特許第5855552号(P5855552)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5855552
(24)【登録日】2015年12月18日
(45)【発行日】2016年2月9日
(54)【発明の名称】ポリオルガノシロキサンの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 77/08 20060101AFI20160120BHJP
   C08K 3/10 20060101ALI20160120BHJP
【FI】
   C08G77/08
   C08K3/10
【請求項の数】11
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2012-228155(P2012-228155)
(22)【出願日】2012年10月15日
(65)【公開番号】特開2014-80477(P2014-80477A)
(43)【公開日】2014年5月8日
【審査請求日】2014年10月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085545
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 光夫
(72)【発明者】
【氏名】楠木 貴行
(72)【発明者】
【氏名】高見澤 祐介
(72)【発明者】
【氏名】柏木 努
【審査官】 小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】 特公昭27−3898(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 77/08
C08K 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオルガノシロキサンの製造方法であって、
分子中に少なくとも1個の、ケイ素原子に結合する−OX基(Xは、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、又は炭素数2〜10のアルコキシアルキル基である)を有する有機ケイ素化合物の1種以上を、触媒(C)存在下で縮合反応する工程を含み、
前記触媒(C)が、周期表第3〜15族に属する金属元素の水酸化物(水酸化鉛を除く)からなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする、製造方法。
【請求項2】
前記触媒(C)が、水酸化ランタン(III)、水酸化アルミニウム(III)、水酸化鉄(II)、水酸化鉄(III)及び水酸化銅(II)からなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする、請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
前記触媒(C)の量が、縮合反応に付する有機ケイ素化合物の合計モル量に対する(C1)成分のモル量が0.0001〜20mol%となる量である、請求項1または2記載の製造方法。
【請求項4】
(A)分子中に少なくとも1個のシラノール基を有する有機ケイ素化合物の少なくとも1種と、
(B1)分子中に少なくとも1個の、ケイ素原子に結合する−OX基(Xは、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、又は炭素数2〜10のアルコキシアルキル基である)を有する有機ケイ素化合物の少なくとも1種を、
前記触媒(C)の存在下で反応させる工程を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
(B2)分子中に少なくとも1個の、ケイ素原子に結合する−OX’基(X’は、炭素数1〜10のアルキル基、又は炭素数2〜10のアルコキシアルキル基である)を有する有機ケイ素化合物の1種以上を、
前記触媒(C)の存在下で反応させる工程を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
分子中に少なくとも1個のシラノール基と、少なくとも1個の、ケイ素原子に結合する−OX’基(X’は、炭素数1〜10のアルキル基、又は炭素数2〜10のアルコキシアルキル基である)とを有する有機ケイ素化合物の1種以上を、
前記触媒(C)の存在下で反応させる工程を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項7】
前記(A)成分が、下記一般式(1)
(RSiO(4−a−b)/2(OH)) (1)
(Rは、互いに独立に、水素原子、又は、酸素原子、ハロゲン原子、窒素原子又は硫黄原子を含んでいてよい炭素数1〜18の一価炭化水素基であり、a及びbは、括弧内に示される単位毎に独立に、aは0〜3の整数であり、bは0〜4の整数であり、但し、0≦a+b≦4であり、nは1〜10000の整数であり、但し、該有機ケイ素化合物は1分子中に少なくとも1個の、ケイ素原子に結合する−OH基を有する)で表され、
前記(B1)成分が、下記一般式(2)
(RSiO(4−a−b―c)/2(OH)(OR) (2)
(Rは、互いに独立に、水素原子、又は、酸素原子、ハロゲン原子、窒素原子又は硫黄原子を含んでいてよい炭素数1〜18の一価炭化水素基であり、Rは、互いに独立に、炭素数1〜10のアルキル基または炭素数2〜10のアルコキシアルキル基であり、a、b、及びcは、括弧内に示される単位毎に独立に、aは0〜3の整数であり、bは0〜4の整数であり、cは0〜4の整数であり、但し、0≦a+b+c≦4であり、nは1〜10000の整数であり、但し、該有機ケイ素化合物は1分子中に少なくとも1個の、ケイ素原子に結合する、−OH基または−OR基を有する)で表される、請求項記載の製造方法。
【請求項8】
前記(B2)成分が、下記一般式(3)
(RSiO(4−a−c)/2(OR) (3)
(Rは、互いに独立に、水素原子、又は、酸素原子、ハロゲン原子、窒素原子又は硫黄原子を含んでいてよい炭素数1〜18の一価炭化水素基であり、Rは、互いに独立に、炭素数1〜10のアルキル基、又は炭素数2〜10のアルコキシアルキル基であり、a及びcは、括弧内に示される単位毎に独立に、aは0〜3の整数であり、cは0〜4の整数であり、但し、0≦a+c≦4であり、nは1〜10000の整数であり、但し、該有機ケイ素化合物は1分子中に少なくとも1個の、ケイ素原子に結合する−OR基を有する)で表される、請求項記載の製造方法。
【請求項9】
有機ケイ素化合物が、下記一般式(4)
(RSiO(4−a−b―c)/2(OH)(OR) (4)
(Rは、互いに独立に、水素原子、又は、酸素原子、ハロゲン原子、窒素原子又は硫黄原子を含んでいてよい炭素数1〜18の一価炭化水素基であり、Rは、互いに独立に、炭素数1〜10のアルキル基または炭素数2〜10のアルコキシアルキル基であり、a、b、及びcは、括弧内に示される単位毎に独立に、aは0〜3の整数であり、bは0〜4の整数であり、cは0〜4の整数であり、但し、0≦a+b+c≦4であり、nは1〜10000の整数であり、但し、該有機ケイ素化合物は1分子中に少なくとも1個の、ケイ素原子に結合する−OH基、及び少なくとも1個の、ケイ素原子に結合する−OR基を有する)で表される、請求項記載の製造方法。
【請求項10】
縮合反応を(D)少なくとも1種の溶媒の存在下で行う、請求項1〜のいずれか1項記載の製造方法。
【請求項11】
溶媒が、炭化水素類、芳香族炭化水素類、水、アルコール類、アルコールエステル類、ケトン類、エーテル類、エステル類、シアン化炭化水素類、アミン類、アミド類、ハロゲン化炭化水素類、及び含硫黄化合物類から選択される少なくとも1種である、請求項10記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリオルガノシロキサンの製造方法に関する。詳細には、シラノール基(−SiOH)及び/又はアルコキシシリル基(−SiOR)を有する有機ケイ素化合物の1種以上を互いに縮合させてポリオルガノシロキサンを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光透過性、耐熱性、ガス透過性、化学的安定性などに優れる材料としてポリオルガノシロキサンが注目されている。ポリオルガノシロキサンは、その製造工程においてシロキサンモノマーの種類、仕込み組成、反応条件などを変えることにより、様々な性質を有したポリオルガノシロキサンを製造することができるため、様々な分野で実用化されている。
【0003】
ポリオルガノシロキサンの一般的な製造方法としては、クロロシラン及び/又はアルコキシシランを、有機溶媒中、酸もしくは塩基触媒の存在下で化学量論的量の水に接触させて加水分解及び縮合反応する製造方法がある。しかし、該製造方法はしばしば、生成したポリオルガノシロキサン中に有意量のシラノール基が残存するため、貯蔵中にシラノール基同士が縮合して増粘する等、保存安定性に問題を来す。また、ポリマー中に不安定なシラノール基を残すことは、長期の使用においてクラッキングの発生や接着性の低下の原因になるおそれがある。さらには、加水分解及び縮合反応によって得られるポリオルガノシロキサンの構造はランダム構造となるため、所望の特性を満たすポリオルガノシロキサンが必ずしも得られるとは限らない。
【0004】
他の一般的な製造方法として、シラノール基(−SiOH)を有する有機ケイ素化合物同士を縮合させる方法、シラノール基(−SiOH)を有する有機ケイ素化合物とアルコキシシリル基(−SiOR)を有する有機ケイ素化合物を縮合させる方法、またはアルコキシシリル基(−SiOR)を有する有機ケイ素化合物同士を縮合させる方法が挙げられる(Rはアルキル基、アルコキシアルキル基などを表す)。これらの縮合反応では、生成するポリオルガノシロキサン中に残存するシラノール基の量が少ない。しかし、縮合反応を進行させるために、硫酸、及び塩酸などの強酸類、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、及びテトラメチルアンモニア水酸化物などの強塩基類、もしくはルイス酸など、概して化学的に激しい触媒を用いる必要がある。これらの触媒を用いると、縮合反応中にシロキサン結合(Si−O−Si)の切断および再配列が起こるため、得られるポリオルガノシロキサンはランダム構造を有したものになってしまう。
【0005】
特許文献1には、ナトリウムまたはカリウムの硼酸塩または燐酸塩を触媒として用い、該触媒の存在下でシラノール基含有シロキサンを縮合させてオルガノシリコーン縮合生成物を製造する方法が記載されている。特許文献2には、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物、塩化物、酸化物あるいは塩基性金属塩から選ばれる少なくとも1種の触媒の存在下に、シラノール基含有シロキサンを反応させてポリオルガノシロキサンを製造する方法が記載されている。特許文献3には、プロトン性溶媒が存在するとマグネシウムおよびカルシウムの水酸化物であってもシラノール基含有シロキサンとアルコキシシランの縮合反応を触媒することができることが記載されている。特許文献4には、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム及びそれらの混合物から選ばれる触媒の存在下で、シラノール基及び/又はアルコキシシリル基を有するケイ素含有化合物を反応させて、オルガノシリコーン縮合物を製造する方法が記載されている。
【0006】
上記特許文献1〜4に記載の方法では、ポリオルガノシロキサン鎖の再配列が最小限に留められるため、構造が制御されたポリオルガノシロキサンを得ることができる。また、触媒が固体触媒であるため、得られたポリオルガノシロキサンから濾過により容易に触媒を除去することが可能であるという利点を有する。これらの利点は、特に、使用する材料に精密な制御を必要とする分野や残留不純物が許容されない分野、例えば光学材料や電子材料、医療材料などの分野において有利とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平2−235933号公報
【特許文献2】特開平3−197486号公報
【特許文献3】特表2006−508216号公報
【特許文献4】特表2010−506982号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記のようなアルカリ土類金属系の触媒は、ポリオルガノシロキサンの製造において未だ理想的なものではない。なぜなら、アルカリ土類金属の水酸化物はしばしば毒性が指摘されるからである。特に、水酸化バリウムは日本国毒劇物指定令第2条において劇物指定を受けており、取り扱いに注意が必要である。さらに、アルカリ土類金属系触媒は強い腐食性を有することから、調製したポリオルガノシロキサン中の触媒残留分が極微量であっても、該ポリオルガノシロキサンを長期間使用すると周辺部材を腐食し、不具合を引き起こす可能性がある。また、アルカリ土類金属系触媒は空気中の湿気や二酸化炭素の影響を受けやすいために、長期保存における触媒能の低下も問題となる。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑み成されたものであり、シラノール基(−SiOH)及び/又はアルコキシシリル基(−SiOR)を有する有機ケイ素化合物の1種以上を互いに縮合させてポリオルガノシロキサンを製造する方法において、アルカリ土類金属系触媒のような腐食性や毒性を有する触媒を使用せずにポリオルガノシロキサンを製造する方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、上記ポリオルガノシロキサンの製造方法において、周期表第3〜第15族に属する金属元素の水酸化物もしくは酸化物からなる群より選ばれる少なくとも1種の触媒を使用することにより、アルカリ土類金属系触媒のような腐食性や毒性を有する触媒を使用せずに目的とするポリオルガノシロキサンを製造することができ、かつ、得られるポリオルガノシロキサンは経時で周辺部材を腐食することがないことを見出し、本発明を成すに至った。
【0011】
即ち、本発明は、ポリオルガノシロキサンの製造方法であって、
分子中に少なくとも1個の、ケイ素原子に結合する−OX基(Xは、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、又は炭素数2〜10のアルコキシアルキル基である)を有する有機ケイ素化合物の1種以上を、触媒(C)存在下で縮合反応する工程を含み、
前記触媒(C)が、周期表第3〜第15族に属する金属元素の水酸化物(水酸化鉛を除く)からなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の製造方法は、シラノール基及び/又はアルコキシシリル基を有する有機ケイ素化合物の1種以上を互いに縮合反応させる工程を含むポリオルガノシロキサンの製造方法において、アルカリ土類金属系触媒のような腐食性や毒性を有する触媒を使用せずに所望とするポリオルガノシロキサンを製造することができる。また、本発明の製造方法で得られたポリオルガノシロキサンは、経時で金属製部品等を侵すことがない。従って、該ポリオルガノシロキサンを電子部品等の保護材等のために使用することにより、長期信頼性に優れる物品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0014】
本発明は、縮合反応に使用する触媒(C)が、周期表第3〜第15族に属する金属元素の水酸化物もしくは酸化物からなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする。以下、触媒(C)について説明する。
【0015】
(C)成分は、周期表第3〜第15族に属する金属元素の水酸化物(水酸化鉛を除く)からなる群より選ばれる少なくとも1種(以下、金属元素化合物と称す)である。該金属元素化合物は、シラノール基(−SiOH)及び/又はアルコキシシリル基(−SiOR)を有する有機ケイ素化合物の縮合反応を進行することができる触媒機能を有する化合物であればよいが、反応性や入手性の観点から、希土類元素、鉄族元素、白金族元素、または両性金属元素の水酸化物からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。該金属元素化合物の例としては、水酸化ランタン(III)、水酸化セリウム(IV)、水酸化ジルコニウム(IV)、水酸化鉄(II)、水酸化鉄(III)、水酸化コバルト(II)、水酸化ニッケル(II)、水酸化銅(II)、水酸化金(III)、水酸化亜鉛(II)、水酸化カドミウム(II)、水酸化アルミニウム(III)、水酸化インジウム(III)、水酸化タリウム(I)、水酸化ビスマス(IIIなどが挙げられる。中でも、入手性の観点から、水酸化ランタン(III)、水酸化アルミニウム(III)、水酸化鉄(II)、水酸化鉄(III)、水酸化銅(II)が好ましい。
【0016】
本発明の製造方法は、縮合反応の前に(C)金属元素化合物をシランカップリング剤で表面処理する工程を含むことができる。金属元素化合物をシランカップリング剤で表面処理することにより、触媒活性を高めることができる。シランカップリング剤により金属元素化合物の表面を処理する方法は、従来公知の方法に従えばよい。例えば、湿式法や乾式法などを用いることができる。
【0017】
シランカップリング剤は、シランカップリング剤として従来公知のものを使用することができる。特には、触媒の分散性の観点から、後述する縮合反応に付する有機ケイ素化合物、特にはアルコキシ基を含有する有機ケイ素化合物に類似した構造を有するものが望ましい。該シランカップリング剤としては、例えば、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、スチリルトリメトキシシラン、3,3,3−トリフルオロ−プロピルトリメトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルジメトキシメチルシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、1,1,3,3,5,5−ヘキサメトキシ−1,3,5−トリメチルトリシロキサン、1,1,5,5−テトラメトキシ−1,3,5−トリメチルトリシロキサン−3−オール、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジスチリルジメトキシシラン、ジペンタフルオロフェニルジメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザンなどが挙げられる。中でも、ビニルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシランが好ましい。
【0018】
本発明の製造方法にて使用される触媒の量は、縮合反応に付する有機ケイ素化合物の合計モル量に対する(C)金属元素化合物のモル量が、0.0001〜20mol%となる量、好ましくは0.01〜10mol%となる量、より好ましくは0.1〜5mol%となる量がよい。(C)金属元素化合物の量が上記範囲内であれば、縮合反応において十分な触媒効果を得ることができ、また、反応後に濾過により触媒を除去する工程において、濾紙が目詰まりすることなく目的の縮合物を効率良く得ることができるため好ましい。
【0019】
本発明は、上記触媒の存在下で、分子中に少なくとも1個の−OX基(Xは、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、又は炭素数2〜10のアルコキシアルキル基である)を有する有機ケイ素化合物の1種以上を縮合反応する工程を含むポリオルガノシロキサンの製造方法を提供する。
【0020】
上記製造方法の第一の態様は、
(A)分子中に少なくとも1個のシラノール基を有する有機ケイ素化合物の少なくとも1種と、
(B1)分子中に少なくとも1個の、ケイ素原子に結合する−OX基(Xは、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、又は炭素数2〜10のアルコキシアルキル基である)を有する有機ケイ素化合物の少なくとも1種を、
前記触媒(C)の存在下で反応させる工程を含む、ポリオルガノシロキサンの製造方法である。
【0021】
上記製造方法の第二の態様は、
(B2)分子中に少なくとも1個の、ケイ素原子に結合する−OX’基(X’は、炭素数1〜10のアルキル基、又は炭素数2〜10のアルコキシアルキル基である)を有する有機ケイ素化合物の1種以上を、
前記触媒(C)の存在下で反応させる工程を含む、ポリオルガノシロキサンの製造方法である。
【0022】
上記製造方法の第三の態様は、
分子中に少なくとも1個のシラノール基と、少なくとも1個の、ケイ素原子に結合する−OX’基(X’は、炭素数1〜10のアルキル基、又は炭素数2〜10のアルコキシアルキル基である)とを有する有機ケイ素化合物の1種以上を、
前記触媒(C)の存在下で反応させる工程を含む、ポリオルガノシロキサンの製造方法である。
以下、各態様について説明する。
【0023】
[第一の態様]
第一の態様において、(A)成分は、分子中に少なくとも1個のシラノール基を有する有機ケイ素化合物の少なくとも1種であり、(B1)成分は、分子中に少なくとも1個の、ケイ素原子に結合する−OX基(Xは、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、又は炭素数2〜10のアルコキシアルキル基である)を有する有機ケイ素化合物の少なくとも1種である。有機ケイ素化合物は、単量体、二量体、オリゴマー、ポリマーのいずれであっても良い。また、有機ケイ素化合物がオリゴマー又はポリマーである場合、その構造は、直鎖状、分岐鎖状、分岐構造を有する直鎖状のいずれであってもよい。好ましくは直鎖状である。高分子量の縮合体を得ることを目的とする場合には、シラノール基及びケイ素原子に結合する−OX基を各々の分子中に2個以上有するものが好ましい。尚、(B1)成分のXが水素である場合、(A)成分と(B1)成分は同じ化合物であってもよい。
【0024】
(A)成分は、下記一般式(1)で表されることができる。
(RSiO(4−a−b)/2(OH)) (1)
上記式(1)において、Rは、互いに独立に、水素原子、又は、酸素原子、ハロゲン原子、窒素原子又は硫黄原子を含んでいてよい炭素数1〜18の一価炭化水素基であり、a及びbは、括弧内に示される単位毎に独立に、aは0〜3の整数であり、bは0〜4の整数であり、但し、0≦a+b≦4であり、より好ましくは2≦a+b≦4である。nは1〜10000の整数であり、但し、該ポリオルガノシロキサンは1分子中に少なくとも1個の−OH基を有する。
【0025】
(B1)成分は、下記一般式(2)で表されることができる。
(RSiO(4−a−b―c)/2(OH)(OR) (2)
上記式(2)において、Rは、互いに独立に、水素原子、又は、酸素原子、ハロゲン原子、窒素原子又は硫黄原子を含んでいてよい炭素数1〜18の一価炭化水素基であり、Rは、互いに独立に、炭素数1〜10のアルキル基または炭素数2〜10のアルコキシアルキル基であり、a、b、及びcは、括弧内に示される単位毎に独立に、aは0〜3の整数であり、bは0〜4の整数であり、cは0〜4の整数であり、但し、0≦a+b+c≦4であり、より好ましくは2≦a+b+c≦4である。nは1〜10000の整数であり、但し、該有機ケイ素化合物は1分子中に少なくとも1個の−OH基または−OR基を有する。
【0026】
上記式(1)及び(2)中、Rは、互いに独立に、水素原子、又は、酸素原子、ハロゲン原子、窒素原子又は硫黄原子を含んでいてよい炭素原子数1〜18、好ましくは炭素原子数1〜10の一価炭化水素基である。例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、オクチル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;ビニル基、アリル基等のアルケニル基;フェニル基、トリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基;これらの基の炭素原子に結合する水素原子の一部又は全部をフッ素、臭素、塩素等のハロゲン原子またはシアノ基で置換したもの、例えば、トリフルオロプロピル基、クロロプロピル基等のハロゲン化一価炭化水素基;β−シアノエチル基、γ−シアノプロピル基等のシアノアルキル基、3−メタクリルオキシプロピル基、3−グリシジルオキシプロピル基、3−メルカプトプロピル基、3−アミノプロピル基が例示される。中でもメチル基であることが好ましい。
【0027】
上記式(2)中、Rは、互いに独立に、炭素数1〜10、好ましくは1〜8のアルキル基、または炭素数2〜10、好ましくは2〜8のアルコキシアルキル基である。例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、及びオクチル基等のアルキル基;メトキシメチル基、メトキシエチル基、及びエトキシメチル基等のアルコキシアルキル基が挙げられる。中でもメチル基であることが好ましい。
【0028】
上記式(1)及び(2)中、nは1〜10000の整数であり、好ましくは1〜1000の整数である。上記の通り、式(1)及び(2)で表される有機ケイ素化合物は単量体(n=1)、二量体(n=2)、オリゴマー(n=3〜100)、及びポリマー(n=100〜10000)のいずれであっても良い。特に好ましくは、単量体(n=1)または二量体(n=2)である。
【0029】
(A)成分は、好ましくは下記式(I)で表される有機ケイ素化合物である。
【化1】

上記式中、R’は−OH又はRであり、mはn−1であり、R及びnは上記の通りである。
【0030】
上記式(I)で表される有機ケイ素化合物としては、例えば、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン−1,3−ジオール、1,1,3,3,5,5−ヘキサメチルトリシロキサン−1,5−ジオール、1,1,3,5,5−ペンタメチルトリシロキサン−1,3,5−トリオール、3−グリシジルオキシプロピルメチルシラントリオール、3−メタクリルオキシプロピルシラントリオール、3−アミノプロピルシラントリオール、3−メルカプトプロピルシラントリオール、3−クロロプロピルシラントリオール、珪酸、フェニルメチルシランジオール、ジフェニルシランジオール、ジスチリルシランジオール、ジペンタフルオロフェニルシランジオールなどが挙げられる。中でも、入手の容易さからジフェニルシランジオールが好ましい。
【0031】
(B1)成分は、好ましくは下記式(II)または(III)で表される有機ケイ素化合物である。
【化2】

上記式中、R'’は−OH、−OR又はRであり、好ましくは、R'’は−OR又はRであり、mはn−1であり、R、R及びnは上記の通りである。
【化3】
上記式中、R'’は−OH、−OR又はRであり、好ましくは、R'’は−OH又はRであり、mはn−1であり、R、R及びnは上記の通りである。
【0032】
上記式(II)で表される有機ケイ素化合物としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、スチリルトリメトキシシラン、3,3,3−トリフルオロ−プロピルトリメトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルジメトキシメチルシラン、3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、1,1,5,5−テトラメトキシ−1,3,5−トリメチルトリシロキサン−3−オール、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジスチリルジメトキシシラン、ジペンタフルオロフェニルジメトキシシランなどが挙げられる。反応性の観点から、テトラメトキシシランおよびトリメトキシシラン類が好ましい。また、上記式(III)で表される有機ケイ素化合物としては、上記式(I)で表される有機ケイ素化合物及び3−メトキシ−1,3,5−トリメチルトリシロキサン−1,1,5,5−テトラオールが挙げられる。
【0033】
(A)成分と(B)成分の配合比率は、目的とするポリオルガノシロキサンの構造に応じて適宜調整すればよい。特には、(A)成分中に含まれるシラノール基の個数と、(B)成分中に含まれる−OX基の個数が等しくなるような割合であるのがよい。即ち、((A)成分中のシラノール基の個数)/((B)成分中の−OX基の個数)の比が0.5〜1.5、特には0.8〜1.2、さらに特には0.9〜1.1となる量で反応させることが好ましい。例えば、(A)成分としてジフェニルシランジオールを用い、(B)成分としてビニルトリメトキシシランを用いる場合、(A)成分と(B)成分のモル比が3:2であることが好ましい。
【0034】
[第二の態様]
第二の態様において(B2)成分は、分子中に少なくとも1個の、ケイ素原子に結合する−OX’基(X’は、互いに独立に、炭素数1〜10のアルキル基、又は炭素数2〜10のアルコキシアルキル基である)を有する有機ケイ素化合物の1種以上である。有機ケイ素化合物は、単量体、二量体、オリゴマー、ポリマーのいずれであっても良い。また、有機ケイ素化合物がオリゴマー又はポリマーである場合は、直鎖状、分岐鎖状、分岐構造を有する直鎖状のいずれであってもよい。好ましくは直鎖状である。高分子量の縮合体を得ることを目的とする場合には、ケイ素原子に結合する−OX’基を分子中に2個以上有するものが好ましい。
【0035】
(B2)成分は、下記一般式(3)で表されることができる。
(RSiO(4−a−c)/2(OR) (3)
上記式(3)において、Rは、互いに独立に、水素原子、又は、酸素原子、ハロゲン原子、窒素原子又は硫黄原子を含んでいてよい炭素原子数1〜18、好ましくは炭素原子数1〜10の一価炭化水素基であり、上記式(1)及び(2)のために列挙したものが挙げられる。Rは、互いに独立に、炭素数1〜10、好ましくは1〜8のアルキル基、または炭素数2〜10、好ましくは2〜8のアルコキシアルキル基であり、上記式(2)のために列挙したものが挙げられる。
【0036】
上記式(3)において、a及びcは、括弧内に示される単位毎に独立に、aは0〜3の整数であり、cは0〜4の整数であり、但し、0≦a+c≦4であり、より好ましくは2≦a+c≦4である。但し、該有機ケイ素化合物は1分子中に少なくとも1個の−OR基を有する。
【0037】
上記式(3)において、nは1〜10000の整数であり、好ましくは1〜1000の整数である。上記の通り、式(3)で表される有機ケイ素化合物は単量体(n=1)、二量体(n=2)、オリゴマー(n=3〜100)、及びポリマー(n=100〜100000)のいずれであっても良い。特に好ましくは、単量体(n=1)または二量体(n=2)である。
【0038】
(B2)成分は、好ましくは下記式(IV)で表される有機ケイ素化合物である。
【化4】

上記式中、R'''は−OR又はRであり、mはn−1であり、R、R及びnは上記の通りである。
【0039】
上記式(IV)で表される有機ケイ素化合物としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、スチリルトリメトキシシラン、3,3,3−トリフルオロ−プロピルトリメトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルジメトキシメチルシラン、3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジスチリルジメトキシシラン、ジペンタフルオロフェニルジメトキシシランなどが挙げられる。反応性の観点から、テトラメトキシシランおよびトリメトキシシラン類が好ましい。
【0040】
2種類以上の有機ケイ素化合物を互いに縮合反応させる場合、各成分の配合比率は、目的とするポリオルガノシロキサンの構造に応じて適宜調整すればよい。特には、各成分中に含まれる−OX’基の個数が等しくなるような割合であるのがよい。例えば2種類を反応させるのであれば(一方の有機ケイ素化合物中の−OX’基の個数)/(他方の有機ケイ素化合物中の−OX’基の個数)の比が0.5〜1.5、特には0.8〜1.2、さらに特には0.9〜1.1となる量で反応させることが好ましい。
【0041】
[第三の態様]
第三の態様は、分子中に少なくとも1個のシラノール基と、少なくとも1個の、ケイ素原子に結合する−OX’基(X’は、炭素数1〜10のアルキル基、又は炭素数2〜10のアルコキシアルキル基である)とを有する有機ケイ素化合物の1種以上を互いに縮合反応させる工程を含む、ポリオルガノシロキサンの製造方法である。有機ケイ素化合物は、単量体、二量体、オリゴマー、ポリマーのいずれであっても良い。また、有機ケイ素化合物がオリゴマー又はポリマーである場合は、直鎖状、分岐鎖状、分岐構造を有する直鎖状のいずれであってもよい。好ましくは直鎖状である。
【0042】
上記有機ケイ素化合物は、下記一般式(4)で表されることができる。
(RSiO(4−a−b―c)/2(OH)(OR) (4)
上記式(4)において、Rは、互いに独立に、水素原子、又は、酸素原子、ハロゲン原子、窒素原子又は硫黄原子を含んでいてよい炭素原子数1〜18、好ましくは炭素原子数1〜10の一価炭化水素基であり、上記式(1)及び(2)のために列挙したものが挙げられる。Rは、互いに独立に、炭素数1〜10、好ましくは1〜8のアルキル基、または炭素数2〜10、好ましくは2〜8のアルコキシアルキル基であり、上記式(2)のために列挙したものが挙げられる。
【0043】
上記式(4)において、a、b、及びcは、括弧内に示される単位毎に独立に、aは0〜3の整数であり、bは0〜4の整数であり、cは0〜4の整数であり、但し、0≦a+b+c≦4、より好ましくは2≦a+b+c≦4である。但し、該有機ケイ素化合物は1分子中に少なくとも1個の−OH基及び少なくとも1個の−OR基を有する。
【0044】
上記式(4)において、nは1〜10000の整数であり、好ましくは1〜1000の整数である。上記の通り、式(4)で表される有機ケイ素化合物は単量体(n=1)、二量体(n=2)、オリゴマー(n=3〜100)、及びポリマー(n=100〜100000)のいずれであっても良い。特に好ましくは、単量体(n=1)または二量体(n=2)である。
【0045】
上記有機ケイ素化合物は、好ましくは下記式(V)または(VI)で表される。
【化5】
上記式中、R'’は−OH、−OR又はRであり、少なくとも1個のR'’は−OHであり、mはn−1であり、R、R及びnは上記の通りである。
【化6】
上記式中、R'’は−OH、−OR又はRであり、少なくとも1個のR'’は−ORであり、mはn−1であり、R、R及びnは上記の通りである。
【0046】
上記式(V)または(VI)で表される有機ケイ素化合物としては、1,1,5,5−テトラメトキシ−1,3,5−トリメチルトリシロキサン−3−オール、3−メトキシ−1,3,5−トリメチルトリシロキサン−1,1,5,5−テトラオール、1,3−ジメトキシ−1,3−ジメチルジシロキサン−1,3−ジオール、1,3,5−トリメトキシ−1,3,5−トリメチルトリシロキサン−1,5−ジオール、3−メトキシ−1,1,5,5−ペンタメチルトリシロキサン−1,3,5−トリオール、メトキシメチルシランジオール、ジメトキシシランジオール等が挙げられる。
【0047】
2種類以上の有機ケイ素化合物を互いに縮合反応させる場合、各成分の配合比率は、目的とするポリオルガノシロキサンの構造に応じて適宜調整すればよい。特には、高分子量の縮合物を得るためには、各成分中に含まれるシラノール基及び−OX’基の合計個数が等しくなるような割合であるのがよい。例えば、2種類を反応させるのであれば(一方の有機ケイ素化合物中のシラノール基及び−OX’基の合計個数)/(他方の有機ケイ素化合物中のシラノール基及び−OX’基の合計個数)の比が0.5〜1.5、特には0.8〜1.2、さらに特には0.9〜1.1となる量で反応させることが好ましい。
【0048】
本発明における縮合反応は(D)少なくとも1種の溶媒の存在下で行うことができる。溶媒は、縮合反応の速度および反応率を調整するため、あるいは生成する縮合物の希釈剤として用いられる。該溶媒は、非極性溶媒及び極性溶媒から選ばれる1種以上であればよい。非極性溶媒としては、例えば、n-ヘキサン、n-ヘプタン、イソオクタンなどの炭化水素類、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類などが挙げられる。極性溶媒としては、例えば、水;メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類;アルコールエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;ジエチルエーテル、ジブチルエーテルなどのエーテル類;酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチルなどのエステル類;アセトニトリルなどのシアン化炭化水素類;アミン類;アセトアミドなどのアミド類;塩化メチレン、クロロホルム、ヘキサフロロメタキシレンなどのハロゲン化炭化水素類;ジメチルスルホキシドなどの含硫黄化合物類が挙げられる。溶媒の使用量は特に限定されるものではなく、適宜調製すればよい。通常、縮合反応に付する有機ケイ素化合物の濃度が3〜97質量%、好ましくは20〜80質量%となる量であるのがよい。尚、本発明の製造方法における縮合反応は無溶剤系で行うこともできる。
【0049】
本発明における縮合反応は、縮合反応の進行を妨げるものでなければ、その他の成分を使用しても良い。例えば、固体触媒の分散性を高める目的で中性界面活性剤を添加することができる。また、上記一般式(1)〜(4)におけるRが反応性を有する場合には、反応抑制剤を添加してもよい。これらの成分は1種単独で用いても、2種以上を併用しても良い。また、添加量は、本発明の効果を妨げない範囲で適宜調整すればよい。
【0050】
本発明における縮合反応は、加熱条件下で行っても良い。反応温度の好ましい範囲は0〜150℃であり、より好ましくは60〜100℃である。
【0051】
本発明の製造方法はさらに、縮合反応終了後に触媒を濾過する工程を含むのが好ましい。本発明の製造方法では、該工程により、触媒を反応生成物から容易に除去することができる。濾過には、得られた反応生成物の粘度を調節する目的で、上述した(D)溶媒を使用してもよい。
【0052】
本発明の製造方法はさらに、反応生成物から未反応モノマーを除去する目的で、水洗、減圧ストリップ、活性炭処理など公知の方法により精製を行う工程を含んでいてもよい。
【0053】
本発明の製造方法は、シラノール基及び/又はアルコキシシリル基を有する有機ケイ素化合物の1種以上を互いに縮合反応させる工程を含むポリオルガノシロキサンの製造方法において、アルカリ土類金属の水酸化物のような腐食性や毒性を有した触媒を使用せずに所望とするポリオルガノシロキサンを製造することができる。また、本発明の製造方法で得られたポリオルガノシロキサンは、経時で金属製部品等を侵すことがない。従って、該ポリオルガノシロキサンを電子部品等の保護材等のために使用することにより、長期信頼性に優れる物品を提供することができる。
【実施例】
【0054】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明をより詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、実施例中の部はいずれも質量部を意味する。
【0055】
下記実施例に示した重量平均分子量(Mw)はポリスチレンを標準物質としたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定した値である。以下に測定条件を示す。
[GPC測定条件]
展開溶媒:テトラヒドロフラン
流速:0.6mL/min
カラム:TSK Guardcolumn SuperH−L
TSKgel SuperH4000(6.0mmI.D.×15cm×1)
TSKgel SuperH3000(6.0mmI.D.×15cm×1)
TSKgel SuperH2000(6.0mmI.D.×15cm×2)
(いずれも東ソー社製)
カラム温度:40℃
試料注入量:20μL (試料濃度:0.5wt%−テトラヒドロフラン溶液)
検出器:示差屈折率計(RI)
【0056】
実施例及び比較例において使用した化合物の構造を以下に示す。
(1)ジフェニルシランジオール(DPS)
【化7】
(2)1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン−1,3−ジオール(TDS)
【化8】
(3)トリメトキシビニルシラン(TVS)
【化9】

(4)3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン(GTS)
【化10】
【0057】
[実施例1〜17、及び比較例1]
・ポリオルガノシロキサンの製造
ジフェニルシランジオール(DPS)(259.57g、1.2mol)、トリメトキシビニルシラン(TVS)(118.59g、0.8mol)、および下記表1に記載される種類及び量の溶媒を混合した(但し、実施例1、5、9及び14は溶媒を使用しない)。該混合物を、攪拌しながら80℃で10分加熱した。その後、下記表1に記載される各触媒を0.1mol加え、80℃でメタノールを除去しながら96時間反応を行った。この間、反応液の様子を観察し、反応液が白濁から透明になるまでの時間、即ち、固体粉末状であるDPSモノマーが全て反応するまでの時間を目視により記録した。該時間を反応時間として表1に示す。また、反応8時間後と反応96時間後に生成した縮合物のサンプリングを行い、GPCにより重量平均分子量(Mw)を測定した。測定結果を表1に示す。96時間後、脱溶媒を行い、続いて0.45μm孔径の濾紙を用いて濾過することで触媒を除去し、ポリオルガノシロキサンを得た。
【0058】
【表1】
【0059】
・腐食性試験
実施例1〜17及び比較例1の製造方法により得られた各ポリオルガノシロキサンを用いて腐食性試験を行い、長期保存にてポリオルガノシロキサンがアルミニウム版を腐食するか否かを確認した。試験方法及び結果を以下に記載する。
【0060】
(試験方法)
直径35mm×高さ17mmのガラスシャーレ中に15mm×15mm×0.5mmのアルミニウム板を静置した後、上記方法で得られたポリオルガノシロキサンをガラスシャーレ底部からおよそ10mmの高さまで注ぎ入れ、各試験サンプルを作製した。その後、湿度85%、温度85℃の環境下で168時間放置し、アルミニウム板表面の腐食度合を目視により観察した。
【0061】
(結果)
実施例1〜17の製造方法にて得られたポリオルガノシロキサンを使用した試験サンプルは、ポリオルガノシロキサンがアルミニウム板を腐食せず、アルミニウム板表面は全く変色しなかった。一方、比較例1の製造方法にて得られたポリオルガノシロキサンを使用した試験サンプルは、ポリオルガノシロキサンがアルミニウム板を腐食し、アルミニウム板表面が白く変色した。
【0062】
[実施例18〜23、及び比較例2]
・ポリオルガノシロキサンの製造
ジフェニルシランジオール(DPS)(259.57g、1.2mol)、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン(GTS)(189.07g、0.8mol)、および下記表2に記載される種類及び量の溶媒を混合した(但し、実施例18、20、21及び23は溶媒を使用しない)。該混合物を、攪拌しながら80℃で10分加熱した。その後、下記表2に記載される各触媒を0.1mol加え、80℃でメタノールを除去しながら96時間反応を行った。この間、反応液の様子を観察し、反応液が白濁から透明になるまでの時間、即ち、固体粉末状であるDPSモノマーが全て反応するまでの時間を目視により記録した。該時間を反応時間として表2に示す。また、反応8時間後と反応96時間後に生成した縮合物のサンプリングを行い、GPCにより重量平均分子量(Mw)を測定した。測定結果を表2に示す。96時間後、脱溶媒を行い、続いて0.45μm孔径の濾紙を用いて濾過することで触媒を除去し、ポリオルガノシロキサンを得た。
【0063】
【表2】
【0064】
・腐食性試験
上記実施例18〜23及び比較例2の製造方法により得られた各ポリオルガノシロキサンを用いて腐食性試験を行い、長期保存にてポリオルガノシロキサンがアルミニウム版を腐食するか否かを確認した。試験方法は上記と同じである。結果を以下に記載する。
【0065】
(結果)
実施例18〜23の製造方法にて得られたポリオルガノシロキサンを使用した試験サンプルは、ポリオルガノシロキサンがアルミニウム板を腐食せず、アルミニウム板表面は全く変色しなかった。一方、比較例2の製造方法にて得られたポリオルガノシロキサンを使用した試験サンプルは、ポリオルガノシロキサンがアルミニウム板を腐食し、アルミニウム板表面が白く変色した。
【0066】
[実施例24〜28、及び比較例3]
・ポリオルガノシロキサンの製造
1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン−1,3−ジオール(TDS)(199.60g、1.2mol)、トリメトキシビニルシラン(TVS)(118.59g、0.8mol)、およびキシレン(79.55g、20wt%)を混合し、攪拌しながら40℃で10分加熱した。その後、下記表3に記載される各触媒を0.1mol加え、40℃で96時間反応を行った。この間、反応液の様子を観察し、反応液が白濁から透明になるまでの時間、即ち、固体粉末状であるTDSモノマーが全て反応するまでの時間を目視により記録した。該時間を反応時間として表3に示す。また、反応48時間後と反応96時間後に生成した縮合物のサンプリングを行い、GPCにより重量平均分子量(Mw)を測定した。測定結果を表3に示す。96時間後、脱溶媒を行い、続いて0.45μm孔径の濾紙を用いて濾過することで触媒を除去した。
【0067】
【表3】
【0068】
・腐食性試験
上記実施例24〜28及び比較例3の製造方法により得られた各ポリオルガノシロキサンを用いて腐食性試験を行い、長期保存にてポリオルガノシロキサンがアルミニウム版を腐食するか否かを確認した。試験方法は上記と同じである。結果を以下に記載する。
【0069】
(結果)
実施例24〜28の製造方法にて得られたポリオルガノシロキサンを使用した試験サンプルは、ポリオルガノシロキサンがアルミニウム板を腐食せず、アルミニウム板表面は全く変色しなかった。一方、比較例3の製造方法にて得られたポリオルガノシロキサンを使用した試験サンプルは、ポリオルガノシロキサンがアルミニウム板を腐食し、アルミニウム板表面が白く変色した。
【0070】
上記の通り、アルカリ土類金属系触媒を使用して製造したポリオルガノシロキサンは、経時でアルミニウム板を腐食し、アルミニウム板表面の変色を起こす。これに対し、周期表第3〜第15族に属する金属元素の水酸化物及び/又は酸化物を触媒として使用する本発明の製造方法は、得られるポリオルガノシロキサンが経時でアルミニウム板や他の部材腐食しない
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明の製造方法に依れば、アルカリ土類金属系触媒のような腐食性や毒性を有する触媒を使用せずに、所望とするポリオルガノシロキサンを製造することができる。また、本発明の製造方法で得られたポリオルガノシロキサンは、経時で金属製部品等を侵すことがない。従って、該ポリオルガノシロキサンを電子部品等の保護材等のために使用することにより、長期信頼性に優れる物品を提供することができる。