【実施例】
【0038】
以下の具体例は、本発明を利用した高分子化合物の製造方法の例示である。
しかし、これらの例は、本発明の範囲を如何様にも限定もしくは減縮することを意図したものではなく、本発明を実施するために排他的に利用しなければならない条件、パラメータまたは値を教示するものと解釈されるべきものではない。また、特に断りがない場合、全ての部および百分率は重量に基づく値である。
また、実施例および比較例で用いた陰イオン交換樹脂は、前記洗浄方法等により、各金属イオン不純物濃度を低減させた。
【0039】
分子量測定方法
下記合成例等において得られた高分子化合物の重量平均分子量は、GPC(Gel Permeation Chromatography:東ソー製HLC8220GPC)により、ポリスチレン換算で求めた(測定条件;測定サンプル:乾粉50mg/溶離液5mL、溶離液:1.7mMリン酸/THF、分離カラム:昭和電工社製、Shodex GPC K−805L(商品名)、測定温度:40℃、検出器:示差屈折率検出器)。
【0040】
金属イオン不純物濃度測定方法
陰イオン交換樹脂中の各金属イオン不純物濃度は、次のようにして求めた。
陰イオン交換樹脂2.0gを2%硝酸60gに5時間浸漬した後の溶液を、高周波誘導結合プラズマ質量分析計(ICP−MS(Inductively Coupled Plasma Mass Spectrometer):Agilent Technologies製7500cs)により金属分析し、各金属イオン不純物濃度(Na、Fe)を求めた。また、高分子化合物溶液中の各金属イオン不純物濃度も、前記高周波誘導結合プラズマ質量分析計により金属分析し、各金属イオン不純物濃度(Na,Fe)を求めた(測定サンプル: 高分子化合物溶液または高分子化合物の乾粉1.5gを蒸留精製したN-メチル-2-ピロリドンで100倍希釈したサンプル、測定法:標準添加法)。
【0041】
残存酸触媒(pTSA)量測定方法
高分子化合物の乾粉1.0gをアセトニトリル21ml、水9mlの混合溶液に溶解し、高速液体クロマトグラフィー(HPLC:島津理化製LC−20A、分離カラム:GL Science Intersil ODS−2)にて、残pTSAの定量を行った。
【0042】
[合成例1]
1,3,5−トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート(67.12g,0.258mol)、デカヒドロ−2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル(65.36g, 0.258mol)、p−トルエンスルホン酸−水和物(pTSA)(2.606g,13.7mmol)、およびアニソール(79.60g)を三口フラスコに充填し、Dean-Starkトラップを用いて脱水および脱メタノール反応を行いながら130℃で9時間重合させた後、50℃まで冷却し、トリエチルアミン(1.386g,13.7mmol)を加えて反応を停止させた。その後、テトラヒドロフラン(THF)(89.4g)で希釈し、ヘキサン(580.0g)とIPA(1740.0g)の混合物に再沈殿し、下記式(1)に示すポリエステル系高分子化合物(重量平均分子量:7,260、収率:約43%)を得た。
尚、再沈殿する前の重合液中の金属イオン不純物濃度は、Na50ppm、Fe40ppmであった。
【0043】
【化1】
【0044】
[合成例2]
1,3,5−トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート(67.12g,0.258mol)、デカヒドロ−2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル(65.36g, 0.258mol)、p−トルエンスルホン酸−水和物(pTSA)(2.606g,13.7mmol)、およびアニソール(79.60g)を三口フラスコに充填し、Dean-Starkトラップを用いて脱水および脱メタノール反応を行いながら130℃で9時間重合した。その後、テトラヒドロフラン(THF) (89.4g)で希釈して、テトラメトキシグリコールウリル(TMGU)(25.64g,80.55mmol)を添加し、20℃で6時間反応させてトリエチルアミン(1.386g,13.7mmol)を加えて反応を停止させた。この反応液を、ヘキサン(580.0g)とIPA(1740.0g)の混合物に再沈殿し、下記式(2)に示す側鎖に架橋剤が付加されたポリエステル系高分子化合物(重量平均分子量:8,520、収率:約41%)を得た。
尚、再沈殿する前の重合液中の金属イオン不純物濃度は、Na40ppm、Fe30ppmであった。
【0045】
【化2】
【0046】
[実施例1]
各金属イオン不純物濃度1.5ppb以下の陰イオン交換樹脂(ORGANO Amberlyst B20−HG・Dry)(5.00g)をTHFにて洗浄し、乾燥した。この陰イオン交換樹脂に、合成例1で得られた高分子化合物(9.00g)をTHF(21.00g)に溶解した高分子化合物溶液を加えて5時間攪拌し、残存酸触媒(pTSA)の除去を行った。陰イオン交換樹脂とのスラリー溶液を濾別して得られた濾液(該高分子化合物溶液)を、ヘキサンと2−プロパノールの混合物(ヘキサン/2−プロパノール=1/3質量比)の貧溶媒にて再沈殿し、ポリエステル系高分子化合物を得た。
得られた高分子化合物を、40℃で60時間減圧乾燥し、高分子化合物乾粉の重量平均分子量(Mw)およびZ平均分子量(Mz)、金属イオン不純物濃度、残pTSAを測定した。
【0047】
[実施例2]
各金属イオン不純物濃度1.5ppb以下の陰イオン交換樹脂(ORGANO Amberlyst B20−HG・Dry)(5.00g)をTHFにて洗浄し、乾燥した。この陰イオン交換樹脂に、合成例2で得られた高分子化合物(9.00g)をTHF(21.00g)に溶解した高分子化合物溶液を加えて5時間攪拌し、酸触媒(pTSA)の除去を行った。その後、実施例1と同様の方法で処理し、得られた高分子化合物乾粉の重量平均分子量(Mw)およびZ平均分子量(Mz)、金属イオン不純物濃度、残pTSAを測定した。
【0048】
[比較例1]
合成例1で得られた高分子化合物(9.00g)を、THF(21.00g)に溶解した高分子化合物溶液を、陰イオン交換樹脂に接触させずに、ヘキサンと2−プロパノールの混合物(ヘキサン/2−プロパノール=1/3質量比)の貧溶媒にて再沈殿し、ポリエステル系高分子化合物を得た。
得られた高分子化合物を、40℃で60時間減圧乾燥し、高分子化合物乾粉の重量平均分子量(Mw)およびZ平均分子量(Mz)、金属イオン不純物濃度、残pTSAを測定した。
【0049】
[比較例2]
合成例2で得られた高分子化合物(9.00g)をTHF(21.00g)に溶解した高分子化合物溶液を、陰イオン交換樹脂に接触させずに、ヘキサンと2−プロパノールの混合物(ヘキサン/2−プロパノール=1/3質量比)の貧溶媒にて再沈殿し、ポリエステル系高分子化合物を得た。
得られた高分子化合物を、40℃で60時間減圧乾燥し、高分子化合物乾粉の重量平均分子量(Mw)およびZ平均分子量(Mz)、金属イオン不純物濃度、残pTSAを測定した。
【0050】
[比較例3]
各金属イオン不純物濃度2.5ppbの陰イオン交換樹脂(ORGANO Amberlyst B20−HG・Dry)(5.00g)をTHFにて洗浄し、乾燥した。この陰イオン交換樹脂に、合成例1で得られた高分子化合物(9.00g)をTHF(21.00g)に溶解した高分子化合物溶液を加えて5時間攪拌し、酸触媒(pTSA)の除去を行った。その後、実施例1と同様の方法で処理し、得られた高分子化合物乾粉の重量平均分子量(Mw)およびZ平均分子量(Mz)、金属イオン不純物濃度、残pTSAを測定した。
【0051】
[比較例4]
各金属イオン不純物濃度3.5ppbの陰イオン交換樹脂(ORGANO Amberlyst B20−HG・Dry)(5.00g)をTHFにて洗浄し、乾燥した。この陰イオン交換樹脂に、合成例1で得られた高分子化合物(9.00g)をTHF(21.00g)に溶解した高分子化合物溶液を加えて5時間攪拌し、酸触媒(pTSA)の除去を行った。その後、実施例1と同様の方法で処理し、得られた高分子化合物乾粉の重量平均分子量(Mw)およびZ平均分子量(Mz)、金属イオン不純物濃度、残pTSAを測定した。
【0052】
[比較例5]
各金属イオン不純物濃度2.5ppbの陰イオン交換樹脂(ORGANO Amberlyst B20−HG・Dry)(5.00g)をTHFにて洗浄し、乾燥した。この陰イオン交換樹脂に、合成例2で得られた高分子化合物(9.00g)をTHF(21.00g)に溶解した高分子化合物溶液を加えて5時間攪拌し、酸触媒(pTSA)の除去を行った。その後、実施例1と同様の方法で処理し、得られた高分子化合物乾粉の重量平均分子量(Mw)およびZ平均分子量(Mz)、金属イオン不純物濃度、残pTSAを測定した。
【0053】
[比較例6]
各金属イオン不純物濃度3.5ppbの陰イオン交換樹脂(ORGANO Amberlyst B20−HG・Dry)(5.00g)をTHFにて洗浄し、乾燥した。この陰イオン交換樹脂に、合成例2で得られた高分子化合物(9.00g)をTHF(21.00g)に溶解した高分子化合物溶液を加えて5時間攪拌し、酸触媒(pTSA)の除去を行った。その後、実施例1と同様の方法で処理し、得られた高分子化合物乾粉の重量平均分子量(Mw)およびZ平均分子量(Mz)、金属イオン不純物濃度、残pTSAを測定した。
【0054】
[比較例7]
各金属イオン不純物濃度3.5ppbの陰イオン交換樹脂(ORGANO Amberlyst B20−HG・Dry)(5.00g)をTHFにて洗浄し、乾燥した。この陰イオン交換樹脂に、合成例2で得られた高分子化合物(9.00g)をTHF(21.00g)に溶解した高分子化合物溶液を加えて5時間攪拌し、酸触媒(pTSA)の除去を行った。さらに、陰イオン交換樹脂とのスラリー溶液を濾別して得られた濾液(該高分子化合物溶液)を、あらかじめ超純水、THFにて洗浄した陽イオン交換樹脂(ダウエックス
TM 50Wx8)(5.00g)に加えて、5時間攪拌し、金属イオン不純物の除去を行った。その後、実施例1と同様の方法で処理し、得られた高分子化合物乾粉の重量平均分子量(Mw)およびZ平均分子量(Mz)、金属イオン不純物濃度、残pTSAを測定した。
【0055】
前記実施例および比較例で得られた高分子化合物乾粉の、重量平均分子量(Mw)およびZ平均分子量(Mz)、金属イオン不純物濃度、残pTSAの測定結果を表1または2に示す。
【0056】
【表1】
【0057】
【表2】
【0058】
表1および2より、実施例1および2の場合、各金属イオン不純物濃度が100ppb以下かつ酸不純物(残pTSA)濃度が100ppm以下を満たす、高純度な高分子化合物を製造することが可能である。
一方、比較例1および2の場合には、陰イオン交換樹脂との接触させる工程が無いため、残pTSA量が低減されていない。
また、比較例3〜6の場合には、金属イオン不純物濃度が高い陰イオン交換樹脂を使用しているため、残pTSA量は低減しているものの、各金属イオン不純物濃度が、陰イオン交換樹脂処理前と比較して大幅に増加している。
さらに、比較例7の場合には、高分子化合物溶液中の金属イオン不純物を除去するために陽イオン交換樹脂と接触させたために、高分子化合物の側鎖に付加している架橋剤が反応し、架橋反応が進行(MwおよびMzの増加)していることが判断できる。
以上より、本発明によって、金属イオン不純物濃度が100ppb以下かつ酸不純物濃度が100ppm以下となる、半導体リソグラフィー用高分子化合物、および該高分子化合物の製造方法を提供することが可能である。