【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度、独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構、低コストで質の良い加工・業務用農作物の安定供給技術の開発に係る委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
食品サンプルにプローブを挿入し、その際に前記プローブに生じる振動の変位、速度及び加速度のうちいずれか一つの物理量を、振動情報として、所定の周波数帯域で前記物理量を安定して出力する振動情報検出手段を用いて検出する振動情報検出工程と、
前記振動情報を帯域通過フィルタを用いて複数の周波数帯域各々における振動情報に分割する周波数帯域分割工程と、
前記各周波数帯域における前記振動情報と、対応する前記周波数帯域の中心周波数とから、前記周波数帯域毎の単位時間当たりの振動エネルギーに基づく食感指標値をコンピュータを用いて算出する食感指標演算工程と、
を含む食感指標の測定方法。
前記振動情報検出手段を強制振動させ、前記振動情報検出手段に生じた加速度、速度及び変位のうちいずれか一つの物理量を前記振動情報として他の検出手段で検出するとともに、前記振動情報検出手段から出力される出力信号値を測定し、
測定された出力信号値を前記他の検出手段で検出された前記振動情報に変換する較正係数を求め、
前記食感指標演算工程では、
前記各周波数帯域における前記振動情報に前記較正係数を乗算した上で、前記振動エネルギーを算出する、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の食感指標の測定方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
官能検査を利用して正確に食品の評価を行うためには、熟練した技術を持つ複数の試験者が必要とされる。ワインや煙草といった高度な嗜好を要求される商品では、このような熟練した試験者が養成されている。しかしながら、セロリやキウリなどの安価な農産物では、このような熟練者の養成は行われておらず、その都度、非熟練の試験者を募り、予め定めた官能検査表に基づいて、食感判定が行われるのが一般的である。そのため、判定結果のばらつきが大きくなり、しかも、官能検査の際の試験者が同一ではない場合が多いので、過去の測定結果と現在の測定結果とを正確に比較することが困難になる。
【0009】
また、上記特許文献2に記載されたシステム等では、測定対象物が、水分含有量が数%以下の乾いた多孔性食品に限られる。逆に言えば、キウリやレタスなど水分を多く含む食材に適用した場合には、破断曲線とその食感との間で、必ずしも有意な相関が得られるわけではない。
【0010】
また、上記特許文献3に記載された食品の食感測定装置によって測定される単位時間当たりのパルスのピーク数は、食感を表すものとしてはある程度の指標となる。しかしながら、食物を食べるときに人が感じる食感は、口腔内で咀嚼する際に生じる食品の破壊エネルギーによるものが支配的である。このため、定量化される食感指標としては、そのような食品の破壊エネルギーと相関性のあるものであるのがより望ましい。
【0011】
また、上記特許文献4に記載された食品の食感測定装置によって測定される単位時間当たりの振幅密度も、食感指標となり得る。しかしながら、この指標も、口腔内で咀嚼する際に生じる食品の破壊エネルギーとの相関性が必ずしも高いものではない。
【0012】
本発明は、上記事情の下になされたものであり、食感をより正確に定量化することができる食感指標の測定方法及び測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明の第1の観点に係る食感指標の測定方法は、
食品サンプルにプローブを挿入し、その際に前記プローブに生じる振動の変位、速度及び加速度のうちいずれか一つの物理量を、振動情報として、所定の周波数帯域で前記物理量を安定して出力する振動情報検出手段を用いて検出する振動情報検出工程と、
前記振動情報を帯域通過フィルタを用いて複数の周波数帯域各々における振動情報に分割する周波数帯域分割工程と、
前記各周波数帯域における前記振動情報と、対応する前記周波数帯域の中心周波数とから、前記周波数帯域毎の単位時間当たりの振動エネルギーに基づく食感指標値をコンピュータを用いて算出する食感指標演算工程と、
を含む。
【0014】
また、前記振動情報検出工程において、前記振動情報として振動の変位を検出した場合には、
前記食感指標演算工程において、前記振動情報と前記中心周波数との積の自乗の総和を単位時間で除したものを単位時間当たりの振動エネルギーとして算出し、
前記振動情報検出工程において、前記振動情報として振動の速度を検出した場合には、
前記食感指標演算工程において、前記振動情報を自乗した値の総和を単位時間で除したものを単位時間当たりの振動エネルギーとして算出し、
前記振動情報検出工程において、前記振動情報として振動の加速度を検出した場合には、
前記食感指標演算工程において、前記振動情報を前記中心周波数で除した値の自乗の総和を単位時間で除したものを単位時間当たりの振動エネルギーとして算出することが好ましい。
【0015】
また、前記食感指標演算工程では、
周波数帯域毎の振動エネルギーに基づく食感指標値に、低周波数領域から高周波数領域にかけて徐々に大きくなる補正係数を乗算することとしてもよい。
【0016】
また、前記振動情報検出手段を強制振動させ、前記振動情報検出手段に生じた加速度、速度及び変位のうちいずれか一つの物理量を前記振動情報として他の検出手段で検出するとともに、前記振動情報検出手段から出力される出力信号値を測定し、
測定された出力信号値を前記他の検出手段で検出された前記振動情報に変換する較正係数を求め、
前記食感指標演算工程では、
前記各周波数帯域における前記振動情報に前記較正係数を乗算した上で、前記振動エネルギーを算出することとしてもよい。
【0017】
また、前記振動情報検出工程では、
前記振動情報検出手段として、前記所定の周波数帯域で安定して加速度に相当する信号を出力する加速度ピックアップを用いて前記振動情報を検出することとしてもよい。
【0018】
また、前記食感指標演算工程では、
前記加速度ピックアップから出力された電圧値を用い、
下式1
【数1】
(ここで、T
iは所定の周波数帯域iの食感指標値、αは、任意の定数、V
i,jは、所定の周波数帯域i及び所定のサンプリングjにおける電圧値、tは測定時間、f
iは所定の周波数帯域iにおける中心周波数)を用いて前記周波数帯域毎の単位時間当たりの振動エネルギーに基づく食感指標値を算出することとしてもよい。
【0019】
また、前記食感指標演算工程では、
前記加速度ピックアップから出力された電圧値を用い、
下式2
【数2】
(ここで、PinkT
iは所定の周波数帯域iの食感指標値、αは、任意の定数、V
i,jは所定の周波数帯域i及び所定のサンプリングjにおける電圧値、tは測定時間、f
iは所定の周波数帯域iにおける中心周波数であり、f
1は最も低い周波数帯域における中心周波数)を用いて前記周波数帯域毎の単位時間当たりの振動エネルギーに基づく食感指標値を算出することとしてもよい。
【0020】
また、前記食感指標演算工程では、
前記加速度ピックアップから出力された電圧値を用い、
下式3
【数3】
(ここでPinkT
caliは所定の周波数帯域iの食感指標値、αは、任意の定数、V
i,jは所定の周波数帯域i及び所定のサンプリングjにおける電圧値、tは測定時間、f
iは所定の周波数帯域iにおける中心周波数であり、f
1は最も低い周波数帯域における中心周波数、c(f
i)は周波数帯域毎に定められる較正係数)を用いて前記周波数帯域毎の単位時間当たりの振動エネルギーに基づく食感指標値を算出することとしてもよい。
【0021】
また、前記食感指標演算工程では、
算出した前記食感指標値を、周波数帯域毎に、ホワイトノイズ、ピンクノイズ及びブラウンノイズとともに比較表示することとしてもよい。
【0022】
また、前記食感指標演算工程では、
前記加速度ピックアップから出力された電圧値を用い、
下式4
【数4】
(式4中、
TPCpは食感指標値、a
p,kはあらかじめ求められた係数であり、PinkT
kは下式5
【数5】
(式5中、αは、任意の定数、V
k,jは所定の周波数帯域k及び所定のサンプリングjにおける電圧値、tは測定時間、f
kは所定の周波数帯域kにおける中心周波数であり、f
1は最も低い周波数帯域における中心周波数)を用いて算出される所定の周波数帯域kにおける仮食感指標値)を用いて前記周波数帯域毎の単位時間当たりの振動エネルギーに基づく食感指標値を算出することとしてもよい。
【0023】
また、前記係数は、予め所定の食品群に対して測定を行い、前記式5を用いて算出された仮食感指標値群から主成分分析を用いて求められた固有ベクトル群であることとしてもよい。
【0024】
本発明の第2の観点に係る食感指標の測定装置は、
食品サンプルに挿入されるプローブと、
前記プローブを駆動する駆動装置と、
前記プローブが前記食品サンプルに挿入される際に、前記プローブに生じる振動の変位、速度及び加速度のうちいずれか一つの物理量を、振動情報として、所定の周波数帯域で前記物理量を安定して検出する振動情報検出装置と、
前記振動情報を帯域通過フィルタを用いて複数の周波数帯域各々における振動情報に分割し、前記各周波数帯域における前記振動情報と、対応する前記周波数帯域の中心周波数とから、前記周波数帯域毎の単位時間当たりの振動エネルギーに基づく食感指標値を算出する演算装置と、
を備える。
【0025】
また、前記振動情報検出装置が加速度ピックアップであってもよい。
【0026】
また、前記演算装置は下式1
【数6】
(ここでT
iは所定の周波数帯域iの食感指標値、αは、任意の定数、V
i,jは所定の周波数帯域i及び所定のサンプリングjにおける電圧値、tは測定時間、f
iは所定の周波数帯域iにおける中心周波数)を用いて前記周波数帯域毎の単位時間当たりの振動エネルギーに基づく食感指標値を算出することとしてもよい。
【0027】
また、前記演算装置は下式2
【数7】
(ここでPinkT
iは所定の周波数帯域iの食感指標値、αは、任意の定数、V
i,jは所定の周波数帯域i及び所定のサンプリングjにおける電圧値、tは測定時間、f
iは所定の周波数帯域iにおける中心周波数であり、f
1は最も低い周波数帯域における中心周波数)を用いて前記周波数帯域毎の単位時間当たりの振動エネルギーに基づく食感指標値を算出することとしてもよい。
【0028】
また、前記演算処理は下式3
【数8】
(ここでPinkT
caliは所定の周波数帯域iの食感指標値、αは、任意の定数、V
i,jは所定の周波数帯域i及び所定のサンプリングjにおける電圧値、tは測定時間、f
iは所定の周波数帯域iにおける中心周波数であり、f
1は最も低い周波数帯域における中心周波数、c(f
i)は周波数帯域毎に定められる較正係数)を用いて前記周波数帯域毎の単位時間当たりの振動エネルギーに基づく食感指標値を算出することとしてもよい。
【発明の効果】
【0029】
本発明に係る食感指標の測定方法では、プローブを食品サンプルに挿入する際に、プローブに生じる振動の変位、速度、或いは加速度のうちいずれか一つの物理量を、振動周波数によらず、振動情報として安定して検出する。このため複数の周波数帯域において、この振動に基づいて食品を口腔内で咀嚼する際の破壊エネルギーを正確に算出することができる。この結果、食感をより正確に定量化することができる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図を参照しつつ、本発明の一実施の形態に係る食感指標の測定方法及び食感指標の測定装置について説明する。
図1には、本実施の形態に係る食感指標の測定方法の工程が示されている。
図1に示すように、食感指標の測定方法は、振動情報検出工程(ステップS1)と、周波数帯域分割工程(ステップS2)と、食感指標演算工程(ステップS3)とを含む。
【0032】
振動情報検出工程では、食品サンプル(例えば、
図2に示す食品サンプル41)にプローブ(例えば、
図2に示すプローブ20)を挿入する。そして、プローブを食品サンプルに挿入する際にプローブに生じる振動の変位、速度及び加速度のうちいずれか一つの物理量を振動情報として振動情報検出手段(例えば、加速度ピックアップ30)を用いて検出する(ステップS1)。
【0033】
周波数帯域分割工程では、振動情報を帯域通過フィルタとしてのフィルターモジュール(例えば、
図2に示すフィルターモジュール51)を用いて複数の周波数帯域各々における振動情報に分割する(ステップS2)。周波数帯域の区分は後述のようにオクターブ毎、或いは半オクターブ毎に行うとよい。
【0034】
食感指標演算工程では、各周波数帯域iにおける前記振動情報と、対応する前記周波数帯域の中心周波数とから、周波数帯域毎の単位時間当たりの振動エネルギーに基づく食感指標値をコンピュータ(例えば、
図2に示す演算装置50)を用いて算出する(ステップS3)。ここで、中心周波数とは、所定の周波数帯域iにおける最小周波数と最大周波数との積の平方根である。
【0035】
エネルギーは速度の自乗に比例する。このことから、振動情報検出工程において、振動情報として振動の変位を検出した場合には、上記食感指標演算工程において、各周波数帯域において振動情報と中心周波数の積が求められ、その積の自乗の総和を単位時間で除したものが周波数帯域毎の単位時間当たりの振動エネルギーとして求められる。また、振動情報検出工程において、振動情報として振動の速度を検出した場合には、上記食感指標演算工程において、検出した振動情報を自乗した値の総和を単位時間で除したものが周波数帯域毎の単位時間当たりの振動エネルギーとして求められる。また、振動情報検出工程において、振動情報として振動の加速度を検出した場合には、上記食感指標演算工程において、振動情報を中心周波数で除した値の自乗の総和を単位時間で除したものが周波数帯域毎の単位時間当たりの振動エネルギーとして求められる。
【0036】
本実施の形態に係る食感指標の測定方法は、プローブを食品サンプルに挿入する際に、プローブに生じる振動の変位、速度、或いは加速度のうちいずれか一つの物理量を振動検出手段によって検出して振動情報を取得する点に特徴を有する。食感を振動エネルギーに変換する場合、振動検出手段によって検出される振動に係る物理量が、振動の変位、速度、或いは加速度のうちいずれか一つに相当するものとして安定していなければ、正確な振動エネルギーを測定することは困難である。本実施の形態に係る食感指標の測定方法によれば、振動検出手段(例えば、
図2に示す加速度ピックアップ30)によってプローブに生じる振動の変位等、検出する物理量は、例えば加速度に相当する量として安定しているため、食品を口腔内で咀嚼する際の破壊エネルギーを正確に測定できる。
【0037】
また、食感指標演算工程では、周波数帯域毎の単位時間当たりの振動エネルギーに基づく食感指標値に、低周波数領域から高周波数領域にかけて徐々に大きくなる補正係数を乗算するようにしてもよい。これによって、一般的に減衰しやすい傾向にある高周波数領域の振動エネルギーに基づく食感指標を正当に評価することが可能となる。
【0038】
さらに、使用する振動情報検出手段の違いによって生じる食感指標値の差を較正しようとするには、次のような操作を行えばよい。ここでは、振動情報検出手段として加速度ピックアップを例にとり説明する。まず、使用する加速度ピックアップを強制振動させ、加速度ピックアップに生じた振動による変位をレーザードップラーによって検出し、検出された変位から加速度ピックアップ本体の速度及び加速度を求める。同時にこの強制振動によって加速度ピックアップから出力される出力信号値(電圧値)を測定する。レーザードップラーによって検出した変位に基づく加速度と、加速度ピックアップによる出力電圧値をグラフにプロットすると、線形の関係が得られる。この線形のグラフから、出力信号値(電圧値)を加速度に変換する較正係数を求めておき、実際の測定に際しては加速度ピックアップによって変換された出力信号値に所定の較正係数を乗算する。このような較正係数を用いれば、得られる食感指標は普遍的なものと見なせる。較正係数の値が周波数によって異なる場合は、中心周波数毎、すなわち周波数帯域毎に異なる較正係数を乗算してもよい。
【0039】
本実施の形態に係る食感指標の測定方法は、一例として、
図2に示す食感指標の測定装置を用いることにより実現され得る。なお、以下では、振動情報検出手段として加速度ピックアップ30を用い、プローブ20に生じる振動情報として、加速度を検出して食感指標を得る形態について具体的に説明する。
【0040】
図2に示すように、食感指標測定装置1は、プランジャ10、シリンジ11、ポンプ12、プローブ20、加速度ピックアップ30、サンプル台40及び演算装置50を備える。
【0041】
ポンプ12は内部に油等の液体を備える所謂油圧ポンプである。ポンプ12は液体を輸送する管を介してシリンジ11と接続している。ポンプ12はシリンジ11に液体を輸送するため、液体の圧力を変動させる装置を備える。なお、ポンプ12として油圧ポンプを用いているのは、プローブ20を食品サンプル41に挿入する際に不要な振動を与えることがないため、極めて正確な振動信号を検出できるからである。
【0042】
シリンジ11は内部にプランジャ10を保持する。シリンジ11の内部空間のうち、プランジャ10の上部はすべて液体で充填されている。
【0043】
プランジャ10はシリンジ11の内壁に接触するように挿入されており、シリンジ11内部の液体の量に応じて上下方向の運動が可能である。
【0044】
プローブ20は加速度ピックアップ30の下部に装備される。プローブ20の一端は、この部分をもって食品に挿入される。プローブ20の一端は、食品との接触によって適切な振動が発生するような形状を有するように設計されている。プローブ20の形状は具体的には、円柱、角柱、それらの先端が鋭角を有するような形状のものでよい。また、プローブ20の形状は、円錐であってもよい。また、プローブ20は、前記形状に加えて溝を備えるようにしてもよい。プローブ20の好適な例としては、マイナスドライバー状及び溝を備えたマイナスドライバー状が考えられる。
【0045】
加速度ピックアップ30は、プランジャ10とプローブ20との間に設置される。加速度ピックアップ30は、感知した振動エネルギーを加速度に相当する電気信号に変換して出力する素子である。加速度ピックアップ30はプローブ20と直接接触しているため、プローブ20に生じる振動が加速度ピックアップ30に直接伝播する。加速度ピックアップ30は、ケーブルを介して演算装置50と接続されている。加速度ピックアップ30は、出力電気信号(加速度に相当する電圧信号)をケーブルを介して演算装置50に送信する。
【0046】
サンプル台40は、測定する食品サンプル41が載置される載置台である。サンプル台40は、プローブ20の下方に設置される。
【0047】
演算装置50は、フィルターモジュール51と、演算部52とを備える。フィルターモジュール51は、入力電気信号(加速度ピックアップ30の出力電気信号)を複数の周波数帯域各々の成分を有する電気信号に分割する帯域通過フィルタである。演算部52は、周波数帯域毎の電気信号に対して以下の項目で詳述する演算処理を施す。演算装置50は、測定された電圧値や演算の結果等を表示し、それに対するさらなる操作・演算処理・編集等を可能にするインターフェースをさらに備える。
【0048】
ここで、本実施の形態に係る食感指標の測定方法に用いる食感指標測定装置1は、振動検出手段において加速度、速度、又は変位のいずれか一つの物理量を検出するようにしたことに特徴を有する。
【0049】
従来、この種の振動検出手段としては、加速度ピックアップ30ではなく、圧電素子が用いられてきた。
図3は、圧電素子を振動させた際の振動数(周波数)と検出電圧との関係を示す。
【0050】
図3に示すように、圧電素子は、その振動数が、2Hzから約10Hzまでの場合には、変位に比例した電圧を出力している。その振動数が約10Hz以上約100Hz以下の場合には、速度に比例した電圧を出力している。また、圧電素子は、その振動数が400Hz以上である場合には、加速度に比例した電圧を出力している。また、圧電素子は、その振動数が100〜400Hzである場合には、速度にも加速度にも比例しない電圧を出力している。即ち、圧電素子では、振動周波数に応じて、検出する物理量と出力電圧との対応関係が一定でないことがわかる。
【0051】
検出する物理量と振動検出手段の出力電圧との関係が一定でなければ、振動検出手段の出力電圧に基づいて、正確な振動エネルギーを測定することが困難になる。圧電素子を用いた場合では、上記のように出力電圧と検出する物理量との関係が一定しておらず、振動検出手段として用いるのは適当ではない。
【0052】
一方、
図4は、加速度ピックアップ(加速度センサ)30を振動させた際の振動数(周波数)と、加速度ピックアップ30で検出される電圧との関係を示す。
【0053】
図4に示すように、加速度ピックアップ30が出力する電圧の位相は、周波数によらず、加速度の位相に一致している。このことから、加速度ピックアップ30は、常に、加速度に比例した電圧を出力することがわかる。
【0054】
速度に比例した電圧が得られる場合、その電圧値を自乗することにより電圧を振動エネルギーに変換できることが知られている。また、加速度に比例した電圧が得られる場合、その電圧を、注目する中心周波数で除した値を自乗すれば電圧を振動エネルギーに変換できることが知られている。したがって、振動検出手段として加速度に応じた電圧を出力する加速度ピックアップ30を用いれば、振動周波数に関わらず、常に、振動が生じる際の加速度を検出する物理量とし、正確な振動エネルギーを測定することが可能となる。
【0055】
加速度ピックアップ30には、振り子が接続された圧電素子から出力される電圧信号の位相を加速度の位相に調整する調整回路(不図示)が設けられている。この調整回路により、加速度ピックアップ30から出力される電圧信号は、所定の周波数帯域で、常に加速度に相当する信号となる。なお、調整回路が、圧電素子から出力される電圧信号の位相を変位の位相に調整した場合には、出力される電圧信号は、変位に相当する信号となる。この場合には、振動情報検出手段は、変位ピックアップとなる。また、調整回路が、圧電素子から出力される電圧信号の位相を速度の位相に調整した場合には、出力される電圧信号は、速度に相当する信号となる。この場合には、振動情報検出手段は、速度ピックアップとなる。
【0056】
続いて、上述した食感指標測定装置1を用いた食感指標値の測定手順について説明する。
【0057】
まず、測定前にサンプル台40に食品サンプル41を設置する。このとき、プローブ20が、食品サンプル41に接触しないようにする。
【0058】
続いて、不図示の測定装置1のスイッチを入れると、まず、ポンプ12の液圧が上昇する。液圧の上昇に伴って、ポンプ12内の液体がシリンジ11に輸送される。シリンジ11内の液体の増加に伴って、プランジャ10が下降する。プランジャ10の下降に伴い、プローブ20が食品サンプル41に向けて下降する。
【0059】
そして、プローブ20の先端が食品サンプル41に到達し、更に、プローブ20が下降することにより、食品サンプル41に挿入される。プローブ20からの圧力によって食品サンプル41が破砕する。
【0060】
プローブ20が食品サンプル41に挿入される際、プローブ12が食品サンプル41の細胞や繊維などと接触し、或いはそれらを破壊することによって、プローブ20に振動が生じる。ここで発生した振動は、プローブ20から加速度ピックアップ30に伝播する。加速度ピックアップ30は周波数全域に渡って、振動の加速度を検出し、検出した加速度に応じた電気信号(電圧値)を出力する。出力電圧はケーブルを経由して演算装置50に送信される。
【0061】
加速度ピックアップ30から出力され演算装置50に入力された電圧信号は、フィルターモジュール51に入力される。フィルターモジュール51は、入力された電圧信号を、所定の周波数帯域毎の成分に区分する。
【0062】
なお、演算装置50において解析の対象とする周波数帯域は任意である。ここで、人間が聴覚で感知できる周波数の上限を考慮すると、解析の対象となる周波数帯域は、好適な例においては0〜25600Hzの範囲である。電圧信号のサンプリング速度は、解析の対象となる周波数の上限値の2倍以上の任意の値を用いる。これは、ナイキストの原理により、解析の対象とする周波数の2倍以上の周波数でサンプリングする必要があるためである。すなわち、25600Hzの情報を得るためには、51200Hz以上のサンプリング速度で測定する必要がある。
【0063】
また、0〜25600Hzの範囲の周波数を複数の周波数帯域に区分する場合、フィルターモジュール51としてオクターブフィルターを用いると、周波数帯域は以下の表に示すように区分される。なお、オクターブ単位で行うのは、人の知覚が高周波における増加分に対して低周波よりも鈍感になって捉えられにくくなる傾向があることに基づく。
【0065】
また、フィルターモジュール51として半オクターブフィルターを用いると、周波数帯域は以下の表に示すように区分される。半オクターブフィルターを用いれば、オクターブフィルタを用いるよりも、フィルタリング処理を、より高い分解能で行うことができる。
【0067】
演算部52は、上記のように区分された各周波数帯域の電気信号(電圧値)に基づいて、周波数帯域i毎の食感指標値を算出する。本実施形態では、加速度ピックアップ30を用いて、生じた振動の加速度に応じた電気信号が得られるので、その電気信号に基づいて振動エネルギーを算出し、結果的に振動エネルギーに基づく食感指標値を算出することができる。
【0068】
上記のような思想から帰結できる、演算部52における演算処理に使用する計算式を以下に示す。演算部52は、前述の方法で区分された電気信号(電圧値)に基づいて、式1を用いた演算を行い、食感指標値を算出する。
【数9】
【0069】
上記式1において、T
iは所定の周波数帯域i、即ち、区分した周波数帯域i毎の食感指標値である。αは、任意の定数であり、例えば10である。V
i,jは所定の周波数帯域i及び所定のサンプリングjにおける電圧値である。tは秒単位の測定時間である。f
iは所定の周波数帯域iにおける中心周波数である。中心周波数f
iは、所定の周波数帯域における最小周波数と最大周波数との積の平方根である。解析対象である全体の周波数帯域は、0〜25600Hzである。上述の表に示すように、フィルターモジュール51としてオクターブフィルターを用いた場合には、10個の食感指標値T
iが算出され、フィルターモジュール51として半オクターブフィルターを用いた場合には、20個の食感指標値T
iが算出される。
【0070】
式1では、食感指標値T
iは、電圧値V
i,jの二乗を測定時間にわたって積算し、中心周波数の二乗及び測定時間で除することにより算出される。よって、食感指標値T
iは単位時間あたりのプローブ20の受ける振動エネルギーの大きさ[m
2/s
2]に相当する。そして、レーザードップラーを用いた実験から、加速度ピックアップ30が出力する電圧値はいずれの周波数領域においても加速度に依存することが明らかである。このことから、式1では、食感指標値T
iは、プローブ20を食品サンプル41に挿入した際に生じる振動エネルギーに対応した値の対数値となっている。
【0071】
演算装置50は、周波数帯域毎に算出された食感指標値T
iを、グラフ表示する。このとき、例えば
図5に示すように、周波数帯域毎に算出された食感指標値T
iを、ホワイトノイズ、ピンクノイズ、及び、ブラウンノイズとともにプロットしてもよい。ホワイトノイズ、ピンクノイズ、及び、ブラウンノイズの区割りを導入することで、測定に供した食品サンプル41の食感が、食する人にとってどのように感じられるかを評価するのが容易となる。
【0072】
ここで、ホワイトノイズとは、あらゆる周波数において信号エネルギーの強度が一定であるノイズである。これに対して、ピンクノイズとは信号エネルギーの強度が周波数に反比例するノイズである。また、ブラウンノイズとは、信号エネルギーの強度が周波数の二乗に反比例するノイズである。
【0073】
音響工学の分野においては、ホワイトノイズ、ピンクノイズ、ブラウンノイズの分類が種々の解析に用いられており、耳に心地よいとされる音響に対してノイズ解析を行った結果、ピンクノイズが現れるとの報告がこれまでに多くなされている。一例としては、滝や川のせせらぎはピンクノイズに合致していることから、人はこれを心地よいと感じるものと考えられている。これに対して、一般的にホワイトノイズはいわゆる耳に不快な音響、ブラウンノイズはいわゆる物足りない音響を与えるとされる。
【0074】
後述の実施例にて示すように、食品サンプル41の食感指標値を、ホワイトノイズ、ピンクノイズ、及び、ブラウンノイズとともにプロットしてグラフ表示することで、その食感指標値がホワイトノイズ、ピンクノイズ、及び、ブラウンノイズのいずれに近いのかを判断することができる。例えば、測定した食品サンプル41の食感指標値がピンクノイズに近ければ、その食品サンプル41を食した際に心地よい食感であると判断することができる。また、ホワイトノイズに近ければ堅い食感、ブラウンノイズに近ければ物足らない食感である等の判断が可能になる。
【0075】
また、ピンクノイズを中心に考え、評価を行ないやすくしようとすれば、演算部52は、式1に代わり、式2を用いて演算処理を行ってもよい。
【数10】
【0076】
式2において、f
1は区分した中で最も低い周波数帯域における中心周波数である。式2における他の項目については式1と同様であるため、説明を省略する。
【0077】
式2によって算出される食感指標値PinkT
iは、ピンクノイズとの差としての食感指標値である。また、差をとる際に基準とするピンクノイズはf
1に対する絶対値である。ピンクノイズを基準にして食感指標値PinkT
iを算出することによって、いわゆる耳に心地よい音響からどのくらいずれているかを数値化できる。
【0078】
そして、後述の実施例に示すように、算出した食感指標値PinkT
iを周波数帯域毎に、ホワイトノイズ、ピンクノイズ、及び、ブラウンノイズとともにプロットすることで、得られた食品サンプル41の食感指標値とピンクノイズとの相異を一見して把握しやすくなる。このため、どの周波数帯域でピンクノイズに合致し、或いは、どの周波数帯域でどの程度ピンクノイズから外れているか等を一見して判断することができる。
【0079】
また、上述のようにして得られる食感指標値は振動エネルギーの大きさに基づく絶対値であるため、異なる装置同士の食感を比較するには、演算部52は、式1及び式2に代わり、式3を用いて演算処理を行うとよい。
【数11】
【0080】
式3において、c(f
i)は所定の周波数帯域毎に定められる較正係数である。式3における他の項目については式1及び式2と同様であるため、説明を省略する。
【0081】
ここで得られる食感指標値は絶対値であり、異なる装置同士の得られた絶対値を後述の実施例のようにプロットすることにより、食感の相対評価をより行ないやすくなる。したがって、異なる装置を用いた測定により、種々の食品について、どの周波数帯域で食感指標値が合致するのか、或いは、異なるのかが一見して容易に判断することができ、種々の食品の食感における特徴点を明確に把握できる。
【0082】
前記の方法で得られた食感指標値は1食品につきフィルターモジュール51の数だけ算出され、周波数帯域毎に食品ごとに異なった食感指標値を与える。そこで、多変数からなる数値群に対する解析手段の一つである主成分分析を適用することによって、食品の食感をより簡潔に表現できる新たな食感指標値の計算手段が与えられる。以下の項目では、主成分分析を用いた食感指標値の計算方法について述べる。
【0083】
まず、サンプル食品群を適切に選択する。選択したサンプル食品群の各々に対して、前記の食感指標測定装置1を用いて食感指標値の測定を行う。ただし、演算部52は、食感指標の算出式として式5を用い、PinkT
kを求める。これを仮食感指標値とする。
【数12】
【0084】
M個の食品から成るサンプル食品群に対して測定を行えば、フィルターモジュール51の数がK個であるとき、M×K個の仮食感指標値が得られる。演算部52は、これらM×K個のデータに対して、主成分分析を施して、固有ベクトルを得る。これらの関係を以下の表に示す。
【0086】
表3におけるx
mkは、m(m=1〜M)番目の食品サンプルにおけるk(k=1〜K)番目のフィルターの仮食感指標値である。また、a
pkはp番目の第p主成分固有ベクトルのk番目の要素である。得られた固有ベクトルの数をPとする。第1主成分〜第P主成分は、それぞれ相関のない変数であり、例えば、食物の生産地の緯度や、調理温度等がそれに当たる。上記の操作は食品の本測定の前にあらかじめ行われ、得られた固有ベクトルから成る係数テーブル(a
pk)は演算装置50に保存される。
【0087】
次に、新たに本測定により測定された食品の食感指標値TPC
pを算出する方法を述べる。新たに食品を測定し、上述した式5を用いて算出した仮食感指標値PinkT
kに対して、式4を用いて、表3に掲げる主成分固有ベクトルとの内積をとる(式4)。
【数13】
【0088】
このようにして、P個の固有ベクトルからP個の新たな食感指標値TPC
pが算出できる。この方法は主成分分析を用いていることから、得られたP個の食感指標値TPC
pから重要性のより高い食感指標値を選択し、食感指標値を代表させることも可能である。また、各主成分において、特徴的な係数a
p,kをある程度絞りこめるような場合には、特定のフィルターkに対応する係数a
p,kのみ仮食感指標値PinkT
kとの内積をとるようにしてもよい。このようにすれば、式1乃至式3のいずれかを用いて算出した食感指標値に比べて、食感を表現するのに必要な情報の量を少なくすることができる。このことから、上記式4を用いて、食感指標値を算出すれば、食品の食感をより簡潔に表現できるといえる。
【0089】
上記では、振動情報検出手段として加速度ピックアップ30を用い、加速度ピックアップ30がプローブ20に生じる振動の加速度を検出する形態について説明したが、検出するのは振動の加速度に限定されない。加速度を積分すると速度、また、速度を積分すると変位にそれぞれ変換できる関係にあることから、振動情報として、加速度の他、プローブ20に生じる速度或いは変位を検出するようにしても同様に食感指標値を得ることができる。振動情報をエネルギーに変換する場合、振動情報検出手段が速度に比例した電圧信号を出力するならばその電圧値を自乗することにより変換でき、変位に比例した電圧信号を出力するならばその電圧と中心周波数との積の自乗をとることでエネルギーに変換できる。加速度ピックアップ30のほか、プローブ20に生じる速度或いは変位を検出可能な手段としては、一例としてレーザードップラーが挙げられる。
【0090】
以上詳細に説明したように、本実施形態によれば、プローブ20を食品サンプル41に挿入する際に、加速度ピックアップ30を用いて、プローブ20に生じる振動の物理量として、加速度を、周波数によらない振動情報として安定して検出する。このため、複数の周波数帯域において、この振動に基づいて食品を口腔内で咀嚼する際の破壊エネルギーを正確に算出することができる。この結果、食感をより正確に定量化することができる。
【0091】
また、本実施形態によれば、常に、物理量として加速度に相当する電圧信号を出力する加速度ピックアップ30を用いているので、チーズ、食パン、ゼリー、寒天などの、咀嚼するときに音が出ない食物の食感も定量化することができる。
【実施例】
【0092】
ポテトチップスについて食感測定装置1を用い、食感指標の測定を行った。
【0093】
プローブ20として、マイナスドライバー形状(楔型)のものを使用した。
【0094】
フィルターモジュール51として、半オクターブフィルターを使用し、0〜25600Hzの範囲を解析の対象とした。
【0095】
ポテトチップス1枚をサンプル台に設置し、ポンプ12からシリンジ11に油を一定の速度で送り込み、プランジャ10を下降させてポテトチップを破砕した。
【0096】
演算装置50に相当するパーソナルコンピュータに出力される波形を観察し、測定後にプランジャ10が上昇する運動に相当するデータは測定値から取り除いた。
【0097】
演算装置50に相当するパーソナルコンピュータにおいて、演算部52が、式1を用いて演算を行う。この結果、周波数帯域毎の食感指標値が得られた。
【0098】
また、演算部52は、式2を用いて、周波数帯域毎の食感指標値を得た。
【0099】
なお、上記の測定は12回行われた。
【0100】
図5及び
図6に、式1を用いて得られた食感指標値、式2を用いて得られた食感指標値をそれぞれ示す。それぞれの図には、ホワイトノイズ(W)、ピンクノイズ(P)及びブラウンノイズ(B)を共にプロットしている。
【0101】
図5及び
図6を見ると、低周波数領域(100〜560Hz)、800〜1120Hz、4480〜6400Hz、8920〜12800Hzの周波数帯域では、ピンクノイズに近い食感指標値がみられることがわかる。しかし、560〜800Hz、1600〜3200Hz、6400〜8920Hzでは、ホワイトノイズにより近い食感指標値がみられる。これらの食感指標がポテトチップスのパリパリした食感を反映している。
【0102】
続いて、スイカについて上記と同様に食感指標の測定を行った。その結果を
図7及び
図8に示す。
図7及び
図8は、それぞれ式1を用いて得られた食感指標値、式2を用いて得られた食感指標値である。
【0103】
図7及び
図8を見ると、100〜200Hzまではピンクノイズ的食感指標がみられるが、200Hz以上ではブラウンノイズに近い食感指標がみられ、4480Hzから再びピンクノイズ的食感指標がみられる。これらの食感指標が、スイカのシャリシャリした食感の特徴を反映している。
【0104】
図9に、式2を用いて得られたポテトチップス及びスイカの食感指標値を示す。食感指標値の絶対値としては、ポテトチップスの方が高い。これは、ポテトチップスの食感における噛みごたえの強さを表す。
【0105】
図10は、式3を用いて得られたポテトチップス及びスイカの食感指標値を示す。スイカでは、280〜8920Hzまでは食感指標値としての寄与が少ないが、8920〜12800Hzの食感指標値が飛び抜けて特徴的であることが分かる。また、ポテトチップスではスイカに比べて特徴的な周波数帯域のピークが明瞭に判別できる。このように、式3を用いることで、異なる食品の特徴を同じグラフ上で比較することができる。
【0106】
本実施の形態に係る食感指標測定装置1によって測定された食品の食感指標値は、ポテトチップスとスイカのように全く質の異なる食品の食感の違いを明確に数値化するだけでなく、同種の食品における軽微な食感の差異をも反映する。同種の食品における次のような食感指標の測定を行い、食感におけるより軽微な差異を検出した。
【0107】
調理の際に異なった温度によって揚げられた3種類のポテトチップスについて、上記と同様に食感指標値の測定を行った。
【0108】
図11は、高温、通常温度、低温の3種類の異なる温度で揚げられたポテトチップスについての食感指標値を示す。
図11から明らかなように、ポテトチップスは揚げる際の温度によって異なる食感を呈する。具体的には、食感指標値の値は、高温で揚げられたポテトチップス(Wedge−High)、中温で揚げられたポテトチップス(Wedge−Millde)、低温で揚げられたポテトチップス(Wedge−Low)の順に高くなっている。ポテトチップスを揚げる温度が低いほど堅い食感を呈することを、この結果は反映している。これらの間の差異は、ポテトチップスとスイカとの食感指標値の差異とは程度が異なり軽微であるが、このような軽微な差異であっても、本実施の形態に係る食感指標の測定装置によって明確に数値化されることが見て取れる。このような差異の数値化は、食品の製品設計における望ましい食感の指向を決定したり、どのように調理するか等、それを具現化したりする際に有用である。
【0109】
本発明は、本発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施の形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施の形態は、本発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。すなわち、本発明の範囲、実施の形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。そして、特許請求の範囲内及びそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、本発明の範囲内とみなされる。
【0110】
本出願は、2010年8月31日に出願された、日本国特許出願2010−195019号に基づく。本明細書中に日本国特許出願2010−195019号の明細書、特許請求の範囲、図面全体を参照として取り込むものとする。