(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
メタクリル酸メチル単位を80質量%以上有するメタクリル樹脂(A)10〜99質量部、およびメタクリル酸メチル重合体ブロック(b1)10〜60質量%とアクリル酸エステル重合体ブロック(b2)90〜40質量%とを有し、屈折率が1.485〜1.495であるブロック共重合体(B)90〜1質量部を含む(ただし、(A)と(B)との合計が100質量部)メタクリル樹脂組成物であり、
アクリル酸エステル重合体ブロック(b2)が、アクリル酸アルキルエステル50〜90質量%と(メタ)アクリル酸芳香族エステル50〜10質量%との共重合体ブロックであるメタクリル樹脂組成物。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明で用いられるメタクリル樹脂(A)はメタクリル酸メチル単位を主として有する樹脂であり、メタクリル酸メチル単位を80質量%以上有している。メタクリル樹脂(A)に含まれるメタクリル酸メチル単位は90質量%以上が好ましく、95質量%以上がより好ましい。
【0017】
上記メタクリル樹脂(A)にはメタクリル酸メチル単位以外の単量体単位が含まれていてもよい。上記単量体としては、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸sec−ブチル、メタクリル酸tert−ブチル、メタクリル酸アミル、メタクリル酸イソアミル、メタクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ペンタデシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェノキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−メトキシエチル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸アリルなどのメタクリル酸メチル以外のメタクリル酸エステル;
アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸sec−ブチル、アクリル酸tert−ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸イソアミル、アクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ペンタデシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸フェノキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−メトキシエチル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸アリルなどのアクリル酸エステル;
アクリル酸、アクリル酸、無水マレイン酸などの不飽和カルボン酸;
エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブチレン、1−オクテンなどのオレフィン;
1,3−ブタジエン、イソプレン、ミルセンなどの共役ジエン;
スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、m−メチルスチレンなどの芳香族ビニル;
アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、酢酸ビニル、ビニルピリジン、ビニルケトン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデンなどが挙げられる。これら単量体は1種単独で、あるいは2種以上混合して用いることができる。
【0018】
メタクリル樹脂(A)が共重合体である場合には、共重合の形態には特に制限はなく、ランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合、交互共重合などのいずれであってもよい。また、本発明に用いるメタクリル樹脂(A)の立体規則性については特に制限はなく、イソタクチック、ヘテロタクチックまたはシンジオタクチックのいずれであってもよい。
【0019】
メタクリル樹脂(A)の数平均分子量は特に制限はないが、通常5000〜2000000であり、好ましくは10000〜1000000である。なお上記数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定により求めた、ポリスチレン換算の数平均分子量である。
【0020】
上記メタクリル樹脂(A)は、1種単独で用いてもよく、分子量などが異なる2種以上のメタクリル樹脂を混合して用いてもよい。
本発明で用いられるブロック共重合体(B)は、メタクリル酸メチル重合体ブロック(b1)とアクリル酸エステル重合体ブロック(b2)とを有する。
【0021】
上記メタクリル酸メチル重合体ブロック(b1)とは、メタクリル酸メチル単位を主体とする重合体ブロックで、メタクリル酸メチル単位を、通常50質量%以上、好ましくは60〜100質量%、より好ましくは90〜100質量%、さらに好ましくは95〜100質量%、特に好ましくは98〜100質量%有しており、100質量%有する態様も望ましい。
【0022】
上記メタクリル酸メチル重合体ブロック(b1)にはメタクリル酸メチル単位以外の単量体単位が含まれていてもよい。上記単量体単位を形成できる単量体としては、メタクリル樹脂(A)に関して上述したメタクリル酸メチル以外のメタクリル酸エステル、アクリル酸エステル、不飽和カルボン酸、オレフィン、共役ジエン、芳香族ビニル、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、酢酸ビニル、ビニルピリジン、ビニルケトン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデンなどが挙げられる。
【0023】
なお、上記単量体としてメタクリル酸メチル以外のメタクリル酸エステルまたはアクリル酸エステルが含まれている場合には、メタクリル酸メチル重合体ブロック(b1)のメタクリル樹脂(A)への相溶性を高め、可撓性、耐屈曲性、耐衝撃性または柔軟性を維持しつつ透明性を向上する観点から、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェノキシエチルなどのメタクリル酸芳香族エステル、およびアクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸フェノキシエチルなどのアクリル酸芳香族エステルが好ましい。かかるメタクリル酸メチル以外のメタクリル酸エステルまたはアクリル酸エステル、典型的にはメタクリル酸芳香族エステルおよびアクリル酸芳香族エステルは、過剰に含まれていないことが望ましく、その使用量はメタクリル酸メチル重合体ブロック(b1)を形成する単量体の10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。
また、メタクリル酸メチル重合体ブロック(b1)を形成する単量体のみからなる重合体の屈折率が1.485〜1.495の範囲となるように、かかる単量体組成を調整することが好ましい。
【0024】
上記アクリル酸エステル重合体ブロック(b2)とは、アクリル酸エステル単位を主体とする重合体ブロックで、アクリル酸エステル単位を、通常50質量%以上、好ましくは60〜100質量%、より好ましくは80〜100質量%有している。
【0025】
上記アクリル酸エステルとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸sec−ブチル、アクリル酸tert−ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸イソアミル、アクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ペンタデシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸イソボルニルなどのアクリル酸アルキルエステル;アクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸フェノキシエチルなどのアクリル酸芳香族エステル;アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−メトキシエチルアクリル酸グリシジル、アクリル酸アリルなどが挙げられる。
【0026】
これらアクリル酸エステルの中でも、アクリル酸アルキルエステル、アクリル酸芳香族エステルおよびアクリル酸2−メトキシエチルが好ましく、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸2−メトキシエチルがより好ましく、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシルがさらに好ましい。上記アクリル酸エステルを用いた場合、本発明の樹脂組成物は可撓性、耐屈曲性、耐衝撃性または柔軟性により優れる傾向にある。
【0027】
上記アクリル酸エステル重合体ブロック(b2)にはアクリル酸エステル単位以外の単量体単位が含まれていてもよい。上記単量体単位を形成できる単量体としては、メタクリル酸メチル、および上述したメタクリル酸エステル、不飽和カルボン酸、オレフィン、共役ジエン、芳香族ビニル、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、酢酸ビニル、ビニルピリジン、ビニルケトン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデンなどが挙げられる。これらの中でもメタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェノキシエチルなどのメタクリル酸芳香族エステルが好ましい。
【0028】
また、ブロック共重合体(B)の屈折率を好適な範囲とする観点からは、アクリル酸エステル重合体ブロック(b2)は、上記アクリル酸アルキルエステルと、(メタ)アクリル酸芳香族エステルとの共重合体ブロックであることが好ましい。
ここで、(メタ)アクリル酸芳香族エステルとはアクリル酸芳香族エステルおよびメタクリル酸芳香族エステルを総称するものである。アクリル酸アルキルエステルと共重合する(メタ)アクリル酸芳香族エステルとしては、上記したアクリル酸芳香族エステルおよびメタクリル酸芳香族エステルの中でも、本発明の樹脂組成物の可撓性、耐屈曲性、耐衝撃性または柔軟性を優れたものとし、しかも透明性も優れたものとする観点からアクリル酸ベンジルが好ましい。
【0029】
上記共重合体ブロックでのアクリル酸アルキルエステル単位の割合は、50〜90質量%が好ましく、60〜80質量%がより好ましい。また上記共重合体ブロックでの、(メタ)アクリル酸芳香族エステル単位の割合は、50〜10質量%が好ましく、40〜20質量%がより好ましい。上記共重合体ブロックでのアクリル酸アルキルエステル単位の割合および(メタ)アクリル酸芳香族エステル単位の割合を上記範囲とすると、本発明の樹脂組成物の透明性がより優れる傾向にある。
また、アクリル酸エステル重合体ブロック(b2)を形成する単量体のみからなる重合体の屈折率が1.485〜1.495の範囲となるように、かかる単量体組成を調整することが好ましい。
【0030】
上記ブロック共重合体(B)では、メタクリル酸メチル重合体ブロック(b1)の含有割合は10〜60質量%であり、好ましくは20〜55質量%である。(b1)の含有割合が上記範囲にあると、メタクリル樹脂(A)の透明性を損なうことなく、可撓性、耐屈曲性、耐衝撃性、または柔軟性を付与しやすくなる。なおブロック共重合体(B)に複数のメタクリル酸メチル重合体ブロック(b1)が含まれる場合には、上記含有割合は、全てのメタクリル酸メチル重合体ブロック(b1)合計の含有割合を意味する。
【0031】
上記ブロック共重合体(B)において、アクリル酸エステル重合体ブロック(b2)の含有割合は90〜40質量%であり、好ましくは80〜45質量%である。(b2)の含有割合が上記範囲にあると、本発明の樹脂組成物が優れた耐衝撃性、または柔軟性を有する傾向にある。なおブロック共重合体(B)に複数のアクリル酸エステル重合体ブロック(b2)が含まれる場合には、上記含有割合は、全てのアクリル酸エステル重合体ブロック(b2)合計の含有割合を意味する。
【0032】
上記ブロック共重合体(B)は屈折率が1.485〜1.495の間にあることに特徴がある。上記範囲の屈折率を有することで、メタクリル樹脂が本来有する透明性を保持しつつ、可撓性、耐屈曲性、耐衝撃性または柔軟性に優れる樹脂組成物を製造することが可能となる。
【0033】
ブロック共重合体(B)の屈折率は、1.486〜1.494であることが好ましく、1.487〜1.494であることがより好ましい。屈折率が上記範囲にあると、可撓性、耐屈曲性、耐衝撃性あるいは柔軟性に優れるだけでなく、得られる樹脂組成物の透明性がより優れる傾向にある。
【0034】
上記ブロック共重合体の結合形態は特に制限ないが、例えば、[メタクリル酸メチル重合体ブロック(b1)]−[アクリル酸エステル重合体ブロック(b2)]で表されるジブロック共重合体;
[メタクリル酸メチル重合体ブロック(b1)]−[アクリル酸エステル重合体ブロック(b2)]−[メタクリル酸メチル重合体ブロック(b1)]、[アクリル酸エステル重合体ブロック(b2)]−[メタクリル酸メチル重合体ブロック(b1)]−[アクリル酸エステル重合体ブロック(b2)]などで表されるトリブロック共重合体;
[メタクリル酸メチル重合体ブロック(b1)]−([アクリル酸エステル重合体ブロック(b2)]−[メタクリル酸メチル重合体ブロック(b1)])
n+1、[メタクリル酸メチル重合体ブロック(b1)]−([アクリル酸エステル重合体ブロック(b2)]−[メタクリル酸メチル重合体ブロック(b1)])
n−[アクリル酸エステル重合体ブロック(b2)]、[アクリル酸エステル重合体ブロック(b2)]−([メタクリル酸メチル重合体ブロック(b1)]−[アクリル酸エステル重合体ブロック(b2)])
n+1、[アクリル酸エステル重合体ブロック(b2)]−([メタクリル酸メチル重合体ブロック(b1)]−[アクリル酸エステル重合体ブロック(b2)])
n−[メタクリル酸メチル重合体ブロック(b1)](nは1以上の整数を表す)などの重合体ブロックを4以上有するマルチブロック共重合体;
([メタクリル酸メチル重合体ブロック(b1)]−[アクリル酸エステル重合体ブロック(b2)])
mX、([アクリル酸エステル重合体ブロック(b2)]−[メタクリル酸メチル重合体ブロック(b1)])
mX、([メタクリル酸メチル重合体ブロック(b1)]−[アクリル酸エステル重合体ブロック(b2)]−[メタクリル酸メチル重合体ブロック(b1)])
nX(mは平均値2を超える正数、Xはカップリング残基を表す)で表されるスター型ブロック共重合体などが挙げられる。
【0035】
これらの中でも、ジブロック共重合体、トリブロック共重合体、スター型ブロック共重合体が好ましく、[メタクリル酸メチル重合体ブロック(b1)]−[アクリル酸エステル重合体ブロック(b2)]で表されるジブロック共重合体、[メタクリル酸メチル重合体ブロック(b1)]−[アクリル酸エステル重合体ブロック(b2)]−[メタクリル酸メチル重合体ブロック(b1)]で表されるトリブロック共重合体、([メタクリル酸メチル重合体ブロック(b1)]−[アクリル酸エステル重合体ブロック(b2)])
mXまたは([メタクリル酸メチル重合体ブロック(b1)]−[アクリル酸エステル重合体ブロック(b2)]−[メタクリル酸メチル重合体ブロック(b1)])
nX(mは平均値2を超える正数、Xはカップリング残基を表す)で表されるスター型ブロック共重合体がより好ましい。
【0036】
上記ブロック共重合体(B)は、メタクリル酸メチル重合体ブロック(b1)およびアクリル酸エステル重合体ブロック(b2)を有しているが、本発明の効果を損なわない範囲で、アクリル酸エステルを主体とする単量体、あるいはメタクリル酸メチルを主体とする単量体とは異なる単量体単位からなる重合体ブロック(c)を有していてもよい。
【0037】
上記重合体ブロック(c)となる単量体としては、不飽和カルボン酸、オレフィン、共役ジエン、芳香族ビニル、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、酢酸ビニル、ビニルピリジン、ビニルケトン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン、ε−カプロラクトン、バレロラクトンなどが挙げられる。
【0038】
上記重合体ブロック(c)をブロック共重合体(B)が有している場合には、その結合形態としては、例えば、[メタクリル酸メチル重合体ブロック(b1)]−([アクリル酸エステル系重合体ブロック(b2)]−[メタクリル酸メチル重合体ブロック(b2)])
n−[重合体ブロック(c)]、[重合体ブロック(c)]−[メタクリル酸メチル重合体ブロック(b1)]−([アクリル酸エステル重合体ブロック(b2)]−[メタクリル酸メチル重合体ブロック(b1)])
n−[重合体ブロック(c)](nは1以上の整数を表す。)などが挙げられる。
【0039】
ブロック共重合体(B)の分子鎖形態としては、特に限定はされないが、例えば、線状、分枝状、放射状などの形態が挙げられる。ブロック共重合体(B)の数平均分子量は特に限定はされないが、通常10000〜1000000の範囲にあり、好ましくは20000〜400000の範囲、より好ましくは20000〜200000の範囲、さらに好ましくは30000〜200000の範囲、特に好ましくは30000〜100000の範囲にある。ブロック共重合体(B)の数平均分子量がこれより小さいと、可撓性、耐屈曲性、耐衝撃性の改良効果が小さく、これより大きいと溶融流動性、射出成形性が低下する。
【0040】
得られる樹脂組成物の透明性を損なわない観点からは上記ブロック共重合体(B)の分子量分布(Mw/Mn)は、1.0〜2.0の範囲にあることが好ましく、1.0〜1.6の範囲にあることがより好ましい。
【0041】
上記ブロック共重合体(B)の製造方法としては特に制限はないが、好ましくは、各重合体ブロックを構成する単量体をリビング重合する方法が使用される。このようなリビング重合の手法としては、例えば、有機アルカリ金属化合物を重合開始剤とし、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の塩などの鉱酸塩存在下でアニオン重合する方法(特公平7−25859号公報参照)、有機アルカリ金属化合物を重合開始剤とし、有機アルミニウム化合物の存在下でアニオン重合する方法(特開平11−335432号公報参照)、有機希土類金属錯体を重合開始剤として重合する方法(特開平6−93060号公報参照)、α−ハロゲン化エステル化合物を開始剤として銅化合物の存在下、ラジカル重合する方法(マクロモレキュラ ケミカル フィジックス(Macromol.Chem.Phys.)201巻、1108〜1114頁(2000年))、ニトロキシド化合物の存在下、制御ラジカル重合する方法(特表2007−512413号)などが挙げられる。また、多価ラジカル重合開始剤や多価ラジカル連鎖移動剤を用いて、各ブロックを構成するモノマーを重合させ、ブロック共重合体(B)を含有する混合物として製造する方法なども挙げられる。これら方法の中でも、ブロック共重合体が高純度で得られ、また分子量分布が狭い、つまり重合体組成物の塗装性、耐油性を低下させる要因となるオリゴマ−や、柔軟性を低下させる要因となる高分子量体を含まないことから、有機アルカリ金属化合物を重合開始剤とし、有機アルミニウム化合物の存在下で、アニオン重合する方法が好ましい。その有機アルミニウム化合物の代表的な例としては、イソブチルビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム、イソブチルビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノキシ)アルミニウム、イソブチルビス[2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノキシ)]アルミニウム、n−オクチルビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム、n−オクチルビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノキシ)アルミニウム、n−オクチルビス[2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノキシ)]アルミニウム、トリス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム、トリス(2,6−ジフェニルフェノキシ)アルミニウム等を挙げることができる。この中でも、イソブチルビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム、イソブチルビス(2,4−ジ−t−ブチルフェノキシ)アルミニウム、n−オクチルビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウムおよびn−オクチルビス(2,4−ジ−t−ブチルフェノキシ)アルミニウムが、重合活性、ブロック効率等の点から特に好ましい。
【0042】
上記ブロック共重合体(B)は、樹脂の改質剤として好適に用いることができる。特に、上記メタクリル樹脂(A)とブロック共重合体(B)とを含む本発明のメタクリル樹脂組成物は、任意の組成比でこれらを混合しても透明性に優れ、可撓性、耐屈曲性、耐衝撃性または柔軟性に優れる。
【0043】
本発明のメタクリル樹脂組成物におけるメタクリル樹脂(A)およびブロック共重合体(B)の配合量は、メタクリル樹脂(A)10〜99質量部、およびブロック共重合体(B)90〜1質量部であり、好ましくはメタクリル樹脂(A)15〜99質量部、およびブロック共重合体(B)85〜1質量部、より好ましくはメタクリル樹脂(A)20〜99質量部、およびブロック共重合体(B)80〜1質量部である(ただし、(A)と(B)との合計が100質量部である。)。
【0044】
樹脂組成物の特性は、ブロック共重合体(B)に含まれるアクリル酸エステル重合体ブロック(b1)の割合、組成物中のメタクリル樹脂(A)がマトリックス相を形成するか、あるいは分散相を形成するかなどにより、適宜設定することができる。
【0045】
例えば、メタクリル樹脂組成物全体に対してブロック共重合体(B)に含まれるアクリル酸エステル重合体ブロック(b2)の量が多く、メタクリル樹脂(A)からなる相が分散相になっている場合には、柔軟性に優れたアクリル系軟質材料を得ることができる。このような特性を有するアクリル系軟質材料となる組成は、ブロック共重合体(B)の分子仕様および種類、メタクリル樹脂(A)の分子仕様によって異なるが、メタクリル樹脂組成物全体に対して、アクリル酸エステル重合体ブロック(b2)の含有量は、通常25〜75質量%であり、好ましくは30〜60質量%である。
メタクリル樹脂(A)からなる相が分散相を形成している場合、分散相の形態としては、球状(スフェア)、棒状(シリンダー)、板状(ラメラ)等の形態をとることができる。分散サイズは10nm〜1μmの範囲が好ましく、20〜700nmの範囲がより好ましく、50〜300nmの範囲がさらに好ましい。ここで、上記分散サイズとは、球状、棒状の場合はその直径、板状の場合は厚み方向のことを言う。
【0046】
また、組成の異なる複数のブロック共重合体(B)を用いる場合には、メタクリル樹脂組成物全体に対して、アクリル酸エステル重合体ブロック(b2)の含有量を30〜40質量%とすることで、アクリル系軟質樹脂を作製することができる。組成の異なる複数のブロック共重合体(B)を用いる場合には、メタクリル樹脂(A)との相溶性、分散性(compatibility)が良い組み合わせを用いることが好ましいが、複数のブロック共重合体(B)のうち少なくとも一つが分子鎖長の長いメタクリル酸メチル重合体ブロック(b1)を有することが好ましく、上記メタクリル酸メチルブロック(b1)の数平均分子量は、好ましくは約15,000〜100,000、より好ましくは約20,000〜60,000である。
【0047】
これらアクリル系軟質樹脂は柔軟でかつ透明性などの光学特性に優れることから、TV、PCモニター、携帯電話表示部、携帯端末、宣伝広告用の光学フィルム、LED光源などを光源とする導光体として使用できる。
【0048】
一方、メタクリル樹脂組成物全体に対してブロック共重合体(B)に含まれるアクリル酸エステル重合体ブロック(b2)の量が少なく、メタクリル樹脂(A)からなる相がマトリックス相になっている場合には、メタクリル樹脂の硬質性(弾性率および表面硬度)ならびに光学的な透明性を保持したまま、可撓性、耐屈曲性、耐衝撃性などに優れるアクリル系硬質材料を得ることができる。
メタクリル樹脂(A)がマトリックス相を形成している場合、メタクリル樹脂(A)とブロック共重合体中(B)中に含まれるメタクリル酸メチル重合体ブロック(b1)が相溶し、ブロック共重合体(B)中に含まれるアクリル酸エステル重合体ブロック(b2)が分散相を形成していることが好ましい。この場合のアクリル酸エステル重合体ブロック(b2)の分散相の形態としては、球状(スフェア)、棒状(シリンダー)、板状(ラメラ)と種々の形態をとる事が好ましい。この場合の分散サイズは、アクリル酸エステル重合体ブロックの分子量に依存するが、5〜100nmの範囲が好ましく、19〜50nmの範囲がより好ましい。ここで、上記分散サイズとは、球状、棒状の場合はその直径、板状の場合は厚み方向のことを言う。
【0049】
このような特性を有するアクリル系硬質材料となる組成は、ブロック共重合体(B)の分子仕様および種類、メタクリル樹脂(A)の分子仕様によって異なるが、メタクリル樹脂組成物全体に対して、アクリル酸エステル重合体ブロック(b2)の含有量は、通常3〜40質量%、好ましくは3〜30質量%、より好ましくは5〜30質量%、さらに好ましくは5〜20質量%である。アクリル酸エステル重合体ブロック(b2)の含有量が、上記の下限値以上であると耐衝撃性や溶融流動性が優れたものとなり、上限値以下であると剛性や耐表面傷つき性が優れたものとなる。
【0050】
このような特性を有するアクリル系硬質材料を得るためには、乳化重合等で製造した多層構造グラフト共重合体からなるアクリル系ゴム成分をメタクリル樹脂に配合したメタクリル樹脂組成物を作製することが一般的である。しかし、この方法により作製したメタクリル樹脂組成物では、ゴム成分同士の凝集等から生じる異物欠点を抑制することが困難であり、ゴム成分の分散径は一般的に100nm以上であるため光学的な透明材料を得ることも困難である。さらに、配合するゴムが架橋ゴム成分であるため、溶融流動性が低下する傾向にある。
【0051】
また、従来のアクリル系ブロック共重合体を添加することによりメタクリル樹脂の改質を行ったとしても、樹脂組成物全体に対する、アクリル系ブロック共重合体に含まれるアクリル酸エステル重合体ブロックの含有量が20質量%以下の場合であっても、著しく透明性は損なわれてしまう。
【0052】
これに対して、メタクリル樹脂(A)にブロック共重合体(B)を添加した本発明のメタクリル樹脂組成物では、メタクリル樹脂(A)本来の透明性が損なわれておらず、また射出成形する際の溶融流動性にも優れるものである。溶融流動性について特に限定は無いが、メルトフローレート(MFR)がISO1173に準拠した230℃、37.3Nの条件で、20g/10分以上、さらには25g/10分以上であるのが好ましい。
【0053】
これら溶融流動性と耐衝撃性のバランスに優れた樹脂組成物は、大型射出成形や微細形状転写を要する射出成形性を改良することができるため、自動車内装材、自動車外装材、家電製品の筐体、導光板、太陽電池などのシート、ウィンドーフィルム、LCDなどのフラットパネルディスプレイ用の表面パターン光学フィルムなどに好適である。
【0054】
本発明の効果を損なわない範囲であれば、上記メタクリル樹脂組成物は、メタクリル樹脂(A)およびブロック共重合体(B)以外に、必要に応じてその他の重合体を含有していてもよい。上記その他の重合体としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン−1、ポリ−4−メチルペンテン−1、ポリノルボルネン等のオレフィン系樹脂;エチレン系アイオノマー;ポリスチレン、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ハイインパクトポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂、AES樹脂、AAS樹脂、ACS樹脂、MBS樹脂等のスチレン系樹脂;メチルメタクリレート−スチレン共重合体;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂;ナイロン6、ナイロン66、ポリアミドエラストマー等のポリアミド;ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリアセタール、ポリフッ化ビニリデン、ポリウレタン、変性ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、シリコーンゴム変性樹脂等が挙げられる。
【0055】
また、本発明のメタクリル樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲内で、ゴム、軟化剤、滑剤、可塑剤、粘着剤、粘着付与剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、帯電防止剤、難燃剤、発泡剤、着色剤、染色剤等の添加剤;無機充填剤、繊維補強剤等のフィラーなどを含有してもよい。
【0056】
上記ゴムとしては、例えば、アクリル系ゴム;シリコーン系ゴム;SEPS、SEBS、SIS等のスチレン系TPE(熱可塑性エラストマー);IR、EPR、EPDM等のオレフィン系ゴムなどが挙げられる。
【0057】
上記軟化剤としては、例えば、パラフィン系オイル、ナフテン系オイルなどの鉱物油軟化剤が挙げられる。軟化剤を添加すると、成形加工時の流動性を向上することができる。
上記無機充填剤としては、炭酸カルシウム、タルク、カーボンブラック、酸化チタン、シリカ、クレー、硫酸バリウム、炭酸マグネシウムなどが挙げられる。無機充填剤を添加すると、耐熱性、耐候性等の向上が可能となり、組成物の増量が可能となる。
【0058】
上記繊維補強剤としては、ガラス繊維、カーボン繊維などの無機繊維、および有機繊維が挙げられる。繊維補強材を添加することにより、組成物の補強が可能となる。
これら添加剤の中でも、耐熱性、耐候性をさらに良好なものとする観点からは、熱安定剤、酸化防止剤などを添加することが実用上好ましい。
【0059】
本発明のメタクリル樹脂組成物を作製する方法は特に制限されないが、樹脂組成物に含まれる各成分の分散性を高める観点からは、メタクリル樹脂(A)とブロック共重合体(B)とを溶融混練することにより作製する方法が好ましい。
具体的には、メタクリル樹脂(A)およびブロック共重合体(B)を溶融混練装置に添加して溶融状態で混練すればよいが、必要に応じてこれらと上記その他の重合体、添加剤、フィラーなどを同時に添加して溶融混練してもよいし、ブロック共重合体(B)を、上記その他の重合体、添加剤、フィラーなどと溶融混練した後に、メタクリル樹脂(A)と溶融混練してもよい。混練装置としては、例えば、ニーダールーダー、押出機、ミキシングロール、バンバリーミキサーなどの混練装置を用いることができる。混練時の温度は、使用するメタクリル樹脂(A)、ブロック共重合体(B)等の溶融温度などに応じて適宜調節すればよいが、通常110℃〜300℃の範囲内の温度で混練する。
【0060】
また、本発明のメタクリル樹脂組成物は、透明性、分散性等を高めるために、以下に述べる方法によっても作製できる。
すなわち、まず、ブロック共重合体(B)を、メタクリル酸メチルを80質量%以上含有する単量体混合物(A’)に溶解させ、ついでブロック共重合体(B)を含有する単量体混合物(A’)を重合することにより本発明の樹脂組成物を作製する方法である。かかる作製方法において単量体混合物(A’)を重合する場合、重合は、溶媒を用いずに塊状重合法により行っても、溶媒を用いて溶液重合法により行ってもよい。溶液重合法に用いる溶媒としては、単量体混合物(A’)、得られるメタクリル樹脂(A)、及びブロック共重合体(B)に対して溶解能を有する溶媒であれば特に制限されず、例えば、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素等が挙げられる。また、必要に応じて、2種類以上の溶媒を混合して使用してもよい。以上の作製方法によれば、溶融押出機での溶融混錬法と比較して、熱履歴が短くなるので熱分解に伴う着色や異物が抑制されるばかりでなく、メタクリル樹脂(A)とブロック共重合体(B)との分散性も向上するので、透明性が向上する。
【0061】
このようにして作製した本発明のメタクリル樹脂組成物は、ぺレット、粉末など所望の形態で得ることができる。
ペレット、粉末などの形態の重合体組成物は、成形材料として好適に使用できる。
【0062】
本発明のメタクリル樹脂組成物は、溶融流動性に優れるために、熱可塑性重合体に対して一般に用いられている成形加工方法や成形加工装置を用いて成形加工することができる。例えば、射出成形、押出成形、圧縮成形、ブロー成形、カレンダー成形、真空成形などの加熱溶融を経る成形加工法、溶液キャスト方法などにより成形体が製造できる。
【0063】
上記成形加工方法により、型物、パイプ、シート、フイルム、繊維状物、該重合体組成物からなる層を含む積層体等の任意の形状の成形品を得ることができる。
本発明のメタクリル樹脂組成物から得られる成形体は透明性、耐衝撃性に優れ、例えば厚さ3mmの成形体(典型的にはシート状の成形体)においては、ヘイズ値が好ましくは2%以下、より好ましくは1.5%以下、さらに好ましくは1%以下である。耐衝撃性は、ISO179−1eUに準拠したノッチ無しのシャルピー衝撃強度で21kJ/m
2以上であるのが好ましい。
【0064】
また、本発明のメタクリル樹脂組成物からなる成形体は、柔軟性、または、可撓性、耐屈曲性、耐衝撃性に優れ、機械的強度、耐候性などにも優れる。
そのため、食品包装シート、キャップライナーなどの食品包装材用途;日用雑貨用途;スキー靴等のスポーツ用品用途;ゴルフボールの外皮、コア材などの運動用具または玩具用途;デスクマットなどの文具用途;バンパーガードなどの自動車内外装用途;土木シート、防水シート、窓枠シーリング材、建築物用シーリング材などの土木建築用途;掃除機用コーナーバンパー、冷蔵庫用ドアシールなどの家電機器用途;AV機器用途;OA事務機器用途;靴底、トップリフト等の履き物・衣料用品用途;テキスタイル用途;医療用機器用途などとして種々の用途に用いることができる。
【実施例】
【0065】
以下に本発明を実施例などに基づいてより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
実施例及び比較例において用いた測定機器および測定方法を以下に記す。
【0066】
(1)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるブロック共重合体の数平均分子量(Mn)、分子量分布(Mw/Mn)の測定
装置:東ソー社製ゲルパーミエーションクロマトグラフ(HLC−8020)
カラム:東ソー社製TSKgel GMHXL、G4000HXLおよびG5000HXLを直列に連結
溶離液:テトラヒドロフラン
溶離液流量:1.0ml/分
カラム温度:40℃
検出方法:示差屈折率(RI)計
検量線:標準ポリスチレンを用いて作成
【0067】
(2)核磁気共鳴スペクトル(
1H−NMRスペクトル)によるブロック共重合体の分子構造の解析
装置:日本電子株式会社製核磁気共鳴装置「JNM−LA400」
重溶媒:重水素化クロロホルム
(3)ブロック共重合体の屈折率の測定
装置:カルニュー光学工業株式会社「KPR−200」
測定波長:587.6nm(d線)
【0068】
(4)メタクリル樹脂組成物の透明性の評価
ISO14782に準拠して、厚さ3mmのシートのヘイズを測定した。
(5)メタクリル樹脂組成物の耐衝撃性の評価
ISO179−1eUに準拠して、ノッチなしのシャルピー衝撃強度を測定した。
(6)弾性率の評価
ISO178に準拠して測定した
【0069】
(7)メタクリル樹脂組成物の引張破断伸びの評価
引張破断伸度、引張弾性率ともに引張り試験通則 ISO 527−1 (JISK7161)に準拠して測定した。
(8)メタクリル樹脂組成物の溶融混練
東洋精機株式会社製 ラボプラストミル/R60型ミキサーを用いて 230℃、70rpm、3分間の条件で混練した。
(9)メルトフローレート
ISO1173に準拠して、230℃、37.3Nの条件でメルトフローレート(MFR)を測定した。
【0070】
(10)メタクリル樹脂のプレス成形
東邦マシナリー株式会社製 油圧成形機を用いて、230℃にてプレス成形した。
(11)メタクリル樹脂の射出成形
株式会社日本製鋼所製 75SAV型射出成形機を用いて、シリンダー温度200℃、金型温度60℃の条件で、物性試験片を得た。
【0071】
《実施例1》[ブロック共重合体B−1の製造]
(1) 1リットルの三口フラスコに三方コックを付けて内部を脱気し、窒素で置換した後、室温にてトルエン776ml 、1,2−ジメトキシエタン46.0ml、およびイソブチルビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム8.8mmolを含有するトルエン溶液19.6mlを加え、さらにsec−ブチルリチウム1.8mmolを加えた。これにメタクリル酸メチル45.3mlを加え、室温で1時間反応させた。引き続き、重合液の内部温度を−15℃に冷却し、アクリル酸n−ブチル53.9mlとアクリル酸ベンジル11.3mlとの混合液を1時間かけて滴下した。続いてメタクリル酸メチル18.8mlを加えて反応液を室温に昇温し、5時間攪拌した。この反応液を大量のメタノール中に注ぎ、析出した沈殿物を回収し、アクリル系ブロック共重合体B−1を得た。
(2) 上記(1)で得られた沈殿物についてGPC測定および
1H−NMRによりMn(数平均分子量)、Mw/Mn(分子量分布)、メタクリル酸メチル重合体(PMMA)ブロックとアクリル酸n−ブチルとアクリル酸ベンジルからなる共重合体ブロック(PnBA-co−PBzA)の質量比などを求めた。
(3) 上記(1)で得られたアクリル系ブロック共重合体B−1を、真空乾燥機にて80℃で12時間乾燥させた後、熱プレスにて厚さ3mmの成形体とし、屈折率測定を行った。評価結果を表1に示す。
【0072】
《実施例2》[ブロック共重合体B−2の製造]
(1) 実施例1において、アクリル酸n−ブチルの量を50.5ml、アクリル酸ベンジルの量を14.2mlに変更する以外は 、実施例1と同じ方法によってアクリル系ブロック共重合体B−2を得た。評価結果を表1に示す。
【0073】
《実施例3》[ブロック共重合体B−3の製造]
(1) 実施例1において、アクリル酸n−ブチルの量を47.1ml、アクリル酸ベンジルの量を17.0mlに変更する以外は 、実施例1と同じ方法によってアクリル系ブロック共重合体B−3を得た。評価結果を表1に示す。
【0074】
《実施例4》[アクリル系ブロック共重合体B−4の製造]
(1) 1リットルの三口フラスコに三方コックを付けて内部を脱気し、窒素で置換した後、室温にてトルエン776ml 、1,2−ジメトキシエタン46.0ml、およびイソブチルビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム9.4mmolを含有するトルエン溶液21.0mlを加え、さらにsec−ブチルリチウム1.9mmolを加えた。これにメタクリル酸メチル19.2mlを加え、室温で1時間反応させた。引き続き、重合液の内部温度を−15℃に冷却し、アクリル酸n−ブチル66.0mlとアクリル酸ベンジル23.8mlとの混合液を1時間かけて滴下した。続いてメタクリル酸メチル19.2mlを加えて反応液を室温に昇温し、5時間攪拌した。この反応液を大量のメタノール中に注ぎ、析出した沈殿物を回収し、アクリル系ブロック共重合体B−4を得た。評価結果を表1に示す。
【0075】
《比較例1》[アクリル系ブロック共重合体B−5の製造]
(1) 実施例1において、アクリル酸n−ブチルの量を67.3mlに変更、アクリル酸ベンジルを添加しないこと以外は 、実施例1と同じ方法によってアクリル系ブロック共重合体B−5を得た。評価結果を表1に示す。
【0076】
《比較例2》[アクリル系ブロック共重合体B−6の製造]
実施例4において、アクリル酸n−ブチルの量を94.3mlに変更、アクリル酸ベンジルを添加しないこと以外は 、実施例4と同じ方法によってアクリル系ブロック共重合体B−6を得た。評価結果を表1に示す。
【0077】
《比較例3》[アクリル系ブロック共重合体B−7の製造]
(1) 実施例1において、アクリル酸n−ブチルの量を60.6ml、アクリル酸ベンジルの量を5.7mlに変更する以外は 、実施例1と同じ方法によってアクリル系ブロック共重合体B−7を得た。評価結果を表1に示す。
【0078】
《比較例4》[系ブロック共重合体B−8の製造]
(1) 実施例1において、アクリル酸n−ブチルの量を26.9ml、アクリル酸ベンジルの量を34.0mlに変更する以外は 、実施例1と同じ方法によってアクリル系ブロック共重合体B−8を得た。評価結果を表1に示す。
【0079】
《参考例1》[ブロック共重合体B−9の製造]
(1) 1リットルの三口フラスコに三方コックを付けて内部を脱気し、窒素で置換した後、室温にてトルエン776ml、1,2−ジメトキシエタン46.0ml、およびイソブチルビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム8.8mmolを含有するトルエン溶液19.6mlを加え、さらにsec−ブチルリチウム1.8mmolを加えた。これにメタクリル酸メチル31.7mlとメタクリル酸ベンジル12.2mlとの混合液を加え、室温で1時間反応させた。引き続き、重合液の内部温度を−15℃に冷却し、アクリル酸n−ブチル67.3mlを1時間かけて滴下した。続いてメタクリル酸メチル13.2mlとメタクリル酸ベンジル5.1mlとを加えて反応液を室温に昇温し、5時間攪拌した。この反応液を大量のメタノール中に注ぎ、析出した沈殿物を回収し、アクリル系ブロック共重合体B−9を得た。評価結果を表1に示す。
【0080】
【表1】
《実施例5〜8、比較例5〜7、参考例2》[メタクリル組成物C−1〜8の製造]
(1) 実施例1〜3および比較例1、3、4および参考例1で得られたブロック共重合体(B)を表2記載の割合でメタクリル樹脂(A)(株式会社クラレ製:パラペットGH−F)と混合し、ラボプラストミルにて溶融混練してメタクリル樹脂組成物Cを製造した。
(2) 上記(1)で得られたメタクリル樹脂組成物Cを熱ブレスあるいは射出成形し、厚さ3mmあるいは4mmの成形体を得た。この成形体の評価結果を表2に示す。
【0081】
《比較例8》
メタクリル樹脂(A)(株式会社クラレ製:パラペットGH−F、メタクリル樹脂組成物C−9と称する)を熱ブレスし、厚さ3mmあるいは4mmの成形体を得た。この成形体の評価結果を表2に示す。
【0082】
【表2】
表2の結果から、メタクリル酸メチル単位を80質量%以上有するメタクリル樹脂(A)と、メタクリル酸メチル重合体ブロック(b1)とアクリル酸エステル重合体ブロック(b2)とを有し屈折率が1.485〜1.495であるブロック共重合体(B)からなるメタクリル樹脂組成物(C−1〜C−4)を用いた成形体は、屈折率が本判明の範囲外であるブロック共重合体を用いた場合(C−5〜C−7)と比較して透明性に優れることが分かる。また、メタクリル樹脂単体(比較例8)と比較して耐衝撃性能に優れていることがわかる。
【0083】
《実施例9、10、比較例9、10》[メタクリル組成物C−10〜13の製造]
(1) 実施例3、4および比較例1、2で得られたブロック共重合体(B)を表3記載の割合でメタクリル樹脂(A)(株式会社クラレ製:パラペットGH−S)と混合し、ラボプラストミルにて溶融混練してメタクリル樹脂組成物C−10〜C−13を製造した。
(2) 上記(1)で得られたメタクリル樹脂組成物C−10〜C−13を熱ブレスし、厚さ3mmの成形体を得た。この成形体の評価結果を表3に示す。
【0084】
【表3】
表3の結果から、アクリル酸
エステル重合体ブロック(
b2)の含有量の多い組成物(実施例9、10)は引張破断伸度が高く(すなわち靭性があり)、屈折率が本判明の範囲外であるブロック共重合体を用いた場合(比較例9、10)と比較して透明性に優れていることがわかる。