(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記金属マスク形成工程では,前記金属ペーストと前記レジスト膜が下向きになるように上下逆さにした状態で,前記加熱制御を行うことを特徴とする,請求項1又は2に記載のエッチング方法。
前記金属ペースト充填工程は,スキージー法によって前記金属ペーストを前記レジスト膜の反転パターンに充填することを特徴とする,請求項1〜3のいずれかに記載のエッチング方法。
前記金属ペーストは,ペースト状のアルミニウム,クロム,ニッケル又は酸化インジウムスズのいずれかであることを特徴とする,請求項1〜4のいずれかに記載のエッチング方法。
前記エッチング工程では,前記半導体に深さ90μm以上のエッチングを行う又は前記半導体を貫通させるエッチングを行うことを特徴とする,請求項1〜7のいずれかに記載のエッチング方法。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に添付図面を参照しながら,本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお,本明細書及び図面において,実質的に同一の機能構成を有する構成要素については,同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0023】
本発明にかかる金属マスクによるエッチング方法を説明するのに先立って,金属マスクのエッチングパターンの開口部形状の相違によるエッチング結果の相違について図面を参照しながら説明する。
【0024】
図1Aはエッチング対象膜(例えばSiC膜)上に形成した金属マスクのエッチングパターンの開口部側壁がテーパ状である場合を観念的に示す断面図であり,
図1Bはそのテーパ状エッチングパターンの金属マスクを用いてエッチング対象膜をエッチングした結果を示す断面図である。
図2は,
図1Aに示す金属マスクがウエットエッチングで形成される過程を観念的に示す断面図である。
図3Aはエッチング対象膜(例えばSiC膜)上に形成した金属マスクのエッチングパターンの開口部側壁が垂直状である場合を観念的に示す断面図であり,
図3Bはその垂直状エッチングパターンの金属マスクを用いてエッチング対象膜をエッチングした結果を示す断面図である。
【0025】
図1Aに示すテーパ状エッチングパターンの金属マスク10は,例えば
図2に示すように,エッチング対象膜20上に形成した金属膜30をウエットエッチングした場合に形成される。具体的には金属膜30をウエットエッチングする際,金属膜30上に開口部42がパターニングされたレジスト膜40を成膜する。そして,それを薬液に浸すことで,金属膜30のレジスト膜40の開口部42によって露出された部分だけウエットエッチングされる。これにより,
図2に示すような開口部32のエッチングパターンを形成することができる。
【0026】
ところが,このとき,薬液は等方的に,縦方向だけでなく横方向にも広がる。例えば深さ10μmの金属マスクを製作するためにウエットエッチングを行うと,
図2に示すようにレジスト膜40下で金属膜30の横方向にも薬液が10μm程度広がってしまう。このため,最終的に製作される金属膜30の開口部32の側壁の形状は,深さ方向に狭くなるテーパ状となるので,深さ方向に向かうにしたがって金属マスクが薄くなってしまう。
【0027】
このようなテーパ状エッチングパターンの金属マスクを用いてエッチング対象膜20をプラズマエッチングすると,
図1Bに示すように,エッチング対象膜20に形成された凹部22もその開口部が広がってしまい,深さ方向に向けて徐々に狭くなるテーパ状になってしまう。これでは,垂直性の高い所望のエッチング形状を形成できない。
【0028】
具体的には,
図1Aに示すように金属マスクのエッチングパターンがテーパ状の場合には,開口部32の中心に向かうに連れて徐々に薄くなるので,エッチング中にその薄い部分が削れたり剥離したりすることで,
図1Bに示すエッチング後の凹部22の開口幅W1afは
図1Aに示すエッチング前の凹部22の開口幅W1bfよりも大きくなってしまう。例えばエッチング前の凹部22の開口幅W1bfが50μm程度の場合,エッチング後の凹部22の開口幅W1afは90μm程度と略2倍程度に広がってしまう。なお,エッチング後の金属マスク10の全体の厚みH1afは,エッチング前の金属マスクの厚みH1bfよりも薄くなる。
【0029】
これに対して,
図3Aのように垂直状エッチングパターンの金属マスク60を用いてエッチング対象膜20をエッチングすると,
図3Bのようにエッチング対象膜20に形成された凹部22もその開口幅が広がることなく,またエッチング形状もテーパ状になることなく,その側壁の垂直性を確保することができる。すなわち,金属マスク60の開口部62の側壁の垂直性が高いほど,エッチング後の凹部22の開口幅W2afはエッチング前の凹部22の開口幅W2bfとほとんど変わらなくすることができる。なお,エッチング後の金属マスク60の全体の厚みH2afが,エッチング後の金属マスクの厚みH2bfよりも薄くなる点では,金属マスクがテーパ状の場合(
図1A,
図1B)と同様である。
【0030】
ところで,プラズマを生成しながら所定の処理ガスを用いてエッチングするプラズマエッチング技術であれば,異方性エッチングを行うことができるので,ウエットエッチングよりも垂直性の高い金属マスクを形成することも可能と考えられる。ところが,近年では,エッチング対象膜のエッチング形状として例えば数十〜数百μm以上の非常に深いエッチング形状を要求される場合もあり,このような場合には,金属マスクも相当程度の厚みで形成しなければエッチングできない。例えばSiC基板のプラズマエッチングでは,金属マスクにエッチング選択比の高いアルミニウム(Al)が用いられるが,SiC基板を深さ100μm程度エッチングするには,その選択比(SiC/Al)が10程度であれば,膜厚は10μm以上必要になる。ところが,このように厚い金属マスクを作製するためには,金属とレジストとの強度の関係から,プラズマエッチングが困難である。
【0031】
このため,従来,このような膜厚の大きなアルミマスクをパターニングするには,ウエットエッチングが用いられていたが,ウエットエッチングで金属マスクを形成すると,上述したように,開口部の側壁がテーパ状になってしまい,所望通りの垂直性の高いエッチング形状を形成できないという問題がある。
【0032】
そこで,本実施形態では,金属マスクをウエットエッチングやプラズマエッチングによって形成するのではなく,金属ペーストを用いて形成するようにしたものである。これによれば,厚みのある垂直状の開口部を有するエッチングパターンをパターニングした金属マスクを形成することができる。
【0033】
(本実施形態にかかる金属マスクによるエッチング方法)
ここで,本発明の実施形態にかかる金属ペーストで形成した金属マスクによるエッチング方法について,図面を参照しながら説明する。
図4は本実施形態のエッチング方法の工程の流れを示す図である。
図5A〜
図5Fは,
図4に示す各工程を説明するための工程図であって,基板の状態を模式的に示す部分断面図である。
【0034】
図4,
図5A〜
図5Fに示すように,本実施形態のエッチング方法では,先ずステップS100にて金属ペースト140を充填するための反転パターン120aをパターニングしたレジスト膜120をエッチング対象としての半導体110上に形成し(レジスト膜形成工程:
図5A参照),次いでステップS200にてその反転パターン120aに金属ペースト140を充填する工程(金属ペースト充填工程:
図5B,
図5C参照)を行った後,ステップS300にて加熱制御により金属ペースト140を焼成しながらレジスト膜120を除去することによって,金属マスク160を形成する(金属マスク形成工程:
図5D,
図5E参照)。そして,ステップS400にてその金属マスク160をマスクとして半導体110のプラズマエッチングを行う(エッチング工程:
図5F参照)。
【0035】
以下,上記各工程(ステップS100〜S400)について詳細に説明する。本実施形態では,金属ペーストの一例としてアルミニウムを素材としたペースト(以下,アルミペーストという。)を用い,アルミペーストで形成した金属マスク(以下,アルミマスクという。)を用いて,半導体の一例として炭化ケイ素(SiC)基板をエッチングする方法を例に挙げる。したがって,以下では,金属ペーストはアルミペースト,金属マスクはアルミマスク,半導体はSiC基板(炭化ケイ素基板)に置き換えて説明する。
【0036】
<レジスト膜形成工程>
まず,
図4に示すレジスト膜形成工程(ステップS100)について,
図5Aを参照しながら説明する。レジスト膜形成工程では,アルミペースト140を充填するための反転パターン120aをパターニングしたレジスト膜120を,エッチング対象としてのSiC基板110上に形成する。ここでの反転パターンは,SiC基板110にホール(孔)やトレンチ(溝)などのエッチング形状を形成するためのエッチングパターンを,反転させたパターンである。
【0037】
より具体的に説明すると,SiC基板110をエッチングするための金属マスクには,SiC基板110においてエッチング形状(ホールやトレンチなど)を形成する領域を露出する開口部と,それ以外の領域を露出しないようにマスクするマスク部とを有するエッチングパターンをパターニングする必要がある。そのため,金属マスクを形成するためのレジスト膜はそのエッチングパターンを反転させた反転パターン,すなわちエッチングパターンのマスク部となる領域にはレジスト膜を形成せずに開口部となるようにし,エッチングパターンの開口部となる領域にはレジスト膜を形成せずにマスク部となるような反転パターンのレジスト膜を形成する。このような反転パターンのレジスト膜を形成することで,SiC基板110のエッチングパターンのマスク部にはアルミペーストを充填させ,開口部にはアルミペーストが充填されないようにすることができる。
【0038】
このようなレジスト膜120の形成には,例えばフォトリソグラフィー法を利用することができる。具体的には,まず所望のパターンに紫外線が露光されるように設計されたフォトマスクを介してレジスト膜120に紫外線を照射し,その後現像処理を施すことにより,レジスト膜120に反転パターン120aを形成する。これによれば,例えば
図5Aに示すように,レジスト膜120の開口部の側壁を垂直状にすることができる。
【0039】
しかも,この方法によればレジスト膜120の厚みを厚くしても,垂直性の高い側壁を形成できる。こうして形成したレジスト膜120によれば,上述した金属膜をエッチングしてアルミマスクを形成する場合とは異なって厚みによる不具合もないため,厚いレジスト膜の反転パターンにアルミペーストを充填することで,形成されるアルミマスクの厚みもより厚くすることができる。例えば上述したような膜厚100μmのレジスト膜を形成することも可能である。
【0040】
なお,アルミペーストを充填する際にレジスト膜120の反転パターン120aが変形しないように,レジスト膜120を形成した後には加熱処理を施すなどしてレジスト膜120の強度を高めるようにしてもよい。
【0041】
<金属ペースト充填工程>
次に,
図4に示す金属ペースト充填工程(ステップS200)について,
図5B,
図5Cを参照しながら説明する。金属ペースト充填工程では,レジスト膜120の反転パターン120aにアルミペースト140を充填する。ここでのアルミペースト140は,例えばペースト状のアルミニウム顔料であり,高純度のアルミニウムから作られる。アルミペーストの主な用途は,太陽電池電極や,自動車等の塗料として知られている。一般に金属ペーストは,金属粉末,溶剤,及び樹脂(バインダ)等により構成される。本実施形態で用いるアルミペーストは,後工程の金属マスク形成工程(S300)において焼成されてSiC基板110に密着させる。そこで,このことを考慮して,アルミペーストの成分の調整を行うことが好ましい。ここでは一例として,高純度のアルミニウム粉末48.7%,ガラス粉末2.0%,樹脂5.6%に,有機溶剤を加えて生成したものを用いる。
【0042】
高品質の金属粉末を製造には例えばアトマイズ法(Atomization)を用いることができる。アトマイズ法は,溶融アルミニウムを気体のエネルギーを利用し粉化することにより,金属粉末を製造する方法である。アトマイズ法によれば,アルミペーストの粒径を調整できる。アルミペーストの粒径は,後工程のエッチング工程(ステップS400)においてエッチング対象である半導体にホール又はトレンチを形成する場合には,そのホール径又はトレンチ幅の1/10以下であることが好ましい。例えばホール径又はトレンチ幅が50μm〜60μmの場合は,アルミニウムの粒径は3μm程度にすることが好ましい。
【0043】
(アルミペーストの充填)
金属ペースト充填工程では,このようなアルミペーストを上記ステップS100で形成されたレジスト膜120の反転パターン120aの開口部に充填する。アルミペーストの充填には,例えばスキージー法を用いることができる。スキージー(squeegee又はsquilgee)とは,一般に,まっすぐで滑らかなゴム製のブレード部分を使って,平らな表面の水分を取り除くのに使う道具である。スキージー法によれば,ゴム製のスキージーをレジスト膜120上を滑らせることによってアルミペーストを塗布することができる。
【0044】
ここで,このスキージー法によってアルミペーストを充填する方法について,
図5B,
図5Cを参照しながら説明する。
図5B,
図5Cに示すように,上記レジスト膜形成工程(ステップS100)で形成されたレジスト膜120の全体に,ゴム製のスキージー130を用いてアルミペースト140を塗布する。
【0045】
このとき,レジスト膜120に圧力を加えすぎないように,アルミペースト140を保持したスキージー130を移動させて,反転パターン120aのマスク部上にはできるだけ
図5Cのような残渣150が生じないように,アルミペースト140を塗布することが好ましい。これにより,レジスト膜120の反転パターン120aの開口部にアルミペースト140が充填される。このとき,もし残渣150が生じてしまった場合でも,次の金属マスク形成工程による加熱制御によってアルミペースト140の焼成と同時に除去することができる。このため,アルミペーストの残渣150を別工程として除去する作業,例えば研磨による除去作業等を省略することが可能である。この点の詳細は後述する。
【0046】
こうして,レジスト膜120の反転パターンにアルミペースト140が充填される。アルミペースト140が充填される前後の状態を
図6A,
図6B,
図7A,
図7Bに示す。
図6A,
図6Bはホールのエッチングパターンをアルミペーストで形成する場合であり,
図7A,
図7Bはトレンチのエッチングパターンをアルミペーストで形成する場合である。
【0047】
先ず,ホールを形成するためのエッチングパターンをアルミペーストで形成する場合には,レジスト膜120に形成される反転パターンは
図6Aに示すようになる。すなわち,エッチングパターンとしてホールを形成するための開口部を形成する領域には,レジスト膜120を形成し,その周りのマスク部を形成する領域にはレジスト膜を形成しない。
【0048】
このようなレジスト膜120の反転パターンにアルミペーストを充填すると,
図6Bに示すようになる。すなわち,エッチングパターンとしてホールを形成するための領域にはアルミペースト140は充填されず,その周りのマスク部を形成する領域にはアルミペースト140が充填される。
【0049】
次に,トレンチを形成するためのエッチングパターンをアルミペーストで形成する場合には,レジスト膜120に形成される反転パターンは
図7Aに示すようになる。すなわち,この場合も,エッチングパターンとしてトレンチを形成するための開口部を形成する領域には,レジスト膜120を形成し,その周りのマスク部を形成する領域にはレジスト膜を形成しない。
【0050】
このようなレジスト膜120の反転パターンにアルミペーストを充填すると,
図7Bに示すようになる。すなわち,エッチングパターンとしてトレンチを形成するための領域にはアルミペースト140は充填されず,その周りのマスク部を形成する領域にはアルミペースト140が充填される。
【0051】
なお,反転パターン120aがトレンチ状に形成されている場合には,アルミペースト140を塗布する際に,そのトレンチに沿った方向にスキージーを滑らせてアルミペースト140を塗布すると,レジスト膜120上にアルミペーストの残渣が生じにくい。
【0052】
ここで,実際にスキージー法によってアルミペーストを充填した場合の電子顕微鏡写真を
図8A,
図8Bに示す。
図8A,
図8Bは,金属ペースト充填工程(ステップS200)により反転パターン120aの開口部に充填されたアルミペースト140を電子顕微鏡写真で示したものである。
図8AはSiC基板110にホールを形成するための反転パターンの一部断面である。
図8Aの写真中央の略円柱形状のものがレジスト膜120であり,その周りに充填されているのがアルミペースト140である。
【0053】
図8BはSiC基板110にトレンチを形成するための反転パターンの一部断面である。
図8Bの写真中央の略直方体形状のものがアルミペースト140であり,その両側にあるのがレジスト膜120である。
図8A,
図8Bのいずれについてもアルミペースト140が垂直状になっていることが分かる。
【0054】
このように,レジスト膜120の反転パターン120aにアルミペーストを充填する際に,スキージー法を用いることにより,ゴム製のスキージー130をレジスト膜120全体に押しつけながらアルミペースト140の充填することができるので,反転パターン120aの開口部の側壁に空洞が生じ難くすることができる。また,本実施形態のようにレジスト膜120の膜厚が十分厚い場合には,スキージー130により押圧されても,レジスト膜120は破損し難い。
【0055】
なお,本実施形態ではアルミペースト140を充填する方法として,スキージー法を用いた場合を例に挙げて説明したが,これに限られるものではない。例えばスピンコートなどを用いてアルミペースト140を充填してもよい。
【0056】
<金属マスク形成工程>
次に,
図4に示す金属マスク形成工程(ステップS300)について,
図5D,
図5E,
図9,
図10を参照しながら説明する。金属マスク形成工程では,SiC基板110の加熱制御を行うことによって,アルミペースト140を焼成しながらレジスト膜120を除去し,それによってエッチングパターンがパターニングされたアルミマスク160を形成する。すなわち,アルミペースト140を加熱することでその粒子を焼結させることにより,アルミペースト140をSiC基板110上に焼き付けることによってアルミマスクを形成する。このときの加熱制御によって,レジスト膜120及びアルミペーストの残渣150も同時に除去される。このため,レジスト膜120を除去する工程を別に設ける必要がなくなる。
【0057】
金属マスク形成工程の加熱制御では,複数段階の温度を一定時間保持しながら加熱を行う。これにより,金属ペーストを効率よく焼成できるとともに,その焼成過程でレジスト膜も同時に除去することが可能となる。例えば加熱制御は,レジスト膜を除去可能な温度以上の第1温度に昇温させる第1工程,第1温度にて所定時間を保持する第2工程,金属ペーストの種類に応じて定められる第2温度に昇温させる第3工程の3段階で制御する。
【0058】
(焼成時の加熱制御)
以下,このようなSiC基板110の加熱制御の具体例について
図9を参照しながら説明する。ここでの加熱制御は,例えば酸素ガス(O
2ガス)又は窒素ガス(N
2ガス)を,流量20slm(slm:standard liter (リットル)/min,1atm,0℃における1分間当たりのリットル数)とした循環雰囲気中で行う。
図9は本実施形態にかかる加熱制御による温度変化をグラフに示した図である。
【0059】
図9に示すように,まず室温の状態から,レジスト膜120を除去する温度以上の第1温度例えば400℃まで15分ほどかけて昇温させて(第1工程),所定時間(例えば10分)保持する(第2工程)。ここで,第1温度を400℃としたのは,レジスト膜120のみならず,金属ペーストに含まれる有機成分も除去するためである。すなわち,レジスト膜120だけを除去するには,200℃程度に加熱すれば足りるが,400℃程度であれば金属ペーストに含まれる有機成分も除去することができる。これにより,より良好な焼成を行うことができる。なお,第1温度はこれに限られるものではなく,少なくともレジスト膜120を除去できる温度以上であればよい。
【0060】
このとき,
図5Dに示すように,SiC基板110を上下逆さにした状態,すなわち,アルミペースト140とレジスト膜120が重力方向の下向きになるようにした状態で,焼成を行うようにしてもよい。これにより,加熱によってレジスト膜120が除去されるとその残渣150は落下するので除去され易くなる。これにより,例えば金属ペーストの残渣150がエッチングパターンの開口部に入り込んだりして半導体のエッチングに影響を与えることを防止できる。
【0061】
また,SiC基板110を載置台に載置して加熱処理を行う場合には,SiC基板110を逆さにしなくてもよい。上下逆さにするときには載置台に保持台を介して逆さに載置してもよく,あるいは,SiC基板110を上下逆さの状態に保持する保持機構を設けるようにしてもよい。
【0062】
その後,第2温度まで昇温させる(第3工程)。ここでの第2温度は,この第2温度は,金属ペーストの種類に応じて定められる温度である。ここでは,アルミペースト140をSiC基板110に安定させるために必要な温度とし,例えば750℃である。なお,その他の金属ペーストとしてニッケル(Ni)を用いる場合には,第2温度を1500℃程度にすることが好ましい。
【0063】
そして,第2温度に達した後は,そのまま第2温度を保持してもよく,徐々に降温させるようにしてもよい。その場合,加熱を止めて所定時間放置してもよい。このような高温の状態を長時間保持するほどアルミペースト140のSiC基板110に対する密着性を高めることができる。例えば第2温度750℃に達した後,徐々に降温させる場合には,750℃から200℃に降温するまでに7時間半ほどかけるようにしてもよい。
【0064】
以上,焼成時の温度制御について説明した。なお,アルミペースト140をSiC基板110に密着させるためには,上述したようにアルミペースト140の成分の調整を行うことのほか,本工程において,焼成時の温度制御の最適化を行うことが好ましい。
【0065】
なお本実施形態では,上述したように,アルミペーストが反転パターンに充填されたレジスト膜が下向きになるように,SiC基板110を上下逆さにした状態で,焼成を行うことにより,レジスト膜120を除去した領域にアルミペーストの残渣が残ることを低減させている。しかし,焼成後に,レジスト膜120を除去した領域にアルミペーストの残渣が残る可能性を考慮して,薬剤によりウエット洗浄するなどして除去するようにしてもよい。焼成後にはアルミマスクとSiC基板との密着性が高いため,ウエット洗浄しても問題ないが,アルミマスクに影響を与えるおそれがあるほどの極端なウエット洗浄は避けることが好ましい。
【0066】
(熱処理装置の構成例)
ここで,このようなSiC基板の加熱制御を含む金属マスク形成工程を実施可能な熱処理装置の構成例について説明する。
図10は,本実施形態にかかる熱処理装置200の概略構成を示す縦断面図である。この熱処理装置200は,気密に構成された略円筒状の処理室210を備えており,この処理室210に一枚ずつ焼成対象218を収容し,この焼成対象218を焼成する焼成処理を実施可能なように構成されている。
【0067】
処理室210の天壁212には,図示しないガス供給手段からの酸素ガス(O
2ガス)又は窒素ガス(N
2ガス)を下方の載置台220に載置された基板に向けて導入するガス導入部213が設けられている。
【0068】
処理室210の底壁214の中央部には円形の開口部214aが形成されており,底壁214にはこの開口部214aを覆うように下方に向けて突出した排気室290が連結されている。排気室290の側壁には排気管292を介して排気手段232が接続されている。この排気手段232を作動させることによって処理室210内を所定の真空度に減圧することができる。
【0069】
処理室210の側壁216には,処理室210内に対する焼成対象218の搬出入を行うための搬出入口を開閉するゲートバルブGが設けられている。
【0070】
処理室210内には焼成対象218を載置するための載置台220が配置されている。載置台220は,焼成対象218を載置する円板状の載置台本体222と,この載置台本体222を支持する円筒状の支柱225を備える。
【0071】
また,載置台本体222にはヒータ228が内蔵されている。このヒータ228はヒータ電源230から供給される電力に応じて発熱するものであり,この作用によって焼成対象218の温度が調節される。
【0072】
熱処理装置200には,装置全体の動作を制御する制御部294が設けられている。制御部294には,図示はしないが,タッチパネル又はキーボードやディスプレイ等からなる操作部,本実施形態による金属マスク形成工程における加熱制御などを行うためのプログラムやプログラムを実行するために必要な処理条件(レシピ)などが記憶された記憶部を備える。
【0073】
制御部294は,操作部からの指示等に基づいて所望のプログラム,処理条件を記憶部から読み出してヒータ電源230などの各部を制御することで,熱処理装置200での所望の加熱制御など実行するようになっている。なお,これらのプログラムや処理条件はハードディスクや半導体メモリに記憶されていてもよく,またCD−ROM,DVD等の可搬性のコンピュータにより読み取り可能な記憶媒体に収容された状態で記憶部の所定位置にセットするようになっていてもよい。
【0074】
このような熱処理装置200によって
図4に示す金属マスク形成工程の加熱制御を行う場合には,先ず上記金属ペースト充填工程にてアルミペーストが充填されたSiC基板110を焼成対象218として,図示しない搬送アームなどでゲートバルブGを介して搬出入口から搬入し,載置台220に載置する。このとき,SiC基板110を上向きにする場合にはそのまま載置台220上に保持し,
図5Dに示すようにSiC基板110を下向きに保持する場合には例えば図示しない保持部を載置台220に配置し,その保持部で周縁を保持するようにしてもよい。
【0075】
次いで,制御部294にてヒータ電源230によりヒータ228を制御して,例えば
図9に示すような温度制御を行う。これにより,
図5Dに示すようにSiC基板110上のアルミペースト140が焼成されながらレジスト膜120が除去され,所望のエッチングパターンのアルミマスク160が形成される(
図5E)。
【0076】
なおここでは,熱処理装置として一枚ずつ焼成対象を処理する枚葉式の熱処理装置を例に挙げて説明したが,必ずしもこれに限定されるものではなく,複数枚の焼成対象を一括して処理するバッチ式の熱処理装置であってもよい。
【0077】
<エッチング工程>
次に,
図4に示すエッチング工程(ステップS400)について,
図5Fを参照しながら説明する。エッチング工程では,上記ステップS100〜S300によってSiC基板(
図5Fの半導体に相当)110上に形成されたアルミマスク160をマスクとしてSiC基板110のプラズマエッチングを行う。
【0078】
例えば六フッ化硫黄(SF
6)をエッチングガスとしてそのプラズマをSiC基板110上に生成することで,SiC基板110のプラズマエッチングを行う。これにより,
図5Fに示すようにSiC基板110のうち,アルミマスク160の開口部に露出された表面が選択的にエッチングされ,所定時間プラズマエッチングを続けることで,所定の深さにエッチングされる。こうして,SiC基板110にはホールやトレンチなどのエッチング形状が形成される。このとき,本実施形態で形成されるアルミマスクの開口部の側壁は
図3Aに示すように垂直なので,SiC基板110には
図3Bに示すような垂直なエッチング形状が形成される。
【0079】
(プラズマ処理装置の構成例)
ここで,このようなプラズマエッチングを実行可能なプラズマ処理装置の構成例について説明する。ここでは処理室内に上部電極と下部電極(サセプタ)を対向配置して上部電極から処理ガスを処理室内に供給する平行平板型のプラズマ処理装置を例に挙げて説明する。
図11は,本実施形態にかかるプラズマ処理装置300の概略構成を示す断面図である。
【0080】
プラズマ処理装置300は,
図11に示したように,例えばアルミニウム等の導電性材料からなる処理室302とこの処理室302内に処理ガスを供給するガス供給系304を備える。なお
図11では,説明の便宜上,処理ガスとして六フッ化硫黄(SF
6)のみを表しているが,処理ガスの種類や数はこれに限定されるものではない。例えば,処理ガスとしては,六フッ化硫黄(SF
6)の他にも,塩素(Cl
2),臭化水素(Hbr),四フッ化炭素(CF
4)やその他のエッチングガスを用いることができる。
【0081】
処理室302は電気的に接地されており,処理室302内にはエッチング対象であるSiC基板110を載置する載置台を兼ねる下部電極(サセプタ)310と,これに対向して平行に配置された上部電極320とが設けられている。
【0082】
下部電極310には,2周波重畳電力を供給する電力供給装置330が接続されている。電力供給装置330は,第1周波数の第1高周波電力(プラズマ生起用高周波電力)を供給する第1高周波電源332と,第1周波数よりも低い第2周波数の第2高周波電力(バイアス電圧発生用高周波電力)を供給する第2高周波電源334を備える。第1,第2高周波電源332,334はそれぞれ,第1,第2整合器333,335を介して下部電極310に電気的に接続される。
【0083】
第1,第2整合器333,335は,それぞれ第1,第2高周波電源332,334の内部(または出力)インピーダンスに負荷インピーダンスを整合させるためのものであり,処理室302内にプラズマが生成されているときに第1,第2高周波電源332,334の内部インピーダンスと負荷インピーダンスが見かけ上一致するように機能する。
【0084】
上部電極320は,その周縁部を被覆するシールドリング322を介して処理室302の天井部に取り付けられている。上部電極320は,
図11に示すように電気的に接地してもよく,また図示しない可変直流電源を接続して上部電極320に所定の直流(DC)電圧が印加されるように構成してもよい。
【0085】
上部電極320には,ガス供給系304からガスを導入するためのガス導入口324が形成されている。また,上部電極320の内部にはガス導入口324から導入されたガスを拡散する拡散室326が設けられている。
【0086】
上部電極320には,この拡散室326からのガスを処理室302内に供給する多数のガス供給孔328が形成されている。各ガス供給孔328は,下部電極310に載置されたSiC基板110と上部電極320との間にガスを供給できるように配置されている。
【0087】
このような上部電極320によれば,ガス供給系304からのガスはガス導入口324を介して拡散室326に供給され,ここで拡散して各ガス供給孔328に分配され,ガス供給孔328から下部電極310に向けて吐出される。
【0088】
処理室302の底面には排気口342が形成されており,排気口342に接続された排気装置340によって排気することによって,処理室302内を所定の真空度に維持することができる。処理室302の側壁には,処理室302に対するSiC基板110の搬出入を行うための搬出入口を開閉するゲートバルブGが設けられている。
【0089】
プラズマ処理装置300には,装置全体の動作を制御する制御部350が設けられている。制御部350には,図示はしないが,タッチパネル又はキーボードやディスプレイ等からなる操作部,プラズマエッチングなどの制御を行うためのプログラムやプログラムを実行するために必要な処理条件(レシピ)などが記憶された記憶部を備える。
【0090】
制御部350は,操作部からの指示等に基づいて所望のプログラム,処理条件を記憶部から読み出して各部を制御することで,プラズマ処理装置300での所望のプラズマエッチングなどの制御を実行するようになっている。なお,これらのプログラムや処理条件はハードディスクや半導体メモリに記憶されていてもよく,またCD−ROM,DVD等の可搬性のコンピュータにより読み取り可能な記憶媒体に収容された状態で記憶部の所定位置にセットするようになっていてもよい。
【0091】
このようなプラズマ処理装置300によって
図4に示すエッチング工程のプラズマエッチングを行う場合には,先ず上記金属マスク形成工程にてアルミマスク160が形成されたSiC基板110(
図5E)を,図示しない搬送アームなどで処理室302に搬入し,下部電極310に載置する。次いで,制御部350にて各部を制御することで,プラズマ処理装置300での所望のプラズマエッチングを実行する。これにより,
図5Fに示すようにSiC基板110に所定のパターンのホールやトレンチが形成される。
【0092】
(エッチング耐性)
次に,本実施形態にかかるアルミマスク160のエッチング耐性を調べるために,上記プラズマ処理装置300を用いて以下の実験を行った結果について説明する。ここでは,本実施形態にかかるアルミペーストからなるアルミマスク160を形成した基板と,イオンプレーティング成膜により作製されたアルミマスクを形成した基板とについてプラズマエッチングを行ってその結果を比較する。ここでの処理条件は,処理室210内の圧力を15mTorrとし,また第1高周波電源332のパワーを1200W,第2高周波電源334は印加せずに0Wとし,処理ガスを四フッ化炭素(CF
4)の流量を400sccmとする。そして,アルミマスク160については,上記処理条件で15分のエッチングを行い,イオンプレーティング成膜については5分間エッチングを行った。なお,本明細書中1mTorrは(10
−3×101325/760)Pa,1sccmは(10
−6/60)m
3/secとする。
【0093】
本実施形態により作製されたアルミマスク160では,15分間のエッチングで,エッチング前の厚みが19.2nm,エッチング後の厚みが18.8nmであり,エッチングレート(E/R)は約27nm/分であった。
【0094】
一方,イオンプレーティング成膜により作製されたアルミマスクでは,5分間のエッチングで,エッチング前の厚みが1.62nm,エッチング後の厚みが1.58nmであり,エッチングレート(E/R)は約8nm/分であった。
【0095】
このように,エッチングレートの点では,本実施形態によるアルミペーストで形成したアルミマスク160の方が,イオンプレーティング成膜により形成したアルミマスクよりもエッチングレートが大きかった。これは,アルミペーストの粒子間に隙間があるためにエッチングレートが高くなったと考えられる。しかしながら,上述したように本実施形態によるアルミペーストで形成したアルミマスクによれば,その厚みを容易に大きくとることができるので,たとえエッチングレートが高くても,アルミマスクがエッチングで消失しない程度の厚みにすることができる。このため,イオンプレーティング成膜により形成したアルミマスクよりもエッチングレートが大きくてもエッチングする際の不利になることはない。
【0096】
以上説明したように,本実施形態によれば,焼成された金属ペースト(例えば,アルミニウムからなるペースト)によって,金属マスクのエッチングパターンが形成されるので,ウエットエッチングなどで形成する場合に比して,極めて垂直性の高いエッチングパターンを形成できる。具体的には,先ずエッチングパターンを反転させた反転パターンがパターニングされたレジスト膜を形成し,その反転パターンに金属ペーストを充填するので,充填された金属ペーストは高い垂直性を有することができる。
【0097】
すなわち,レジスト膜は極めて垂直性の高い側壁をパターニングできるので,そのようなレジスト膜のパターンに金属ペーストを充填することで,金属ペーストの側壁も極めて垂直性の高い側壁にすることができる。しかも,金属ペーストを充填して焼成することによって金属マスクを形成するので,レジスト膜を厚くするほど,厚い金属マスクを形成することができる。従来のように金属膜をエッチングするわけではないので,金属ペーストもレジスト膜も膜厚が減ることを考慮することはなく,金属膜とレジスト膜の選択性を考慮してレジスト膜の膜厚を決める必要もない。
【0098】
このような金属ペーストを,加熱制御することによって焼成しながら,レジスト膜を除去することで,極めて垂直性の高いエッチングパターンの金属マスクを形成することができる。本願発明では,この加熱制御によって,金属ペーストを焼成する過程でレジスト膜も同時に除去することができるので,レジスト膜を除去する工程を別途設ける必要がなくなる。これにより,金属マスク形成までの工程にかかる時間を短くすることができる。
【0099】
また,金属マスクを形成するためのレジスト膜の膜厚を調整することにより,金属マスクの厚みを調整することができるので,エッチング対象である半導体のエッチング量にあわせて,最適な厚みの金属マスクを製作することが可能である。このため,エッチング対象である半導体に要求されるエッチングの深さが大きい場合(例えば90μm以上)に特に有効である。
【0100】
以上,添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが,本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば,特許請求の範囲に記載された範疇内において,各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり,それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0101】
例えば,上記実施形態では,金属マスクの一例としてアルミマスクを挙げて説明したが,本発明はこれに限定されず,いかなる金属マスクを用いることができる。特に,エッチングレートが小さく,選択比が大きい金属マスクであることが好ましく,このような膜として,例えば,クロム(Cr),Co(コバルト),ニッケル(Ni)及び酸化インジウムスズ(ITO)を用いることができる。これによっても,本願発明のような金属ペーストによる金属マスクを形成でき,垂直性の高いエッチングパターンをパターニングできる。