【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明の基板洗浄液のうち、第1の本発明は、同一の基板上に窒化シリコンと酸化シリコンとを有し、前記窒化シリコンおよび前記酸化シリコンの一方または両方の少なくとも一部が露出した基板を
酸化シリコンのエッチングを抑制しつつ窒化シリコンを選択的にエッチングする洗浄に用いられる洗浄液であって、リン酸、
ペルオキソ一硫酸とペルオキソ二硫酸とを有する過硫酸を含み、過硫酸塩を含まない硫酸
溶液および水を含み、165℃以上、沸点未満に加温されて前記洗浄に使用されることを特徴とする。
【0008】
第2の本発明の基板洗浄方法は、前記第1の本発明において、
前記過硫酸が、洗浄液全体の濃度で、1.0〜8.0g/Lであることを特徴とする。
【0009】
第3の本発明の基板洗浄液は、前記第1または第2の本発明のいずれかにおいて、当該洗浄液全体において、前記リン酸の濃度が15〜40質量%、前記硫酸の濃度が30〜85質量%であることを特徴とする。
【0010】
第4の本発明の基板洗浄液は、前記第1〜第3の本発明のいずれかにおいて、当該洗浄液全体において、前記リン酸の質量%濃度と、前記硫酸の質量%濃度とが、1:1.5〜1:4の範囲内にあることを特徴とする。
【0011】
第5の本発明の基板洗浄液は、前記第1〜第4の本発明のいずれかにおいて、含水率が15〜25質量%であることを特徴とする。
【0012】
第6の本発明の基板洗浄液は、前記第1〜第5の本発明のいずれかにおいて、前記基板の枚葉式洗浄に用いられることを特徴とする。
【0013】
第7の本発明の基板洗浄方法は、同一の基板上に窒化シリコンと酸化シリコンとを有し、前記窒化シリコンおよび前記酸化シリコンの一方または両方の少なくとも一部が露出した基板の洗浄方法において、前記基板を、
リン酸、硫酸の電解によって生成された過硫酸を含む電解硫酸および水を含み、165℃以上、沸点未満に加温された基板洗浄液に接触させ、前記基板上の窒化シリコンを選択的にエッチングすることを特徴とする。
第8の本発明の基板洗浄方法は、前記本発明において、前記過硫酸が、洗浄液全体の濃度で、1.0〜8.0g/Lであることを特徴とする。
第9の本発明の基板洗浄方法は、前記本発明において、前記基板洗浄液全体において、前記リン酸の濃度が15〜40質量%、前記硫酸の濃度が30〜85質量%であることを特徴とする。
第10の本発明の基板洗浄方法は、前記本発明において、前記基板洗浄液全体において、前記リン酸の質量%濃度と、前記硫酸の質量%濃度とが、1:1.5〜1:4の範囲内にあることを特徴とする。
第11の本発明の基板洗浄方法は、前記本発明において、前記基板洗浄液の含水率が15〜25質量%であることを特徴とする。
【0014】
第
12の本発明の基板洗浄方法は、前記第7
〜第11の本発明のいずれかにおいて、前記基板は、前記酸化シリコン上に前記窒化シリコンが積層されていることを特徴とする。
【0015】
第
13の本発明の基板洗浄方法は、前記第7
〜第12の本発明のいずれかにおいて、前記基板は、32nm以下のパターン線幅を有することを特徴とする。
【0016】
第
14の本発明の基板洗浄方法は、前記第7〜第
13の本発明のいずれかにおいて、前記洗浄液によって前記基板を枚葉式に洗浄することを特徴とする。
【0017】
第
15の本発明の基板洗浄方法は、前記第7〜第
14の本発明のいずれかにおいて、 洗浄に用いた洗浄液を回収し、電解に供して過硫酸濃度を高めた後、さらに洗浄液として前記洗浄に供することを特徴とする。
【0018】
以下、本発明で規定する構成について説明する。
本発明では、硫酸を電解することによって生成される過硫酸を含んでおり、過硫酸塩を含まないものである。
本発明では、リン酸による窒化シリコンのエッチング性が良好に得られる。ただし、リン酸は酸化シリコンをエッチングする作用を有するため、硫酸および過硫酸によってリン酸による酸化シリコンのエッチングを抑制する。これら作用により窒化シリコンを選択的にエッチングして効果的な洗浄を行うことを可能にしている。
以下、さらに各条件等について詳細に説明する。
【0019】
過硫酸濃度:1.0g/L〜8.0g/L
過硫酸(ペルオキソ一硫酸とペルオキソ二硫酸の総称とする)の強い酸化力によってリン酸による酸化シリコンに対するエッチングが抑制される。従来提案されている過硫酸塩は、過硫酸より解離度が低く添加量を増やす必要がある。またそれに伴い対イオンに由来する析出物が基板に付着するおそれがある。したがって、過硫酸は塩由来のものではなく、硫酸の電解によって生成されたもの、またはこれを主とすることが必須となる。
なお、本発明としては過硫酸の濃度が特定の範囲に限定されるものではないが、過硫酸の濃度が、洗浄液全体において1.0〜8.0g/Lの範囲にあるのが望ましい。この範囲設定によって、選択比をより高くすることができる。1.0g/L未満では、リン酸による酸化シリコンのエッチング抑制作用が十分でなく、また、8.0g/Lを超えても、酸化シリコンのエッチング抑制作用がそれ以上大きく改善しない。なお、同様の理由で下限を2.0g/L、上限を6.0g/Lとするのが一層望ましい。
【0020】
また、硫酸の電解によって生成された過硫酸を補助するものとして硫酸と過酸化水素との混合、または硫酸とオゾンとの混合によって生成された過硫酸を補充してもよい。
【0021】
洗浄液温度:165℃以上、沸点未満
洗浄液は、窒化シリコンのエッチング作用を十分に得るため、洗浄に際し洗浄液が165℃以上、沸点未満の温度を有しているのが望ましい。
洗浄液の温度が低いとリン酸による窒化シリコンのエッチング作用が十分に得られない。なお、硫酸の電解により生成された過硫酸と硫酸とを含むことにより洗浄液を165℃以上としても酸化シリコンのエッチングは助長されず、むしろ抑制作用が強くなり高い選択比が得られる。硫酸の電解により生成された過硫酸と硫酸とを適正に含有していないと、洗浄液の加温によって酸化シリコンのエッチングが加速され、高い選択比が得られない。
上記観点から洗浄液温度は170℃以上がさらに望ましく、同様の理由で175℃以上が一層望ましい。
また、取り扱い上、洗浄液の温度は沸点未満が望ましい。
【0022】
リン酸濃度:15〜40質量%
硫酸濃度 :30〜85質量%
リン酸濃度と硫酸濃度とをバランスさせることで、窒化シリコンのエッチング性を高く維持し、かつ酸化シリコンのエッチングを抑制することで、洗浄効果を保ちつつ高い選択比が得られる。
ここで、リン酸濃度が15質量%未満ではSiNエッチングレートが小さく実用性が低くなる。一方、リン酸濃度が40質量%超過ではSiO
2エッチングレートが大きくなり、選択比SiN/SiO
2は小さくなる。したがって、リン酸濃度は15〜40質量%が望ましい。なお、同様の理由でリン酸濃度の下限は24質量%、上限は40質量%が一層望ましい。
また、硫酸濃度は30質量%未満ではエッチング抑制が不十分でSiO
2エッチングレートが大きく実用性が低くなる。一方、硫酸濃度が85質量%超過ではSiNエッチングレートが小さくなり実用性が低い。したがって、硫酸濃度は30〜85質量%が望ましい。なお、同様の理由で硫酸濃度の下限は50質量%、上限は70質量%が一層望ましい。
なお、上記リン酸濃度、硫酸濃度は、洗浄液全体に対する濃度として示されるものである。
【0023】
リン酸と硫酸の濃度比: 1:1.5〜1:4(質量%濃度比)
リン酸と硫酸とを混合した混合液中の前記リン酸の質量%濃度と、前記硫酸の質量%濃度とを適正なバランス比とすることで、洗浄効果を保ちつつ高い選択比が得られる。
濃度比が1:1.5未満、すなわち硫酸の濃度が相対的に低くなると、エッチング抑制が不十分でSiO
2エッチングレートが大きくなり実用性が低い。一方、濃度比が1:4超過では、リン酸の作用が抑制されすぎてSiNエッチングレートが小さくなり実用性が低い。したがって、リン酸と硫酸の濃度比は、1:1.5〜1:4が望ましい。さらには、リン酸と硫酸の濃度比は、下限を1:2、上限を1:3とするのが一層望ましい。
また、上記したリン酸と硫酸の濃度比は、前記リン酸濃度と硫酸濃度の適正な範囲において、上記範囲を満たしているのが特に望ましい。
【0024】
含水率:15〜25質量%
洗浄液の含水率が15質量%未満になると水素イオン濃度が小さくなるため下記反応式に基づくSiNエッチングレートが小さくなる。また、含水率が25質量%超過だと沸点が下がり高温処理できずSiNエッチングレートが低下する。このため、含水率は15〜25質量%の範囲が望ましい。なお、同様の理由で下限を18質量%、上限を22質量%とするのが一層望ましい。
SiN
3N
4+12H
2O+4H
+→3Si(OH)
4+4NH
4+⇔6H
2O+3SiO
2+4NH
4+
【0025】
本発明では、同一の基板上に窒化シリコンと酸化シリコンとを有し、それらの少なくとも一部が露出した基板が洗浄の対象となる。基板の種別等は本発明としては特に限定されるものではなく、また、窒化シリコンと酸化シリコンが存在している形態も特定のものに限定されるものではない。窒化シリコンと酸化シリコンとは、酸化シリコン上に窒化シリコンが積層されたものであってもよい。なお、その場合、先に窒化シリコンがエッチングされ、窒化シリコンから酸化シリコンが露出した時点から酸化シリコンのエッチングが問題となり、酸化シリコンのエッチング抑制が必要となる。
【0026】
なお、本発明としては基板に形成される、または形成されたパターン線幅が32nm以下という高い集積度の半導体基板が特に好適な洗浄対象となる。従来の洗浄液でこのような微細な線幅を有する基板を洗浄した場合、洗浄効果を十分に得ようとすると微細な線幅に相当する部分が損傷し易くなるが、本発明の洗浄液、洗浄方法によれば、微細な線幅相当部分を損傷することなく酸化シリコンのエッチングを最小限に抑えて、効果的な洗浄が可能になる。
但し、本発明としては洗浄対象となる基板のパターン線幅が特定のものに限定されるものではない。
【0027】
また、本発明の洗浄液を用いた洗浄方法では、洗浄液に基板を浸漬したバッチ式での洗浄も可能であるが、一枚の基板に洗浄液を噴霧、滴下、流下などして基板に洗浄液を接触させる枚葉式が適している。バッチ式洗浄は、パーティクルの再付着の問題があり、金属残渣除去としては枚葉式の方が適している。