【実施例】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の形状制御方法および形状制御装置を詳細に説明する。
図4は、クラスタ圧延機の概略構成を示す。クラスタ圧延機1は、12段式(多段式)圧延機であり、上下各一対のワークロール11(11U,11D)と、ワークロール11より大径の中間ロール12と、中間ロール12よりさらに大径のバックアップロール13(13U,13D)を有している。ワークロール11は、2つのワークロール11U,11Dで被圧延物W(以下圧延材Wという。)を挟み込んで圧延するもので、ワークロール11の圧延荷重は、中間ロール12を介して上,下バックアップロール13U,13Dにより加えられる。下バックアップロール13Dのロール軸の下方には、圧下装置18(18a,18b)としての油圧圧下装置が配置され、この油圧圧下装置によって下バックアップロール13Dに圧延荷重が加えられる。油圧圧下装置には圧力制御回路としての油圧制御回路(図示せず)が接続され、その油圧制御回路から作動圧力としての作動油圧が供給される。一方、下バックアップロール13Dの圧延荷重を受ける上バックアップロール13Uには、複数の荷重検出セル(例えばロードセル(図示せず))からなる荷重計19が取付けられ圧延荷重を計測している。
【0016】
ワークロール11のロール径、ロール胴長は、圧延材Wに応じて適宜選択されるが、本実施例ではそれぞれ80mm,850mmである。
中間ロール12のロール径、ロール胴長、およびチョック間距離は、これも圧延材Wに応じて適宜選択されるが、本実施例ではそれぞれ150mm,950mm,2000mmである。中間ロール軸12Cの各両端部には、それぞれ上下一対の図面矢印で示した中間ロールベンダ41(便宜上、矢印で示す)が配設されており、この中間ロールベンダ41によって中間ロール軸12Cをワークである圧延材Wに対して凸になる方向(プラス方向)に曲げ(ベンディングし)、圧延材Wの全体形状を修正する。逆に凹なる方向(マイナス方向)の場合は逆に曲げる。中間ロールベンダ41にはそれぞれ油圧制御回路(図示せず)が接続されており、対応する油圧制御回路から供給される油圧によって中間ロール12を例えば前述したプラス側にベンディングさせるようになっている。油圧制御回路は、図示しない油圧源からの油圧を調圧して油圧圧下装置や中間ロールベンダ41に供給する電磁弁(例えば、特開平7-303910号公報等参照。)等の制御要素から構成されており、この制御要素は演算制御装置30から指令されるレベリング偏差、ベンダ偏差、バックアップロール偏差等の制御信号によって作動制御される。
【0017】
バックアップロール13は、軸方向にそって複数に分割されており、各分割ロール13Pの軸心線をそれぞれ個別に上,下方向に変位させてロールクラウンを形成し、圧延ライン中心に対称な2次曲線(A2)または4次曲線(A4)を作ることで形状の制御を行い圧延材Wの全体形状を修正する。本実施例では、上バックアップロール13Uが5分割、下バックアップロール13Dが6分割されており、大径ロールが360mm、小径ロールが220mmである。
【0018】
また、演算制御装置30は、システム全体のコントローラとしての機能を有している。すなわち、形状検出器14,15からの検出値をスイッチSWの切り替えにより取得して、目標値との比較を行う。そして、後に詳述する直交関数展開によって1次から6次の直交関数φ
1(i)〜φ
6(i)に形状検出器14,15で検出した形状信号を代入し、板形状を関数で近似して形状モード係数A1〜A6を求める。それによって得られたレベリング偏差1に基づいてレベリング制御部60でレベリング制御を行い、ベンダ偏差1および2に基づいてベンディング制御部40で中間ロールベンディング制御を行い、ベンダ偏差2およびバックアップロール偏差に基づいてクラウン制御部50でバックアップロールクラウン制御を行う。さらにバックアップロールクラウン制御中に形状モード係数A6が目標値から離れると、バックアップロールを圧下もしくは解放させて目標との差を小さくする制御を、クラウン制御部50で上記バックアップロールクラウン制御と併用して行う。
【0019】
図5に示すように、ディフレクタロール31は、一体回転する多数(実施例では30個)の小ロール31aを同軸上に配列して構成されており、各小ロール31aにはロールの外周に掛かる張力を計測する公知のセンサ31sが組み込まれている。各センサはそれぞれ演算制御装置30(前記
図4参照)の入力側に接続され、センサ出力を演算制御装置30に供給している。そして、これらのセンサによって形状検出器14,15(
図1参照)を構成している。各センサが検出する張力は、圧延材Wの長手方向の伸びに対応しており、形状検出器14,15の出力分布が伸び分布(板形状)と対応する。ディフレクタロール31および小ロール31aの各ロール幅は、圧延する圧延材Wの板幅に応じて異なるが、実施例ではそれぞれ780mm,26mm(30個:30チャンネル分)である。従って、実施例において一つの小ロール31aが測定する伸びは、圧延材Wの幅方向26mmの領域の伸びの平均値を検出していることになる。
実施例では、圧延材Wの幅方向を小ロール31aのロール幅に対応し、後述するようにバックアップロール13の配置に応じて、多数のゾーン(9ゾーン:Z1〜Z9)に分割して、それぞれのゾーンに属する領域の伸び率を小ロール31aに組み込まれたセンサがそれぞれ検出し、各ゾーンの伸びの平均値が求められる。
ディフレクタロール32(前記
図1参照)も、ディフレクタロール31と同様の構成をしており、ディフレクタロール32の形状検出器15を構成する各小ロールのセンサもそれぞれ演算制御装置30の入力側に接続され、センサ出力を演算制御装置30に供給している。
【0020】
演算制御装置30は、図示しない入出力装置、中央演算装置、ROMやRAMの記憶装置、操作者による指令信号を入力するための操作盤等から構成されている。操作盤からの圧延開始指令によって演算制御装置30は、ROMに記憶されている形状制御プログラムを実行し、このプログラムに基づいて、入出力装置を介して形状検出器14、15から圧延材Wの伸びデータを取り込み、中間ロールベンダ41による中間ロール12のベンディング量(ベンダ作動量)、出力手段としてのバックアップロール独立押出機構51による個々のバックアップロール13の押出し量をそれぞれ演算し、演算したベンディング量、バックアップロールの押出し量に応じた制御信号(ベンディング制御信号、クラウン制御信号)を、入出力装置を介して油圧制御回路に出力するように構成されている。そして、演算制御装置30の出力側にはモニタ装置が接続されており、上述した形状検出器14、15によって検出される圧延材の伸び分布等を表示させることができる。
【0021】
次に
図6を参照して分割バックアップロールクラウンによる圧延材Wの形状修正手順を説明する。
「始め」S1によって、圧延開始指令を操作盤から入力して、プログラムを実行させる。まず「形状検出器から得られた形状信号SI(SI1〜SIn)を検出」S2により、形状検出器によって各ロールの形状信号SIとしての伸び率を検出する。なお、nは自然数とする。そして「形状信号SInから各ゾーンの平均伸び率Ze(Ze1〜Zem)を演算」S3により、形状検出器の各ロールから得られた形状信号SInとしての伸び率から、各ゾーン区間内の伸びの平均である平均伸び率Zeを求める。なお、mは自然数とする。伸びの平均値を求めるために、どのセンサでゾーンを区切り、検出値を平均するかは特に限定しないが、実施例の場合では、平均伸び値Zem(m=1〜9)は、
図7に示す9個のゾーンZ1〜Z9に対応するセンサの検出値の平均値から求められる。なお、この平均値は、各センサの検出値の単純平均値であってもよいし、各センサの検出値に異なる重み係数を乗算した上で平均値を求めるようにしてもよい。各ゾーンの平均伸び率Zemは各々の分割ロール13Pに属しており、本実施例では、分割ロールTEDにはZe1とZe2、分割ロールTQDはZe3とZe4、分割ロールTCはZe5、分割ロールTQWはZe6とZe7、分割ロールTEWはZe8とZe9、分割ロールBEDにはZe1、分割ロールBQDはZe2とZe3、分割ロールBCDはZe4とZe5、分割ロールBCWはZe5とZe6、分割ロール
BCWはZe7とZe8、分割ロールBEWはZe9に対応している。次に、各分割ロール13Pに属している伸び率の和を計算する(分割ロールTEDの場合はZe1+Ze2)。なおこの伸び率の和は、単純和であっても良いし、異なる重み係数を乗算した上で和を求めても良い。
【0022】
そして
図6に示す「各ゾーンにおける目標伸び率と実績伸び率の偏差の分布を演算」S4によって、各ゾーンにおける目標伸び率(当該ゾーン内における目標伸び率の和)と実績伸び率(当該ゾーン内における実績伸び率の和)の偏差を求める。すなわち、各ゾーンの伸びΛiは、形状検出器の各点の伸びλj(i)の平均値(バックアップロールに対応して重み付けを行っても良い)として求める。
【0023】
次に「伸び率偏差が所定の誤差範囲内の値か判断」S5によって、伸び率和が所定の誤差範囲内の値であるかを判断する。その結果、伸び率和の偏差(伸び率偏差という。)が所定の誤差範囲内の値である場合は、その分割ロール13Pの押込み量を修正せず、「終了」S9により当該プログラムを終了する。伸び率偏差が所定の誤差範囲を超えて大きく(または小さく)なった場合は、「各ゾーンの伸び率偏差分布より、各分割ロールに対して必要な押込み量t1〜txを決定」S6によって、各分割ロールに必要な押込み量を求める。なお、xは自然数である。すなわち、ゾーンにおける伸び率の実績値と目標値の差ΔΛiに対して、上下のバックアップロールのゾーンに対応する分割ロールの操作量の重み付けを行い、上下の分割ロール13Pの操作量のΔQu(i)、ΔQd(i)を求める。同様にして他のゾーンの偏差から分割ロール13Pの操作量を求め、それぞれの操作量に対して重み付けを行い、各分割ロール13Pの出力を決定する。
【0024】
次に「制御指令より、各分割ロールのアクチュエータを操作」S7によって、出力手段としてのアクチュエータを操作してその分割ロール13Pの押込み量を減らす(増やす)ことで、所属しているゾーンの伸びの修正を行う。なお軸方向に近接している上,下バックアップロール13U,13Dは互いの動作に制限を設けており、伸びが生じたゾーンが重複している分割ロール13Pがそれぞれ無関係に動作することを防いでいる。この分割ロール13Pの押込み量の修正方法には種々の方法を取り得るが、和に応じて公知のPID制御(比例(Proportional)制御と積分(Integral)制御と微分(Differential)制御を組み合わせた制御)等によって押込み量をフィードバック制御するようにしてもよい。
【0025】
バックアップロール13の分割ロール13Pの修正が終わると次の「各ゾーンの伸び率偏差が一定値以下に収まっているか判断」S8に進み、伸び率偏差が動作終了条件範囲内に収まっているか判定する。条件を満たしていれば当該プログラムによる動作を終了させる「終了」S9に進み、満たしていなければ、S5以降を繰り返す。
【0026】
図8は、上述の形状制御により圧延材の形状が修正される典型例を示し、目標形状を超えて検出ロールのチャンネルNo.7〜11、19〜24で大きな伸びがある形状に対しては、ゾーン3、4とゾーン6、7で伸びが大きいことから、そのゾーンの属するTQEとTQDが開放されるように動作を行うことで、伸びが補正され、目標形状に修正されることになる。
【0027】
次に、
図9を参照してクーラント制御による圧延材Wの形状制御手順を説明する。圧延機の前後にはそれぞれ上下のバックアップロール13の各分割ロール13Pに向けてクーラント(あるいは潤滑剤)を噴射させるスプレー装置70が配設されており、各スプレー装置70は、分割ロール13Pの軸方向に、それぞれの分割ロール13Pに対応したノズル71を備えており、各ノズル71のクーラント噴射量が制御可能に構成されている。
そして、圧延材Wが矢印Aで示す方向に圧延される場合には、後方のスプレー装置70の各ノズル71から、噴射量が調整されたクーラントがそれぞれ噴射される。スプレー装置70の各ノズル71から分割ロール13Pに噴射されるクーラントの噴射量分布を調整することによっても、圧延される圧延材Wの幅方向の厚み分布、すなわち長手方向伸びの幅方向分布(形状)を制御することができる。上述の各ゾーンZ1〜Z9の伸び率和を演算し、ゾーンZ1〜Z9の伸びを修正するために必要な、上,下バックアップロール13U,13Dの各分割ロール13Pの収縮量を求める。
【0028】
図10は、上述のクーラント制御により、圧延材Wの形状が修正される典型例を示し、目標形状を超えて、検出ロールのチャンネルNo.17〜19の伸び率が局所的に伸びている形状に対しては、そのゾーンZ5,Z6が属している
BCWのクーラント流量を調整し、分割ロール
BCWの収縮を行うことで、伸びが補正され、目標形状に修正されることになる。
【0029】
次に
図11を参照して、直交関数展開の形状モード係数A6に基づく分割ロール13Pの制御方法を示す。まず特開平10−263650号公報等に開示された圧延材の平坦形状の直交関数展開による形状係数A1〜A4に応じた各機械的アクチュエータ操作を実施する。すなわち、圧延開始前に板中央からの距離をyとした目標形状F(y)を、板幅ごとに下記(A)式の4次のべき級数として任意のべき級数係数λ1〜λ4を設定しておき、「始め」S11によって、圧延開始指令を操作盤から入力する。これによって、このプログラムが実行される。そして「圧延条件に基づいて、目標の形状モード係数A01〜A06を演算」S12では、A01〜A04をべき級数係数λ1〜λ4と、検出ロールの有効チャンネル数ごとに設定されたパラメータp〜u、w、xより下記(B)〜(E)式より求める。なおA05、A06は固有値で規定しているが、同様の算出方法で求めても良い。
次に「形状検出器から得られた形状信号SI(SI1〜SIn)を検出」S13により、形状検出器によって各ロールの形状信号SIとしての伸び率を検出する。
【0030】
【数1】
【0031】
すなわち、下記(1)〜(4)式で示す1次から4次の直交関数φ
1(i)〜φ
4(i)のxに前記形状信号SIを代入し、板形状を関数で近似する。但し、b〜h,kは直交関数係数、iは形状検出器の番号(チャンネル番号)である。
【0032】
【数2】
【0033】
そして「形状モード係数A1〜A6を演算」S14により下記(5)式に従って、まず形状モード係数A1〜A4を演算する。但し、βiは形状信号SI(SI1〜SIn)(伸び率)、iは形状検出器の番号(チャンネル番号)である。
【0034】
【数3】
【0035】
次に、「(1)A1が目標A01になるように圧下レベリング制御 (2)A2が目標A02になるように対称ロールベンダ制御 (3)A3が目標A03になるように非対称ロールベンダ制御 (4)A4が目標A04になるようにバックアップロールクラウン制御」S15によって、以下のように制御を行う。
【0036】
(1)形状モード係数A1が目標の形状モード係数A01になるように、ワークロール11a,11b間のロールギャップを、アクチュエータとしての圧下装置18を駆動することで下バックアップロール13Dのレベリングを調整して制御する(圧下レベリング制御)。具体的には、圧下装置18を用いて、ワークロール11a,11b間のロールギャップを、その軸心線方向の一方側で広く他方側で狭くするように制御する。形状偏差ΔA1,ΔA3が共に正の値の場合は圧延材Wのオペレータサイドを、共に負の値の場合はドライブサイドを操作するようにアクチュエータ(図示せず)を駆動し、左右のロールギャップを調節する。したがって、この制御方法は圧延材Wに生じた片伸びの修正に有効である。
【0037】
(2)形状モード係数A2が目標の形状モード係数A02になるように、上下各1対の中間ロールの軸間隔をそれぞれ均等に変更するようにアクチュエータ(図示せず)を操作して、そのベンディングを制御する(対称ロールベンダ制御)。例えば、形状偏差ΔA2、ΔA4が共に正の値の場合は圧延材Wのエッジ部を延ばすように形状偏差ΔA2、ΔA4を制御量としてアクチュエータを操作し、軸間隔を調節する。また形状偏差ΔA2,ΔA4が負の値の場合は圧延材Wのセンタ部を延ばすように形状偏差ΔA2,ΔA4を制御量としてアクチュエータを操作し、軸間隔を調節する。この対称ロールベンダ制御は、圧延材Wが左右対称形ではあるが、中伸びまたは耳伸びを修正するのに有効である。
【0038】
(3)形状モード係数A3が目標の形状モード係数A03になるように、中間ロールの軸間隔を不均等に変更するようにアクチュエータ(図示せず)を操作して、そのベンディングを制御する(非対称ロールベンダ制御)。例えば、形状モード係数A1の補正値A1’を下記(6)式に従って演算し、これを制御量としてアクチュエータを操作し、軸間隔の調節を行う。但し、A1’は形状モード係数A1にエッジ部の補正を加えたもの、βiは板幅方向のiチャンネルの形状信号S(S1〜Sn)(伸び率)、iは形状検出器の番号(チャンネル番号)、gは両エッジから補正を加えるチャンネル数、αは補正を入れるチャンネルのゲインである。
【0039】
【数4】
【0040】
(4)形状モード係数A4が目標の形状モード係数A04になるように、アクチュエータ(図示せず)を操作してバックアップのロールクラウンを制御する(バックアップロールクラウン制御)。この制御は、軸心線方向の複数個所で分割されているバックアップロール13における、分割バックアップロール毎に、その軸心線位置を上,下方向に変更することで、ロールクラウンを調節する制御を行う。この制御方法は、形状モード係数A4と目標値A04との偏差ΔA4を制御量としてアクチュエータ(図示せず)を操作する。この制御方法は、圧延材Wが左右対称形を保っている状態では、中伸び,端伸び,クオータ伸びを修正するのに有効である。
【0041】
具体的には上記(5)式から求めた形状モード係数A1〜A4と各目標の形状モード係数A01〜A04との偏差ΔA1〜ΔA4を算出し、この偏差ΔA1〜ΔA4の正、負の符号及びその値に基づき前述した圧下レベレング制御、中間対称ロールベンダ制御、中間非対称ロールベンダ制御、バックアップロールクラウン制御のそれぞれの制御量を求め、それぞれのアクチュエータ(図示せず)を動作させる。
【0042】
その後、前述の(5)式を用いて6次成分A6まで演算を行う。すなわち、(6)式で示す6次の直交関数φ
6(i)のxに前記形状信号SIを代入し、板形状を関数で近似する。但し、g,h,k,mは直交関数係数、iは形状検出器の番号(チャンネル番号)である。
【0043】
【数5】
【0044】
次に「A6の値の大きさと設定板幅から、動作させる分割ロールとその動作量を演算」S16によって、形状モード係数A6と目標の形状モード係数A06との差値(以下A6偏差という。)および圧延材Wの板幅より、バックアップロールの分割ロール13Pの最適押込み量を求める。次に「演算値により分割ロールの動作を出力」S17により、バックアップロールの分割ロール13Pの押込み量の演算値に基づいて、分割ロール13Pを所定の量だけ押込む。例えば、プラスの押込み量では下方向に押込み、マイナスの押込み量ではその逆となる。この分割ロール13Pの押込み量の修正方法には種々の方法を取り得るが、A6偏差に応じて公知のPID制御等によって押込み量をフィードバック制御するようにしてもよい。バックアップロールの分割ロール13Pの修正が終わると次のステップに進む。そして「A6偏差が設定誤差範囲内に収束しているか判断」S18により、A6偏差が終了条件範囲内に収まっているか判定する。この判定で、終了条件の範囲内に収まっている場合には、圧延を終了する「終了」S19に進んで圧延を終了
する。一方、終了条件の範囲内に収まっていない場合には、A6偏差より再度押し込み量の演算値を求め、S16以降を繰り返す。
【0045】
図12に、A6偏差と設定板幅に基づくバックアップロールの分割ロール13Pの形状制御により、圧延材Wの形状が修正される典型例を示す。板幅720mm、A6=3×10E−5(>0)である形状に対して、バックアップロールの分割ロールTQD及び分割ロールTQWを開放し、かつ分割ロールBED及び分割ロールBEWを開放させることで、A6偏差を減少させる補正を行い、伸びを目標形状に修正させている。
【0046】
次に直交関数展開の形状モード係数A6に基づく分割ロール13Pのクーラント制御方法の好ましい一例を示す。上述のようにA6偏差の演算を行い、その後A6偏差と圧延材の幅よりA6偏差を修正するために必要な、上,下バックアップロール13U,13Dの各分割ロール13Pを収縮させる収縮量を求める。
図13(1)に示すように、検出されたA6偏差を冷却用クーラントのスプレー装置70の修正成分として対象となる分割バックアップロール13Pのクーラント流量の調整を行い、圧延材Wの形状が修正される典型例を示す。板幅625mm、A6=8×10
−5(>0)である形状に対して、分割ロールTED,TEWのスプレー装置の内側のノズル71a,71bおよび分割ロールTQD,TQWのスプレー装置の内側のノズル71c,71dによって冷却し、分割バックアップロール13Pの一部を収縮させることで、伸びを補正し、A6偏差が動作終了条件内に入るまでクーラント流量の調整を行うことによって、伸びを目標形状に修正することができる。
以上の本発明の制御は従来の制御に合わせて行っても良く、また一つ一つ個別に実施、あるいは数種類を任意に選択してもよい。