(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
周回方向において、前記外側コイルの前記外側間隙は、前記内側コイルの前記内側間隙とは重ならず、かつ半周の間隔を置いて対向することもないように、オフセットしている、請求項10または請求項11に記載のプラズマ処理装置。
前記第1ノードと前記第2ノードとの間で、前記複数の外側コイルセグメントの全てと電気的に直列に接続され、かつ前記内側コイルセグメントとは電気的に並列に接続されている外側共通インピーダンス調整部を有する、請求項10〜21のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態における誘導結合型プラズマ処理装置の構成を示す縦断面図である。
【
図2A】実施形態におけるRFアンテナの基本的なレイアウト構成および電気的接続構成を示す斜視図である。
【
図3】比較例のRFアンテナのレイアウトおよび電気的接続構成を示す図である。
【
図4】実施例のRFアンテナおよび比較例のアンテナでそれぞれ生じる電位差(電圧降下)を対比して示すグラフ図である。
【
図5A】実施形態におけるRFアンテナにインピーダンス調整部を付加する一構成例を示す斜視図である。
【
図5B】
図5Aの構成例(インピーダンス調整部をコンデンサとする場合)の電気的接続図である。
【
図6】
図5Aおよび
図5Bの構成例において可変コンデンサの静電容量を可変した場合の各外側コイルセグメントと各外側個別コンデンサとの直列回路におけるインピーダンスおよび電流の値を表で示す図である。
【
図7】マルチステップ方式のプラズマプロセスにおいて
図5Aおよび
図5Bの構成例により外側個別インピーダンス調整部(可変コンデンサ)の静電容量をステップ的に可変制御する方法を示す図である。
【
図8A】実施形態におけるRFアンテナにインピーダンス調整部を付加する別の構成例を示す斜視図である。
【
図8B】
図8Aの構成例(内側個別インピーダンス調整部を可変コンデンサとする場合)の電気的接続図である。
【
図9A】実施形態におけるRFアンテナにインピーダンス調整部を付加する他の構成例を示す斜視図である。
【
図9B】
図9Aの構成例(外側インピーダンス調整部を可変コンデンサとする場合)の電気的接続図である。
【
図10A】実施形態におけるRFアンテナにインピーダンス調整部を付加する他の構成例を示す斜視図である。
【
図10B】
図10Aの構成例(内側個別インピーダンス調整部を固定コンデンサとし、外側個別インピーダンス調整部を固定コンデンサとする場合)の電気的接続図である。
【
図10C】
図10Aの構成例(内側個別インピーダンス調整部を可変コンデンサとし、外側個別インピーダンス調整部を可変コンデンサとする場合)の電気的接続図である。
【
図10D】
図10Aの構成例(内側個別インピーダンス調整部を可変コンデンサとし、外側個別インピーダンス調整部を固定コンデンサとする場合)の電気的接続図である。
【
図10E】
図10Aの構成例(内側個別インピーダンス調整部を固定コンデンサとし、外側個別インピーダンス調整部を可変コンデンサとする場合)の電気的接続図である。
【
図11A】実施形態におけるRFアンテナにインピーダンス調整部を付加する他の構成例を示す斜視図である。
【
図11B】
図11Aの構成例(内側個別インピーダンス調整部を固定コンデンサとし、外側共通インピーダンス調整部を可変コンデンサとする場合)の電気的接続図である。
【
図12】
図11Aおよび
図11Bの構成例において外側共通インピーダンス調整部(可変コンデンサ)の静電容量を可変した場合の外側コイルセグメントと外側共通インピーダンス調整部との直列回路におけるインピーダンスおよび電流の値を表で示す図である。
【
図13】マルチステップ方式のプラズマプロセスにおいて
図11Aおよび
図11Bの構成例により外側共通インピーダンス調整部(可変コンデンサ)の静電容量をステップ的に可変制御する方法を示す図である。
【
図14A】実施形態におけるRFアンテナにインピーダンス調整部を付加する他の構成例を示す斜視図である。
【
図14B】
図14Aの構成例(内側個別インピーダンス調整部を固定コンデンサとし、外側共通インピーダンス調整部を固定コンデンサとする場合)の電気的接続図である。
【
図14C】
図14Aの構成例(内側個別インピーダンス調整部を可変コンデンサとし、外側共通インピーダンス調整部を可変コンデンサとする場合)の電気的接続図である。
【
図14D】
図14Aの構成例(内側個別インピーダンス調整部を可変コンデンサとし、外側共通インピーダンス調整部を固定コンデンサとする場合)の電気的接続図である。
【
図14E】
図14Aの構成例(内側個別インピーダンス調整部を固定コンデンサとし、外側共通インピーダンス調整部を可変コンデンサとする場合)の電気的接続図である。
【
図15A】実施形態におけるRFアンテナにインピーダンス調整部を付加する他の構成例を示す斜視図である。
【
図15B】
図15Aの構成例(外側共通インピーダンス調整部を可変コンデンサとする場合)に対応する電気的接続図である。
【
図16A】実施形態におけるRFアンテナにインピーダンス調整部を付加する他の構成例を示す斜視図である。
【
図16B】
図16Aの構成例(内側個別インピーダンス調整部を可変コンデンサとする場合)に対応する電気的接続図である。
【
図17A】実施形態におけるRFアンテナにインピーダンス調整部を付加する他の構成例を示す斜視図である。
【
図17B】
図17Aの構成例(出側共通インピーダンス調整部をコンデンサとする場合)に対応する電気的接続図である。
【
図18A】実施形態におけるRFアンテナにインピーダンス調整部を付加する他の構成例を示す斜視図である。
【
図18B】
図18Aの構成例(内側個別インピーダンス調整部を固定コンデンサとし、外側個別インピーダンス調整部を固定コンデンサとし、外側共通インピーダンス調整部を固定コンデンサとする場合)に対応する電気的接続図である。
【
図19A】実施形態におけるRFアンテナにインピーダンス調整部を付加する他の構成例を示す斜視図である。
【
図19B】
図19Aの構成例(内側個別インピーダンス調整部を固定コンデンサとし、外側個別インピーダンス調整部を固定コンデンサとする場合)に対応する電気的接続図である。
【
図19C】
図19Aの構成例(内側個別インピーダンス調整部を可変コンデンサとし、外側個別インピーダンス調整部を可変コンデンサとする場合)に対応する電気的接続図である。
【
図19D】
図19Aの構成例(内側個別インピーダンス調整部を可変コンデンサとし、外側個別インピーダンス調整部を固定コンデンサとする場合)に対応する電気的接続図である。
【
図19E】
図19Aの構成例(内側個別インピーダンス調整部を固定コンデンサとし、外側個別インピーダンス調整部を可変コンデンサとする場合)に対応する電気的接続図である。
【
図20】実施形態におけるRFアンテナのコイルセグメントにダミー間隙用の突出部を設ける構成例を示す斜視図である。
【
図21A】本発明におけるRFアンテナの一構成例を示す斜視図である。
【
図22】本発明におけるRFアンテナの他の実施例を示す図である。
【
図23A】本発明におけるRFアンテナの他の実施例を示す図である。
【
図23B】本発明におけるRFアンテナの他の実施例を示す図である。
【
図24】本発明におけるRFアンテナの他の実施例を示す図である。
【
図25】本発明におけるRFアンテナの他の実施例を示す図である。
【
図26】本発明におけるRFアンテナの他の実施例を示す図である。
【
図27】本発明におけるRFアンテナの他の実施例を示す図である。
【
図28】本発明におけるRFアンテナの他の実施例を示す図である。
【
図29】本発明におけるRFアンテナと高周波給電部の整合器との間にトランスを設ける構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図を参照して本発明の好適な実施形態を説明する。
[装置全体の構成および作用]
【0019】
図1に、本発明の一実施形態における誘導結合型プラズマ処理装置の構成を示す。
【0020】
このプラズマ処理装置は、平面コイル形のRFアンテナを用いる誘導結合型のプラズマエッチング装置として構成されており、たとえばアルミニウムまたはステンレス鋼等の金属製の円筒型真空チャンバ(処理容器)10を有している。チャンバ10は、保安接地されている。
【0021】
先ず、この誘導結合型プラズマエッチング装置においてプラズマ生成に関係しない各部の構成を説明する。
【0022】
チャンバ10内の下部中央には、被処理基板としてたとえば半導体ウエハWを載置する円板状のサセプタ12が高周波電極を兼ねる基板保持台として水平に配置されている。このサセプタ12は、たとえばアルミニウムからなり、チャンバ10の底から垂直上方に延びる絶縁性の筒状支持部14に支持されている。
【0023】
絶縁性筒状支持部14の外周に沿ってチャンバ10の底から垂直上方に延びる導電性の筒状支持部16とチャンバ10の内壁との間に環状の排気路18が形成され、この排気路18の上部または入口に環状のバッフル板20が取り付けられるとともに、底部に排気ポート22が設けられている。チャンバ10内のガスの流れをサセプタ12上の半導体ウエハWに対して軸対象に均一にするためには、排気ポート22を円周方向に等間隔で複数設ける構成が好ましい。各排気ポート22には排気管24を介して排気装置26が接続されている。排気装置26は、ターボ分子ポンプなどの真空ポンプを有しており、チャンバ10内のプラズマ処理空間を所望の真空度まで減圧することができる。チャンバ10の側壁の外には、半導体ウエハWの搬入出口27を開閉するゲートバルブ28が取り付けられている。
【0024】
サセプタ12には、RFバイアス用の高周波電源30が整合器32および給電棒34を介して電気的に接続されている。この高周波電源30は、半導体ウエハWに引き込まれるイオンのエネルギーを制御するのに適した一定周波数(通常13.56MHz以下)の高周波RF
Lを可変のパワーで出力できるようになっている。整合器32は、高周波電源30側のインピーダンスと負荷(主にサセプタ、プラズマ、チャンバ)側のインピーダンスとの間で整合をとるためのリアクタンス可変の整合回路を収容している。その整合回路の中に自己バイアス生成用のブロッキングコンデンサが含まれている。
【0025】
サセプタ12の上面には、半導体ウエハWを静電吸着力で保持するための静電チャック36が設けられ、静電チャック36の半径方向外側に半導体ウエハWの周囲を環状に囲むフォーカスリング38が設けられる。静電チャック36は導電膜からなる電極36aを一対の絶縁膜36b,36cの間に挟み込んだものであり、電極36aには高圧の直流電源40がスイッチ42および被覆線43を介して電気的に接続されている。直流電源40より印加される高圧の直流電圧により、静電力で半導体ウエハWを静電チャック36上に吸着保持することができる。
【0026】
サセプタ12の内部には、たとえば円周方向に延びる環状の冷媒室44が設けられている。この冷媒室44には、チラーユニット(図示せず)より配管46,48を介して所定温度の冷媒たとえば冷却水cwが循環供給される。冷却水cwの温度によって静電チャック36上の半導体ウエハWの処理中の温度を制御できる。これと関連して、伝熱ガス供給部(図示せず)からの伝熱ガスたとえばHeガスが、ガス供給管50を介して静電チャック36の上面と半導体ウエハWの裏面との間に供給される。また、半導体ウエハWのローディング/アンローディングのためにサセプタ12を垂直方向に貫通して上下移動可能なリフトピンおよびその昇降機構(図示せず)等も設けられている。
【0027】
次に、この誘導結合型プラズマエッチング装置においてプラズマ生成に関係する各部の構成を説明する。
【0028】
チャンバ10の天井または天板はサセプタ12から比較的大きな距離間隔を隔てて設けられており、この天板としてたとえば石英板からなる円形の誘電体窓52が気密に取り付けられている。この誘電体窓52の上には、チャンバ10内に誘導結合のプラズマを生成するためのRFアンテナ54を外部から電磁的に遮蔽して収容するアンテナ室56がチャンバ10と一体に設けられている。
【0029】
RFアンテナ54は、誘電体窓52と平行で、径方向に間隔を開けてそれぞれ内側および外側に配置される内側コイル58および外側コイル62を有している。この実施形態における内側コイル58および外側コイル62は、円環状のコイル形体を有し、互いに同軸に配置されるとともに、チャンバ10またはサセプタ12に対しても同軸に配置されている。
【0030】
なお、本発明において「同軸」とは、軸対称の形状を有する複数の物体間でそれぞれの中心軸線が互いに重なっている位置関係であり、複数のコイル間に関してはそれぞれのコイル面が軸方向で互いにオフセットしている場合だけでなく同一面上で一致している場合(同心状の位置関係)も含む。
【0031】
また、内側コイル58および外側コイル62は、電気的には、プラズマ生成用の高周波給電部66からの高周波給電ライン68と接地電位部材への帰線ライン70との間(2つのノードN
A,N
Bの間)で並列に接続されている。ここで、帰線ライン70は接地電位のアースラインであり、電気的に接地電位に保たれる接地電位部材(たとえばチャンバ10または他の部材)に接続されている。
【0032】
高周波給電部66は、高周波電源72および整合器74を有している。高周波電源72は、誘導結合の高周波放電によるプラズマの生成に適した一定周波数(通常13.56MHz以上)の高周波RF
Hを可変のパワーで出力できるようになっている。整合器74は、高周波電源72側のインピーダンスと負荷(主にRFアンテナ、プラズマ)側のインピーダンスとの間で整合をとるためのリアクタンス可変の整合回路を収容している。
【0033】
チャンバ10内の処理空間に処理ガスを供給するための処理ガス供給部は、誘電体窓52より幾らか低い位置でチャンバ10の側壁の中(または外)に設けられる環状のマニホールドまたはバッファ部76と、円周方向に等間隔でバッファ部76からプラズマ生成空間に臨む多数の側壁ガス吐出孔78と、処理ガス供給源80からバッファ部76まで延びるガス供給管82とを有している。処理ガス供給源80は、流量制御器および開閉弁(図示せず)を含んでいる。
【0034】
主制御部86は、たとえばマイクロコンピュータを含み、このプラズマエッチング装置内の各部たとえば排気装置26、高周波電源30,72、整合器32,74、静電チャック用のスイッチ42、処理ガス供給源80、チラーユニット(図示せず)、伝熱ガス供給部(図示せず)等の個々の動作および装置全体の動作(シーケンス)を制御する。
【0035】
この誘導結合型プラズマエッチング装置において、エッチングを行なうには、先ずゲートバルブ28を開状態にして加工対象の半導体ウエハWをチャンバ10内に搬入して、静電チャック36の上に載置する。そして、ゲートバルブ28を閉めてから、処理ガス供給源80よりガス供給管82、バッファ部76および側壁ガス吐出孔78を介してエッチングガス(一般に混合ガス)を所定の流量および流量比でチャンバ10内に導入し、排気装置26によりチャンバ10内の圧力を設定値にする。さらに、高周波給電部66の高周波電源72をオンにしてプラズマ生成用の高周波RF
Hを所定のRFパワーで出力させ、整合器74,RF給電ライン68および帰線ライン70を介してRFアンテナ54の内側コイル58および外側コイル62に高周波RF
Hの電流を供給する。一方、高周波電源30をオンにしてイオン引き込み制御用の高周波RF
Lを所定のRFパワーで出力させ、この高周波RF
Lを整合器32および給電棒34を介してサセプタ12に印加する。また、伝熱ガス供給部より静電チャック36と半導体ウエハWとの間の接触界面に伝熱ガス(Heガス)を供給するとともに、スイッチ42をオンにして静電チャック36の静電吸着力により伝熱ガスを上記接触界面に閉じ込める。
【0036】
チャンバ10内において、側壁ガス吐出孔78より吐出されたエッチングガスは、誘電体窓52の下の処理空間に拡散する。RFアンテナ54の各コイル58,62を流れる高周波RF
Hの電流によってそれらのコイルの周りに発生する磁力線(磁束)が誘電体窓52を貫通してチャンバ10内の処理空間(プラズマ生成空間)を横切り、処理空間内で方位角方向の誘導電界が発生する。この誘導電界によって方位角方向に加速された電子がエッチングガスの分子や原子と電離衝突を起こし、ドーナツ状のプラズマが生成される。
【0037】
このドーナツ状プラズマのラジカルやイオンは広い処理空間で四方に拡散し、ラジカルは等方的に降り注ぐようにして、イオンは直流バイアスに引っぱられるようにして、半導体ウエハWの上面(被処理面)に供給される。こうして半導体ウエハWの被処理面にプラズマの活性種が化学反応と物理反応をもたらし、被加工膜が所望のパターンにエッチングされる。
【0038】
ここで「ドーナツ状のプラズマ」とは、チャンバ10の径方向内側(中心部)にプラズマが立たず径方向外側にのみプラズマが立つような厳密にリング状のプラズマに限定されず、むしろチャンバ10の径方向内側より径方向外側のプラズマの体積または密度が大きいことを意味する。また、処理ガスに用いるガスの種類やチャンバ10内の圧力の値等の条件によっては、ここで云う「ドーナツ状のプラズマ」にならない場合もある。
【0039】
この誘導結合型プラズマエッチング装置は、RFアンテナ54の内側コイル58および外側コイル60を以下に説明するような特殊な空間的レイアウトおよび電気的接続構成とし、さらにはインピーダンス調整部を適宜付加する構成により、RFアンテナ54内の波長効果や電位差(電圧降下)を効果的に抑制または低減し、半導体ウエハW上のプラズマプロセス特性つまりエッチング特性(エッチングレート、選択比、エッチング形状等)の周回方向および径方向の均一性を改善している。
[RFアンテナの基本構成]
【0040】
この誘導結合型プラズマエッチング装置における主たる特徴は、RFアンテナ54の内部の空間的レイアウト構成および電気的接続構成にある。
【0041】
図2Aおよび
図2Bに、この実施形態におけるRFアンテナ54のレイアウトおよび電気的接続(回路)の基本構成を示す。
【0042】
内側コイル58は、好ましくは単一の円形コイルセグメント60からなり、径方向においてチャンバ10の中心寄りに位置している。以下、内側コイル58を構成する個々のコイルセグメントを「内側コイルセグメント」と称する。
【0043】
この内側コイルセグメント60は、単体で周回方向の一周またはその大部分を埋めるように環状に延びており、その両端60(RF-In), 60(RF-out)が周回方向で内側間隙G
iを介して相対向または隣接している。なお、本発明においては、内側コイル58のループ上に形成される間隙または切れ目を内側間隙と称する。
【0044】
内側コイルセグメント60の一方の端つまりRF入口端部60(RF-In)は、上方に延びる接続導体61および第1ノードN
Aを介して高周波給電部66からのRF給電ライン68に接続されている。内側コイルセグメント60の他方の端つまりRF出口端60(RF-Out)は、上方に延びる接続導体63および第2ノードN
Bを介してアースライン70に接続されている。
【0045】
外側コイル62は、好ましくは周回方向で分割されている複数(たとえば2つ)のコイルセグメント64(1),64(2)からなり、径方向においてチャンバ10の側壁寄りに位置している。以下、外側コイル62を構成する個々のコイルセグメントを「外側コイルセグメント」と称する。
【0046】
これら2つの外側コイルセグメント64(1),64(2)は、空間的には、各々が半円の円弧状に形成されていて、周回方向の一周またはその大部分を埋めるように直列に配置されている。より詳しくは、外側コイル62の一周ループ内において、第1の外側コイルセグメント64(1)のRF入口端64(1)(RF-In)と第2の外側コイルセグメント64(2)のRF出口端64(2)(RF-Out)とが周回方向で外側間隙G
oを介して相対向または隣接し、第1の外側コイルセグメント64(1)のRF出口端64(1)(RF-Out)と第2の外側コイルセグメント64(2)のRF入口端64(2)(RF-In)とが周回方向で別の外側間隙G
oを介して相対向または隣接している。なお、本発明においては、外側コイル62のループ上に形成される間隙または切れ目を外側間隙と称する。
【0047】
そして、これらの外側コイルセグメント64(1),64(2)は、電気的には、それぞれの一方の端つまりRF入口端64(1)(RF-In),64(2)(RF-In)が上方に延びる接続導体65(1),65(2)および第1ノードN
Aを介して高周波給電部66からのRF給電ライン68に接続され、それぞれの他方の端つまりRF出口端64(1)(RF-Out),64(2)(RF-Out)が上方に延びる接続導体67(1),67(2)および第2ノードN
Bを介してアースライン70に接続されている。
【0048】
このように、高周波給電部66からのRF給電ライン68と接地電位部材へのアースライン70との間で、または第1ノードN
Aと第2ノードN
Bとの間で、外側コイル62を構成する2つの外側コイルセグメント64(1),64(2)同士が互いに電気的に並列に接続され、さらには内側コイル58を単体で構成する内側コイルセグメント60もそれらの外側コイルセグメント64(1),64(2)と電気的に並列に接続されている。そして、外側コイルセグメント64(1),64(2)をそれぞれ流れる高周波電流の向きが周回方向で同じになり、さらには内側コイル58を流れる高周波電流と外側コイル62を流れる高周波電流とが周回方向で同じになるように、第1ノードN
Aと第2ノードN
Bとの間でRFアンテナ54内の各部が結線されている。
【0049】
なお、アンテナ室56(
図1)内では、
図1および
図2に示すように、RFアンテ54の上方に延びる接続導体61,63,65(1),65(2),67(1),67(2)は、誘電体窓52から十分大きな距離を隔てて(相当高い位置で)横方向の分岐線または渡り線を形成しており、両コイル58,62に対する電磁的な影響を少なくしている。
【0050】
この実施形態では、好ましい一形態として、外側コイル62を構成する2つの外側コイルセグメント64(1),64(2)がおおよそ等しい自己インダクタンスを有し、さらには内側コイル58を構成する内側コイルセグメント60もそれら外側コイルセグメント64(1),64(2)とおおよそ等しい自己インダクタンスを有している。通常は、それらのコイルセグメント60,64(1),64(2)が線材、線径および線長を同じにすることによって、自己インダクタンス同一性ないし近似性の要件が満たされる。
【0051】
因みに、内側コイルセグメント60および各々の外側コイルセグメント64(1),64(2)の長さが等しい場合、内側コイル58と外側コイル60の口径(直径)比は1:2になる。
【0052】
この実施形態の誘導結合型プラズマエッチング装置においては、高周波給電部66より供給される高周波電流がRFアンテナ54内の各部を流れることにより、RFアンテナ54を構成する内側コイル58および外側コイル62の周りにはアンペールの法則にしたがってループ状に分布する高周波数の交流磁界が発生し、誘電体窓52の下には比較的内奥(下方)の領域でも処理空間を半径方向に横断する磁力線が形成される。
【0053】
ここで、処理空間における磁束密度の半径方向(水平)成分は、チャンバ10の中心と周辺部では高周波電流の大きさに関係なく常に零であり、その中間の何処かで極大になる。高周波数の交流磁界によって生成される方位角方向の誘導電界の強度分布も、径方向において磁束密度と同様の分布を示す。つまり、径方向において、ドーナツ状プラズマ内の電子密度分布は、マクロ的にはRFアンテナ54内の電流分布にほぼ対応する。
【0054】
この実施形態におけるRFアンテナ54は、その中心または内周端から外周端まで旋回する通常の渦巻コイルとは異なり、アンテナの中心部に局在する円環状の内側コイル58とアンテナの周辺部に局在する円環状の外側コイル62とからなり、径方向におけるRFアンテナ54内の電流分布は両コイル58,62の位置する付近に2極化する。
【0055】
ここで、RFアンテナ54内では、上記のように、外側コイル62を構成する外側コイルセグメント64(1),64(2)はおおよそ等しい自己インダクタンス(つまりおおよそ等しいインピーダンス)を有し、かつ電気的に並列に接続されている。さらに、内側コイル58を構成する内側コイルセグメント60も外側コイルセグメント64(1),64(2)とおおよそ等しい自己インダクタンス(つまりおおよそ等しいインピーダンス)を有し、かつ外側コイルセグメント64(1),64(2)と電気的に並列に接続されている。これにより、プラズマ励起時には、内側コイル58のループと外側コイル62のループとで常に同じ大きさの高周波電流が流れるようになっている。
【0056】
したがって、チャンバ10の誘電体窓52の下(内側)に生成されるドーナツ状プラズマにおいては、内側コイル58および外側コイル62のそれぞれの直下の位置付近で電流密度(つまりプラズマ密度)が突出して高くなる(極大になる)。このように、ドーナツ状プラズマ内の電流密度分布は径方向で均一ではなく凹凸のプロファイルとなる。しかし、チャンバ10内の処理空間でプラズマが四方に拡散することによって、サセプタ12の近傍つまり基板W上ではプラズマの密度がかなり均される。
【0057】
この実施形態においては、内側コイル58および外側コイル62のいずれも円環状コイルであり、コイル周回方向で一様または均一な高周波電流が流れるので、コイル周回方向では常にドーナツ状プラズマ内はもちろんサセプタ12の近傍つまり基板W上でも略均一なプラズマ密度分布が得られる。
【0058】
また、径方向においては、内側コイル58および外側コイル60の口径比(1:2)を一定に保ちつつ、RFアンテナ54全体の口径を調整または最適化することによって、サセプタ12の近傍つまり基板W上のプラズマ密度分布を調整することが可能である。
【0059】
この実施形態においては、RFアンテナ54内の各コイル(58,60)を1つまたは複数のコイルセグメントにより構成している。そして、1つのコイル(60)を複数のコイルセグメント(64(1),64(2))によって構成する場合は、それら複数のコイルセグメント(64(1),64(2))を電気的に並列に接続している。このような構成においては、RFアンテナ54内の波長効果や電圧降下は個々のコイルセグメント(60,64(1),64(2))毎にその長さに依存する。
【0060】
したがって、個々のコイルセグメント(60,64(1),64(2))内で波長効果を起こさないように、そして電圧降下があまり大きくならないように、内側コイル58を構成する内側コイルセグメント60および外側コイル62を構成する各々の外側コイルセグメント64(1),64(2)の長さを選定することによって、RFアンテナ54内の波長効果や電圧降下の問題を全て解決することができる。波長効果の防止に関しては、各コイルセグメント(60,64(1),64(2))の長さを高周波RF
Hの1/4波長よりも短く(より好ましくは十分短く)することが望ましい。
【0061】
この実施形態におけるRFアンテナ内の電圧降下低減効果については、
図3に示すような比較例と対比すると分かりやすい。この比較例のRFアンテナは、径方向の内側および外側にそれぞれ位置して同軸に配置される円環状の内側コイル58'および外側コイル62'を有している。ここで、内側コイル58'は実施形態における内側コイル58と全く同じものであり、単体のコイルセグメント60からなる。しかし、外側コイル62'は、実施形態における外側コイル62とは異なり、コイルセグメント60の2倍の長さを有する単体のコイルセグメント64'からなる。そして、比較例のRFアンテナは、内側コイル58'および外側コイル62'に同じ大きさの電流を流すために、両コイルを直列に接続している。
【0062】
比較例のRFアンテナにおいては、たとえば、プラズマ励起時の内側コイル58'(コイルセグメント60)のインダクタンスが400nHであるとすると、外側コイル62'( コイルセグメント64')のインダクタンスは800nHであり、RFアンテナ全体のインダクタンスは1200nHになる。したがって、RFアンテナの各コイルに20Aの高周波電流(周波数13.56MHz)を流すと、RFアンテナ内で約2kVの電位差(電圧降下)が生じる。
【0063】
これに対して、この実施形態のRFアンテナ54においては、プラズマ励起時の内側コイル58(内側コイルセグメント60)のインダクタンスが400nHであるとすると、外側コイル62の外側コイルセグメント64(1),64(2)のインダクタンスも各々400nHであり、RFアンテナ全体のインダクタンスは133nHである。したがって、RFアンテナ54の各コイルに20Aの高周波電流(周波数13.56MHz)を流したときにRFアンテナ54内(つまり各コイルセグメント内)に生じる電位差(電圧降下)は約680Vであり、
図4に示すように約1/3までに低減する。なお、上記の比較計算では、説明の便宜と理解の容易化を図るため、RFアンテナ内の抵抗分のインピーダンスを無視している。
【0064】
このように、この実施形態のRFアンテナ54は、波長効果が起こり難いだけでなく、アンテナ内に生じる電位差(電圧降下)が小さいので、RFアンテナ54とプラズマとの容量結合によって誘電体窓52の各部に入射するイオン衝撃のばらつきを小さくすることができる。これによって、誘電体窓52の一部が局所的または集中的に削れるといった望ましくない現象を低減できるという効果も得られる。
[RFアンテナにインピーダンス調整部を付加する実施例]
【0065】
次に、この実施形態のRFアンテナ54にインピーダンス調整部を付加する構成例について説明する。
【0066】
この実施形態のRFアンテナ54においては、インピーダンス調整部を付加する好適な一例として、
図5Aおよび
図5Bに示すように、第1ノードN
Aと第2ノードN
Bとの間で、内側コイル58を構成する内側コイルセグメント60に個別のインピーダンス調整部(たとえばコンデンサ)86を電気的に直列に接続するとともに、外側コイル62を構成する全ての外側コイルセグメント64(1),64(2)に個別のインピーダンス調整部(たとえばコンデンサ)88(1),88(2)をそれぞれ電気的に直列に接続する構成を採ることができる。この場合、各個別インピーダンス調整部86,88(1),88(2)は、各コイルセグメント60,64(1),64(2)と第2ノードN
Bとの間(つまり高周波出口側)に接続されるのが好ましい。
【0067】
このようにRFアンテナ54内の各コイルセグメント60,64(1),64(2)に個別のインピーダンス調整部86,88(1),88(2)を直列に接続して各直列分岐回路のインピーダンスを調整することにより、各コイルセグメント60,64(1),64(2)を流れる高周波電流を個別に調節することができる。
【0068】
より具体的には、外側コイル62内で複数の外側コイルセグメント64(1),64(2)をそれぞれ流れる高周波電流を調整する(通常は同じ電流値に揃える)ことが可能であり、内側コイル58を流れる高周波電流と外側コイル58を流れる高周波電流とのバランス(比)を任意に調節することも可能である。
【0069】
また、この構成例では、全てのコイルセグメント60,64(1),64(2)をそれぞれコンデンサからなるインピーダンス調整部86,88(1),88(2)を介して終端させているので、内側コイル58および外側コイル62の電位が接地電位よりも高くなって、RFアンテナ54とプラズマとの容量結合が弱まり、誘電体窓52がプラズマからのイオンアタックにより損傷劣化するスパッタ効果を抑制することができる。一方で、コンデンサ86,88(1),88(2)によって短絡共振線の長さが等価的に短くなるが、各コイルセグメント60,64(1),64(2)の線路長は十分に短いため、波長効果が発生するおそれは少ない。
【0070】
また、各コイルセグメント60,64(1),64(2)の線路長が十分短いぶんそれらの自己インダクタンスつまり誘導性リアクタンスが小さいので、それと対抗または相殺するインピーダンス調整部(コンデンサ)86,88(1),88(2)の容量性リアクタンスも小さくて済む。つまり、静電容量の大きな終端側のインピーダンス調整部(コンデンサ)86,88(1),88(2)によって内側コイル58および外側コイル62間の電流配分(起磁力バランス)の調整を行うことができる。
【0071】
たとえば、各コイルセグメント60,64(1),64(2)のインダクタンスが一様に400nHであるとすると、13.56MHzのプラズマ生成用高周波RF
Hに対する各コイルセグメントの誘導性リアクタンスは約34Ωである。ここで、個別インピーダンス調整部(コンデンサ)86,88(1),88(2)の静電容量を一様に400pFにすると、各々の容量性リアクタンスは約−30Ωであり、差し引き4Ωの合成リアクタンスとなる。合成リアクタンスがこのように小さな値であると、インピーダンス調整部(コンデンサ)86,88,90の静電容量の微妙なばらつきが電流の大きな差異を引き起こしかねない。
【0072】
そこで、各個別インピーダンス調整部(コンデンサ)86,88(1),88(2)の静電容量を1000pFにすると、各々の容量性リアクタンスは約−12Ωであり、差し引き22Ωの合成リアクタンスとなる。合成リアクタンスがこの程度に大きければ、個別インピーダンス調整部(コンデンサ)86,88(1),88(2)の静電容量に数パーセントのばらつきがあっても、各コイルセグメント60,64(1),64(2)を流れる電流の間に大きな差異は生じない。このように、静電容量の大きな個別インピーダンス調整部(コンデンサ)86,88(1),88(2)を用いることによって、内側コイル58および外側コイル62間の電流配分(起磁力バランス)の調整を安定に行うことができる。
【0073】
図5Aおよび
図5Bの構成例においては、内側個別インピーダンス調整部86または外側個別インピーダンス調整部88(1),88(2)の少なくとも一方に可変コンデンサを好適に用いることができる。たとえば、内側コイルセグメント60に接続される内側個別インピーダンス調整部86を固定コンデンサとし、外側コイルセグメント62(1),62(2)にそれぞれ接続される外側個別インピーダンス調整部88(1),88(2)のいずれも可変コンデンサとすることができる。あるいは、内側個別インピーダンス調整部86を可変コンデンサとし、外側個別インピーダンス調整部88(1),88(2)のいずれも固定コンデンサとすることもできる。あるいは、内側個別インピーダンス調整部86を可変コンデンサとし、外側個別インピーダンス調整部88(1),88(2)のいずれも可変コンデンサとすることもできる。
【0074】
如何なる場合でも、1つの(外側)コイル62を構成する複数の外側個別コイルセグメント62(1),62(2)の間では、電流の向きだけでなく電流値も同じに揃える観点からすれば、外側個別インピーダンス調整部88(1),88(2)においては、一方のみを可変コンデンサとするような使い方は原則として採るべきではなく、全部一律に可変コンデンサとするか、もしくは全部一律に同一静電容量の固定コンデンサとするのが好ましい。
【0075】
図5Aおよび
図5Bの構成例において、プラズマ生成用の高周波RF
Hの周波数が13.56MHzで、各コイルセグメント60,64(1),64(2)のインダクタンスが400nHであるとすると、内側個別インピーダンス調整部(コンデンサ)86の静電容量を600pF(固定値)とした場合は、内側コイルセグメント60と内側個別インピーダンス調整部(コンデンサ)86とからなる直列分岐回路においては合成リアクタンス(実質的な合成インピーダンス)が14.5Ω(固定値)で、11.7Aの電流(固定値)が流れる。
【0076】
一方、外側個別インピーダンス調整部(コンデンサ)88(1),88(2)の静電容量を同じにして450pFから1200pFまで段階的に可変すると、各々の外側コイルセグメント62(1),62(2)と各々の外側個別インピーダンス調整部(コンデンサ)88(1),88(2)とからなる各直列分岐回路における合成リアクタンス(実質的な合成インピーダンス)および電流は
図6に示すような値に変化する。
【0077】
すなわち、外側個別インピーダンス調整部(コンデンサ)88(1),88(2)の静電容量を450pFにした場合は、外側コイル62(外側コイルセグメント64(1),64(2))に内側コイル58(内側コイルセグメント60)の約2倍の電流(21.3A)を流すことができる。そして、外側個別インピーダンス調整部(コンデンサ)88(1),88(2)の静電容量を6000pFにすれば、外側コイル62(外側コイルセグメント64(1),64(2))に内側コイル58(内側コイルセグメント60)と等しい電流(11.7A)を流すことができる。さらに、外側個別インピーダンス調整部(コンデンサ)88(1),88(2)の静電容量を1200pFにすれば、外側コイル62(外側コイルセグメント64(1),64(2))に内側コイル58(内側コイルセグメント60)の約1/2の電流(7.0A)を流すことができる。
【0078】
このように、内側コイル58および外側コイル62をそれぞれ流れる電流の比を可変して調整することにより、両コイル58,62の起磁力のバランスを調節し、ひいてはサセプタ12近傍つまり半導体ウエハW上のプラズマ密度分布を多様かつ自在に制御することができる。
【0079】
この実施形態における誘導結合型プラズマエッチング装置は、RFアンテナ54に上記のような個別インピーダンス調整部86,88(1),88(2)を付加することにより、1枚の半導体ウエハWに対するプラズマプロセスの中でプロセス条件(圧力、ガス系等)の変更、変化または切り換えを伴うアプリケーション、たとえばウエハ表面の多層膜を複数のステップで連続的にエッチング加工するアプリケーション等に好適に使用できる。
【0080】
すなわち、マルチステップ方式のプラズマプロセスにおいては、たとえば
図7に示すように、外側個別インピーダンス調整部(可変コンデンサ)88(1),88(2)の静電容量を各ステップ(工程)毎にその時のプロセス条件に最も適した値に切り換えることにより、全ステップを通じてサセプ12近傍つまりウエハW上のプラズマ密度分布を所望の(たとえば常に略フラットな)プロファイルに制御し、周回方向にも径方向にもプラズマプロセスの均一性を向上させることができる。
【0081】
なお、
図5Aおよび
図5Bの構成例においては、外側コイル62を構成する2つの外側コイルセグメント64(1),64(2)にそれぞれ外側個別インピーダンス調整部88(1),88(2)を個別に接続しているので、外側個別インピーダンス調整部88(1),88(2)のそれぞれのインピーダンスを微妙に異ならせることで、プラズマプロセス装置にありがちな機差に基づく周回方向の偏りを補正することもできる。
【0082】
図8A(
図8B)および
図9(
図9B)に、この実施形態のRFアンテナ54にインピーダンス調整部を付加する別の構成例を示す。
【0083】
図8Aおよび
図8Bの構成例では、第1ノードN
Aと第2ノードN
Bとの間で、内側コイル58を構成する内側コイルセグメント60に内側個別インピーダンス調整部(たとえばコンデンサ)86を接続し、外側コイル62を構成する外側コイルセグメント64(1),64(2)にはインピーダンス調整部を一切接続していない。内側個別インピーダンス調整部86は、好ましくは可変コンデンサであるが、固定コンデンサであってもよい。
【0084】
図9Aおよび
図9Bの構成例では、第1ノードN
Aと第2ノードN
Bとの間で、外側コイル62を構成する外側コイルセグメント64(1),64(2)には外側個別インピーダンス調整部(たとえばコンデンサ)88(1),88(2)をそれぞれ電気的に直列に接続し、内側コイル58を構成する内側コイルセグメント60にはインピーダンス調整部を一切接続していない。外側個別インピーダンス調整部88(1),88(2)は、好ましくは可変コンデンサでよいが、固定コンデンサであってもよい。
【0085】
内側コイル58および外側コイル62をそれぞれ流れる高周波電流のバランス(比)を調整する機能についてみれば、このように内側個別インピーダンス調整部86または外側個別インピーダンス調整部88(1),88(2)のどちらかを省くことも可能である。ただし、1つの(外側)コイル62を構成する複数(2つ)のコイルセグメント64(1),64(2)の間では、電流の向きだけてなく電流値を同じにするのが必須ともいえるほど好ましいので、外側個別インピーダンス調整部88(1),88(2)においては、両コイルセグメント64(1),64(2)の片方のみに個別インピーダンス調整部が接続される構成は原則として採るべきではなく、双方(すべて)に可変コンデンサを接続するか、もしくは双方(すべて)に固定コンデンサを接続する構成が好ましい。
【0086】
また、
図8A(
図8B)および
図9(
図9B)に示すように、RFアンテナ54の終端側で、つまり第2ノードN
Bとアースライン70との間(あるいはアースライン70上)にRFアンテナ54内のすべてのコイルセグメント60,64(1),64(2)と電気的に直列に接続される出側の共通インピーダンス調整部(たとえばコンデンサ)90を好適に備えることができる。この出側(終端)の共通インピーダンス調整部90は、通常は固定コンデンサであってよいが、可変コンデンサであってもよい。
【0087】
この出側(終端)共通インピーダンス調整部90は、RFアンテナ54の全体のインピーダンスを調整する機能を有するだけでなく、コンデンサを用いる場合はRFアンテナ54の全体の電位を接地電位から直流的に引き上げて、天板または誘電体窓52が蒙るイオンスパッタを抑制する機能を有する。
【0088】
この出側(終端)共通インピーダンス調整部90は、
図10Aに示すように、内側コイルセグメント60および外側コイルセグメント62(1),62(2)のすべてに個別インピーダンス調整部86,88(1),88(2)を接続する構成にも、適用可能である。
【0089】
この場合、個別インピーダンス調整部86,88(1),88(2)は、
図10Bに示すようにすべて固定コンデンサであってもよい。もっとも、
図10Cに示すように、内側個別インピーダンス調整部86を可変コンデンサとし、外側個別インピーダンス調整部88(1),88(2)の双方を可変コンデンサとする構成も可能である。あるいは、
図10Dに示すように、内側個別インピーダンス調整部86を可変コンデンサとし、外側個別インピーダンス調整部88(1),88(2)の双方を固定コンデンサとする構成も可能である。あるいは、
図10Eに示すように、内側個別インピーダンス調整部86を固定コンデンサとし、外側個別インピーダンス調整部88(1),88(2)の双方を可変コンデンサとする構成も可能である。
【0090】
図11Aに、この実施形態のRFアンテナ54にコンデンサを付加する別の構成例を示す。この構成例では、第1ノードN
Aと第2ノードN
Bとの間で、内側コイル58を構成する内側コイルセグメント60には内側個別インピーダンス調整部86が直列に接続されるとともに、外側コイル62を構成する外側コイルセグメント64(1),64(2)にはそれらの双方と直列に外側共通インピーダンス調整部92が接続される。この外側共通インピーダンス調整部92は、内側コイルセグメント60とは並列に接続されている。
【0091】
より詳細には、第1ノードN
Aと第2ノードN
Bとの間に第3ノードN
Cが設けられる。そして、第1ノードN
Aと第3ノードN
Cとの間で外側コイルセグメント64(1),64(2)が並列に接続され、第1ノードN
Aと第2ノードN
Bとの間で内側コイルセグメント60と内側個別インピーダンス調整部86とが直列に接続され、第3ノードN
Cと第2ノードN
Bとの間に外側共通インピーダンス調整部92が接続される。
【0092】
この場合も、一形態として、
図11Bに示すように、内側個別インピーダンス調整部86を固定コンデンサとし、外側共通インピーダンス調整部92を可変コンデンサとすることができる。そして、
図12および
図13に示すように、外側共通インピーダンス調整部(コンデンサ)92の静電容量(可変範囲)を
図5Aの外側個別インピーダンス調整部(コンデンサ)88(1),88(2)の静電容量(可変範囲)の2倍にすることで、
図5Aの構成例と同等の調整機能が得られる。
【0093】
このように、外側共通インピーダンス調整部92は、内側コイル58との電流バランスをとるうえで外側コイル60(外側コイルセグメント64(1),64(2))全体のインピーダンスを調整する機能を有するとともに、出側(終端)共通インピーダンス調整部(コンデンサ)90が備わっていないときはその代替機能も兼ねている。
【0094】
もっとも、
図14Aに示すように、外側共通インピーダンス調整部92および出側(終端)共通インピーダンス調整部90を併設することも可能である。この場合は、外側共通インピーダンス調整部92の機能と出側(終端)共通インピーダンス調整部90の機能とが重ね合わさった作用効果が得られる。
【0095】
この構成例においても、
図14Bに示すように、内側個別インピーダンス調整部86を固定コンデンサとし、外側共通インピーダンス調整部92を固定コンデンサとすることができる。あるいは、
図14Cに示すように、内側個別インピーダンス調整部86を可変コンデンサとし、外側共通インピーダンス調整部92を可変コンデンサとする構成も可能である。また、
図14Dに示すように、内側個別インピーダンス調整部86を可変コンデンサとし、外側共通インピーダンス調整部92を固定コンデンサとする構成も可能である。さらには、
図14Eに示すように、内側個別インピーダンス調整部86を固定コンデンサとし、外側共通インピーダンス調整部92を可変コンデンサとする構成も可能である。
【0096】
また、RFアンテナ54に外側共通インピーダンス調整部92を付加する他の構成例として、
図15Aおよび
図15Bに示すように、外側コイル60に外側共通インピーダンス調整部(たとえばコンデンサ)92を接続し、内側コイル58にはインピーダンス調整部を一切接続しない構成も可能である。
【0097】
あるいは、
図16Aおよび
図16Bに示すように、内側コイル58に内側個別インピーダンス調整部(たとえば可変コンデンサ)86を接続し、外側コイル60にはインピーダンス調整部を一切接続しない構成も可能である。あるいは、
図17Aおよび
図17Bに示すように、内側コイル58および外側コイル60のどちらにも個別インピーダンス調整部あるいは共通外側(内側)インピーダンス調整部を一切接続しない構成も可能である。さらには、
図18Aおよび
図18Bに示すように、内側コイル58(内側コイルセグメント60)には内側個別インピーダンス調整部(たとえば固定コンデンサ)86を接続し、外側コイル60(外側コイルセグメント64(1),64(2))には外側個別インピーダンス調整部(たとえば固定コンデンサ)88(1),88(2)および外側共通インピーダンス調整部(たとえば固定コンデンサ)92を接続する構成も可能である。
【0098】
図19Aに、RFアンテナ54内の各コイルセグメント60,88(1),88(2)に接続される個別インピーダンス調整部86,88(1),88(2)を高周波入口側に設ける構成例を示す。この場合は、RFアンテナ54の全体電位を接地電位から直流的に引き上げるために(それによって天板または誘電体窓52が蒙るイオンスパッタを抑制するために)、コンデンサからなる出側(終端)共通インピーダンス調整部90も併設する構成が好ましい。
【0099】
このように、個別インピーダンス調整部86,88(1),88(2)を高周波入口側に設ける構成においても、好ましくは、
図19Bに示すように、内側個別インピーダンス調整部86を固定コンデンサとし、外側個別インピーダンス調整部88(1),88(2)を固定コンデンサとすることができる。あるいは、
図19Cに示すように、内側個別インピーダンス調整部86を可変コンデンサとし、外側個別インピーダンス調整部88(1),88(2)を可変コンデンサとする構成も可能である。あるいは、
図19Dに示すように、内側個別インピーダンス調整部86を可変コンデンサとし、外側個別インピーダンス調整部88(1),88(2) を固定コンデンサとする構成も可能である。さらには、
図19Eに示すように、内側個別インピーダンス調整部86を固定コンデンサとし、外側個別インピーダンス調整部88(1),88(2)を可変コンデンサとする構成も可能である。
【0100】
なお、本発明において、RFアンテナに付加可能なインピーダンス調整部は、上述したような固定コンデンサまたは可変コンデンサに限定されるものではなく、たとえばコイルまたはインダクタであってもよく、あるいはコンデンサとインダクタを含むものであってもよく、さらには抵抗素子を含んでもよい。
[RFアンテナに関する他の実施例または変形例]
【0101】
図20に、RFアンテナ54内の各コイルセグメント60,64(1),64(2)において、その長さ方向の中間部に、誘電体窓52との距離間隔が局所的に大きくなるたとえばΠ形状の突出部94,96(1),96(2)を設ける構成例を示す。
【0102】
この実施形態のRFアンテナ54においては、上記のように、内側コイル58の一周ループ内では内側コイルセグメント60の両端のRF入口端60(RF-In)およびRF出口端60(RF-out)の間に間隙が形成される。また、外側コイル62の一周ループ内では、第1の外側コイルセグメント64(1)のRF入口端64(1)(RF-In)と第2の外側コイルセグメント64(1)のRF出口端64(2)(RF-Out)との間に間隙が形成され、第1の外側コイルセグメント64(1)のRF出口端64(1) (RF-Out)と第2の外側コイルセグメント64(1)のRF入口端64(2) (RF-In)との間に間隙が形成される。
【0103】
内側コイル58および外側コイル62の一周ループ内にそのような間隙が有ると、その間隙部分の直下ではプラズマに誘導起電力を与えることができないため、電子密度が低くなり、周回方向の特異点になりやすい。
【0104】
たとえば半径Rのコイルで周回方向の特異点が1箇所の場合、一周2πRの特性長で密度の不均一が生じ、基板に到達するまでにこの2πRの距離にわたって拡散による平滑化が必要となる。しかるに、もしも周回方向で特異点がn個(n≧2)あれば、この特性長は2πR/nに短縮される。
【0105】
そこで、この構成例では、各コイルセグメント60,64(1),64(2)の中間部(好ましくは真ん中)に設けられる上記突出部94,96(1),96(2)がプラズマに対してダミーの間隙部を形成し、コイルセグメント端部の間隙と等価な特異点になる。つまり、コイル周回方向で特異点を増加させ、拡散後のプラズマ密度分布をより均一に平滑させる効果がある。
【0106】
さらに、上記突出部94,96(1),96(2)は、各コイルセグメント60,64(1),64(2)のコイル長を調節する機能も有している。すなわち、各突出部94,96(1),96(2)のギャップ幅または高さを適宜調節することで、各コイルセグメント60,64(1),64(2)の口径(直径)を一定に保ったままコイル長を調節することができる。これにより、たとえば、コイルセグメント60,64(1),64(2)間の自己インダクタンスのばらつきを補正することができる。
【0108】
図21Aおよび
図21Bの構成例は、内側コイル58を単体の内側コイルセグメント60により2回巻き(2ターン)に形成し、外側コイル60を2つの外側コイルセグメント64(1),64(2)により単巻き(1ターン)に形成している。複巻きの内側コイル58は、
図21に示すように好ましくは縦方向に螺旋状に形成されてよいが、横方向または径方向に渦巻き状に形成されてもよい。
【0109】
図22の構成例は、内側コイル58を単体の内側コイルセグメント60により単巻き(1ターン)に形成し、外側コイル60を3つの外側コイルセグメント64(1),64(2),64(3)により2回巻き(2ターン)に形成している。この場合も、複巻きの外側コイル62は、螺旋状コイルまたは渦巻き状コイルのいずれであってもよい。
【0110】
図23Aの構成例は、内側コイル58を単体の内側コイルセグメント60により2回巻き(2ターン)に形成し、外側コイル60を3つの外側コイルセグメント64(1),64(2),64(3)により2回巻き(2ターン)に形成している。この場合も、複巻きの内側コイル58および外側コイル62は、螺旋状コイルまたは渦巻き状コイルのいずれであってもよい。
【0111】
コイル60を渦巻き状にすると、渦巻きの始点と終点がループ上の特異点となる。本発明においては、渦巻きの途中に切れ目(間隙)G
oがあるという利点を生かし、すべての切れ目(間隙)G
oを特異点とすることで、周回方向の複数箇所(たとえば3箇所)に等間隔で特異点を設けることができる。これも、コイル周回方向で拡散後のプラズマ密度分布をより均一に平滑させる効果がある。
【0112】
また、
図23Bに示すように、同一コイル(ループ)内で隣接する2つのコイルセグメント(64(1),64(2))、(64(2),64(3))、(64(3),64(1))間の間隙(切れ目)G
oは、周回方向に設けられる構成に限定されるものではなく、たとえば
図23Bに示すように周回方向と直交する方向つまり縦方向または径方向に設けられてもよい。内側コイル58を単体の内側コイルセグメント60で構成する場合においても、その両端間に形成される隙間G
iについても同様のことがあてはまる。
【0113】
本発明のRFアンテナにおいて、内側コイル58を構成する内側コイルセグメント60の個数および外側コイル62を構成する外側コイルセグメント64の個数はそれぞれ任意であり、たとえば
図22〜
図23Bの構成例のように外側コイル62を3個の外側コイルセグメント64(1),64(2),64(3)により構成することも可能である。
【0114】
あるいは、
図24に示すように、内側コイル58を複数個(たとえば2個)のコイルセグメント60(1),60(2)により構成することも可能である。
【0115】
また、本発明のRFアンテナを構成するコイルは必ずしも複数である必要はなく、
図25に示すように、1つのコイル102で構成することも可能である。
図25のコイル102は、2つのコイルセグメント102(1),102(2)に分割されているが,3つ以上のコイルセグメントに分割される構成も可能である。
【0116】
上記実施形態では、RFアンテナ54内で内側コイル58と外側コイル60とを電気的に並列に接続した。しかし、
図26に示すように、内側コイル58と外側コイル60とを電気的に直列に接続する構成も可能である。
【0117】
また、本発明のRFアンテナを構成するコイルセグメントは必ずしもすべて同じ長さである必要はない。たとえば、上記実施形態のRFアンテナ54においては、内側コイル58を構成する内側コイルセグメント60の長さと外側コイル62を構成する各々の外側コイルセグメント64(1),64(2)の長さがたとえば1:2あるいは1:0.8等の関係(比)で異なっていてもよい。その場合、内側コイル58を流れる電流の大きさと外側コイル62を流れる電流の大きさが所定の比で違ってくるが、それによって径方向において両コイルの起磁力に最適なバランスが得られ、所望のプラズマ密度分布が得られることもある。
【0118】
本発明におけるRFアンテナを構成するコイルのループ形状は円形に限るものではなく、たとえば
図27に示すような四角形、あるいは
図28に示すような三角形であってもよい。また、各コイル(ループ)を構成する複数のコイルセグメントの間で形状や自己インピーダンスが多少異なっていてもよい。コイルまたはコイルセグメントの断面形状は矩形に限らず、円形、楕円形などでもよく、単線に限らず撚線であってもよい。
【0119】
図29に、高周波給電部66の整合器68とRFアンテナ54との間にトランス100を設ける構成例を示す。このトランス100の一次巻線は整合器74の出力端子に電気的に接続され、二次巻線はRFアンテナ54の入口側の第1ノードN
Aに電気的に接続されている。トランス100の好ましい一形態として、一次巻線の巻数を二次巻線の巻数よりも多くすることにより、整合器74からトランス100に流れる電流(一次電流)I
1をトランス100からRFアンテナ54に流れる電流(二次電流)I
2よりも少なくすることができる。別な見方をすれば、一次電流I
1の電流量を増やさないで、RFアンテナ54に供給する二次電流I
1の電流量を増やすことができる。また、トランス100の二次側でタップ切換を行うことにより、二次電流I
2を可変することも可能である。
【0120】
上述した実施形態における誘導結合型プラズマエッチング装置の構成は一例であり、プラズマ生成機構の各部はもちろん、プラズマ生成に直接関係しない各部の構成も種種の変形が可能である。
【0121】
たとえば、RFアンテナの基本形態として、平面型以外のタイプたとえばドーム型等も可能である。処理ガス供給部においてチャンバ10内に天井から処理ガスを導入する構成も可能であり、サセプタ12に直流バイアス制御用の高周波RF
Lを印加しない形態も可能である。
【0122】
さらに、本発明による誘導結合型のプラズマ処理装置またはプラズマ処理方法は、プラズマエッチングの技術分野に限定されず、プラズマCVD、プラズマ酸化、プラズマ窒化、スパッタリングなどの他のプラズマプロセスにも適用可能である。また、本発明における被処理基板は半導体ウエハに限るものではなく、フラットパネルディスプレイ用の各種基板や、フォトマスク、CD基板、プリント基板等も可能である。