(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
一方の面にスパッタ法によりニッケルを形成した基板を用い、前記スパッタ法によりニッケルを形成した後、真空雰囲気を保ったまま、前記一方の面上に、Sn,Ag,Cuの3元素を含む厚さが2〜10μmの合金膜をスパッタ法により形成する工程A1と、
前記合金膜上に、少なくとも前記合金膜との接触部位が、銅、及び、ニッケル被覆されたアルミニウムの何れか一方からなる部品αを載置する工程A3と、
前記基板と前記合金膜との間、及び、前記合金膜と前記部品αとの間を各々接合するために、240〜250℃の熱処理を施し、前記部品αから前記合金膜中に、銅またはニッケルの何れか一方が侵入しSn−CuまたはSn−Niのいずれか一方の約1μmの合金領域を部品α近傍に形成し、前記一方の面がニッケルからなる基板から前記合金膜中にニッケルが侵入し、Sn−Niの約1μmの合金領域を形成する工程A4と、
を少なくとも順に備える、部品βの製造方法であって、
前記工程A1において、減圧雰囲気とした空間内に、Sn,Ag,Cuの3元素を含む合金ターゲットを設けたカソード電極と、前記基板を設けたアノード電極とを対向して配置し、前記基板の前記一方の面上に、前記合金膜を形成する際に、前記カソード電極に電圧を印加するとともに、前記基板を150℃以下の温度とすることを特徴とする部品βの製造方法。
前記工程A2と前記工程A3との間に、前記レジストの前記貫通孔を通して見える前記合金膜上に、フラックスを塗布して、前記合金膜の表層をなす酸化膜を除去する工程A6を更に備える
ことを特徴とする請求項2に記載の部品βの製造方法。
一方の面にスパッタ法によりニッケルを形成した基板を用い、前記スパッタ法によりニッケルを形成した後、真空雰囲気を保ったまま、前記一方の面上に、Sn,Ag,Cuの3元素を含む厚さが2〜10μmの合金膜をスパッタ法により形成する工程B1と、
前記合金膜上に、少なくとも、はんだペーストを塗布する工程B3と、
前記合金膜上に、前記はんだペーストを介して、少なくとも接触部位が、銅、及び、ニッケル被覆されたアルミニウムの何れか一方からなる部品αを載置する工程B4と、
前記基板と前記合金膜との間、前記はんだペーストと前記合金膜との間、及び、前記はんだペーストと前記部品αとの間を各々接合するために、240〜250℃の熱処理を施し、前記部品αから前記合金膜中に、銅またはニッケルの何れか一方が侵入しSn−CuまたはSn−Niのいずれか一方の約1μmの合金領域を部品α近傍に形成し、前記一方の面がニッケルからなる基板から前記合金膜中にニッケルが侵入し、Sn−Niの約1μmの合金領域を形成する工程B5と、
を少なくとも順に備える、部品βの製造方法であって、
前記工程B1において、減圧雰囲気とした空間内に、Sn,Ag,Cuの3元素を含む合金ターゲットを設けたカソード電極と、前記基板を設けたアノード電極とを対向して配置し、前記基板の前記一方の面上に、前記合金膜を形成する際に、前記カソード電極にDC電圧を印加するとともに、前記基板を150℃以下の温度とする
ことを特徴とする部品βの製造方法。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスなどの実装には、Sn−Pb(錫−鉛)合金やSn−Au(錫−金)合金等のはんだ材料が用いられている。特に、Sn系はんだは、アルミニウム等の電極層中への錫成分の拡散が著しく、はんだ接合部の信頼性に大きな影響を与える。このため、Sn系はんだを用いる際には、下地の電極層に対して、はんだ層を直接形成せずに、錫成分の拡散を防止するためのバリア層、接合強度を高めるための密着層を介して、はんだ層を形成するようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図10A〜10Fは、従来の部品製造方法を模式的に示す工程断面図である。従来の部品製造方法は下記の手順10aから手順10fの順に進められる。
(手順10a)
図10Aに示すように基板100上に、下地膜101として、Au膜(密着層)、Ni膜(バリア層)、Ti膜、Al膜を順にスパッタ法により積層形成する。
(手順10b)
図10Bに示すように、後工程において部品をマウントする領域にあたる部分に、貫通孔102aを備えたテープ状のレジスト102を、前記下地膜101上に設ける。
(手順10c)
図10Cに示すように、前記レジスト102の貫通孔102aを通して見える前記下地膜101上に、少なくとも、はんだペースト103を塗布する。
【0004】
(手順10d)
図10Dに示すように、前記レジストの貫通孔102aを通して見える前記下地膜101上に、はんだペースト103を介して部品104を載置する。
(手順10e)
図10Eに示すように、熱処理を施し、前記基板100と前記下地膜101との間、前記下地膜101とはんだペースト103との間、及び、前記はんだペースト103と前記部品104との間、を各々接合する。
(手順10f)
最後に、
図10Fに示すように、前記レジスト102を除去する。
【0005】
しかしながら、下地膜の材料として用いられる金(Au)は高価であり、コストの増加につながる。
さらに、部品が基板上に実装されてなる実装品を用いたパッケージにおいては、パッケージ全体の小型化の要求も強まっており、実装品自体の薄型化要求も厳しくなっている。
従来のように、はんだペーストを塗布することによりはんだ層を形成すると、例えば50μmとはんだ層の厚みが厚くなってしまう。はんだ層を薄くすると、機械的特性、電気的特性が低下してしまうという問題があり、実装品更にはパッケージの薄型化の妨げとなっていた。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1A】本発明の部品の製造方法(第1実施形態)の手順1aを説明する工程断面図である。
【
図1B】本発明の部品の製造方法(第1実施形態)の手順1bを説明する工程断面図である。
【
図1C】本発明の部品の製造方法(第1実施形態)の手順1cを説明する工程断面図である。
【
図1D】本発明の部品の製造方法(第1実施形態)の手順1dを説明する工程断面図である。
【
図1E】本発明の部品の製造方法(第1実施形態)の手順1eを説明する工程断面図である。
【
図1F】本発明の部品の製造方法(第1実施形態)の手順1fを説明する工程断面図である。
【
図2】本発明で用いられるスパッタ装置の構成を示す模式平面図である。
【
図3】
図2に示すスパッタ装置において、スパッタ室内に配置されている電極に、DCパルス電圧を印加するDCパルス電源ユニットの構成を示す模式ブロック図である。
【
図4A】
図3のDCパルス電源ユニットの出力電圧波形を説明するタイムチャートである(DCパルス電圧)。
【
図4B】
図3のDCパルス電源ユニットの出力電圧波形を説明するタイムチャートである(DC電圧)。
【
図5】基板、合金膜及び、部品の部分を拡大して模式的に示した図である。
【
図6A】本発明の部品の製造方法(第2実施形態)の手順2aを説明する工程断面図である。
【
図6B】本発明の部品の製造方法(第2実施形態)の手順2bを説明する工程断面図である。
【
図6C】本発明の部品の製造方法(第2実施形態)の手順2cを説明する工程断面図である。
【
図6D】本発明の部品の製造方法(第2実施形態)の手順2dを説明する工程断面図である。
【
図6E】本発明の部品の製造方法(第2実施形態)の手順2eを説明する工程断面図である。
【
図6F】本発明の部品の製造方法(第2実施形態)の手順2fを説明する工程断面図である。
【
図8】はんだ合金膜とNi基板との接合界面におけるSEM写真を示す図である。
【
図9】はんだ合金膜とCu部品との接合界面におけるSEM写真を示す図である。
【
図10A】従来の部品の製造方法の手順10aを説明する工程断面図である。
【
図10B】従来の部品の製造方法の手順10bを説明する工程断面図である。
【
図10C】従来の部品の製造方法の手順10cを説明する工程断面図である。
【
図10D】従来の部品の製造方法の手順10dを説明する工程断面図である。
【
図10E】従来の部品の製造方法の手順10eを説明する工程断面図である。
【
図10F】従来の部品の製造方法の手順10fを説明する工程断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る部品の製造方法の一実施形態を図面に基づいて説明する。
後述する各実施形態では、錫(Sn)を主成分とする合金ターゲットとして、銀(Ag)、錫(Sn)及び、銅(Cu)を含有する合金ターゲットを用い、銀(Ag)、錫(Sn)及び、銅(Cu)を含有する合金膜を形成した例について詳述する。しかしながら、本発明は、必ずしも、銀(Ag)、錫(Sn)及び、銅(Cu)を含有する合金ターゲットに限定されるものでは無い。本発明に好適な錫(Sn)を主成分とする合金ターゲットとしては、例えば、Snを主成分として、銀(Ag)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、ビスマス(Bi)、インジウム(In)、アンチモン(Sb)、ニッケル(Ni)などを含むものが挙げられる。
【0020】
(第一実施形態)
図1A〜1Fは、本発明による部品の製造方法を説明する工程断面図である。
(手順1a)
まず、
図1Aに示すように、一方の面10aがニッケル(Ni)からなる基板10を用い、一方の面10a上に、銀(Ag)、錫(Sn)及び、銅(Cu)を含有する合金膜11をスパッタ法により形成する(工程A1)。
基板10は、一方の面がニッケルからなればよく、例えば、シリコン(Si)基板10の一面にニッケル(Ni)膜が形成されたものが好適に用いられる。以下では、この構成としたものを、Ni膜付き基板10とも呼ぶ。
特に本実施形態は、減圧雰囲気とした空間内に、銀(Ag)、錫(Sn)及び、銅(Cu)を含有する合金ターゲットを設けたカソード電極60(
図3参照)と、前記基板10を設けたアノード電極70(
図3参照)とを対向して配置し、前記基板10の一方の面上に前記合金膜11を形成する際に、前記カソード電極60にDCパルス電圧を印加する。
【0021】
ここで、
図2は、本実施形態で用いられるスパッタ装置110の構成を示す模式平面図であり、基板10上にはんだ合金膜11を積層形成するためのものである。
図2において、スパッタ装置110は、基板(ウエハー)10の搬送室T0と、スパッタ処理をするスパッタ室S1、S2と、ロードロック室L/ULと、基板10の移載機T1とを備えている。
スパッタ装置110において、スパッタ室S1は、Si基板10の一面にNi膜を形成する成膜室であり、スパッタ室S2は、はんだ合金膜11を形成する成膜室である。2つのスパッタ室S1、S2は、後述するバルブ機構を介して搬送室T0と連通するように構成されているので、スパッタ室S1においてNi膜が形成されたシリコン(Si)基板10を、減圧雰囲気中を通って、はんだ合金膜11を形成するスパッタ室S2へ移動させることが可能となる。これにより、Ni膜の表面が酸化されることないので、Ni膜上にはんだ合金膜11を形成した際に、Ni膜とはんだ合金膜11との濡れ性が良好に保たれる。すなわち、Ni膜に対するはんだ合金膜11の濡れ性を良好に保つためには、Ni膜とはんだ膜は真空中一貫にて成膜することが望ましい。
なお、スパッタ装置110としては、例えばマグネトロンスパッタ装置が好適に用いられる。
【0022】
図2のスパッタ装置110において、搬送室T0は、ハンドラH0を有している。ハンドラH0は、基板10を保持したまま移動し、スパッタ室間あるいはスパッタ室S1、S2とロードロック室L/ULの間で、基板10を搬送する。また、移載機T1は、ハンドラH1と、基板(ウエハー)10のカセットC1,C2とを有している。ハンドラH1は、基板10を保持したまま移動し、カセットC1にセットされた基板10をロードロック室L/ULに搬入し、スパッタ処理された基板10をロードロック室L/ULから搬出してカセットC1に戻す。
【0023】
なお、スパッタ装置110では、搬送室T0と各スパッタ室S1、S2の間、搬送室T0とロードロック室L/ULの間、およびロードロック室L/ULと移載機T1との間に、それぞれバルブ機構が設けられており、室間の真空度・雰囲気を遮断できる構成となっている。
【0024】
(スパッタ装置110においてのDCパルススパッタおよび静電チャックによるはんだ合金膜11の形成)
このようなスパッタ装置110において、スパッタ室S2では、電極に、DC電圧(直流電圧)ではなく、DCパルス電圧を印加するDCパルススパッタによって、合金膜11を予めNi膜が形成された基板10の上に形成する。また、スパッタ室S2では、基板10をセットする静電チャックに温度制御部が設けられており、この静電チャックによって、基板10の温度上昇を抑えつつ、合金膜11を形成する。静電チャックに設けられた温度制御部は、基板10の温度を調整制御可能であり、スパッタ処理時には基板10を冷却して所定の温度に保持する。
【0025】
(DCパルス電源ユニット)
図3はスパッタ室S3内に配置されている電極に、DCパルス電圧を印加するDCパルス電源ユニット50の構成を示す模式ブロック図である。
図3において、DCパルス電源ユニット50は、DC電源51と、OFFパルス電源52と、印加電圧生成部53と、制御部54とを備えている。
【0026】
このDCパルス電源ユニット50の出力電圧は、スパッタ室S3内のカソード電極60に印加される。また、スパッタ室S3内のアノード電極70は接地されている。従って、アノード電極70の電位Eaは基準電位(0電位)であり、カソード電極60の電位EkはDCパルス電源ユニット50の出力電位である。
【0027】
(DCパルス)
図4A、
図4Bは、DCパルス電源ユニット50の出力電圧波形を説明するタイムチャートである。
図4Aは、DCパルススパッタ時に電極に印加するDCパルス電圧である。
図4Bは、DCスパッタ時に電極に印加するDC電圧である。
【0028】
図4Aに示すように、DCパルス電源ユニット50によって生成されるDCパルスの周期はt0である。この周期t0の内、期間t1がDCパルスのOFF期間であり、残りの期間t2がDCパルスのON期間である。ON期間t2で、カソード電位Ekは、負の電位Ek1である。しかし、OFF期間t1で、カソード電位Ekは、正または0のOFFパルス電位Ek0(
図4Aでは、電位Ek0は正電位)である。一方、
図4Bに示すように、DCパルス電源ユニット50をDC電源51として機能させた場合には、カソード電位Ekは負の固定電位Ek2となる。
【0029】
図3のDCパルス電源ユニット50の動作について説明する。DC電源51は、制御部54から送信される波高値制御信号に従って、負電位Ek1を生成する。OFFパルス電源52は、制御部54から送信される波高値制御信号に従って、OFFパルス電位(正電位または0(ゼロ)電位)Ek0を生成し、これらの電位Ek1,Ek0をそれぞれ印加電圧生成部53に出力する。なお、電位Ek1,Ek0の値は、上記波高値制御信号によって可変設定可能である。
【0030】
印加電圧生成部53は、制御部54から送信される切換制御信号に従って、ON期間t2で、電位Ek1を、OFF期間t1で、電位Ek0を、切り換えて出力する。これにより、カソード電極60には、DCパルスEk(
図4A参照)が印加される。なお、DCパルスEkのOFFデューティー比t1/t0は、上記切換制御信号によって、例えば0%〜50%の間で可変設定可能である。
図4Aでは、OFFデューティー比t1/t0を20%に設定している。但し、このOFFデューティー比t1/t0は、10%〜30%の範囲内に設定することが望ましい。また、DCパルスEkの周波数(1/t0)も、上記切換制御信号によって、例えば50Hz〜250Hzの間で可変設定可能である。
【0031】
一方、DCパルス電源ユニット50をDC電源51として使用するとき、印加電圧生成部53は、DC電源51で生成された電位Ek2(
図4B参照)のみを継続して、カソード印加電位Ekとして出力する。
【0032】
(スパッタ装置110における、Ni膜およびはんだ合金膜11の形成手順)
(基板10の搬入)
まず、シリコン(Si)からなる基板(ウエハー)10を、移載機T1内のカセットC1にセットする。そして、ロードロック室L/ULをベントして、移載機T1との間のバルブ機構を開いたあと、上記カセットC1にセットした基板10をハンドラH1によってカセットC1からロードロック室L/UL内に移送する。
【0033】
次に、ロードロック室L/ULと移載機T1の間のバルブ機構を閉じ、ロードロック室L/ULを10
−3Pa台まで真空排気する。そして、ロードロック室L/ULと搬送室T0の間のバルブ機構を開き、搬送室T0内のハンドラH0によって基板10を搬送室T0内に搬入し、ロードロック室L/ULとの間のバルブ機構を閉じる。
【0034】
(Ni膜の形成、スパッタ室S1)
次に、搬送室T0とスパッタ室S1との間のバルブ機構を開き、ハンドラH0によってNi基板10を、搬送室T0からスパッタ室S1内に搬送する。そして、スパッタ室S1において、Ni膜を形成する。スパッタ室S1の成膜圧力を0.1Pa〜1.0Paとし、Ar流量を5sccm〜50sccmとした減圧雰囲気中において、Niターゲットを使用して、DCスパッタ法により、例えば膜厚0.2μm〜4.0μmのNi膜を形成する。そして、Ni膜を形成した後、搬送室T0との間のバルブ機構を開き、裏面(被成膜面)にNiが形成されたNi膜付き基板10を、ハンドラH0によってスパッタ室S1より搬送室T0に戻し、スパッタ室S1との間のバルブ機構を閉じる。
【0035】
(合金膜11の形成、スパッタ室S2)
次に、搬送室T0とスパッタ室S2との間のバルブ機構を開き、ハンドラH0によってNi膜付き基板10を、搬送室T0からスパッタ室S2内に搬送する。そして、スパッタ室S2において、SnおよびCuを主成分としてAgを含有する合金膜11を成膜する。スパッタ室S2の成膜圧力を0.1Pa〜1.0Paとし、Ar流量を5sccm〜50sccmとした減圧雰囲気中において、Ag−Sn−Cu合金のはんだターゲット(Ag−Sn−Cu合金ターゲット)を使用して、DCパルススパッタ(マグネトロンスパッタ)によって例えば膜厚2μm〜10μmmのはんだ合金膜11を成膜する。そして、成膜終了後、搬送室T0との間のバルブ機構を開き、裏面(被成膜面)に合金膜11が形成されたNi膜付き基板10を、ハンドラH0によってスパッタ室S2より搬送室T0に戻し、スパッタ室S2との間のバルブ機構を閉じる。
【0036】
上記合金膜11を成膜するDCパルススパッタでは、例えば、DCパルスのOFFデューティーt1/t0(
図4A参照)を20%に設定し、DCパルスの周波数1/t0を250kHzに設定する。また、静電チャックの温度制御部によってNi基板10を冷却することにより、Ni基板10の温度を150℃以下に保持しつつ、はんだ合金膜11を成膜する。Ag−Sn−Cu合金ターゲットには、例えば、主成分となるSnとCuの重量%比率がSn:Cu=60:40であり、これにAgが3重量%添加された合金ターゲット(Sn−Cu(60:40)−Ag(97:3)重量%ターゲット)が使用される。Ag−Sn−Cu合金ターゲットは、スパッタ室S3内のカソード電極60(
図3参照)のアノード電極70側の面の上に設けられる。また、Ni膜付き基板10は、アノード電極70(
図3参照)のカソード電極60側の面の上に、被成膜面である裏面(Ni膜が形成された面)をカソード電極60側に向けて設けられる。
【0037】
(成膜された基板10の搬出)
その後、ロードロック室L/ULとの間のバルブ機構を開き、ハンドラH0によって、合金膜11を形成したNi膜付き基板10を搬送室T0から搬出し、搬送室T0とロードロック室L/ULの間のバルブ機構を閉じる。そして、ロードロック室L/ULをベントして、移載機T1との間のバルブ機構を開いたあと、移載機T1のハンドラH1によって、ロードロック室L/UL内の上記Ni膜付き基板10を、カセットC2に戻す。
【0038】
(基板10の冷却)
DCスパッタは、一般に、RFスパッタよりもスパッタレートが高いが、基板10の温度が上昇すると、基板10に付着した金属が遊離し易くなるので、スパッタレートが低下する。そこで、基板10を冷却すれば、基板10に付着した金属が遊離し難くなるので、スパッタレートの低下を抑えることができる。本実施形態のはんだ合金膜11のDCパルススパッタでは、DCパルスのOFF期間t1(
図4A参照)において基板10が冷却され、基板10の温度上昇を抑えることができるので、スパッタレートの低下を抑えることができ、RFスパッタよりも高いスパッタレートを確保できる。
【0039】
さらに、本実施形態のはんだ合金膜11のDCパルススパッタでは、静電チャックの温度制御部によって基板10を冷却し、基板温度を150℃以下の所定温度に保持しているので、スパッタレートの低下を効果的に抑えることができる。ここで、基板温度を150℃以下としているのは、一般的なはんだの融点が150℃であり、150℃以上の温度になると、薄膜のはんだが蒸発してしまうためである。
【0040】
以上のように本実施形態によれば、カソード電極60にDCパルス電圧を印加するDCパルススパッタによって、低融点金属Cuを含有する合金膜11を成膜することにより、合金膜11の含有金属組成のずれを生じることなく、かつ成膜レートを低下させることなく成膜することができる。したがって、従来技術においてはんだ層成膜のための基板10の大気暴露時の酸化防止膜として必要であった下地膜を設ける必要がない。これにより、はんだ合金膜11を成膜するために、基板10をスパッタ装置110から取り出して真空蒸着装置にセットする際の手間や基板10の破損などを低減できるとともに、下地膜の金属材料として使用していた貴金属(例えばAuなど)のコストを低減できる。
上述したように、DCパルススパッタには優れた点が存在するが、本発明はDCパルススパッタに限定されるものではない。適切な構成とした成膜装置や適切な成膜条件などを設定することにより、DCパルススパッタに代えてDCスパッタを用いても、本発明は実現できる。
【0041】
また、後述する実施例に示されるように、はんだからなる合金膜11を形成する際に、カソード電極60にDCパルス電圧を印加することで、薄膜化されても従来と同等の機械的特性、電気的特性を確保した合金膜を成膜することが可能である。特に、従来密着層として用いられていたAu膜を形成しなくても十分な接合強度を確保することができ、コストの低下を図ることができる。
【0042】
このようにして形成される合金膜11の厚みとしては、特に限定されるものではないが、例えば、2μm以上、10μm以下とすることが好ましい。
後述するように、Ni膜付き基板(あるいはNi基板10)10上に形成された合金膜11の上に部品14を載置し、熱処理(リフロー)して三者を接合する。このとき、合金膜11において基板10と接する側には、基板10に含まれるNiが侵入して、このNiとSnとの合金領域αが形成される。また、合金膜11において部品14と接する側には、部品14に含まれるCuまたはNiが侵入して、このCuまたはNiとSnとの合金領域βが形成される。これらの合金領域α、合金領域βは、いずれも1μm程度の厚みとなることを、本発明者らは確認した。そのため、合金膜11の厚みとしては、少なくとも(1μm+1μm=)2μmはあることが好ましい。一方、合金膜11が10μmよりも厚いと、膜にクラックが生じる虞がある。
【0043】
(手順1b)
次に、必要に応じて、
図1Bに示すように、後工程において部品14をマウントする領域にあたる部分に貫通孔12aを備えたテープ状のレジスト12を、前記合金膜11上に設ける(工程A2)。後工程とは、組立、検査を行う工程のことである。
合金膜11上に、所定厚さのテープ状のレジスト12を張り付ける。テープ状のレジスト12には、後工程において部品14をマウントする領域にあたる部分に貫通孔12a(開口部)が設けられている。
テープ状のレジスト12としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリイミドテープが用いられる。
【0044】
(手順1c)
次に、
図1Cに示すように、(レジスト12を形成した場合には、レジスト12の貫通孔12aを通して見える)前記合金膜11上に、フラックス13を塗布して、前記合金膜11の表層をなす酸化膜を除去する(工程A6)。
合金膜11上に、部品14の接合面と接触させる際、合金膜11表面に残留している酸化膜を化学的に除去するため、フラックス13を塗布する。このフラックス13には、この金属酸化物と反応して、それを溶解除去する作用を有する活性化学種が含有されている。その後、洗浄処理を行うことにより、酸化膜が除去される。
【0045】
(手順1d)
次に、
図1Dに示すように、(レジスト12を形成した場合には、レジスト12の貫通孔12aを通して見える)前記合金膜11上に、少なくとも接触部位が、銅(Cu)、又はニッケル(Ni)被覆されたアルミニウム(Al)からなる部品14を載置する(工程A3)。
【0046】
(手順1e)
次に、
図1Eに示すように、前記基板10と前記合金膜11、及び、前記合金膜11と前記部品14と、の間を各々接合するために、熱処理を施す(工程A4)。
遠赤外線ヒータ及び熱風を用いて熱処理(リフロー)を施すことにより、基板10と合金膜11、及び、合金膜11と部品14と、の間が各々接合され、これにより基板10、合金膜11及び部品14の三者が接合される。
このとき、基板10と合金膜11、及び、部品14を載置しただけでは、何の変化も生じないが、熱処理することにより、接合界面で次のような変化が生じることを、本発明者らは見出した。
【0047】
ここで、
図5は、基板10、合金膜11及び部品14の部分を拡大して模式的に示した図である。
基板10に該当する「部材a」の上に、合金膜11に該当する「はんだ(Sn系)」、部品14に該当する「部材b」の順に設けて、リフロー(熱処理)した物品においては、「はんだ(Sn系)」の「部材a」側に、「部材aに含まれる元素Xが侵入して、この元素XとSnとの合金領域αが形成される。また、「はんだ(Sn系)」の「部材b」側には、「部材bに含まれる元素Yが侵入して、この元素Yとの合金領域βが形成される。「はんだ」は、2つの合金領域α、βに挟まれる領域に、ターゲット組成と同じ合金領域γ(Sn−Ag−Cu)が存在する。
【0048】
すなわち、本実施形態においては、
図5に示すように、まず、下方の基板10(Ni)と合金膜11(Sn−Ag−Cu)の接合界面では、Niがはんだ中に侵入し、(Sn−Ni)合金領域αが形成される。合金領域αは、1μm程度の厚みとなる。
一方、上方の合金膜11(Sn−Ag−Cu)と部品14(CuまたはNiコートされたAg)との接合界面では、CuまたはNiがはんだ中に侵入し、(Sn−Cu)あるいは(Sn−Ni)合金領域βが形成される。合金領域βは、1μm程度の厚みとなる。
そして、はんだ合金膜11において2つの合金領域α、βに挟まれる領域には、ターゲット組成と同じ合金領域γ(Sn−Ag−Cu)が存在する。
これら合金領域α(Sn−Ni)、合金領域β(Sn−CuあるいはSn−Ni)は、合金領域γ(Sn−Ag−Cu)に比べて固い部分となる。これにより、はんだ合金膜11を薄くしても、十分な機械的強度を確保することができる。
【0049】
熱処理(リフロー)の温度としては、特に限定されるものではないが、例えば240〜250℃とすることが好ましい。通常より高めの240〜250℃にて熱処理することで良好に接合することができる。
【0050】
(手順1f)
最後に、
図1Fに示すように、(レジスト12を形成した場合には、)前記レジスト12を除去する(工程A5)。
最後に、テープ状のレジスト12を除去(剥離)することにより、基板10上に、はんだからなる合金膜11を介して部品14が実装された実装品が得られる。
なお、当然ではあるが、レジスト12を形成する必要がない場合には、上述した「工程A2」と「工程A5」は不要である。
【0051】
以上説明してきたように、本発明では、はんだからなる合金膜11を形成する際に、前記カソード電極60にDCパルス電圧を印加することで、薄膜化されても従来と同等の機械的特性、電気的特性を確保した合金膜11を成膜することが可能である。これにより本発明では、従来と同等の機械的特性、電気的特性を確保しつつ、合金膜11を薄膜化することが可能であり、低コスト化、薄型化を実現可能である。
【0052】
このようにして得られた実装品において、はんだからなる合金膜11(Sn−Ag−Cu)は、基板10(Ni層)近傍に、(Sn−Ni)合金領域αを、部品(Cu部品あるいはNiコートAl部品)14近傍に、(Sn−Cu)合金あるいは(Sn−Ni)合金領域βを、それぞれ含む。
【0053】
<第二実施形態>
次に、本発明の第二実施形態について説明する。
なお、以下の説明において、上述した第一実施形態と異なる部分について主に説明し、第一実施形態と同様の部分については、その説明を省略している場合がある。
図6A〜
図6Fは、本実施形態による部品の製造方法を説明する工程断面図である。
【0054】
(手順2a)
まず、
図6Aに示すように、一方の面がニッケル(Ni)からなる基板10を用い、前記一方の面上に、銀(Ag)、錫(Sn)及び、銅(Cu)を含有する合金膜11をスパッタ法により形成する(工程B1)。
図2に示したような装置を用いて、減圧雰囲気とした空間内に、銀(Ag)、錫(Sn)及び、銅(Cu)を含有する合金ターゲットを設けたカソード電極60と、前記基板10を設けたアノード電極70とを対向して配置し、前記基板10の一方の面上に前記合金膜11を形成する際に、前記カソード電極60にDCパルス電圧を印加する。
【0055】
(手順2b)
次に、
図6Bに示すように、必要に応じて、後工程において部品14をマウントする領域にあたる部分に貫通孔12aを備えたテープ状のレジスト12を、前記合金膜11上に設ける(工程B2)。
(手順2c)
次に、
図6Cに示すように、(レジスト12を形成した場合には、レジスト12の貫通孔12aを通して見える)前記合金膜11上に、少なくとも、はんだペースト15を塗布する(工程B3)。
このとき、はんだペースト15としてフラックス13入りのはんだペースト15を用いることが好ましい。
(手順2d)
次に、
図6Dに示すように、(レジスト12を形成した場合には、レジスト12の貫通孔12aを通して見える)前記合金膜11上に、前記はんだペースト15を介して、少なくとも接触部位が、銅(Cu)、又はニッケル(Ni)被覆されたアルミニウム(Al)からなる部品14を載置する(工程B4)。
【0056】
(手順2e)
次に、
図6Eに示すように、前記基板10と前記合金膜11、前記合金膜11と前記はんだペースト15、及び前記はんだペースト15と前記部品14と、の間を各々接合するために、熱処理(リフロー)を施す(工程B5)。
(手順2f)
最後に、
図6Fに示すように、(レジスト12を形成した場合には、)前記レジスト12を除去する(工程B6)。
なお、当然ではあるが、レジスト12を形成する必要がない場合には、上述した「工程B2」と「工程B6」は不要である。
【0057】
本実施形態においても、はんだからなる合金膜11を形成する際に、前記カソード電極60にDCパルス電圧を印加することで、薄膜化されても従来と同等の機械的特性、電気的特性を確保した合金膜11を成膜することが可能である。これにより本発明では、従来と同等の機械的特性、電気的特性を確保しつつ、合金膜11を薄膜化することが可能であり、低コスト化、薄型化を実現可能である。
【0058】
このようにして得られた実装品において、合金膜11及び、はんだペースト15(Sn−Ag−Cu)は、基板(Ni層)10近傍に、(Sn−Ni)合金領域αを、部品(Cu部品あるいは、NiコートAl部品)14近傍に、(Sn−Cu)合金あるいは(Sn−Ni)合金領域βを、それぞれ含む。
【実施例1】
【0059】
本発明の効果を確認するために行った実施例について説明する。
(実施例1)
図2に示したような装置を用いて、Ni膜付き基板10上にはんだ(Sn−Ag−Cu)合金膜を形成した。
まず、スパッタ室S1にて、シリコン(Si)基板10上にNi膜を形成した。スパッタ室S1の成膜圧力を0.1Pa〜1.0Paとし、Ar流量を5sccm〜50sccmとした減圧雰囲気中において、Niターゲットを使用して、DCスパッタ法によって膜厚0.7μmのNi膜を成膜した。
次に、Ni膜付きの基板10をスパッタ室S1からスパッタ室S2へ移動した後、スパッタ室S2の成膜圧力を0.1Pa〜1.0Paとし、Ar流量を5sccm〜50sccmとした減圧雰囲気中において、Ag−Sn−Cu合金のはんだターゲット(Ag−Sn−Cu合金ターゲット)を使用して、DCパルススパッタ(マグネトロンスパッタ)によって膜厚10μmのはんだ合金膜11を、Ni膜付きの基板10上に形成した。
はんだ合金膜11上に、Cu部品14を載置し、その後熱処理(リフロー)することにより、Ni膜付き基板10、はんだ合金膜11及び、部品14の三者を接合した。
【0060】
(実施例2)
実施例1と同様にして、Ni膜付き基板10上に膜厚5μmのはんだ合金膜11を成膜した。はんだ合金膜11上にCu部品14を載置し、その後熱処理(リフロー)することにより、Ni膜付き基板10、はんだ合金膜11及び、部品14の三者を接合した。
【0061】
(比較例1)
Ni膜付き基板10上にスパッタ法によりAu膜を成膜し、Au膜上にはんだを塗布してはんだ膜を形成した。はんだ膜上にCu部品14を載置し、その後熱処理(リフロー)することにより、Ni膜付き基板10、はんだ膜及び、部品14の三者を接合した。
【0062】
実施例1において、このときのリフロープロファイルを
図7に示す。
図7から、通常(標準)よりも、高温条件(200−220秒の領域=240〜250℃)にてリフローすると良い結果が得られることがわかる。
【0063】
また、実施例1においてはんだ合金膜11とNi基板10との接合界面におけるSEM写真を
図8に、はんだ合金膜11とCu部品14との接合界面におけるSEM写真を、
図9にそれぞれ示す。
図8から、Siウェハ上に設けたNi層から、はんだ(Sn−Ag−Cu)中にNiが侵入して、(Sn−Ni)合金の領域が、局所的に(均一ではなく)形成されていることが分かる。また、
図9から、Cu部品14から、はんだ合金膜(Sn−Ag−Cu)11中にCuが侵入して、(Sn−Cu)合金の領域が、局所的に(あぶく状に)形成されていることが分かる。
これらの結果から、本発明に係るはんだ合金膜(Sn−Ag−Cu)11は、Ni膜付き基板(Ni膜)10近傍に、(Sn−Ni)合金領域を、Cu部品(NiコートAl部品)14近傍に、(Sn−Cu)合金(あるいは(Sn−Ni)合金)領域を、それぞれ含んでいることが確認された。
【0064】
次に、実施例1,2及び比較例1で得られた実装品について、接合強度を測定した。その結果を表1に示す。なお、表1に示す結果は、10サンプルについての平均値である。
【0065】
【表1】
【0066】
表1から、本発明のSn−Ag−Cu系のはんだは、従来、密着層として用いていたAu膜と同レベルの接合強度を有していること分かった。Au膜の場合(比較例1)に比べて、はんだ合金膜11の厚さを5μmとした場合(実施例2)の接着強度は若干低いが、はんだ合金膜11の厚さを10μmとした場合(実施例1)には、Au膜の場合(比較例1)を上回る接合強度が得られていることが確認された。これにより、密着層として用いられていたAu膜を形成しなくても十分な接合強度を確保することができ、コストの低下を図ることができる。
【0067】
以上、本発明の部品の製造方法について説明してきたが、本発明は上述した例に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。