(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記可変抵抗は、前記補正コイルのギャップに前記コイル導体と直列接続で設けられる抵抗体と、前記コイル導体と前記抵抗体との間に跨って前記補正コイルの周回方向に移動可能な架橋型の短絡導体を有し、前記短絡導体の位置によって所望の抵抗値を選択できる、請求項2に記載のプラズマ処理装置。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、添付図を参照して本発明の好適な実施形態を説明する。
[第1の実施形態]
【0028】
図1〜
図10につき、本発明の第1の実施形態を説明する。
【0029】
図1に、第1の実施形態における誘導結合型プラズマ処理装置の構成を示す。この誘導結合型プラズマ処理装置は、平面コイル形のRFアンテナを用いるプラズマエッチング装置として構成されており、たとえばアルミニウムまたはステンレス鋼等の金属製の円筒型真空チャンバ(処理容器)10を有している。チャンバ10は、保安接地されている。
【0030】
先ず、この誘導結合型プラズマエッチング装置においてプラズマ生成に関係しない各部の構成を説明する。
【0031】
チャンバ10内の下部中央には、被処理基板としてたとえば半導体ウエハWを載置する円板状のサセプタ12が高周波電極を兼ねる基板保持台として水平に配置されている。このサセプタ12は、たとえばアルミニウムからなり、チャンバ10の底から垂直上方に延びる絶縁性の筒状支持部14に支持されている。
【0032】
絶縁性筒状支持部14の外周に沿ってチャンバ10の底から垂直上方に延びる導電性の筒状支持部16とチャンバ10の内壁との間に環状の排気路18が形成され、この排気路18の上部または入口に環状のバッフル板20が取り付けられるとともに、底部に排気ポート22が設けられている。チャンバ10内のガスの流れをサセプタ12上の半導体ウエハWに対して軸対象に均一にするためには、排気ポート22を円周方向に等間隔で複数設ける構成が好ましい。
【0033】
各排気ポート22には排気管24を介して排気装置26が接続されている。排気装置26は、ターボ分子ポンプなどの真空ポンプを有しており、チャンバ10内のプラズマ処理空間を所望の真空度まで減圧することができる。チャンバ10の側壁の外には、半導体ウエハWの搬入出口27を開閉するゲートバルブ28が取り付けられている。
【0034】
サセプタ12には、RFバイアス用の高周波電源30が整合器32および給電棒34を介して電気的に接続されている。この高周波電源30は、半導体ウエハWに引き込むイオンのエネルギーを制御するのに適した一定周波数(13.56MHz以下)の高周波RF
Lを可変のパワーで出力できるようになっている。整合器32は、高周波電源30側のインピーダンスと負荷(主にサセプタ、プラズマ、チャンバ)側のインピーダンスとの間で整合をとるためのリアクタンス可変の整合回路を収容している。その整合回路の中に自己バイアス生成用のブロッキングコンデンサが含まれている。
【0035】
サセプタ12の上面には、半導体ウエハWを静電吸着力で保持するための静電チャック36が設けられ、静電チャック36の半径方向外側に半導体ウエハWの周囲を環状に囲むフォーカスリング38が設けられる。静電チャック36は導電膜からなる電極36aを一対の絶縁膜36b,36cの間に挟み込んだものであり、電極36aには高圧の直流電源40がスイッチ42および被覆線43を介して電気的に接続されている。直流電源40より印加される高圧の直流電圧により、静電力で半導体ウエハWを静電チャック36上に吸着保持することができる。
【0036】
サセプタ12の内部には、たとえば円周方向に延びる環状の冷媒室または冷媒流路44が設けられている。この冷媒室44には、チラーユニット(図示せず)より配管46,48を介して所定温度の冷媒たとえば冷却水cwが循環供給される。冷媒の温度によって静電チャック36上の半導体ウエハWの処理中の温度を制御できる。これと関連して、伝熱ガス供給部(図示せず)からの伝熱ガスたとえばHeガスが、ガス供給管50を介して静電チャック36の上面と半導体ウエハWの裏面との間に供給される。また、半導体ウエハWのローディング/アンローディングのためにサセプタ12を垂直方向に貫通して上下移動可能なリフトピンおよびその昇降機構(図示せず)等も設けられている。
【0037】
次に、この誘導結合型プラズマエッチング装置においてプラズマ生成に関係する各部の構成を説明する。
【0038】
チャンバ10の天井には、サセプタ12から比較的大きな距離間隔を隔てて、たとえば石英板からなる円形の誘電体窓52が気密に取り付けられている。この誘電体窓52の上には、通常はチャンバ10またはサセプタ12と同軸に、コイル状のRFアンテナ54が水平に配置されている。このRFアンテナ54は、好ましくは、たとえばスパイラルコイル(
図2A)または各一周内で半径一定の同心円コイル(
図2B)の形体を有しており、絶縁体からなるアンテナ固定部材(図示せず)によって誘電体窓52の上に固定されている。
【0039】
RFアンテナ54の一端には、プラズマ生成用の高周波電源56の出力端子が整合器58および給電線60を介して電気的に接続されている。RFアンテナ54の他端は、図示省略するが、アース線を介して電気的にグランド電位に接続されている。
【0040】
高周波電源56は、高周波放電によるプラズマの生成に適した一定周波数(13.56MHz以上)の高周波RF
Hを可変のパワーで出力できるようになっている。整合器58は、高周波電源56側のインピーダンスと負荷(主にRFアンテナ、プラズマ、補正コイル)側のインピーダンスとの間で整合をとるためのリアクタンス可変の整合回路を収容している。
【0041】
チャンバ10内の処理空間に処理ガスを供給するための処理ガス供給部は、誘電体窓52より幾らか低い位置でチャンバ10の側壁の中(または外)に設けられる環状のマニホールドまたはバッファ部62と、円周方向に等間隔でバッファ部62からプラズマ生成空間に臨む多数の側壁ガス吐出孔64と、処理ガス供給源66からバッファ部62まで延びるガス供給管68とを有している。処理ガス供給源66は、流量制御器および開閉弁(図示せず)を含んでいる。
【0042】
この誘導結合型プラズマエッチング装置は、チャンバ10内の処理空間に生成される誘導結合プラズマの密度分布を径方向で可変制御するために、チャンバ10の天板の上に設けられる大気圧空間のアンテナ室内でRFアンテナ54と電磁誘導により結合可能な補正コイル70と、この補正コイル70に誘導電流が流れる通電のデューティ・レシオを可変制御するためのスイッチング機構110とを備えている。補正コイル70およびスイッチング機構110の構成および作用は後に詳細に説明する。
【0043】
主制御部74は、たとえばマイクロコンピュータを含み、このプラズマエッチング装置内の各部たとえば排気装置26、高周波電源30,56、整合器32,58、静電チャック用のスイッチ42、処理ガス供給源66、スイッチング機構110、チラーユニット(図示せず)、伝熱ガス供給部(図示せず)等の個々の動作および装置全体の動作(シーケンス)を制御する。
【0044】
この誘導結合型プラズマエッチング装置において、エッチングを行なうには、先ずゲートバルブ28を開状態にして加工対象の半導体ウエハWをチャンバ10内に搬入して、静電チャック36の上に載置する。そして、ゲートバルブ28を閉めてから、処理ガス供給源66よりガス供給管68、バッファ部62および側壁ガス吐出孔64を介してエッチングガス(一般に混合ガス)を所定の流量および流量比でチャンバ10内に導入し、排気装置26によりチャンバ10内の圧力を設定値にする。さらに、高周波電源56をオンにしてプラズマ生成用の高周波RF
Hを所定のRFパワーで出力させ、整合器58,給電線60を介してRFアンテナ54に高周波RF
Hの電流を供給する。一方、高周波電源30をオンにしてイオン引き込み制御用の高周波RF
Lを所定のRFパワーで出力させ、この高周波RF
Lを整合器32および給電棒34を介してサセプタ12に印加する。また、伝熱ガス供給部より静電チャック36と半導体ウエハWとの間の接触界面に伝熱ガス(Heガス)を供給するとともに、スイッチ42をオンにして静電チャック36の静電吸着力により伝熱ガスを上記接触界面に閉じ込める。
【0045】
側壁ガス吐出孔64より吐出されたエッチングガスは、誘電体窓52の下の処理空間に均一に拡散する。RFアンテナ54を流れる高周波RF
Hの電流によって、磁力線が誘電体窓52を貫通してチャンバ内のプラズマ生成空間を通過するようなRF磁界がRFアンテナ54の周りに発生し、このRF磁界の時間的な変化によって処理空間の方位角方向にRF誘導電界が発生する。そして、この誘導電界によって方位角方向に加速された電子がエッチングガスの分子や原子と電離衝突を起こし、ドーナツ状のプラズマが生成される。このドーナツ状プラズマのラジカルやイオンは広い処理空間で四方に拡散し、ラジカルは等方的に降り注ぐようにして、イオンは直流バイアスに引っぱられるようにして、半導体ウエハWの上面(被処理面)に供給される。こうしてウエハWの被処理面にプラズマの活性種が化学反応と物理反応をもたらし、被加工膜が所望のパターンにエッチングされる。
【0046】
この誘導結合型プラズマエッチング装置は、上記のようにRFアンテナ54に近接する誘電体窓52の下で誘導結合のプラズマをドーナツ状に生成し、このドーナツ状のプラズマを広い処理空間内で分散させて、サセプタ12近傍(つまり半導体ウエハW上)でプラズマの密度を平均化するようにしている。ここで、ドーナツ状プラズマの密度は、誘導電界の強度に依存し、ひいてはRFアンテナ54に供給される高周波RF
Hのパワー(より正確にはRFアンテナ54を流れる電流)の大きさに依存する。すなわち、高周波RF
Hのパワーを高くするほど、ドーナツ状プラズマの密度が高くなり、プラズマの拡散を通じてサセプタ12近傍でのプラズマの密度は全体的に高くなる。一方で、ドーナツ状プラズマが四方(特に径方向)に拡散する形態は主にチャンバ10内の圧力に依存し、圧力を低くするほど、チャンバ10の中心部にプラズマが多く集まって、サセプタ12近傍のプラズマ密度分布が中心部で盛り上がる傾向がある。また、RFアンテナ54に供給される高周波RF
Hのパワーやチャンバ10内に導入される処理ガスの流量等に応じてドーナツ状プラズマ内のプラズマ密度分布が変わることもある。
【0047】
ここで「ドーナツ状のプラズマ」とは、チャンバ10の径方向内側(中心部)にプラズマが立たず径方向外側にのみプラズマが立つような厳密にリング状のプラズマに限定されず、むしろチャンバ10の径方向内側より径方向外側のプラズマの体積または密度が大きいことを意味する。また、処理ガスに用いるガスの種類やチャンバ10内の圧力の値等の条件によっては、ここで云う「ドーナツ状のプラズマ」にならない場合もある。
【0048】
このプラズマエッチング装置では、サセプタ12近傍のプラズマ密度分布を径方向で均一化するうえで、RFアンテナ54の発生するRF磁界に対して補正リング70により電磁界的な補正をかけるとともに、プロセス条件(チャンバ10内の圧力等)に応じてスイッチング機構110により補正コイル70の通電デューティ・レシオを可変するようにしている。
【0049】
以下、この誘導結合型プラズマエッチング装置における主要な特徴部分である補正リング70およびスイッチング機構110の構成および作用を説明する。
【0050】
より詳しくは、補正コイル70は、
図6に示すように両端が適度なギャップgを挟んで開放した円環状の単巻コイル(または複巻コイル)からなり、径方向においてコイル導体がRFアンテナ54の内周と外周との間(好ましくは真ん中付近)に位置するようにRFアンテナ54に対して同軸に配置され、RFアンテナ54に近接した一定の高さ位置で絶縁性のコイル保持部材(図示せず)により水平に保持されている。補正コイル70の材質は、導電率の高いたとえば銅系の金属が好ましい。
【0051】
なお、本発明において「同軸」とは、複数のコイルまたはアンテナのそれぞれの中心軸線が互いに重なっている位置関係であり、それぞれのコイル面またはアンテナ面が軸方向または縦方向で互いにオフセットしている場合だけでなく同一面上で一致している場合(同心状の位置関係)も含む。
【0052】
ここで、補正コイル70にギャップgが無い構成を完全無端型の補正コイル70'と称し、この完全無端型補正コイル70'の高さ位置を変えた場合の作用を説明する。
【0053】
先ず、
図3Aに示すように、完全無端型補正コイル70'の高さ位置を上限値付近に設定したときは、RFアンテナ54を流れる高周波RF
Hの電流によってアンテナ導体の周りに発生するRF磁界Hは、完全無端型補正コイル70'から何の影響も受けずに誘電体窓52の下の処理空間を半径方向に通過するループ状の磁力線を形成する。
【0054】
処理空間における磁束密度の半径方向(水平)成分Brは、チャンバ10の中心(O)と周辺部では高周波RF
Hの電流の大きさに関係なく常に零であり、半径方向においてRFアンテナ54の内周と外周のちょうど中間辺り(以下、「アンテナミドル部」と称する。)と重なる位置で極大になり、高周波RF
Hの電流が大きいほどその極大値が高くなる。RF磁界Hによって生成される方位角方向の誘導電界の強度分布も、半径方向において磁束密度Brと同様のプロファイルになる。こうして、誘電体窓52の近くでRFアンテナ54と同軸にドーナツ状プラズマが形成される。
【0055】
そして、このドーナツ状プラズマが処理空間で四方(特に半径方向)に拡散する。上述したように、その拡散形態はチャンバ10内の圧力に依存するが、一例として
図3Aに示すように、サセプタ12近傍の径方向で電子密度(プラズマ密度)が相対的にアンテナミドル部と対応する位置で高く(極大のままで)中心部と周辺部で落ち込むようなプロファイルを示す場合がある。
【0056】
このような場合に、
図3Bに示すように、完全無端型補正コイル70'の高さ位置をたとえば下限値付近まで下げると、図示のように、RFアンテナ54を流れる高周波RF
Hの電流によってアンテナ導体の周りに発生するRF磁界Hは、完全無端型補正コイル70'により電磁誘導の反作用の影響を受ける。この電磁誘導の反作用は、完全無端型補正コイル70'のループ内を貫く磁力線(磁束)の変化に逆らおうとする作用であり、完全無端型補正コイル70'のループに誘導起電力が発生して電流が流れる。
【0057】
こうして、完全無端型補正コイル70'からの電磁誘導の反作用により、完全無端型補正コイル70'のコイル導体(特にアンテナミドル部)の略真下の位置で、誘電体窓52近くの処理空間における磁束密度の半径方向(水平)成分Brが局所的に弱められ、それによって方位角方向の誘導電界の強度も、磁束密度Brと同様にアンテナミドル部と対応する位置で局所的に弱められる。結果として、サセプタ12近傍で電子密度(プラズマ密度)が径方向でほどよく均一化される。
【0058】
図3Aに示すようなプラズマの拡散形態は一例であり、たとえば圧力が低いときは、チャンバ10の中心部にプラズマが集まりすぎて、
図4Aに示すようにサセプタ12近傍の電子密度(プラズマ密度)が相対的に中心部で極大となるような山形のプロファイルを示す場合がある。
【0059】
このような場合でも、
図4Bに示すように、完全無端型補正コイル70'をたとえば下限値付近まで下げると、図示のように、完全無端型補正コイル70'のコイル導体と重なるミドル部の位置で、誘電体窓52近くの処理空間における磁束密度の半径方向(水平)成分Brが局所的に弱められ、それによってチャンバ中心部ヘのプラズマの集中が弱まり、サセプタ12近傍のプラズマ密度が径方向でほどよく均一化される。
【0060】
本発明者は、上記のような完全無端型補正コイル70'の作用を電磁界シミュレーションにより検証した。すなわち、RFアンテナ54に対する完全無端型補正コイル70'の相対的高さ位置(距離間隔)をパラメータとし、パラメータの値を5mm、10m、20mm、無限大(補正コイル無し)の4通りに選んで、ドーナツ状プラズマ内部(上面から5mmの位置)の半径方向の電流密度分布(プラズマ密度分布に相当)を求めたところ、
図5に示すような検証結果が得られた。
【0061】
この電磁界シミュレーションでは、RFアンテナ54の外径(半径)を250mmに設定し、完全無端型補正コイル70'の内周半径および外周半径をそれぞれ100mmおよび130mmに設定した。RFアンテナ54の下方のチャンバ内処理空間で誘導結合により生成されるドーナツ状のプラズマは、円盤形状の抵抗体で模擬し、この抵抗体の直径を500mm、抵抗率を100Ωcm、表皮厚さを10mmに設定した。プラズマ生成用の高周波RF
Hの周波数は13.56MHzとした。
【0062】
図5から、RFアンテナ54と電磁誘導で結合する高さ位置に完全無端型補正コイル70'を配置すると、ドーナツ状プラズマ内のプラズマ密度は補正コイル70のコイル導体と重なる位置(図示の例ではアンテナミドル部と重なる位置)付近で局所的に低減することと、RFアンテナ54に完全無端型補正コイル70'を近づけるほどその局所的低減の度合いが略リニアに大きくなることがわかる。
【0063】
この実施形態の誘導結合型プラズマエッチング装置(
図1)は、上記のような完全無端型補正コイル70'を用いる代わりに、
図6に示すように、両端が適度なギャップgを挟んで開放した単巻コイル(または複巻コイル)からなる補正コイル70を使用し、この補正コイル70の両開放端の間にスイッチング素子112を接続している。
【0064】
スイッチング機構110は、このスイッチング素子112をパルス幅変調(PWM)により一定周波数(たとえば1〜100kHz)でオン/オフ制御またはスイッチング制御するスイッチング制御回路114を有している。
【0065】
図7に、スイッチング機構110の具体的な一構成例を示す。この構成例では、スイッチング素子112として、一対のトランジスタ(たとえばIGBTまたはMOSトランジスタ)112A,112Bを互いに逆向きで並列に接続し、各々のトランジスタ112A,112Bと直列に逆バイアス保護用のダイオード116A,116Bを接続している。
【0066】
両トランジスタ112A,112Bは、スイッチング制御回路114からのPWM制御信号SWによって同時にオン/オフする。オン期間中、高周波の前半の半周期で補正コイル70を正方向に流れる正極性の誘導電流i
+は第1のトランジスタ112Aおよび第1のダイオード116Aを流れ、高周波の後半の半周期で補正コイル70を逆方向に流れる負極性の誘導電流i
-は第2のトランジスタ112Bおよび第2のダイオード116Bを流れるようになっている。
【0067】
スイッチング制御回路114は、図示省略するが、たとえば上記一定周波数の三角波信号を発生する三角波発生回路と、所望のデューティ・レシオ(一周期のパルスのオン期間の比率)に対応する可変の電圧レベルで電圧信号を発生する可変電圧信号発生回路と、上記三角波信号と上記可変電圧信号のそれぞれの電圧レベルを比較してその大小関係に応じた2値のPWM制御信号SWを生成するコンパレータと、両トランジスタ112A,112BをPWM制御信号SWで駆動する駆動回路とを有している。ここで、所望のデューティ・レシオは、主制御部74より所定の制御信号S
Dを通じてスイッチング制御回路114に与えられる。
【0068】
この実施形態によれば、上記のような構成のスイッチング機構110により、プラズマプロセス中に補正コイル70の通電デューティ・レシオをPWM制御により制御し、
図8に示すように、その通電デューティ・レシオを0%〜100%の範囲内で任意に可変制御することができる。
【0069】
ここで重要なことは、上記のようなPWM制御により補正コイル70に誘導電流iを流す通電のデューティ・レシオを0%〜100%の範囲で任意に可変することは、上述したような完全無端型補正コイル70'の高さ位置を上限位置付近のホームポジションH
PとRFアンテナ54に近接した下限位置との間で任意に可変することと機能的に等価であるということである。別な見方をすれば、スイッチング機構110により、補正コイル70をRFアンテナ54近傍の高さ位置に固定したままで、
図5の特性を装置的に実現することが可能である。これによって、プラズマ密度分布制御の自由度および精度の向上を簡便に達成することができる。
【0070】
したがって、プロセスレシピでプロセス条件の全部または一部が変わる度毎に、スイッチング機構110を通じて補正コイル70の通電デューティ・レシオを可変制御することで、RFアンテナ54を流れる高周波RF
Hの電流によってアンテナ導体の周りに発生するRF磁界Hに対する補正コイル70の作用、つまり補正コイル70のコイル導体と重なる位置辺りでドーナツ状プラズマ内のプラズマ密度を局所的に低減させる効果の度合い(強弱)を任意かつ精細に調節することができる。
【0071】
この実施形態における誘導結合型プラズマエッチング装置は、たとえば、基板表面の多層膜を複数のステップで連続的にエッチング加工するアプリケーションに好適に適用できる。以下、
図9に示すような多層レジスト法に係る本発明の実施例について説明する。
【0072】
図9において、加工対象の半導体ウエハWの主面には、本来の被加工膜(たとえばゲート用のSi膜)100の上に最下層(最終マスク)としてSiN層102が形成され、その上に中間層として有機膜(たとえばカーボン)104が形成され、その上にSi含有の反射防止膜(BARC)106を介して最上層のフォトレジスト108が形成される。SiN層102、有機膜104および反射防止膜106の成膜にはCVD(化学的真空蒸着法)あるいはスピンオンによる塗布膜が用いられ、フォトレジスト108のパターニングにはフォトリソグラフィが用いられる。
【0073】
最初に、第1ステップのエッチングプロセスとして、
図9の(A)に示すようにパターニングされたフォトレジスト108をマスクとしてSi含有反射防止膜106をエッチングする。この場合、エッチングガスにはCF
4/O
2の混合ガスが用いられ、チャンバ10内の圧力は比較的低く、たとえば10mTorrに設定される。
【0074】
次に、第2ステップのエッチングプロセスとして、
図9の(B)に示すようにフォトレジスト108および反射防止膜106をマスクとして有機膜104をエッチング加工する。この場合、エッチングガスにはO
2の単ガスが用いられ、チャンバ10内の圧力は更に低く、たとえば5mTorrに設定される。
【0075】
最後に、第3ステップのエッチングプロセスとして、
図9の(C)、(D)に示すように、パターニングされた反射防止膜106および有機膜104をマスクとしてSiN膜102をエッチング加工する。この場合、エッチングガスにはCHF
3/CF
4/Ar/O
2の混合ガスが用いられ、チャンバ10内の圧力は比較的高く、たとえば50mTorrに設定される。
【0076】
上記のようなマルチステップのエッチングプロセスにおいては、ステップ毎にプロセス条件の全部または一部(特にチャンバ10内の圧力)が切り換わり、それによって処理空間内でドーナツ状プラズマの拡散する形態が変化する。ここで、補正コイル70を全然機能(通電)させない場合は、第1および第2ステップのプロセス(圧力10mTorr以下)では
図4Aのようにサセプタ12近傍の電子密度(プラズマ密度)が相対的に中心部で顕著に盛り上がるような急峻な山形のプロファイルが現れ、第3ステップのプロセス(圧力50mTorr)では中心部がわずかに盛り上がるような緩やかな山形のプロファイルが現れるものとする。
【0077】
この実施形態によれば、たとえばプロセスレシピにおいて、通常のプロセス条件(高周波のパワー、圧力、ガス種、ガス流量等)に追加する仕方で、またはそれらと連関させる仕方で、補正コイル70の通電デューティ・レシオをレシピ情報またはプロセスパラメータの1つとして設定する。そして、上記のようなマルチステップ方式のエッチングプロセスを実行する際に、主制御部74が通電デューティ・レシオを表わすデータをメモリから読み出し、各ステップ毎にスイッチング機構110を通じて補正コイル70の通電デューティ・レシオを設定値に合わせる。
【0078】
たとえば、
図9のような多層レジスト法によるマルチステップのエッチングプロセスを実施する場合は、
図10に示すように、第1ステップ(10mTorr)では比較的大きいデューティ・レシオD
1に、第2ステップ(5mTorr)では更に大きいデューティ・レシオD
2に、第3ステップ(50mTorr)では比較的小さいデューティ・レシオD
3に、補正コイル70の通電デューティ・レシオをステップ毎に切り換える。
【0079】
また、プラズマ着火性の観点から、各ステップのプロセス開始直後は、補正コイル70の通電を強制的にオフ状態に保持してプラズマを安定確実に着火させ、プラズマの着火後に設定値の通電デューティ・レシオに合わせる手法も効果的である。
[第2の実施形態]
【0080】
次に、
図11〜
図14につき、本発明の第2の実施形態を説明する。
【0081】
図11に、第2の実施形態における誘導結合型プラズマエッチング装置の構成を示す。図中、上述した第1の実施形態の装置(
図1)と同様の構成または機能を有する部分には同一の符号を附している。
【0082】
この第2の実施形態の特徴は、上述した第1の実施形態と対比すると、スイッチング機構110の代わりに抵抗可変機構120を備える構成にある。
【0083】
より詳しくは、補正コイル70は、両端が適度なギャップgを挟んで開放した円環状の単巻コイルまたは複巻コイルからなり、径方向においてコイル導体がRFアンテナ54の内周と外周との間(好ましくは真ん中付近)に位置するようにRFアンテナ54に対して同軸に配置され、RFアンテナ54に近接した高さ位置で絶縁性のコイル保持部材(図示せず)により水平に保持されている。
【0084】
抵抗可変機構120は、
図12に示すように、補正コイル70の両開放端に接続される可変抵抗122と、この可変抵抗122の抵抗値を所望の値に制御する抵抗制御部124とを有している。
【0085】
図13に、抵抗可変機構120の具体的構成例を示す。この構成例における可変抵抗122は、補正コイル70の両開放端の間のギャップgを塞ぐように絶縁体126を介して挿入された抵抗率の高い金属系または炭素系の抵抗体128と、補正コイル70上で一定の距離間隔を隔てた2点間を短絡する架橋型短絡導体130とを有している。架橋型短絡導体130の材質は、導電率の高いたとえば銅系の金属が好ましい。
【0086】
抵抗制御部124は、架橋型短絡導体130を支持しつつ補正コイル70上でスライド移動させるためのスライド機構132と、このスライド機構132を通じて架橋型短絡導体130の位置を所望の抵抗ポジションに合わせる抵抗ポジション制御部134とを有している。
【0087】
より詳細には、スライド機構132は、ボールネジ機構からなり、一定の位置で水平に延びる送りネジ136を回転するためのステッピングモータ138と、送りネジ136と螺合するナット部(図示せず)を有し、送りネジ136の回転によってその軸方向に水平移動するスライダ本体140と、このスライダ本体140と架橋型短絡導体130と結合する圧縮コイルバネ142および鉛直方向で摺動可能に嵌合する一対の円筒体144,146とで構成されている。ここで、外側の円筒体144はスライダ本体140に固定され、内側の円筒体146は架橋型短絡導体130に固定されている。圧縮コイルバネ142は、弾性力によって架橋型短絡導体130を補正コイル70に押し付ける。
【0088】
抵抗ポジション制御部134は、ステッピングモータ138の回転方向および回転量を通じて架橋型短絡導体130の位置を制御する。架橋型短絡導体130の目標位置は、主制御部74(
図11)より所定の制御信号S
Rを通じて抵抗ポジション制御部134に与えられる。
【0089】
ここで、
図13および
図14A〜14Cにつき抵抗可変機構120の作用を説明する。
【0090】
先ず、架橋型短絡導体130を
図13に示す位置にセットしたときは、補正コイル70のコイル導体の両端が、抵抗体128を介さずに架橋型短絡導体130によりバイパスして短絡される。これによって、可変抵抗122の抵抗値が最も低い値(実質的に零)になり、それによって補正コイル70全体のコイル抵抗値が最も低い値になる。
【0091】
図13の状態から、架橋型短絡導体130を図の右方にスライド移動させて
図14Aに示す位置に位置決めしたとする。この位置では、架橋型短絡導体130の一端(右端)のコンタクト部130Rはコイル導体の一端(右端)部に接続したままであるが、他端(左端)のコンタクト部130Lはコイル導体の他端(左端)を超えて抵抗体128の区間内に入っている。これによって、可変抵抗122の抵抗値が零ではない有意の値になり、補正コイル70全体のコイル抵抗値が
図13のときよりも高くなる。
【0092】
図14Aの状態から、架橋型短絡導体130を更に図の右方にスライド移動させると、補正コイル70の電流路に占める抵抗体128の区間長が増大して、可変抵抗122の抵抗値がそのぶん更に高くなり、補正コイル70全体のコイル抵抗値が
図14Aのときよりも更に高くなる。
【0093】
そして、
図14Bに示すように、架橋型短絡導体130の左端のコンタクト部130Lを抵抗体128の絶縁体126側の他端まで移動させたときは、補正コイル70の電流路に占める抵抗体128の区間長が最大になる。これによって、可変抵抗122の抵抗値が最大になり、補正コイル70全体のコイル抵抗値が最大になる。
【0094】
また、
図14Bの状態から、架橋型短絡導体130を更に図の右方にスライド移動させて、
図14Cに示すように、架橋型短絡導体130の左端のコンタクト部130Lを絶縁体126を越えて右側のコイル導体まで移動させると、補正コイル70は絶縁体126によって電気的に切断され、実質的に両端開放状態となる。別な見方をすれば、可変抵抗122の抵抗値が無限大になる。
【0095】
このように、この実施形態においては、抵抗可変機構120により可変抵抗122の抵抗値を可変制御し、上記のように、補正コイル70全体のコイル抵抗を両端の閉じたコイルと同等の最小の抵抗値(
図13)から抵抗体128の全区間を含む最大の抵抗値(
図14A,
図14B)まで連続的に可変することが可能であり、さらには補正コイル70が無いのと等価なコイル切断状態(
図14C)も選択できるようになっている。
【0096】
これによって、RFアンテナ54に高周波RF
Hの電流を流した時に、電磁誘導により補正コイル70に流れる電流の電流値(振幅値または尖頭値)を0%〜100%の範囲内で任意に可変制御することができる。ここで、電流値100%はコイル短絡状態の位置(
図13)で流れるときの電流値に相当し、電流値0%はコイル切断状態の位置(
図14C)で流れるときの電流値に相当する。
【0097】
ここで重要なことは、上記のような補正コイル70の抵抗可変制御により補正コイル70に流す電流の電流値を0%〜100%の範囲で任意に可変することは、上述したような完全無端型補正コイル70'の高さ位置を上限位置付近のホームポジションH
PとRFアンテナ54に近接した下限位置との間で任意に可変することと機能的に等価であるということである。別な見方をすれば、抵抗可変機構120により、補正コイル70をRFアンテナ54近傍の高さ位置に固定したままで、
図5の特性を装置的に実現することが可能であり、上記第1の実施形態と同様により簡便にプラズマ密度分布制御の自由度および精度の向上を達成することができる。
【0098】
したがって、プロセスレシピで所定のプロセスパラメータの値が変わる度毎に、抵抗可変機構120を通じて補正コイル70に流れる電流の振幅値を可変制御することで、RFアンテナ54を流れる高周波RF
Hの電流によってアンテナ導体の周りに発生するRF磁界Hに対する補正コイル70の作用、つまり補正コイル70のコイル導体と重なる位置辺りでドーナツ状プラズマ内のプラズマ密度を局所的に低減させる効果の度合い(強弱)を任意かつ精細に調節することができる。これにより、全ステップを通じてサセプタ12近傍のプラズマ密度を径方向で均一に保ち、多層レジスト法におけるエッチングプロセスの均一性を向上させることができる。
【0099】
たとえば、
図9のような多層レジスト法によるマルチステップのエッチングプロセスを実施する場合は、図示省略するが、第1ステップ(10mTorr)では比較的低い抵抗値(抵抗ポジション)R
1に、第2ステップ(5mTorr)では更に低い抵抗値(抵抗ポジション)R
2に、第3ステップ(50mTorr)では比較的高い抵抗値(抵抗ポジション)R
3に、可変抵抗122の抵抗値(抵抗ポジション)をステップ毎に切り換えればよい。
【0100】
また、プラズマ着火性の観点から、各ステップのプロセス開始直後は、補正コイル70を電気的切断状態(
図14C)に保持しておいてプラズマを安定確実に着火させ、プラズマの着火後に可変抵抗122を予設定の抵抗値(抵抗ポジション)に合わせる手法も効果的である。
[変形例]
【0101】
図15に、上記第1の実施形態における補正コイル70およびスイッチング機構110の一変形例を示す。この実施形態は、コイル径の異なる複数(たとえば2つ)の補正コイル70A,70Bを同心円状(または同軸状)に配置して、それらの補正コイル70A,70Bのループ内にスイッチング素子112A,112Bをそれぞれ設ける。そして、個別のスイッチング制御回路114A,114Bによりスイッチング素子112A,112Bをそれぞれ独立に任意の通電デューティ・レシオでPWM制御によりオン/オフ制御する構成としている。
【0102】
図16に、上記第2の実施形態における補正コイル70および抵抗可変機構120の一変形例を示す。この実施形態は、コイル径の異なる複数(たとえば2つ)の補正コイル70A,70Bを同心円状(または同軸状)に配置して、それらの補正コイル70A,70Bのループ内に可変抵抗122A,122Bをそれぞれ設ける。そして、個別の抵抗制御部124A,124Bにより可変抵抗122A,122Bの抵抗値をそれぞれ独立かつ任意に可変制御する構成としている。
【0103】
図15のスイッチング機構110においても、また
図16の抵抗可変機構120においても、2つの補正コイル70A,70Bに流す誘導電流の値(通電デューティ・レシオまたは尖頭値)の組み合わせは任意かつ多種多様に選択可能であり、プラズマ密度分布制御の自由度を一層大きく拡張することができる。
【0104】
また、
図17Aに示すように、補正コイル70Bを非作動(非通電)状態に保持して補正コイル70Aだけを作動(通電)させることも可能である。あるいは
図17Bに示すように、補正コイル70Aを非作動(非通電)状態に保持して補正コイル70Bだけを作動(通電)させることも可能である。また、
図17Cに示すように、両補正コイル70A,70Bを同時に作動(通電)させることも可能である。
[第3の実施形態]
【0105】
別の実施形態として、上記第1の実施形態において、スイッチング機構110を
図18に示すような開閉機構150に置き換える構成も可能である。この開閉機構150は、補正コイル70の両開放端に導体を介して接続される開閉器152と、主制御部74からの指示に基づいて開閉器152の開閉(オン/オフ)状態を切替制御する開閉制御回路154とを有している。
【0106】
この開閉機構150において、開閉器152を開(オフ)状態に切り換えている時は、補正コイル70に誘導電流は流れないため、補正コイル70が無い場合と等価になる。開閉器152を閉(オン)状態に切り替えている時は、補正コイル70は両端の閉じたコイルと等価になり、RFアンテナ54に高周波RF
Hの電流を流すと補正コイル70に誘導電流が流れる。
【0107】
図19に示すように、このような開閉機構150を複数の補正コイル70A,70Bを同心円状に配置する構成にも適用できる。すなわち、コイル径の異なる複数(たとえば2個)の補正コイル70A,70Bを同心円状に配置して、それらの補正コイル70A,70Bに開閉器152A,152Bをそれぞれ挿入接続する。そして、個別の開閉制御回路154A,154Bにより開閉器152A,152Bをそれぞれ独立に開閉制御することができる。このような開閉器方式においても、制御の自由度はある程度制限されるが、
図17A〜17Cのような電流密度(ドーナツ状プラズマの密度)分布の可変制御を行うことができる。
【0108】
また、上記のような開閉機構150を設ける場合は、1枚の被処理基板に対するプラズマ処理の中で、プロセス条件の変更、変化または切り替えに応じて、開閉器150(152A,152B)の開閉状態を制御する手法を好適に採ることができる。
【0109】
たとえば、上記のような多層レジスト法によるマルチステップのエッチングプロセス(
図9)において、
図18のような単一型の補正コイル70(開閉器152)を用いる場合は、
図20に示すように、第1ステップでは開閉器152を開(オフ)状態に切り替え、第2ステップでは開閉器152を閉(オン)状態に切り替え、第3ステップでは開閉器152を開(オフ)状態に切り替える。
【0110】
また、
図19のような双子型の補正コイル70A,70B(開閉器152A,152B)を用いる場合は、
図21に示すように、第1ステップでは開閉器152A,152Bを共に開(オフ)状態に切り替え、第2ステップでは開閉器152A,152Bを共に閉(オン)状態に切り替え、第3ステップでは開閉器152Aを開(オフ)状態,開閉器152Bを閉(オン)状態にそれぞれ切り替える。
【0111】
また、
図22に示すように、複数(たとえ3個)の補正コイル70A,70B,70cを縦方向に並べて同軸状に配置する構成にも、上記と同様の開閉器152A,152B,152Cおよび開閉制御回路154A,154B,154C(図示省略)を適用できる。
【0112】
補正コイル70に関する別の実施例として、
図23に示すように、複数(たとえば3つ)のコイル導体70(1),70(2),70(3)をそれぞれ個別の補正コイルとして機能させる単独モードと、電気的に直列に接続された1つの補正コイルとして機能させる連結モードとを選択的に切り替えられる構成も可能である。
【0113】
図23において、各々のコイル導体70(1),70(2),70(3)は、両端が適度なギャップを挟んで開放した円環状の単巻コイル(または複巻コイル)からなり、それらのギャップが3つの切替スイッチ160,162,164と1つの開閉スイッチ166とを介して電気的に複数種類のモードで接続可能となっている。
【0114】
第1の切替スイッチ160は、最も内側のコイル導体70(1)の一端に接続される第1の固定接点160aと、このコイル導体70(1)の他端に接続される可動接点160bと、隣の中間のコイル導体70(2)の一端に接続される第2の固定接点160cとを有している。
【0115】
第2の切替スイッチ162は、中間コイル導体70(2)の一端に接続される第1の固定接点162aと、このコイル導体70(2)の他端に接続される可動接点162bと、外側隣のコイル導体70(3)の一端に接続される第2の固定接点162cとを有している。
【0116】
第3の切替スイッチ164は、外側コイル導体70(3)の一端に接続される第1の固定接点164aと、このコイル導体70(3)の他端に接続される可動接点164bと、開閉スイッチ166の可動接点166dに第2の固定接点164cとを有している。
【0117】
開閉スイッチ166の固定接点166eは、内側コイル導体70(1)の一端に接続されている。
【0118】
かかる構成において、上記単独モードを選択するときは、第1の切替スイッチ160の可動接点160bを第1の固定接点160aに切り替え、第2の切替スイッチ162の可動接点162bを第1の固定接点162aに切り替え、第3の切替スイッチ164の可動接点164bを第1の固定接点164aに切り替え、開閉スイッチ166を開状態に切り替える。
【0119】
上記連結モードを選択するときは、第1の切替スイッチ160の可動接点160bを第2の固定接点160cに切り替え、第2の切替スイッチ162の可動接点162bを第2の固定接点162cに切り替え、第3の切替スイッチ164の可動接点164bを第2の固定接点164cに切り替え、開閉スイッチ166を閉状態に切り替える。
【0120】
この実施形態の一変形例として、たとえば3つのコイル導体70(1),70(2),70(3)のうち、任意の2つのコイル導体を連結モードに選択して残りの1つを単独モードに選択できるようなスイッチ回路網の構成も可能である。
【0121】
また、本発明の補正コイルには大きな誘導電流(時にはRFアンテナに流れる電流以上の電流)が流れることもあり、補正コイルの発熱に留意することも大切である。
【0122】
この観点から、
図24Aに示すように、補正コイル70の近傍に空冷ファンを設置して空冷式で冷却するコイル冷却部を設けることができる。あるいは、
図24Bに示すように、補正コイル70を中空の銅製チューブで構成し、その中に冷媒を供給して補正コイル70の過熱を防止するコイル冷却部を設けることもできる。
【0123】
上述した実施形態における誘導結合型プラズマエッチング装置の構成は一例であり、プラズマ生成機構の各部はもちろん、プラズマ生成に直接関係しない各部の構成も種種の変形が可能である。
【0124】
たとえば、上述した実施形態では補正コイル70を1箇所に固定配置したが、補正コイル70の位置を可変する構成、特にその高さ位置を任意に可変する構成を採ることも可能である。
【0125】
また、補正コイル70の電流路またはループ内に、上述したスイッチング素子112、抵抗122または開閉器152(152A,152B,152C)に加えて、たとえばコンデンサ(図示せず)を設ける構成も可能である。
【0126】
また、RFアンテナ54および補正アンテナ70の基本形態として、平面形以外のタイプたとえばドーム形等も可能である。さらには、チャンバ10の天井以外の箇所に設置されるタイプも可能であり、たとえばチャンバ10の側壁の外に設置されるヘリカルタイプも可能である。
【0127】
また、矩形の被処理基板に対するチャンバ構造、矩形のRFアンテナ構造、矩形の補正コイル構造も可能である。
【0128】
また、処理ガス供給部においてチャンバ10内に天井から処理ガスを導入する構成も可能であり、サセプタ12に直流バイアス制御用の高周波RF
Lを印加しない形態も可能である。一方で、複数のRFアンテナまたはアンテナ・セグメントを使用し、複数の高周波電源または高周波給電系統によりそれら複数RFアンテナ(またはアンテナ・セグメント)にプラズマ生成用の高周波電力をそれぞれ個別に供給する方式のプラズマ装置にも本発明は適用可能である。
【0129】
さらに、本発明による誘導結合型のプラズマ処理装置またはプラズマ処理方法は、プラズマエッチングの技術分野に限定されず、プラズマCVD、プラズマ酸化、プラズマ窒化、スパッタリングなどの他のプラズマプロセスにも適用可能である。また、本発明における被処理基板は半導体ウエハに限るものではなく、フラットパネルディスプレイ用の各種基板や、フォトマスク、CD基板、プリント基板等も可能である。