(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記遮光体を移動させるための操作手段と、前記光束に対する前記遮光体の位置を示す表示手段とを備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の顕微鏡用透過照明装置。
前記照明光の少なくとも一部を拡散させるための移動可能な光学部材をさらに備え、前記光学部材は、前記遮光体よりも前記標本側に配置されていることを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載の顕微鏡用透過照明装置。
前記光学部材の前記光束への挿脱の際、前記光束を横切る前記光学部材の縁部は、直線状であることを特徴とする請求項4または5の何れか一項に記載の顕微鏡用透過照明装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の説明においては、観察者が接眼レンズを覗いて通常に観察する状態において、観察者側を顕微鏡の手前側(前側)とし、その反対側を顕微鏡の奥側(後側)とする。また、左右方向および上下方向は、観察者から見た方向についていう。また、標本載置台と対物レンズの光軸との交点を中心(原点)として、前後方向をY方向あるいはY軸とし、左右方向をX方向あるいはX軸とし、上下方向(光軸方向)をZ方向あるいはZ軸とする。Y方向については対物レンズの光軸よりも奥側を+(プラス)側、対物レンズの光軸よりも手前側を−(マイナス)側とする。
【0011】
図1は、本実施形態に係る透過照明装置を備えた顕微鏡の外観図である。
本実施形態に係る透過照明装置を備えた顕微鏡4は、平行系単対物型双眼実体顕微鏡である。顕微鏡4は、ベース部7と、対物レンズ10と、変倍レンズ鏡筒13と、接眼レンズ16と、焦点合わせ装置19とを備えている。ベース部7には透過照明装置が内蔵されている。また、ベース部7の上面には透明部材を埋め込んだ標本載置台25が設けられている。光源から射出された照明光は透明部材を透過して標本を照射する。対物レンズ10は、変倍レンズ鏡筒13の下部に設けられた対物レンズ取り付け部(図示省略)に取り付けられている。なお、対物レンズ取り付け部は、予め定められた複数の低倍率の対物レンズおよび複数の高倍率の対物レンズから一つを選択して取り付けることができるようになっている場合と、予め定められた複数の低倍率の対物レンズおよび複数の高倍率の対物レンズから複数を選択して取り付けることができるようになっている場合とがある。
【0012】
変倍レンズ鏡筒13の内部は左眼用の観察光学系と右眼用の観察光学系とに分岐しており、各観察光学系に変倍レンズ群(図示省略)および結像レンズ群(図示省略)が配置されている。変倍レンズ鏡筒13の外側には変倍ノブ28が配置されている。各変倍レンズ群には変倍のための可動レンズ群(図示省略)が複数含まれており、変倍ノブ28の回転に対応して予め定められた移動量に則って光軸方向に移動する。また、変倍レンズ群には可変絞り(図示省略)が含まれており、変倍レンズ鏡筒13には可変絞りの調節機構が設けられている。焦点合わせ装置19は、焦点合わせノブ31と、焦点合わせノブ31の回転に伴い変倍レンズ鏡筒13を光軸方向に上下動させる機構とを備えている。
【0013】
図2の各図は、本実施形態に係る透過照明装置での偏斜照明法を示す図である。ここで
図2を参照して、本実施形態に係る透過照明装置を備えた顕微鏡4の光学系について、その要部を説明する。
【0014】
図2の各図に示すように、顕微鏡4は標本面37を照明するための照明光学系40と標本面37を観察するための観察光学系43とを備えている。なお、顕微鏡4は左右2つの観察光学系43、43を備えているが、
図2には左側の観察光学系のみを示している。照明光学系40は、図示しない光源と、光源側から順に、光源から射出された照明光の光束46を制限する視野絞り(図示省略)と、視野絞りを通過した光束46の一部を遮光可能な遮光体49と、光束46を標本面37に集光するコンデンサレンズ52とを備えている。観察光学系43は、標本側から順に、対物レンズ10と変倍レンズ系(図示省略)と接眼レンズ16(
図1参照)とを備えている。対物レンズ10は左右の観察光路で共通である。コンデンサレンズ52の前側焦点位置は、対物レンズ10の瞳55の位置と共役関係になっている。対物レンズ10は、標本面37を透過した光束46を平行光束に変換し、左眼用および右眼用の各変倍レンズ系に導く役割を担っている。左右の変倍レンズ系からそれぞれ射出された標本の像は、それぞれ左右の接眼レンズ16、16によって観察される。
【0015】
遮光体49は矩形に形成された薄板であり、対物レンズ10の光軸と直角に交差する方向に沿って配置されている。また、遮光体49の4つの辺を周方向に沿って順にS1、S2、S3、S4とすると、辺S1およびS3がX軸と、辺S2およびS4がY軸とそれぞれ平行となるように配置されている。遮光体49の各辺の寸法は、視野絞りを通過した照明光の光束46の径よりも大きく形成されている。したがって、遮光体49は光束46の断面形状よりも大きい。遮光体49は、種々のフレアを防止するために黒の艶消し処理を施すことが望ましい。遮光体49は左右2つの観察光学系43、43の光軸を含む平面に対して直角に交差する方向へ、具体的にはY方向へ移動可能に設けられている。Y方向へ移動することにより光束46に挿入され、また、光束46から脱離される。遮光体49が光束46に挿入されることにより光源から射出された照明光の一部が遮られる。遮光体49が照明光の一部を遮る位置は、対物レンズ10の瞳55と共役な位置すなわち瞳共役面58、または共役な位置から光軸方向に近傍の位置(具体的には光軸方向に±数mm程度、以下同様。)すなわち瞳共役面58から光軸方向に近傍の平行面である。言い換えると、遮光体49は、対物レンズ10の瞳共役面58に沿って、または該瞳共役面58から光軸方向に近傍の平行面に沿って光束46に挿入され、あるいは光束から脱離される。以下、遮光体が移動するY方向に沿った軸を「軸A」とする。軸Aは、
図1に示すように、顕微鏡の手前側(−Y側)と奥側(+Y側)とを結ぶ軸である。
【0016】
次に
図2の各図を参照して本実施形態における偏斜照明法について説明する。本実施形態に係る透過照明装置を備えた顕微鏡4で位相差観察をするためには、偏斜照明を行う。偏斜照明は、対物レンズ10の瞳共役面58、または瞳共役面58から光軸方向に近傍の平行面における照明光の光束46の断面形状を変化させて行う。対物レンズ10の瞳共役面58またはその近傍の平行面では、視野絞りによって制限された光束46の断面が円形の開口のように見える。以後、本実施形態においては、瞳共役面58またはその近傍の平行面における照明光の光束46の断面のことを「瞳共役面58の開口61」あるいは単に「開口61」という。また、当該開口61の形状を「瞳共役面58の開口61の形状」あるいは単に「開口61の形状」ともいう。また、以下の偏斜照明法の説明は、遮光体49が瞳共役面58に沿って光束46に挿脱される場合についての説明であるが、瞳共役面58から光軸方向に近傍の平行面に沿って光束46に挿脱される場合にあっても同様である。
【0017】
図2(a)は、遮光体49が開口61の+Y方向側の一部を遮光している状態を示し、下側の図はこの状態を側方から見た図であり、上側の図は標本面37側から見た図である。また、(b)は、遮光体49が開口61の−Y方向側の一部を遮光している状態を示し、下側の図はこの状態を側方から見た図であり、上側の図は標本面37側から見た図である。
【0018】
瞳共役面58の開口61の形状は、
図2(a)および(b)に示すように、遮光体49を光束46に挿入することによって変化する。これにより、光軸に対して偏った光束46を標本に向けて照射することができる。本実施形態では、
図2(a)および(b)に示すように、遮光体49は開口61の中心すなわち光束46の光軸を挟んで軸Aに沿って顕微鏡4の手前側から奥側へ向かって光束46に挿入することも、奥側から手前側へ向かって光束46に挿入することも可能となっており、任意の位置に移動させることが可能となっている。言い換えると、開口61に対する遮光体49の位置は、開口61の手前側で光束46に全く挿入されていない位置(手前側移動端)と、開口61の奥側で光束46に全く挿入されていない位置(奥側移動端)と、手前側移動端と奥側移動端との間の任意の位置との、いずれの位置に移動させることも可能となっている。なお、
図2の各図は、遮光体49が手前側移動端と奥側移動端との間の任意の位置にある状態を示している。
【0019】
図3の各図は、リング状の位相差標本の観察において、異なる方向から遮光体49を光束46に挿入したときの当該標本に対するコントラストのつき方の例を示す図であり、(a)は遮光体49が開口61の+Y方向側の一部を遮光している状態(
図2(a)の状態)での観察像を示す図であり、(b)は遮光体49が開口61の−Y方向側の一部を遮光している状態(
図2(b)の状態)での観察像を示す図である。
【0020】
遮光体49を
図2(a)または
図2(b)に示すように位置させ、標本に対して斜めに光を照射することにより、光は干渉する。光を照射する角度によって干渉の具合も変化する。その結果、干渉の具合によって、
図3の各図に示すように、標本の観察像の見え方は異なるものとなる。
【0021】
図3(a)、(b)において、暗い部分は光の波長の谷と谷とが重なり合うように干渉している部分であり、背景に対してシグナルが弱くなっている。また、明るい部分は光の波長の山と山とが重なり合うように干渉している部分であり、背景に対してシグナルが強くなっている。このようにコントラストをつけることにより位相差標本を可視化することができる。本実施形態は、一つの遮光体49を、開口61を挟んで開口61の両側、すなわち相互に対向する方向から光束46に挿入できる構成としたので、標本に対するコントラストのつき方を容易に変化させることができるようになっている。
【0022】
なお、本実施形態に係る顕微鏡4は平行系実体顕微鏡なので、左眼用と右眼用とで別々の光路を有している。そのため、左右の光路の光束に対して同様の偏斜照明を行うことができるように、遮光体49は、光束46に挿入される際に開口61を横切る辺S1およびS3がX軸と平行になるように配置され、軸Aに沿って移動する構成になっている。すなわち、辺S1およびS3はX軸との平行状態を保って軸A上を移動する。また、軸A上においては、いずれの位置であっても、遮光体49の法線ベクトルは光軸と平行である。このような構成により、左右の光束に対して同様の偏斜照明を行うことができる。
【0023】
図4の各図は、開口61に対する遮光体49の位置の例を示す図であり、
図4(a)は遮光体49が開口61の+Y方向側に位置し、光束46に挿入されていない状態を示している。この状態にあっては、瞳共役面58の開口61は全開であり、明視野観察となる。
図4(b)は遮光体49が開口61の+Y方向側の一部を遮光している状態を示している。このとき標本には、一定のコントラストがつく。
図4(c)は、
図4(a)と同様に遮光体49が光束46に挿入されていない状態を示しているが、遮光体49は開口61の−Y方向側に位置している。
図4(d)は遮光体49が開口61の−Y方向側の一部を遮光している状態を示している。この状態での標本へのコントラストのつき方は、
図4(b)のときとは異なるものとなる。
図4(e)は遮光体49が移動ストロークの中間地点に位置し、開口61全体を覆っている状態を示している。
【0024】
これら
図4の各図に示すように、遮光体49は軸Aに沿って、開口61に対して任意の位置に移動させることができ、標本へのコントラストのつき方を容易に調整することができるようになっている。その結果、最適なコントラストを与える遮光体49の位置を探し易い構成となっている。さらに、このようにコントラストのつき方を容易に調整することができるので、最適なコントラストを与える状態から一旦明視野観察に切り替えたりした後であっても、再度最適なコントラストを与える遮光体49の位置に調節することができる。
【0025】
(実施例)
次に、本発明に係る透過照明装置の一つの実施例について説明する。実施例に係る透過照明装置、および当該透過照明装置を備えた顕微鏡104は、上記実施形態と異なるところを中心に説明し、上記実施形態と同様の構成については同じ符号を用いて説明する。
【0026】
図5は、本実施例に係る透過照明装置の構成を示す断面図である。
本実施例に係る透過照明装置は顕微鏡104のベース部107に内蔵されている。透過照明装置は、光源64と、遮光体49と、拡散板67とを備えている。本実施例に係る透過照明装置は、光源64に面発光照明を用いた薄型の透過照明系を適用している。具体的には、導光板によるLED面発光光源である。光源64は、発光面が対物レンズ10の瞳共役面58近傍の平行面に沿って配置されている。光源64から射出された照明光は、ベース部107の上面に設けられた穴110を通過する。したがって、照明光はベース部107の上面の穴110を通過して標本載置台25に到達し、標本面37を照射する。遮光体49は、上記実施形態と同様に、光源64と標本面37との間を軸A方向(
図1参照)に沿って移動可能に設けられている。
【0027】
遮光体49が設けられている位置は、対物レンズ10の瞳共役面58である。遮光体49は、上記実施形態の
図4の各図で示したのと同様に、面光源64から射出された照明光の光束46の一部を遮光する。なお、本実施例においては、面光源64から射出された照明光の光束46(
図6参照)の断面が上記実施形態の開口61に対応する。また、遮光体49は開口61の中心すなわち光束46の光軸を挟んで軸A方向に沿って顕微鏡4の手前側から奥側へ向かって光束46に挿入することも、奥側から手前側へ向かって光束46に挿入することも可能となっており、任意の位置に移動させることが可能となっている。言い換えると、開口61に対する遮光体49の位置は、開口61の手前側で光束46に全く挿入されていない位置(手前側移動端)と、開口61の奥側で光束46に全く挿入されていない位置(奥側移動端)と、手前側移動端と奥側移動端との間の任意の位置との、いずれの位置に移動させることも可能となっている。このような構成により、標本へのコントラストのつき方を容易に調整することができるようになっている。
【0028】
拡散板67は遮光体49と標本面37との間を軸A方向へ移動可能に設けられている。拡散板67は明視野観察において照明ムラを低減し、また、偏斜照明による位相差観察においてコントラストを調整するためのものである。拡散板67の詳細は後述する。
【0029】
本実施例においては、
図5に示すように、顕微鏡104の透過照明系はコンデンサレンズ等の光学系を備えていない構成となっている。光源64と標本面37との間には、遮光体49と拡散板67だけが配置可能となっている。したがって本実施例に係る透過照明系は、上述したLED面発光光源と相俟って、従来の透過照明系に比べて薄型化が可能である。その結果、低倍率での観察が主体となる実体顕微鏡に適した構成となっている。このような構成により、明視野観察と偏斜照明による位相差観察との両方の観察が可能なベース部を実現することができる。なお、導光板の光源としては、例えば冷陰極管などの他の光源にしても良い。また、導光板に代えて有機または無機のELなどの薄型面光源を用いても良い。
【0030】
次に遮光体49の支持機構について説明する。
図6は顕微鏡104のベース部107の内部機構を上方から見た図である。
図6においては、紙面右側が顕微鏡104の手前側であり、紙面左側が奥側である。
【0031】
図6に示すように、ベース部107の内部には、軸Aと平行な方向に延在する軸部材70が設けられている。軸部材70は、両端部が固定部材71、71を介してベース部107の底面73に固定されており、軸部材70とベース部107の底面73との間には空間が介在している。軸部材70には、遮光体49を支持するための支持部材76が支持されている。支持部材76は、軸A方向と直角に交差する方向(X方向)に延在し、軸A方向に摺動可能に支持されている。遮光体49は、ベース部107のX方向の中央部に位置するように支持部材76に支持されている。このような構成なので、遮光体49の軸A方向への移動は軸部材70によってガイドされる。支持部材76の一方側の端部(本実施例においては観察者から見て右側の端部)は、ベース部107の側面を貫通して外部に突出し、端部にはつまみ部79が形成されている。つまみ部79は遮光体49を移動させるための操作手段となっている。観察者はつまみ部79を軸A方向にスライドさせることで遮光体49の位置を調節し、最適なコントラストを与える遮光体49の位置を探すことができる。
【0032】
本実施例においては、位相差観察において一度調節した最適なコントラストを与える照明状態の再現性を向上させるための機構が設けられている。
【0033】
ベース部107の右側の側面には軸A方向に沿って目盛り板82が設けられている。目盛り板82は、遮光体49が瞳共役面58の開口61をどのくらい遮光しているのか、あるいは遮光体49が現在どの位置にあるのかを知るための表示手段として設けられている。
【0034】
例えばある位相差標本の観察において、つまみ部79を操作して遮光体49の位置を調節し、最適なコントラストを与える遮光体49の位置として
図6に示す位置、すなわちつまみ部79が目盛り板82の目盛り「20」を指示する位置、を探し当てたとする。この状態から一旦観察方法を明視野観察に切り替えたり、遮光体49の挿入方向を逆向きにしてみたりして観察する。そしてその後、再び最初に探し当てたコントラストの状態で観察しようとした場合、観察者はつまみ部79の位置を目盛り板82の目盛り「20」の位置に合わせれば良い。そうすれば、瞬時に最適なコントラストの照明状態を再現することができる。
【0035】
このように本実施例では、目盛り板82を設けたことにより、一旦調節した照明状態を再現することが容易となっている。さらに、本実施例では、1つの遮光体49を軸A方向のみに移動させるので操作が簡単である。しかも、つまみ部79の移動方向および移動量は、遮光体49の移動方向および移動量と同じになっており、遮光体49の位置すなわち光束46への挿入割合と、目盛り板82の目盛りとの対応が直感的でわかり易い。その結果、操作性が向上している。
【0036】
また、つまみ部79で遮光体49の位置を調節する際、調節後の位置につまみ部79を固定するためのストッパ機構を設けても良い。そうすれば最適なコントラストの状態を保持することができる。ストッパ機構の構成は特に限定はされず、どのような機構を用いても構わない。例えば目盛り板82にピンを差し込んでつまみ部79を固定するタイプでも良い。
【0037】
また、遮光体49の移動用モータを設けて遮光体49の移動を電動とし、遮光体49の現在位置を検出するセンサ、遮光体49の位置を記憶するメモリ等を備え、最適なコントラストの照明状態におけるつまみ部79の目盛り位置等の各種パラメ−タを記憶する機構を設けても良い。そうすれば、対物レンズ10の種類や最適な照明状態となる遮光体49の位置等の情報を利用できるので、さらに再現性および操作性が良いものとなる。
【0038】
次に拡散板67について説明する。本実施例においては、遮光体49と標本載置台25との間を移動可能に拡散板67が配置されている。拡散板67は矩形の薄板で、遮光板49よりも大きく形成されている。拡散板67は、上述したように、明視野観察において照明ムラを低減し、また、偏斜照明においてコントラストを調整するためのものである。
【0039】
拡散板67の支持機構およびガイド機構は、図示は省略するが、
図6に示した遮光体49の支持機構およびガイド機構と同様の構成であり、拡散板67は軸A方向の任意の位置に移動させることができる。拡散板67の位置の調節可能範囲は、遮光体49と同様である。すなわち、拡散板67は開口61の中心すなわち光束46の光軸を挟んで軸Aに沿って顕微鏡104の手前側から奥側へ向かって光束46に挿入することも、奥側から手前側へ向かって光束46に挿入することも可能となっている。言い換えると、開口61に対する拡散板67の位置は、開口61の手前側で光束46に全く挿入されていない位置(手前側移動端)と、開口61の奥側で光束46に全く挿入されていない位置(奥側移動端)と、手前側移動端と奥側移動端との間の任意の位置との、いずれの位置に移動させることも可能となっている。拡散板67の位置を調節するためのつまみ部、および目盛り板はベース部の左側に設けられている。なお、遮光体49と拡散板67とは上下方向に高さが異なって配置されているが、互いに接触することがないように支持されている。また、拡散板67を所定の位置に保持するためのストッパ機構や、調節した位置を記憶するためのメモリ等を備えても良い。
【0040】
図7の各図は、拡散板67が光束46に挿入されている状態の例を示している。すなわち、開口61に対する拡散板67の位置を示す図である。ただし、拡散板67による効果は、遮光体49の位置によっても異なる。
図7の各図においては、遮光体49は開口61の−Y側の一部を遮光している状態となっている。
図7(a)および(c)は、それぞれ拡散板67が+Y方向側または−Y方向側に位置し、光束46に挿入されていない状態を示している。この状態は位相差の小さな標本の観察に適しており、コントラストがつき易い状態である。一方、
図7(e)は拡散板67が移動ストロークの中間地点に位置し、開口61全体を覆っている状態を示している。この状態は位相差の大きな標本の観察に適しており、ぎらつきを抑えた像を得ることができる。これらの中間的な位相差の標本では、
図7(b)または(d)に示すように、開口61の一部を覆うように拡散板67を光束46に挿入し、その挿入方向や挿入距離を変えることで最適なコントラストに調整する。
【0041】
このように、拡散板67を任意の位置に変更することができるので、コントラストのつき方を微妙に変化させることができ、さらに、このような微妙な変化を容易に調整することができ、調整後の状態の再現も容易な構成となっている。また、
図4の各図および
図7の各図に示すように、遮光体49と拡散板67との位置の組み合わせは、例えば、両方とも光束46に挿入されていない状態、両方とも開口61の全部を覆う位置にある状態、両方とも開口61の一部だけ覆う位置にある状態等、さまざまな状態とすることができる。なお、本実施例においては、遮光体49と散板67との何れも光束46に挿入されていない状態にあっては、光源64と標本との間には光学部材等は何も配置されず、空気間隔のみ介在することとなる。
【0042】
以上説明したように、本実施例に係る透過照明装置は操作性が良く、最適なコントラストを与える遮光体49の位置を探し易い構成となっている。さらに、遮光体49の位置を示す目盛り板82を設けたので、一旦調節した照明状態を再現することが容易になっている。また、拡散板67の位置についても遮光体49と同様の機構で移動可能となっているため、コントラストのつき方を容易に調整することができ、さらに一旦調節したコントラストのつき方を再現することが容易となっている。
【0043】
なお、上記実施形態および実施例においては、本発明に係る透過照明装置を平行系実体顕微鏡に適用したが、これ以外の顕微鏡、例えば内斜系実体顕微鏡、モノズーム顕微鏡、一般顕微鏡等に適用しても同様の効果を発揮する。