(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5854763
(24)【登録日】2015年12月18日
(45)【発行日】2016年2月9日
(54)【発明の名称】バイトホイール
(51)【国際特許分類】
B23D 13/00 20060101AFI20160120BHJP
【FI】
B23D13/00
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2011-240418(P2011-240418)
(22)【出願日】2011年11月1日
(65)【公開番号】特開2013-94903(P2013-94903A)
(43)【公開日】2013年5月20日
【審査請求日】2014年10月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100142804
【弁理士】
【氏名又は名称】大上 寛
(72)【発明者】
【氏名】松田 智人
【審査官】
五十嵐 康弘
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−142006(JP,A)
【文献】
特開2006−245439(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3029238(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23D 13/00−13/06
B23B 27/00−29/34
B23D 5/00− 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一定方向に回転して被加工物を旋回切削するバイトホイールであって、
外周部分に装着用切欠きを有するホイール基台と、
該装着用切欠きの形状に対応する形状と挿入穴を有し、該装着用切欠き中に着脱可能に装着されたバイトユニット保持ブロックと、
バイトシャンクと、該バイトシャンクの下端に配設された一方向に加工可能な切削刃とを有し、該バイトユニット保持ブロックの該挿入穴中に着脱可能に固定されたバイトユニットと、を具備し、
該バイトユニット保持ブロックは、該切削刃の加工可能方向が回転方向に向くように該バイトユニットを該バイトユニット保持ブロックに装着するための装着方向表示マークを有することを特徴とするバイトホイール。
【請求項2】
前記バイトシャンクは直方体形状をしており、前記切削刃は該バイトシャンクの下端部の一面に固着されている請求項1記載のバイトホイール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工物を切削するバイトホイールに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの軽薄短小化を実現するための技術には様々なものがある。一例として、半導体ウエーハに形成されたデバイス表面に10〜100μm程度の高さのバンプと呼ばれる金属突起物を複数形成し、これらのバンプを配線基板に形成された電極に相対させて直接接合するフリップチップボンディングと呼ばれる実装技術が実用化されている。
【0003】
半導体ウエーハのデバイス表面に形成されるバンプは、メッキやスタッドバンプといった方法により形成される。このため個々のバンプの高さは不均一であり、そのままでは複数のバンプを配線基板の電極に全て一様に接合するのは困難である。
【0004】
また、高密度配線を実現するために、バンプと配線基板との間に異方性導電性フィルム(ACF)を挟んで接合する集積回路実装技術がある。この実装技術の場合には、バンプの高さが不足すると接合不良を招くため、一定以上のバンプ高さが必要となる。
【0005】
そこで、半導体ウエーハの表面に形成された複数のバンプを所望の高さへ切削することが望まれている。バンプを所望の高さへ切削する方法として、バイトホイールが装着されたバイト切削装置を用いてバンプを削り取る方法が例えば特開2000−173954号公報で提案されている。
【0006】
バイトホイールは、ホイール基台と、ホイール基台に配設された切削刃を含むバイトユニットとを備え、バイトホイールを回転させつつ、切削刃を被加工物へ当接した状態でバイトホイールと被加工物とを摺動させることにより切削を遂行する。
【0007】
バイト切削装置では、通常スピンドルは時計回り方向に回転し、スピンドルの下端にマウントを介してバイトユニットが着脱可能に装着されたバイトホイールが取り付けられている。バイトユニットの切削刃は表面から裏面に至る下方から上方に傾斜した傾斜面を有している。
【0008】
水平面と傾斜面とがなす角を逃げ角と称し、被加工物の種類に応じて適切な逃げ角を設定している。バイト切削装置では、切削刃表面が回転方向側(加工方向先頭側)を向くようにバイトユニットをホイール基台に装着して切削する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2000−173954号公報
【特許文献2】特開2009−172723号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
バイトユニットの切削刃が磨耗すると、作業者が磨耗したバイトユニットをホイール基台から取り外し、新たなバイトユニットをホイール基台に装着するが、作業者が不注意によりバイトユニットの向きを間違えてホイール基台に装着してしまうことがある。このように間違った向きにバイトユニットを装着して切削加工を遂行すると、被加工物や切削刃を損傷させてしまう恐れがある。
【0011】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、作業者がバイトユニットのホイール基台に対する装着の向きを間違えることを防止し、装着の向きを間違えて被加工物や切削刃を損傷させてしまう恐れを低減可能なバイトホイールを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によると、一定方向に回転して被加工物を
旋回切削するバイトホイールであって、
外周部分に装着用切欠きを有するホイール基台と、
該装着用切欠きの形状に対応する形状と挿入穴を有し、該装着用切欠き中に着脱可能に装着されたバイトユニット保持ブロックと、バイトシャンクと、該バイトシャンクの下端に配設された一方向に加工可能な切削刃とを有し、
該バイトユニット保持ブロックの該挿入穴中に着脱可能に固定されたバイトユニットと
、を具備し、
該バイトユニット保持ブロックは、該切削刃の加工可能方向が回転方向に向くように該バイトユニットを
該バイトユニット保持ブロックに装着するための装着方
向表示マークを有することを特徴とするバイトホイールが提供される。
【0013】
好ましくは、
前記バイトシャンクは直方体形状をしており、前記切削刃は該バイトシャンクの下端部の一面に固着されている。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、バイトホイールのホイール基台はバイトユニットの装着の向きを表記した装着方向表示マークを有しているため、作業者がバイトユニットの装着の向きを間違えて被加工物や切削刃を損傷させてしまう恐れを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】バイト切削装置の全体構成を示す斜視図である。
【
図2】本発明実施形態に係るバイトホイールの底面側斜視図である。
【
図3】バイトユニット保持ブロックにバイトユニットを装着する様子を示す分解斜視図である。
【
図4】実施形態に係るバイトユニットの側面図である。
【
図5】バイトホイールでの被加工物の切削加工を説明する側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。
図1を参照すると、本発明実施形態に係るバイトホイールが装着されたバイト切削装置2の斜視図が示されている。4はバイト切削装置2のベース(ハウジング)であり、ベース4の後方にはコラム6が立設されている。コラム6には、上下方向に伸びる一対のガイドレール(一本のみ図示)8が固定されている。
【0017】
この一対のガイドレール8に沿ってバイト切削ユニット10が上下方向に移動可能に装着されている。バイト切削ユニット10は、そのハウジング20が一対のガイドレール8に沿って上下方向に移動する移動基台12に取り付けられている。
【0018】
バイト切削ユニット10は、ハウジング20と、ハウジング20中に回転可能に収容されたスピンドル22(
図4参照)と、スピンドル22の先端に固定されたマウント24と、マウント24に着脱可能に装着されたバイトホイール25とを含んでいる。バイトホイール25にはバイトユニット26が着脱可能に取り付けられている。
【0019】
バイト切削ユニット10は、バイト切削ユニット10を一対の案内レール8に沿って上下方向に移動するボールねじ14とパルスモータ16とから構成されるバイト切削ユニット送り機構18を備えている。パルスモータ16をパルス駆動すると、ボールねじ14が回転し、移動基台12が上下方向に移動される。
【0020】
ベース4の中間部分にはチャックテーブル30を有するチャックテーブル機構28が配設されており、チャックテーブル機構28は図示しないチャックテーブル移動機構によりY軸方向に移動される。33は蛇腹であり、チャックテーブル機構28をカバーする。
【0021】
ベース4の前側部分には、第1のウエーハカセット32と、第2のウエーハカセット34と、ウエーハ搬送用ロボット36と、複数の位置決めピン40を有する位置決め機構38と、ウエーハ搬入機構(ローディングアーム)42と、ウエーハ搬出機構(アンローディングアーム)44と、スピンナ洗浄ユニット46が配設されている。
【0022】
また、ベース4の概略中央部には、チャックテーブル30を洗浄する洗浄水噴射ノズル48が設けられている。この洗浄水噴射ノズル48は、チャックテーブル30が装置手前側のウエーハ搬入・搬出領域に位置づけられた状態において、チャックテーブル30に向かって洗浄水を噴射する。
【0023】
図2を参照すると、本発明実施形態に係るバイトホイール25の底面側斜視図が示されている。50はバイトホイール25のホイール基台であり、円周方向に180度離間した位置に二つの装着用切欠き52,54が形成されている。
【0024】
装着用切欠き52には、バイトユニット保持ブロック56が二本のねじ58により着脱可能に装着されている。同様に、装着用切欠き54には、バランス錘保持ブロック60が着脱可能に装着されている。
【0025】
図3に最もよく示すように、バイトユニット64は、直方体のシャンク(バイトシャンク)66とシャンク66の下端(先端)に固着された切削刃68とから構成される。切削刃68は例えば単結晶ダイアモンドから構成される。
【0026】
バイトユニット保持ブロック56には、バイトユニット64のシャンク66挿入用の挿入穴62と、バイトユニット保持ブロック56をホイール基台50に装着するために、ねじ58が挿入される2個の貫通穴57と、挿入穴62中に挿入されたバイトユニット64のシャンク66をねじ70で固定する3個のねじ穴71が形成されている。
【0027】
バイトユニット保持ブロック56の裏面56aには、切削刃68の加工可能方向がバイトホイール25の回転方向(切削方向先頭方向)に向くように、バイトユニット64をホイール基台50に装着するための装着方向表示マーク72が形成されている。装着方向表示マーク72は、矢印に替えて例えば「FRONT」のように文字でも良い。
【0028】
図4を参照すると、バイトユニット64の拡大側面図が示されている。バイトユニット64の切削刃68はシャンク66の下端部の一面にロウ付け等により固定されている。切削刃68は、表面68aの最下端から上方に傾斜した表面68aから裏面68bに至る傾斜面69を有している。
【0029】
チャックテーブル30に保持された被加工物11の表面(水平面)と傾斜面69とのなす角θを逃げ角と称し、被加工物の種類に応じて逃げ角θは例えば5度〜45度の範囲内に設定される。
【0030】
矢印Aは加工可能方向であり、本実施形態のバイトホイール25では、シャンク66に固着した切削刃68が
図3に示した装着方向表示マーク72に向き合うようにシャンク66をバイトユニット保持部ロック56に取り付ける。
【0031】
図2を再び参照すると、バランス錘保持ブロック60にはバイトユニット64のシャンク66と同一形状及び同一重量のバランス錘(カウンターバランス)74が図示しないねじにより着脱可能に取り付けられている。切削刃68の重量は極僅かであるため、バランス錘74はバイトユニット64の重量と概略同一重量であり、カウンターバランスとして作用する。
【0032】
次に、
図5及び
図6を参照して、バイトホイール25による被加工物11の切削加工方法について説明する。スピンドル22を約2000rpmで矢印R方向に回転させつつ、バイトホイール送り機構18を駆動してバイトユニット64の切削刃68を被加工物11に所定深さ切り込ませ、チャックテーブル30を
図5で矢印Y方向に1mm/sの送り速度で移動させながら、被加工物11を旋削する。
【0033】
この旋削加工時には、チャックテーブル30は回転させずにY軸方向に加工送りする。
図6で符号76は切削刃68の回転軌道を示しており、切削刃68は回転方向側(切削方向先頭側)を向くようにシャンク66に固着されている。
【0034】
本実施形態のバイトホイール25では、バイトホイール25のホイール基台50がバイトユニット64の装着の向きを表記した装着方向表示マーク72を有するため、作業者がバイトユニット64の向きを間違えてバイトユニット64をホイール基台50に取り付けて被加工物及び/又は切削刃68を損傷させてしまう恐れを低減できる。
【符号の説明】
【0035】
2 バイト切削装置
10 バイト切削ユニット
25 バイトホイール
56 バイトユニット保持ブロック
64 バイトユニット
66 シャンク
68 切削刃
72 装着方向表示マーク
74 バランス錘