特許第5853694号(P5853694)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5853694
(24)【登録日】2015年12月18日
(45)【発行日】2016年2月9日
(54)【発明の名称】静電荷像現像用正帯電性トナー
(51)【国際特許分類】
   G03G 9/08 20060101AFI20160120BHJP
   G03G 9/097 20060101ALI20160120BHJP
【FI】
   G03G9/08 372
   G03G9/08 374
   G03G9/08 351
【請求項の数】4
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2011-290278(P2011-290278)
(22)【出願日】2011年12月29日
(65)【公開番号】特開2013-140235(P2013-140235A)
(43)【公開日】2013年7月18日
【審査請求日】2014年8月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 達人
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100129838
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 典輝
(72)【発明者】
【氏名】千葉 尊
【審査官】 高松 大
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−050859(JP,A)
【文献】 特開平04−217266(JP,A)
【文献】 特開昭64−049052(JP,A)
【文献】 特開2011−203666(JP,A)
【文献】 特開2010−077183(JP,A)
【文献】 特開平01−049052(JP,A)
【文献】 特開昭63−101857(JP,A)
【文献】 特開平07−114213(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/08
G03G 9/097
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
結着樹脂及び着色剤を含む着色樹脂粒子と、外添剤とを含有する静電荷像現像用正帯電性トナーにおいて、
前記外添剤が、個数平均粒径が0.1〜1μmであり、粒径分布を小粒径側から起算した体積累計が50%に該当する粒径をDv50とし、当該体積累計が90%に該当する粒径をDv90とした場合、粒度分布Dv90/Dv50が1.6以下のシリコーン樹脂粒子、及び個数平均粒径が5〜25nmの正帯電性無機微粒子Aとを含み、
前記着色樹脂粒子100質量部に対して、前記シリコーン樹脂粒子の含有量が0.05〜2質量部であり、且つ前記正帯電性無機微粒子Aの含有量が0.1〜2質量部である静電荷像現像用正帯電性トナー。
【請求項2】
前記シリコーン樹脂粒子の吸着水分量が、1.0質量%以下である請求項1に記載の静電荷像現像用正帯電性トナー。
【請求項3】
前記外添剤が、更に個数平均粒径が30〜200nmである無機微粒子Bを含有し、且つ、前記着色樹脂粒子100質量部に対して、当該無機微粒子Bの含有量が0.1〜2質量部であることを特徴とする請求項1又は2に記載の静電荷像現像用正帯電性トナー。
【請求項4】
前記着色樹脂粒子が、体積平均一次粒径が4〜12μmであり、且つ平均円形度が0.96〜1.00である請求項1〜3のいずれか一項に記載の静電荷像現像用正帯電性トナー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真法、静電記録法、静電印刷法等において静電潜像を現像するために用いられる静電荷像現像用正帯電性トナーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一般的な電子写真法に用いられる現像剤においては、着色樹脂粒子表面に外添剤を付着させることにより、所望の流動性や帯電特性が得られる。外添剤としては、無機物、又は有機物からなる微粒子が広く一般的に使用されている。このような外添剤としては、従来から金属酸化物粒子や樹脂粒子、及びこれらを表面処理した物等が広く利用されてきた。
【0003】
外添剤としては、種々の粒径のシリカ微粒子が一般的に用いられているが、一方で、その他の粒子を用いる発明も多く知られている。現像剤には、負帯電性の現像剤と正帯電性の現像剤があり、通常、負帯電性の現像剤には負帯電性の外添剤が使用され、正帯電性の現像剤には正帯電性の外添剤が使用されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、電子写真用現像剤として、負の帯電性を有するポリメチルシルセスキオキサン粉末(シリコーン樹脂粉末)を含有する負帯電性のトナーが開示されている。当該文献の明細書には、当該粉末の粒径が0.1〜10μmであること、当該粉末を用いたトナーは、カブリの無い鮮明な画像が得られると記載されている。
【0005】
特許文献2には、スチレン系樹脂からなる結着樹脂と着色剤とを含み、球形化度が0.8以上且つ帯電極性が負帯電である着色微粒子、特定粒径の疎水化シリカ微粒子とシリコーン樹脂粒子を混合してなる負帯電性の非磁性一成分現像剤が開示されている。当該文献に開示されている現像剤は、充分な流動性を有し、画像濃度が高く、カブリが少ない、画質レベルの高い画像が得られるると記載されている。
【0006】
特許文献3には、結着樹脂及び着色剤を主成分とする静電荷像現像用トナーにおいて、トナーの平均粒径の1/2〜1/30の平均粒径をもつシリコーン樹脂粒子を添加してなる負帯電性の静電荷像現像用トナーが開示されている。定の形状及び粒度分布の着色粒子に、特定の純度、一次粒径、及び特定イオン含有量のアルミナ微粒子を外添したトナーが開示されている。当該文献の明細書の実施例には、当該トナーを用いたプリントアウト画像について、画像カブリ、転写不良、帯電不良、及び画像スジに関する評価が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭63−101854号公報
【特許文献2】特開平07−114213号公報
【特許文献3】特開平09−080795号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
シリコーン樹脂粒子は負帯電性の外添剤として作用するが、特許文献1〜3のトナー(現像剤)は負帯電性であり、負帯電性のトナー(現像剤)に、負帯電性の外添剤であるシリコーン樹脂粒子を添加した場合の効果についての記載はあるが、この負帯電性のシリコーン樹脂粒子を正帯電性のトナーに適用した場合にどのような効果があるかの開示は全くない。
【0009】
本発明の目的は、印字耐久性に優れ、縦筋の発生がない静電荷像現像用正帯電性トナーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、着色樹脂粒子と外添剤を含有するトナーにおいて、特定の粒径及び粒径分布のシリコーン樹脂粒子及び特定粒径の無機微粒子Aを、着色樹脂粒子に対して、特定量含有させることにより、上記課題が解決できることを見いだした。
即ち、本発明によれば、結着樹脂及び着色剤を含む着色樹脂粒子と、外添剤とを含有する静電荷像現像用正帯電性トナーにおいて、前記外添剤が、個数平均粒径が0.1〜1μmであり、粒径分布を小粒径側から起算した体積累計が50%に該当する粒径をDv50とし、当該体積累計が90%に該当する粒径をDv90とした場合、粒度分布Dv90/Dv50が1.6以下のシリコーン樹脂粒子、及び個数平均粒径が7〜25nmの正帯電性無機微粒子Aを含み、前記着色樹脂粒子100質量部に対して、前記シリコーン樹脂粒子の含有量が0.05〜2質量部であり、且つ前記正帯電性無機微粒子Aの含有量が0.1〜2質量部である静電荷像現像用正帯電性トナーが得られる。
【0011】
本発明においては、前記シリコーン樹脂粒子の吸着水分量が、1.0質量%以下であることが好ましい。
【0012】
本発明においては、前記外添剤が、更に個数平均粒径が30〜200nmである無機微粒子Bを含有し、且つ、当該無機微粒子Bの含有量が、前記着色樹脂粒子100質量部に対して0.1〜2質量部であることが好ましい。
【0013】
本発明においては、前記着色樹脂粒子が、体積平均一次粒径が4〜12μmであり、且つ平均円形度が0.96〜1.00であることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
上記の如き正帯電性のトナーに負帯電性の外添剤であるシリコーン樹脂粒子を含有することにより、印字耐久性に優れ、縦筋の発生がない静電荷像現像用正帯電性トナーが得られる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の静電荷像現像剤は、結着樹脂及び着色剤を含む着色樹脂粒子と、外添剤とを含有する静電荷像現像剤において、前記外添剤が、個数平均粒径が0.1〜1μm及び粒度分布Dv90/Dv50が1.6以下であるシリコーン微粒子を含有し、且つ、前記シリコーン微粒子の含有量が、前記着色樹脂粒子100質量部に対して、0.05〜1質量部であることを特徴とする。
【0016】
以下、本発明の静電荷像現像用正帯電性トナー(以下、単に「正帯電性トナー」と称することがある。)について説明する。
本発明の正帯電性トナーは、結着樹脂及び着色剤を含有する着色樹脂粒子と、外添剤として特定の条件を満たす前記シリコーン樹脂粒子と、無機微粒子Aとを特定量含有する。
本発明の正帯電性トナーは、前記着色樹脂粒子の表面に、外添剤として前記シリコーン樹脂粒子と、無機微粒子Aとを付着添加することにより得られるものであることが好ましい。
以下、本発明に使用される着色樹脂粒子の製造方法、当該製造方法により得られる着色樹脂粒子、当該着色樹脂粒子、シリコーン樹脂粒子及び無機微粒子Aとを用いた本発明の正帯電性トナーの製造方法並びに本発明の正帯電性トナーについて、順に説明する。
【0017】
1.着色樹脂粒子の製造方法
一般に、着色樹脂粒子の製造方法は、粉砕法等の乾式法、並びに乳化重合凝集法、懸濁重合法、及び溶解懸濁法等の湿式法に大別され、画像再現性等の印字特性に優れた現像剤が得られ易いことから湿式法が好ましい。湿式法の中でも、ミクロンオーダーで比較的小さい粒径分布を持つ現像剤を得やすいことから、乳化重合凝集法、及び懸濁重合法等の重合法が好ましく、重合法の中でも懸濁重合法がより好ましい。
【0018】
上記乳化重合凝集法は、乳化させた重合性単量体を重合し、樹脂微粒子エマルションを得て、着色剤分散液等と凝集させ、着色樹脂粒子を製造する。また、上記溶解懸濁法は、結着樹脂や着色剤等の現像剤成分を有機溶媒に溶解又は分散した溶液を水系媒体中で液滴形成し、当該有機溶媒を除去して着色樹脂粒子を製造する方法であり、それぞれ公知の方法を用いることができる。
【0019】
本発明に用いる着色樹脂粒子は、湿式法、又は乾式法を採用して製造することが出来る。湿式法の中でも好ましい懸濁重合法を採用し、以下のようなプロセスにより行われる。
【0020】
(A)懸濁重合法
(A−1)重合性単量体組成物の調製工程
まず、重合性単量体、着色剤及び正帯電性の帯電制御剤、さらに必要に応じて添加される離型剤等のその他の添加物を混合し、重合性単量体組成物の調製を行う。重合性単量体組成物を調製する際の混合には、例えば、メディア式分散機を用いて行う。
【0021】
本発明で用いる重合性単量体は、重合可能な官能基を有するモノマーのことをいい、重合性単量体が重合して結着樹脂となる。重合性単量体の主成分として、モノビニル単量体を使用することが好ましい。モノビニル単量体としては、例えば、スチレン;ビニルトルエン、及びα−メチルスチレン等のスチレン誘導体;アクリル酸、及びメタクリル酸;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、及びアクリル酸ジメチルアミノエチル等のアクリル酸エステル;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、及びメタクリル酸ジメチルアミノエチル等のメタクリル酸エステル;アクリロニトリル、及びメタクリロニトリル等の二トリル化合物;アクリルアミド、及びメタクリルアミド等のアミド化合物;エチレン、プロピレン、及びブチレン等のオレフィン;が挙げられる。これらのモノビニル単量体は、それぞれ単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。これらのうち、モノビニル単量体として、スチレン、スチレン誘導体、及びアクリル酸エステル若しくはメタクリル酸エステルが、好適に用いられる。
【0022】
ホットオフセット改善及び保存性改善のために、モノビニル単量体とともに、任意の架橋性の重合性単量体を用いることが好ましい。架橋性の重合性単量体とは、2つ以上の重合可能な官能基を持つモノマーのことをいう。架橋性の重合性単量体としては、例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、及びこれらの誘導体等の芳香族ジビニル化合物;エチレングリコールジメタクリレート、及びジエチレングリコールジメタクリレート等の2個以上の水酸基を持つアルコールにカルボン酸が2つ以上エステル結合したエステル化合物;N,N−ジビニルアニリン、及びジビニルエーテル等の、その他のジビニル化合物;3個以上のビニル基を有する化合物;等を挙げることができる。これらの架橋性の重合性単量体は、それぞれ単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。
本発明では、架橋性の重合性単量体を、モノビニル単量体100質量部に対して、通常、0.1〜5質量部、好ましくは0.3〜2質量部の割合で用いることが望ましい。
【0023】
また、さらに、重合性単量体の一部として、マクロモノマーを用いると、得られる正帯電性トナーの保存性と低温での定着性とのバランスが良好になるので好ましい。マクロモノマーは、分子鎖の末端に重合可能な炭素−炭素不飽和二重結合を有するもので、数平均分子量が、通常、1,000〜30,000の反応性の、オリゴマー又はポリマーである。マクロモノマーは、モノビニル単量体を重合して得られる重合体のガラス転移温度(以下、「Tg」と称することがある。)よりも、高いTgを有する重合体を与えるものが好ましい。マクロモノマーは、モノビニル単量体100質量部に対して、好ましくは0.03〜5質量部、さらに好ましくは0.05〜1質量部用いることが望ましい。
【0024】
本発明では、着色剤を用いるが、カラーの現像剤を作製する場合、ブラック、シアン、イエロー、マゼンタの着色剤を用いることができる。
ブラック着色剤としては、カーボンブラック、チタンブラック、並びに酸化鉄亜鉛、及び酸化鉄ニッケル等の磁性粉等を用いることができる。
【0025】
シアン着色剤としては、例えば、銅フタロシアニン化合物、その誘導体、及びアントラキノン化合物等が利用できる。具体的には、C.I.ピグメントブルー2、3、6、15、15:1、15:2、15:3、15:4、16、17:1、及び60等が挙げられる。
【0026】
イエロー着色剤としては、例えば、モノアゾ顔料、及びジスアゾ顔料等のアゾ系顔料、縮合多環系顔料等の化合物が用いられ、C.I.ピグメントイエロー3、12、13、14、15、17、62、65、73、74、83、93、97、120、138、155、180、181、185、186、及び213等が挙げられる。
【0027】
マゼンタ着色剤としては、モノアゾ顔料、及びジスアゾ顔料等のアゾ系顔料、縮合多環系顔料等の化合物が用いられ、C.I.ピグメントレッド31、48、57:1、58、60、63、64、68、81、83、87、88、89、90、112、114、122、123、144、146、149、150、163、170、184、185、187、202、206、207、209、213、237、251、269及びC.I.ピグメントバイオレット19等が挙げられる。
【0028】
本発明では、各着色剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。着色剤の量は、モノビニル単量体100質量部に対して、好ましくは1〜10質量部である。
【0029】
本発明では、正帯電性トナーとするために、通常正帯電性の帯電制御剤を用いる。
帯電制御剤としては、一般に現像剤用の帯電制御剤として用いられているものであれば、特に限定されないが、帯電制御剤の中でも、重合性単量体との相溶性が高く、安定した帯電性(帯電安定性)を現像剤粒子に付与させることができることから、正帯電性の帯電制御樹脂が好ましく用いられる。
正帯電性の帯電制御剤としては、ニグロシン染料、4級アンモニウム塩、トリアミノトリフェニルメタン化合物及びイミダゾール化合物、並びに、好ましく用いられる帯電制御樹脂としてのポリアミン樹脂、並びに4級アンモニウム基含有共重合体、及び4級アンモニウム塩基含有共重合体等が挙げられる。
本発明では、帯電制御剤を、モノビニル単量体100質量部に対して、通常、0.01〜10質量部、好ましくは0.03〜8質量部の割合で用いることが望ましい。帯電制御剤の添加量が、0.01質量部未満の場合にはカブリが発生することがある。一方、帯電制御剤の添加量が10質量部を超える場合には印字汚れが発生することがある。
【0030】
定着時における現像剤の定着ロールからの離型性を改善する観点から、重合性単量体組成物には、離型剤を添加することが好ましい。離型剤としては、一般に現像剤の離型剤として用いられるものであれば、特に制限無く用いることができる。
【0031】
上記離型剤は、エステルワックス及び/又は炭化水素系ワックスを含有することが好ましい。これらのワックスを離型剤として使用することにより、低温定着性と保存性とのバランスを好適にすることができる。
本発明において離型剤として好適に用いられるエステルワックスは、多官能エステルワックスがより好適であり、例えば、ペンタエリストールテトラパルミネート、ペンタエリストールテトラベヘネート、ペンタエリストールテトラステアレート等のペンタエリスリトールエステル化合物;ヘキサグリセリンテトラベヘネートテトラパルミネート、ヘキサグリセリンオクタベヘネート、ペンタグリセリンヘプタベヘネート、テトラグリセリンヘキサベヘネート、トリグリセリンペンタベヘネート、ジグリセリンテトラベヘネート、グリセリントリベヘネート等のグリセリンエステル化合物;ジペンタエリストールヘキサミリテート、ジペンタエリストールヘキサパルミネート等のジペンタエリスリトールエステル化合物;等が挙げられ、中でもグリセリンエステル化合物が好ましく、また、ヘキサグリセリンテトラベヘネートテトラパルミネート、ヘキサグリセリンオクタベヘネート、テトラグリセリンヘキサベヘネート、トリグリセリンペンタベヘネートがより好ましく、ヘキサグリセリンオクタベヘネートが特に好ましい。
【0032】
本発明において離型剤として好適に用いられる炭化水素系ワックスは、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、フィッシャートロプシュワックス、石油系ワックス等が挙げられ、中でも、フィッシャートロプシュワックス、石油系ワックスが好ましく、石油系ワックスがより好ましい。
炭化水素系ワックスの数平均分子量は、300〜800であることが好ましく、400〜600であることがより好ましい。また、JIS K2235 5.4で測定される炭化水素系ワックスの針入度は、1〜10であることが好ましく、2〜7であることがより好ましい。
【0033】
上記離型剤の他にも、例えば、ホホバ等の天然ワックス;オゾケライト等の鉱物系ワックス;等を用いることができる。
離型剤は、上述した1種又は2種以上のワックスを組み合わせて用いてもよい。
上記離型剤は、モノビニル単量体100質量部に対して、好ましくは0.1〜30質量部用いられ、更に好ましくは1〜20質量部用いられる。
【0034】
その他の添加物として、重合して結着樹脂となる重合性単量体を重合する際に、分子量調整剤を用いることが好ましい。
分子量調整剤としては、一般に現像剤用の分子量調整剤として用いられているものであれば、特に限定されず、例えば、t−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、及び2,2,4,6,6−ペンタメチルヘプタン−4−チオール等のメルカプタン類;テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、N,N’−ジメチル−N,N’−ジフェニルチウラムジスルフィド、N,N’−ジオクタデシル−N,N’−ジイソプロピルチウラムジスルフィド等のチウラムジスルフィド類;等が挙げられる。これらの分子量調整剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明では、分子量調整剤を、モノビニル単量体100質量部に対して、通常0.01〜10質量部、好ましくは0.1〜5質量部の割合で用いることが望ましい。
【0035】
(A−2)懸濁液を得る懸濁工程(液滴形成工程)
本発明では、少なくとも重合性単量体、着色剤及び正帯電性の帯電制御剤を含む重合性単量体組成物を、分散安定剤を含む水系媒体中に分散させ、重合開始剤を添加した後、重合性単量体組成物の液滴形成を行う。液滴形成の方法は特に限定されないが、例えば、(インライン型)乳化分散機(荏原製作所社製、商品名「マイルダー」)、高速乳化分散機(特殊機化工業製、商品名「T.K.ホモミクサー MARK II型」)等の強攪拌が可能な装置を用いて行う。
【0036】
重合開始剤としては、過硫酸カリウム、及び過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩:4,4’−アゾビス(4−シアノバレリック酸)、2,2’−アゾビス(2−メチル−N−(2−ヒドリキシエチル)プロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、及び2,2’−アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物;ジ−t−ブチルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルブタノエート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−t−ブチルパーオキシオキシイソフタレート、及びt−ブチルパーオキシイソブチレート等の有機過酸化物等が挙げられる。これらは、それぞれ単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。これらの中で、残留重合性単量体を少なくすることができ、印字耐久性も優れることから、有機過酸化物を用いるのが好ましい。
【0037】
有機過酸化物の中でも、開始剤効率がよく、残留する重合性単量体も少なくすることができることから、パーオキシエステルが好ましく、非芳香族パーオキシエステルすなわち芳香環を有しないパーオキシエステルがより好ましい。
【0038】
重合開始剤は、前記のように、重合性単量体組成物が水系媒体中へ分散された後、液滴形成前に添加されても良いが、水系媒体中へ分散される前の重合性単量体組成物へ添加されても良い。
【0039】
重合性単量体組成物の重合に用いられる、重合開始剤の添加量は、モノビニル単量体100質量部に対して、好ましくは0.1〜20質量部であり、さらに好ましくは0.3〜15質量部であり、特に好ましくは1〜10質量部である。
【0040】
本発明において、水系媒体は、水を主成分とする媒体のことを言う。
【0041】
本発明において、水系媒体には、分散安定化剤を含有させることが好ましい。分散安定化剤としては、例えば、硫酸バリウム、及び硫酸カルシウム等の硫酸塩;炭酸バリウム、炭酸カルシウム、及び炭酸マグネシウム等の炭酸塩;リン酸カルシウム等のリン酸塩;酸化アルミニウム、及び酸化チタン等の金属酸化物;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、及び水酸化第二鉄等の金属水酸化物;等の無機化合物や、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、及びゼラチン等の水溶性高分子;アニオン性界面活性剤;ノニオン性界面活性剤;両性界面活性剤;等の有機化合物が挙げられる。上記分散安定化剤は1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0042】
上記分散安定化剤の中でも、無機化合物、特に難水溶性の金属水酸化物のコロイドが好ましい。無機化合物、特に難水溶性の金属水酸化物のコロイドを用いることにより、着色樹脂粒子の粒径分布を狭くすることができ、また、洗浄後の分散安定化剤残存量を少なくできるため、得られる重合現像剤が画像を鮮明に再現することができ、更に環境安定性を悪化させない。
【0043】
(A−3)重合工程
上記(A−2)のようにして、液滴形成を行い、得られた水系分散媒体を加熱し、重合を開始し、着色樹脂粒子の水分散液を形成する。
重合性単量体組成物の重合温度は、好ましくは50℃以上であり、更に好ましくは60〜95℃である。また、重合の反応時間は好ましくは1〜20時間であり、更に好ましくは2〜15時間である。
【0044】
着色樹脂粒子は、そのまま外添剤を添加して現像剤として用いてもよいが、この着色樹脂粒子をコア層とし、その外側にコア層と異なるシェル層を作ることで得られる、所謂コアシェル型(又は、「カプセル型」ともいう)の着色樹脂粒子とすることが好ましい。コアシェル型の着色樹脂粒子は、低軟化点を有する物質よりなるコア層を、それより高い軟化点を有する物質で被覆することにより、定着温度の低温化と保存時の凝集防止とのバランスを取ることができる。
【0045】
上述した、上記着色樹脂粒子を用いて、コアシェル型の着色樹脂粒子を製造する方法としては特に制限はなく、従来公知の方法によって製造することができる。in situ重合法や相分離法が、製造効率の点から好ましい。
【0046】
in situ重合法によるコアシェル型の着色樹脂粒子の製造法を以下に説明する。
着色樹脂粒子が分散している水系媒体中に、シェル層を形成するための重合性単量体(シェル用重合性単量体)と重合開始剤を添加し、重合することでコアシェル型の着色樹脂粒子を得ることができる。
【0047】
シェル用重合性単量体としては、前述の重合性単量体と同様なものが使用できる。その中でも、スチレン、アクリロニトリル、及びメチルメタクリレート等の、Tgが80℃を超える重合体が得られる単量体を、単独であるいは2種以上組み合わせて使用することが好ましい。
【0048】
シェル用重合性単量体の重合に用いる重合開始剤としては、過硫酸カリウム、及び過硫酸アンモニウム等の、過硫酸金属塩;2,2’−アゾビス(2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド)、及び2,2’−アゾビス−(2−メチル−N−(1,1−ビス(ヒドロキシメチル)2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド)等の、アゾ系開始剤;等の水溶性重合開始剤を挙げることができる。これらは、それぞれ単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。重合開始剤の量は、シェル用重合性単量体100質量部に対して、好ましくは、0.1〜30質量部、より好ましくは1〜20質量部である。
【0049】
シェル層の重合温度は、好ましくは50℃以上であり、更に好ましくは60〜95℃である。また、重合の反応時間は好ましくは1〜20時間であり、更に好ましくは2〜15時間である。
【0050】
(A−4)洗浄、ろ過、脱水、及び乾燥工程
重合により得られた着色樹脂粒子の水分散液は、重合終了後に、常法に従い、ろ過、分散安定化剤の除去を行う洗浄、脱水、及び乾燥の操作が、必要に応じて数回繰り返されることが好ましい。
【0051】
上記の洗浄の方法としては、分散安定化剤として無機化合物を使用した場合、着色樹脂粒子の水分散液への酸、又はアルカリの添加により、分散安定化剤を水に溶解し除去することが好ましい。分散安定化剤として、難水溶性の無機水酸化物のコロイドを使用した場合、酸を添加して、着色樹脂粒子水分散液のpHを6.5以下に調整することが好ましい。添加する酸としては、硫酸、塩酸、及び硝酸等の無機酸、並びに蟻酸、及び酢酸等の有機酸を用いることができるが、除去効率の大きいことや製造設備への負担が小さいことから、特に硫酸が好適である。
【0052】
脱水、ろ過の方法は、種々の公知の方法等を用いることができ、特に限定されない。例えば、遠心ろ過法、真空ろ過法、加圧ろ過法等を挙げることができる。また、乾燥の方法も、特に限定されず、種々の方法が使用できる。
【0053】
(B)粉砕法
粉砕法を採用して着色樹脂粒子を製造する場合、以下のようなプロセスにより行われる。
まず、結着樹脂、着色剤及び正帯電性の帯電制御剤、さらに必要に応じて添加される離型剤等のその他の添加物を混合機、例えば、ボールミル、V型混合機、ヘンシェルミキサー(:商品名)、高速ディゾルバ、インターナルミキサー、フォールバーグ等を用いて混合する。次に、上記により得られた混合物を、加圧ニーダー、二軸押出混練機、ローラ等を用いて加熱しながら混練する。得られた混練物を、ハンマーミル、カッターミル、ローラミル等の粉砕機を用いて、粗粉砕する。更に、ジェットミル、高速回転式粉砕機等の粉砕機を用いて微粉砕した後、風力分級機、気流式分級機等の分級機により、所望の粒径に分級して粉砕法による着色樹脂粒子を得る。
【0054】
なお、粉砕法で用いる結着樹脂、着色剤及び正帯電性の帯電制御剤、さらに必要に応じて添加される離型剤等のその他の添加物は、前述の(A)懸濁重合法で挙げたものを用いることができる。また、粉砕法により得られる着色樹脂粒子は、前述の(A)懸濁重合法により得られる着色樹脂粒子と同じく、in situ重合法等の方法によりコアシェル型の着色樹脂粒子とすることもできる。
【0055】
結着樹脂としては、他にも、従来から現像剤に広く用いられている樹脂を使用することができる。粉砕法で用いられる結着樹脂としては、具体的には、ポリスチレン、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、ポリエステル樹脂、及びエポキシ樹脂等を例示することができる。
【0056】
2.着色樹脂粒子
上述の(A)懸濁重合法、又は(B)粉砕法等の製造方法により、着色樹脂粒子が得られる。
以下、現像剤を構成する着色樹脂粒子について述べる。なお、以下で述べる着色樹脂粒子は、コアシェル型のものとそうでないもの両方を含む。
【0057】
着色樹脂粒子の体積平均粒径(Dv)は、好ましくは4〜12μmであり、更に好ましくは5〜10μmである。Dvが4μm未満である場合には、重合現像剤の流動性が低下し、転写性が悪化したり、画像濃度が低下したりすることがある。Dvが12μmを超える場合には、画像の解像度が低下することがある。
【0058】
また、着色樹脂粒子は、その体積平均粒径(Dv)と個数平均粒径(Dn)との比(Dv/Dn)が、好ましくは1.0〜1.3であり、更に好ましくは1.0〜1.2である。Dv/Dnが1.3を超える場合には、転写性、画像濃度及び解像度の低下が起こることがある。着色樹脂粒子の体積平均粒径、及び個数平均粒径は、例えば、粒度分布測定装置(ベックマン・コールター製、商品名「マルチサイザー」)等を用いて測定することができる。
【0059】
本発明に用いる着色樹脂粒子の平均円形度は、画像再現性の観点から、0.96〜1.00であることが好ましく、0.97〜1.00であることがより好ましく、0.98〜1.00であることがさらに好ましい。
上記着色樹脂粒子の平均円形度が0.96未満の場合、印字の細線再現性が悪くなることがある。
【0060】
本発明において、円形度は、粒子像と同じ投影面積を有する円の周囲長を、粒子の投影像の周囲長で除した値として定義される。また、本発明における平均円形度は、粒子の形状を定量的に表現する簡便な方法として用いたものであり、着色樹脂粒子の凹凸の度合いを示す指標であり、平均円形度は着色樹脂粒子が完全な球形の場合に1を示し、着色樹脂粒子の表面形状が複雑になるほど小さな値となる。
【0061】
3.本発明の正帯電性トナーの製造方法
上述した(A)重合法又は(B)粉砕法により得られる着色樹脂粒子を、後述するシリコーン樹脂粒子及び前記正帯電性無機微粒子Aを含有する外添剤と共に混合攪拌することにより、着色樹脂粒子の表面に、均一かつ好適に付着添加(外添)させることができる。
【0062】
後述するシリコーン樹脂粒子及び正帯電性無機微粒子A等の外添剤を、着色樹脂粒子の表面に付着添加(外添)する方法は、特に限定されず、混合攪拌が可能な装置を用いて行うことができる。
混合攪拌が可能な装置としては、例えば、ヘンシェルミキサー(:商品名、三井鉱山社製)、スーパーミキサー(:商品名、川田製作所社製)、Qミキサー(:商品名、三井鉱山社製)、メカノフュージョンシステム(:商品名、ホソカワミクロン社製)、メカノミル(:商品名、岡田精工社製)、及びノビルタ(:商品名、ホソカワミクロン社製)等の高速攪拌機が代表的に挙げられる。
【0063】
本発明の正帯電性トナーは、外添剤として、個数平均粒径が0.1〜1μmであり、粒径分布を小粒径側から起算した体積累計が50%に該当する粒径をDv50とし、当該体積累計が90%に該当する粒径をDv90とした場合、粒度分布Dv90/Dv50が1.6以下のシリコーン樹脂粒子、及び個数平均粒径が7〜25nmの正帯電性無機微粒子Aとを含み、前記着色樹脂粒子100質量部に対して、前記シリコーン樹脂粒子の含有量が0.05〜1質量部であり、且つ前記正帯電性無機微粒子Aの含有量が0.1〜2質量部含有する。
【0064】
シリコーン樹脂粒子は、三次元の網状構造を持ったオルガノポリシロキサンからなる微粒子であるが、特に下記式(1)の構造単位を有するポリオルガノシルセスキオキサンが好ましい。
【0065】
【化1】
【0066】
式中、Rは、メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1〜6のアルキル基又はフェニル基を表し、耐熱性が高い点からメチル基、即ち、ポリメチルシルセスキオキサン構造を有するシリコーン樹脂粒子が好ましい。ポリメチルシルセスキオキサンは、特開2008−208158号公報や特開2004−99630号公報を参照して、メチルトリアルコキシシラン、メチルトリハロシランを、アンモニアやアミン類の水溶液中で、加水分解・縮合させることにより得ることができるが、市販品の個数平均粒径が0.5μmのMSP−N050(商品名:、日興リカ社製)等を用いることができる。
【0067】
シリコーン樹脂粒子は、その形状が球形であることが、現像剤の流動性の低下が少ないため好ましい。シリコーン樹脂粒子の個数平均粒径は、本発明では0.1〜1μmの範囲内にあり、0.2〜0.8μmの範囲内にあることが好ましく、0.3〜0.5μmの範囲内にあることが更に好ましい。個数平均粒径が小さすぎると研磨効果の発揮が困難であり、逆に、大きすぎると流動性が低下し、画質が低下し易くなる。
【0068】
シリコーン樹脂粒子は、粒径分布を小粒径側から起算した体積累計が50%に該当する粒径をDv50とし、当該体積累計が90%に該当する粒径をDv90としたとき、Dv90/Dv50で計算される粒度分布が、1.6以下であり、1.5以下であることが好ましく、1.3以下であることが更に好ましい。
Dv90/Dv50が1.6より大きいシリコーン樹脂粒子を用いると、着色樹脂粒子に対するシリコーン樹脂粒子の付着が不均一となり、外添効果にばらつきが発生し、感光体フィルミングが発生することがある。また、シリコーン樹脂粒子が脱離しやすくなり、プリンター部材に付着し、縦筋が発生したり、印字耐久性が低下したりすることがある。。
【0069】
シリコーン樹脂粒子は、吸着水分量が1.0質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることがより好ましく、0.3質量%以下であると更に好ましい。吸着水分量が1.0質量%を超えると印字耐久性が低下することがある。
【0070】
シリコーン樹脂粒子の使用割合は、着色樹脂粒子100質量部に対し、0.01〜2質量部であり、好ましくは0.05〜1質量部であり、より好ましくは0.1〜0.5質量部である。この使用割合が少なすぎると電荷のキャリアとしての効果が不足することがあり、逆に、多すぎると感光体にフィルミングが発生することがある。
【0071】
本発明において、外添剤として、個数平均粒径が5〜25nmの正帯電性無機微粒子Aを含有しており、正帯電性とするために、正帯電性の疎水化処理剤で疎水化されている。
正帯電性無機微粒子Aの個数平均粒径が、5nm未満である場合には、着色樹脂粒子の表面から内部に、当該正帯電性無機微粒子が埋没し易くなり、流動性を正帯電性トナーに十分に付与させることができず、印字性能に悪影響を及ぼすことがある。一方、正帯電性無機微粒子Aの個数平均粒径が、25nmを超える場合には、着色樹脂粒子の表面に対して、当該無機微粒子が占める割合(被覆率)が低下するため、流動性を正帯電性トナーに十分に付与させることができないことがある。
正帯電性無機微粒子Aの個数平均粒径は、7〜25nmであることがより好ましく、7〜20nmであることが更に好ましい。正帯電性無機微粒子Aは、正帯電性シリカ微粒子であることが好ましく、フュームドシリカであることがより好ましい。
【0072】
正帯電性の疎水化処理剤としては、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、アミノシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、及びN−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノシラン化合物やアミノ変性シリコーンオイルが挙げられる。疎水化処理剤は、上記のうち、1種のみを用いてもよく、又は2種以上用いてもよい。
【0073】
正帯電性無機微粒子Aの含有量は、着色樹脂粒子100質量部に対して、0.1〜2質量部であることが好ましく、0.2〜1.5質量部であることがより好ましく、0.3〜1質量部であることが更に好ましい。
正帯電性無機微粒子Aの含有量が0.1質量部未満の場合、外添剤としての機能を十分に発揮させることができず、流動性が低下したり、保存性や印字耐久性が低下したりすることがある。一方、無機微粒子Aの含有量が2質量部を超える場合、現像剤粒子の表面から、当該無機微粒子が遊離し易くなり、高温高湿環境下での帯電性が低下してカブリが発生したり、定着性が低下したりすることがある。
【0074】
無機微粒子Aとして好ましく用いられるシリカ微粒子としては、種々の市販品を用いることができ、例えば、クラリアント社製のHDK2150(:商品名、個数平均粒径:12nm)、日本アエロジル社製のR504(:商品名、個数平均粒径:12nm)、RA200HS(:商品名、個数平均粒径:12nm)、テイカ社製のMSP−012(:商品名、個数平均粒径:16nm)、MSP−013(:商品名、個数平均粒径:12nm)、キャボット社製のTG820F(:商品名、個数平均粒径:7nm)、TG7120(:商品名、個数平均粒径:20nm)等が挙げられる。
【0075】
本発明において、外添剤として、上記シリコーン樹脂粒子及び正帯電性無機微粒子Aに加えて、個数平均粒径が30〜200nmの無機微粒子Bを含有していることが好ましい。
無機微粒子Bの個数平均粒径が、30nm未満である場合には、スペーサー効果が低下し、カブリの発生など印字性能に悪影響を及ぼすことがある。一方、無機微粒子Bの個数平均粒径が、200nmを超える場合には、現像剤粒子の表面から、当該無機微粒子が遊離し易くなり、外添剤としての機能が低下し、印字性能に悪影響を及ぼすことがある。
無機微粒子Bの個数平均粒径は、35〜100nmであることがより好ましく、40〜80nmであることが更に好ましい。無機微粒子Bはシリカ微粒子であることが好ましく、疎水化処理されているとより好ましい。
【0076】
無機微粒子Bの含有量は、着色樹脂粒子100質量部に対して、0.1〜2質量部であることが好ましく、0.3〜2質量部であることがより好ましく、0.5〜1.5部質量部であることが更に好ましい。
無機微粒子Bの含有量が0.2質量部未満の場合、外添剤としての機能を十分に発揮させることができず、印字性能に悪影響を及ぼすことがある。一方、無機微粒子Bの含有量が2質量部を超える場合、現像剤粒子の表面から、当該無機微粒子Bが遊離し易くなり、外添剤としての機能が低下し、印字性能に悪影響を及ぼすことがある。
【0077】
本発明において、好ましく用いられる疎水化処理されている無機微粒子Bは、シランカップリング剤、シリコーンオイル、脂肪酸及び脂肪酸金属塩等の疎水化処理剤により疎水化処理されていることが好ましい。疎水化処理剤としては、上述した無機微粒子Aと同様に、正帯電性の疎水化処理剤であるアミノシラン化合物やアミノ変性シリコーンオイルを用いることがより好ましく、アミノ変性シリコーンオイルを用いることが特に好ましい。
【0078】
無機微粒子Bとして好ましく用いられるシリカ微粒子としては、種々の市販品を用いることができ、例えば、日本アエロジル社製のNA50Y(:商品名、個数平均粒径:35nm)、VPNA50H(:商品名、個数平均粒径:40nm);クラリアント社製のH05TA(:商品名、個数平均粒径:50nm);等が挙げられる。
【0079】
4.本発明の正帯電性トナー
上記工程を経て得られる本発明の正帯電性トナーは、外添剤として、個数平均粒径が0.1〜1μmであり、粒径分布を小粒径側から起算した体積累計が50%に該当する粒径をDv50とし、当該体積累計が90%に該当する粒径をDv90とした場合、粒度分布Dv90/Dv50が1.6以下のシリコーン樹脂粒子、及び個数平均粒径が7〜25nmの正帯電性無機微粒子Aとを含み、前記着色樹脂粒子100質量部に対して、前記シリコーン樹脂粒子の含有量が0.05〜1質量部であり、且つ前記正帯電性無機微粒子Aの含有量が0.1〜2質量部であることにより、印字耐久性に優れ、縦筋の発生がない優れたものとなる。
【実施例】
【0080】
以下に、実施例及び比較例を挙げて、本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。なお、部及び%は、特に断りのない限り質量基準である。
本実施例及び比較例において行った試験方法は以下のとおりである。
【0081】
1.正帯電性トナーの製造例
[実施例1]
重合性単量体としてスチレン81部とn−ブチルアクリレート19部、ブラック着色剤としてカーボンブラック(三菱化学社製、商品名:#25B)5部を、インライン型乳化分散機(荏原製作所社製、商品名:エバラマイルダー)を用いて分散させて、重合性単量体混合物を得た。
上記重合性単量体混合物に、帯電制御剤として帯電制御樹脂(藤倉化成社製、商品名「アクリベース FCA−161P」)1部、離型剤として脂肪酸エステルワックス(日本油脂社製、商品名「WEP3」)5部、マクロモノマーとしてポリメタクリル酸エステルマクロモノマー(東亜合成化学工業社製、商品名「AA6」)0.3部、架橋性の重合性単量体としてジビニルベンゼン0.6部、及び分子量調整剤としてt−ドデシルメルカプタン1.6部を添加し、混合、溶解して、重合性単量体組成物を調製した。
【0082】
他方、室温下で、イオン交換水250部に塩化マグネシウム(水溶性多価金属塩)10.2部を溶解した水溶液に、イオン交換水50部に水酸化ナトリウム(水酸化アルカリ金属)6.2部を溶解した水溶液を、攪拌下で徐々に添加して、水酸化マグネシウムコロイド(難水溶性の金属水酸化物コロイド)分散液を調製した。
【0083】
上記水酸化マグネシウムコロイド分散液に、室温下で、上記重合性単量体組成物を投入し、攪拌した。そこへ重合開始剤としてt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(日油社製、商品名:パーブチルO)6部を添加した後、インライン型乳化分散機(荏原製作所社製、商品名:エバラマイルダー)を用いて、15,000rpmの回転数で10分間高速剪断攪拌して分散を行い、重合性単量体組成物の液滴形成を行った。
【0084】
上記重合性単量体組成物の液滴が分散した懸濁液(重合性単量体組成物分散液)を、攪拌翼を装着した反応器内に投入し、90℃に昇温し、重合反応を開始させた。重合転化率が、ほぼ100%に達したときに、シェル用重合性単量体としてメチルメタクリレート1部、及びイオン交換水10部に溶解したシェル用重合開始剤である2,2’−アゾビス(2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−プロピオンアミド)(和光純薬社製、商品名:VA−086、水溶性)0.3部を添加し、90℃で4時間反応を継続した後、水冷して反応を停止し、コアシェル型構造を有する着色樹脂粒子の水分散液を得た。
【0085】
上記着色樹脂粒子の水分散液を、室温下で、硫酸を攪拌しながら滴下し、pHが6.5以下となるまで酸洗浄を行った。次いで、濾過分離を行い、得られた固形分にイオン交換水500部を加えて再スラリー化させて、水洗浄処理(洗浄・濾過・脱水)を数回繰り返し行った。次いで、濾過分離を行い、得られた固形分を乾燥機の容器内に入れ、45℃で48時間乾燥を行い、乾燥した着色樹脂粒子を得た。得られた着色樹脂粒子の体積平均粒径(Dv)は9.7μm、個数平均粒径(Dn)は8.5μm、粒径分布(Dv/Dn)は1.14であり、平均円形度は0.987であった。
った。
【0086】
上記で得られた着色樹脂粒子100部に対し、個数平均粒径が0.5μm、粒度分布Dv90/Dv50が1.3であり、水分吸着量が0.24%であるシリコーン樹脂粒子(日興リカ社製、商品名:MSP−050)を0.2部、無機微粒子Aとして、疎水化処理された個数平均粒径20nmの正帯電性シリカ微粒子(キャボット社製、商品名:TG7120)を0.8部、無機微粒子Bとして、疎水化処理された個数平均粒径50nmの正帯電性シリカ微粒子(クラリアント製、商品名:H05TA)を1部添加し、高速攪拌機(三井鉱山社製、商品名:ヘンシェルミキサー)を用いて、10分間、周速40m/sで混合攪拌して外添処理を行い、実施例1の正帯電性トナーを作製した。
【0087】
[実施例2]
実施例1において、シリコーン樹脂粒子0.2部を、シリコーン樹脂粒子0.4部に変更した以外は、実施例1と同様にして実施例2の正帯電性トナーを製造した。
【0088】
[実施例3]
実施例1において、シリコーン樹脂粒子0.2部を、シリコーン樹脂粒子0.1部に変更した以外は、実施例1と同様にしての実施例3の正帯電性トナーを製造した。
【0089】
[比較例1]
実施例1において、シリコーン樹脂粒子0.2部を添加しなかった以外は、実施例1と同様にして比較例1の正帯電性トナーを製造した。
【0090】
[比較例2]
実施例1において、無機微粒子A 0.8部を添加しなかった以外は、実施例1と同様にして比較例2の正帯電性トナーを製造した。
【0091】
[比較例3]
実施例1において、個数平均粒径が0.5μm、粒度分布Dv90/Dv50が1.3であり、水分吸着量が0.24%であるシリコーン樹脂粒子0.2部に替えて、個数平均粒径が0.5μm、粒度分布Dv90/Dv50が1.8であり、水分吸着量が0.3%であるシリコーン樹脂粒子(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製、商品名:トスパール105)0.4部に変更した以外は、実施例1と同様にして比較例3の正帯電性トナーを製造した。
【0092】
[比較例4]
実施例1において、個数平均粒径が0.5μm、粒度分布Dv90/Dv50が1.3であり、水分吸着量が0.24%であるシリコーン樹脂粒子0.2部に替えて、個数平均粒径が2.0μm、粒度分布Dv90/Dv50が1.5であり、水分吸着量が0.3%であるシリコーン樹脂粒子(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製、商品名:トスパール120)0.4部に変更した以外は、実施例1と同様にして比較例4の正帯電性トナーを製造した。
【0093】
[比較例5]
実施例1において、個数平均粒径が0.5μm、粒度分布Dv90/Dv50が1.3であり、水分吸着量が0.24%であるシリコーン樹脂粒子0.2部に替えて、個数平均粒径が0.4μm、粒度分布Dv90/Dv50が1.4であり、水分吸着量が0.45%である正帯電性のアルミナ粒子(住友化学社製、商品名:AKP−30)0.2部に変更した以外は、実施例1と同様にして比較例5の正帯電性トナーを製造した。
【0094】
[比較例6]
実施例1において、個数平均粒径が0.5μm、粒度分布Dv90/Dv50が1.3であり、水分吸着量が0.24%であるシリコーン樹脂粒子0.2部に替えて、個数平均粒径が0.5μm、粒度分布Dv90/Dv50が1.5であり、水分吸着量が0.6%である正帯電性のメラミン樹脂粒子(日本触媒社製、商品名:エポスターS6)0.4部に変更した以外は、実施例1と同様にして比較例6の正帯電性トナーを製造した。
【0095】
2.シリコーン樹脂粒子、アルミナ粒子及びメラミン樹脂粒子の物性評価
(1)粒度分布Dv90/Dv50
サンプルをビーカーに取り、分散剤としてアルキルベンゼンスルホン酸水溶液(富士フイルム社製、商品名:ドライウエル)0.1mLを加えてイオン交換水に分散させた。動的光散乱式粒径分布測定装置(堀場製作所製:LB−550)を用いて、上記により得られた分散液について測定を行い、粒度分布(Dv90/Dv50)を算出した。
【0096】
(2)吸着水分量
吸着水分量の測定には、水分吸脱着測定装置(ハイデン社製、商品名:IGAsorp)を用いた。当該装置内に、試料を、乾燥窒素気流下に1時間放置した後、試料の乾燥質量を測定し、その後、32℃、湿度80%の空気中で1時間水分を吸着させて、水分を吸着した試料の質量を測定した。
吸着水分量(質量%)は、{(水分を吸着した試料の質量−乾燥した試料の質量)/乾燥した試料の質量)}×100から算出した。
【0097】
3.着色樹脂粒子及び正帯電性トナーの物性評価
上記実施例1〜3、及び比較例1〜4の着色樹脂粒子及び正帯電性トナーについて特性を調べた。詳細は以下の通りである。
【0098】
(1)体積平均粒径(Dv)、個数平均粒径(Dn)及び粒径分布(Dv/Dn)
測定試料(着色樹脂粒子)を約0.1g秤量し、ビーカーに取り、分散剤としてアルキルベンゼンスルホン酸水溶液(富士フイルム社製、商品名:ドライウエル)0.1mLを加えた。そのビーカーへ、更にアイソトンIIを10〜30mL加え、20W(Watt)の超音波分散機で3分間分散させた後、粒径測定機(ベックマン・コールター社製、商品名:マルチサイザー)を用いて、アパーチャー径;100μm、媒体;アイソトンII、測定粒子個数;100,000個の条件下で、着色樹脂粒子の体積平均粒径(Dv)、及び個数平均粒径(Dn)を測定し、粒径分布(Dv/Dn)を算出した。
【0099】
(2)平均円形度
容器中に、予めイオン交換水10mLを入れ、その中に分散剤として界面活性剤(アルキルベンゼンスルホン酸)0.02gを加え、更に測定試料(着色樹脂粒子)0.02gを加え、超音波分散機で60W(Watt)、3分間分散処理を行った。測定時の着色樹脂粒子濃度が3,000〜10,000個/μLとなるように調整し、0.4μm以上の円相当径の着色樹脂粒子1,000〜10,000個についてフロー式粒子像分析装置(シメックス社製、商品名:FPIA−2100)を用いて測定した。測定値から平均円形度を求めた。
円形度は下記計算式1に示され、平均円形度は、その平均をとったものである。
計算式1:(円形度)=(粒子の投影面積に等しい円の周囲長)/(粒子投影像の周囲長)
【0100】
(3)初期帯電量
市販の非磁性一成分現像方式のプリンター(ブラザー工業社製、商品名:MFC−9840−CDW)に上記で得られた正帯電性トナーを充填した後、印字用紙をセットし、温度23℃、湿度50%の環境(NN環境)下で一昼夜放置した後、同じNN環境下で、白べた印字(印字濃度0%)を一枚行い、その白ベタ印字の途中でプリンターを停止させ、現像ローラ上に担持されたトナーを、吸引式帯電量測定装置(トレックジャパン社製、商品名:210HS−2A)を用いて吸引してトナーの帯電量を測定し、トナーの単位質量当たりの初期帯電量Q/M(μC/g)に換算して求めた。
【0101】
(4)縦筋及び印字耐久性
市販の非磁性一成分現像方式のプリンター(ブラザー工業社製、商品名:MFC−9840−CDW)に上記で得られた正帯電性トナーを充填した後、印字用紙をセットし、温度23℃、湿度50%の環境(NN環境)下で一昼夜放置した後、同じNN環境下で、1%印字濃度で16,000枚まで連続印刷を行った。
500枚毎に、黒ベタ印字(印字濃度100%)を行い、反射式画像濃度計(マクベス社製、商品名:RD918)を用いて黒ベタ画像の印字濃度を測定した。さらに、その後、白ベタ印字(印字濃度0%)を行い、白ベタ印字の途中でプリンターを停止させ、現像後の感光体上における非画像部のトナーを、粘着テープ(住友スリーエム社製、商品名:スコッチメンディングテープ810−3−18)に付着させた後、剥ぎ取り、それを印字用紙に貼り付けた。次に、その粘着テープを貼り付けた印字用紙の白色度(B)を、白色度計(日本電色社製、商品名:ND−1)で測定し、同様にして、未使用の粘着テープだけを印字用紙に貼り付け、その白色度(A)を測定し、この白色度の差(B−A)をカブリ値(%)とした。この値が小さいほど、カブリが少なく良好であることを示す。
印字濃度が1.3以上で、且つカブリ値が2.5%以下の画質を維持できる連続印刷枚数を調べた。
また、同様の印字耐久性試験を、高温高湿(H/H)環境下(温度:35℃、湿度:80%)においても行った。同時に、目視にて縦筋の発生枚数も調べた。
なお、表1中、「16,000<」とあるのは、16,000枚の時点においても、印字濃度が1.3以上で、且つカブリ値が2.5%以下の画質を維持できたことを示す。また、表中に「−」とあるのは、16,000枚又は印字耐久性試験での連続印刷が終了した時点でも縦筋が発生していないことを示す。
【0102】
実施例1〜3、及び比較例1〜比較例6の正帯電性トナーの測定及び試験結果を、変更のある外添剤の組成等と併せて表1に示す。
【0103】
【表1】
【0104】
4.正帯電性トナーの評価結果のまとめ
以下、表1を参照しながら、正帯電性トナーについて検討する。
本発明で規定するシリコーン樹脂が使用されていない比較例1の正帯電性トナーは、印字耐久性が11,000枚で劣っていることが分かる。
本発明で規定する正帯電性無機微粒子Aが使用されていない比較例2の正帯電性トナーは、初期帯電量が46μC/gと高く、印字耐久性が9,000枚で劣っていることが分かる。
本発明で規定する粒度分布Dv90/Dvが1.6以下でなく、粒度分布Dv90/Dvが1.8であるシリコーン樹脂を使用した比較例3の正帯電性トナーは、印字耐久性が12,000枚と劣り、縦筋が8,000枚で発生していることが分かる。
個数平均粒径が本発明で規定する範囲よりも大きい、個数平均粒径が2.0μmであるシリコーン樹脂を使用した比較例4の正帯電性トナーは、印字耐久性が11,500枚と劣り、縦筋が6,000枚で発生していることが分かる。
本発明で規定するシリコーン樹脂粒子ではなく、正帯電性の外添剤であるアルミナ粒子を使用した比較例5の正帯電性トナーは、印字耐久性が9,000枚と劣り、縦筋が7,000枚で発生していることが分かる。
本発明で規定するシリコーン樹脂粒子ではなく、正帯電性の外添剤であるメラミン樹脂粒子を使用した比較例5の正帯電性トナーは、印字耐久性が10,000枚と劣り、縦筋が5,000枚で発生していることが分かる。
【0105】
これらの比較例1〜6に対し、本願発明で規定するシリカ微粒子及び正帯電性無機微粒子Aを使用した実施例1〜3の正帯電性トナーは、実施例2で縦筋が12,000枚で発生し、実施例3で印字耐久性が15,500枚とやや劣る結果であったが、印字耐久性及び縦筋の発生のない優れたトナーであることが分かる。