特許第5849704号(P5849704)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5849704
(24)【登録日】2015年12月11日
(45)【発行日】2016年2月3日
(54)【発明の名称】面光源装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/02 20060101AFI20160114BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20160114BHJP
   H05B 33/02 20060101ALI20160114BHJP
   G02F 1/13357 20060101ALI20160114BHJP
   F21S 2/00 20160101ALI20160114BHJP
【FI】
   G02B5/02 C
   H05B33/14 A
   H05B33/02
   G02F1/13357
   F21S2/00 481
【請求項の数】3
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2011-547523(P2011-547523)
(86)(22)【出願日】2010年12月17日
(86)【国際出願番号】JP2010072804
(87)【国際公開番号】WO2011078092
(87)【国際公開日】20110630
【審査請求日】2013年9月13日
(31)【優先権主張番号】特願2009-293173(P2009-293173)
(32)【優先日】2009年12月24日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】井上 弘康
(72)【発明者】
【氏名】原井 謙一
【審査官】 加藤 昌伸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−180973(JP,A)
【文献】 特開2005−208557(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/081750(WO,A1)
【文献】 特開2007−114409(JP,A)
【文献】 特開2007−241057(JP,A)
【文献】 特開2008−096904(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/00 − 5/136
H05B 33/00 − 33/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の面S1及び第2の面S2を有する透明基材と、
前記透明基材の前記第1の面S1側に設けられる第1の光拡散層と、
前記透明基材の前記第2の面S2側に設けられる第2の光拡散層とを有し、
前記第1の光拡散層は第1の面D1及び第2の面D2を有し、前記第1の面D1は前記透明基材と反対側の面であり、面光源装置の装置出光面にあたり、且つ、凹凸構造を有する面であり、
前記凹凸構造は、斜面を含む複数の凹部と、前記凹部の周囲に位置する平坦部とを含むものであり、
前記第1の光拡散層と同じ材料および同じ厚みであって、かつ前記第1の光拡散層における凹凸構造を有しない光拡散層のヘイズx1(%)と、前記第2の光拡散層のヘイズx2(%)とが、下記式(1)及び式(2):
f(x1)/(f(x1)+f(x2))≦2/3 ・・・式(1)
(f(x1)+f(x2))≧12 ・・・式(2)
(但し、x≦88のとき、関数f(x)=1.9×(ln(1−x/90))であり、x>88のとき、関数f(x)=22.5x−1952.5である)
を満たす、光学シートを備える面光源装置であって、
前記面光源装置は、基板と、前記基板の装置出光面側の表面に接して設けられた前記光学シートと、前記基板の他方の面に接して設けられた有機エレクトロルミネッセンス素子とを備える、面光源装置
【請求項2】
請求項1に記載の面光源装置であって、
前記第1の光拡散層が、樹脂及び拡散子を含有する組成物により構成されている面光源装置。
【請求項3】
請求項1に記載の面光源装置であって、
前記第2の光拡散層が、粘着層である面光源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学シート、及び有機エレクトロルミネッセンス(以下「有機EL」という。)素子を備える面光源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数層の電極間に有機発光層を設け、電気的に発光を得る有機EL素子は、液晶セルに代わる表示素子としての利用が検討されている。他に、その高発光効率、低電圧駆動、軽量、低コスト等の特徴を生かした、平面型照明、液晶表示装置用バックライト等の面光源装置としての有機EL装置の利用も検討されている。
【0003】
有機EL素子を面光源装置の光源として利用する場合、有用な態様の光を高効率で素子から取り出すことが課題となる。例えば、有機EL素子の発光層自体は発光効率が高いものの、それが素子を構成する積層構造を透過して出光するまでの間に、層中における干渉等により光量が低減してしまうので、そのような光の損失を可能な限り低減することが求められる。
【0004】
光取り出し効率を高めるための方法として、光源装置よりも光取り出し面側に、種々の凹凸構造を設けることが知られている(例えば特許文献1の図4図6等)。このような凹凸構造を有する有機EL素子の部品として、いわゆるフォトポリマー法(2P法)により凹凸構造を付与した層を含む光学シートが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−266429号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、面光源装置においては、光取り出し効率に加え、出光面内の輝度の均一さも求められる。上に述べた凹凸構造を付与した層は、その製造工程において厚さのムラが発生しやすく、それによりかかる層の面内の透過率の均一さが損なわれる場合がある。特に、出光面の機械的強度を高めるために硬質の材料を用いた場合かかる厚さのムラが起こりやすい。また、観察角度による色味の変化を低減するために、凹凸構造層に光拡散性を付与した場合は、厚さのムラに基づく透過率の変動が、面光源装置の輝度ムラに大きく現れうる。
【0007】
したがって本発明の目的は、面内の透過率の均一さが高く、透過する光の観察角度による色味の変化が少なく、機械的強度が高く、且つ、面光源装置の出光面側に設けた際に高い光取り出し効率を達成することができる光学シートを提供することにある。
【0008】
本発明の別の目的は、出光面内の輝度の均一さが高く、観察角度による出光面の色味の変化が少なく、出光面の機械的強度が高く、且つ光取り出し効率が高い、面光源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決すべく、本発明者らは検討を行った結果、面光源装置の出光面に設ける光学シートとして、所定の比率の拡散能を有する複数の層を、所定の態様で配置することにより上記課題を解決しうることを見出し、本発明を完成した。
即ち、本発明によれば、下記〔1〕〜〔5〕が提供される。
〔1〕 第1の面S1及び第2の面S2を有する透明基材と、
前記透明基材の前記第1の面S1側に設けられる第1の光拡散層と、
前記透明基材の前記第2の面S2側に設けられる第2の光拡散層とを有する光学シートであって、
前記第1の光拡散層は第1の面D1及び第2の面D2を有し、前記第1の面D1は前記透明基材と反対側の面であり、且つ、平滑な面であり、
前記第1の光拡散層のヘイズx1(%)と、前記第2の光拡散層のヘイズx2(%)とが、下記式(1)及び式(2):
f(x1)/(f(x1)+f(x2))≦2/3 ・・・式(1)
(f(x1)+f(x2))≧12 ・・・式(2)
(但し、x≦88のとき、関数f(x)=1.9×(ln(1−x/90))であり、x>88のとき、関数f(x)=22.5x−1952.5である)
を満たす、光学シート。
〔2〕 第1の面S1及び第2の面S2を有する透明基材と、
前記透明基材の前記第1の面S1側に設けられる第1の光拡散層と、
前記透明基材の前記第2の面S2側に設けられる第2の光拡散層とを有し、
前記第1の光拡散層は第1の面D1及び第2の面D2を有し、前記第1の面D1は前記透明基材と反対側の面であり、且つ、凹凸構造を有する面であり、
前記第1の光拡散層と同じ材料および同じ厚みであって、かつ前記第1の光拡散層における凹凸構造を有しない光拡散層のヘイズx1(%)と、前記第2の光拡散層のヘイズx2(%)とが、下記式(1)及び式(2):
f(x1)/(f(x1)+f(x2))≦2/3 ・・・式(1)
(f(x1)+f(x2))≧12 ・・・式(2)
(但し、x≦88のとき、関数f(x)=1.9×(ln(1−x/90))であり、x>88のとき、関数f(x)=22.5x−1952.5である)
を満たす、光学シート。
〔3〕 〔1〕又は〔2〕に記載の光学シートであって、
前記第1の光拡散層が、樹脂及び拡散子を含有する組成物により構成されている光学シート。
〔4〕 〔1〕〜〔3〕のいずれか1項に記載の光学シートであって、
前記第2の光拡散層が、粘着層である光学シート。
〔5〕 〔1〕〜〔4〕のいずれか1項に記載の光学シートと、有機エレクトロルミネッセンス素子とを備える面光源装置。
【発明の効果】
【0010】
本発明の光学シートは、面内の透過率の均一さが高く、透過する光の観察角度による色味の変化が少なく、機械的強度が高く、且つ、面光源装置の出光面側に設けた際に高い光取り出し効率を達成することができる。
【0011】
本発明の面光源装置は、出光面内の輝度の均一さが高く、観察角度による出光面の色味の変化が少なく、出光面の機械的強度が高く、且つ光取り出し効率が高い。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の光学シートの一例を模式的に示す斜視図である。
図2図2は、図1に示す光学シートを、図1中の線1a−1bを通り、透明基材の面方向と垂直な面で切断した断面を示す断面図である。
図3図3は、光学シート100の表面10Uの構造を模式的に示す部分上面図である。
図4図4は、第1の拡散層111を、図3の線10aを通る垂直な面で切断した断面を示す部分断面図である。
図5図5は、図4に示す凹部の変形例を示す部分断面図である。
図6図6は、図4に示す凹部の別の変形例を示す部分断面図である。
図7図7は、本発明の面光源装置の一例を模式的に示す斜視図である。
図8図8は、図7に示す面光源装置10を、図7中の線1a−1bを通り、透明基材の面方向と垂直な面で切断した断面を示す断面図である。
図9図9は、本発明において規定される関数f(x)を説明するためのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<光学シート>
本発明の光学シートは、第1の面S1及び第2の面S2を有する透明基材と、前記透明基材の前記第1の面S1側に設けられる第1の光拡散層と、前記透明基材の前記第2の面S2側に設けられる第2の光拡散層とを有する。即ち、本発明の光学シートは、透明基材と、前記透明基材の一方側の面に設けられた第1の光拡散層と、前記透明基材の他方側の面に設けられた第2の光拡散層とを有する。
図1は、本発明の光学シートの一例を模式的に示す斜視図であり、図2は、図1に示す光学シートを、図1中の線1a−1bを通り、透明基材の面方向と垂直な面で切断した断面を示す断面図である。
【0014】
光学シート100は、透明基材121と、透明基材121の一方側の面に直接接して設けられた第1の光拡散層111と、透明基材121の他方側の面に直接接して設けられた第2の光拡散層112とを有する。図1及び図2においては、透明基材121の上側の面が第1の面S1であり、下側の面が第2の面S2である。なお、本実施形態では、透明基板に直接各光拡散層を設けたが、他の層が介在していてもよい。
【0015】
第1の光拡散層111は、その上面(一方側の面)に、複数の凹部113と、凹部113の周囲に位置する平坦部114とを含む凹凸構造を有する。当該凹凸構造により、光学シート100の表面10Uが規定される。表面10Uは、凹部113を無視して巨視的に見ると、平坦部114、透明基板121の光学シート中の他の層と平行な平面であるが、微視的には凹部113により規定される斜面を含む凹凸面である。なお、本願において、図面は模式的な図示であるため、表面10U上には僅かな個数の凹部のみを示しているが、実際の装置においては、一枚の光学シート表面上に、これよりも遥かに多い数の凹部を設けることができる。
本発明において、「一方側」「他方側」とは、光学シートの各層の表側の面及び裏側の面を識別する規定であって、光学シートの全体における厚み方向の向きに沿って規定され、透明基材からみて第1の光拡散層側の向きが「一方側」、透明基材からみて第2の光拡散層側の向きが「他方側」である。例えば、本実施形態において、「一方側」とは図2中の上側に相当し、「他方側」とは図2中の下側に相当する。即ち、本実施形態において、透明基材121の「一方側の面」は透明基材121の上面に相当し、透明基材121の「他方側の面」は透明基材121の下面に相当する。第1の光拡散層111の「一方側の面」は第1の光拡散層111の上面に相当し、第1の光拡散層111の「他方側の面」は第1の光拡散層111の下面に相当する。
【0016】
(透明基材)
本発明において、透明基材が「透明」であるとは、光学シートの材料に用いるのに適した程度の光線透過率を有する意味である。本発明においては、光学シートを構成する各層が、光学部材に用いるのに適した光線透過率を有するものとすることができ、光学シート全体として50%以上の全光線透過率を有するものとすることができる。
【0017】
透明基材の材料は、特に限定されず、ガラス、又は透明な層を形成することができる各種の樹脂を用いることができる。透明基材の材料としては、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂、および電子線硬化性樹脂を挙げることができ、この中でも加工が容易である点で熱可塑性樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂としては、ポリエステル系、ポリアクリレート系、およびシクロオレフィンポリマー系の樹脂を挙げることができる。ここで、透明基材としては、単層のものに限らず、複数の透明基材を積層したものでもよい。
【0018】
本発明の光学シートにおいて、透明基材の厚さは、例えば樹脂からなるものであれば20〜300μmであることが好ましい。透明基材がガラスの場合、その厚さは10〜1100μmであることが好ましい。なお、本発明の光学シートは、薄い平板状の構造であることから「シート」と称するが、これは必ずしも可撓性を必須の要件とするものではない。したがって、例えば透明基材として700μm厚のガラスを採用し、可撓性が無い積層体としたものも、本発明の光学シートに含まれる。
【0019】
(第1の光拡散層)
第1の光拡散層は、透明基材の第1の面S1側に設けられる層である。第1の光拡散層は、面光源装置に本発明の光学シートが設けられる場合において、通常、出光面側(即ち、光学シートにおいて、第2の光拡散層及び透明基材よりも発光層から遠い側)になる面に設けられる層である。第1の光拡散層は、図1及び図2に示す光学シート100における第1の光拡散層111の例のように、透明基材の面上に直接設けられていてもよいが、さらに他の層を介して設けられていてもよい。直接設けられていることが、製造の容易さ等の観点から好ましい。
【0020】
第1の光拡散層の材料は、光拡散性のある樹脂組成物とすることができる。具体的には、各種樹脂と、拡散子とを含む組成物とすることができる。かかる樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、並びに紫外線硬化性樹脂及び電子線硬化性樹脂等のエネルギー線硬化性樹脂を挙げることができる。なかでも熱可塑性樹脂は熱による変形が容易であるため、また紫外線硬化性樹脂は硬化性が高く効率が良いため、凹凸構造を有する光拡散層層の効率的な形成が可能となり、それぞれ好ましい。熱可塑性樹脂としては、ポリエステル系、ポリアクリレート系、シクロオレフィンポリマー系の樹脂を挙げることができる。また紫外線硬化性樹脂としては、エポキシ系、アクリル系、ウレタン系、エン/チオール系、イソシアネート系の樹脂を挙げることができる。これらの樹脂としては、複数個の重合性官能基を有するものを好ましく用いることができる。
【0021】
第1の光拡散層は、第1の面D1及び第2の面D2を有し、第1の面D1は前記透明基材と反対側の面である。第2の面D2は、前記透明基材の第1の面S1に対向する面である。本発明のある態様において、第1の光拡散層は、その第1の面D1が平滑な面であり、本発明の別のある態様において、第1の光拡散層は、その第1の面D1に凹凸構造を有する。
第1の面D1が平滑な面であるとは、算術平均粗さRa<0.1umである面を言う。一方、第1の面D1が凹凸構造を有するとは、Ra>0.15umである面を言う。
第1の光拡散層がその第1の面D1に凹凸構造を有する場合、第1の光拡散層の材料としては、凹凸構造を形成しやすく且つ凹凸構造の耐擦傷性を得やすいという観点から、硬化時の硬度が高い材料が好ましい。具体的には、7μmの膜厚の層を基材上に凹凸構造が無い状態で形成した際に、鉛筆硬度でHB以上になるような材料が好ましく、H以上になる材料がさらに好ましく、2H以上になる材料がより好ましい。一方、透明基材の材料としては、第1の光拡散層及び第2の光拡散層の形成に際しての取り扱い、及び/又は光学シートを成形した後の取り扱いを容易とするために、ある程度の柔軟性があるものが好ましい。このような材料を組み合わせることにより、取り扱いが容易で且つ耐久性に優れる光学シートを得ることができる。このような材料の組み合わせは、それぞれの材料を構成する樹脂として、上に例示した樹脂を適宜選択することにより得ることができる。具体的には、第1の光拡散層の材料を構成する樹脂として、アクリレート等の紫外線硬化性樹脂を用い、一方透明基材の材料を構成する樹脂として、脂環式オレフィンポリマー製のフィルムや、ポリエステルフィルムを用いることができ、これにより、好ましい材料の組み合わせを得ることができる。
【0022】
第1の光拡散層が含有しうる拡散子としては、各種の粒子を挙げることができる。当該粒子は、透明であっても、不透明であってもよい。粒子の材料としては、金属及び金属化合物、並びに樹脂等を用いることができる。金属化合物としては、金属の酸化物及び窒化物を挙げることができる。金属及び金属化合物としては、具体的には例えば銀、アルミのような反射率が高い金属、酸化ケイ素、酸化アルミ、酸化ジルコニウム、窒化珪素、錫添加酸化インジウム、酸化チタンなどの金属化合物を挙げることができる。一方樹脂としては、メタクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂等を挙げることができる。
【0023】
粒子の形状は、球状、円柱状、立方体状、直方体状、角錐状、円錐状、星型状等の形状とすることができる。
粒子の粒径は好ましくは0.1μm以上10μm以下であり、より好ましくは5μm以下である。ここで粒径とは、体積基準の粒子量を、粒子径を横軸にして積算した積算分布における50%粒子径のことである。粒径が大きいほど、所望の効果を得るために必要な粒子の含有割合は多くなり、粒径が小さいほど、含有量は少なくてすむ。従って、粒径が小さいほど、観察角度による色味の変化の低減、及び光取り出し効率の向上等の所望の効果を、少ない粒子で得ることができる。なお、粒径は、粒子の形状が球状以外である場合には、その同等体積の球の直径を粒径とする。
【0024】
粒子が透明な粒子であり、且つ粒子が透明樹脂中に含まれる場合において、粒子の屈折率と、透明樹脂の屈折率は、それらの差が0.05〜0.5であることが好ましく、0.07〜0.5であることがより好ましい。ここで、粒子及び透明樹脂の屈折率は、どちらがより大きくても良い。粒子と透明樹脂の屈折率が近すぎると拡散効果が得られず色味ムラは抑制されず、逆に差が大きすぎると拡散が大きくなり色味ムラは抑制されるが光取出効果が低減することになる。
【0025】
第1の光拡散層が樹脂と拡散子とを含む場合における、樹脂と拡散子との配合割合は、3〜50重量%であることが好ましい。
【0026】
本発明の光学シートにおいて、第1の光拡散層の厚さは、その下限が1μm以上であることが好ましく、5μm以上であることがより好ましく、また、10μm以上とすることができ、一方、その上限が50μm以下であることが好ましく、25μm以下であることがより好ましく、また、15μm以下とすることができる。特に、前記上限以下の厚さであることにより、硬化収縮による光学シートのカール等の変形を防ぎ、良好な形状の光学シートとすることができる。
【0027】
第1の光拡散層の材料として上に挙げた、硬化時の硬度が高い樹脂は、硬化収縮を起こしやすい傾向にある。したがって、一般的に、このような材料を光学シートの一部の層の材料として採用した場合、厚さが不均一になったり、光学シートが変形(カール等)してしまう等の不具合を生じやすい。特に、光学シートに十分な拡散性能を付与すべく第1の光拡散層に拡散子を配合し且つその厚さを厚くした場合、かかる硬化収縮による変形が発生しやすい。しかしながら、本発明の光学シートにおいては、第1の光拡散層及び第2の光拡散層として、後述する所定のヘイズ比を有するものを採用することにより、第1の光拡散層の厚さが薄くても所定の拡散性能を有する光学シートとすることができる。その結果、本発明の光学シートは、表面の高い耐久性、均一な厚さに基づく面内の透過率の均一さの高さ、十分な光拡散性能に基づく観察角度による色味の変化の少なさ、及び変形の少なさの全てを満たす光学シートとすることができる。
【0028】
(第2の光拡散層)
第2の光拡散層は、透明基材の第2の面S2側、即ち、透明基材の、第1の光拡散層が設けられた面と反対の面側に設けられる層である。第2の光拡散層は、面光源装置に本発明の光学シートが設けられる場合において、通常、入光面側(即ち第1の光拡散層及び透明基材より発光層に近い側)に設けられる層である。第2の光拡散層は、図1及び図2に示す光学シート100における第2の光拡散層112の例のように、透明基材の面上に直接設けられていてもよいが、さらに他の層を介して設けられていてもよい。直接設けられていることが、製造の容易さ等の観点から好ましい。
【0029】
第2の光拡散層は、光拡散性のある層とすることができるが、特に、光拡散性のある粘着層であることが好ましい。即ち、第2の光拡散層は、光学シートを透過する光を拡散させる機能に加え、光学シートを、有機EL素子の他の層に粘着させる機能を有する層とすることができる。第2の光拡散層を粘着層とすることにより、本発明の光学シートを容易に有機EL素子に設けることができ、且つ有機EL素子の層構成を単純化させることにより光取り出し効率を向上させることができる。また、有機EL素子の光取出し効率を大きくする観点からは、第2の光拡散層の屈折率は、第1の光拡散層の屈折率より高いことが好ましい。この場合、粘着性を持っていない層を第2の拡散層とし、エネルギー線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂などを用いることで、1.6以上さらに好ましくは1.67以上の高い屈折率の層とすることができる。エネルギー線硬化性樹脂の例としては、紫外線硬化性樹脂及び電子線硬化性樹脂を挙げることができる。
【0030】
第2の光拡散層の材料は、光拡散性のある任意の材料とすることができる。第2の光拡散層の材料のある例として、樹脂と拡散子との組成物を挙げることができる。この場合、当該樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、(メタ)アクリル樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、酸変性ポリオレフィン樹脂あるいはその混合物等を用いることができる。これらの樹脂を用いることにより、第2の光拡散層の形成が容易になり、且つ第2の光拡散層に上記粘着層としての機能をも付与することができる。一方拡散子としては、第1の光拡散層の拡散子と同様のものを用いることができる。第2の光拡散層が樹脂と拡散子とを含む場合における、樹脂と拡散子との配合割合は、3〜50重量%であることが好ましい。
【0031】
第2の光拡散層の材料の他の例として、ランダム配向した液晶性物質の層、又は、かかる液晶性物質の層を、かかる配向を維持したまま硬化させた、硬化液晶性物質の層を挙げることができる。かかるランダム配向した層内を光が進むと、光の進行方向が様々に変化するので、拡散を達成することができる。ランダム配向した液晶性物質の層は、固体の層に限られず、例えば、適切な隙間に充填された液体の層とすることもできる。
第2の光拡散層として液晶性物質を用いる場合、かかる液晶性物質としては、各種スメクチック液晶、ネマチック液晶、液晶性アクリレート、およびその混合物などが挙げられる。
【0032】
本発明の光学シートにおいて、第2の光拡散層の厚さは、その下限が1μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましく、さらに、30μm以上や、40μm以上とすることができ、一方その上限が200μm以下であることが好ましく、60μm以下であることがより好ましい。
【0033】
(ヘイズの関係)
本発明の光学シートにおいては、前記第1の光拡散層についてのヘイズx1(%)と、前記第2の光拡散層のヘイズx2(%)とが、下記式(1)を満たす。
f(x1)/(f(x1)+f(x2))≦2/3 ・・・式(1)
但し、関数f(x)は、x≦88のとき、関数f(x)=1.9×(ln(1−x/90))であり、x>88のとき、関数f(x)=22.5x−1952.5である。
【0034】
ヘイズx1及びヘイズx2は、より好ましくは、下記式(1’)を満たす。
f(x1)/(f(x1)+f(x2))≦1/2 ・・・式(1’)
【0035】
このような関数f(x)は、硬化後に屈折率1.54になるUV硬化性樹脂中に、平均粒子径2μmかつ屈折率1.43の拡散子の添加割合を変えて、基材フィルム上に膜厚15μmの平坦な光拡散層を形成した場合のヘイズと拡散子添加割合から導いた関数である。この関係を図9に示す。図中実線は実測結果、破線はf(x)の値に相当する。本出願では、前述の添加割合に相当する値を散乱性能を示す指標とし、2つの光散乱層の散乱性能を比較して、式(1)および式(2)の範囲を規定している。
【0036】
さらに、本発明の光学シートは、
f(x1)+f(x2)≧12・・・式(2)
であることが好ましい。言い換えれば前述の15μmの光拡散層において拡散子の添加量を12重量%より多くした場合の散乱性能を有することが好ましい。さらに、本発明の光学シートは、
f(x1)+f(x2)≧18・・・式(2’)
であることが好ましい。
【0037】
第1の光拡散層の第1の面D1が平滑な面である場合は、ヘイズx1は、第1の光拡散層のヘイズである。一方、第1の光拡散層がその第1の面D1に凹凸構造を有する場合、ヘイズx1は、第1の光拡散層それ自体のヘイズではなく、第1の光拡散層と同じ材料および同じ厚みであって、かつ第1の光拡散層における凹凸構造を有しない他の光拡散層のヘイズである。
ヘイズx1及びヘイズx2は、透明な基板上に測定対象の第1の光拡散層又は第2の光拡散層を形成し、そのヘイズを測定することにより測定しうる。また、表面に凹凸構造を有する第1の光拡散層については、同じ材料および同じ平均厚さの平坦な層を形成し、そのヘイズを測定してx1とする。あるいは、既に凹凸構造が形成された第1の光拡散層については、第1の光拡散層と同じ屈折率をもつ透明な樹脂で、前述の凹凸構造埋めて平坦化し測定したヘイズをx1とする。測定機器としては、JIS K7105に準拠し、市販の濁度計(NDH−300A 日本電色工業社製など)を用いることができる。
【0038】
ヘイズx1及びヘイズx2が上記式(1)を満たすのに加えて、上記式(2)を満たすことにより、光学シートの面内の透過率の均一さと、透過する光の観察角度による色味の変化の低さと、光学シート表面の機械的強度の高さとをいずれも満足させることができる。
即ち、光学シート表面の機械的強度を高めるためには光拡散層の硬度を高める必要があり、このことは、光取り出し効率を高めるために光学シート表面に凹凸構造を設ける場合さらに必要性が高まる。さらに観察角度による色味の変化を抑制するためには、光学シートのヘイズを高める必要があり光拡散層に多量の拡散子を添加することが求められる。しかしながら、硬度の高い材料を用い、且つ光拡散層を多く添加すると、硬化前の材料の粘度が高くなり、そのため層の成形の精度を高めることが困難となり、しかもわずかな厚さの不均一さが大きな透過率の変化として現れるため、結果として均一な面内の透過率を得ることが困難となる。そこで、本発明では、硬度を高める第1の光拡散層と、拡散性を高めるための第2の拡散層とを設け、さらにこれらのヘイズの比を上記所定の範囲とすることにより、上記効果を達成することができる。
【0039】
ヘイズx1及びヘイズx2のそれぞれの値は、上記要件を満たす限りにおいて特に限定されないが、x1の下限は、好ましくは50%、より好ましくは75%であり、x1の上限は、好ましくは90%、より好ましくは89.5%である。特に、x1の下限が上記好ましい範囲以上であることにより、第1の光拡散層の表面上に微小な傷が生じた場合において、かかる傷による光学シートの性能の低減(例えば面内の透過率の均一さの低減等)を良好に緩和することができるため、特に好ましい。x2の下限は、好ましくは75%、より好ましくは85%であり、x2の上限は、好ましくは90%であり、より好ましくは89.5%である。
【0040】
(凹凸構造)
本発明の光学シートにおいては、第1の光拡散層が、その第1の面D1(表側の面)に凹凸構造を有することが好ましい。ここでいう、第1の光拡散層の「表側の面」とは、第1の光拡散層の、透明基材側の面と反対側の面である。当該凹凸構造としては、斜面を含む複数の凹部と、前記凹部の周囲に位置する平坦部とを含む凹凸構造を好ましく挙げることができる。ここで「斜面」とは、透明基材の面方向と平行でない角度をなす面である。一方、平坦部上の面は、透明基材の面方向と平行な面とすることができる。
【0041】
凹凸構造の例として、図1及び図2に示した光学シート100の第1の光拡散層111の上面の凹凸構造を、図3及び図4を参照してより詳細に説明する。図3は、第1の光拡散層111の表面構造により規定される、光学シート100の表面10Uの構造を拡大して模式的に示す部分上面図である。図4は、第1の拡散層111を、図3の線10aを通る垂直な面で切断した断面を示す部分断面図である。
【0042】
複数の凹部113のぞれぞれは正四角錐形状の窪みであり、従って凹部113の斜面11A〜11Dは同一の形状であり、底辺11E〜11Hは正方形を構成する。線10aは、一列の凹部113の全ての頂点11Pの上を通る線であり、且つ凹部113の底辺11E及び11Gと平行な線である。
【0043】
凹部113は、一定の間隔をおいて、直交する2配置方向に連続して配置されている。かかる2配置方向のうち一方の方向Xは底辺11E及び11Gと平行である。この方向Xにおいて、複数の凹部113は一定の間隔11Jをおいて整列している。2配置方向のうちの他方の方向Yは11F及び11Hと平行である。この方向Yにおいて複数の凹部113は一定の間隔11Kをおいて整列している。
【0044】
凹部113のそれぞれを構成する斜面11A〜11Dが平坦部114となす角(斜面11B及び11Dについては、それぞれ図4に示す角11L及び11M)は例えば60°に設定され、これにより、凹部113を構成する正四角錐の頂角、即ち頂点11Pにおいて相対向する斜面がなす角(斜面11B及び11Dがなす角については、図4に示す角11N)も60°となっている。
【0045】
このように、光学シートが、面光源装置の装置出光面にあたる第1の拡散層側の表面において、複数の凹部と、各凹部の周囲に位置する平坦部とを含む構成を有し、さらに光学シートが光拡散性を有することにより、光取り出し効率を高め、且つ観察角度による色味の変化を低減することができ、しかも、外部衝撃により凹凸構造の欠け等が生じるのを防止でき、ひいては装置出光面の機械的強度を向上させることができる。
【0046】
本発明の光学シートは、上記の凹凸構造を有することにより、第1の光拡散層側から出光する光における半球状全方位での色度座標のx座標およびy座標の少なくともいずれかの変位を、上記の構成をとらない場合に比べて、さらに低減させることができる。このため、本発明の光学シートを備える本発明の面光源装置において、観察角度による色味の変化を、さらに抑えることができる。かかる半球状全方位での色度の変位を測定する方法として、例えば装置出光面の法線方向(即ち凹部を無視して巨視的に見た装置出光面に垂直な方向)上に分光放射輝度計を設置し、法線方向を0°とした時その装置出光面を−90〜90°まで回転させられる機構を付与することで、各方向で測定した発光スペクトルから色度座標を算出できるため、その変位を算出できる。
【0047】
凹凸構造を、光学シートに垂直な方向から観察した場合における、平坦部が占める面積と凹部が占める面積との合計に対する、平坦部が占める面積の割合(以下、「平坦部割合」という。)を適宜調節することにより、面光源装置の光取り出し効率を向上させることができる。具体的には、平坦部割合を10〜75%とすることにより、良好な光取り出し効率を得ることができ、且つ装置出光面の機械的強度を高めることができる。
【0048】
第1の光拡散層がその表面に凹凸構造を有する場合において、凹部は、例えば、上に述べた角錐形状に加え、円錐形状、球面の一部の形状、溝状の形状、及びこれらを組み合わせた形状を有しうる。角錐形状は、前記凹部113として例示するように底面が正方形である四角錐としうるが、これに限られず、三角錐、五角錐、六角錐、底面が正方形でない四角錐などの角錐形状とすることもできる。
【0049】
さらに、本願でいう円錐及び角錐は、その頂部が尖った通常の円錐及び角錐のみならず、先端が丸みを帯びた形状、又は平らに面取りされた形状(円錐台又は角錐台状の形状等)をも包含する。例えば、図4に示す凹部113では四角錐の頂部11Pは尖った形状となっているが、これが、図5に示す凹部613の頂部61Pのように丸みを帯びた形状になっていてもよい。また、図6に示す凹部713のように、角錐の頂部に平坦な部分71Pを設け、平らに面取りされた形状とすることもできる。
【0050】
図5に示すように角錐の頂部が丸みを帯びた形状である場合、その頂部61Pと、当該角錐が丸みを帯びず尖った形状となっていた場合の頂部61Qとの高さの差61Rは、当該角錐が丸みを帯びず尖った形状となっていた場合の角錐の高さ61Sの20%以下とすることができる。図6に示すように角錐の頂部が平らに面取りされた形状である場合、平坦な部分71Pと、当該角錐の頂部が平坦で無く尖った形状となっていた場合の頂部71Qとの高さの差71Rは、当該角錐の頂部が平坦で無く尖った形状となっていた場合の角錐の高さ71Sの20%以下とすることができる。
【0051】
凹凸構造における凹部の深さは、特に限定されないが、凹凸構造が形成された表面を様々な方向(出光面と平行な面内の様々な方向)に沿って測定した中心線平均粗さの最大値(Ra(max))として、1〜50μmの範囲内とすることができる。凹凸構造を第1の光拡散層上に形成する場合は、第1の光拡散層の厚さに対して相対的に、好ましい凹部の深さを定めることができる。例えば、第1の光拡散層の材料として、第1の光拡散層の耐久性の維持に有利な硬質の材料を用いた場合、凹凸構造層の厚さを薄くしたほうが、光学シートの可撓性を高めることが可能となり、面光源装置の製造工程における光学シートの取り扱いが容易となる。具体的には、図4に示す凹部の深さ16Dに対する第1の光拡散層111の厚さ16Eの割合は、16D:16E=1:1〜1:3であることが好ましい。
【0052】
本発明において、凹部の斜面と、出光面とがなす角は40〜70°であることが好ましく、45〜60°であることがより好ましい。例えば凹部の形状が、図4、11及び12に示す四角錐である場合、その頂角(図4における角11P)は、60〜90°となることが好ましい。また、観察角度による色味の変化を最小限にしつつ光取り出し効率も高めるという観点からは、斜面と透明基材の面とがなす角は大きいほうが好ましく、具体的には例えば55°以上とすることが好ましく、60°以上とすることがさらにより好ましい。この場合、かかる角の上限は、第1の光拡散層の耐久性の維持を考慮し、70°程度とすることができる。
【0053】
凹部の形状が、頂部において丸みを帯びた又は平らに面取りされた角錐形状、円錐形状又は溝状の形状である場合は、当該丸みを帯びた部分又は面取りされた部分を除く斜面の角度を、斜面の角度とする。例えば、図5及び図6に示す例では、面613a、613b、713a及び713bを、角錐の斜面とする。斜面の角度をこのような角度とすることにより、光取り出し効率を高めることができる。凹凸構造の斜面は、必ずしも全てが同じ角度である必要は無く、上記範囲内で、異なる角度を有する斜面が共存していてもよい。なお、円錐形状の斜面と透明基材の面とがなす角とは、かかる円錐の母線と透明基材の面とがなす角とすることができる。
【0054】
第1の光拡散層の表面において、複数の凹部は、任意の態様で配列することができる。例えば、複数の凹部を、表面上の2以上の方向に沿って配列することができる。より具体的には、図1及び図3に示した凹部113のように、直交する2方向に沿って配列することができる。
【0055】
2以上の方向に凹部を配列した場合において、それらのうち1方向以上の方向に、隣り合う凹部間の隙間を設け、かかる隙間により平坦部を構成することができる。例えば、図3に示す凹部113の配列では、直交する2方向において、それぞれ間隔11J及び11Kの隙間を設けて、かかる隙間により平坦部114を構成している。このような構成を採用することにより、良好な光取り出し効率と、シート表面の機械的強度とを両立させることができる。
【0056】
(製造方法)
本発明の光学シートは、例えば、第1の光拡散層を形成するのに適した樹脂組成物(1)、及び第2の光拡散層を形成するのに適した塗工液(2)を調製し、これらを用いて透明基材の両面のそれぞれに第1の光拡散層及び第2の光拡散層を形成することにより製造することができる。
【0057】
(第1の光拡散層の形成方法)
第1の光拡散層を形成するのに適した樹脂組成物(1)としては、上に列挙した、光拡散層の材料の樹脂であって硬化前のもの、及び拡散剤を含む組成物を用いることができる。樹脂組成物(1)は、必要に応じて、溶媒を含むことができる。しかしながら、樹脂組成物(1)は、溶媒を添加せず調製し、形成工程において揮発することが必要な成分が、少ないか又は存在しない組成物とすることが、後述するフォトポリマー法を円滑に行いうる等の観点から好ましい。
【0058】
一方、このような溶媒を添加せず調製した樹脂組成物(1)は、塗布して得られる塗膜の厚さムラが大きくなる傾向にある。したがって、一般的に、このような材料を光学シートの一部の層の材料として採用した場合、厚さが不均一になり、面内の透過率の均一さが低減する等の不具合を生じやすい。しかしながら、本発明の光学シートにおいては、第1の光拡散層及び第2の光拡散層として、後述する所定のヘイズ比を有するものを採用することにより、第1の光拡散層の拡散性が低くても、所定の拡散性能を有する光学シートとすることができ、その結果、種々の良好な特性を有し、且つフォトポリマー法により容易に製造しうる光学シートとすることができる。
【0059】
樹脂組成物(1)を、透明基材の面上に塗布して塗膜を得、もし必要であれば塗膜中の溶媒を揮発させ、さらに必要に応じてエネルギー線の照射等による硬化処理を行うことにより、第1の光拡散層を得ることができる。
【0060】
第1の光拡散層がその表面に凹凸を有する場合、かかる凹凸構造の形成は、所望の形状を有する金型等の型を調製し、前記塗膜を得た後の任意の段階で前記型の形状を転写することにより行うことができる。
【0061】
より具体的には、前記塗膜を得た後硬化処理を行う前に、フォトポリマー法による凹凸構造の形成を行うことが好ましい。即ち、形成した前記塗膜に型を当て、その状態で塗膜を硬化させ、凹凸構造を有する硬化した層を形成することが好ましい。この場合、樹脂組成物(1)としては、紫外線等のエネルギー線により硬化しうる組成物を用いることが好ましい。かかる樹脂組成物(1)を、透明基材上に塗布して塗膜を得、当該塗膜に型を当てた状態で、塗布面の裏側(透明基材の、樹脂組成物(1)を塗布した面とは反対側)に位置する光源から、紫外線等のエネルギー線を照射し、樹脂組成物(1)を硬化させ、その後型を剥離することにより、型の凹凸構造が反転した形状の凹凸構造を有する、第1の光拡散層を得ることができる。
【0062】
(第2の光拡散層の形成方法)
第2の光拡散層を形成するのに適した塗工液(2)としては、上に列挙した、光拡散層の材料の樹脂であって硬化前のもの、及び拡散剤を含む組成物を用いることができる。塗工液(2)は、好ましくは、さらに溶媒を含むことができる。かかる溶媒としては、トルエン、ヘキサン、シクロヘキサン、メチルエチルケトン、酢酸エチル等を挙げることができる。塗工液(2)を、かかる溶媒を含む組成物とすることにより、第2の光拡散層を、その拡散性が高いものであっても、均一な厚みで製造することができる。その結果、透過する光の観察角度による色味の変化の少なさと、面内の透過率の均一さを両立した光学シートを容易に得ることができる。塗工液(2)が、樹脂、拡散子及び溶媒を含む場合、塗工液(2)全体における溶媒の割合は、50〜95重量%とすることができる。
【0063】
塗工液(2)を、透明基材の面上に塗布し、必要に応じて溶媒を揮発させ、さらに必要に応じてエネルギー線の照射等による硬化処理を行うことにより、第2の光拡散層を得ることができる。溶媒の揮発は、例えば所定時間、所定の温度範囲で加熱することにより行うことができる。加熱温度は、40〜200℃であることが好ましく、40〜140℃であることがより好ましい。加熱時間は、15〜600sであることがより好ましい。
【0064】
第2の光拡散層を、粘着層としての機能をも有する層として形成する場合は、第2の光拡散層の形成後に、必要に応じて、第2の光拡散層上にセパレータを貼付することができる。面光源装置の製造にあたり、本発明の光学シートを他の層に貼付する直前に、セパレータを剥離することにより、容易な貼付を達成することができる。
【0065】
<面光源装置>
本発明の面光源装置は、前記本発明の光学シートと、有機EL素子とを備える。
図7は、図1及び図2に示した本発明の光学シート100を備える、本発明の面光源装置の一例を模式的に示す斜視図であり、図8は、図7に示す面光源装置10を、図7中の線1a−1bを通り、透明基材の面方向と垂直な面で切断した断面を示す断面図である。
【0066】
面光源装置10は、矩形の平板状の構造を有する装置であり、ガラスなどの材料からなる基板131と、基板131の装置出光面側の表面13aに接して設けられた本発明の光学シート100と、基板131の他方の面13bに接して設けられた有機EL素子140とを備える。面光源装置10はさらに、任意の構成要素として、有機EL素子140の、装置出光面とは反対側の表面145側に封止基板151を有する。
【0067】
有機EL素子140は、基板131に近い側から順に、第1の電極層141と、発光層142と、第2の電極層143とを備える。第1の電極層141は透明電極であり、第2の電極層143は反射電極である。このような構成であるため、発光層142からの光は、第1の電極層141を透過するか、又は第2の電極層143で反射され、発光層142及び第1の電極層141を透過して、光学シート100側に向かう。
【0068】
光学シート100は、第1の光拡散層111が面光源装置10の上面(即ち面光源装置10の出光面側の最外層)に位置し、第2の光拡散層112が基板131に接するよう設けられている。第2の光拡散層112は、粘着層としての機能をも有し、これにより、光学シート100は基板131に粘着している。
【0069】
有機EL素子140から出光した光の多くは、第1及び第2の光拡散層により拡散されながら、第2の光拡散層112、透明基材層121、及び第1の光拡散層111を、この順に透過して、表面10Uから出光する。したがって、光学シート100の表面10Uは、面光源装置10の装置出光面となる。
【0070】
このように、発光層142からの光が、光学シート100を透過して出光することにより、光が拡散された状態で出光され、その結果、上で説明した通り、観察角度による出光面の色味の変化を抑制することができる。また、上で説明した通り光学シート100の面内の透過率の均一さが高いため、面光源装置10の出光面内の輝度の均一さが高い。さらに、光学シート100の表面10Uの凹凸構造により、光取り出し効率を向上させることができる。
【0071】
(有機EL素子)
前記有機EL素子140として例示するように、本発明の面光源装置に用いる有機EL素子は、2層以上の電極層と、これらの電極層間に設けられ、電極から電圧を印加されることにより発光する発光層と、を備える素子とすることができる。
【0072】
有機EL素子は、基板上に素子を構成する電極、発光層等の層を形成し、さらにそれらの層を覆う封止部材を設け、基板と封止部材で発光層等の層を封止した構成とされるのが一般的である。通常、ここでいう基板側から出光する素子はボトムエミッション型、封止部材側から出光する素子はトップエミッション型と呼ばれる。本発明の面光源装置は、これらのいずれであってもよく、ボトムエミッション型の場合、基板の、有機EL素子が形成された面と反対側の面上に本発明の光学シートを設けることができる。一方トップエミッション型の場合、本発明の光学シート、又は本発明の光学シートと任意の封止能を有する層とを組み合わせ、これを封止部材として面光源装置を構成することができる。
【0073】
本発明において、有機EL素子を構成する発光層としては、特に限定されず既知のものを適宜選択することができる。発光層中の発光材料は1種類に限られず、また発光層も1層に限られず、光源としての用途に適合すべく、一種の層単独又は複数種類の層の組み合わせとすることができる。これにより、白色又はそれに近い色の光を発光するものとしうる。
【0074】
有機EL素子はさらに、電極間に、発光層に加えてホール注入層、ホール輸送層、電子輸送層、電子注入層及びガスバリア層等の他の層をさらに有することもできる。有機EL素子はさらに、電極に通電するための配線、発光層の封止のための周辺構造等の任意の構成要素を備えることもできる。
【0075】
有機EL素子の電極は、特に限定されず既知のものを適宜選択することができる。図7及び図8に示す有機EL素子140のように、出光面構造層側の電極を透明電極とし、反対側の電極を反射電極とすることにより、出光面構造層側に出光する有機EL素子とすることができる。また、両方の電極を透明電極とし、さらに出光面構造層と反対側に反射部材を有することにより、出光面構造層側への出光を達成することもできる。
【0076】
電極及びその間に設ける層を構成する材料としては、特に限定されないが、具体例として下記のものを挙げることができる。
透明電極の材料としてはITO等を挙げることができる。
正孔注入層の材料としてはスターバースト系芳香族ジアミン化合物等を挙げることができる。
正孔輸送層の材料としてはトリフェニルジアミン誘導体等を挙げることができる。
黄色発光層のホスト材料としては同じくトリフェニルジアミン誘導体等を挙げることができ、黄色発光層のドーパント材料としてはテトラセン誘導体等を挙げることができる。
緑色発光層の材料としては、ピラゾリン誘導体などがあげられる。
青色発光層のホスト材料としてはアントラセン誘導体等を挙げることができ、青色発光層のドーパント材料としてはペリレン誘導体等を挙げることができる。
赤色発光層の材料としては、ユーロピウム錯体などを上げることができる。
電子輸送層の材料にはアルミニウムキノリン錯体(Alq)等を挙げることができる。
陰極材料にはフッ化リチウムおよびアルミニウムをそれぞれ用い、これらを順次真空成膜により積層させたものを挙げることができる。
【0077】
上記のもの又はその他の発光層を適宜組み合わせて積層型又はタンデム型と呼ばれる、補色関係にある発光色を発生する発光層を得ることができる。補色関係の組み合わせは、黄/青、又は緑/青/赤等とすることができる。
【0078】
(用途)
本発明の面光源装置は、照明器具及びバックライト装置等の用途に用いうる。
前記照明器具は、本発明の面光源装置を光源として有し、さらに、光源を保持する部材、電力を供給する回路等の任意の構成要素を含むことができる。前記バックライト装置は、本発明の面光源装置を光源として有し、さらに、筐体、電力を供給する回路、出光する光をさらに均一にするための拡散板、拡散シート、プリズムシート等の任意の構成要素を含むことができる。前記バックライト装置の用途は、液晶表示装置等、画素を制御して画像を表示させる表示装置、並びに看板等の固定された画像を表示させる表示装置のバックライトとして用いることができる。
【0079】
(その他)
本発明は、前記具体例には限定されず、本願の特許請求の範囲及びその均等の範囲内で、任意の変更を施すことができる。
例えば、本発明の光学シートは、透明基材、第1の光拡散層及び第2の光拡散層に加えて任意の層をさらに含むものであってもよい。かかる任意の層は、透明基材、第1の光拡散層及び第2の光拡散層の間に位置する層のみならず、例えば第1の光拡散層の表面の凹凸構造の上にさらに設けられたコーティング層であってもよく、かかるコーティング層が、本発明の面光源装置の装置出光面の凹凸構造を規定するものであってもよい。
また、上記実施形態の例示において、第1の光拡散層の表面の全面に分布する凹部として、同一の形状からなるもののみが分布しているものを示したが、第1の光拡散層の表面において、異なる形状の凹部が混在していてもよい。例えば、大きさの異なる角錐形状の凹部が混在していたり、角錐形状の凹部と円錐形状の凹部が混在していたり、複数の角錐が組み合わされた形状のものと単純な角錐形状とが混在していてもよい。
また、上記具体例において、凹凸構造を構成する平坦部の幅、及び隣り合う平坦部の間隔については、常に一定のものを示したが、平坦部の幅が狭いものと広いものとが混在していてもよく、また、平坦部の間隔が狭い箇所と広い箇所とが混在していてもよい。そのようにして、平坦部の高さ、幅、及び間隔の1以上の要素において、出射光の干渉をもたらす差異を超える寸法差が設けられている態様とすることにより、干渉による虹ムラを抑制することができる。
また、上記具体例中の反射電極層を、透明電極層と反射層に置き換えても、反射電極層と同様の効果を有する装置を構成することができる。
【実施例】
【0080】
以下において、実施例及び比較例を参照して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
実施例及び比較例において、ヘイズの測定は、濁度計(NDH−300A 日本電色工業社製)を用いて測定した。
【0081】
<実施例1>
(1−1.樹脂組成物(1))
ウレタンアクリレートを主成分とするUV硬化樹脂(屈折率1.54)に直径2μmの粒子(シリコーン樹脂)を添加し、撹拌して粒子を分散させ、第1の光拡散層の材料となる樹脂組成物(1)を調製した。粒子の含有割合は、樹脂組成物(1)全量中の10重量%とした。UV硬化樹脂の粘度は400cPであったのに対し、樹脂組成物(1)の粘度は500cPであった。
【0082】
(1−2.塗工液(2))
メチルシクロヘキサンと酢酸エチルを8:2(重量比)で混合した溶媒に、酸変性ポリオレフィン樹脂(屈折率1.49)を主成分とする樹脂を溶解し、さらに直径2μmの粒子(シリコーン樹脂)を添加し、撹拌して粒子を分散させ、第2の光拡散層の材料となる塗工液(2)を調製した。酸変性ポリオレフィン樹脂の濃度は、塗工液(2)全量中15重量%とした。粒子の濃度は固形分全量(酸変性ポリオレフィン樹脂と粒子との合計)中15重量%とした。
【0083】
(1−3.粘着層)
塗工液(2)を基材フィルム(ポリエステルフィルム)に2回に分けて塗布し、溶媒を飛ばして厚さ45μmの粘着層(即ち第2の光拡散層)を形成し、さらにセパレータをラミネートして、(基材フィルム)−(粘着層)−(セパレータ)の層構成を有する、粘着層付き基材フィルムを得た。この粘着層付き基材フィルムのヘイズ(即ちヘイズx2)を測定したところ、78%であった。
【0084】
(1−4.第1の光拡散層の形成)
粘着層付き基材フィルムの、基材フィルムが露出する面上に、樹脂組成物(1)を15μm厚で塗布して塗膜を形成し、かかる塗膜上に金属モールドを押し付けた。この状態で、セパレータ、粘着層及び基材フィルムを透過して、樹脂組成物(1)の塗膜に、紫外線を1J/cm照射し、塗膜を硬化させ、第1の光拡散層を形成し、(第1の光拡散層)−(基材フィルム)−(粘着層)−(セパレータ)の層構成を有する光学シート1を得た。金属モールドの表面の形状は、頂角50°、底辺15μmの正四角錐が隙間無く並んだ形状であり、得られた第1の光拡散層の表面には、かかる四角錐の形状が反転した形状のくぼみが設けられた。また、得られた第1の光拡散層の厚みは18μmであった。
また、得られた光学シート1の光透過率のムラを、輝度計(BM−5A トプコン社製)をムラ部に沿ってスキャンすることにより測定した。結果を表1に示す。
【0085】
(1−5.第1の光拡散層のヘイズ)
上記(1−4)とは別に、(1−3)で用意したものと同一の基材フィルム上に、(1−4)と同様に第1の光拡散層を設けて積層体を作製し、さらに、第1の光拡散層の正四角錐状のくぼみ内に、樹脂組成物(1)を構成するUV硬化樹脂と同じ屈折率を有する樹脂を満たして前記同様にして硬化させて、平滑な面を形成した他の拡散層を構成し、この状態で、当該他の拡散層のヘイズ(即ちヘイズx1)を測定したところ、80%であった。したがって光学シート1は、式(1)を満たしていた。
【0086】
(1−6.有機EL素子の形成)
厚さ0.7mmのガラス基板の一方の主面に、透明電極層100nm、ホール輸送層10nm、黄色発光層20nm、青色発光層15nm、電子輸送層15nm、電子注入層1nm、及び反射電極層100nmを、この順に形成した。ホール輸送層から電子輸送層までは全て有機材料により形成した。黄色発光層及び青色発光層はそれぞれ異なる発光スペクトルを有している。
【0087】
透明電極層から反射電極層までの各層を形成した材料は、それぞれ下記の通りである:
・透明電極層;錫添加酸化インジウム(ITO)
・ホール輸送層;4,4’−ビス[N−(ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(α−NPD)
・黄色発光層;ルブレン1.5重量%添加 α−NPD
・青色発光層;イリジウム錯体10重量%添加 4,4’−ジカルバゾリル−1,1’−ビフェニル(CBP)
・電子輸送層;フェナンスロリン誘導体(BCP)
・電子注入層;フッ化リチウム(LiF)
・反射電極層;Al
【0088】
透明電極層の形成方法は、ITOターゲットとした反応性スパッタリング法にて行い、表面抵抗を10Ω/□以下とした。また、ホール注入層から反射電極層までの形成は、真空蒸着装置内に透明電極層を既に形成したガラス基板を設置し、上記のホール輸送層から反射電極層までの材料を抵抗加熱式により順次蒸着させることにより行なった。系内圧は5x10−3 Paで、蒸発速度は0.1〜0.2nm/sで行った。
【0089】
さらに、電極層に通電のための配線を取り付け、さらにホール輸送層から反射電極層までを封止部材により封止し、有機EL素子を得た。
【0090】
(1−7.面光源装置)
上記(1−4)で得た光学シートのセパレータを剥離し、これを(1−6)で得た有機EL素子に貼付した。貼付は、露出した粘着層が有機EL素子のガラス基板に粘着するように行った。これにより、面光源装置を得た。得られた面光源装置は、光学シート1の第1の光拡散層から白色の光を出光しうる長方形の出光面を有していた。
【0091】
(1−8.評価)
上記(1−7)で得られた面光源装置について、以下の通り、観察角度の変化による色ムラを測定した。
装置出光面の法線方向に分光放射輝度計(トプコン社製BM−5)を設置し、面光源装置100mA/mの定電流を印加し、出光面を回転させ、出光面に対する分光放射輝度計の観察方向を変化させ、色度(x,y)を測定した。観察方向は、出光面の長辺に平行な方向へ、正面(法線方向)を0°としたときに−90〜90°の範囲で変更させ、観察角度±60°の範囲内での色度(x,y)の変化量Δxyを求めた。結果を表1に示す。
【0092】
<比較例1>
(1−2)の塗工液(2)の調製において粒子を添加しなかった他は、実施例1と同様にして、光学シート及び面光源装置を得て、評価した。評価結果を表1に示す。
【0093】
<比較例2>
粒子の含有割合を樹脂組成物(1)全量中の15重量%とした他は、実施例1の(1−1)と同様にして、樹脂組成物(1)を得た。この樹脂組成物(1)の粘度は700cPであった。
この樹脂組成物(1)を用い、且つ(1−2)の塗工液(2)の調製において粒子を添加しなかった他は、実施例1と同様にして、光学シート及び面光源装置を得て、評価した。評価結果を表1に示す。
【0094】
<比較例3>
実施例1の(1−6)で得た有機EL素子をそのまま面光源装置として、(1−8)と同様に色度(x,y)の変化量Δxyを測定した。結果を表1に示す。
【0095】
【表1】
【0096】
表1の結果から明らかな通り、ヘイズx1及びx2並びに光学シート全体のヘイズが本発明の所定の範囲内である実施例1においては、粘度の高い樹脂組成物(1)(表面の硬度を高め、且つフォトポリマー法による成形で光取り出し効率を高めるのには有利であるが、透過率ムラが発生しやすい)を用いているにもかかわらず、透過率ムラが低く、且つ色ムラも低い結果が得られた。
【0097】
これに対して、ヘイズx2が低く本発明の要件を満たさない比較例1では透過率ムラ及び色ムラが大きかった。
【0098】
また、光学シート全体のヘイズは実施例1と同等であるがヘイズx1とx2との関係が本発明の要件を満たさない比較例2では、色ムラは低減できたものの、樹脂組成物(1)の拡散性が高く且つ粘度が高く塗布ムラが生じやすいことに起因して、透過率ムラが大きく発生した。比較例2の透過率ムラの測定値は比較例1と同等の4.5%であったが、出光面の目視の観察結果では、比較例1に比べて比較例2のほうが、ムラが大きい傾向が観察された。
【0099】
<参考例1>
樹脂組成物(1)と、塗工液(2)に添加する粒子の含有割合を種々変更した他は、実施例1と同様に操作し、第1の光拡散層及び第2の光拡散層のヘイズの値が様々に異なる光学シート及び面光源装置を作製した。それぞれのヘイズx1、x2及び全体のヘイズは、表2の通りである。
【0100】
これらについて、第1の光拡散層側の表面に塗工ムラが観察されるか否かについて、目視で、下記の評価基準に従って評価した。
不良:塗工ムラが観察される(概ね、光透過率ムラ3%以上に相当)。
良:塗工ムラが観察されない(概ね、光透過率ムラ3%未満に相当)。
【0101】
さらに、これらについて、色ムラが改善されているかについて、併せて目視で観察し、下記の評価基準に従って評価した。
不良:色ムラが観察される。
良:色ムラが観察されない。
【0102】
これらの結果を表2に示す。
【0103】
【表2】
【0104】
各欄における数値及び記号は、それぞれ以下のものを示す。
最上段:f(x1)/(f(x1)+f(x2))の値
上から2段目:f(x1)+f(x2)
上から3段目:塗工ムラ評価結果
最下段:色ムラ評価結果。
【0105】
表2の結果より、f(x1)/(f(x1)+f(x2))の値及びf(x1)+f(x2)の値が本願所定範囲内である場合において、特に、塗工ムラの低さ及び色ムラの低さが両立する光学シートが得られることが分かる。
【符号の説明】
【0106】
10:面光源装置
10U:シート表面
11A〜11D:斜面
11E〜11H:凹部底辺
111:第1の光拡散層
112:第2の光拡散層
113:凹部
114:平坦部
121:透明基板
131:基板
140:有機EL素子
141:第1の電極層
142:発光層
143:第2の電極層
151:封止基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9