(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5850758
(24)【登録日】2015年12月11日
(45)【発行日】2016年2月3日
(54)【発明の名称】研削方法
(51)【国際特許分類】
B24B 49/04 20060101AFI20160114BHJP
B24B 7/04 20060101ALI20160114BHJP
【FI】
B24B49/04 Z
B24B7/04 B
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-23755(P2012-23755)
(22)【出願日】2012年2月7日
(65)【公開番号】特開2013-158886(P2013-158886A)
(43)【公開日】2013年8月19日
【審査請求日】2015年1月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100142804
【弁理士】
【氏名又は名称】大上 寛
(72)【発明者】
【氏名】酒井 敏行
【審査官】
亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−202749(JP,A)
【文献】
特開2009−131950(JP,A)
【文献】
特開2001−179585(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 49/04
B24B 7/00 − 7/04
B24B 27/00
B24B 29/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
研削ホイールを有する研削手段で長尺被加工物を研削する研削方法であって、
長尺被加工物を保持手段で保持する保持ステップと、
該保持手段で保持された長尺被加工物の一端と他端の上面高さ位置を測定し、長尺被加工物上面の傾斜方向を検出するとともに該一端と該他端の高さ位置と長尺被加工物の長辺の長さとから傾斜度を検出する傾斜検出ステップと、
該傾斜検出ステップを実施した後、該保持手段を水平方向で回転させて該傾斜検出ステップで検出した長尺被加工物の該一端と該他端のうち高さ位置の低いほうを該研削手段に向けるとともに、該保持手段で保持された長尺被加工物の長手方向と該保持手段が該研削手段に対して水平方向で接近移動する移動方向と一致させる保持手段回転ステップと、
該保持手段回転ステップを実施した後、回転する研削ホイールを有する該研削手段を所定高さ位置に位置付けるとともに、長尺被加工物を保持した該保持手段を該研削手段に対して水平方向に接近移動させることにより長尺被加工物の上面を研削する研削ステップと、を具備し、
該研削ステップでは、該保持手段を該研削手段に対して水平方向に接近移動させながら、該傾斜検出ステップで検出された長尺被加工物上面の傾斜度に基づいて、該研削手段を連続的に上昇させて長尺被加工物上面の傾斜に倣って研削することを特徴とする研削方法。
【請求項2】
前記長尺被加工物は基台上に貼着されたセラミックから構成される請求項1記載の研削方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長尺の被加工物を研削する研削方法に関する。
【背景技術】
【0002】
IC、LSI等の数多くのデバイスが表面に形成され、且つ個々のデバイスが分割予定ライン(ストリート)によって区画された半導体ウエーハは、研削装置によって裏面が研削されて所定の厚みに加工された後、切削装置(ダイシング装置)によって分割予定ラインを切削して個々のデバイスに分割され、分割されたデバイスは携帯電話、パソコン等の各種電気機器に利用されている。
【0003】
ウエーハ等の被加工物を研削する研削装置は、被加工物を保持するチャックテーブルと、チャックテーブルに保持された被加工物を研削する研削砥石が環状に配設された研削ホイールを回転可能に支持する研削ユニットと、研削ホイールを被加工物に接近する方向に研削送りする研削送り機構と、チャックテーブルを研削ユニットに対して接近及び離反する方向に直線移動するチャックテーブル移動機構とを具備しており、被加工物を所定の厚みに研削加工することができる。
【0004】
研削装置で研削する被加工物は半導体ウエーハ、光デバイスウエーハ等のウエーハ形状の被加工物が多いが、光学部品に使用するバー形状のガラスや樹脂、超音波振動子となる例えばバー形状のPZP(チタン酸ジルコン酸鉛)等のセラミック製長尺被加工物を所定の厚みに薄化するためにも、研削装置が用いられている。
【0005】
長尺被加工物はSUS等の金属から形成された基台上にワックス等により貼着され、研削装置の保持テーブルにねじ止め等により固定される。ここで、研削装置の保持テーブルと保持テーブルにねじ止めされた基台の組み合わせを被加工物を保持する保持ユニットと称すると、保持ユニットを回転させずに研削ユニットに接近するY軸方向に直線移動させながら所定高さに位置付けた研削ホイールにより長尺被加工物の研削が実施される。このとき、研削ホイールは長尺被加工物に対して研削送りされずに所定高さに位置付けられたまま長尺被加工物の研削が遂行される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−187207号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、研削装置の保持ユニットで長尺被加工物を保持する際に基台と保持テーブルとの間に異物を挟みこんだ場合、被加工物の上面が一端から他端へと傾斜する。この状態で所定の高さに位置付けた研削ホイールで長尺被加工物を研削すると、研削された長尺被加工物の厚みが均一にならず問題となる。
【0008】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、保持ユニット上に保持された長尺被加工物の上面が傾斜している状態の長尺被加工物を均一な厚みへと研削可能な研削方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によると、研削ホイールを有する研削手段で長尺被加工物を研削する研削方法であって、長尺被加工物を保持手段で保持する保持ステップと、該保持手段で保持された長尺被加工物の一端と他端の上面高さ位置を測定し、長尺被加工物上面の傾斜方向を検出するとともに該一端と該他端の高さ位置と長尺被加工物の長辺の長さとから傾斜度を検出する傾斜検出ステップと、該傾斜検出ステップを実施した後、該保持手段を水平方向で回転させて該傾斜検出ステップで検出した長尺被加工物の該一端と該他端のうち高さ位置の低いほうを該研削手段に向けるとともに、該保持手段で保持された長尺被加工物の長手方向と該保持手段が該研削手段に対して水平方向で接近移動する移動方向と一致させる保持手段回転ステップと、該保持手段回転ステップを実施した後、回転する研削ホイールを有する該研削手段を所定高さ位置に位置付けるとともに、長尺被加工物を保持した該保持手段を該研削手段に対して水平方向に接近移動させることにより長尺被加工物の上面を研削する研削ステップと、を具備し、該研削ステップでは、該保持手段を該研削手段に対して水平方向に接近移動させながら、該傾斜検出ステップで検出された長尺被加工物上面の傾斜度に基づいて、該研削手段を連続的に上昇させて長尺被加工物上面の傾斜に倣って研削することを特徴とする研削方法が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明の研削方法によると、保持手段で保持された長尺被加工物表面の傾斜状態を検出した後、傾斜に沿って研削手段の高さ位置を変化させつつ長尺被加工物を研削手段に対して直線移動させることで長尺被加工物上面を研削するため、長尺被加工物を均一な厚みへと研削することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の研削方法を実施するのに適した研削装置の斜視図である。
【
図5】保持手段回転ステップを説明する平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。
図1を参照すると、本発明の研削方法を実施するのに適した研削装置2の外観斜視図が示されている。4は研削装置2のベースであり、ベース4の後方にはコラム6が立設されている。コラム6には、上下方向に伸びる一対のガイドレール8が固定されている。
【0013】
この一対のガイドレール8に沿って研削ユニット(研削手段)10が上下方向に移動可能に装着されている。研削ユニット10は、スピンドルハウジング12と、スピンドルハウジング12を保持する支持部14を有しており、支持部14が一対のガイドレール8に沿って上下方向に移動する移動基台16に取り付けられている。
【0014】
研削ユニット10は、スピンドルハウジング12中に回転可能に収容されたスピンドル18と、スピンドル18を回転駆動するモータ20と、スピンドル18の先端に固定されたホイールマウント22と、ホイールマウント22に着脱可能に装着された研削ホイール24とを含んでいる。
【0015】
研削装置2は、研削ユニット10を一対の案内レール8に沿って上下方向に移動するボールねじ30とパルスモータ32とから構成される研削ユニット送り機構34を備えている。パルスモータ32を駆動すると、ボールねじ30が回転し、移動基台16が上下方向に移動される。
【0016】
ベース4の上面には凹部4aが形成されており、この凹部4aに保持テーブル機構36が配設されている。保持テーブル機構36は保持テーブル38を有し、図示しない移動機構により被加工物着脱位置Aと、研削ユニット10に対向する研削位置Bとの間でY軸方向に移動される。
【0017】
保持テーブル38は矩形状を呈しており、四隅にねじ穴40が形成されている。保持テーブル38はY軸方向に移動可能且つ回転可能に構成されている。42は蛇腹である。ベース4の前方側には、研削装置2のオペレータが研削条件等を入力する操作パネル44が配設されている。
【0018】
11は本発明の研削方法で研削されるバー形状の長尺被加工物であり、例えばSUS(ステンレス鋼)から形成された基台50上にワックス等により接着されて研削装置2の保持テーブル38上に搭載される。長尺被加工物11は、超音波振動子となるバー形状のPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)等のセラミック、光学部品に使用されるバー形状のガラス、樹脂等から構成される。
【0019】
基台50は保持テーブル38の形状に対応する矩形状をしており、その四隅に取付穴52が形成されている。長尺被加工物11を研削装置2で研削するには、長尺被加工物11を基台50に固定し、更に基台50を保持テーブル38にねじ止めすることにより、長尺被加工物11を保持テーブル38上に固定する。
【0020】
このとき、基台50と保持テーブル38間に塵等の異物13(
図2参照)を挟み込んだ状態で基台50を保持テーブル38にねじ止めした場合には、
図2に示すように、長尺被加工物11が保持テーブル38上に水平状態から傾いて保持される。本明細書では、長尺被加工物11は基台50を介して保持テーブル38上に保持されるため、基台50と保持テーブル38の組み合わせを保持ユニットと称する。
【0021】
基台50を保持テーブル38にねじ止めする実施形態に替えて、基台50と同一サイズの保持面を有する保持テーブルを用意し、該保持テーブルで基台50を吸引保持するようにしてもよい。
【0022】
本発明の研削方法では、まず、長尺被加工物11を被加工物着脱位置Aに位置付けられた保持テーブル38で保持する保持ステップを実施する。即ち、長尺被加工物11がワックス等により固定された基台50を保持テーブル38にねじ止めして固定する。
【0023】
次いで、
図2に示すように、保持テーブル38で保持された長尺被加工物11の一端11aと他端11bの上面高さ位置を高さ位置検出器54で測定する。高さ位置検出器54としては、例えば市販されている超音波式の高さ位置検出器を採用することができる。
【0024】
或いは、レーザー式の高さ位置検出器、接触式高さ位置検出器で長尺被加工物11の上面高さ位置を測定するようにしてもよい。13は保持テーブル38と基台50との間に挟まれた異物である。
【0025】
図3に示すように、高さ位置検出器54で測定した一端11aと他端11bとの高さの差がhであるとすると、高さの差hと長尺被加工物11の長辺の長さLとから保持テーブル38で保持された長尺被加工物11の傾斜度を検出することができる。更に、
図4に示すように、保持テーブル38で保持された長尺被加工物11のY軸方向からの傾斜方向Aを検出する傾斜検出ステップを実施する。
【0026】
傾斜検出ステップで保持テーブル38で保持された長尺被加工物11上面の傾斜方向Aを検出するとともに、長尺被加工物11の一端11aと他端bの高さ位置と長尺被加工物11の長辺の長さLとから傾斜度を検出してから、保持テーブル38を水平方向で回転させて傾斜検出ステップで検出した長尺被加工物11の一端11aと他端11bのうち高さ位置の低いほうを研削ユニット10に向けるとともに、
図5に示すように、保持テーブル38で保持された長尺被加工物11の長手方向をY軸方向に、即ち保持テーブル38が研削ユニット10に対して水平方向で接近移動する移動方向(
図5で矢印Y1方向)とを一致させる保持テーブル回転ステップを実施する。
【0027】
保持テーブル回転ステップを実施した後、長尺被加工物11の上面を研削する研削ステップを実施する。この研削ステップでは、
図6に示すように、研削装置の保持テーブル38で基台50を介して長尺被加工物11を保持する。
図6において、研削ホイール24は、環状のホイール基台26と、ホイール基台26の自由端部に環状に固着された複数の研削砥石28とから構成される。
【0028】
この研削ステップでは、例えば6000rpm等の高速で回転する研削ホイール24を有する研削ユニット10を所定の高さ位置に位置付けるとともに、長尺被加工物11を保持した保持テーブル38を研削ユニット10に対して水平方向に矢印Y1で示すように接近移動させる。
【0029】
そして、傾斜検出ステップで検出した長尺被加工物11上面の傾斜度に基づいて、研削ユニット10を連続的に上昇させながら保持テーブル18を矢印Y1方向に移動させることにより、長尺被加工物11の上面を検出した傾斜に倣って研削する。
【0030】
例えば、1回の研削で長尺被加工物11の上面を5μm研削できるとすると、上述した研削ステップを複数回繰り返すことにより、長尺被加工物11を一端11aから他端11bに渡り均一な所望の厚さに研削することができる。
【0031】
本発明の研削ステップでは、研削送り機構34により研削ホイール24を所定の研削送り速度で下方に研削送りしながら被加工物を研削する通常の研削方法と相違して、研削ホイール24を所定の高さ位置に位置付けてから、傾斜検出ステップで検出した長尺被加工物11の上面の傾斜度に基づいて研削ホイール24を連続的に上昇させながら研削を実施する。このとき、保持テーブル38は回転させずに、Y軸方向に直線移動させながら研削を実施する。
【符号の説明】
【0032】
2 研削装置
10 研削ユニット
11 長尺被加工物
13 異物
24 研削ホイール
28 研削砥石
38 保持テーブル
40 ねじ穴
50 基台
52 取付穴
54 高さ位置検出器