特許第5854124号(P5854124)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5854124
(24)【登録日】2015年12月18日
(45)【発行日】2016年2月9日
(54)【発明の名称】ズーム光学系及び撮像装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 15/20 20060101AFI20160120BHJP
   G02B 13/18 20060101ALI20160120BHJP
   G02B 5/18 20060101ALI20160120BHJP
【FI】
   G02B15/20
   G02B13/18
   G02B5/18
【請求項の数】13
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2014-502014(P2014-502014)
(86)(22)【出願日】2013年2月21日
(86)【国際出願番号】JP2013000984
(87)【国際公開番号】WO2013128856
(87)【国際公開日】20130906
【審査請求日】2014年3月24日
(31)【優先権主張番号】特願2012-43926(P2012-43926)
(32)【優先日】2012年2月29日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】100092897
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 正悟
(74)【代理人】
【識別番号】100097984
【弁理士】
【氏名又は名称】川野 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100157417
【弁理士】
【氏名又は名称】並木 敏章
(72)【発明者】
【氏名】平山 義一
(72)【発明者】
【氏名】松本 実保
【審査官】 小倉 宏之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−147380(JP,A)
【文献】 特開平11−052235(JP,A)
【文献】 特開2003−021783(JP,A)
【文献】 特開2000−009999(JP,A)
【文献】 特開2002−196236(JP,A)
【文献】 特開平11−052237(JP,A)
【文献】 特開2010−217535(JP,A)
【文献】 特開2006−084971(JP,A)
【文献】 特開2009−251117(JP,A)
【文献】 特開2000−066092(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 9/00 − 17/08
G02B 21/02 − 21/04
G02B 25/00 − 25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体側より順に並んだ、負の屈折力を持つ第1レンズ群と、正の屈折力を持つ第2レンズ群と、負の屈折力を持つ第3レンズ群と、正の屈折力を持つ第4レンズ群と、正の屈折力を持つ第5レンズ群とからなり、変倍に際して各レンズ群の相互間隔が変化するズーム光学系であって、
前記第1レンズ群は、物体側から順に並んだ、第1の負レンズと、第2の負レンズと、正レンズとを有し、
前記第1の負レンズは、物体側に凸面を向けたメニスカス形状であり、像側レンズ面に回折光学素子を有し、
前記第2の負レンズは、両凹レンズ形状であり、
前記正レンズは、物体側に凸面を向けたメニスカス形状であり、
前記正レンズに用いる硝材は、以下の条件式を満足することを特徴とするズーム光学系。
ν1p ≦ 35
Δ(θg,F) ≧ 0.007
但し、
ν1p:前記第1レンズ群の前記正レンズに用いる硝材のd線を基準とするアッベ数、
Δ(θg,F):d線を基準とするアッベ数νdを横軸、部分分散比(θg,F)=(ng−nF)/(nF−nC)を縦軸としたグラフにおいて、硝種Aと硝種Bを結ぶ直線を標準線としたとき、この標準線からの前記正レンズに用いる硝材の部分分散比の偏差。なお、前記硝種Aと前記硝種Bの前記アッベ数νdと部分分散比(θg,F)は、以下の値である。
硝種A:νd=60.49,(θg,F)=0.5436
硝種B:νd=36.26,(θg,F)=0.5828
【請求項2】
以下の条件式を満足することを特徴とする請求項1に記載のズーム光学系。
40.0 ≦ ν1dave≦ 55.0
但し、
ν1dave:前記第1レンズ群を構成するレンズのうち、前記回折光学素子、屈折力の絶対値が1/5000以下の硝材からなるレンズ及びアッベ数が70より大きい異常分散ガラスからなるレンズを除いた、全てのレンズの硝材のd線を基準とするアッベ数の平均値。
【請求項3】
前記第1レンズ群〜前記第5レンズ群のうち、前記第3レンズ群のみがd線に対する屈折率が1.8より大きい高屈折率ガラス製のレンズを含んで構成されることを特徴とする請求項1または2に記載のズーム光学系。
【請求項4】
前記第1レンズ群を構成する前記第1の負レンズは、前記回折光学素子を設ける前記像側レンズ面が非球面であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のズーム光学系。
【請求項5】
以下の条件式を満足することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のズーム光学系。
fDOE < −7000
但し、
fDOE: 前記回折光学素子の焦点距離(mm)。
【請求項6】
以下の条件式を満足することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のズーム光学系。
0.001 ≦ |φdoei/φi| ≦ 0.010
但し、
φi:前記回折光学素子を含む前記第1レンズ群全体の屈折力、
φdoei:前記回折光学素子の屈折力。
【請求項7】
以下の条件式を満足することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のズーム光学系。
3.0 ≦ |TK/fw| ≦ 4.0
但し、
TK:ズーミングによって変化する、光学系の射出瞳から像面までの距離の最小値、
fw :広角端状態における全系の焦点距離。
【請求項8】
前記第5レンズ群は、少なくとも正レンズと負レンズを一枚ずつ有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載のズーム光学系。
【請求項9】
以下の条件式を満足することを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載のズーム光学系。
0.040 ≦ Pmin ≦ 0.500
但し、
Pmin:前記回折光学素子の最小ピッチ(mm)。
【請求項10】
前記第1レンズ群の前記正レンズに用いる硝材は、以下の条件式を満足することを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載のズーム光学系。
Δ(θg,F) ≦ 0.012
【請求項11】
前記第2レンズ群は、少なくとも一枚の非球面を有することを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載のズーム光学系。
【請求項12】
前記第4レンズ群は、少なくとも一枚の非球面を有することを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載のズーム光学系。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか一項に記載のズーム光学系と、撮像素子とを備えることを特徴とする撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ズーム光学系及び撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ズーム光学系において、回折光学素子を用いると、色収差の補正が容易になり、高い光学性能を得ることが可能となる(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−117826号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、デジタルカメラやビデオカメラ等の光学系は、レンズ全長(光学全長、すなわち最も物体側のレンズ面(第1面)から像面までの長さ)が短く、光学系全体が小型であることが望まれる。しかしながら、レンズ全長を短縮するほど、色収差を始めとした諸収差が増大し、光学性能が低下する傾向がある。そのような光学系中に単に回折光学素子を設けても、配設位置や屈折力を適切に設定しなければ、ズーム全域で色収差を良好に補正することは難しい。回折光学素子を不適切に使用すると、色収差補正が不足する。また、回折光学素子の屈折力が大きくなると、回折光学素子の格子ピッチが細かくなり、製造が困難になり、生産性が悪化する。
【0005】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、回折光学素子を効果的に使用することにより、小型で、全ズーム範囲に亘り色収差を始めとした諸収差を良好に補正し、高い光学性能を有したズーム光学系及び撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様においては、ズーム光学系は、物体側より順に並んだ、負の屈折力を持つ第1レンズ群と、正の屈折力を持つ第2レンズ群と、負の屈折力を持つ第3レンズ群と、正の屈折力を持つ第4レンズ群と、正の屈折力を持つ第5レンズ群とからなり、変倍に際して各レンズ群の相互間隔が変化するズーム光学系であって、前記第1レンズ群は、物体側から順に並んだ、第1の負レンズと、第2の負レンズと、正レンズとを有し、前記第1の負レンズは、物体側に凸面を向けたメニスカス形状であり、像側レンズ面に回折光学素子を有し、前記第2の負レンズは、両凹レンズ形状であり、前記正レンズは、物体側に凸面を向けたメニスカス形状であり、前記正レンズに用いる硝材は、以下の条件式を満足する。
ν1p ≦ 35
Δ(θg,F) ≧ 0.007
但し、
ν1p:前記第1レンズ群の前記正レンズに用いる硝材のd線を基準とするアッベ数、
Δ(θg,F):d線を基準とするアッベ数νdを横軸、部分分散比(θg,F)=(ng−nF)/(nF−nC)を縦軸としたグラフにおいて、硝種Aと硝種Bを結ぶ直線を標準線としたとき、この標準線からの前記正レンズに用いる硝材の部分分散比の偏差。なお、前記硝種Aと前記硝種Bの前記アッベ数νdと部分分散比(θg,F)は、以下の値である。
硝種A:νd=60.49,(θg,F)=0.5436
硝種B:νd=36.26,(θg,F)=0.5828
【0007】
本発明の第2の態様においては、撮像装置は、上述のズーム光学系と、撮像素子とを備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、回折光学素子を効果的に使用することにより、小型で、全ズーム範囲に亘り色収差を始めとした諸収差を良好に補正し、高い光学性能を有したズーム光学系及び撮像装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態に係る回折光学素子を表す模式図である。
図2】第1実施例に係るズーム光学系の広角端状態における構成断面図及び広角端状態(W)から望遠端状態(T)までのズーム軌道を示す図である。
図3】第1実施例に係るズーム光学系の広角端状態における撮影距離無限遠での縦収差図である。
図4】第1実施例に係るズーム光学系の望遠端状態における撮影距離無限遠での縦収差図である。
図5】第2実施例に係るズーム光学系の広角端状態における構成断面図及び広角端状態(W)から望遠端状態(T)までのズーム軌道を示す図である。
図6】第2実施例に係るズーム光学系の広角端状態における撮影距離無限遠での縦収差図である。
図7】第2実施例に係るズーム光学系の望遠端状態における撮影距離無限遠での縦収差図である。
図8】第3実施例に係るズーム光学系の広角端状態における構成断面図及び広角端状態(W)から望遠端状態(T)までのズーム軌道を示す図である。
図9】第3実施例に係るズーム光学系の広角端状態における撮影距離無限遠での縦収差図である。
図10】第3実施例に係るズーム光学系の望遠端状態における撮影距離無限遠での縦収差図である。
図11】異常分散ガラスの定義を説明するためのグラフであり、横軸にd線を基準とするアッベ数νdを、縦軸に部分分散比(θg,F)をとっている。
図12】本実施形態に係るズーム光学系を用いたデジタル一眼レフカメラ(撮像装置)の構成を示す略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態について、図面を参照しながら説明する。本実施形態に係るズーム光学系に用いる回折光学素子PFは、図1に示すように、異なる光学材料からなる2つの回折素子要素、具体的には複数の格子溝が形成された第1の回折光学面を有する第1の回折光学素子PF1と、複数の格子溝が形成された第2の回折光学面を有する第2の回折光学素子PF2とを有し、第1の回折光学素子PF1と第2の回折光学素子PF2とは第1の回折光学面と第2の回折光学面とが互いに対向するように配置され、これら第1の回折光学面と第2の回折光学面が回折光学面Cにて互いに密着して接した、いわゆる密着複層型回折光学素子PFを使用している。
【0011】
本実施形態に係るズーム光学系ZLは、図2に示すように、物体側より順に並んだ、負の屈折力を持つ第1レンズ群G1と、正の屈折力を持つ第2レンズ群G2と、負の屈折力を持つ第3レンズ群G3と、正の屈折力を持つ第4レンズ群G4と、正の屈折力を持つ第5レンズ群G5とからなり、広角端状態から望遠端状態への変倍に際して各レンズ群の相互間隔が変化し、第1レンズ群G1は、少なくとも一枚の密着複層型回折光学素子PFを有する構成となっている。
【0012】
このように広角端状態から望遠端状態への変倍に際して、各レンズ群G1〜G5の相互間隔を変化させることにより、ズーム光学系ZLの小型化を達成している。また、軸上色収差が大きく発生する第1レンズ群G1に、密着複層型回折光学素子PFを配置することにより、効果的に色収差の補正を行っている。
【0013】
後述の第1実施例では、第1レンズ群G1に密着複層型回折光学素子PFを配置することにより、全ズーム域に亘り色収差を良好に補正している。第2実施例・第3実施例も同様である。
【0014】
第1レンズ群G1は、物体側から順に並んだ、第1の負レンズL11と、第2の負レンズL12と、正レンズL13とを有し、第1の負レンズL11は物体側に凸面を向けたメニスカス形状であり、第2の負レンズL12は両凹レンズ形状であり、正レンズL13は物体側に凸面を向けたメニスカス形状である。また、密着複層型回折光学素子PFは、第1の負レンズL11の像側レンズ面(第2面)に設置され、この面は非球面であることが望ましい。この構成によれば、全ズーム域に亘り、良好な収差補正ができる。
【0015】
本実施形態に係るズーム光学系ZLにおいて、次の条件式(1),(2)を満足することが好ましい。
【0016】
ν1p ≦ 35 …(1)
Δ(θg,F) ≧ 0.007 …(2)
但し、
ν1p:第1レンズ群G1の正レンズL13に用いる硝材のd線を基準とするアッベ数、
Δ(θg,F):d線を基準とするアッベ数νdを横軸、部分分散比(θg,F)=(ng−nF)/(nF−nC)を縦軸としたグラフにおいて、硝種A(株式会社オハラ硝種名NSL7)と硝種B(株式会社オハラ硝種名PBM2)を結ぶ直線を標準線としたとき、この標準線からの第1レンズ群G1の正レンズL13に用いる硝材の部分分散比の偏差(図11参照)。なお、νdはd線を基準とするアッベ数であり、ng、nF、nCはそれぞれフラウンホーファ線のg線、F線、C線に対する屈折率である。
【0017】
このような条件式(1),(2)を満足する硝材を、第1レンズ群G1を構成する正レンズL3に用いることで、軸上色収差及び倍率色収差を良好に補正することができる。
【0018】
本実施形態に係るズーム光学系ZLにおいて、次の条件式(3)を満足することが好ましい。
【0019】
40.0 ≦ ν1dave ≦ 55.0 …(3)
但し、
ν1dave:第1レンズ群G1を構成するレンズのうち、回折光学素子PF、屈折力の絶対値が1/5000以下の硝材からなるレンズ、及び、アッベ数が70より大きい異常分散ガラスからなるレンズを除いた、全てのレンズの硝材のd線を基準とするアッベ数の平均値。
【0020】
条件式(3)は、第1レンズ群G1において、回折光学素子PF、屈折力の絶対値が1/5000以下の硝材からなるレンズ、及びアッベ数が70より大きい異常分散ガラスからなるレンズを除いた、屈折型レンズに用いた硝材のアッベ数の平均値を規定するものである。
【0021】
回折光学素子PFは、1mmあたり数本から数百本の細かい溝状又はスリット状の格子構造が同心円状に形成された回折光学面C(図1参照)を備え、この回折光学面Cに入射した光を格子ピッチ(格子溝の間隔)と入射光の波長によって定まる方向へ回折する性質を有している。このような回折光学素子PFは、例えば、特定次数の回折光を一点に集光するレンズなどに用いられている。
【0022】
通常の光学ガラスで作成した屈折型レンズでは、波長が短くなるほど屈折力特性の変化が大きくなるが、逆に、回折光学素子PFでは、波長による屈折力特性は線形的に変化する。また、屈折型レンズの屈折率特性は、硝材によって変化するが、回折光学素子PFの屈折率特性は、硝材によって変化しない。そこで、屈折型レンズを複数組み合わせて波長による屈折力変化を線形にしたものと、回折光学素子PFとを組み合わせることで、大きな色消し効果が得られ、色収差を良好に補正することが可能となる。
【0023】
条件式(3)は、波長によって屈折力が線形的に変化するような複数の屈折型レンズの硝材の選び方として、アッベ数の平均値を規定するものである。条件式(3)の下限値を下回ると、前記屈折型レンズは波長が短くなるほど屈折力特性の変化が大きくなり、このようなレンズに回折光学素子PFを組み合わせると、収差の残存量が大きくなる。また、組み合わせる回折光学素子PFの屈折力が大きくなり、ピッチが細かくなるため、製造が困難になり、量産性が悪化する。
【0024】
逆に、条件式(3)の上限値を上回ると、前記屈折型レンズに異常分散性の高い硝材を使用することになるため、比重が大きい硝材が必要となり重量が増加する。また、これらの硝材は一般的に屈折率が低い硝材であるので、球面収差等の補正が難しくなる。但し、球面収差の補正については非球面を用いることで解消することが可能になるが、非球面での補正量が大きくなると、サグ量(非球面の球面からのズレ量)が大きくなり、製造が困難になって量産性が悪化する。
【0025】
本実施形態の効果をより確実にするためには、条件式(3)の下限値を43.0とすることが望ましい。また、本実施形態の効果をより確実にするためには、条件式(3)の上限値を51.0とすることが望ましい。
【0026】
本実施形態に係るズーム光学系ZLにおいて、第1レンズ群G1〜第5レンズ群G5のうち、第3レンズ群G3のみが、d線に対する屈折率が1.8より大きい高屈折率ガラス製のレンズ(比重の重いレンズ)を含んで構成されることが好ましい。この構成によれば、第3レンズ群G3を除く他のレンズ群、すなわち第1レンズ群G1、第2レンズ群G2、第4レンズ群G4及び第5レンズ群G5が比重の軽いレンズで構成されることになるため、軸上色収差及び倍率色収差を悪化させることなく、光学系全体を軽量化することができる。
【0027】
本実施形態に係るズーム光学系ZLにおいて、回折光学素子PFの設置面(すなわち、第1レンズ群G1を構成する第1の負レンズL11の像側レンズ面)が非球面であることを前提に、次の条件式(4)を満足することが好ましい。
【0028】
fDOE −7000 …(4)
但し、
fDOE: 回折光学素子PFの焦点距離(mm)。
【0029】
条件式(4)は、回折光学素子PFの屈折力を規定したものである。非球面と、条件式(4)を満足する回折光学素子PFとを組み合わせることで、該素子の屈折力を緩くすることができるため、適切な格子ピッチを確保でき、ひいてはフレアを防止することができる。条件式(4)の限値を回ると、回折光学素子PFの屈折力が強くなり、該素子の格子ピッチが細かくなるため、製造が困難になり、量産性が悪化する。
【0030】
本実施形態に係るズーム光学系ZLにおいて、次の条件式(5)を満足することが好ましい。
【0031】
0.001 ≦ |φdoei/φi| ≦ 0.010 …(5)
但し、
φi:回折光学素子PFを含む第1レンズ群G1全体の屈折力、
φdoei:回折光学素子PFの屈折力。
【0032】
条件式(5)は、回折光学素子PFの屈折力と、この回折光学素子PFを含むレンズ群、すなわち第1レンズ群G1の屈折力との比を規定したものである。条件式(5)の下限値を下回ると、回折光学素子PFの屈折力が小さくなり、色収差補正が不足する。逆に、条件式(5)の上限値を上回ると、回折光学素子PFの屈折力が強くなり、回折光学素子PFの格子ピッチが細かくなり、製造が困難になり量産性が悪化する。
【0033】
本実施形態の効果をより確実にするためには、条件式(5)の下限値を0.004とすることが望ましい。また、本実施形態の効果をより確実にするためには、条件式(5)の上限値を0.006とすることが望ましい。
【0034】
本実施形態に係るズーム光学系ZLにおいて、次の条件式(6)を満たすことが好ましい。
【0035】
3.0 ≦ |TK/fw| ≦ 4.0 …(6)
但し、
TK:ズーミングによって変化する、光学系の射出瞳から像面までの距離の最小値、
fw :広角端状態における全系の焦点距離。
【0036】
条件式(6)はズーミングによって変化する、光学系の射出瞳から像面までの距離の最小値と、広角端状態における全系の焦点距離の比を規定したものである。条件式(6)の下限値を下回ると、一眼レフカメラの交換レンズとして使用する際のミラー作動空間の確保が難しくなったり、画角周辺で撮像素子に入射する光線が傾くことによるシェーディングが発生したりする。逆に、条件式(6)の上限値を上回ると、小型化が不十分になる。
【0037】
本実施形態の効果をより確実にするためには、条件式(6)の下限値を3.5することが望ましい。本実施形態の効果をさらに確実にするためには、条件式(6)の下限値を3.6とすることが望ましい。
【0038】
本実施形態に係るズーム光学系ZLにおいて、第5レンズ群G5は、少なくとも一枚の正レンズで構成することも可能であるが、これに少なくとも一枚の負レンズを加えればなお好ましい。このように正レンズと負レンズを少なくとも1枚ずつ有する構成にすれば、球面収差、コマ収差、非点収差、像面湾曲等を抑えながら、軸上色収差の発生を抑えることができる。
【0039】
本実施形態に係るズーム光学系ZLにおいて、次の条件式(7)を満たすことが好ましい。
【0040】
0.040 ≦ Pmin ≦ 0.500 …(7)
但し、
Pmin:回折光学素子PFの最小ピッチ(mm)。
【0041】
条件式(7)は、回折光学素子PFの格子の最小ピッチを規定したものである。条件式(7)の下限値を下回ると、格子ピッチが細かくなり、製造が困難になり、量産性が悪化する。逆に、条件式(7)の上限値を上回ると、回折光学素子PFの屈折力が小さくなり、色収差補正が不足する。
【0042】
本実施形態の効果をより確実にするためには、条件式(7)の下限値を0.05とすることが望ましい。
【0043】
本実施形態に係るズーム光学系ZLにおいて、第1レンズ群G1は、少なくとも一枚の正レンズを有し、その硝材として正常分散ガラスを用いることが好ましい。このような正レンズと回折光学素子PFとの組み合わせにより、軸上色収差及び倍率色収差の発生を抑えることができる。
【0044】
一般的に、光学ガラスの多くは、縦軸に部分分散比として(θg,F)を、横軸にd線を基準とするアッベ数としてνdをとると、図11に示すように、部分分散比とアッベ数との間にほぼ直線関係が成り立ち、このような硝種を正常分散ガラスと呼ぶ。他方で、この直線関係から離れた位置にある硝種を異常分散ガラスと呼ぶ。より具体的には、正常分散ガラスの基準となるNSL7とPBM2(共に、株式会社オハラ硝種名)とを結んで得られる直線を標準線とし、この標準線からの部分分散比の偏差をΔ(θg,F)と表す場合、以下の条件式(8)又は(9)を満たすものを異常分散ガラスと定義する。なお、請求の範囲に規定する硝種AがNSL7に対応し、硝種BがPBM2に対応する。
【0045】
Δ(θg,F) < −0.012 …(8)
Δ(θg,F) > 0.012 …(9)
【0046】
なお、部分分散比(θg,F)は、レンズの材質のg線(波長λ=435.835nm)に対する屈折率をngとし、F線(波長λ=486.133nm)に対する屈折率をnFとし、C線(波長λ=656.273nm)に対する屈折率をnCとしたとき、(θg,F)=(ng−nF)/(nF−nC)で定義される。また、正常分散ガラスの基準となる、NSL7は部分分散比が0.5436、アッベ数が60.49であり、PBM2は部分分散比が0.5828、アッベ数が36.26である。
【0047】
本実施形態に係るズーム光学系ZLにおいて、第2レンズ群G2は、少なくとも一枚の非球面を有することが好ましい。この構成によれば、球面収差、コマ収差を良好に補正することができる。
【0048】
本実施形態に係るズーム光学系ZLにおいて、第4レンズ群G4は、少なくとも一枚の非球面を有することが好ましい。この構成によれば、球面収差、コマ収差を良好に補正することができる。
【0049】
本実施形態に係る回折光学素子PFは、上述したように、異なる光学材料からなる、第1の回折光学面を有する第1の回折光学素子PF1と、第2の回折光学素子PF2とを有し、これら第1の回折光学素子PF1と第2の回折光学素子PF2が第1の回折光学面と第2の回折光学面とを互いに対向するように配置された、いわゆる複層型(又は積層型)の回折光学素子に属するものであるため、g線(波長λ=435.835nm)からC線(波長λ=635.273nm)を含む広波長域において回折効率を高くすることができる。したがって、このような回折光学素子PFを用いた本実施形態に係るズーム光学系ZLは、広波長域において利用することが可能となる。
【0050】
本実施形態において、回折効率は、透過型の回折光学素子PFにおいて1次回折光を利用する場合、入射強度I0と一次回折光の強度I1との割合η(=I1/I0×100[%])を示すこととする。
【0051】
本実施形態に係るズーム光学系ZLに用いる回折光学素子PFにあっては、上述したように、対向配置された第1の回折光学面と第2の回折光学面とが互いに接するように構成してもよい。つまり、2つの回折素子要素のそれぞれに形成された格子溝を互いに密着させて密着複層型回折光学素子として構成してもよい。このような密着複層型回折光学素子は、格子溝が形成された2つの回折素子要素をこの格子溝同士が対向するように近接配置してなるいわゆる分離複層型回折光学素子に比べ、製造工程を簡素化することができるため、量産効率がよく、また光線の入射角に対する回折効率が良い(g線からC線を含む広波長域において90%以上)という長所を備えている。したがって、このような密着複層型回折光学素子を利用した本実施形態に係るズーム光学系ZLでは、製造が容易となり、また回折効率も良くなる。
【0052】
本実施形態に係るズーム光学系ZLにおいて、回折光学素子PFを構成する第1の回折光学素子PF1及び第2の回折光学素子PF2の少なくとも一方は、紫外線硬化型樹脂からなるように構成してもよい。この構成により、回折光学素子PFの量産性、生産性を高めることができる。したがって、このような回折光学素子PFを利用した本実施形態に係るズーム光学系ZLの量産性、生産性を高めることができる。
【0053】
詳細に述べると、2つの回折素子要素の材料として、一方に一般のガラスもしくは射出成形などが可能な熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂を、他方に紫外線硬化型樹脂を用いて、回折光学素子PFを製造することができる。例えば、一方の材料としてガラスを用いる場合は、切削研磨によって回折光学面Cを成形する。その後で、この回折光学面Cに紫外線硬化型樹脂を滴下し、紫外線を照射して硬化させる製造方法を採用できる。また、一方の材料として熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂を用いる場合は、格子溝が形成された金型を用いて射出成形などを行うことにより、回折光学面Cを成形する。その後で、この回折光学面Cに紫外線硬化型樹脂を滴下し、紫外線を照射して硬化させる製造方法を採用できる。このような製造方法が採用でき、2つの回折素子要素に対して回折光学面Cを別々に作製し、さらにこれらの位置合わせを行うという作業が不要になるため、回折光学素子PFの生産性、量産性を高めることができる。
【0054】
本実施形態に係るズーム光学系ZLにおいて、回折光学素子PFを構成する第1の回折光学素子PF1及び第2の回折光学素子PF2は、互いに異なる光学特性を有する紫外線硬化型樹脂からなるように構成してもよい。この構成により、回折光学素子PFの量産性、生産性を高めることができる。したがって、この回折光学素子PFを利用した本実施形態に係るズーム光学系ZLの量産性、生産性を高めることができる。
【0055】
この場合には、まず、基板上に滴下した一方の紫外線硬化型樹脂に対して格子溝が形成された金型を型押し、その金型の反対方向から紫外線を照射して回折光学面Cを有する一方の回折素子要素を成形する。次に、金型を取り除き、この紫外線照射により硬化した回折光学面Cに他方の紫外線硬化型樹脂を滴下する。続いて、この滴下した他方の紫外線硬化型樹脂に紫外線を照射することにより、他方の紫外線硬化型樹脂も硬化させ、他方の回折素子要素を形成する。このような製造方法を採用することにより、格子溝の成形が1つの金型のみで可能になるとともに、2つの回折素子要素に対して回折光学面Cを別々に形成し、これらの位置合わせを行うという作業が不要であり、紫外線硬化型樹脂を滴下して硬化させるという作業を2回実施するのみで製造することができる。したがって、回折光学素子PFの量産性、生産性をより高めることができる。
【0056】
本実施形態に係るズーム光学系ZLにおいて、回折光学素子PFを構成する2つの回折素子要素のうち、より低屈折率高分散な方の回折素子要素の材質のd線(波長587.562nm)、F線(波長486.133nm)及びC線(波長656.273nm)に対する屈折率をnd1、nF1及びnC1とし、より高屈折率低分散な方の回折素子要素の材質のd線、F線及びC線に対する屈折率をnd2、nF2及びnC2としたとき、次の条件式(10)〜(13)を満足することが好ましい。
【0057】
nd1 ≦ 1.54 …(10)
0.0145 ≦ nF1−nC1 …(11)
1.55 ≦ nd2 …(12)
nF2−nC2 ≦ 0.013 …(13)
【0058】
条件式(10)〜(13)は、ズーム光学系ZLの回折光学素子PFを構成する異なる2つの回折素子要素に用いる光学材料、すなわち2つの異なる樹脂のd線に対する屈折率と、F線及びC線に対する屈折率差(nF−nC)をそれぞれ規定している。もう少し説明すると、条件式(10)〜(13)は、回折光学素子PFに用いる異なる2種類の樹脂、具体的には相対的に低屈折率高分散な光学特性を持つ樹脂と、高屈折率低分散な光学特性を持つ樹脂とにおいて、回折光学素子PFを製造するために硬化させた後に満足すべき樹脂の光学特性を規定するものである。
【0059】
このような条件式(10)〜(13)を満足することで、より良い性能で、異なる2つの回折素子要素を密着接合させて回折光学面Cを形成することができる。その結果、g線〜C線までの広波長域に亘って90%以上の回折効率を実現することができる。しかしながら、条件式(10)〜(13)の上限値を上回るか又は下限値を下回ると、広波長域において90%以上の回折効率を得ることが困難になり、密着複層型回折光学素子PFの利点を維持することが困難になる。なお、ここでいう回折効率とは、前述のように入射光の強度と一次回折光との強度の割合である。
【0060】
念のため、回折効率を求める式について記載する。回折次数をmとし、m次回折光の回折効率をηをとし、回折光学面Cを形成する一方の回折素子要素の回折格子高さをd1とし、回折光学面Cを形成する他方の回折素子要素の回折格子高さをd2とし、回折光学面Cを形成する一方の回折素子要素の材料の屈折率をn1とし、回折光学面Cを形成する他方の回折素子要素の材料の屈折率をn2とし、波長をλとしたとき、回折効率は、以下の式(14),(15)で表される。
【0061】
ηm = {sin(a−m)π/(a−m)π}^2 …(14)
a = {(n1−1)d1−(n2−1)d2}/λ …(15)
【0062】
なお、上記条件を満足する樹脂、及びこれらの樹脂を用いた密着複層型回折光学素子PFの製造方法については、例えば、欧州特許公開第1830204号公報、及び欧州特許公開第1830205号公報に記載されている。
【0063】
本実施形態では、後述の各実施例において、2つの異なる紫外線硬化樹脂からなる密着複層型回折光学素子PFを用いており、回折格子高さは20.05μm、一次の回折効率はg線(波長λ=435.835nm)で98%、F線(波長λ=486.133nm)で98%、d線(波長λ=587.562nm)で100%、C線(波長λ=656.273nm)で98%である。
【0064】
続いて、図12に、上述のズーム光学系ZLを撮影レンズ1として備えた、デジタル一眼レフカメラCAM(撮像装置)の略断面図を示す。カメラCAMにおいて、不図示の物体(被写体)からの光は、撮影レンズ1で集光されて、クイックリターンミラー3を介して焦点板4に結像される。そして、焦点板4に結像された光は、ペンタプリズム5中で複数回反射されて接眼レンズ6へと導かれる。これにより、撮影者は、物体(被写体)像を接眼レンズ6を介して正立像として観察することができる。
【0065】
また、撮影者によって不図示のレリーズボタンが押されると、クイックリターンミラー3が光路外へ退避し、撮影レンズ1で集光された不図示の物体(被写体)の光は撮像素子7上に被写体像を形成する。これにより、物体(被写体)からの光は、当該撮像素子7により撮像され、物体(被写体)画像として不図示のメモリに記録される。このようにして、撮影者はカメラCAMによる物体(被写体)の撮影を行うことができる。
【0066】
カメラCAMは、撮影レンズ1を着脱可能に保持するものでもよく、撮影レンズ1と一体に成形されるものでもよい。また、カメラCAMは、いわゆる一眼レフカメラでもよく、クイックリターンミラー等を有さないコンパクトカメラでもよい。
【0067】
カメラCAMに撮影レンズ1として搭載した本実施形態に係るズーム光学系ZLは、後述の各実施例からも分かるように、その特徴的なレンズ構成によって、小型で、全ズーム範囲に亘り色収差を始めとした諸収差を良好に補正し、高い光学性能を有している。したがって、カメラCAMは、小型で、全ズーム範囲に亘り色収差を始めとした諸収差を良好に補正し、高い光学性能を有した撮像装置を実現することができる。
【実施例】
【0068】
以下、本実施形態に係るズーム光学系の各実施例について、図面に基づいて説明する。以下に表1〜表3を示すが、これらは第1実施例〜第3実施例における各レンズの諸元の表である。
【0069】
表中の[全体諸元]において、fはズーム光学系ZLのd線における広角端状態及び望遠端状態での焦点距離(mm)を、FNoは広角端状態及び望遠端状態でのFナンバーを、Yは像高を、Σdはズーム光学系ZLの最も物体側のレンズ面(第1面)から最も像側のレンズ面までの光軸上の距離を示す。
【0070】
表中の[レンズデータ]において、面番号は光線の進行する方向に沿った物体側からのレンズ面の順序を、Rは各レンズ面の曲率半径を、dは各光学面から次の光学面(又は像面)までの光軸上の距離である面間隔を、ndはレンズに用いる硝材のd線(波長587.562nm)に対する屈折率を、νdはレンズに用いる硝材のd線を基準とするアッベ数を、Di(可変)は第i面の可変の面間隔を、*aは非球面を、*dは回折光学面を、*sは絞りを、曲率半径Rの欄の「∞」は平面を示す。表中、空気の屈折率(d線)「1.000000」の記載は省略する。
【0071】
表中の[非球面データ]には、[レンズデータ]において*aを付した非球面について、その形状を次式(a)で示す。ここで、hは光軸に垂直な方向の高さを、Z(h)は高さhにおける光軸方向の変位量(サグ量)を、cは基準球面の曲率半径(近軸曲率半径)を、κはコーニック係数を、Aiは第i次の非球面係数を示す。また、「E-n」は「×10-n」を示し、例えば「1.234E-05」は「1.234×10-5」を示す。
【0072】
Z(h) = ch2/[1+{1−(1+κ)c22)}1/2
+A4×y4+A6×y6+A8×y8+A10×y10+A12×y12 …(a)
【0073】
表中の[回折光学面データ]には、[レンズデータ]に示した回折光学面について、その形状を次式(b)で示す。ここで、hは光軸に垂直な方向の高さを、Φ(h)は回折光学素子の位相関数を、λは入射光の波長を、Ciは第i次の位相差係数を示す。
【0074】
Φ(h) =(2π/λ)・(C2h2+C4h4+C6h6+C8h8+C10h10) …(b)
【0075】
表中の[各群間隔データ]において、広角端状態及び望遠端状態における、第i面の可変間隔Di(但し、iは整数)を示す。
【0076】
表中の[ズーム光学系群データ]において、Gは群番号、群初面は各レンズ群の最も物体側の面番号を、群焦点距離は各レンズ群の焦点距離を示す。
【0077】
表中の[条件式]には、上記条件式(1)〜(7)に対応する値を示す。
【0078】
表中の焦点距離f、曲率半径R、面間隔d、その他の長さの単位は「mm」である。但し、光学系は、比例拡大又は比例縮小しても同等の光学性能が得られるので、単位は「mm」に限定されることなく、他の適当な単位を用いることが可能である。
【0079】
(第1実施例)
第1実施例について、図2図4及び表1を用いて説明する。図2は、第1実施例に係るズーム光学系ZL(ZL1)の構成断面図及び広角端状態(W)から望遠端状態(T)までのズーム軌道を示す。図2の構成断面図では、図示の煩雑さを回避すべく、回折光学素子PFを構成する回折光学素子要素の符号PF1、PF2と、回折光学面の符号Cの記載及び格子溝の形状の記載は省略し、単に回折光学素子PFの符号のみを記載する。
【0080】
第1実施例に係るズーム光学系ZL1は、図2に示すように、光軸に沿って物体側から順に並んだ、負の屈折力を持つ第1レンズ群G1と、正の屈折力を持つ第2レンズ群G2と、負の屈折力を持つ第3レンズ群G3と、正の屈折力を持つ第4レンズ群G4と、正の屈折力を持つ第5レンズ群G5とから構成される。
【0081】
変倍時には、広角端状態から望遠端状態にかけて、第1レンズ群G1と第2レンズ群G2との間隔が変化し、第2レンズ群G2と第3レンズ群G3との間隔が増加し、第3レンズ群G3と第4レンズ群G4との間隔が減少し、第4レンズ群G4と第5レンズ群G5との間隔が増加するように、第1レンズ群G1が物体側へ凸状の軌跡で移動し、第2レンズ群が物体側へ移動し、第3レンズ群G3が物体側へ移動し、第4レンズ群G4が物体側へ移動する。第5レンズ群G5は固定されており、ズーミングに際して移動しない。
【0082】
第1レンズ群G1は、光軸に沿って物体側から順に並んだ、物体側に凸面を向けたメニスカス形状の第1の負レンズL11と、両凹レンズ形状の第2の負レンズL12と、物体側に凸面を向けたメニスカス形状の正レンズL13とから構成される。第1の負レンズL11の像側レンズ面には密着複層型回折光学素子PFが設けられ、またこの面は非球面である。
【0083】
回折光学素子PFは、異なる2つの紫外線硬化型樹脂からなる回折光学素子要素PF1とPF2がそれぞれ密着接合して構成されたものであり、その接合面は回折格子溝が形成された回折光学面Cとなっている(図1参照)。本実施例では、回折光学素子要素PF1とPF2の構成材料として、以下の表中の[樹脂屈折率]に示す屈折率を有する樹脂を用いた。なお、樹脂屈折率は、樹脂硬化後の屈折率を示す。
【0084】
第2レンズ群G2は、光軸に沿って物体側から順に並んだ、正レンズL21と、負レンズL22と正レンズL23との接合レンズと、正レンズL24とから構成される。
【0085】
第3レンズ群G3は、光軸に沿って物体側から順に並んだ、正レンズL31と負レンズL32との接合レンズと、負レンズL33とから構成される。
【0086】
第4レンズ群G4は、光軸に沿って物体側から順に並んだ、負レンズL41と正レンズL42との接合レンズと、負レンズL43とから構成される。負レンズL41の物体側レンズ面は非球面である。
【0087】
第5レンズ群G5は、光軸に沿って物体側から順に並んだ、正レンズL51と負レンズL52との接合レンズから構成されている。
【0088】
本実施例では、第3レンズ群G3の物体側に、絞りSPを配置する。絞りSPは、変倍時には広角端状態から望遠端状態において第3レンズ群G3と共に移動する。
【0089】
以下の表1に、第1実施例に係るズーム光学系ZL1の各諸元値を示す。表1における面番号1〜30は、図2に示す曲率半径R1〜R30の各光学面に対応している。
【0090】
(表1)
[全体諸元]
広角端 望遠端
f = 24.8 〜 67.8
FNo= 2.9 〜 2.9
Y = 21.6 〜 21.6
Σd = 156.3 〜 141.5

[レンズデータ]
面番号 r d nd νd
1 449.276 2.88 1.65844 50.84
2 *a 26.646 0.01 1.52780 33.41
3 *a*d 26.646 0.01 1.55710 49.74
4 *a 26.646 14.06
5 -407.787 2.10 1.60311 60.69
6 70.826 0.15
7 53.361 5.27 1.75520 27.57
8 150.738 D8(可変)
9 49.742 3.58 1.66672 48.33
10 *a 220.067 9.68
11 131.177 1.80 1.71736 29.57
12 32.690 7.36 1.49782 82.57
13 -179.945 8.00
14 *a 47.836 5.93 1.58913 61.22
15 -186.821 D15(可変)
16 *s ∞ 1.30
17 878.033 3.50 1.86074 23.08
18 -46.301 1.15 1.74400 44.81
19 75.737 2.06
20 -69.602 1.20 1.74400 44.81
21 614.114 D21(可変)
22 *a 53560.956 1.30 1.74077 27.74
23 56.392 4.60 1.49782 82.57
24 -37.848 0.20
25 39.729 1.40 1.76200 40.11
26 35.201 0.08 1.55389 39.22
27 *a 43.244 D27(可変)
28 35.707 6.00 1.58267 46.48
29 -435.607 1.40 1.75520 27.57
30 68.740 41.70

[非球面データ]
第2,3,4面
κ=-1.2845
A4=0.322160E-05,A6=0.139792E-08,A8=-0.270408E-11,A10=0.291265E-14
A12=-0.105112E-17
第10面
κ=73.5073
A4=0.252669E-06,A6=-0.106583E-08,A8=0.272800E-11,A10=-0.693172E-14
第14面
κ=-0.3667
A4=-0.598146E-06,A6=-0.228182E-09,A8=0.519056E-13,A10=-0.809169E-15
第22面
κ=-8.0661e+019
A4=0.104993E-04,A6=-0.463141E-07,A8=0.163623E-09,A10=-0.311875E-12
第27面
κ=4.1806
A4=0.984974E-05,A6=-0.381469E-07,A8=0.609092E-11,A10=0.292963E-1
A12=-0.120149E-14

[回折光学面データ]
第3面
C2=6.8348E-05,C4=1.2529E-07,C6=-8.5928E-11

[回折光学素子 光学データ]
nC nd nF ng
低屈折率 1.523300 1.527800 1.539100 1.549100
高屈折率 1.553800 1.557100 1.565000 1.571300

[各群間隔データ]
広角端 望遠端
D8 53.42 1.08
D15 0.15 24.41
D21 17.19 1.00
D27 0.50 25.94

[ズーム光学系 群データ]
群番号 群初面 群焦点距離
G1 1 -40.58
G2 9 44.42
G3 17 -54.63
G4 22 100.66
G5 28 173.02

[条件式]
条件式(1)ν1p =27.57(正レンズL13)
条件式(2)Δ(θg,F) =0.0112(正レンズL13)
条件式(3)ν1dave =46.4
条件式(4) fDOE =-7315.48
条件式(5)|φdoei/φi| =0.0056
条件式(6)|TK/fw| =3.63
条件式(7)Pmin =0.094
【0091】
表1から、第1実施例に係るズーム光学系ZL1は、条件式(1)〜(7)を満たすことが分かる。
【0092】
図3図4は、第1実施例に係るズームレンズ系ZLの諸収差図である。図3は広角端状態における撮影距離無限遠での縦収差図であり、図4は望遠端状態における撮影距離無限遠での縦収差図である。縦収差図には、各図における左側から、(縦方向の)球面収差、非点収差、及び歪曲収差が記載されている。各収差図は、いずれも第1実施例に係るズーム光学系ZL1を物体側から光線追跡したものである。
【0093】
球面収差図において、dはd線(波長587.562nm)、CはC線(波長656.273nm)、FはF線(波長486.133nm)、gはg線(波長435.835nm)における収差を示す。また球面収差図において、縦軸は入射瞳半径の最大値を1として規格化して示した値を、横軸は各線における収差の値(mm)を示す。非点収差図は、d線における収差を示し、実線Sはサジタル像面を、破線Tはメリディオナル像面を示す。また非点収差図において、縦軸は像高(mm)を、横軸は収差の値(mm)を示す。歪曲収差図は、d線における収差を示す。また歪曲収差図において、縦軸は像高(mm)を、横軸は収差の割合(百分率(%値))を示す。
【0094】
以上の収差図の説明は、他の実施例においても同様とし、その説明を省略する。
【0095】
各収差図から明らかなように、第1実施例に係るズーム光学系ZL1は、広角端状態から望遠端状態までの各焦点距離状態において、球面収差、非点収差、歪曲収差等を含め、諸収差が良好に補正されていることが分かる。
【0096】
(第2実施例)
第2実施例について、図5図7及び表2を用いて説明する。図5は、第2実施例に係るズーム光学系ZL(ZL2)の構成断面図及び広角端状態(W)から望遠端状態(T)までのズーム軌道を示す。図5の構成断面図では、図示の煩雑さを回避すべく、回折光学素子PFを構成する回折光学素子要素の符号PF1、PF2と、回折光学面の符号Cの記載及び格子溝の形状の記載は省略し、単に回折光学素子PFの符号のみを記載する。
【0097】
第2実施例に係るズーム光学系ZL2は、図5に示すように、光軸に沿って物体側から順に並んだ、負の屈折力を持つ第1レンズ群G1と、正の屈折力を持つ第2レンズ群G2と、負の屈折力を持つ第3レンズ群G3と、正の屈折力を持つ第4レンズ群G4と、正の屈折力を持つ第5レンズ群G5とから構成される。
【0098】
変倍時には、広角端状態から望遠端状態にかけて、第1レンズ群G1と第2レンズ群G2との間隔が変化し、第2レンズ群G2と第3レンズ群G3との間隔が増加し、第3レンズ群G3と第4レンズ群G4との間隔が減少し、第4レンズ群G4と第5レンズ群G5との間隔が増加するように、第1レンズ群G1が物体側へ凸状の軌跡で移動し、第2レンズ群が物体側へ移動し、第3レンズ群G3が物体側へ移動し、第4レンズ群G4が物体側へ移動する。第5レンズ群G5は固定されており、ズーミングに際して移動しない。
【0099】
第1レンズ群G1は、光軸に沿って物体側から順に並んだ、物体側に凸面を向けたメニスカス形状の第1の負レンズL11と、両凹レンズ形状の第2の負レンズL12と、物体側に凸面を向けたメニスカス形状の正レンズL13とから構成される。第1の負レンズL11の像側レンズ面には密着複層型回折光学素子PFが設けられ、またこの面は非球面である。
【0100】
回折光学素子PFは、異なる2つの紫外線硬化型樹脂からなる回折光学素子要素PF1とPF2がそれぞれ密着接合して構成されたものであり、その接合面は回折格子溝が形成された回折光学面Cとなっている(図1参照)。本実施例では、回折光学素子要素PF1とPF2の構成材料として、以下の表中の[樹脂屈折率]に示す屈折率を有する樹脂を用いた。なお、樹脂屈折率は、樹脂硬化後の屈折率を示す。
【0101】
第2レンズ群G2は、光軸に沿って物体側から順に並んだ、正レンズL21と、負レンズL22と正レンズL23との接合レンズと、正レンズL24とから構成される。
【0102】
第3レンズ群G3は、光軸に沿って物体側から順に並んだ、正レンズL31と負レンズL32との接合レンズと、負レンズL33とから構成される。
【0103】
第4レンズ群G4は、光軸に沿って物体側から順に並んだ、負レンズL41と正レンズL42との接合レンズと、負レンズL43とから構成される。負レンズL41の物体側レンズ面は非球面である。
【0104】
第5レンズ群G5は、正レンズL51から構成されている。
【0105】
本実施例では、第3レンズ群G3の物体側に、絞りSPを配置する。絞りSPは、変倍時には広角端状態から望遠端状態において第3レンズ群G3と共に移動する。
【0106】
以下の表2に、第2実施例に係るズーム光学系ZL2の各諸元値を示す。表2における面番号1〜29は、図5に示す曲率半径R1〜R29の各光学面に対応している。
【0107】
(表2)
[全体諸元]
広角端 望遠端
f = 24.8 〜 67.8
FNo= 2.9 〜 2.9
Y = 21.6 〜 21.6
Σd = 154.6 〜 156.2

[レンズデータ]
面番号 r d nd νd
1 1373.856 2.88 1.65844 50.84
2 *a 26.403 0.01 1.52780 33.41
3 *a*d 26.403 0.01 1.55710 49.74
4 *a 26.403 14.04
5 -339.817 2.10 1.51742 52.20
6 75.213 0.15
7 58.908 7.00 1.75520 27.57
8 181.498 D8(可変)
9 45.700 4.46 1.67000 57.35
10 *a 149.654 10.23
11 120.621 1.80 1.72342 38.03
12 31.386 7.76 1.49782 82.57
13 -156.090 8.07
14 65.708 5.13 1.62041 60.25
15 -147.316 D15(可変)
16 *s ∞ 1.30
17 498.394 3.50 1.86074 23.08
18 -41.091 1.15 1.64769 33.73
19 68.531 2.82
20 -41.212 1.20 1.58267 46.48
21 277.500 D21(可変)
22 *a 39.968 1.40 1.72825 28.38
23 33.184 5.49 1.49782 82.57
24 -37.638 0.20
25 -156.917 2.13 1.67270 32.19
26 41.520 0.08 1.55389 39.22
27 *a 59.020 D27(可変)
28 47.383 7.00 1.48749 70.31
29 -2567.589 41.80

[非球面データ]
第2,3,4面
κ=-1.1680
A4=0.182938E-05,A6=-0.243771E-08,A8=0.736133E-11,A10=-0.765274E-14
A12=0.237652E-17
第10面
κ=-10.9723
A4=0.226737E-05,A6=-0.481488E-09,A8=0.133671E-11,A10=-0.194355E-14
第22面
κ=0.5896
A4=0.305972E-05,A6=-0.407149E-08,A8=-0.641264E-10,A10=0.108717E-12
第27面
κ=3.1944
A4=0.139947E-04,A6=0.385271E-07,A8=-0.411716E-09,A10=0.198530E-11
A12=-0.440321E-14

[回折光学面データ]
第3面
C2=4.9111E-05,C4=5.4082E-08,C6=8.3034E-10
C8=-2.2413E-12,C10=1.6777E-15

[回折光学素子 光学データ]
nC nd nF ng
低屈折率 1.523300 1.527800 1.539100 1.549100
高屈折率 1.553800 1.557100 1.565000 1.571300

[各群間隔データ]
広角端 望遠端
D8 49.96 2.39
D15 0.15 31.29
D21 14.07 1.00
D27 0.50 31.62

[ズーム光学系 群データ]
群番号 群初面 群焦点距離
G1 1 -41.01
G2 9 47.18
G3 17 -53.40
G4 22 115.53
G5 28 95.52

[条件式]
条件式(1)ν1p =27.57(正レンズL13)
条件式(2)Δ(θg,F) =0.0112(正レンズL13)
条件式(3)ν1dave =43.5
条件式(4)fDOE =-10181.00
条件式(5)|φdoei/φi| =0.0040
条件式(6)|TK/fw| =3.60
条件式(7)Pmin =0.055
【0108】
表2から、第2実施例に係るズーム光学系ZL2は、条件式(1)〜(7)を満たすことが分かる。
【0109】
図6図7は、第2実施例に係るズームレンズ系ZLの諸収差図である。図6は広角端状態における撮影距離無限遠での縦収差図であり、図7は望遠端状態における撮影距離無限遠での縦収差図である。縦収差図には、各図における左側から、(縦方向の)球面収差、非点収差、及び歪曲収差が記載されている。各収差図は、いずれも第2実施例に係るズーム光学系ZL2を物体側から光線追跡したものである。
【0110】
各収差図から明らかなように、第2実施例に係るズーム光学系ZL2は、広角端状態から望遠端状態までの各焦点距離状態において、球面収差、非点収差、歪曲収差等を含め、諸収差が良好に補正されていることが分かる。
【0111】
(第3実施例)
第3実施例について、図8図10及び表3を用いて説明する。図8は、第3実施例に係るズーム光学系ZL(ZL3)の構成断面図及び広角端状態(W)から望遠端状態(T)までのズーム軌道を示す。図8の構成断面図では、図示の煩雑さを回避すべく、回折光学素子PFを構成する回折光学素子要素の符号PF1、PF2と、回折光学面の符号Cの記載及び格子溝の形状の記載は省略し、単に回折光学素子PFの符号のみを記載する。
【0112】
第3実施例に係るズーム光学系ZL3は、図8に示すように、光軸に沿って物体側から順に並んだ、負の屈折力を持つ第1レンズ群G1と、正の屈折力を持つ第2レンズ群G2と、負の屈折力を持つ第3レンズ群G3と、正の屈折力を持つ第4レンズ群G4と、正の屈折力を持つ第5レンズ群G5とから構成される。
【0113】
変倍時には、広角端状態から望遠端状態にかけて、第1レンズ群G1と第2レンズ群G2との間隔が変化し、第2レンズ群G2と第3レンズ群G3との間隔が増加し、第3レンズ群G3と第4レンズ群G4との間隔が減少し、第4レンズ群G4と第5レンズ群G5との間隔が増加するように、第1レンズ群G1が物体側へ凸状の軌跡で移動し、第2レンズ群が物体側へ移動し、第3レンズ群G3が物体側へ移動し、第4レンズ群G4が物体側へ移動する。第5レンズ群G5は固定されており、ズーミングに際して移動しない。
【0114】
第1レンズ群G1は、光軸に沿って物体側から順に並んだ、物体側に凸面を向けたメニスカス形状の第1の負レンズL11と、両凹レンズ形状の第2の負レンズL12と、物体側に凸面を向けたメニスカス形状の正レンズL13とから構成される。第1の負レンズL11の像側レンズ面には密着複層型回折光学素子PFが設けられ、またこの面は非球面である。
【0115】
回折光学素子PFは、異なる2つの紫外線硬化型樹脂からなる回折光学素子要素PF1とPF2がそれぞれ密着接合して構成されたものであり、その接合面は回折格子溝が形成された回折光学面Cとなっている(図1参照)。本実施例では、回折光学素子要素PF1とPF2の構成材料として、以下の表中の[樹脂屈折率]に示す屈折率を有する樹脂を用いた。なお、樹脂屈折率は、樹脂硬化後の屈折率を示す。
【0116】
第2レンズ群G2は、光軸に沿って物体側から順に並んだ、正レンズL21と、負レンズL22と正レンズL23との接合レンズと、正レンズL24とから構成される。
【0117】
第3レンズ群G3は、光軸に沿って物体側から順に並んだ、正レンズL31と負レンズL32との接合レンズと、負レンズL33とから構成される。
【0118】
第4レンズ群G4は、光軸に沿って物体側から順に並んだ、負レンズL41と正レンズL42との接合レンズと、負レンズL43とから構成される。負レンズL41の物体側レンズ面は非球面である。
【0119】
第5レンズ群G5は、正レンズL51から構成されている。
【0120】
本実施例では、第3レンズ群G3の物体側に、開口絞りSPを配置する。開口絞りSPは、変倍時には広角端状態から望遠端状態において第3レンズ群G3と共に移動する。
【0121】
以下の表3に、第3実施例に係るズーム光学系ZL3の各諸元値を示す。表3における面番号1〜29は、図8に示す曲率半径R1〜R29の各光学面に対応している。
【0122】
(表3)
[全体諸元]
広角端 望遠端
f = 24.8 〜 67.6
FNo= 2.9 〜 2.9
Y = 21.6 〜 21.6
Σd = 146.4 〜 157.1

[レンズデータ]
面番号 r d nd νd
1 541.278 2.88 1.62041 60.25
2 *a 24.918 0.01 1.52780 33.41
3 *a*d 24.918 0.01 1.55710 49.74
4 *a 24.918 13.66
5 -1884.105 2.10 1.56384 60.71
6 82.335 0.15
7 52.740 4.44 1.68893 31.16
8 111.258 D8(可変)
9 42.908 5.90 1.74000 44.81
10 *a 78.686 8.56
11 78.465 1.80 1.74950 35.25
12 29.201 8.42 1.49782 82.57
13 -145.003 7.87
14 56.224 5.44 1.65100 56.24
15 -185.363 D15(可変)
16 *s ∞ 1.30
17 -833.557 3.50 1.86074 23.08
18 -37.536 1.15 1.64769 33.73
19 60.171 3.77
20 -30.999 1.20 1.54814 45.51
21 -247.421 D21(可変)
22 *a 52.989 1.30 1.54814 45.51
23 31.203 6.33 1.49782 82.57
24 -33.095 0.20
25 -870.002 3.38 1.71736 29.57
26 46.113 0.08 1.55389 39.22
27 *a 57.706 D27(可変)
28 57.488 5.72 1.62041 60.25
29 -2567.589 41.80

[非球面データ]
第2,3,4面
κ=-1.0548
A4=0.196198E-05,A6=-0.337901E-09,A8=0.506747E-11,A10=-0.672772E-14
A12=0.318737E-17
第10面
κ=-6.4009
A4=0.316676E-05,A6=-0.809020E-09,A8=0.101113E-11,A10=-0.159292E-148
第22面
κ = 0.4590
A4=0.134892E-06,A6=-0.142020E-07,A8=-0.182191E-10,A10=0.617701E-13
第27面
κ = 1.4571
A4=0.981089E-05,A6=0.110465E-07,A8=-0.220627E-09,A10=0.120511E-11
A12=-0.275363E-14

[回折光学面データ]
第3面
C2=5.6215E-05,C4=1.6670E-07,C6=1.6313E-10
C8=-9.4388E-13,C10=8.2737E-16

[回折光学素子 光学データ]
nC nd nF ng
低屈折率 1.523300 1.527800 1.539100 1.549100
高屈折率 1.553800 1.557100 1.565000 1.571300

[各群間隔データ]
広角端 望遠端
D8 45.72 2.51
D15 0.15 23.61
D21 10.65 0.10
D27 0.67 41.64

[ズーム光学系 群データ]
群番号 群初面 群焦点距離
G1 1 -40.98
G2 9 44.40
G3 17 -45.75
G4 22 95.94
G5 28 90.71

[条件式]
条件式(1)ν1p =31.16(正レンズL13)
条件式(2)Δ(θg,F) =0.0072(正レンズL13)
条件式(3)ν1dave =50.7
条件式(4)fDOE =-8894.42
条件式(5)|φdoei/φi| =0.0046
条件式(6)|TK/fw| =3.55
条件式(7)Pmin =0.076
【0123】
表3から、第3実施例に係るズーム光学系ZL3は、条件式(1)〜(7)を満たすことが分かる。
【0124】
図9図10は、第3実施例に係るズームレンズ系ZLの諸収差図である。図9は広角端状態における撮影距離無限遠での縦収差図であり、図10は望遠端状態における撮影距離無限遠での縦収差図である。縦収差図には、各図における左側から、(縦方向の)球面収差、非点収差、及び歪曲収差が記載されている。各収差図は、いずれも第3実施例に係るズーム光学系ZL3を物体側から光線追跡したものである。
【0125】
各収差図から明らかなように、第3実施例に係るズーム光学系ZL3は、広角端状態から望遠端状態までの各焦点距離状態において、球面収差、非点収差、歪曲収差等を含め、諸収差が良好に補正されていることが分かる。
【0126】
以上説明したように、本発明によれば、回折光学素子を効果的に使用することにより、小型で、全ズーム範囲に亘り色収差を始めとした諸収差を良好に補正し、高い光学性能を有したズーム光学系を提供することができる。
【0127】
なお、本発明を分かりやすくするために、実施形態の構成要件を付して説明したが、本発明がこれに限定されるものではないことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0128】
ZL(ZL1〜ZL3) ズーム光学系
G1 第1レンズ群
G2 第2レンズ群
G3 第3レンズ群
G4 第4レンズ群
G5 第5レンズ群
PF 回折光学素子
SP 絞り
CAM デジタル一眼レフカメラ(撮像装置)
1 撮影レンズ(ズーム光学系)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12