
201内外への熱伝達が良好となり、シールド上に堆積される材料への熱膨張応力が軽減
される。シールド201の一部は基板処理チャンバ内で生成されるプラズマへの曝露によ
り過剰に熱せられ、シールドの熱膨張が生じ、シールド上に形成されたスパッタ堆積物が
シールドから剥落し、基板104上に落下し汚染してしまう。アダプタ226はシールド
201の設置面224に接触する接触面232を有しており、これによりシールド201
とアダプタ226との間の良好な熱伝導が得られる。ある構成においては、シールド20
1の設置面224及びアダプタ226の接触面232はそれぞれ約10〜約80マイクロ
インチ、又は約16〜約63マイクロインチにものぼる表面粗さを有しており、ある構成
においては、平均表面粗さは約32マイクロインチである。ある構成において、アダプタ
226はその内部に熱伝達流体を通してアダプタ226の温度を制御するための導管を更
に備える。
【0016】
アダプタ226とシールド201を備えるアセンブリはシールド201をアダプタ22
6と整列させて固定するためのシールド固締システム234も含む。シールド固締システ
ム232は円形に沿って又はアダプタ226に沿った円形配列で離間・位置決定された複
数のピン293を備える。ある構成においては、少なくとも3つのピン293をアダプタ
226上で円形で位置させる。別の実施形態においては、12本のピン293を利用する
。各ピン293は例えばスチール、例えばステンレススチール等の材料から構成された剛
性の円筒から構成される。各ピン293はアダプタ226内に圧入される圧入コネクタ2
38を部材236の一端に有していてもよい。ピン293は図3Aに図示されるようにス
ロット229を貫通する。シールド固締システム232は更に複数の固締具230を備え
る。一実施形態において、固締具230は六角穴付きボルト236である。ボルト236
の頭部240は穴部229のザグリ穴に埋め込まれている。ボルト236の端部は保持プ
レート297のネジ穴295に螺入される。一実施形態においては、少なくとも3つのボ
ルト236を円形に配置してアダプタ226をシールド201に固締する。別の実施形態
においては、12本のボルト297を利用する。
【0017】
支持出っ張り部219の下には基板支持体130を取り巻く底壁部242がある。傾斜
段差部244が円筒状バンド214の底壁部242から半径方向内側に向かって延び、基
板支持体130を取り囲んでいる。ある構成において、傾斜段差部244は湾曲接合部2
45を備える。
【0018】
U型チャネル246はシールドの傾斜段差部244と連結している。U型チャネル24
6はそこを処理ガスが通過することでガスコンダクタンスが改善されるガスコンダクタン
ス穴部249を複数備えた外側第1脚部299を有する。U型チャネル246は外側第1
脚部299から離間された、より高さのある内側第2脚部253も有する。ある構成にお
いて、外側脚部299のガス穴部249は実質的に楕円形であり、カラムによって隔てら
れている(図示せず)。ある構成において、各ガス穴部249は幅約1〜約2インチ、高
さ約0.2〜約0.8インチを有する。
【0019】
シールド201により、処理チャンバ100からのガスが低い抵抗でガス穴部249を
通過しU型チャネル246を循環可能となる。更に、シールド201の設計により、高さ
という点で、基板支持体130の位置に対してのガスコンダクタンスの影響度が最小限に
抑えられる。
【0020】
シールド201の円筒状バンド214、支持出っ張り部219、傾斜段差部244及び
U型チャネル246はある材料の一体成形から成る単一構造を構成している。例えば、シ
ールド201全体を300系のステンレススチール、又はある構成においてはアルミニウ
ムから形成することが可能である。一体型のシールド201は、完全なシールドを構成す
るのに2つ又は3つの別々の部品を要することが多い、複数の構成材を含む従来のシール
ドより有利である。例えば、単体構造のシールドは複数の構成材から成るシールドよりも
、加熱及び冷却処理の双方において熱的により均一である。例えば、一体成形のシールド
201はアダプタ226に対して1つだけ熱インターフェースを有し、これによりシール
ド201とアダプタ226との間の熱交換がより制御し易くなる。複数の構成材を有する
シールドでは、洗浄時にシールドを取外すことがより困難かつ面倒となる。一体成形シー
ルド201はスパッタ堆積物に晒される連続面を有しており、洗浄がより困難な複数の界
面部又はコーナー部を伴うことがない。また、一体成形シールド201は、処理サイクル
中、スパッタ堆積からチャンバ壁部106をより効果的に遮断する。
【0021】
ある構成において、シールド201の露出面はカリフォルニア州サンタクララのアプラ
イドマテリアル社から市販のクリーンコート(CLEANCOAT:商標名)で処理する
。クリーンコート(商標名)はシールド201等の基板処理チャンバ構成材へ適用するこ
とでシールド201上への堆積物の粒子落下を軽減し、これによりチャンバ100内の基
板104の汚染を防止するツインワイヤ・アルミニウムアーク溶射コーティングである。
ある構成において、シールド201上のツインワイヤ・アルミニウムアーク溶射コーティ
ングの表面粗さは約600〜約2300マイクロインチである。
【0022】
シールド201はチャンバ100内のプラズマ区域108に面した露出面を有する。露
出面にはビードブラスト加工を施し、表面粗さを175±75マイクロインチとする。テ
クスチャ加工したビードブラスト面により粒子の落下が軽減され、チャンバ100内での
汚染が防止される。表面粗さ平均とは、露出面に沿った粗さ特徴の山部と谷部の平均線か
らのズレの絶対値の平均である。粗さ平均、歪度、又はその他の特性は、露出面に針を通
して表面上の凸凹の高さの変動のトレース図を生成する表面形状測定装置によって、或い
は表面で反射した電子ビームを用いて表面の画像を生成する走査型電子顕微鏡を用いて求
めることができる。
【0023】
堆積リング208は、図2Aに図示されるように支持体130の周壁部204付近に延
び、それを取り囲む環状バンド215を備える。環状バンド215は、バンド215から
横方向に延び、かつ支持体130の周壁部204に実質的に平行な内側リップ部250を
備える。内側リップ部250は基板104の張り出し縁部206のすぐ下で終端している
。内側リップ部250は基板104の周縁部と基板支持体130を取り巻く堆積リング2
08の内周を規定し、処理中、基板104によって覆われない基板支持体130の領域を
保護する。例えば、内側リップ部250は、そのままでは処理環境に曝露されてしまう支
持体130の周壁部204を取り囲み、かつ部分的に覆うことで、周壁部204上へのス
パッタ堆積物の堆積を軽減或いは完全に防止する。堆積リング208を簡単に取外してリ
ング208の露出面からスパッタ堆積物を除去可能であることから、支持体130を洗浄
のために分解する必要がなく、有利である。堆積リング208は、支持体130の露出側
面も保護するため、励起されたプラズマ種によるその侵食が軽減される。
【0024】
図2Aに図示の構成において、堆積リング208の環状バンド215はバンド215の
中心部に沿って延びる半円形の突出部252を有し、その両側に半径方向内側の窪み25
4a、bを有している。半径方向内側の窪み254aはカバーリング212とは離れた位
置にあるため、窪みとカバーリングとの間にはアーチ型の間隙部256が形成され、この
間隙部がアーチ型間隙部256へのプラズマ種の浸透を軽減する迷路として機能する。内
側リップ部250と半円形突出部252との間には開放内側チャネル258が横たわって
いる。開放内側チャネル258は半径方向内側に延び、少なくとも部分的に基板104の
張り出し縁部206下で終端している。開放内側チャネル258により、堆積リング20
8の洗浄中、これらの部位からのスパッタ堆積物の除去が促進される。堆積リング208
は、外側方向に延び、かつ半円形突出部252の半径方向外側に位置する出っ張り部26
0も有する。出っ張り部260はカバーリング212の支持にも役立つ。
【0025】
堆積リング208は酸化アルミニウム等のセラミック材料を成形及び機械加工すること
で形成可能である。好ましくは、鉄等の望ましくない元素によるチャンバ100の汚染を
低減するために、酸化アルミニウムの純度は少なくとも約99.5%である。セラミック
材料を静水圧プレス成形等の慣用の技法を用いて成形及び焼成し、それに続いて適切な機
械加工方法を用いて成形・焼成された予備成形物を機械加工することで必要とされる形状
と寸法にする。
【0026】
堆積リング208の環状バンド215は、グリットブラスト加工された露出面を含んで
いてもよい。グリットブラスト加工は、既定の表面粗さを得るのに適したグリットサイズ
で行われる。ある構成においては、堆積リング208の表面を例えばクリーンコート(商
標名)等のツインワイヤ・アルミニウムアーク溶射コーティング等で処理して、粒子の落
下と汚染を軽減する。
【0027】
カバーリング212は堆積リング208を取り囲み、少なくとも部分的に覆うことでス
パッタ堆積物の塊を受け止め、それにより堆積リング208を堆積物から遮断する。カバ
ーリング212はスパッタリングプラズマによる侵食に耐性のある材料、例えばステンレ
ススチール、チタン又はアルミニウム等の金属材料、又は酸化アルミニウム等のセラミッ
ク材料から作成する。ある構成において、カバーリング212は少なくとも約99.9%
の純度を有するチタンから構成される。ある構成においては、カバーリング212の表面
を例えばクリーンコート(商標名)等のツインワイヤ・アルミニウムアーク溶射コーティ
ングで処理して、カバーリング212表面からの粒子落下を軽減する。
【0028】
カバーリング212は、半径方向内側に傾斜し、かつ基板支持体130を取り囲む傾斜
上面264を備えた環状ウェッジ262を備える。環状ウェッジ262の傾斜上面264
は内側及び外側周縁部266、268を有する。内側周縁部266は堆積リング208の
開放内側チャネル258を構成する半径方向内側の窪み254a上に横たわる突出ブリム
270を備えている。突出ブリム270により、堆積リング208の開放内側チャネル2
58上へのスパッタ堆積物の堆積が軽減される。突出ブリム270の突出距離は、堆積リ
ング208によって形成されるアーチ型間隙部256の幅の少なくとも約半分に対応する
のが有利である。突出ブリム270はアーチ型間隙部256と協働かつ相補することでカ
バーリング212と堆積リング208との間に回旋状の狭窄した流路を形成するようなサ
イズ、形状、及び位置に構成されており、この流路が周縁部204への処理堆積物の流れ
を阻害する。狭小な間隙部256の狭窄した流路により、そのままでは互いに膠着する又
は基板104の周縁張り出し縁部206と膠着してしまう、堆積リング208とカバーリ
ング212の合わせ面への低エネルギースパッタ堆積物の蓄積が制限される。基板張り出
し縁部206の下に延びる堆積リング208の開放内側チャネル258はカバーリング2
12の突出ブリム270からの遮断と共に、例えば、アルミニウムスパッタリングチャン
バにおいて最低1540μmのアルミニウムスパッタ堆積物を回収し、その一方で2つの
リング208、212の合わせ面上へのスパッタ堆積を軽減する又は実質的に排除するよ
うに設計されている。
【0029】
傾斜上面264の外側周縁部268周辺には、バルブ型の突起部272がある。ある構
成において、バルブ型突起部272はシールド201と共にアーチ型間隙部を形成する楕
円形の周方向面274を含む。傾斜上面264はバルブ型の突出部272と突出ブリム2
70と協働して、同一視線方向の堆積物が処理キャビティ108から流出してチャンバ本
体キャビティへと侵入するのを阻止する。傾斜上面264は少なくとも約15度の角度で
傾斜していてもよい。カバーリング212の傾斜上面264の角度は、例えば、基板10
4の張り出し縁部206に最も近い位置での、そのままでは基板104全体で得られる堆
積の均一性に悪影響を与えてしまうスパッタ堆積物の蓄積を最小限に留めるようにと設計
されている。
【0030】
カバーリング212は、環状ウェッジ262の傾斜上面264から下方向に延びる足場
部276を備え、堆積リング208の出っ張り部260上に据えられる。足場部276は
ウェッジ262から下方向に延び、リング208に実質的に亀裂を与える又は破砕するこ
となく堆積リング208に押圧されている。
【0031】
カバーリング212は更に内側及び外側円筒状バンド278a、bを備え、278a、
bは環状ウェッジ262から下方向に、その間に間隙を有して延びている。ある構成にお
いて、内側及び外側円筒状バンド278a、bは実質的には垂直である。円筒状バンド2
78a、bはウェッジ262の足場部276の半径方向外側に位置している。内側円筒状
バンド278aの高さは外側円筒状バンド278bよりも低い。典型的には、外側バンド
278bの高さは内側バンド278aの高さの少なくとも約1.2倍である。例えば、内
径が約154mmのカバーリング212の場合、外側バンド278bの高さは約15〜約
35mm、又は例えば25mmであり、内側バンド278aの高さは約12〜約24mm
、例えば約19mmである。
【0032】
カバーリング212は異なる高さ範囲で調節可能かつコンダクタンス穴部249を効果
的に遮断する。例えば、カバーリング212を上昇又は降下させることで、チャンバ内に
おける基板支持体130に対してのその高さ関係を調節することが可能である。
【0033】
シールド201とカバーリング212との間の空間又は間隙部が、プラズマが通る回旋
状のS型経路又は迷路を形成する。この経路の形状は、例えば、プラズマ種のこの領域へ
の侵入を妨げるかつ阻害し、スパッタ材料の不本意な堆積を軽減されることから有利であ
る。
【0034】
図4及び5に図示されるように、スパッタリングターゲット140はバッキングプレー
ト284に取り付けられるスパッタリングプレート280から構成される。スパッタリン
グプレート280は基板104にスパッタする材料を含む。スパッタリングプレート28
0は、基板104の面に平行な面を形成するスパッタリング面139を有する中央円筒状
段丘部286を有していてもよい。環状の傾斜リム288が円筒状段丘部286を取り囲
んでいる。環状リム288は円筒状段丘部286の面に対して少なくとも約8度、例えば
約10度〜約20度の角度で傾斜している。段差部292を有する周縁部の傾斜側壁部2
90は環状リム288を取り囲んでいる。周縁側壁部290は円筒状段丘部286の面に
対して少なくとも約60度、例えば約75度〜約85度の角度で傾斜していてもよい。段
差部292は突出部294と凹部296との間でもよく、段差部292は約30度〜約4
0度の刈り込み角度で表面に接合している。
【0035】
環状傾斜リム288と、チャンバ100内においてシールド201の上壁部216に隣
接している側壁部290の複雑な形状が、暗部領域つまり自由電子が非常に不足しており
真空としてモデル化可能なエリアを構成する回旋状間隙部300を形成している。暗部領
域を制御することで、プラズマの進入、アーク放電の発生及び不安定な状態の発生を防止
することが重要である。間隙部300の形状はスパッタされたプラズマ種のその内部の通
過を阻害する迷路として機能し、これにより周縁ターゲット領域の表面へのスパッタ堆積
物の蓄積が軽減される。ある構成においては、暗部領域の周縁境界部を、例えばクリーン
コート(商標名)等のツインワイヤ・アルミニウムアーク溶射コーティングで処理して、
この領域での粒子の落下を軽減してもよい。
【0036】
スパッタリングプレート280は金属又は金属化合物を含む。例えば、スパッタリング
プレート280は例えばアルミニウム、銅、タングステン、チタン、コバルト、ニッケル
又はタンタル等の金属が可能である。スパッタリングプレート280は、例えば窒化タン
タル、窒化タングステン又は窒化チタン等の金属化合物であることも可能である。
【0037】
バッキングプレート284は、スパッタリングプレート280を支持する支持面303
とスパッタリングプレート280の半径を超えて延びる周縁出っ張り部304を有する。
バッキングプレート284は例えばステンレススチール、アルミニウム、銅・クロム又は
銅・亜鉛等の金属から形成される。バッキングプレート284はターゲット140で発生
した熱を放散させるに十分な高さの熱伝導率を有する材料から形成可能であり、高い熱伝
導率はスパッタリングプレート280とバッキングプレート284の双方で形成される。
熱はこれらのプレート280、284で生じた渦電流及びプラズマからのエネルギーイオ
ンのターゲット140のスパッタリング表面139への衝突によって発生する。高い熱伝
導率を有するバッキングプレート284により、ターゲット140内で発生した熱の周辺
構造、更にはバッキングプレート284の背後又はそれ自体の内部に取り付けられる熱交
換器への放散が可能となる。例えば、バッキングプレート284は熱伝達流体をその内部
で循環させるチャネル(図示せず)を備えることが可能である。バッキングプレート28
4にとって適切な高さの熱伝導率は少なくとも約200W/mK、例えば約220〜約4
00W/mKであることが判明している。こういった熱伝導性レベルにより、ターゲット
140内で発生した熱をより効率的に放散し、ターゲット140をより長い処理時間に亘
って稼動させることが可能となる。
【0038】
高熱伝導性と低抵抗率を有する材料から成るバッキングプレート284であることと組
合せて、或いは独立して及びそれ自体で、バッキングプレート284は1つ以上の溝部(
図示せず)を有する背面を備えていてもよい。例えば、バッキングプレート284は環状
溝部等の溝部又は隆起部をターゲット140の背面141の冷却用に有する。溝部及び隆
起部は別のパターンを有することも可能であり、例えば矩形格子パターン、鳥足型パター
ン、又は背面全体を走る単純な直線パターンが挙げられる。
【0039】
スパッタリングプレート280は2つのプレート280、284を互いに重ね合わせて
これらを適切な温度、典型的には少なくとも約200℃にまで加熱する拡散接合によりバ
ッキングプレート284へと取り付け可能である。任意で、スパッタリングターゲット1
40は、スパッタリングプレートとバッキングプレートの双方として機能するに十分な深
さを有する一体成形材料から成る一体型構造であってもよい。
【0040】
バッキングプレート284の周縁出っ張り部304はチャンバ100内において絶縁体
310上に載る外側足場部308を備える(図2A〜B及び3)。周縁出っ張り部304
はOリング溝部312を含み、この中にOリング314を設置して真空シールを形成する
。絶縁体310はバッキングプレート284をチャンバ100から電気的に隔離及び分離
し、典型的には酸化アルミニウム等の誘電又は絶縁材料から形成されたリングである。周
縁出っ張り部304は、スパッタされた材料及びプラズマ種のターゲット140と絶縁体
310との間の間隙を通っての流れ又は移動を妨害し、低角度でスパッタされた堆積物の
間隙部への侵入を妨げるような形状に構成されている。
【0041】
ターゲット140の周縁出っ張り部304は例えばツインワイヤ・アーク溶射アルミニ
ウムコーティング等の保護コーティングでコーティングする。コーティング前、周縁出っ
張り部304から油分を除去し、炭化ケイ素盤で研磨することで粗さ200〜300マイ
クロインチを達成する。コーティング範囲は、スパッタリングプレート280の周縁側壁
部290とバッキングプレート284の周縁出っ張り部304に亘って広がる。コーティ
ングの最終表面粗さは約500〜約900マイクロインチ、厚さは約5〜約10ミリであ
る。コーティングにより、ターゲット140の縁部が保護され、スパッタされた材料の接
着性が向上し、これらの表面からの材料の剥離が軽減される。
【0042】
スパッタリングターゲット140はターゲット電源320へと接続されており、電源は
スパッタリング処理中に、電気的に浮遊しているシールド201に相対してバイアス電圧
をターゲット140に印加する。ターゲット電源320が電力をターゲット140、シー
ルド201、支持体130及びターゲット電源320に接続されたその他のチャンバ構成
材に供給する一方で、ガス・エナジャイザ324がスパッタリングガスを励起して、スパ
ッタリングガスのプラズマを形成する。ガス・エナジャイザ324はコイル326への電
流の印加により給電されるソースコイル326を備えていてもよい。形成されたプラズマ
はターゲット140のスパッタ面139に勢い良く衝突し、衝撃を与え、表面139から
基板104へと材料をスパッタする。
【0043】
チャンバ100はターゲット140周辺で磁場を成形することでターゲット140のス
パッタリングを改善する磁場発生装置330を備えていてもよい。容量結合によって発生
したプラズマを、例えば永久磁石又は電磁コイルによってチャンバ100内で磁場を形成
し、基板104の面に対して平行に回転する軸を有する回転磁場が得られる磁場発生装置
330によって強化してもよい。それに加え或いはその代替として、チャンバ100はチ
ャンバ100のターゲット140付近で磁場を発生させ、ターゲット140に隣接した高
密度プラズマ領域におけるイオン密度を上昇させることでターゲット140材料のスパッ
タを改善する磁場発生装置330を含んでいてもよい。改善された磁場発生装置330を
用いることで、ターゲットへの衝突目的の非反応性ガスの必要性を最小限に留めながら、
銅の持続的な自己スパッタリング又はアルミニウム、チタン、又はその他金属のスパッタ
リングが可能となり、これは例えばフー(Fu)に発行された米国特許第6183614
号の「回転スパッタマグネトロンアセンブリ」及びゴパルラージャ(Gopalraja
)その他に発行された米国特許第6274008号の「銅ビア充填のための統合プロセス
」に記載されている。磁場は実質的に非磁性のターゲット140からチャンバ100に亘
って広がっている。
【0044】
スパッタリングガスはガス送達システム332を通してチャンバ100へと導入され、
ガス送達システムは質量流制御装置等のガス流量制御弁338を有する導管336を介し
て、ガス供給源334からガスを既定の流量で流す。ガスは混合ガスマニホルド(図示せ
ず)へと送られ、そこでガスは混合されて所望の処理ガス組成物となり、チャンバ100
へとガスを導入するためのガス流出口を有するガス分配装置340へと供給される。処理
ガスは、勢い良くターゲット140に衝突してそこから材料をスパッタすることが可能な
アルゴン、キセノン等の非反応性ガスを含んでいてもよい。処理ガスはスパッタされた材
料と反応することで基板104上に層を形成可能な、1つ以上の酸素含有ガス及び窒素含
有ガス等の反応性ガスも含んでいてもよい。次に、ガスはガス・エナジャイザ324によ
り励起されてプラズマを形成し、スパッタリングターゲット140をスパッタする。使用
済みの処理ガス及び副生成物は排気口342を通してチャンバ100から排気される。排
気口342は使用済み処理ガスを受け取り、排気導管346へと送る排気ポート344を
備え、導管はチャンバ100内のガス圧を制御するための絞り弁を有する。排気導管34
6は1つ以上の排気ポンプ348に接続されている。典型的には、スパッタリングガスの
チャンバ100内における圧力は真空環境等、例えばガス圧1ミリTorr〜400ミリ
Torr等の減圧状態に設定する。
【0045】
チャンバ100は制御装置350で制御してもよく、制御装置はチャンバ100の構成
材による基板104の処理を作動させるための命令セットを有するプログラムコードを備
える。例えば、制御装置350は基板支持体130と基板搬送機構とを作動させるための
基板位置決定命令セットと、ガス流制御弁を作動させてチャンバ100へのスパッタリン
グガスの流れを設定するためのガス流量制御命令セットと、排気絞り弁を作動させてチャ
ンバ100内の圧力を維持するためのガス圧制御命令セットと、ガス・エナジャイザ32
4を作動させてガス励起電力レベルを設定するためのガス・エナジャイザ制御命令セット
と、支持体130又は壁部106内の温度制御システムを制御してチャンバ100内の多
様な構成材の温度を設定するための温度制御命令セットと、チャンバ100内での処理を
監視するための処理監視命令セットを含むプログラムコードを備えることが可能である。
【0046】
別の構成のスパッタリングチャンバ400を図4を参照して説明する。このチャンバ4
00は、例えば、カリフォルニア州サンタクララのアプライドマテリアル社から入手可能
なヴァーサTTN(VERSA TTN:商標名)であってもよいが、これに限定される
ものではない。チャンバ400は基板104上にスパッタ材料を堆積するためのスパッタ
リングターゲット140を有する。スパッタリングターゲット140は、スパッタリング
ターゲット140に向かい合う基板支持体404の反対に位置される。基板支持体404
は、受け面408を有する台座部406を備える。台座部406は例えばステンレススチ
ール等の材料から構成してもよい。台座部406には抵抗加熱装置409が埋設されてお
り、台座部406上の基板104を加熱する役割を果たしている。スパッタリングターゲ
ット140及び基板支持体404はシールド201によって取り囲まれている。カバーリ
ング212は基板支持体404周辺に設置され、堆積リング208によって支持されてい
る。堆積リング208は台座部406の受け面408上への設置用にディスク410を備
える。ディスク410の直径は、台座部406の受け面408の直径よりも小さい。堆積
リング208は更にディスク410を取り巻く環状ウェッジ412を備える。円筒状バン
ド414が水平方向に、環状ウェッジ412から内側方向に延びている。環状ウェッジ4
12は基板支持体404の台座部406上に据えられる足場部416を有する。チャンバ
400はガス分配装置418、ガス・エナジャイザ420、及びガス排気口422も有す
る。
【0047】
上述の処理キット200により、チャンバ100における処理サイクルの数と所持時間
が著しく向上し、洗浄間隔が伸びる。これは、洗浄が困難な、基板104周辺の構成材上
に形成されたスパッタ堆積物の量を低減することで得られる。処理キット200の構成材
は、スパッタリング区域108内における力と圧力の向上させ、回旋状間隙部300の暗
部領域の温度を低下させることでより高い堆積スループットを得られるようにと設計され
ている。これにより、アダプタ226を用いてシールド201の熱均一性もまた改善され
る。これに加え、既存の処理キットと比べ、処理キット200は、キット200の交換及
び保守サイクルを実行しなくてはならなくなるまでに少なくとも従来よりも約2〜約5倍
多い堆積物をその上に堆積可能となるように設計されている。これはチャンバ100の稼
働時間における著しい向上であり、処理スループットの上昇にもつながる。
【0048】
本発明をその特定の好ましい構成を参照して説明してきたが、その他の構成も可能であ
る。例えば、処理キット200又はその構成材及びアダプタ226を、当業者には明らか
であるような、例えばエッチング、CVD及びエッチングチャンバといった別のタイプの
用途に用いることが可能である。従って、添付の特許請求の範囲の精神及び範囲は本願に
記載の好ましい構成の説明に制限されるべきではない。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4