【実施例】
【0019】
[実施例1] 様々な酵母株を用いて(−)−エピガロカテキン−3−O−ガレート(EGCg)をメチル化し、分析標品と比較した。
【0020】
(1)使用した基質
【化1】
(I)(−)−エピガロカテキン−3−O−ガレート(EGCg)
【0021】
(2)使用した酵母株
Schizosaccharomyces pombe RIB5313
Schizosaccharomyces pombe RIB5314
Schizosaccharomyces pombe RIB5301
Schizosaccharomyces pombe NBRC1628
Schizosaccharomyces octosporus NBRC10373
Schizosaccharomyces octosporus NBRC0360
Saccharomyces cerevisiae RIB1001
Saccharomyces bayanus RIB3001
Saccharomyces oviformis RIB3031
Kluyveromyces marxianus RIB2011
【0022】
(3)サンプルの調製
各酵母株の15% グリセロールストック溶液(OD
660=1)を、15% グリセロール溶液で10
−2〜10
−4に希釈し、100mLのYPD培地に接種した。30℃、60〜80時間、180rpmで振とう培養し、酵母を回収した。次に、Buffered Peptone Water(メルク製)(10% D−グルコース−10mM アスコルビン酸−1mg/mL EGCg含有、HClにてpH5.0に調整)を用い、OD
660=0.8に希釈し、30℃、24〜96時間、180rpmで振とう培養した。各培養時間に6mLずつ培養液を回収し、3500rpmで30分間遠心した。得られた上層のうち5mLを回収し、5mLのヘキサンを添加後、2分間ボルテックスして遠心した。上層を除去し、このヘキサン脱脂処理を、もう1度行なった。そして、1N HClを300μL添加してpHを下げた後、5mLの酢酸エチルを添加して、2分間ボルテックスして遠心した。得られた上層(酢酸エチル層)を回収し、酢酸エチルでの抽出操作をさらに2回繰り返した。エバポレーターにて酢酸エチルを蒸発させて沈殿を乾固し、1mLの100%メタノールに再溶解した。1cmのsep−pakを通した後、0.2μmのフィルターを通してろ過し、LC/MS/MSのための分析サンプルとした。
【0023】
(4)LC/MS/MSの条件
システム:LC部はWaters Alliance 2695;MS部はWaters Quattro micro
カラム:Mightysil RP-18GP 150-4.6(3 um)(関東化学(株))
カラム温度:40℃
流速:0.4mL/分
溶離液:A液はアセトニトリル;B液は0.1%ギ酸溶液
グラディエント:A10%(0−1分)→A30%(40−41分)→A90%(45分)→A10%(50→60分)
モード:MRM (Multiple Reaction Monitoring)
比較分析標品:EGCg-3"Me, EGCg-4"Me(いずれも長良サイエンス(株))
【0024】
(5)結果
各Schizosaccharomyces属の酵母で得られたクロマトグラムを
図2に示す。
検出された親イオンのm/zは、471.1、フラグメントイオンのm/zは、182.8、125.0、305.0であって、分析標品と比較した結果、式(II)に示す(−)−エピガロカテキン−3−(3−O−メチル)ガレート(EGCg−3”Me)及び式(III)に示す(−)−エピガロカテキン−3−(4−O−メチル)ガレート(EGCg−4”Me)が実際に合成されていた。
【化2】
(II)(−)−エピガロカテキン−3−(3−O−メチル)ガレート(EGCg−3”Me)
【化3】
(III)(−)−エピガロカテキン−3−(4−O−メチル)ガレート(EGCg−4”Me)
【0025】
得られた化合物の量(濃度(ug/mL))を表1に示す。
【表1】
【0026】
このように、Schizosaccharomyces属の酵母を用いた場合、EGCgのフェノール性水酸基がメチル化され、EGCg−3”Me及び式EGCg−4”Meが合成されたが、他の属の酵母(SaccharomycesやKluyveromyces)を用いた場合、メチル化カテキンは合成されなかった。
なお、基質を添加しなかった陰性対照実験でも、メチル化カテキンは合成されなかった。
【0027】
さらに、培養時間ごとの、得られた化合物の量(濃度(ug/mL))を2度測定し、その結果(平均値)を表2に示す。
【表2】
【0028】
[実施例2] 酵母としてSchizosaccharomyces pombeを使用し、様々なポリフェノールを基質としてメチル化を行なった。
(1)使用した基質
没食子酸
ケルセチン
ルテオリン
ゲニステイン
ナリンゲニン
レスベラトロール
ピセアタンノール
(以上の化合物の構造式は
図1参照)
【0029】
【化4】
(IV)(−)−エピカテキン(EC)
【化5】
(V)(−)−エピカテキン−3−O−ガレート(ECg)
【化6】
(VI)(−)−エピガロカテキン−3−O−ガレート(EGCg)
【0030】
(2)使用した酵母株
Schizosaccharomyces pombe RIB5313
(3)サンプルの調製
[実施例1]と同様に行なった。
ただし、Buffered Peptone Waterに含有させた基質の濃度は、没食子酸が1mg/mL、緑茶エキス(三栄源FFI)が2mg/mL、その他は100μg/mLとした。
(4)LC/MSの条件
システム:LC部はWaters Alliance 2695;MS部はWaters Quattro micro
カラム:Mightysil RP-18GP 150-4.6(3 um)(関東化学(株))
カラム温度:40℃
流速:0.4mL/分
溶離液:A液はアセトニトリル;B液は0.1%ギ酸溶液
グラディエント:A10%(0−1分)→A30%(40−41分)→A90%(45分)→A10%(50→60分)
モード:SIR (Selected Ion Recording)
親イオンのm/z: 表3参照
【0031】
(5)結果
各ポリフェノールで得られたクロマトグラムを
図3に示す。また、基質のm/z及び得られたメチル化体のm/zを表3に示す。
【表3】
このように、様々なポリフェノールを基質として用いたときでも、ポリフェノールは、メチル化され、モノメチル化体及びジメチル化体が得られた。
【0032】
[実施例3] 酵母としてSchizosaccharomyces pombeを使用して没食子酸をメチル化し、分析標品と比較した。
(1)使用した基質
没食子酸
(2)使用した酵母株
Schizosaccharomyces pombe RIB5313
(3)サンプルの調製
[実施例2]と同様に行なった。
(4)LC/MSの条件
[実施例2]と同様に行なった。
比較分析標品:3-O-methyl GA, 4-O-methyl GA, 3,4-O-methyl GA
(5)結果
分析標品(メチル化没食子酸)と比較したクロマトグラムを
図4に示す。
基質イオンのm/zとして169.01、生産物イオンのm/zとして、モノメチル化体の183.0及びジメチル化体の197.04が得られ、それぞれ3−O−メチルガレート、4−O−メチルガレート及び3,4−O−メチルガレートの各ピークに一致していた。このように、没食子酸を用いた場合、没食子酸のフェノール性水酸基がメチル化され、式(VII)に示す3−O−メチルガレート、式(VIII)に示す4−O−メチルガレート、及び式(IX)に示す3,4−O−メチルガレートが実際に合成された。
【0033】
【化7】
(VII)3−O−メチルガレート
【化8】
(VIII)4−O−メチルガレート
【化9】
(IX)3,4−O−メチルガレート