特許第5856710号(P5856710)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5856710タングステン焼結体スパッタリングターゲット
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  • 特許5856710-タングステン焼結体スパッタリングターゲット 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5856710
(24)【登録日】2015年12月18日
(45)【発行日】2016年2月10日
(54)【発明の名称】タングステン焼結体スパッタリングターゲット
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/34 20060101AFI20160128BHJP
   C22C 27/04 20060101ALI20160128BHJP
   H01L 21/285 20060101ALI20160128BHJP
   H01L 21/28 20060101ALI20160128BHJP
【FI】
   C23C14/34 A
   C22C27/04 101
   H01L21/285 S
   H01L21/28 301R
【請求項の数】1
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-506842(P2015-506842)
(86)(22)【出願日】2014年3月20日
(86)【国際出願番号】JP2014057646
(87)【国際公開番号】WO2014148588
(87)【国際公開日】20140925
【審査請求日】2015年2月18日
(31)【優先権主張番号】特願2013-60159(P2013-60159)
(32)【優先日】2013年3月22日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】502362758
【氏名又は名称】JX日鉱日石金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100093296
【弁理士】
【氏名又は名称】小越 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100173901
【弁理士】
【氏名又は名称】小越 一輝
(72)【発明者】
【氏名】大橋 一允
(72)【発明者】
【氏名】岡部 岳夫
【審査官】 安齋 美佐子
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2007/0243095(US,A1)
【文献】 特開2001−335923(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/147900(WO,A1)
【文献】 特開平7−76771(JP,A)
【文献】 特開平8−250427(JP,A)
【文献】 深沢美治,他,高純度金属スパッタリングターゲット,東芝レビュー,1988年,Vol.43,No.9,Page.761-764
【文献】 M. SUZUKI,DEVELOPMENT OF REFRACTORY METALS AND SILICIDES TARGETS, AND THEIR CHARACTERISTICS,TUNGSTEN AND OTHER REFRACTORY METALS FOR VLSI APPLICATIONS II,米国,Materials Research Society,1987年,P339-345,ISSN 0886-7860
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/00−14/58
C22C 27/04
H01L 21/28
H01L 21/285
B22F 1/00
B22F 3/12−3/16
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タングステン焼結体スパッタリングターゲットであって、不純物の鉄が0.8wtppm以下で、残部がタングステンとその他の不可避的不純物であり、ターゲット組織における鉄の濃度範囲が、平均含有濃度の±0.1wtppmの範囲内であり、ターゲットの相対密度が99%以上、平均結晶粒径が50μm以下、結晶粒径の範囲が5〜200μmであり、ガス成分を除くタングステンの純度が5N(99.999%)以上であり、かつ酸素及び炭素の含有量が、それぞれ50wtppm以下であることを特徴とするタングステン焼結体スパッタリングターゲット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、IC、LSI等のゲート電極あるいは配線材料等を、スパッタリング法によって形成する際に用いられるタングステン焼結体ターゲット及び同ターゲットの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、超LSIの高集積化に伴い電気抵抗値のより低い材料を電極材や配線材料として使用する検討が行われているが、このような中で抵抗値が低く、熱及び化学的に安定である高純度タングステンが、電極材や配線材料として使用されている。
この超LSI用の電極材や配線材料は、一般にスパッタリング法とCVD法で製造されているが、スパッタリング法は装置の構造及び操作が比較的単純で、容易に成膜でき、また低コストであることからCVD法よりも広く使用されている。
【0003】
タングステンターゲットについては、高純度、高密度が要求されるが、近年、超LSI用の電極材や配線材を、タングステンターゲットを用いてスパッタリングにより成膜した膜については、さらに電気抵抗値が低い材料が求められている。
【0004】
後述するように、タングステン焼結体ターゲットは、純度を向上させ、高密度化することが可能であり、それを達成するための開示があるが、タングステンの異常粒成長やターゲットの強度の低下に関する研究や開発は行われていなかった。
【0005】
従来の、タングステン焼結体スパッタリングターゲットを製造する場合には、グラファイトダイスを用いて加圧焼結するのが一般的である。例えば、後述する特許文献1、特許文献2、特許文献3がある。この場合には、必然的にCがタングステンに不純物として混入する可能性がある。また、特にダイスの種類は明記されていないが、高密度化するための工夫がなされている特許文献4、特許文献5がある。
以上の特許文献は、主としてタングステンターゲットの高密度化を達成するのが狙いである。
【0006】
この他、タングステン焼結体ターゲットについて、C量を低下させた特許文献6があり、この場合は、炭素を50ppm以下(最も低減化したC量として、実施例の中で19ppm)にまで低減させる方法が開示されている。
【0007】
また、特許文献7には、膜の均一化とダスト発生数の低減化を狙いとして、金属材料中のC量を低減化する(最も低減化したC量として、実施例の中で10ppmとする)技術が開示されている。
また、特許文献8には、高純度、高密度のタングステン焼結体ターゲットを作製するために、C量を30ppm以下(最も低減化したC量として、実施例の中で6ppm)とする技術が開示されている。
【0008】
一方、タングステン焼結体スパッタリングターゲットの製造の段階で、異常粒成長とターゲットの強度の低下が起こり、製品歩留まりを低下させるという問題があることが分かった。これを解決する方策として、本出願人は、このタングステンの異常粒成長とターゲットの強度の低下は、リンの含有が大きな影響を与えることが分かり、特許文献3に示すように、タングステンに含有するリンを1ppm以下にする提案をした。
この結果、タングステンの異常粒成長の防止とターゲットの製品歩留まりを向上させることが可能となり、この段階では極めて有効であった。
【0009】
しかしながら、タングステン中のリンを低下させることは、非常に有効であったが、厳密な意味では、やはり異常粒成長の発生があるので、さらに改良が必要となった。
一般に、タングステンターゲットの高密度及び高強度化のために、HIPにより焼結体を作製するが、この段階での異常粒成長は、後工程の加工で加工不良の問題が発生するので、さらにこれを低減しなければならないという課題がある。
【0010】
上記以外の特許文献としては、回転鍛造により粒子のサイズと結晶構造を調製する特許文献9があるが、タングステンの異常粒成長の防止を課題とするものではなく、その具体的手段も無いのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特許第3086447号公報
【特許文献2】特開2001−098364号公報
【特許文献3】WO2009/147900号公報
【特許文献4】特開2005−171389号公報
【特許文献5】特開2007−314883号公報
【特許文献6】特開平5−93267号公報
【特許文献7】特開2001−335923号公報
【特許文献8】特開平7−76771号公報
【特許文献9】特開2012−180599号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
以上の点に鑑み、タングステン焼結体スパッタリングターゲットの製造の段階で、異常粒成長とターゲットの強度の低下が起こり、製品歩留まりを低下させるという問題があるが、このタングステンの異常粒成長とターゲットの強度の低下を抑制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するために、本発明者らは、次の発明を提供するものである。
1)タングステン焼結体スパッタリングターゲットであって、不純物の鉄が0.8wtppm以下で、残部がタングステンとその他の不可避的不純物であり、ターゲット組織における鉄の濃度範囲が、平均含有濃度の±0.1wtppmの範囲内であることを特徴とするタングステン焼結体スパッタリングターゲット。
【0014】
2)ターゲットの相対密度が99%以上、平均結晶粒径が50μm以下、結晶粒径の範囲が5〜200μmであることを特徴とする上記1)に記載のタングステン焼結体スパッタリングターゲット。
【0015】
3)ガス成分を除くタングステンの純度が5N(99.999%)以上であることを特徴とするタングステン焼結体スパッタリングターゲット上記1)〜2)いずれか一項に記載のタングステン焼結体スパッタリングターゲット。
【0016】
4)酸素及び炭素の含有量が、それぞれ50wtppm以下であることを特徴とする上記3)に記載のタングステン焼結体スパッタリングターゲット。
【発明の効果】
【0017】
不純物の鉄が0.8wtppm以下であり、残部がタングステンとその他の不可避的不純物であるタングステン焼結体スパッタリングターゲットとすることにより、タングステン焼結体スパッタリングターゲットの製造の段階で、異常粒成長とターゲットの強度の低下抑制できるという優れた効果を有する。これにより、後工程の加工で加工不良の問題を減少させ、ターゲットの製品歩留まりを向上させることができる効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】合計17点の鉄濃度を測定する点の、概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本願発明のタングステン焼結体スパッタリングターゲットは、不純物の鉄が0.8wtppm以下であり、残部がタングステンとその他の不可避的不純物であることを特徴とする。鉄の含有量は極めて少ない量に制限されているが、このことが非常に重要であり、これにより、異常粒成長とターゲットの強度の低下を抑制でき、その後の加工における不良の発生を防止できる効果を有する。不純物の鉄は0.5wtppm以下とすることが、さらに有効である。
【0020】
相対密度を99%以上、平均結晶粒径が50μm以下、結晶粒径が5〜200μmとすることが、タングステン焼結体スパッタリングターゲットの強度を維持する上で、特に有効である。
【0021】
本願発明のタングステン焼結体スパッタリングターゲットは、純度が5N(99.999%)以上であることが望ましい。これは、タングステン焼結体スパッタリングターゲットの強度を維持する上で有効である。ターゲット組織における鉄の濃度範囲が、平均含有濃度の±0.1wtppmの範囲内とすることがタングステン焼結体スパッタリングターゲットであることが必要である。
【0022】
ターゲットの中で、タングステンに含有する不純物の鉄が0.8wtppm以下とした場合でも、ターゲットの組織の中で、偏析がある場合には、その組織の地点が異常粒成長の起点となり易いからである。上記のばらつきの抑制は、このような問題を減少させる効果を有する。
さらに、ガス成分である水素、炭素、窒素、酸素、硫黄の含有量を、それぞれ50wtppm以下とすることも有効であり、同様にタングステン焼結体スパッタリングターゲットの強度を維持する上で有効である。
【0023】
タングステン焼結体スパッタリングターゲットの製造に際しては、不純物の鉄が0.8wtppm以下のタングステン原料粉を使用し、Fe含有量のばらつきが少なくなるように、十分に混合する。この混合は、例えばボールミル、V型混合機で行うことができる。原料粉末中の鉄濃度については、ICP分析により0.8wtppm以下に抑える。特に、原料粉末を25分割し、この原料粉をそれぞれ分析し、鉄の分析値のばらつきの範囲が、平均含有濃度の±0.1wtppmの範囲にすることが良い。
【0024】
これによって、ターゲット組織内における鉄の濃度範囲を、平均含有濃度の±0.1wtppmの範囲内とすることが可能となる。タングステン中のFeの量が少ないので、主として原料粉末の混合を十分に行うことにより、ばらつきを抑制し、均一化することができる。具体的には、鉄の濃度を下記の条件で測定し、これに適合する製造条件を任意に設定し、タングステンターゲット組織の定常的な鉄濃度のばらつきを制御することが有効である。この意味から、ターゲット組織中の鉄濃度のばらつき測定し、これを制御するという明確な工程が重要となる。
【0025】
ターゲット内の鉄濃度の測定については、例えば円盤状タングステンターゲットでは、17点(1点は中心)を測定することにより行う。すなわち、図1に示すように、中心、1/2R(半径)の均等8点、及び外周均等8点、の合計17点の鉄濃度を測定する。
【0026】
上記のように調整したタングステンの原料粉末を、カーボン製ダイスの中に、平均粒径1μm程度のタングステン粉を充填し、1500〜1800°Cの温度でホットプレスを行った後、1600〜1850°Cの温度、圧力1700〜1800kgf、3〜4時間、HIP処理して製造する。このHIP処理の条件は、通常実施する条件であり、必要に応じて、この条件の範囲外でも実施可能である。これにより、平均粒径は20〜30μmで、相対密度は99%を達成することができる。
【0027】
しかし、カーボン製ダイスを使用してタングステン焼結体スパッタリングターゲットを作製しているために、焼結体ターゲットの内部に多くのカーボン(C)が不純物として含有することになる。この場合、C量が多くなるにつれ、スパッタリング成膜後のタングステン膜の比抵抗が増加する傾向にある。そのため、ガス成分である炭素の含有量を50wtppm以下とするのがよい。
【0028】
酸素は、タングステンに含有する不純物と結合し、酸化物を形成するので、同時に低減させることが望ましい。また、酸素のガス成分は、タングステンとも反応して、同様に酸化物を形成する。そのため、酸素含有量を50wtppm以下に低減するのがよい。
また、ガス成分を除く総不純物濃度は4wtppm以下、3wtppm以下、さらには2ppm以下であることが望ましい。
【0029】
これは、スパッタリング成膜時のLSI用配線材の内部に混入して、タングステン配線の機能を低下させる要因となるので、できるだけ少ない方が良いと言える。 また、このような炭素、酸素及び鉄の低減化は、組織の均一化と共に、ターゲットの割れや亀裂の発生を抑制する効果も有する。そして、これらのタングステン焼結体スパッタリングターゲットは、基板上に成膜することができ、半導体デバイスの作製に有用である。
【0030】
焼結の際には、1500°Cを超える温度でホットプレス(HP)することが有効である。また、ホットプレスした後、1600°Cを超える温度でHIP処理を行い、さらに密度を向上させることができる。
また、ターゲットの相対密度が99%以上であるタングステン焼結体スパッタリングターゲット、さらにターゲットの相対密度が99.5%以上であるタングステン焼結体スパッタリングターゲットを提供できる。密度の向上は、ターゲットの強度を増加させるので、より好ましい。
【0031】
このようにターゲットの組織が、ターゲットの径方向及び厚み方向に、均一化され、ターゲットの強度も十分であり、操作または使用中に割れるというような問題もなくなった。したがって、ターゲット製造の歩留まりを向上させることができる。
上記の通り、不純物である鉄含有量を0.8wtppm以下に、さらに鉄含有量を0.5wtppm以下に、低減化が達成できる。これによって、異常粒成長とターゲットの強度の低下を抑制でき、その後の加工における不良の発生を防止できる効果を有する。
【0032】
上記の通り、本発明のスパッタリングターゲットは密度を高レベルに維持すると共に空孔を減少させ結晶粒を微細化し、ターゲットのスパッタ面を均一かつ平滑にすることができる。そして、スパッタリング時のパーティクルやノジュールを低減させ、さらにターゲットライフも長くすることができるという効果を有し、品質のばらつきが少なく量産性を向上させることができる効果を有する。
【実施例】
【0033】
以下、実施例および比較例に基づいて説明する。なお、本実施例はあくまで一例であり、この例によって何ら制限されるものではない。すなわち、本発明は特許請求の範囲によってのみ制限されるものであり、本発明に含まれる実施例以外の種々の変形を包含するものである。
【0034】
(実施例1)
精製したW粉末の十分な混合を行い、Feの平均含有濃度を0.4wtppm、Feの濃度範囲が0.3〜0.5wtppm(25点測定)となるようにしたW粉末を作製し、1800℃、圧力200kgfでホットプレスを実施した。
次に、これを1700℃、圧力:1800kgf、時間:3.0hrの条件下で、HIPを実施した。これにより製造されたタングステンターゲットには、加工不良につながる粒子成長は起きなかった。
当該スパッタリングターゲットにおいては、Feの平均含有濃度を0.4wtppm、Feの濃度範囲が0.3〜0.5wtppm(17点測定)を維持することができた。
【0035】
Pの含有量は0.5wtppm以下、平均結晶粒径は20μm、平均結晶粒径の範囲は15〜25μm、総不純物濃度が1.001wtppm、ガス成分である酸素含有量が30wtppm、炭素含有量が20wtppmであり、本願発明の条件を満たしていた。そして、ターゲットには異常粒成長が見られず、ターゲットの強度の低下がなく、さらにその後の加工性は良好であった。
なお、粒径の測定は、Wを研磨・エッチングし、光学顕微鏡に組織を観察して行った。すなわち、1視野の組織写真に、縦横2本ずつの直線を引き、その線と交差する粒界の個数を数え、その上で、視野上に引いた4直線の合計を、先ほどの粒界と交差する個数で割りかえして算出した(クロスカット法)。範囲は、組織1視野中の最も大きい粒と小さい粒の粒径を測定し、その範囲とする。測定位置は17点とした。以下に示す、実施例、比較例については、同様の方法を用いて測定した。
【0036】
特に、結晶粒径は加工性に大きな影響を与える。例えば、平均結晶粒径が小さいと通常の旋盤加工が可能であるが、粒径が大きくなると脱粒が発生し、旋盤加工上がりの組織が平滑な面が得られないという問題を発生する。このような脱粒がひどい場合は、割れの起点になってしまい、そもそもの加工ができない場合もある。以下の実施例、比較例についても同様である。この結果を、表1に示す。
【0037】
【表1】
【0038】
(実施例2)
精製したW粉末の十分な混合を行い、Feの平均含有濃度が0.7wtppm、Feの濃度範囲が0.6〜0.8wtppm(25点測定)となるようにしたW粉末を作成し、1800℃、圧力200kgfでホットプレスを実施した。
次に、これを1750℃、圧力:1700kgf、時間:4.0hrの条件下で、HIPを実施した。これにより製造されたタングステンターゲットには、加工不良につながる粒子成長は起きなかった。
【0039】
当該スパッタリングターゲットにおいては、Feの平均含有濃度を0.7wtppm、Feの濃度範囲が0.6〜0.8wtppm(17点測定)を維持することができた。
Pの含有量は0.5wtppm以下、平均結晶粒径は25μm、平均結晶粒径の範囲は20〜30μm、総不純物濃度が1.003wtppm、ガス成分である酸素含有量が20wtppm、炭素含有量が20wtppmであり、本願発明の条件を満たしていた。そして、ターゲットには異常粒成長が見られず、ターゲットの強度の低下がなく、さらにその後の加工性は良好であった。この結果を、同様に表1に示す。
【0040】
(実施例3)
精製したW粉末の十分な混合を行い、Feの平均含有濃度が0.8wtppm、Feの濃度範囲が0.7〜0.9wtppm(25点測定)となるようにしたW粉末を作成し、1800℃、圧力200kgfでホットプレスを実施した。
次に、これを1750℃、圧力:1700kgf、時間:4.0hrの条件下で、HIPを実施した。これにより製造されたタングステンターゲットには、加工不良につながる粒子成長は起きなかった。
【0041】
当該スパッタリングターゲットにおいては、Feの平均含有濃度を0.8wtppm、Feの濃度範囲が0.7〜0.9wtppm(17点測定)を維持することができた。
Pの含有量は0.5wtppm以下、平均結晶粒径は30μm、平均結晶粒径の範囲は20〜35μm、総不純物濃度が1.013wtppm、ガス成分である酸素含有量が20wtppm、炭素含有量が20wtppmであり、本願発明の条件を満たしていた。そして、ターゲットには異常粒成長が見られず、ターゲットの強度の低下がなく、さらにその後の加工性は良好であった。この結果を、同様に表1に示す。
【0042】
(実施例4)
精製したW粉末の十分な混合を行い、Feの平均含有濃度が0.7wtppm、Feの濃度範囲が0.6〜0.8wtppm(25点測定)となるようにしたW粉末を作成し、1800℃、圧力200kgfでホットプレスを実施した。
次に、これを1770℃、圧力:1770kgf、時間:2.0hrの条件下で、HIPを実施した。これにより製造されたタングステンターゲットには、加工不良につながる粒子成長は起きなかった。
【0043】
当該スパッタリングターゲットにおいては、Feの平均含有濃度を0.7wtppm、Feの濃度範囲が0.6〜0.8wtppm(17点測定)を維持することができた。
Pの含有量は0.5wtppm以下、平均結晶粒径は50μm、平均結晶粒径の範囲は5〜200μm、総不純物濃度が1.003wtppm、ガス成分である酸素含有量が30wtppm、炭素含有量が30wtppmであり、本願発明の条件を満たしていた。そして、ターゲットには異常粒成長が見られず、ターゲットの強度の低下がなく、さらにその後の加工性は良好であった。この結果を、同様に表1に示す。
【0044】
(比較例1)
Feの平均含有濃度が1.0wtppmであるW粉末を作製した。Feの濃度範囲が0.9〜1.1wtppm(25点測定)であった。これを1800℃、圧力200kgfでホットプレスを実施し、次にこれを1700℃、圧力:1800kgf、時間:8.0hrの条件下で、HIPを実施した。この結果、加工不良につながる粒子成長が発生した。
【0045】
当該スパッタリングターゲットにおいては、Feの平均含有濃度は1.0wtppm、Feの濃度範囲が0.9〜1.1wtppm(17点測定)となり、本願発明の条件を満たしていなかった。
Pの含有量は0.5wtppm以下、平均結晶粒径は800μm、平均結晶粒径の範囲は600〜1000μm、総不純物濃度が1.005wtppm、ガス成分である酸素含有量が30wtppm、炭素含有量が30wtppmであり、総合的にみて、本願発明の条件を満たしていなかった。特に、平均結晶粒径、平均結晶粒径の範囲は大きく逸脱していた。この結果、ターゲットには異常粒成長が見られ、ターゲットの強度が低下し、さらにその後の加工性は不良となった。この結果を、同様に表1に示す。
【0046】
(比較例2)
Feの平均含有濃度が0.4wtppmであるW粉末を作製した。Feの濃度範囲が0.2〜0.8wtppm(25点測定)であった。これを1800℃、圧力200kgfでホットプレスを実施し、次にこれを1750℃、圧力:1700kgf、時間:6.0hrの条件下で、HIPを実施した。この結果、加工不良につながる粒子成長が発生した。
【0047】
当該スパッタリングターゲットにおいては、Feの平均含有濃度は0.4wtppm、Feの濃度範囲0.2〜0.8wtppm(17点測定)となり、最大最少の範囲のばらつきが大きく、本願発明の条件を満たしていなかった。
Pの含有量は0.5wtppm以下、平均結晶粒径は500μm、平均結晶粒径の範囲は400〜650μm、総不純物濃度が1.002wtppm、ガス成分である酸素含有量が30wtppm、炭素含有量が20wtppmであり、総合的にみて、本願発明の条件を満たしていなかった。特に、平均結晶粒径、平均結晶粒径の範囲は大きく逸脱していた。この結果、ターゲットには異常粒成長が見られ、ターゲットの強度が低下し、さらにその後の加工性は不良となった。この結果を、同様に表1に示す。
【0048】
(比較例3)
Feの平均含有濃度が0.7wtppmであるW粉末を作製した。Feの濃度範囲が0.4〜0.9wtppm(25点測定)であった。これを1800℃、圧力200kgfでホットプレスを実施し、次にこれを1700℃、圧力:1400kgf、時間:3.0hrの条件下で、HIPを実施した。この結果、加工不良につながる粒子成長が発生した。
【0049】
当該スパッタリングターゲットにおいては、Feの平均含有濃度は0.7wtppm、Feの濃度範囲が0.4〜0.9wtppm(17点測定)となり、最大最少の範囲のばらつきが大きく、本願発明の条件を満たしていなかった。
Pの含有量は0.5wtppm以下、平均結晶粒径は700μm、平均結晶粒径の範囲は500〜850μm、総不純物濃度が1.001wtppm、ガス成分である酸素含有量が20wtppm、炭素含有量が20wtppmであり、総合的にみて、本願発明の条件を満たしていなかった。特に、平均結晶粒径、平均結晶粒径の範囲は大きく逸脱していた。この結果、ターゲットには異常粒成長が見られ、ターゲットの強度が低下し、さらにその後の加工性は不良となった。この結果を、同様に表1に示す。
【0050】
(比較例4)
Feの平均含有濃度が1.0wtppmであるW粉末を作製した。Feの濃度範囲が0.9〜1.1wtppm(25点測定)であった。これを1800℃、圧力200kgfでホットプレスを実施し、次にこれを1750℃、圧力:1500kgf、時間:4.0hrの条件下で、HIPを実施した。この結果、加工不良につながる粒子成長が発生した。
【0051】
当該スパッタリングターゲットにおいては、Feの平均含有濃度は1.0wtppm、Feの濃度範囲が0.9〜1.1wtppm(17点測定)となり、Feの平均濃度が本願発明の条件を満たしていなかった。
Pの含有量は0.5wtppm以下、平均結晶粒径は900μm、平均結晶粒径の範囲は800〜1000μm、総不純物濃度が5.201wtppm、ガス成分である酸素含有量が40wtppm、炭素含有量が40wtppmであり、総合的にみて、本願発明の条件を満たしていなかった。特に、平均結晶粒径、平均結晶粒径の範囲は大きく逸脱していた。この結果、ターゲットには異常粒成長が見られ、ターゲットの強度が低下し、さらにその後の加工性は不良となった。この結果を、同様に表1に示す。
【0052】
(比較例5)
Feの平均含有濃度が0.7wtppmであるW粉末を作製した。Feの濃度範囲が0.4〜0.9wtppm(25点測定)であった。これを1800℃、圧力200kgfでホットプレスを実施し、次にこれを1600℃、圧力:1800kgf、時間:3.0hrの条件下で、HIPを実施した。この結果、加工不良につながる粒子成長が発生した。
【0053】
当該スパッタリングターゲットにおいては、Feの平均含有濃度は0.7wtppm、Feの濃度範囲が0.4〜0.9wtppm(17点測定)となり、Feの濃度範囲のばらつきが大きく、本願発明の条件を満たしていなかった。
Pの含有量は0.5wtppm以下、平均結晶粒径は900μm、平均結晶粒径の範囲は850〜950μm、総不純物濃度が4.606wtppm、ガス成分である酸素含有量が120wtppm、炭素含有量が20wtppmであり、総合的にみて、本願発明の条件を満たしていなかった。特に、平均結晶粒径、平均結晶粒径の範囲、酸素含有量は大きく逸脱していた。この結果、ターゲットには異常粒成長が見られ、ターゲットの強度が低下し、さらにその後の加工性は不良となった。この結果を、同様に表1に示す。
【0054】
(比較例6)
Feの平均含有濃度が0.4wtppmであるW粉末を作製した。Feの濃度範囲が0.2〜0.8wtppm(25点測定)であった。これを1800℃、圧力200kgfでホットプレスを実施し、次にこれを1500℃、圧力:1700kgf、時間:4.0hrの条件下で、HIPを実施した。この結果、加工不良につながる粒子成長が発生した。
【0055】
当該スパッタリングターゲットにおいては、Feの平均含有濃度は0.4wtppm、Feの濃度範囲が0.2〜0.8wtppm(17点測定)となり、Feの濃度範囲のばらつきが大きく本願発明の条件を満たしていなかった。
Pの含有量は0.5wtppm以下、平均結晶粒径は800μm、平均結晶粒径の範囲は700〜900μm、総不純物濃度が4.293wtppm、ガス成分である酸素含有量が30wtppm、炭素含有量が160wtppmであり、総合的にみて、本願発明の条件を満たしていなかった。特に、平均結晶粒径、平均結晶粒径の範囲、炭素含有量は大きく逸脱していた。この結果、ターゲットには異常粒成長が見られ、ターゲットの強度が低下し、さらにその後の加工性は不良となった。この結果を、同様に表1に示す。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、タングステン焼結体スパッタリングターゲットであって、タングステンに含有する不純物の鉄が0.8wtppm以下であり、残部がタングステンとその他の不可避的不純物であることを特徴とするタングステン焼結体スパッタリングターゲット提供するものであり、これによって、タングステン焼結体スパッタリングターゲットの製造の段階で、異常粒成長とターゲットの強度の低下抑制できるという優れた効果を有する。そして、後工程の加工で加工不良の問題を減少させ、ターゲットの製品歩留まりを向上させることができる効果を有する。
また、このタングステン焼結体スパッタリングターゲットを使用して成膜することにより、タングステン膜において、安定した電気抵抗値の低減化が可能であるという優れた効果を有する。したがって、本願発明のタングステン焼結体スパッタリングターゲットは、LSI配線膜用として、有用である。
図1