【実施例】
【0033】
<呈味改善剤(乳酸発酵酵母エキス)の作製>
[実施例1]
蒸留水に、酵母エキス(商品名:ギステックス;DSM社製、固形分:74%)が固形分として25(w/w)%、およびブドウ糖果糖液糖(商品名:NF42 ニューフラクトR−O:昭和産業社製)が4(w/w)%となるように加え、溶解して発酵前液を作製した。その発酵前液にLactobacillus plantarum(FERM P−21349)を発酵初発の菌数が1.0×10
6cf
u/mLとなるように添加し、30℃、144時間発酵して発酵液を得た。次いで、発酵液を水酸化カリウムでpH6.0になるように調整した後、乾燥後の酵母エキス固形分が60(w/w)%になる様に粉末化助剤(商品名:パインデックス#2;松谷化学工業社製、デキストリン)を添加してスプレードライ法で粉末化して乳酸発酵酵母エキスを含有する呈味改善剤(実施例品1)を得た。
得られた呈味改善剤(実施例品1)に含まれる乳酸は、呈味改善剤(実施例品1)1.25g(酵母エキス固形分:0.75g)を蒸留水に溶解・分散して250mLとした後に遠心分離(3000rpm、15分間)により不溶成分を除き、バイオセンサーBF5(型式;王子計測社製、酵素電極法)を用いて、L乳酸およびD乳酸の量を測定した。L乳酸、D乳酸の合計量を酵母エキス固形分で除して酵母エキス固形分あたりの乳酸の比率を求めたところ、酵母エキス固形分あたりの乳酸含有量は20.9(w/w)%であった。
呈味改善剤(実施例品1)の使用乳酸菌、発酵条件、酵母エキス固形分あたりの乳酸含有量を表1に示す。
【0034】
[実施例2〜4]
実施例1において、Lactobacillus plantarum(FERM P−21349)を、Lactobacillus brevis(NRIC1038)、Lactobacillus bulgaricus(NRIC1041)、Lactobacillus casei(NRIC0644)に替えた以外は同様の操作を行い、乳酸発酵酵母エキスを含有する呈味改善剤(実施例品2〜4)を得た。呈味改善剤(実施例品2〜4)の使用乳酸菌、発酵条件、酵母エキス固形分あたりの乳酸含有量をまとめて表1に示す。
【0035】
[実施例5〜7]
実施例1において、発酵時間を144時間から48時間、24時間、18時間に替えた以外は同様の操作を行い、乳酸発酵酵母エキスを含有する呈味改善剤(実施例品5〜7)を得た。呈味改善剤(実施例品5〜7)の使用乳酸菌、発酵条件、酵母エキス固形分あたりの乳酸含有量をまとめて表1に示す。
【0036】
【表1】
【0037】
<アジピン酸水溶液での酸味抑制確認テスト:試験区1>
アジピン酸(商品名;関東化学社製)を水に溶解して0.1(w/w)%に調整したアジピン酸水溶液(pH3.32)100gに、呈味改善剤(実施例品1〜7)0.2g(試験区1−1〜1−7)を添加し、酸味の抑制効果を官能評価で確認した。また、比較として呈味改善剤(実施例品1〜7)に替えて酵母エキス(商品名:ギステックス;DSM社製、固形分:74%)0.16g(試験区1−8)、乳酸(商品名:発酵乳酸88%;新進社製)0.03g(試験区1−9)、酵母エキス(商品名:ギステックス;DSM社製、固形分:74%)0.16gと乳酸(商品名:発酵乳酸88%;新進社製)0.03g(試験区1−10)を添加し、酸味の抑制効果を官能評価で確認した。尚、呈味改善剤(実施例品1〜7)を添加したアジピン酸水溶液のpHに変化はなかった。
官能評価は、下記表2に示す評価基準に従い10名のパネラーでおこなった。結果はそれぞれ10名の評点の平均値として求め、下記基準にて記号化した。結果を表3に示す。
記号化
◎: 平均値 3.5以上
○: 平均値 2.5以上〜3.5未満
△: 平均値 1.5以上〜2.5未満
×: 平均値 1.5未満
【0038】
【表2】
【0039】
【表3】
結果より、乳酸発酵酵母エキスを含有する呈味改善剤は、アジピン酸水溶液の酸味を抑制した。一方、乳酸発酵していない酵母エキスおよび/または乳酸は、アジピン酸水溶液の酸味を抑制しなかった。
【0040】
<各種酸剤水溶液での酸味抑制確認テスト:試験区2>
下記酸剤を水に溶解して下記濃度の酸剤水溶液を調整し、各酸剤水溶液100gに、呈味改質剤(実施例品1)0.2g(試験区2−1〜2−8)、酵母エキス(商品名:ギステックス;DSM社製、固形分:74%)0.16g(試験区2−9〜2−16)を添加し、酸味の抑制効果を官能評価で確認した。尚、呈味改善剤(実施例品1)を添加した各酸水溶液のpHに変化はなかった。
官能評価は、試験区1と同じ方法でおこなった。結果を表4に示す。
クエン酸(商品名:クエン酸フソウ(無水);扶桑化学工業社製)、0.1(w/w)%クエン酸水溶液(pH2.78)
酒石酸(商品名:L−酒石酸;DSP五協フード&ケミカル社製)、0.2(w/w)%酒石酸水溶液(pH2.52)
グルコン酸(商品名:50%グルコン酸溶液;関東化学社製)、0.3(w/w)%グルコン酸水溶液(pH2.29)
乳酸(商品名:商品名:発酵乳酸88%;新進社製)、0.2(w/w)%乳酸水溶液(pH2.89)
リン酸(商品名:0.5mol/L りん酸;関東化学社製)、0.1(w/w)%リン酸水溶液(pH2.29)
フマル酸(商品名:フマル酸;関東化学社製)、0.2(w/w)%フマル酸水溶液(pH2.45)
リンゴ酸(商品名:DL−リンゴ酸60メッシュ;磐田化学工業社製)、0.1(w/w)%リンゴ酸水溶液(pH2.80)
コハク酸1ナトリウム(商品名:コハク酸一ソーダ協和R;協和ハイフーズ社製)、0.1(w/w)%コハク酸1ナトリウム水溶液(pH4.85)
【0041】
【表4】
結果より、乳酸発酵酵母エキスを含有する呈味改善剤は、各種酸剤水溶液の酸味を抑制した。一方乳酸発酵していない酵母エキスは、各種酸剤水溶液の酸味を抑制しなかった。
【0042】
<プロピオン酸水溶液、酢酸水溶液での酸味および酸臭抑制確認テスト:試験区3>
プロピオン酸(商品名:プロピオン酸;関東化学社製)、酢酸(商品名:90%純良酢酸;ダイセル化学工業社製)をそれぞれ水に溶解して0.2(w/w)%に調整したプロピオン酸水溶液(pH3.27)、酢酸水溶液(pH3.15)100gに、呈味改善剤(実施例品1)0.2g(試験区3−1、3−2)を添加し、酸味および酸臭の抑制効果を官能評価で確認した。また、比較として呈味改善剤(実施例品1)に替えて酵母エキス(商品名:ギステックス;DSM社製、固形分:74%)0.16g(試験区3−3、3−4)、乳酸(商品名:発酵乳酸88%;新進社製)0.03g(試験区3−5、3−6)、酵母エキス(商品名:ギステックス;DSM社製、固形分:74%)0.16gと乳酸(商品名:発酵乳酸88%;新進社製)0.03g(試験区3−7、3−8)を添加し、酸味および酸臭の抑制効果を官能評価で確認した。尚、呈味改善剤(実施例品1)を添加したプロピオン酸水溶液および酢酸水溶液のpHに変化はなかった。
官能評価は、表2および下記表5に示す評価基準に従い10名のパネラーでおこなった。結果はそれぞれ10名の評点の平均値として求め、下記基準にて記号化した。結果を表6に示す。
記号化
◎: 平均値 3.5以上
○: 平均値 2.5以上〜3.5未満
△: 平均値 1.5以上〜2.5未満
×: 平均値 1.5未満
【0043】
【表5】
【0044】
【表6】
結果より、乳酸発酵酵母エキスを含有する呈味改善剤は、各種酸剤水溶液の酸味および酸臭を抑制した。一方乳酸発酵していない酵母エキスおよび/または乳酸は、各種酸剤水溶液の酸味および酸臭を抑制しなかった。
【0045】
<醸造酢での酸味および酸臭抑制確認テスト:試験区4>
醸造酢(商品名:ヘルシー穀物酢稀選丸大;タマノイ酢社製、酢酸濃度=4.25(w/v)%)を水に溶解し5(w/w)%に調整した醸造酢希釈水溶液(pH3.21)100gに、呈味改善剤(実施例品1)をそれぞれ0.1g、0.3g、0.5g(試験区4−1〜3)添加し、酸味および酸臭の抑制効果を官能評価で確認した。また、比較として呈味改善剤(実施例品1)に替えて酵母エキス(商品名:ギステックス;DSM社製、固形分:74%)0.08g、0.24g、0.4g(試験区4−4〜4−6)、乳酸(商品名:発酵乳酸88%;新進社製)0.07g(試験区4−7)、酵母エキス(商品名:ギステックス;DSM社製、固形分:74%)0.4gと乳酸(商品名:発酵乳酸88%;新進社製)0.07g(試験区4−8)を添加し、酸味および酸臭の抑制効果を官能評価で確認した。尚、呈味改善剤(実施例品1)を添加した醸造酢希釈水溶液のpHに変化はなかった。
官能評価は、試験区3と同じ方法で行なった。結果を表7に示す。
【0046】
【表7】
結果より、乳酸発酵酵母エキスを含有する呈味改善剤は、醸造酢希釈水溶液の酸味および酸臭を抑制した。一方乳酸発酵していない酵母エキスおよび/または乳酸は、醸造酢希釈水溶液の酸味および酸臭を抑制しなかった。
【0047】
<ポン酢での酸味および酸臭抑制確認テスト:試験区5>
ポン酢(ミツカン社製、酢酸濃度=1.36(w/w)%)を水に溶解し50(w/w)%に調整したポン酢希釈液(pH4.07)100gに、呈味改善剤(実施例品1)をそれぞれ0.1g、0.3g、0.5g(試験区5−1〜5−3)添加し、酸味および酸臭の抑制効果を官能評価で確認した。また、比較として呈味改善剤(実施例品1)に替えて酵母エキス(商品名:ギステックス;DSM社製、固形分:74%)を0.08g、0.24g、0.4g(試験区5−4〜試験区5−6)、乳酸(商品名:発酵乳酸88%;新進社製)0.07g(試験区5−7)、酵母エキス(商品名:ギステックス;DSM社製、固形分:74%)0.4gと乳酸(商品名:発酵乳酸88%;新進社製)0.07g(試験区5−8)を添加し、酸味および酸臭の抑制効果を官能評価で確認した。尚、呈味改善剤(実施例品1)を添加したポン酢のpHに変化はなかった。
官能評価は、試験区3と同じ方法で行なった。結果を表8に示す。
【0048】
【表8】
結果より、乳酸発酵酵母エキスを含有する呈味改善剤は、ポン酢の酸味および酸臭を抑制した。一方乳酸発酵していない酵母エキスおよび/または乳酸は、ポン酢の酸味および酸臭を抑制しなかった。
【0049】
<レモン飲料での酸味および酸臭抑制確認テスト:テスト区6>
レモン果汁(ポッカ社製、クエン酸濃度=6.53(w/v)%)を水に溶解し15(w/w)%に調整したレモン飲料(pH2.54)100gに、呈味改善剤(実施例品1)をそれぞれ0.1g、0.3g、0.5g(試験区6−1〜6−3)を添加し酸味の抑制効果を官能評価で確認した。また、比較として呈味改善剤(実施例品1)に替えて酵母エキス(商品名:ギステックス;DSM社製、固形分:74%)を0.08、0.24、0.4g(試験区5−4〜5−6)、乳酸(商品名:発酵乳酸88%;新進社製)0.07g(試験区5−7)、酵母エキス(商品名:ギステックス;DSM社製、固形分:74%)0.4gと乳酸(商品名:発酵乳酸88%;新進社製)0.07g(試験区5−8)を添加し、酸味の抑制効果を官能評価で確認した。尚、呈味改善剤(実施例品1)を添加したレモン飲料のpHに変化はなかった。
官能評価は、試験区1と同じ方法で行なった。結果を表9に示す。
【0050】
【表9】
結果より、乳酸発酵酵母エキスを含有する呈味改善剤は、レモン飲料の酸味を抑制した。一方乳酸発酵していない酵母エキスおよび/または乳酸は、レモン飲料の酸味を抑制しなかった。
【0051】
<ポテトサラダでの酸味および酸臭抑制確認テスト:テスト区7>
茹でたジャガイモ250g、醸造酢(商品名:ヘルシー穀物酢稀選丸大;タマノイ酢社製)4g、マヨネーズ(キューピー社製)18g、食塩0.8g、白胡椒末0.15gを混合して得たポテトサラダ272.95g(10(w/w)%水溶液のpH5.2)に対し、乳酸発酵酵母エキス(実施例品1)をそれぞれ1.4g、1.9g(試験区7−1、7−2)を添加して混ぜ合わせた後、酸味および酸臭の抑制効果を官能評価で確認した。また、比較として呈味改善剤(実施例品1)に替えて酵母エキス(商品名:ギステックス;DSM社製、固形分:74%)を1.1g、1.5g(試験区7−3、7−4)、乳酸(商品名:発酵乳酸88%;新進社製)0.27g(試験区7−5)、酵母エキス(商品名:ギステックス;DSM社製、固形分:74%)1.5gと乳酸(商品名:発酵乳酸88%;新進社製)0.27g(試験区7−6)を添加して混ぜ合わせた後、酸味および酸臭の抑制効果を官能評価で確認した。尚、呈味改善剤(実施例品1)を添加したポテトサラダのpHに変化はなかった。
官能評価は、試験区3と同じ方法で行なった。結果を表10に示す。
【0052】
【表10】
結果より、乳酸発酵酵母エキスを含有する呈味改善剤は、ポテトサラダの酸味および酸臭を抑制した。一方乳酸発酵していない酵母エキスおよび/または乳酸は、ポテトサラダの酸味および酸臭を抑制しなかった。