(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5850984
(24)【登録日】2015年12月11日
(45)【発行日】2016年2月3日
(54)【発明の名称】荷電粒子装置内の試料を撮像する方法
(51)【国際特許分類】
H01J 37/28 20060101AFI20160114BHJP
H01J 37/12 20060101ALI20160114BHJP
H01J 37/20 20060101ALI20160114BHJP
H01J 37/244 20060101ALI20160114BHJP
H01J 37/317 20060101ALI20160114BHJP
【FI】
H01J37/28 B
H01J37/12
H01J37/20 A
H01J37/244
H01J37/317 D
【請求項の数】9
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-115633(P2014-115633)
(22)【出願日】2014年6月4日
(65)【公開番号】特開2014-239037(P2014-239037A)
(43)【公開日】2014年12月18日
【審査請求日】2014年6月11日
(31)【優先権主張番号】13170553.5
(32)【優先日】2013年6月5日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】501233536
【氏名又は名称】エフ イー アイ カンパニ
【氏名又は名称原語表記】FEI COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】ボフスラフ セーダ
(72)【発明者】
【氏名】ラボミール トゥーマ
(72)【発明者】
【氏名】ペーター ラヴェンカ
(72)【発明者】
【氏名】ペーター シタール
【審査官】
桐畑 幸▲廣▼
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−175969(JP,A)
【文献】
特表2010−512628(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37/28
H01J 37/12
H01J 37/20
H01J 37/244
H01J 37/317
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷電粒子装置内の試料を撮像する方法であって、前記荷電粒子装置は、
排気可能な試料チャンバ、
電子ビーム軸に沿って微細集束電子ビームを生成する、静電浸漬レンズを有する対物レンズを備える電子ビーム鏡筒、
イオンビーム軸に沿って微細集束イオンビームを生成する集束イオンビーム鏡筒、
前記試料を保持する手段を備える伝導面を有して、前記伝導面が前記電子ビーム軸に対して垂直となる第1傾斜角度と、前記伝導面が前記イオンビーム軸に対して垂直となる第2傾斜角度との間で前記伝導面を傾斜させることが可能な試料マニピュレータ、
を有し、
前記集束イオンビーム鏡筒と前記電子ビーム鏡筒は前記試料チャンバに載置され、前記電子ビーム軸と前記イオンビーム軸はある交差位置で交差し、
当該方法は、
前記試料マニピュレータの伝導面上に前記試料を載置する段階、
前記電子ビーム鏡筒によって微細集束電子ビームを前記試料へ案内する段階、
前記集束イオンビーム鏡筒によってイオンビームを前記試料へ案内する段階、
を有し、
前記電子ビーム鏡筒と前記集束イオンビーム鏡筒の各々が前記交差位置に最も近い電極を有し、
前記電極は共通の電位に接続され、かつ、
前記試料が載置される伝導面は前記電極に対して傾斜角に依存してバイアス印加され、その結果、前記イオンビームと前記電子ビームは、横方向色収差を示すことなく前記交差位置で交差し、かつ、前記ビームの交差はいずれの傾斜位置についても同一の試料位置で起こる、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記傾斜角に依存するバイアスは、前記面が前記電子ビーム軸に対して垂直である場合にはゼロである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1傾斜角度と前記第2傾斜角度の差は45°乃至60°である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記試料チャンバが、前記試料及び前記電極に対してバイアス印加可能な1つ以上の電気伝導性部材を有する、請求項1乃至3のうちのいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記1つ以上の電気伝導性部材のうちの少なくとも1つが、前記試料及び前記電極に対して位置設定可能である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記1つ以上の電気伝導性部材が、気体注入系、2次電子検出器、後方散乱電子検出器、荷電粒子検出器、X線検出器、又はカメラからなる群から選ばれる部材を含む、請求項4又は5に記載の方法。
【請求項7】
前記電子ビーム鏡筒が筐体内荷電粒子検出器を有する、請求項1乃至6のうちのいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記筐体内荷電粒子検出器がレンズ内荷電粒子検出器である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記筐体内荷電粒子検出器が、2次電子と後方散乱電子を識別するように構成される、請求項7又は8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は荷電粒子装置内の試料を撮像する方法に関する。前記荷電粒子装置は、
− 排気可能な試料チャンバ、
− 電子ビーム軸に沿って微細集束電子ビームを生成する、静電浸漬レンズを有する対物レンズを備える電子ビーム鏡筒、
− イオンビーム軸に沿って微細集束イオンビームを生成する集束イオンビーム鏡筒、
− 前記試料を保持する手段を備える伝導面を有して、前記伝導面が前記電子ビーム軸に対して垂直となる第1傾斜角度と、前記伝導面が前記イオンビーム軸に対して垂直となる第2傾斜角度との間で前記伝導面を傾斜させることが可能な試料マニピュレータ、
を有し、
前記集束イオンビーム鏡筒と前記電子ビーム鏡筒は前記試料チャンバに載置され、前記電子ビーム軸と前記イオンビーム軸はある交差位置で交差する。
【0002】
当該方法は、
− 前記試料マニピュレータの伝導面上に前記試料を載置する段階、
− 前記電子ビーム鏡筒によって微細集束電子ビームを前記試料へ案内する段階、
− 前記集束イオンビーム鏡筒によってイオンビームを前記試料へ案内する段階、
を有する。
【背景技術】
【0003】
係る方法はたとえば、試料の加工、すなわち集束イオンビーム(FIB)装置として機能するイオンビーム鏡筒によって試料−たとえば半導体ウエハ−からの試料の削り出し、及び、走査電子顕微鏡(SEM)として機能する電子ビーム鏡筒による試料の検査に用いられる。
【0004】
既知の特許は、静電浸漬レンズと磁気レンズを有する対物レンズを備える走査電子顕微鏡(SEM)の鏡筒を備えるシステムについて記載している。記載されたシステムは、静電非浸漬レンズを有する集束イオンビーム鏡筒をさらに備える。
【0005】
良好なSEM像のためには、浸漬電場が電子光学軸の周りで対称性を示すことが必要とされる。さもなければ電子ビームの横方向色収差と複数の幾何学収差が生じるからである。従って試料台は電子ビーム軸に対して垂直な向きをとることことが好ましい。それにより標準的なSEMに似た配置で当該装置は動作する。
【0006】
FIBを用いるとき、イオンは通常、試料すなわちウエハにほぼ垂直に衝突することを必要とするので、電子ビームは試料すなわちウエハに対して傾斜した状態で衝突する。
【0007】
如何なる場合でもイオンは、イオン鏡筒の対物レンズから妨害地点へ進行しなければならないので、イオンは浸漬電場を通り抜けて進行しなければならない。この結果、イオンビームの横方向色収差と複数の幾何学収差が生じる。良好なイオンの位置設定/撮像のため、SEM鏡筒の静電浸漬電場は消されなければならない。
【0008】
既知の特許は、SEM鏡筒とFIB鏡筒との間の遮蔽電極内で、試料及びイオンビーム鏡筒に対する試料に最も近い静電浸漬レンズの電極へのバイアス印加並びに/又は前記遮蔽電極へのバイアス印加による解決法を発見した。
【0009】
前記既知の特許の解決法は、試料に対する前記試料に最も近いSEM対物レンズの電極への婆椅子印加、及び、遮蔽電極によるイオンビームが横切らなければならない電場の一部の整形によって、試料が傾斜されるときに電子ビームの周りでの静電浸漬電場の回転対称性を保持することで、電子ビームとイオンビームの両方にとっての良好な集束とビーム案内を可能にすることに依拠している。
【0010】
既知の解決法の欠点は、遮蔽電極が試料付近の領域に追加されなければならないことである。当業者が知っているように、この領域には通常アクセサリ−放射線検出器(2次電子検出器、後方散乱電子検出器、X線検出器)、1つ以上の気体注入系、試料に取り付けられるマニピュレータ等−が多く存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、遮蔽電極を追加しない代替解決法を提供することを意図している。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的のため、本発明による方法は、前記電子ビーム鏡筒と前記集束イオンビーム鏡筒の各々が前記交差位置に最も近い電極を有し、前記電極は共通の電位に接続され、かつ、前記試料が載置される伝導面は前記電極に対してバイアス印加され、その結果、傾斜角に依存して、前記イオンビームと前記電子ビームは、横方向色収差を示すことなく前記交差位置で交差し、かつ、前記ビームの交差はいずれの傾斜位置についても同一の試料位置で起こることを特徴とする。
【0013】
本発明によると、2つの対物レンズの電極は、該2つの対物レンズの電極のいずれに取り付けられた別の電極なしで共通電位(好適には接地電位)に接続される。前記試料台は電源に接続される。前記電源は、前記鏡筒に対して前記試料台と該試料台上に載置される試料をバイアス印加することができる。この結果、以下の問題を解決することができる。
− 試料の傾斜及び前記電子鏡筒の静電レンズの励起の結果生じるビームシフトが補償されうる。
− 両鏡筒の色収差が補償されうる。
【0014】
前記試料に対する前記電極のバイアスは、前記電子ビームが前記試料へ垂直に衝突するときにはゼロであることが好ましい。
【0015】
好適実施例では、電子ビーム鏡筒と前記集束イオンビーム鏡筒は、互いに45°乃至60°の角度をなしている。
【0016】
互いにある角度−たとえば52°−をなす電子ビーム鏡筒とイオンビーム鏡筒を備える装置は周知である。
【0017】
他の実施例では、前記真空チャンバは、前記試料及び前記電極に対してバイアス印加可能な1つ以上の電気伝導性部材を有する。
【0018】
他の実施例では、前記1つ以上の電気伝導性部材のうちの少なくとも1つは、前記試料及び前記電極に対して位置設定されて良い。
【0019】
他の実施例では、前記1つ以上の電気伝導性部材は、気体注入系、2次電子検出器、後方散乱電子検出器、荷電粒子検出器、X線検出器、又はカメラからなる群から選ばれる部材を含む。
【0020】
たとえば気体注入系(GIS)又はマイクロマニピュレータを用いるとき、これらは動作時に、前記試料及び前記鏡筒に対して移動する。前記試料を適切にバイアス印加することによって、これらの金属(つまり電気伝導性)部材の様々な位置によって生じる外乱の1次補正が可能となる。
【0021】
好適実施例では、前記電子ビーム鏡筒は筐体内荷電粒子検出器−より具体的にはレンズ内荷電粒子検出器−を有する。
【0022】
前記筐体内荷電粒子検出器は、高効率を実現するのに利用される。本願発明者等は、当該方法を利用する結果、有害な偏向を生じることなく2次電子(SE)及び後方散乱電子(BSE)が検出されることを発見した。偏向は検出効率を低下させる。前記検出器が前記電子光学軸の周りでの角度対称性を検出するように構築される場合、偏向は角度依存検出の妨げとなる。静電場の極性に起因して、前記検出器は一般的に、BSEとSEの検出に用いられ、かつ、正電荷のイオンの検出にとっては有効ではないことに留意して欲しい。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明による方法を実行するデュアルビームシステムを概略的に示している。
【
図2】
図1のデュアルビームシステムの一部を概略的に表している。
【
図3】A-Fは、本発明による方法によって実験中に得られた顕微鏡写真を示している。
【発明を実施するための形態】
【0024】
ここで図面を用いて本発明を説明する。図中、同一参照番号は対応する部位を表す。
【0025】
図1は、本発明による方法を実行する典型的デュアルビームSEM/FIBシステム100を概略的に示している。適切なデュアルビームシステムは、本願出願人であるFEIカンパニーから市販されている。適切なハードウエアの例が以降で与えられるが、本発明は如何なる特別な型のハードウエアでの実施にも限定されない。
【0026】
デュアルビームシステム100は、垂直に載置された電子ビーム鏡筒101、及び、排気可能な試料チャンバ103の垂直位置から約52°の角度をなして載置される集束イオンビーム(FIB)鏡筒102を有する。試料チャンバは、たとえばターボ分子ポンプ又は他の既知の排気手段(図示されていない)−油拡散ポンプ、イオンゲッターポンプ、スクロールポンプ等−によって排気されて良い。
【0027】
電子ビーム鏡筒101は、電子ビーム112を生成する電子源110を有する。電子光学収束レンズ114a,114b及び対物レンズ116は、試料104上に電子ビームを微細集束させるのに用いられる。対物レンズ116は、静電浸漬レンズを有し、好適には磁気レンズをも有する。それにより電子ビーム112は、静電浸漬電場と磁場の両方によって集束される。電子ビームは、偏向コイル118aと118bによって試料表面上に位置設定され、かつ、試料表面にわたって走査されて良い。レンズ及び偏向ユニットは、電場を利用して電子ビームを操作することが可能で、かつ/又は、磁場が用いられ得ることに留意して欲しい。
【0028】
デュアルビームシステム100はまた、イオンビームを生成するイオン源120を有する集束イオンビーム(FIB)鏡筒102をも有する。イオン光学収束レンズ124a,124b及び対物レンズ126は、イオンビームを試料104上で微細集束させるのに用いられる。イオンビームは、偏向器128aと128bによって、試料104の表面上で位置設定され、かつ、試料104の表面にわたって走査されて良い。イオンの特性(質量対電荷比)に起因して、レンズと偏向器は一般的には本質的には静電的である。
【0029】
電子ビーム112とイオンビーム122は試料104上に集束されて良い。試料104は、可動X-Y-Z台105の形態をとる試料マニピュレータの平坦面上に載置される。
【0030】
鏡筒101と102は、イオンビーム122と電子ビーム112との間で交差位置106を生成するように位置合わせされる。試料はこの交差位置に設けられることが好ましい。
【0031】
(引っ込め可能な)気体注入系(GIS)142が真空チャンバに載置される。GISは、前駆体材料を保持する容器(図示されていない)及び前駆体材料を基板表面へ案内するニードル144を有する。GISは、基板への前駆体材料の供給を制御する手段をさらに有する。この例では、制御手段は調節可能バルブ143として表されている。しかし制御手段はたとえば、前駆体材料の制御しながら加熱する形態をとっても良い。
【0032】
引っ込め可能で位置設定可能なマイクロマニピュレータ145がさらに真空チャンバに載置される。マイクロマニピュレータ145は、真空チャンバ内に設けられる遠端備える先端部146を有する。先端部146の遠端はたとえば、試料の検査又はたとえば(イオンビーム、電子ビーム、又はレーザービームを用いた)ビーム誘起堆積を利用した試料(の一部)の接合に用いられる。
【0033】
電子ビーム内の電子が試料104に衝突するとき、2次電子(SE)及び後方散乱電子(BSE)が放出される。SEは50eV未満のエネルギーで試料から放出される電子と定義される一方、BSEは50eV超のエネルギーで試料から放出される電子と定義される。SEとBSEの少なくとも一部は電子検出器140−たとえばEverhart-Thornley型検出器−又は鏡筒内に載置される−より好適には対物レンズ116内に載置される−鏡筒内検出器によって検出される。検出器は低エネルギー電子及び後方散乱電子の検出が可能である。係る検出器はシンチレータに基づいて良いし、又は、半導体デバイスとして形成されて良く、かつ、係る検出器は区分化されても良いしされなくても良いことに留意して欲しい。
【0034】
SE及びBSEに加えて、他の種類の放射線−たとえばX線、可視光等−も放出されることに留意して欲しい。これらの種類の放射線もまた適切な検出器を用いて検出されうる。
【0035】
検出器の信号はシステム制御装置130へ供給される。前記システム制御装置はまた、偏向器信号、レンズ、電子源、GIS、台、(複数の)ポンプ、及び他の部材−GIS及びマイクロマニピュレータ145を含む−をも制御する。よってシステム制御装置は、走査パターン又は定常状態の偏向のいずれかを利用することによってイオンビームと電子ビームの両方を試料上の特定の位置へ案内することができる。ビームの位置情報を利用し、かつ、検出器の情報を利用することによって、制御装置はモニタ上に試料の像を生成することができる。
【0036】
システム制御装置はまた、たとえば利得を制御することによって検出器を制御することに留意して欲しい。
【0037】
筐体内検出器141は、電子ビーム112を通過させる中心孔を有することに留意して欲しい。
【0038】
検出器−たとえば検出器140−は、検出効率の最適化又はたとえば他の種類の検出器を必要とする観測中での他の部材のための空間を作るために真空チャンバ内で位置設定されて良いことに留意して欲しい。
【0039】
台105は、試料及び/又は1つ以上のTEM試料ホルダを支持して良い。それにより試料のごく一部がその試料から取り出され、かつ、TEM試料ホルダへ移されうる。台105は、平行面(X軸とY軸)内及び垂直方向(Z軸)で移動可能であることが好ましい。台105はまた、約60以上の角度に傾斜することが可能で、かつ、Z軸の周りで回転することが可能である。一部の実施例では、別個のTEM試料台(図示されていない)が用いられて良い。
【0040】
ポンプは、電子ビーム鏡筒101、イオンビーム鏡筒102、及び真空チャンバ103を排気するのに用いられる。真空ポンプは一般的には、チャンバ103内部で約3×10
-5mbarの真空度を供する。適切な前駆体気体が試料表面上に導入されるとき、チャンバの背圧は典型的には5×10
-5mbarまで上昇しうる。しかし湿気を含む試料の観測及び「加工」を可能にする1〜10mbar程度の高さの圧力を用いることが知られている。
【0041】
マイクロマニピュレータ145−たとえばオムニプローブ社製のAutoProbe200(商標)−は真空チャンバ内で対象物を厳密に移動させることができる。マイクロマニピュレータは、真空チャンバ内に設けられた遠端のX,Y,Z及びθ制御を供するように真空チャンバ外部に設けられる精密電気モータを有して良い。マイクロマニピュレータは、小さな対象物を操作するため、様々なエンドエフェクタに適合して良い。本願で述べる実施例では、エンドエフェクタは細いプローブである。当技術分野において既知であるように、マイクロマニピュレータ(又はマイクロプローブ)は、分析のため、(一般的にはイオンビームによって基板から解放された)TEM試料をTEM試料ホルダへ搬送するのに用いられて良い。
【0042】
電源134は台105に接続される。それにより台105は、真空チャンバ及び台に最も近い鏡筒の電極の電位に対して所定の電圧で電気的に「浮遊」することが可能となる。この電源は、システム制御装置130の制御下であるので、電子ビーム112の周りでの対物レンズ116の静電部分の電気的対称性を最適化する適切な電圧に設定されうる。その結果、試料及び台の傾斜に独立して、横方向色収差は抑制され、交差位置106は固定された位置に保たれる等が実現されうる。
【0043】
図2は、2つの鏡筒の対物レンズ及びイオンビームと電子ビームの交差位置を概略的に表している。
【0044】
電子鏡筒101は浸漬レンズを有する対物レンズ116で終端する。対物レンズ116は、電極202、交差位置に最も近い電子鏡筒の終端キャップを形成する接地電極204、及び、台105の平坦面によって形成される電極201によって構成される。接地電極204はまた、コイル206によって磁気的に励起される磁気回路の一部でもある。検出器141は、たとえば金属層によって構成される伝導性面を有する。前記伝導性面は、試料に対向し、かつ、電極202の一部を構成する。
【0045】
集束イオンビーム鏡筒102は、電極208、210、及び212によって構成される対物レンズ126で終端する。電極208と212は接地電位に接続される。電極210は一般的にイオンビームを減速させる電圧である。低エネルギーイオンを用いるときには加速電圧を用いることも知られていることに留意して欲しい。接地電極212は、試料に最も近い集束イオンビーム鏡筒の電極である。
【0046】
電子のエネルギー又は電子が電子鏡筒の対物レンズへ入射する角度を識別する筐体内検出器を有することが可能であることに留意して欲しい。低エネルギーSEは、浸漬電場によって電子ビーム軸に沿って平行にされ、かつ、軸の近くに保たれる一方で、BSEについては、初期エネルギーが大きいためにその程度が小さいことに留意して欲しい。両信号の情報を分離して得ることによって、主としてSEの情報又は主としてBSEの情報による像を得ることが可能となる。本願発明者等は、係る像を得ることができる機器設定で実験を行った。
【0047】
図3A、
図3B、
図3C、
図3D、
図3E、及び
図3Fは、本発明による方法によって実験中に得られた顕微鏡写真を示している。
−
図3Aはレンズ内SE検出器を用いて得られたスズの球体の像を示している。
−
図3Bはレンズ内BSE検出器を用いて得られたスズの球体の像を示している。
−
図3Cは、試料台が52°傾斜したときにレンズ内SE検出器を用いて得られたスズの球体の像を示している。
−
図3Dは、試料台が52°傾斜したときにレンズ内BSE検出器を用いて得られたスズの球体の像を示している。
−
図3Eは、試料台が52°傾斜し、かつ、台に234Vのバイアス電圧が印加されたときにレンズ内SE検出器を用いて得られたスズの球体の像を示している。
−
図3Fは、試料台が52°傾斜しかつ、台に234Vのバイアス電圧が印加されたときにレンズ内BSE検出器を用いて得られたスズの球体の像を示している。
【0048】
スズの球体は通常参照用試料として用いられることに留意して欲しい。交差位置での試料(スズの球体)の像が得られた。その場合での交差位置は電極204から10mm離れている。電極202での電圧は約8kVである。試料上の電極の到達エネルギーは1keVである。
【0049】
図3A及び
図3Bに示された像はそれぞれ、当業者がSE像又はBSE像から期待するものである。
【0050】
図3Cの像と
図3Dの像はそれぞれ、
図3Aの像と
図3Bの像からはかなり違って見える。これらの像は、混合した情報(BSE+SE)を含み、かつ、信号の異方性を示す。SE及びBSE信号の大きさは、傾斜軸に対する表示された試料表面の向きに依存する。たとえばスズの球体のエッジ効果は、方向が異なると顕著に異なる。よって傾斜は、像の変化と信号の歪みを引き起こす。信号の歪みは、最初は台の平坦面に対して垂直に加速され、その後は検出器へ向かってのみ加速されるSEによって引き起こされる。よってSEを検出器へ向けて案内するとき、SEは、平行化を妨害する大きなエネルギーを既に有していた。
【0051】
図3Eの像と
図3Fの像はそれぞれ、傾斜(像の変化)の結果として
図3A及び
図3Bとは異なって見えるが、当業者がSE像又はBSE像から期待するものである(信号の歪みはもはや認められない)。
【0052】
電子光学軸の周りでの対称性を保持することによって、横方向色収差とビーム変位も緩和又は除去されるだけではなく、BSEとSEの情報のもつれ合いも緩和される。
【符号の説明】
【0053】
100 デュアルビームSEM/FIBシステム
101 電子ビーム鏡筒
102 イオンビーム鏡筒
103 試料チャンバ
104 試料
105 台
106 交差位置
110 電子源
112 電子ビーム
114 電子光学収束レンズ
116 対物レンズ
118 偏向コイル
120 イオン源
122 イオンビーム
124 イオン光学収束レンズ
126 対物レンズ
128 偏向器
130 システム制御装置
134 電源
140 電子検出器
141 筐体内検出器
142 気体注入系(GIS)
143 調節可能バルブ
144 ニードル
145 マイクロマニピュレータ
146 先端部
202 電極
204 接地電極
206 コイル
208 電極
210 電極
212 電極