特許第5850946号(P5850946)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5850946高い色安定性を有するN,N−ジアルキルエタノールアミンの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5850946
(24)【登録日】2015年12月11日
(45)【発行日】2016年2月3日
(54)【発明の名称】高い色安定性を有するN,N−ジアルキルエタノールアミンの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 213/10 20060101AFI20160114BHJP
   C07C 213/04 20060101ALI20160114BHJP
   C07C 215/08 20060101ALI20160114BHJP
【FI】
   C07C213/10
   C07C213/04
   C07C215/08
【請求項の数】16
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-543788(P2013-543788)
(86)(22)【出願日】2011年12月15日
(65)【公表番号】特表2014-506243(P2014-506243A)
(43)【公表日】2014年3月13日
(86)【国際出願番号】EP2011072936
(87)【国際公開番号】WO2012080409
(87)【国際公開日】20120621
【審査請求日】2014年12月12日
(31)【優先権主張番号】10195662.1
(32)【優先日】2010年12月17日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】フランク−フリードリヒ パーぺ
(72)【発明者】
【氏名】ヨハン−ペーター メルダー
(72)【発明者】
【氏名】アルフレート クラウゼ
(72)【発明者】
【氏名】ローラント ボウ チェディット
(72)【発明者】
【氏名】マーティン ルートロフ
【審査官】 水島 英一郎
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2004/0068143(US,A1)
【文献】 特開昭54−024807(JP,A)
【文献】 特開2000−072725(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 213/10
C07C 213/04
C07C 215/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高い色安定性を有する式I
【化1】
[式中、R1及びR2は互いに独立してC1〜C8−アルキル基を表す]のN,N−ジアルキルエタノールアミンを、水の存在下でのエチレンオキシド(EO)と相応するジアルキルアミン(R12NH)との反応により製造する方法であって、
該反応を反応器中で連続的に行い、該反応温度が90〜180℃の範囲内であり、かつ該反応器中の滞留時間(VWZ)が1〜7分の範囲内であり、該反応器流出液を、未反応ジアルキルアミンを蒸留により分離した後に、ジアルキルアミン蒸留塔の底部容器中で又は別個の滞留槽中で、80〜160℃の範囲内の温度で20〜1000分の範囲内の時間にわたって熱処理し、その後、該N,N−ジアルキルエタノールアミンを蒸留により分離する
ことを特徴とする、高い色安定性を有する式IのN,N−ジアルキルエタノールアミンを製造する方法。
【請求項2】
該反応温度が110〜170℃の範囲内である、請求項記載の方法。
【請求項3】
該反応器中の該VWZが、2〜5分の範囲内である、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
該反応器流出液を125〜155℃の範囲内の温度で熱処理する、請求項1からまでのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
該反応器流出液を30〜700分の範囲内の時間にわたって熱処理する、請求項1からまでのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
該反応を、液体冷却された管形反応器中で行う、請求項1からまでのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
該反応を二重ジャケット反応器中で行う、請求項記載の方法。
【請求項8】
該冷却液体を並流で該二重ジャケット反応器に流す、請求項記載の方法。
【請求項9】
該反応を水2.5〜50質量%(該反応混合物を基準として)の存在下で行う、請求項1からまでのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
該出発物質を1.1:1〜10:1の範囲内のジアルキルアミン:EOのモル比で使用する、請求項1からまでのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
該反応を10〜40barの範囲内の絶対圧で行う、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
該蒸留によるN,N−ジアルキルエタノールアミン分離を、連続的に側部抜取り塔中で行い、該塔中で該N,N−ジアルキルエタノールアミンを側部抜取り部中で得る、請求項1から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
15以下のDIN-ISO 6271によるAPHA色数を有する式IのN,N−ジアルキルエタノールアミンを製造する、請求項1から12までのいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
2で、24h60℃加することにより、0〜20%だけの該APHA色数の増加を生じる色安定性を有する式IのN,N−ジアルキルエタノールアミンを製造する、請求項13記載の方法。
【請求項15】
1及びR2が互いに独立してC1〜C4−アルキル基を表す式IのN,N−ジアルキルエタノールアミンを製造する、請求項1から14までのいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
EOとジメチルアミン(DMA)との反応によりN,N−ジメチルエタノールアミン(DMEOA)を製造する、請求項1から15までのいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、2010年12月17日付で提出した米国仮出願61/424081号を参照により包含する。
【0002】
本発明は、高い色安定性を有するN,N−ジアルキルエタノールアミンの製造方法に関する。
【0003】
N,N−ジアルキルエタノールアミンは、化学工業及び製薬工業にとって重要な中間体である。ジメチルエタノールアミンは、例えば塩、せっけん、エーテル及びエステルの形態で、乳化剤及び表面活性物質として並びにポリウレタン化学における触媒として、多種多様な分野に使用される。該製薬工業において、ジメチルエタノールアミンは、作用物質(トランキライザー、抗ヒスタミン剤及び鎮痛剤)の合成に利用される。N,N−ジアルキルエタノールアミン、例えばジメチルエタノールアミンの変色は、たいていの用途の場合に望ましくない。
【0004】
エチレンオキシド(EO)へのほぼ全てのアミンの付加は、アンモニアの該付加のように、水の添加によりかなり促進される。例えば、EOとジメチルアミン(DMA)との反応のためには、150℃への数時間の加熱が必要であるが、それに反して、DMA水溶液が使用される場合に、該反応は冷時に既に行われる。該水に類似の作用を、メタノール又はエタノールのようなアルコールも有する。(Houben Weyl, Methoden der organischen Chemie, 第11/1巻, 1957, p.311以降)。
【0005】
アルカノールアミンが、該ヒドロキシル基のエトキシル化により、より高エトキシル化された生成物へと更に反応することは知られている。この副反応は、過剰のアミン(1.1:1〜4:1)の使用により、大幅に抑制することができる(独国特許出願公開(DE-A)第23 57 076号明細書、東独国特許(DD-A)第203 534号明細書(VEB Synthesewerk Schwarzheide)、米国特許(US-A)第2,337,004号明細書、米国特許(US-A)第2,373,199号明細書)。
【0006】
更に、第三級アミン、例えばジメチルエタノールアミン(DMEOA)が、水の不在下並びに存在下で80℃未満でオキシランと反応して、熱的に不安定な第四級アンモニウム化合物になり、該化合物は90℃を上回ると多かれ少なかれ迅速に分解することが知られている。(E. Tobler et al., Helv. Chim Acta 52, 1969, p.408 - 418)。これらの塩基の形成は、幾つかの点で不利である:
1)該第四級塩基中でのEO固定は選択率損失をまねく。
2)それらの高い塩基性度に基づき、該第四級塩基は、より高エトキシル化された化合物の形成を触媒する。ドデシルアミンは、例えば200℃を上回って(→第四級塩基が存在しない)EO 2モルを付加して、かつ90℃を下回って(→第四級塩基が存在する)EO 10モルを付加して、より高エトキシル化された化合物になる(H.L. Sanders et al., J. Am. Oil Chemists' Soc. 46, p.167 - 170)。全体として、該結果は選択率損失である。
3)DMEOAの変色の望ましくない形成が、これらの第四級アンモニウム化合物の、次いで重合する揮発性の不飽和化合物への複雑な分解機構(E. Tobler et al., Helv. Chim. Acta 52, 1969, p.408 - 418)に起因されうることが考えられる(東独国特許(DD-A)第203 534号明細書)。
【0007】
以下は、色安定なジアルキルエタノールアミンの製造に関する技術水準である。
特殊な精製を用いる水触媒法:
欧州特許出願公開(EP-A)第70 978号明細書(Pennwalt Corp.):150℃で水(0.2〜0.5当量)の存在下で過剰のDMA(2.2当量)とEOとの連続反応;定義された量の水素化ホウ素ナトリウムの添加下での蒸留による精製。
【0008】
米国特許(US-A)第3,131,132号明細書(Jefferson Chem. Comp., Inc.):50〜100℃で水(3〜15当量)の存在下で過剰のDMA(1〜2当量)とEOとの不連続な反応;酸添加により11.5にpH値を調節した後の、蒸留による精製(190mbar)。
【0009】
特開平(JP-A)01-160947号公報(Mitsubishi Gas Chem. Co., Inc.):DMEOAの水触媒合成;蒸留による高沸成分分離(100mbar)による精製;Ru/Cでの該留出物の水素化;100mbarでの精製蒸留。
【0010】
これらの方法にとって不利であるのは、該後処理による追加の材料コスト及びエネルギーコストである。
【0011】
特殊な精製変法もしくは後処理変法:
特開昭(JP-A)61-186349号公報(Daicel Chem. Ind., Ltd.):尿素の添加下での粗DMEOAの蒸留による精製(200mbar)。
【0012】
特開昭(JP-A)57-021351号公報(Mitsubishi Gas Chem. Co., Inc.):Ru/Al23の粗DMEOAの水素化。
【0013】
欧州特許出願公開(EP-A1)第28 555号明細書(PCUK Produits Chim. Ugine Kuhlmann):ラネーニッケルでの粗DMEOAの水素化。
【0014】
独国特許出願公開(DE-A1)第30 40 732号明細書(PCUK Produits Chim. Ugine Kuhlmann):アンモニウム塩での後処理によるDMEOAの精製。
【0015】
米国特許(US-B2)第6,774,264号明細書(Air Prod. and Chem., Inc.):Pd/Al23での粗DMEOAの水素化。
【0016】
これらの方法にとって不利であるのは、ここでも、該後処理による追加の材料コスト及びエネルギーコストである。
【0017】
無水法(T<200℃):
特開平(JP-A)01-157938号公報(Mitsubishi Gas Chem. Co., Inc.):150℃/21barでの連続法;該反応器への定義された量の該反応流出液の返送(自触媒反応)。
【0018】
独国特許出願公開(DE-A1)第23 57 076号明細書(BASF AG):連続法;定義された量(EO+DMAを基準として0.01〜0.5倍の量)の該反応器流出液の返送(自触媒反応)。<160℃の反応の際に色安定な生成物。
【0019】
安定化添加剤を用いる方法:
米国特許(US-A)第3,567,779号明細書(Jefferson Chem. Comp., Inc.):DMEOAへのモノエタノールアミン又はジエタノールアミンの添加による該変色の抑制。
【0020】
不利であるのは、安定化添加剤が、DMEOAのようなN,N−ジアルキルエタノールアミンの多くの用途にとって望ましくないことである。
【0021】
後処理のない水触媒法:
東独国特許(DD-A)第203 534号明細書:極めて温和な反応条件(50〜90℃)で触媒量の水(0.02〜0.15当量)の存在下で過剰のDMA(1.1〜3.5:1)とEOとの反応;90℃の最大釜温度を有する蒸留による精製。
【0022】
不利であるのは、90℃未満の該反応温度の低下が、文献(Helv. Chim. Acta 52, 1969, p.408 - 418)によれば第四級塩基の形成をまねくことである(→収量損失)。第四級塩基は、引き続き該精製において、熱分解により、アセトアルデヒドを放出し、かつ最終生成物の劣悪な色安定性をまねきうる。
【0023】
欧州特許出願公開(EP-A1)第752 412号明細書(BASF AG)(独国特許出願公開(DE-A)第44 14 879号明細書に対応):≧90℃の反応温度で水(2.5〜50質量%、好ましくは8〜25質量%)の存在下で過剰のDMAとEOとの反応及び最大90℃の温度での蒸留による精製。
【0024】
不利であるのは、該蒸留による精製の際に該底部温度を≦90℃に維持しなければならないことである。
【0025】
>90℃の反応温度でのエチレンオキシドとジメチルアミンとの水触媒反応は、技術水準である(例えば欧州特許出願公開(EP-A)第70 978号明細書;独国特許出願公開(DE-A)第44 14 879号明細書、上記参照)。しかしながら、そのように生産されたDMEOAの色安定性を、該粗流出液の(例えば還元剤/後水素化(米国特許(US)第6,774,264号明細書、上記参照)での又は酸での)その後の処理によるか又は該精製蒸留における最大底部温度の遵守(<90℃、独国特許出願公開(DE-A)第44 14 879号明細書)によるかのいずれかで、保証しなければならない。
【0026】
本発明には、技術水準の欠点を克服しながら、N,N−ジアルキルエタノールアミン、特にDMEOAの改善された経済的な製造方法を見出すという課題が基礎になっていた。該方法は、信頼できる作業条件下で、高選択的かつ高い空時収量(RZA)で、高い色安定性を有するN,N−ジアルキルエタノールアミンを提供すべきである。該方法はその際に追加の助剤(該変色を抑制する安定化添加剤)を使用せずに済むべきである。
【0027】
[空時収量は、‘生成物量/(触媒体積・時間)’(kg/(l触媒・h))及び/又は‘生成物量/(反応器体積・時間)’(kg/(l反応器・h)で示される]。
【0028】
それに応じて、高い色安定性を有する式I
【化1】
[式中、R1及びR2は互いに独立してC1〜C8−アルキル基を表す]
のN,N−ジアルキルエタノールアミンを、水の存在下でのエチレンオキシド(EO)と相応するジアルキルアミン(R12NH)との反応により、製造する方法が見出され、前記方法は、該反応を1個の反応器中で連続的に行い、該反応温度が90〜180℃の範囲内であり、かつ該反応器中の滞留時間(VWZ)が1〜7分の範囲内であり、該反応器流出液を80〜160℃の範囲内の温度で20〜1000分の範囲内の時間にわたって熱処理し、その後、該N,N−ジアルキルエタノールアミンを蒸留により分離することによって特徴付けられている。
【0029】
1及びR2は互いに独立して、線状又は分枝鎖状のC1〜C8−アルキル基、好ましくはC1〜C4−アルキル基を表す。そのようなアルキル基の例は、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、s−ペンチル、ネオペンチル、1,2−ジメチルプロピル、n−ヘキシル、イソヘキシル、s−ヘキシル、シクロペンチルメチル、n−ヘプチル、イソヘプチル、シクロヘキシルメチル、n−オクチル、イソオクチル、2−エチルヘキシルである。特に好ましいのはメチル及びエチルである。
特に好ましいのは、EOとジメチルアミン(DMA)との反応によるN,N−ジメチルエタノールアミン(DMEOA)の製造である。
【0030】
該反応は、好ましくは2.5〜50質量%、特に好ましくは5〜35質量%、更に好ましくは10〜30質量%の水の存在下で(該反応混合物を基準として)、行われる。
それにより、触媒量の水(0.2〜2.0質量%、東独国特許(DD-A)第203 534号明細書;独国特許(DE-PS)第1 004 620号明細書(Oxirane Ltd.)、米国特許(US)第2,823,236号明細書(A.J. Lowe et al.)における)の使用下での方法とは異なり、より高い反応速度並びにより高い空時収量が達成される。
【0031】
好ましくは、該出発物質は、1.1〜10、特に好ましくは1.5〜9、更に好ましくは3〜8の範囲内のジアルキルアミン:EOのモル比で使用される。
それにより、第四級塩基及びより高エトキシル化された生成物の該形成は大幅に抑制され、それに応じて高い選択率が達成される。
【0032】
好ましくは、該反応は、液体冷却された管形反応器中で行われる。
特に好ましいのは、二重ジャケット反応器である。該反応器は、並流又は向流で冷却することができる。該生成物品質(色数、色安定性)に関して、該並流冷却が有利であることが判明している。ゆえに、更に好ましくは該冷却液体は並流で該二重ジャケット反応器を流れる。
【0033】
該反応は、好ましくは10〜40bar、特に好ましくは15〜30barの範囲内の絶対圧で行われる。
【0034】
該反応温度は、好ましくは110〜170℃の範囲内、特に好ましくは125〜160℃の範囲内である。
【0035】
該反応器中の該VWZは、好ましくは2〜5分の範囲内、更に好ましくは2〜4分の範囲内である。
【0036】
本発明によれば、該反応器流出液は、80〜160℃、好ましくは125〜155℃の範囲内の温度で、20〜1000分、好ましくは30〜700分の範囲内の時間にわたって、熱処理される。
好ましくは、該反応器流出液の該熱処理前に、未反応ジアルキルアミンは蒸留により分離される。
該熱処理は、別個の容器(滞留槽)中で又は好ましくはジアルキルアミン蒸留塔の底部容器中で、行うことができる。
【0037】
該熱処理後に、該N,N−ジアルキルエタノールアミンの分離のために蒸留による精製が行われる。
過剰のジアルキルアミンの蒸留による分離及び返送後に、該水は分離され、かつ好ましくは該方法へ返送される。該N,N−ジアルキルエタノールアミンの該精製蒸留は、不連続で可能であるが、しかし好ましくは連続的に実施される。該精製蒸留において、高沸成分(例えばより高エトキシル化された生成物及びビニルオキシエタノール)は底部生成物(缶出液)として外に出され、該N,N−ジアルキルエタノールアミン、例えば該DMEOAは、頂部を経て又は好ましくは側部抜取り部を経てのいずれかで留去される。アルコキシエタノールのような低沸成分は、この場合に頂部を経て分離することができる。
特に好ましくは、すなわち該蒸留によるN,N−ジアルキルエタノールアミン分離は、連続的に側部抜取り塔中で行われ、該塔中で該N,N−ジアルキルエタノールアミンが側部抜取り部中で得られる。
【0038】
本発明によれば、式IのN,N−ジアルキルエタノールアミン、例えばDMEOAが、99.00〜99.99%の、特に99.50〜99.99%の純度で生じる。
【0039】
特に、本発明による方法は、≦15、特に≦13、更に特に≦11、例えば1〜10の範囲内のAPHA色数を有する式IのN,N−ジアルキルエタノールアミンを提供する。
【0040】
更に、本発明による方法は特に、N2下で24hの60℃への加熱により0〜20%、特に0〜15%だけの該APHA色数の増加が生じるような、色安定性を有する式IのN,N−ジアルキルエタノールアミンを提供する。
【0041】
該APHA色数の決定は、DIN-ISO 6271により行われる。
【0042】
本発明による方法において使用されるEOの仕様は、好ましくは次の通りである:EO >99.9%、H2O <60ppm、アセトアルデヒド <50ppm、CO2 <20ppm、酢酸 <20ppm。
【0043】
本発明による方法において好ましくは使用されるDMAの仕様は、特に次の通りである:DMA >99.5%、モノメチルアミン(MMA) <0.1%、NH3 <0.1%、MeOH <0.1%、(トリメチルアミン)TMA <0.05%、H2O <0.2%。
【0044】
ppmの記載は該質量を基準としている(質量ppm)。
全ての圧力の記載は該絶対圧を基準としている。
【0045】
実施例
例1
圧力表示及び温度表示を備えた500ml管形反応器中で、ジメチルアミン(3350g/h;74.5モル/h)及び水(840g/h;46.7モル/h;該反応混合物を基準として21.3質量%)の90℃に予熱した混合物を、エチレンオキシド600g/h(13.6モル/h)と連続的に反応させた。該反応の発熱のために、該反応器中でホットスポットが形成された。外部冷却により、該反応器内容物を140℃に冷却し、これをこの温度で、場合により外部熱供給により、2.4〜2.9分間保持した。
過剰のジメチルアミン(3bar/底部温度140℃/VWZ 35分)及び水(ジメチルエタノールアミンとのアゼオトロープ;400mbar/底部温度110℃)の蒸留による分離及び返送後に、次の組成を有するエチレンオキシド不含の粗生成物1275g/hが得られた:
ジメチルエタノールアミン:97.0%
ジメチルアミノジグリコール:1.2%
その他の生成物:1.8%
(%の記載はGC分析に基づく。条件:次の温度プログラムを有する30mのDB1カラム:75℃―8℃/分〜280℃―280℃で12分。)
(VWZ=滞留時間)。
【0046】
50〜60mbar(底部温度70〜100℃)での連続的な蒸留による精製により、5 APHAの色数を有する99.8〜99.9%の純度のジメチルエタノールアミンが得られた。
24h/60℃後の色数:5 APHA、
窒素下で室温で3ヶ月後の色数:10 APHA。
低沸点の副成分(残留水、メトキシエタノール等)を頂部を経て、高沸成分(ジメチルアミノジグリコール、ビニルオキシエタノール等)を底部を経て、ジメチルエタノールアミンを側部抜取り部を経て、その際に抜き取った。
【0047】
該色安定性の測定は、次の試験により行われる:
窒素下で60℃で24hの該DMEAの加熱後の該色数(APHA)の測定。
【0048】
例2
該反応操作を、例1に記載されたように行った。
該反応器流出液から、まず最初に過剰のジメチルアミンを分離した。例1と比較して、該塔底部中の該VWZは14分であり、かつ該底部温度は140℃であった。その後、該塔底生成物を容器中へ90℃で送った。該容器中の該VWZは660分であった。引き続き、水を分離し、>97%のジメチルエタノールアミン含量を有するエチレンオキシド不含の粗生成物1275g/hが得られた。
【0049】
50〜60mbar(底部温度70〜100℃)での連続的な蒸留による精製により、5 APHAの色数を有する99.8〜99.9%の純度のジメチルエタノールアミンが得られた。
24h/60℃後の色数:5 APHA、
窒素下で室温で3ヶ月後の色数:10 APHA。
低沸点の副成分(残留水、メトキシエタノール等)を頂部を経て、高沸成分(ジメチルアミノジグリコール、ビニルオキシエタノール等)を底部を経て、ジメチルエタノールアミンを側部抜取り部を経て、その際に抜き取った。
(該色安定性の測定は、例1を参照)。
【0050】
比較例:
該反応操作を、例1に記載されたように行った。
該反応器流出液から、まず最初に過剰のジメチルアミンを分離した。例1と比較して、該塔底部中での該VWZは14分であり、かつ該底部温度は140℃であった。引き続き、水を分離し、かつ>97%のジメチルエタノールアミン含量を有するエチレンオキシド不含の粗生成物1275g/hが得られた。
50〜60mbar(底部温度70〜100℃)での連続的な精製蒸留により、5 APHAの色数を有する99.8〜99.9%の純度のジメチルエタノールアミンが得られた。
24h/60℃後の色数:50 APHA、
窒素下で室温で3ヶ月後の色数:55 APHA。
【0051】
有用生成物ジメチルエタノールアミンを、その際に例1に記載されたように側部抜取り部を経て分離した。低沸点の副成分(残留水、メトキシエタノール等)を頂部を経て、高沸成分(ジメチルアミノジグリコール、ビニルオキシエタノール等)を底部を経て抜き取った。
(該色安定性の測定は、例1を参照)。
【0052】
該実施例は特に以下のことを示している:
技術水準と比べた本方法の利点は、特に一方では高い反応速度にあり、すなわち本方法は大工業的にも経済的に実施可能である。第四級アンモニウム化合物及びより高エトキシル化された化合物の形成は、見出された反応条件下で最低限である、すなわち触媒量の水の存在下での反応に比べて、より高い選択率が達成される。該粗生成物が、見出された条件下で精製される場合には、高い色安定性を有するN,N−ジアルキルエタノールアミン、ここではN,N−ジメチルエタノールアミンが、補助試薬(助剤)を添加せずに、後水素化せずにかつ該精製蒸留における<90℃への該底部温度の制限なしに、得られる。