特許第5851908号(P5851908)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5851908電磁ポンプ及びクエンチタンク並びに液体金属ループ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5851908
(24)【登録日】2015年12月11日
(45)【発行日】2016年2月3日
(54)【発明の名称】電磁ポンプ及びクエンチタンク並びに液体金属ループ
(51)【国際特許分類】
   H02K 44/04 20060101AFI20160114BHJP
【FI】
   H02K44/04
【請求項の数】7
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2012-75214(P2012-75214)
(22)【出願日】2012年3月28日
(65)【公開番号】特開2013-207938(P2013-207938A)
(43)【公開日】2013年10月7日
【審査請求日】2014年12月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】309036221
【氏名又は名称】三菱重工メカトロシステムズ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(74)【代理人】
【識別番号】100118762
【弁理士】
【氏名又は名称】高村 順
(72)【発明者】
【氏名】久利 修平
(72)【発明者】
【氏名】松下 出
(72)【発明者】
【氏名】堀池 寛
(72)【発明者】
【氏名】村田 勲
(72)【発明者】
【氏名】帆足 英二
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 幸子
(72)【発明者】
【氏名】加藤 逸郎
【審査官】 仲村 靖
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭62−178153(JP,A)
【文献】 特開昭63−080759(JP,A)
【文献】 特開平01−222649(JP,A)
【文献】 米国特許第03135208(US,A)
【文献】 特開2008−141870(JP,A)
【文献】 特開昭62−189969(JP,A)
【文献】 特開2002−064000(JP,A)
【文献】 実開昭60−125599(JP,U)
【文献】 特開平6−209561(JP,A)
【文献】 米国特許第4828459(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 44/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外筒及び内筒の間に径方向断面が円環状であり導電性の液体を流すダクト形成されると共に、前記外筒の外側に電磁コイル設けられた電磁ポンプにおいて、
前記ダクトの入口側の径方向断面積が出口側の径方向断面積より大きいことを特徴とする電磁ポンプ。
【請求項2】
外筒及び内筒の間に径方向断面が円環状であり導電性の液体を流すダクト形成されると共に、前記外筒の外側に電磁コイル設けられた電磁ポンプにおいて、
前記外筒の内面及び内筒の外面は、軸方向に対して、前記ダクト入口側の径方向断面積が出口側の径方向断面積より大きくなるような傾斜角度を有していることを特徴とする電磁ポンプ。
【請求項3】
更に、外筒及び内筒の径方向の間隔が軸方向で略均一であることを特徴とする請求項2に記載の電磁ポンプ。
【請求項4】
外筒及び内筒の間に径方向断面が円環状であり導電性の液体を流すダクト形成されると共に、前記外筒の外側に電磁コイル設けられた電磁ポンプにおいて、
前記ダクトの入口側の径方向断面積が出口側の径方向断面積より大きくなるように、前記内筒の外面は前記ダクトの入口側の径が出口側の径よりも小さくなるように軸方向に対して傾斜角度を有する円錐台状であることを特徴とする電磁ポンプ。
【請求項5】
更に、入口側の電磁コイルに流す電流が大きくなるように制御されることを特徴とする請求項1、2又は4に記載の電磁ポンプ。
【請求項6】
液体金属ループの循環経路に配置されタンク本体内に導入された液体金属中の液体金属蒸気或いは混入ガスを分離冷却するクエンチタンクであって、
前記タンク本体は、前記液体金属中の液体金属蒸気或いは混入ガスを当接させて除去する分離板を有し、
前記タンク本体に、請求項1〜5のいずれか一つに記載の電磁ポンプの入口側接続されていることを特徴とするクエンチタンク。
【請求項7】
請求項6に記載のクエンチタンクを備えたことを特徴とする液体金属ループ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体リチウム等の液体金属の循環等に用いる電磁ポンプ及びクエンチタンク並びに液体金属ループに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から特許文献1に記載のような電磁ポンプが知られている。この電磁ポンプは、同心二重円筒管の外側径方向に複数の固定子鉄芯を放射状に配置し、この固定子鉄芯に櫛歯状のスロットを複数設け、各スロットにリング状のコイルを複数配置した構成である。同心二重円筒管は、外管と内管とから構成され、外管と内管との間にダクトが形成される。内管は、その内部に磁力線を通すための内部鉄芯を有する。また、内管の両端部は円錐状に形成される。外筒は、高速増殖炉の液体ナトリウムの循環ループ経路に接続される。
【0003】
各コイルは、流れ方向に三相交流巻線として各相の順に配置されており、この電磁ポンプのコイルに三相交流を流すと、ダクト内の流れ方向に進行磁界が発生する。また、所謂フレミングの右手の法則により流体中に電圧が誘起されて誘導電流が流れ、流体自体にローレンツ力が発生する。この進行磁界と誘導電流による電磁力により液体金属を移送する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭62−178153号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的なループでは、電磁ポンプの入口側のループ配管の高さを10m程度確保することで電磁ポンプの背圧を確保し、キャビテーションの発生を防止するようにしている。しかしながら、ループ配管を高くすると装置が大きくなるという問題点がある。この発明はかかる問題点を解決するためになされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る電磁ポンプは、外筒及び内筒の間に導電性の液体を流すダクトを形成すると共に、前記外筒の外側に電磁コイルを設けた電磁ポンプにおいて、前記ダクトの入口側の径方向断面積が出口側の径方向断面積より大きいことを特徴とする。
【0007】
ダクトの入口側の径方向断面積を大きくすると、入口側での流速が遅くなりキャビテーションを防止する方向に働く。このため、電磁ポンプを適用する導電性の液体の循環ループの高さを低くできる効果がある。
【0008】
また、本発明に係る電磁ポンプは、外筒及び内筒の間に導電性の液体を流すダクトを形成すると共に、前記外筒の外側に電磁コイルを設けた電磁ポンプにおいて、前記外筒の内面及び内筒の外面は、軸方向に対して、ダクト入口側の径方向断面積が出口側の径方向断面積より大きくなるような傾斜角度を有していることを特徴とする。
【0009】
即ち、外筒の内面及び内筒の外面に傾斜角度を持たせることで、外筒と内筒の間に形成されるダクトの径方向断面積が変化する。このようにしてダクトの入口側の径方向断面積を大きくすると、入口側での流速を遅くできるのでキャビテーションを防止する効果があると共にループ高さを低くできるという効果がある。
【0010】
また、本発明に係る電磁ポンプは、上記発明において、更に、外筒及び内筒の径方向の間隔が軸方向で略均一であることを特徴とする。
【0011】
電磁コイルにより生じさせる磁界がダクト内に均一に発生するので、ダクトの軸方向で磁束密度が大きく変化することがない。
【0012】
また、本発明に係る電磁ポンプは、外筒及び内筒の間に導電性の液体を流すダクトを形成すると共に、前記外筒の外側に電磁コイルを設けた電磁ポンプにおいて、外筒の内面及び内筒の外面の一方が、軸方向に対してダクト入口側の径方向断面積が出口側の径方向断面積より大きくなる傾斜角度を有し、他方が、軸方向に対して平行であることを特徴とする。
【0013】
係る構成であっても外筒と内筒の間に形成されるダクトの径方向断面積が変化し、前記ダクトの入口側の径方向断面積を大きくすると、入口側での流速が遅くなりキャビテーションが防止される方向に働くのでループ高さを低くできる効果がある。
【0014】
また、本発明に係る電磁ポンプは、上記発明において、更に、入口側の電磁コイルに流す電流が大きくなるように制御されることを特徴とする。
【0015】
即ち、この発明では、入口側において外筒と内筒との間隔が大きくなるとダクト内の磁界が入口側と出口側で異なる結果となるため、入口側の電磁コイルに流す電流を大きくすることでダクトの軸方向における磁界を均一化する。これにより、ダクトの軸方向で入口側流速を遅くできるので、キャビテーションを防止する方向に働く。
【0016】
また、本発明に係るクエンチタンクは、液体金属ループの循環経路に配置されタンク本体内に導入された液体金属中の液体金属蒸気或いは混入ガスを分離冷却するクエンチタンクであって、前記タンク本体に、上記のいずれか一つに記載の電磁ポンプの入口側を接続したことを特徴とする。
【0017】
また、本発明に係る液体金属ループは、上記クエンチタンクを備えたことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】この発明の実施の形態1にかかる電磁ポンプを示す正面図である。
図2図1に示した電磁ポンプの径方向のA−A断面図である。
図3図1に示した電磁ポンプのB−B断面図である。
図4】この発明の実施の形態2にかかる電磁ポンプを示す正面図である。
図5図4に示した電磁ポンプの径方向のA−A断面図である。
図6図4に示した電磁ポンプのB−B断面図である。
図7】この発明の実施の形態3にかかる電磁ポンプを示す正面図である。
図8図7に示した電磁ポンプの径方向のA−A断面図である。
図9図7に示した電磁ポンプのB−B断面図である。
図10】この発明の実施の形態4にかかるクエンチタンクを示す正面図である。
図11図10に示したクエンチタンクの側面図である。
図12図10に示したクエンチタンクの上面図である。
図13図10に示したクエンチタンクの断面図である。
図14】筒体の断面図である。
図15】この発明の実施の形態5にかかるクエンチタンクの筒体を示す断面図である。
図16】この発明の実施の形態6に係るクエンチタンクを示す断面図である。
図17図16のA−A断面図である。
図18】この発明の実施の形態7に係るクエンチタンクを示す断面図である。
図19図18のA−A断面図である。
図20図18のB−B断面図である。
図21図18のC−C断面図である。
図22】この発明の液体金属ループを示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(実施の形態1)
図1は、この発明の実施の形態1にかかる電磁ポンプを示す流れ方向断面図である。図2は、図1に示した電磁ポンプの径方向のA−A断面図、図3はB−B断面図である。この電磁ポンプ100は、筐体1内に、ステンレス製の外筒2と、外筒2の内部に配置されたステンレス製の内筒3と、前記外筒2の周囲に配置した電磁コイル4とを備えた構成である。
【0020】
外筒2は、全体として円錐台形状であり、入口側の径が大きく、出口側の径が小さい。なお、ループの配管と取り合いを行う部分(外筒の端縁2a)は直管状となる。また、内筒3も同様に入口側の径が大きく、出口側の径が小さい。外筒2と内筒3との間にはダクト5が形成される。ダクト5の形状は、外筒2の内筒3との間隙に形成されることから円環状となる。また、ダクト5の径方向の断面積は、入口側で大きく、出口側で小さくなる。
【0021】
内筒3の中には、磁力線を通すための内部鉄芯6が設けられている。内筒3の外周面と外筒2の内周面との間には、内筒3を支持する支持板7が径方向に設けられている。当該支持板7は、内筒3の前後端近傍の周方向に4つ均等に設けられている。また、内筒3の前後には円錐形状のキャップ8が設けられている。
【0022】
電磁コイル4は、櫛歯状にスロット9を複数形成した固定子鉄芯10と、前記スロット9に配置されたコイル11とから構成される。固定子鉄芯10は、櫛歯状のスロット9を形成した薄板鉄板を積層して所定厚を有する積層鉄芯とし、この積層鉄芯を外筒2の周囲に均等配置した構成である。固定子鉄芯10の外筒対向面は、外筒2の傾斜角度に沿って傾斜しており、外筒2の周囲に配置した際に固定子鉄芯10が外筒2の外周面に対して隙間なく当接する。前記傾斜角度は電磁ポンプ4の軸方向に対する外筒2の内面又は内筒3の外面の角度である。
【0023】
固定子鉄芯10の外側は、筐体1の内周面に対して支持されている。また、各スロット9内には、円環状に巻回されたコイル11が配置されている。各コイル11は、液体金属の流れ方向に三相交流巻線として各相の順に配置される。内筒2と外筒3との径の差はダクト5の流れ方向で均一であるから、電磁コイル4に一定の電流を流すことで液体金属に付与される電磁力を流れ方向で均一にできる。
【0024】
次に、この電磁ポンプ100の動作を説明する。この電磁ポンプ100のコイル11に三相交流を流すと、ダクト5内の流れ方向に進行磁界が発生する。また、所謂フレミング法則により流体中に電圧が誘起されて誘導電流が流れ、流体自体にローレンツ力が発生する。この進行磁界と誘導電流による電磁力により液体金属を移送する。
【0025】
また、この電磁ポンプ100では入口側のダクト5の断面積が大きいので、液体金属の入口側の流速が下がり、電磁ポンプ100におけるキャビテーションの発生を防止する方向に働く。このため、ループの高さを低くする効果が期待できる。場合によってはループの高さを確保する必要がなくなるので、装置をコンパクトにできる。
【0026】
また、外筒2の傾斜角度は内筒3の傾斜角度より若干大きく設定しても良い。これにより、入口側のダクト5の断面積を、出口側のダクト5の断面積よりもより大きくできる(図示省略)。
【0027】
(実施の形態2)
図4は、この発明の実施の形態2にかかる電磁ポンプを示す流れ方向断面図である。図5は、図4に示した電磁ポンプの径方向のA−A断面図、図6はB−B断面図である。この電磁ポンプは、この電磁ポンプ200は、筐体1内に、ステンレス製の外筒202と、外筒202の内部に配置されたステンレス製の内筒203と、前記外筒202の周囲に配置した電磁コイル204とを備えた構成である。
【0028】
外筒202は、3ブロックに分かれており、第1ブロック50は大径で軸方向に直線状の配管からなり、第2ブロック51は第1ブロック50と連続して全体として円錐台形状であり、第3ブロック52は第1ブロック50より小径で軸方向に直線状の配管からなる。
【0029】
同様に、内筒3も前記第1ブロック50の大径で直線状の円管体からなり、第2ブロック51は円錐台形状となり、第3ブロック52は小径で軸方向に直線状の円管体からなる。第2ブロック51における外筒202及び内筒203の傾斜角度は同じである。傾斜角度は電磁ポンプ200の軸方向に対する外筒202の内面又は内筒203の外面の角度である。
【0030】
外筒202と内筒203との間にはダクト205が形成される。ダクト形状は、外筒202の内筒203との間に形成されることから円環状となる。第1ブロック50では、外筒202及び内筒203とも直線状であるためダクト205の断面積は一定である。第2ブロック51では、全体が円錐台形状のため流れ方向に次第にダクト205の断面積が小さくなる。第3ブロック52では、外筒202及び内筒203とも直線状であるためダクト205の断面積は一定である。
【0031】
内筒203の中には、磁力線を通すための内部鉄芯206が設けられている。内筒203の外面と外筒202の内面には、内筒203を支持する支持板7が径方向に設けられている。当該支持板7は、内筒203の前後端近傍の周方向に4つに均等に設けられている。また、内筒203の前後には円錐形状のキャップ8が設けられている。このキャップ8の先端は球形であっても良い。
【0032】
電磁コイル204は、櫛歯状にスロット9を複数形成した固定子鉄芯210と、前記スロット9に配置されたコイル11とから構成される。固定子鉄芯210は、櫛歯状のスロット9を形成した薄板鉄板を積層して所定厚を有する積層鉄芯とし、この積層鉄芯を外筒202の周囲に均等配置した構成である。第2ブロック51における固定子鉄芯210の外筒対向面は、外筒202の傾斜角度に沿って傾斜しており、外筒202の周囲に配置した際に固定子鉄芯210が外筒202の外周面に対して隙間なく当接する。前記傾斜角度は電磁ポンプ200の軸方向に対する外筒202の内面又は内筒203の外面の角度である。
【0033】
固定子鉄芯210の外側は、筐体1の内面に対して支持されている。また、各スロット9内には、円環状に巻回されたコイル11が配置されている。各コイル11は、液体金属の流れ方向に三相交流巻線として各相の順に配置される。内筒203と外筒202との径の差はダクト205の流れ方向で均一であるから、電磁コイル204に一定の電流を流すことで液体金属に付与される電磁力を流れ方向で均一にできる。
【0034】
以上のような構成の電磁ポンプ200であっても、電磁ポンプ200の入口側のダクト205の断面積が大きいので、入口側の流速が下がり、電磁ポンプ200におけるキャビテーションの発生を防止する方向に働く。
【0035】
(実施の形態3)
図7は、この発明の実施の形態1にかかる電磁ポンプを示す流れ方向断面図である。図8は、図7に示した電磁ポンプの径方向のA−A断面図、図9はB−B断面図である。この電磁ポンプは、筐体1内に、ステンレス製の外筒302と、外筒302の内部に配置されたステンレス製の内筒303と、前記外筒302の周囲に配置した電磁コイル304とを備えた構成である。
【0036】
外筒302は、軸方向に対して内面が平行な直管形状である。また、内筒303は、全体として円錐台形状であり、入口側の径が小さく、出口側の径が大きい。外筒302と内筒303との間にはダクト305が形成される。ダクト形状は、外筒302の内筒303との間に形成されることから円環状となる。傾斜角度は電磁ポンプ300の軸方向に対する外筒302の内面又は内筒303の外面の角度である。この実施の形態3に係る電磁ポンプ300は、内筒303が円錐台形状となっているので、ダクト305の断面積は入口側で大きく、出口側で小さくなる。
【0037】
内筒303の中には、磁力線を通すための内部鉄芯306が設けられている。内筒303の外面と外筒302の内面には、内筒303を支持する支持板7が径方向に設けられている。当該支持板7は、内筒303の前後端近傍の周方向に4つ均等に設けられている。また、内筒303の前後には円錐形状のキャップ8が設けられる。このキャップ先端が球形であっても良い。
【0038】
電磁コイル304は、櫛歯状にスロット9を複数形成した固定子鉄芯310と、前記スロット9に配置されたコイル11とから構成される。固定子鉄芯310は、櫛歯状のスロット9を形成した薄板鉄板を積層して所定厚を有する積層鉄芯とし、この積層鉄芯を外筒302の周囲に均等配置した構成である。固定子鉄芯310の外筒対向面は、外筒302の外周面に対して隙間なく当接する。
【0039】
固定子鉄芯310の外側は、筐体1の内面に固定されている。また、各スロット9内には、円環状に巻回されたコイル11が配置されている。各コイル11は、液体金属の流れ方向に三相交流巻線として各相の順に配置される。内筒303と外筒302との径の差はダクト305の流れ方向で次第に小さくなるので、液体金属に付与される電磁力を流れ方向で均一にするため、電磁コイル304に流す電流を入口側で大きくする。
【0040】
以上のような構成の電磁ポンプ300であっても、入口側のダクト305の断面積が大きいので、入口側の流速が下がり、その結果、電磁ポンプ300におけるキャビテーションの発生を防止する方向に働く効果がある。
【0041】
また、図示しないが、外筒について、全体として円錐台形状でその入口側の径を大きく且つ出口側の径を小さくし、内筒について、入口側の径を小さく且つ出口側の径を大きくしても良い。また、外筒について、全体として円錐台形状でその入口側の径を大きく且つ出口側の径を小さくし、内筒について、外面を軸方向に直線状の円管体にしても良い。係る構成でも、ダクトの入口側の面積が出口側より大きくなるので、上記同様の作用効果を有するものとなる。
【0042】
上記実施の形態1〜3の電磁ポンプ100〜300は、ホウ素中性子捕捉療法BNCT、原子炉、核融合炉、高速増殖炉等の他、様々なプラントや製品に適用できる。
【0043】
(実施の形態4)
以下に、この発明の電磁ポンプ100〜300をクエンチタンクに適用した例を示す。図10は、この発明の実施の形態4にかかるクエンチタンクを示す正面図である。図11は、図10に示したクエンチタンクの側面図、図12は上面図である。図13は、図10に示したクエンチタンクの断面図である。クエンチタンク400は、液体金属のターゲットを形成するターゲット形成部の受け部に配管により接続されたタンク本体401と、タンク本体401の下部に略水平方向に設けられた筒体402とから構成される。前記タンク本体401は、円筒状に板金加工された構造である。前記ターゲット形成部からの配管403は、タンク本体401の上部側面であって、タンク本体401の円筒に対する接線方向に設けられている。これにより、配管403から導入される液体金属がタンク本体401の内面401aに沿って回転しながら自由液面に入ることになる(液体金属の流れを図中点線矢印で示す)。前記ターゲット形成部は、陽子ビームの照射領域を横切るように液体金属を平面的に噴射するノズルと、噴射された液体金属を受けるディフューザからなる受け部とから構成される。
【0044】
タンク本体401の下部には、整流板404が円筒軸を中心に中央部分を空けて放射状に4枚設けられている。この整流板404は平板でも良いし、メッシュ板又はパンチングメタルでも良い。整流板404の枚数は、4枚に限定されない。
【0045】
前記筒体402は、タンク本体401に対して先端402aが下に向くように若干傾いている。筒体402の内部には、図14に示すように、鉛直方向に対して傾いた分離板405が複数配置されている。隣接する分離板405との間隔は、気泡上昇速度と筒体滞留時間とにより定まり、具体的には3cm以上5cm以下とするのが好ましい。分離板405の角度は、これに限定するものではないが、図14(a)に示すように、タンク本体401の軸方向に鉛直方向から45度以上60度以下とするのが好ましい。また、分離板405は、図14(b)に示すように、筒体402の略全長に渡って設けられている。筒体402の長さは、気泡の分離能力に基づいて定める。
【0046】
分離板405の下流には前記液体金属の出口406が設けられている。出口406に接続された配管は、液体金属ループを構成する電磁ポンプに接続されている。電磁ポンプから延出した配管は熱交換器を介してターゲット形成部に接続され、全体として液体金属ループを構成する。
【0047】
筒体402の下流側の底部には、上記実施の形態1〜3に記載の電磁ポンプ100〜300が設けられている。電磁ポンプ100〜300は、ダクトの断面積が大きい側が前記筒体402に取り付けられる。電磁ポンプ100〜300の出口は、循環ループの配管に接続される。
【0048】
次に、このクエンチタンク内の液体金属の挙動について説明する。ターゲット形成部から陽子ビームを照射されて温度が上昇した液体金属は、配管403を通じてタンク本体401に導入される。配管403は、タンク本体401の円筒の接線方向に接続されているので、導入された液体金属はタンク本体401の内面401aに沿って周回しながら自由液面に入る。このとき、自由液面から気泡が入りこむことになる。
【0049】
回転しながら自由液面に入った液体金属はタンク本体401内において渦を巻くように移動するが、本体内部の下部に設けた整流板404により回転が止められてタンク本体401の下部分に滞留した状態になる。タンク本体401の下部側面には前記筒体402に対応する穴407が設けられ、この穴407によりタンク本体401と筒体402とが連通している。この穴407には、メッシュ板又はパンチングメタルからなる第二整流板408が設けられる。液体金属が筒体402の長手方向に流れるに従い、図14(a)に示すように、液体金属に含まれる気泡が上昇する。筒体内に配置した分離板405は所定の狭い間隔で配置されているので、気泡が少し上昇することでこの分離板405の表面に当たり、気泡同士が合体して成長する。
【0050】
気泡が成長することで浮力が増し、気泡の上昇速度が上がり、分離板405の斜面下を転がるように上昇移動する。その際も周囲の気泡と合体しながら成長し、自由液面に到達するまでにより大きな気泡となる。かかる現象が各分離板405の間で起こる。成長した気泡は、液体金属が筒体402の長手方向に流れる間に自由界面に到達し、消滅する。気泡が成長して上昇速度が速くなれば、それだけ短時間で気泡が上昇するので、気泡を効率的に除去でき且つ筒体402の長さを短くできる。
【0051】
次に、気泡が十分除去された状態の液体金属は、電磁ポンプ100〜300により吸引されて循環ループに移送される。電磁ポンプ100〜300の入口側はダクト断面積が大きいため、ループ高さを取らなくても十分な背圧を確保できるので、電磁ポンプ100〜300におけるキャビテーションを有効に防止できる。電磁ポンプ100〜300は液体金属を前記ターゲット形成部に再び供給する。
【0052】
また、液体金属を噴射してターゲットを形成した場合、受け部において液体金属に気泡が混入しやすい。このため、上記筒体402において気泡を除去することは液体金属噴流のターゲットを用いる場合に極めて有用である。
【0053】
以上、この発明のクエンチタンク400によれば、筒体402内に複数の分離板405を設けることで、液体金属を流しながら分離板405により気泡を成長させてすばやく除去するので、筒体402の長さを短くでき、クエンチタンク400を小型化できる。また、電磁ポンプ100〜300におけるキャビテーションの発生が防止されるので、循環ループ内への気泡混入を最小限に抑えることができる。
【0054】
なお、上記ターゲット形成部は、従来のような湾曲したバックプレート上に液体金属を高速で流して液膜を形成する形式のものであっても良い。
【0055】
(実施の形態5)
図15は、この発明の実施の形態5にかかるクエンチタンクの筒体を示す断面図である。このクエンチタンクは、実施の形態4と略同様の構成であるが、分離板405の形状と配置が異なる。その他は実施の形態4のクエンチタンク400と同じであるからその説明を省略する。このクエンチタンクでは、複数の穴502を有するパンチングメタルを分離板501とし、これを複数略水平に配置している。タンク本体401から流れてきた液体金属は、複数の分離板501の層の間を通る。液体金属に含まれる気泡は、各分離板501の裏面に当たり、ここで気泡同士が合体して成長する。成長した気泡は浮力が大きくなり、分離板501の穴502を通じて上昇移動する。そして、上の層の分離板501においても更に他の気泡を吸着して成長し、穴502を通じて上昇移動する。最終的に、大きく成長した気泡は、筒体2内の液体金属の自由界面に至り、消滅する。
【0056】
このように、パンチングメタルからなる分離板502によっても気泡が成長してその上昇速度が増すため、当該気泡を分離するために必要な水平距離が短くて済む。このため、筒体を短くできるので、クエンチタンクを小型化できる。
【0057】
また、図示しないがメッシュ板により分離板501を構成した場合も上記同様の作用効果が得られる。即ち、メッシュの表面に気泡が当たり気泡が成長すると、その気泡の上昇速度が増す。また、成長した気泡は浮力が大きく、メッシュの目を通って上層に移動し、更に成長を続けて液体金属の自由液面に至り、消滅する。このように、気泡が成長して上昇速度が速くなれば、それだけ短時間で気泡が除去されるので、気泡の効率的な除去が可能であり、筒体の長さは短くて済む。最適なメッシュの目合いは、タンクの容量や液体金属の流速等により定める。
【0058】
(実施の形態6)
図16は、この発明の実施の形態6に係るクエンチタンクを示す断面図である。図17は、図16のA−A断面図である。このクエンチタンク600は、タンク本体601が筒状であってその上部には上述したターゲット形成部からの配管603が接続される。また、当該配管603は円筒に対する接線方向に設けられている。これにより、配管603から導入される液体金属がタンク本体601の内面601aに沿って回転しながら自由液面に入る。
【0059】
タンク本体601の下部には、整流板604が円筒軸を中心に中央部分を空けて放射状に4枚設けられている。この整流板604は、気泡の付着を促進するためメッシュ板とするのが好ましい。なお、小径の穴を多数形成したパンチングメタルでも良い。整流板604の枚数は、4枚に限定されない。当該整流板604は、支持プレート602によりその上部を支持され、下部はタンク本体601の底面605に支持される。整流板604の長さは、要求される気泡の除去能力に基づいて決定する。
【0060】
タンク本体601の底部605には、上記実施の形態1〜3に記載の電磁ポンプ100〜300が設けられている。電磁ポンプ100〜300は、ダクトの断面積が大きい側が前記タンク本体601に取り付けられる。電磁ポンプ100〜300の出口は、循環ループの配管603に接続される。電磁ポンプ100〜300から延出した配管603は、熱交換器を介してターゲット形成部に接続され、全体として液体金属ループを構成する。
【0061】
次に、このクエンチタンク内の液体金属の挙動について説明する。ターゲット形成部から陽子ビームを照射され温度が上昇した液体金属は、配管603を通じてタンク本体601に導入される。配管603は、タンク本体601の円筒の接線方向に接続されているので、導入された液体金属はタンク本体601の内面に沿って周回しながら自由液面に入る。このとき、自由液面から気泡が入り込む。
【0062】
回転しながら自由液面に入った液体金属は、タンク本体601内において渦を巻くように移動するが、本体内部の下側に設けた整流板604により、その回転が止められてタンク本体601の下部分に滞留する。液体金属に含まれる気泡は、整流板604に接触して付着し、隣接する気泡と合体しながら成長する。成長した気泡は、より浮力が増し、整流板604に沿って上昇する。その過程で当該気泡は付近の小さな気泡を取り込み、成長を続ける。成長した気泡は液体金属内を上昇する速度が大きくなり、最終的にはタンク本体601内の自由液面に至り、消滅する。
【0063】
気泡が十分除去された状態の液体金属は、電磁ポンプ100〜300により吸引されて循環ループに移送される。電磁ポンプ100〜300の入口側はダクト断面積が大きいため、ループ高さを取らなくても十分な背圧を確保できるので、電磁ポンプ100〜300におけるキャビテーションを有効に防止できる。電磁ポンプ100〜300は液体金属を前記ターゲット形成部に再び供給する。
【0064】
以上、この発明のクエンチタンク600によれば、タンク本体601の下部に複数の分離板604を設け、液体金属を流しながら分離板604により気泡を成長させて当該気泡をすばやく除去するので、気泡を自然に上昇させる場合に比べて気泡の分離領域を小さくできる。このため、クエンチタンク600を小型化できる。また、電磁ポンプにおけるキャビテーションの発生が防止されるので、循環ループ内への気泡混入を最小限に抑えることができる。
【0065】
(実施の形態7)
図18は、この発明の実施の形態7に係るクエンチタンクを示す断面図である。図19は、図18のA−A断面図、図20図18のB−B断面図、図21図18のC−C断面図である。このクエンチタンク700は、実施の形態6のクエンチタンク600と略同一の構成であるが、整流板704の寸法を小さくすると共に整流板704の上に羽根状の整流板を設けた点に特徴がある。その他の構成は実施の形態6のクエンチタンク600と同じであるからその説明を省略し、同一構成要素には同一の符号を付する。このクエンチタンク700は上部羽根701及び下部羽根702を備えており、上部羽根701及び下部羽根702とも3枚の羽根から構成されている。
【0066】
上部羽根701及び下部羽根702は、所定の傾斜形状を有し、羽根の表面は金属板の枠705内にメッシュ部材706を設けた構成である。上部羽根701及び下部羽根702の傾斜角度は、液体金属のタンク本体601の内壁の流れ角度に基づいて決定する。上部羽根701の傾斜角度は下部羽根702より緩い。
【0067】
タンク本体601の内壁601aを流れる液体金属は上部から中央付近に至るまでの間に次第に鉛直方向に対する流れ角度が小さくなる。タンク本体601の上部では、導入された液体金属が勢いよく周回しているので、鉛直方向に対して大きな角度で液体金属が流れている。このため、上部羽根701は、液体金属の流れに沿って傾斜角度を大きく設定する。
【0068】
下部羽根702についても、上記同様に、タンク本体601の中央付近での液体金属の流れの角度に合わせてその傾斜角度を設定する。タンク本体601の下部に設けた4枚の整流板704は、実施の形態6のものより若干小さい。整流板704の機能は上記実施の形態6で説明した通りである。
【0069】
このクエンチタンク内の液体金属の挙動について説明する。ターゲット形成部から陽子ビームを照射され温度が上昇した液体金属は、配管603を通じてタンク本体601に導入される。配管603は、タンク本体601の円筒の接線方向に接続されているので、導入された液体金属はタンク本体601の内面に沿って周回する。
【0070】
液体金属は、上部羽根701にガイドされてその周回方向が維持される。即ち、上部羽根701はタンク本体601の内面で液体金属の流れの方向を維持し、液体金属が急激に角度を変えて降下しないようにしている。続いて、前記液体金属は前記下部羽根702により更にその流れの方向が維持され、最終的に滑らかに自由液面に導入される。液体金属は、タンク本体601の内部の下側に設けた整流板704により、その回転が止められてタンク本体601の下部分に滞留する。液体金属に含まれる気泡は、整流板704に接触して付着し、隣接する気泡と合体しながら成長する。
【0071】
成長した気泡は、より浮力が増し、整流板704に沿って上昇する。その過程で当該気泡は付近の小さな気泡を取り込み、成長を続ける。成長した気泡は液体金属内を上昇する速度が大きくなり、最終的にはタンク本体601内の自由液面に至り、消滅する。
【0072】
気泡が十分除去された状態の液体金属は、電磁ポンプ100〜300により吸引されて循環ループに移送される。電磁ポンプ100〜300の入口側はダクト断面積が大きいため、ループ高さを取らなくても十分な背圧を確保できるので、電磁ポンプ100〜300におけるキャビテーションを有効に防止できる。電磁ポンプ100〜300は液体金属を前記ターゲット形成部に再び供給する。
【0073】
以上、この発明のクエンチタンク700によれば、上部羽根701及び下部羽根702により液体金属の自由液面への突入速度を滑らかにするので、気泡が生じ難い。更に、分離板704により気泡を成長させて当該気泡をすばやく除去するので、気泡を自然に上昇させる場合に比べて気泡の分離領域を小さくできる。このため、クエンチタンク700を小型化できる。また、電磁ポンプ100〜300におけるキャビテーションの発生が防止されるので、循環ループ内への気泡混入を最小限に抑えることができる。
【0074】
(実施の形態8)
図22は、この発明の液体金属ループを示す構成図である。この液体金属ループ800では、上記実施の形態4〜7に記載のクエンチタンク400〜700を循環経路に備えている。この液体金属ループ800のターゲット形成部801は、陽子ビームの照射領域を横切るように液体金属を平面的に噴射するノズル802と、噴射された液体金属を受けるディフューザからなる受け部803とから構成される。このため、受け部803において気泡が混入しやすい。この液体金属に含まれる気泡は、上記クエンチタンク400〜700において除去される。気泡が除去された液体金属は、電磁ポンプ100〜300に送られる。電磁ポンプ100〜300では圧力損失を十分小さくできるので当該電磁ポンプ100〜300におけるキャビテーションを有効に防止する方向に働く効果がある。電磁ポンプ100〜300は、液体金属を熱交換器805を通って再びターゲット形成部801に送る。
【0075】
この液体金属ループ800によれば、液体金属の噴流によりターゲットを構成するので、従来のように液体金属の膜流の背後にバックプレートを要しない。このため、構造物への中性子損傷を抑制できる。クエンチタンク400〜700は、このようなターゲット形成部801に好適である。
【0076】
また、上記実施の形態から、以下のように発明を特定することもできる。
液体金属ループの循環経路に配置されタンク本体内に導入された液体金属中の液体金属蒸気或いは混入ガスを分離冷却するクエンチタンクであって、前記タンク本体は前記液体金属の略水平流れを形成する分離領域を有し、その内部に、複数の穴を有する板又はメッシュ板からなる分離板を、分離板が前記液体金属の流れ方向に略水平になるように配置し、更に、上記実施の形態1〜3の電磁ポンプの入口側が前記分離領域に接続されていることを特徴とするクエンチタンク。
【0077】
液体金属ループの循環経路に配置されタンク本体内に導入された液体金属中の液体金属蒸気或いは混入ガスを分離冷却するクエンチタンクであって、前記タンク本体は前記液体金属の略水平流れを形成する分離領域を有し、その内部に、鉛直方向に傾いた複数の穴を有する板又はメッシュ板からなる分離板が配置し、更に、上記実施の形態1〜3の電磁ポンプの入口側が前記分離領域に接続されていることを特徴とするクエンチタンク。
【0078】
液体金属ループの循環経路に配置されタンク本体内に導入された液体金属中の液体金属蒸気或いは混入ガスを分離冷却するクエンチタンクであって、前記タンク本体は前記液体金属の略水平流れを形成する分離領域を有し、その内部に、長手方向を軸に湾曲して断面が少なくとも1つの逆凹部形状を有し且つその頂部となる中央付近及び/又は中腹付近に穴を設けた分離板が配置され、更に、上記実施の形態1〜3の電磁ポンプの入口側が前記分離領域に接続されていることを特徴とするクエンチタンク。
【0079】
液体金属ループの循環経路に配置されタンク本体内に導入された液体金属中の液体金属蒸気或いは混入ガスを分離冷却するクエンチタンクであって、前記タンク本体に接続され且つ液体金属の略上下方向流れを形成する分離領域を有し、その内部に、凹形状であり且つその底となる中央付近に穴を設け、また、縁と底との中腹付近に小穴を設け、その底と前記分離領域の底面とが所定間隔をもつように配置された分離板が配置され、前記分離領域内の分離板と底面との間に前記タンク本体から液体金属を導入する導入口が設けられ、前記分離領域の前記分離板の上側に液体金属の出口が設けられ、更に、上記実施の形態1〜3の電磁ポンプの入口側が前記分離領域に接続されていることを特徴とするクエンチタンク。
【0080】
なお、上記分離領域は、タンク本体から分離していても良い。
【0081】
液体金属ループの循環経路に配置されタンク本体内に導入された液体金属中の液体金属蒸気或いは混入ガスを分離冷却するクエンチタンクであって、前記タンク本体内の下部にメッシュ板又はパンチング板からなる分離板を鉛直方向に配置し、更に、上記実施の形態1〜3の電磁ポンプの入口側が前記タンク本体の下部に接続されていることを特徴とするクエンチタンク。また、前記タンク本体の前記分離板の上方に、当該タンク本体の内面の液体金属の流れ角度に沿ってその傾斜角度を設定した羽根を設けても良い。
【符号の説明】
【0082】
100 電磁ポンプ
1 筐体
2 外筒
3 内筒
4 電磁コイル
5 ダクト
6 内部鉄芯
9 スロット
10 固定子鉄芯
11 コイル
図12
図13
図17
図22
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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