特許第5851737号(P5851737)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5851737室内環境制御システム及び室内環境制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5851737
(24)【登録日】2015年12月11日
(45)【発行日】2016年2月3日
(54)【発明の名称】室内環境制御システム及び室内環境制御方法
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/02 20060101AFI20160114BHJP
   G05D 23/19 20060101ALI20160114BHJP
【FI】
   F24F11/02 S
   G05D23/19 J
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2011-148718(P2011-148718)
(22)【出願日】2011年7月4日
(65)【公開番号】特開2013-15271(P2013-15271A)
(43)【公開日】2013年1月24日
【審査請求日】2014年7月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(74)【代理人】
【識別番号】100162031
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 豊彦
(72)【発明者】
【氏名】菅野 泰史
(72)【発明者】
【氏名】伊東 亜矢子
(72)【発明者】
【氏名】本間 瑞基
(72)【発明者】
【氏名】井上 博之
(72)【発明者】
【氏名】高橋 康夫
(72)【発明者】
【氏名】西田 竜太
(72)【発明者】
【氏名】小池 昭啓
(72)【発明者】
【氏名】加藤 五月
(72)【発明者】
【氏名】浅田 稔
(72)【発明者】
【氏名】石黒 浩
(72)【発明者】
【氏名】岩井 儀雄
(72)【発明者】
【氏名】中村 泰
(72)【発明者】
【氏名】松本 裕樹
【審査官】 佐藤 正浩
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−157548(JP,A)
【文献】 特開平10−214101(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 11/02
G05D 23/19
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内空間の環境情報を検知する環境情報検知部と、
前記室内空間に在室する一人又は二人以上の在室者が発した在室者情報を、前記在室者ごとに検知する在室者情報検知部と、
前記環境情報検知部で検知した環境情報と、前記在室者情報検知部で検知した在室者ごとの在室者情報と、に基づいて、前記室内空間の環境を前記在室者ごとに調整するための調整信号を生成する、制御部と、
前記制御部で生成した調整信号に基づいて、前記室内空間の環境を前記在室者ごとに調整する、運転部と、を備え、
前記制御部は、在室者情報と在室者の快適性との関係を記録したデータベースを予め備えるとともに、前記在室者情報検知部で検知した在室者情報のもとで前記データベースにおいて前記在室者の快適性が最適となるように、前記在室者情報をゆらぎ指標として以下の数1を用いて前記調整信号を生成する、
ことを特徴とする、室内環境制御システム。
【数1】
A:ゆらぎ指標
η:ノイズ
【請求項2】
室内空間の環境情報を検知する環境情報検知工程と、
前記室内空間に在室する一人又は二人以上の在室者が発した在室者情報を、前記在室者ごとに検知する在室者情報検知工程と、
前記環境情報検知工程で検知した環境情報と、前記在室者情報検知工程で検知した在室者ごとの在室者情報と、に基づいて、前記室内空間の環境を前記在室者ごとに調整するための調整信号を生成する、制御工程と、
前記制御工程で生成した調整信号に基づいて、前記室内空間の環境を前記在室者ごとに調整する、運転工程と、を備え、
前記制御工程において、前記在室者情報検知工程で検知した在室者情報のもとで、在室者情報と在室者の快適性との関係を記録したデータベースにおいて前記在室者の快適性が最適となるように、前記在室者情報をゆらぎ指標として以下の数1を用いて前記調整信号を生成する、
ことを特徴とする、室内環境制御方法。
【数1】
A:ゆらぎ指標
η:ノイズ
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室内環境制御システム及び室内環境制御方法に関し、詳しくは、室内空間における在室者の快適性を向上させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、室内空間の温度や湿度を検知して、その検知結果を用いて在室者の快適性が向上するように快適指標を演算し、この快適指標に基づいて空調設備を駆動することによって室内環境を制御する技術が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
また、在室者のPMV(Predicted Mean Vote、予測温冷感申告)値から室内空間の平均PMV値を算出し、この平均PMV値に基づいて空調を制御することにより、在室者の体感に合わせて室内環境を制御する技術が知られている(例えば、特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−103547号公報
【特許文献2】特開2008−232533号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来技術においては室内の空間単位で一括制御するため、在室者ごとの快適性に合わせて環境を制御することはできなかった。即ち、快適な室内条件(温度や照明の強さなど)は在室者やその状態によって異なるが、それらに合わせて個別に室内環境を制御することは困難であった。
【0005】
また、事務所のように複数人が在室者として在室する空間において、在室者ごとに状態を検知し、それぞれの在室者に快適な室内環境となるように制御しようとすると、演算条件が複雑となる。このため、室内環境の制御機器が増加する上に、演算処理に要する時間的及びエネルギー的なコストが肥大化するという問題があった。
【0006】
そこで本発明は、上記現状に鑑み、簡易なシステムで時間的及びエネルギー的なコストを肥大化させることなく、在室者ごとの快適性に合わせて室内空間の環境を制御することの可能な、室内環境制御システム及び室内環境制御方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
即ち、請求項1においては、室内空間の環境情報を検知する環境情報検知部と、前記室内空間に在室する一人又は二人以上の在室者が発した在室者情報を、前記在室者ごとに検知する在室者情報検知部と、前記環境情報検知部で検知した環境情報と、前記在室者情報検知部で検知した在室者ごとの在室者情報と、に基づいて、前記室内空間の環境を前記在室者ごとに調整するための調整信号を生成する、制御部と、前記制御部で生成した調整信号に基づいて、前記室内空間の環境を前記在室者ごとに調整する、運転部と、を備え、前記制御部は、在室者情報と在室者の快適性との関係を記録したデータベースを予め備えるとともに、前記在室者情報検知部で検知した在室者情報のもとで前記データベースにおいて前記在室者の快適性が最適となるように、前記在室者情報をゆらぎ指標として以下の数1を用いて前記調整信号を生成するものである。
【数1】
A:ゆらぎ指標
η:ノイズ
【0009】
請求項2においては、室内空間の環境情報を検知する環境情報検知工程と、前記室内空間に在室する一人又は二人以上の在室者が発した在室者情報を、前記在室者ごとに検知する在室者情報検知工程と、前記環境情報検知工程で検知した環境情報と、前記在室者情報検知工程で検知した在室者ごとの在室者情報と、に基づいて、前記室内空間の環境を前記在室者ごとに調整するための調整信号を生成する、制御工程と、前記制御工程で生成した調整信号に基づいて、前記室内空間の環境を前記在室者ごとに調整する、運転工程と、を備え、前記制御工程において、前記在室者情報検知工程で検知した在室者情報のもとで、在室者情報と在室者の快適性との関係を記録したデータベースにおいて前記在室者の快適性が最適となるように、前記在室者情報をゆらぎ指標として以下の数1を用いて前記調整信号を生成するものである。
【数1】
A:ゆらぎ指標
η:ノイズ
【発明の効果】
【0010】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0011】
本発明により、簡易なシステムで時間的及びエネルギー的なコストを肥大化させることなく、在室者ごとの快適性に合わせて室内環境を制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態に係る室内環境制御システムの概略図。
図2】同じく室内環境制御システムの制御ブロック図。
図3】在室者を示した図。
図4】在室者の表情認識手法を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、発明の実施の形態を説明する。
なお、本発明の技術的範囲は以下の実施例に限定されるものではなく、本明細書及び図面に記載した事項から明らかになる本発明が真に意図する技術的思想の範囲全体に、広く及ぶものである。
【0014】
[室内環境制御システム100の構成]
まず始めに、本発明の一実施形態に係る室内環境制御システム100について、図1及び図2を用いて説明する。図1及び図2中に記載する一点鎖線は、それぞれの構成が電気的に接続されていることを示している。即ち、後述する環境情報検知部10及び在室者情報検知部20は制御部30と、また、制御部30は運転部40と電気的に接続されている。
【0015】
図1及び図2に示す如く、室内環境制御システム100は、環境情報検知部10と、在室者情報検知部20と、制御部30と、運転部40と、を備える。以下、各部について具体的に説明する。
【0016】
環境情報検知部10は室内空間Rに配設され、室内空間Rの環境情報を検知する検知手段を備える。具体的には図1及び図2に示す如く、環境情報検知部10は室内空間Rの温度及び湿度を検知するセンサである、温度・湿度検知手段11を備えている。
室内空間Rの環境情報とは、上記の如く温度や湿度など、室内に在室する在室者Hの快適性に影響を与える条件に関する情報である。本実施形態においては、「不快でない状態」を含めて「快適」と定義することとし、「快適性」とは在室者の感覚である快適さの度合い(不快となる要因が少ない度合い)を示している。また、本実施形態における室内空間Rは、事務所など多くの人が在室し、在室者の快適性がそれぞれ異なる空間を指す。
なお、本実施形態においては、環境情報検知部10は室内空間Rの環境情報として温度と湿度とを検知する構成としているが、例えば室内の明るさや気圧などを検知する構成とすることも可能である。
【0017】
在室者情報検知部20は室内空間Rに配設され、室内空間Rに在室する在室者Hが発した在室者情報を在室者Hごとに検知する検知手段を備える。具体的には図1及び図2に示す如く、在室者情報検知部20は在室者Hの画像を検知するビジョンセンサである、画像検知手段21、及び、在室者Hの発声を検知するマイクである、音声検知手段22を備えている。在室者Hが発した在室者情報とは、上記の如く在室者の画像や発声など、在室者Hによって表現される情報である。本実施形態においては、在室者情報検知部20は在室者Hが発した在室者情報として画像と発声を検知する構成としているが、例えば体温や匂い、発汗量などを検知する構成とすることも可能である。
【0018】
なお、本実施形態において、在室者Hは二人の在室者H1・H2が在室するものとしているが、在室者Hの人数は一人又は三人以上でも良く、限定されるものではない。また、本実施形態においては在室者Hの画像及び発声を検知するために在室者H1・H2のそれぞれに対応する画像検知手段21a・21b、及び、音声検知手段22a・22bが配設されているが、在室者Hごとに在室者情報を検知できる構成であれば、一個の検知手段のみを配置して、全ての在室者Hの在室者情報を検知する構成としても差し支えない。
【0019】
制御部30は、画像処理手段31、音声処理手段32、記憶手段33、演算手段34、及び、図示しない入力手段、表示手段、通信手段等を備えた制御装置であり、CPUやRAMやROMやインターフェース等のマイクロコンピュータを主体として構成される。記憶手段33は、室内環境制御システム100の運転に関するプログラムが格納され、また、演算手段34で演算された情報が一時的に保存されるように構成されている。
【0020】
そして制御部30は、環境情報検知部10で検知した環境情報と、在室者情報検知部20で検知した在室者Hごとの在室者情報と、を電気信号として受信可能に構成されている。そして、この環境情報及び在室者情報に基づいて演算手段34により、室内空間Rの環境を在室者Hごとに調整するための調整信号を生成する。そして、この調整信号により補正して運転部40を制御する。
【0021】
本実施形態では具体的には、温度・湿度検知手段11が検知した室内空間Rの温度及び湿度、画像検知手段21が検知した在室者Hの画像、及び、音声検知手段22が検知した在室者Hの発声に基づいて、顔認識データや声紋データ等により各在室者を特定し、各在室者の快適性を記録したデータから、在室者に応じた調整信号を生成するのである。
【0022】
運転部40は室内空間Rに配設され、制御部30で生成した調整信号に基づいて、室内空間Rの環境を在室者Hごとに調整する。具体的には図1及び図2に示す如く、運転部40は室内空間Rの空調を行うエアコンディショナーである、空調手段41、及び、室内空間Rの照明である照明手段42を備えている。そして、図1に示す如く、空調手段41で在室者H1に吹く風w1よりも在室者H2に吹く風w2を強くしたり、照明手段42aが在室者H1に照らす光r1よりも照明手段42bが在室者H2に照らす光r2を弱くしたりするのである。
【0023】
本実施形態においては、運転部40は室内空間Rの環境として空調と照明を調整する構成としているが、例えば窓の開閉やブラインドの昇降、スピーカーの調整などを行う構成とすることも可能である。
【0024】
そして、制御部30の記憶手段33は、後述する如く、在室者情報と在室者Hの快適性との関係を記録したデータベースを予め備える。
また、演算手段34は、在室者情報検知部20で検知した在室者情報のもとでデータベースにおいて在室者Hの快適性が最適となるように、在室者情報をゆらぎ指標として以下の数式1で定める如くゆらぎ制御することにより調整信号を生成する。
【0025】
【数1】
【0026】
上記数式1において、xは状態、Aはゆらぎ指標(アクティビティ)、ηはノイズ(ランダムな動作)を表す。数式1より、ゆらぎ指標Aが0又は微小な場合は調整信号におけるノイズηの影響が相対的に大きくなり、ゆらぎ指標Aが大きくなると調整信号においてゆらぎ指標Aの影響が相対的に大きくなるのである。
【0027】
本実施形態においては、ゆらぎ指標Aとして在室者情報を用いているため、在室者情報検知部20で検知した在室者情報が小さい場合は、演算手段34はノイズηの影響を受けてランダムな動作により調整信号を生成し、運転部40による室内空間Rの環境を調整する。また、在室者情報が大きくなってくると、演算手段34は在室者情報に基づいて調整信号を生成し、運転部40による室内空間Rの環境を在室者Hごとに調整するのである。
【0028】
このように、本発明の一実施形態に係る室内環境制御方法においては、室内空間Rの環境情報を検知する環境情報検知工程と、室内空間Rに在室する在室者Hが発した在室者情報を、在室者Hごとに検知する在室者情報検知工程と、環境情報検知工程で検知した環境情報と、在室者情報検知工程で検知した在室者Hごとの在室者情報と、に基づいて、室内空間Rの環境を在室者Hごとに調整するための調整信号を生成する、制御工程と、制御工程で生成した調整信号に基づいて、室内空間Rの環境を在室者Hごとに調整する、運転工程と、を備える。そして、制御工程において、在室者情報検知工程で検知した在室者情報のもとで、在室者情報と在室者Hの快適性との関係を記録したデータベースにおいて在室者Hの快適性が最適となるように、在室者情報をゆらぎ指標Aとしてゆらぎ制御することにより、調整信号を生成するのである。
【0029】
本実施形態においては上記の如く、在室者情報検知部20で検知した在室者情報をゆらぎ指標Aとしてゆらぎ制御する構成としている。このため、在室者情報を検知しなくなってもノイズηによるランダムな動作により室内空間Rの環境を調整し、再び在室者情報を検知した時にこの在室者情報をゆらぎ指標Aとして室内空間Rの環境を在室者Hごとに調整することができるのである。
【0030】
このようなゆらぎ制御によれば、従来の如く目標をモデル化して行う制御手法と比較して、目標や環境が変化する場合や制御機器が多岐にわたる場合など、複雑化された条件下でも、各条件のモデル化を必要としないため、演算処理に要する時間及びエネルギーを抑えることができる。即ち、本実施形態のように複数人が在室者Hとして在室する空間において、在室者Hごとに状態を検知し、それぞれの在室者Hに快適な室内環境となるように制御する場合であっても、室内環境の制御機器を増加させることなく、演算処理に要する時間的及びエネルギー的なコストを抑制することが可能となるのである。つまり、簡易なシステムで時間的及びエネルギー的なコストを肥大化させることなく、在室者ごとの快適性に合わせて室内環境を制御することが可能となるのである。
【0031】
次に、制御部30が備える画像処理手段31で行う画像処理、及び、音声処理手段32で行う音声処理の手法について、図3及び図4を用いて説明する。
画像処理手段31は図2に示す如く、表情認識機能、着衣量認識機能、行動認識機能等を有する。具体的には図3に示す如く、画像検知手段21で検知した在室者Hの画像から、顔Fを含む顔画像A1、全身の衣服を含む全身画像A2、全身による行動を含む行動画像A3、在室者Hの移動を追跡した移動画像A4を分析する。そして、それぞれの画像A1からA4に基づいて、在室者Hの表情、着衣量、行動等を在室者情報として認識するのである。また、在室者情報は、在室者Hの快適性との関係を記録したデータベースとして、制御部30の記憶手段33に記録されている。
【0032】
例えば表情認識機能では、図4に示す如く、在室者Hの顔Fにおいて、顔Fの輪郭、眉、目、鼻、及び口等を示す特徴点Pを抽出する。そして、特徴点Pの動きを分析することにより、在室者Hの表情を読み取るのである。例えば、特徴点Pの動きによって、眉間にしわがよる、口元が下がる、などの表情を認識する。このとき不快であるか、快適であるか等を判断するのである。暑い、寒いは言語認識や着衣量認識や行動認識や室内温度等を加味して判断する。
【0033】
なお、本実施形態において、表情認識機能は顔画像A1によって在室者Hの表情を認識する構成としているが、画像検知手段21で検知した在室者Hの顔画像A1と、既に登録された顔画像とにおける特徴点Pとの一致の有無を判断することも可能である。これにより、在室者Hが登録された人物と同一人物か否かを判定する、個人同定機能として表情認識機能を用いることも可能である。
【0034】
音声処理手段31は図2に示す如く、言語認識機能等を有する。具体的には図3に示す如く、音声検知手段22で検知した在室者Hの発声から、在室者Hの発言データB1を分析する。そして、発言データB1の内容に基づいて、在室者Hの状況を在室者情報として認識するのである。例えば、「暑い」、「蒸し暑い」、「温かい」、「寒い」、「涼しい」などの音声を認識するのである。
【0035】
着衣量認識機能は、衣服の種類や重ね着枚数等を認識する。例えば、半袖や長袖、Tシャツやセーターやスエットシャツ、長ズボンや半ズボン、スカート、靴下の有無等により衣服の種類を判断する。また、シャツの上にベストやカーディガンやジャケットやパーカー等を羽織っているかで重ね着(重ね着の衣服の種類や重ね着枚数)を判断する。
行動認識機能は、例えば、「手で顔を仰ぐ」「汗を拭く」「暑いと言う」などの行動情報が、「室温が高いことによる不快さ」を表現するものとして、「掌で上腕部をさする」「体を縮める」「寒いと言う」などの行動情報が、「室温が低いことによる不快さ」を表現するものとして記録されているのである。
このように、在室者情報と在室者Hの快適性との関係としては室温の他に、室内の明るさ、湿度、風通しなどの様々な要素において、在室者Hが不快に感じた時の行動をパターン化して記録することが可能である。なお、室内の明るさは、読書やパソコンの操作やテレビの視聴や昼寝や食事などの行動認識機能により判断して、制御する。
【0036】
そして、室内環境制御システム100において前記の如くゆらぎ制御を行う場合には、在室者情報検知部20で検知した在室者情報のもとで、前記の如く作成したデータベースにおいて、それぞれの在室者Hの快適性が最適となるように、調整信号を生成する。つまり、例えば在室者Hから検知した在室者情報が、データベースに記録された「室温が高いことによる不快さ」を表現していた場合は、その在室者H周辺の温度を下降させて室内空間Rの環境を調整するように調整信号を生成し、この調整信号に基づいて在室者Hごとに運転部40を駆動させるのである。
【0037】
このように、本実施形態においては在室者情報検知部20で検知した在室者情報に基づいて、在室者Hごとの快適性に合わせて環境を制御することができる。即ち、快適な室内条件(温度や照明の強さなど)は在室者Hやその状態によって異なるところ、それらに合わせて個別に室内環境を制御することが可能となるのである。
【符号の説明】
【0038】
10 環境情報検知部
20 在室者情報検知部
30 制御部
40 運転部
100 室内環境制御システム
図1
図2
図3
図4