【実施例】
【0033】
以下、実施例および比較例に基づいて説明する。なお、本実施例はあくまで一例であり、この例によって何ら制限されるものではない。すなわち、本発明は特許請求の範囲によってのみ制限されるものであり、本発明に含まれる実施例以外の種々の変形を包含するものである。
【0034】
(実施例1)
精製したW粉末の十分な混合を行い、Feの平均含有濃度を0.4wtppm、Feの濃度範囲が0.3〜0.5wtppm(25点測定)となるようにしたW粉末を作製し、1800℃、圧力200kgfでホットプレスを実施した。
次に、これを1700℃、圧力:1800kgf、時間:3.0hrの条件下で、HIPを実施した。これにより製造されたタングステンターゲットには、加工不良につながる粒子成長は起きなかった。
当該スパッタリングターゲットにおいては、Feの平均含有濃度を0.4wtppm、Feの濃度範囲が0.3〜0.5wtppm(17点測定)を維持することができた。
【0035】
Pの含有量は0.5wtppm以下、平均結晶粒径は20μm、平均結晶粒径の範囲は15〜25μm、総不純物濃度が1.001wtppm、ガス成分である酸素含有量が30wtppm、炭素含有量が20wtppmであり、本願発明の条件を満たしていた。そして、ターゲットには異常粒成長が見られず、ターゲットの強度の低下がなく、さらにその後の加工性は良好であった。
なお、粒径の測定は、Wを研磨・エッチングし、光学顕微鏡に組織を観察して行った。すなわち、1視野の組織写真に、縦横2本ずつの直線を引き、その線と交差する粒界の個数を数え、その上で、視野上に引いた4直線の合計を、先ほどの粒界と交差する個数で割りかえして算出した(クロスカット法)。範囲は、組織1視野中の最も大きい粒と小さい粒の粒径を測定し、その範囲とする。測定位置は17点とした。以下に示す、実施例、比較例については、同様の方法を用いて測定した。
【0036】
特に、結晶粒径は加工性に大きな影響を与える。例えば、平均結晶粒径が小さいと通常の旋盤加工が可能であるが、粒径が大きくなると脱粒が発生し、旋盤加工上がりの組織が平滑な面が得られないという問題を発生する。このような脱粒がひどい場合は、割れの起点になってしまい、そもそもの加工ができない場合もある。以下の実施例、比較例についても同様である。この結果を、表1に示す。
【0037】
【表1】
【0038】
(実施例2)
精製したW粉末の十分な混合を行い、Feの平均含有濃度が0.7wtppm、Feの濃度範囲が0.6〜0.8wtppm(25点測定)となるようにしたW粉末を作成し、1800℃、圧力200kgfでホットプレスを実施した。
次に、これを1750℃、圧力:1700kgf、時間:4.0hrの条件下で、HIPを実施した。これにより製造されたタングステンターゲットには、加工不良につながる粒子成長は起きなかった。
【0039】
当該スパッタリングターゲットにおいては、Feの平均含有濃度を0.7wtppm、Feの濃度範囲が0.6〜0.8wtppm(17点測定)を維持することができた。
Pの含有量は0.5wtppm以下、平均結晶粒径は25μm、平均結晶粒径の範囲は20〜30μm、総不純物濃度が1.003wtppm、ガス成分である酸素含有量が20wtppm、炭素含有量が20wtppmであり、本願発明の条件を満たしていた。そして、ターゲットには異常粒成長が見られず、ターゲットの強度の低下がなく、さらにその後の加工性は良好であった。この結果を、同様に表1に示す。
【0040】
(実施例3)
精製したW粉末の十分な混合を行い、Feの平均含有濃度が0.8wtppm、Feの濃度範囲が0.7〜0.9wtppm(25点測定)となるようにしたW粉末を作成し、1800℃、圧力200kgfでホットプレスを実施した。
次に、これを1750℃、圧力:1700kgf、時間:4.0hrの条件下で、HIPを実施した。これにより製造されたタングステンターゲットには、加工不良につながる粒子成長は起きなかった。
【0041】
当該スパッタリングターゲットにおいては、Feの平均含有濃度を0.8wtppm、Feの濃度範囲が0.7〜0.9wtppm(17点測定)を維持することができた。
Pの含有量は0.5wtppm以下、平均結晶粒径は30μm、平均結晶粒径の範囲は20〜35μm、総不純物濃度が1.013wtppm、ガス成分である酸素含有量が20wtppm、炭素含有量が20wtppmであり、本願発明の条件を満たしていた。そして、ターゲットには異常粒成長が見られず、ターゲットの強度の低下がなく、さらにその後の加工性は良好であった。この結果を、同様に表1に示す。
【0042】
(実施例4)
精製したW粉末の十分な混合を行い、Feの平均含有濃度が0.7wtppm、Feの濃度範囲が0.6〜0.8wtppm(25点測定)となるようにしたW粉末を作成し、1800℃、圧力200kgfでホットプレスを実施した。
次に、これを1770℃、圧力:1770kgf、時間:2.0hrの条件下で、HIPを実施した。これにより製造されたタングステンターゲットには、加工不良につながる粒子成長は起きなかった。
【0043】
当該スパッタリングターゲットにおいては、Feの平均含有濃度を0.7wtppm、Feの濃度範囲が0.6〜0.8wtppm(17点測定)を維持することができた。
Pの含有量は0.5wtppm以下、平均結晶粒径は50μm、平均結晶粒径の範囲は5〜200μm、総不純物濃度が1.003wtppm、ガス成分である酸素含有量が30wtppm、炭素含有量が30wtppmであり、本願発明の条件を満たしていた。そして、ターゲットには異常粒成長が見られず、ターゲットの強度の低下がなく、さらにその後の加工性は良好であった。この結果を、同様に表1に示す。
【0044】
(比較例1)
Feの平均含有濃度が1.0wtppmであるW粉末を作製した。Feの濃度範囲が0.9〜1.1wtppm(25点測定)であった。これを1800℃、圧力200kgfでホットプレスを実施し、次にこれを1700℃、圧力:1800kgf、時間:8.0hrの条件下で、HIPを実施した。この結果、加工不良につながる粒子成長が発生した。
【0045】
当該スパッタリングターゲットにおいては、Feの平均含有濃度は1.0wtppm、Feの濃度範囲が0.9〜1.1wtppm(17点測定)となり、本願発明の条件を満たしていなかった。
Pの含有量は0.5wtppm以下、平均結晶粒径は800μm、平均結晶粒径の範囲は600〜1000μm、総不純物濃度が1.005wtppm、ガス成分である酸素含有量が30wtppm、炭素含有量が30wtppmであり、総合的にみて、本願発明の条件を満たしていなかった。特に、平均結晶粒径、平均結晶粒径の範囲は大きく逸脱していた。この結果、ターゲットには異常粒成長が見られ、ターゲットの強度が低下し、さらにその後の加工性は不良となった。この結果を、同様に表1に示す。
【0046】
(比較例2)
Feの平均含有濃度が0.4wtppmであるW粉末を作製した。Feの濃度範囲が0.2〜0.8wtppm(25点測定)であった。これを1800℃、圧力200kgfでホットプレスを実施し、次にこれを1750℃、圧力:1700kgf、時間:6.0hrの条件下で、HIPを実施した。この結果、加工不良につながる粒子成長が発生した。
【0047】
当該スパッタリングターゲットにおいては、Feの平均含有濃度は0.4wtppm、Feの濃度範囲0.2〜0.8wtppm(17点測定)となり、最大最少の範囲のばらつきが大きく、本願発明の条件を満たしていなかった。
Pの含有量は0.5wtppm以下、平均結晶粒径は500μm、平均結晶粒径の範囲は400〜650μm、総不純物濃度が1.002wtppm、ガス成分である酸素含有量が30wtppm、炭素含有量が20wtppmであり、総合的にみて、本願発明の条件を満たしていなかった。特に、平均結晶粒径、平均結晶粒径の範囲は大きく逸脱していた。この結果、ターゲットには異常粒成長が見られ、ターゲットの強度が低下し、さらにその後の加工性は不良となった。この結果を、同様に表1に示す。
【0048】
(比較例3)
Feの平均含有濃度が0.7wtppmであるW粉末を作製した。Feの濃度範囲が0.4〜0.9wtppm(25点測定)であった。これを1800℃、圧力200kgfでホットプレスを実施し、次にこれを1700℃、圧力:1400kgf、時間:3.0hrの条件下で、HIPを実施した。この結果、加工不良につながる粒子成長が発生した。
【0049】
当該スパッタリングターゲットにおいては、Feの平均含有濃度は0.7wtppm、Feの濃度範囲が0.4〜0.9wtppm(17点測定)となり、最大最少の範囲のばらつきが大きく、本願発明の条件を満たしていなかった。
Pの含有量は0.5wtppm以下、平均結晶粒径は700μm、平均結晶粒径の範囲は500〜850μm、総不純物濃度が1.001wtppm、ガス成分である酸素含有量が20wtppm、炭素含有量が20wtppmであり、総合的にみて、本願発明の条件を満たしていなかった。特に、平均結晶粒径、平均結晶粒径の範囲は大きく逸脱していた。この結果、ターゲットには異常粒成長が見られ、ターゲットの強度が低下し、さらにその後の加工性は不良となった。この結果を、同様に表1に示す。
【0050】
(比較例4)
Feの平均含有濃度が1.0wtppmであるW粉末を作製した。Feの濃度範囲が0.9〜1.1wtppm(25点測定)であった。これを1800℃、圧力200kgfでホットプレスを実施し、次にこれを1750℃、圧力:1500kgf、時間:4.0hrの条件下で、HIPを実施した。この結果、加工不良につながる粒子成長が発生した。
【0051】
当該スパッタリングターゲットにおいては、Feの平均含有濃度は1.0wtppm、Feの濃度範囲が0.9〜1.1wtppm(17点測定)となり、Feの平均濃度が本願発明の条件を満たしていなかった。
Pの含有量は0.5wtppm以下、平均結晶粒径は900μm、平均結晶粒径の範囲は800〜1000μm、総不純物濃度が5.201wtppm、ガス成分である酸素含有量が40wtppm、炭素含有量が40wtppmであり、総合的にみて、本願発明の条件を満たしていなかった。特に、平均結晶粒径、平均結晶粒径の範囲は大きく逸脱していた。この結果、ターゲットには異常粒成長が見られ、ターゲットの強度が低下し、さらにその後の加工性は不良となった。この結果を、同様に表1に示す。
【0052】
(比較例5)
Feの平均含有濃度が0.7wtppmであるW粉末を作製した。Feの濃度範囲が0.4〜0.9wtppm(25点測定)であった。これを1800℃、圧力200kgfでホットプレスを実施し、次にこれを1600℃、圧力:1800kgf、時間:3.0hrの条件下で、HIPを実施した。この結果、加工不良につながる粒子成長が発生した。
【0053】
当該スパッタリングターゲットにおいては、Feの平均含有濃度は0.7wtppm、Feの濃度範囲が0.4〜0.9wtppm(17点測定)となり、Feの濃度範囲のばらつきが大きく、本願発明の条件を満たしていなかった。
Pの含有量は0.5wtppm以下、平均結晶粒径は900μm、平均結晶粒径の範囲は850〜950μm、総不純物濃度が4.606wtppm、ガス成分である酸素含有量が120wtppm、炭素含有量が20wtppmであり、総合的にみて、本願発明の条件を満たしていなかった。特に、平均結晶粒径、平均結晶粒径の範囲、酸素含有量は大きく逸脱していた。この結果、ターゲットには異常粒成長が見られ、ターゲットの強度が低下し、さらにその後の加工性は不良となった。この結果を、同様に表1に示す。
【0054】
(比較例6)
Feの平均含有濃度が0.4wtppmであるW粉末を作製した。Feの濃度範囲が0.2〜0.8wtppm(25点測定)であった。これを1800℃、圧力200kgfでホットプレスを実施し、次にこれを1500℃、圧力:1700kgf、時間:4.0hrの条件下で、HIPを実施した。この結果、加工不良につながる粒子成長が発生した。
【0055】
当該スパッタリングターゲットにおいては、Feの平均含有濃度は0.4wtppm、Feの濃度範囲が0.2〜0.8wtppm(17点測定)となり、Feの濃度範囲のばらつきが大きく本願発明の条件を満たしていなかった。
Pの含有量は0.5wtppm以下、平均結晶粒径は800μm、平均結晶粒径の範囲は700〜900μm、総不純物濃度が4.293wtppm、ガス成分である酸素含有量が30wtppm、炭素含有量が160wtppmであり、総合的にみて、本願発明の条件を満たしていなかった。特に、平均結晶粒径、平均結晶粒径の範囲、炭素含有量は大きく逸脱していた。この結果、ターゲットには異常粒成長が見られ、ターゲットの強度が低下し、さらにその後の加工性は不良となった。この結果を、同様に表1に示す。