特許第5857546号(P5857546)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5857546
(24)【登録日】2015年12月25日
(45)【発行日】2016年2月10日
(54)【発明の名称】レンズ鏡筒、カメラ及びカメラシステム
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/08 20060101AFI20160128BHJP
   G02B 7/02 20060101ALI20160128BHJP
   G03B 17/14 20060101ALI20160128BHJP
   G03B 17/02 20060101ALI20160128BHJP
【FI】
   G02B7/08 C
   G02B7/02 E
   G03B17/14
   G03B17/02
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2011-190872(P2011-190872)
(22)【出願日】2011年9月1日
(65)【公開番号】特開2013-54119(P2013-54119A)
(43)【公開日】2013年3月21日
【審査請求日】2014年8月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】100092576
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 久男
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 智明
【審査官】 小倉 宏之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−164966(JP,A)
【文献】 特開2002−024057(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/08
G02B 7/02
G03B 17/02
G03B 17/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
初期化動作が実施されるレンズ鏡筒であって、
前記レンズ鏡筒の電源がON状態の間、前記レンズ鏡筒の初期化が必要であるかが継続的に監視される出力部を備え、
前記出力部が監視されることにより前記レンズ鏡筒の初期化が必要であると判断された場合に、前記レンズ鏡筒の初期化動作が実施され
前記レンズ鏡筒の動作を制御するとともに、前記出力部を監視して前記レンズ鏡筒の初期化が必要であると判断した場合に、前記レンズ鏡筒の初期化動作を実施する第1制御部と、
前記第1制御部と通信することにより動作する周辺部品と、を更に備え、
前記出力部は、前記周辺部品に設けられる第1モニタ端子であり、
前記第1モニタ端子は、初期値である第1の状態と前記第1の状態とは異なる第2の状態との間で変化される信号を出力可能であり、前記レンズ鏡筒の電源がONになった場合又は前記レンズ鏡筒の初期化動作が完了した場合に、前記第1の状態から前記第2の状態に変化させる信号を出力し、
前記第1制御部は、前記第1モニタ端子が前記第2の状態から前記第1の状態に変化する信号を出力した場合に、前記レンズ鏡筒の初期化が必要であると判断すること、
を特徴とするレンズ鏡筒。
【請求項2】
請求項に記載のレンズ鏡筒であって、
前記第1制御部は、前記レンズ鏡筒の初期化動作を実施した後、前記レンズ鏡筒の初期化動作の直前の動作を継続して実行すること、
を特徴とするレンズ鏡筒。
【請求項3】
請求項1または2に記載のレンズ鏡筒であって、
前記出力部は、前記レンズ鏡筒が動作開始後に暴走状態になった場合に、前記レンズ鏡筒の初期化が必要であると判断されること、
を特徴とするレンズ鏡筒。
【請求項4】
請求項1からのいずれか一項に記載のレンズ鏡筒を備えるカメラ。
【請求項5】
請求項に記載のレンズ鏡筒と、
カメラ本体と、
前記カメラ本体に設けられ、前記第1制御部と通信を行うとともに前記カメラ本体の動作を制御する第2制御部と、を備え、
前記第2制御部は、前記第1制御部が前記第2制御部からの通信に応答しない場合に前記レンズ鏡筒の初期化が必要であると判断して前記レンズ鏡筒の初期化動作を実施すること、
を特徴とするカメラシステム。
【請求項6】
請求項1からのいずれか一項に記載のレンズ鏡筒と、
カメラ本体と、
前記カメラ本体に設けられ、前記出力部を監視して前記レンズ鏡筒の初期化が必要であると判断した場合に、前記レンズ鏡筒の初期化動作を実施する第2制御部と、を備えること、
を特徴とするカメラシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズ鏡筒、カメラ及びカメラシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、カメラにおいて、レンズ鏡筒と、カメラボディとを備えるものがある。レンズ鏡筒を備えるカメラにおいて、電源投入時の動作開始の際に、レンズ鏡筒の初期化動作を実施するカメラが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公平7−119868号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されるカメラにおいて、電源投入時以外のカメラの動作の途中に、レンズ鏡筒に外来ノイズ(例えば静電気)などの外的要因が加わることにより、オートフォーカス等のカメラの動作が不安定になる可能性がある。このようにカメラの動作が不安定な場合には、カメラの電源を入れ直して、レンズ鏡筒の初期化動作を実施する必要がある。そのため、レンズ鏡筒の初期化が必要である場合に、電源投入時以外のカメラの動作の途中であっても、初期化動作が実施されるカメラが望まれている。
【0005】
本発明の課題は、レンズ鏡筒の初期化が必要である場合に、初期化動作が実施されるレンズ鏡筒、カメラ及びカメラシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、初期化動作が実施されるレンズ鏡筒を、前記レンズ鏡筒の電源がON状態の間、前記レンズ鏡筒の初期化が必要であるかが継続的に監視される出力部を備え、前記出力部が監視されることにより前記レンズ鏡筒の初期化が必要であると判断された場合に、前記レンズ鏡筒の初期化動作が実施され、前記レンズ鏡筒の動作を制御するとともに、前記出力部を監視して前記レンズ鏡筒の初期化が必要であると判断した場合に、前記レンズ鏡筒の初期化動作を実施する第1制御部と、前記第1制御部と通信することにより動作する周辺部品と、を更に備え、前記出力部は、前記周辺部品に設けられる第1モニタ端子であり、前記第1モニタ端子は、初期値である第1の状態と前記第1の状態とは異なる第2の状態との間で変化される信号を出力可能であり、前記レンズ鏡筒の電源がONになった場合又は前記レンズ鏡筒の初期化動作が完了した場合に、前記第1の状態から前記第2の状態に変化させる信号を出力し、前記第1制御部は、前記第1モニタ端子が前記第2の状態から前記第1の状態に変化する信号を出力した場合に、前記レンズ鏡筒の初期化が必要であると判断すること、を特徴とする構成とした。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、レンズ鏡筒の初期化が必要である場合に、初期化動作が実施されるレンズ鏡筒、カメラ及びカメラシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係るカメラの内部構成を概略的に示すブロック図である。
図2】カメラの第1動作例の動作フローを示すフローチャートである。
図3】カメラの第1動作例の動作を示すタイミングチャートである。
図4】カメラの第2動作例の動作フローを示すフローチャートである。
図5】カメラの第2動作例の動作を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面等を参照して、本発明の実施形態について説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るカメラ1の内部構成を概略的に示すブロック図である。
【0010】
本実施形態のカメラ1は、カメラボディ2と、レンズ鏡筒3とを備える。
レンズ鏡筒3は、カメラボディ2に着脱可能な交換レンズである。なお、本実施形態のカメラ1では、レンズ鏡筒3が交換レンズである例を示したが、これに限らず、例えば、カメラボディと一体型のレンズ鏡筒を備えたカメラであってもよい。
【0011】
カメラボディ2は、ボディ側電源回路21と、ボディ側マイコン22と、を備える。また、カメラボディ2は、いずれも図示を省略したミラーユニット、シャッタ、撮像部、液晶表示パネル、ファインダ等を有している。
【0012】
ボディ側電源回路21は、カメラ1全体に電源を供給する。ボディ側電源回路21は、カメラボディ2に電源を供給するとともに、レンズ鏡筒3のレンズ側電源回路35に電源を供給する。
【0013】
ボディ側マイコン22は、カメラボディ2の動作を制御するとともに、後述するレンズ鏡筒3のレンズ側マイコン34を制御する。
ボディ側マイコン22は、不図示のメモリに格納されたプログラムを実行することによってカメラ1が行う動作を統括的に制御する。例えば、AF(オートフォーカス)動作制御、AE(自動露出)動作制御、オートホワイトバランス制御、絞り動作制御などを行う。
また、ボディ側マイコン22は、ボディ側電源回路21を制御して、カメラ1全体へ電源を供給する制御を行う。ボディ側マイコン22は、ボディ側電源回路21からレンズ側電源回路35へ電源を供給する制御を行う。
【0014】
ボディ側マイコン22は、レンズ側マイコン34から出力されるレンズ鏡筒3の初期化を要求する信号を受信した場合に、レンズ鏡筒3の初期化の実施を指示するための信号をレンズ側マイコン34に出力する。また、ボディ側マイコン22は、レンズ側マイコン34から出力されるレンズ鏡筒3の初期化を要求する信号を受信した場合に、レンズ鏡筒3の初期化のための全データをレンズ側マイコン34に送信する。ここで、レンズ鏡筒3の初期化のための全データとは、レンズ鏡筒3の各種設定データ、撮影モードの設定データ等がある。
【0015】
レンズ鏡筒3は、レンズ31と、レンズ31を駆動するステッピングモータ32と、モータドライバ33と、モータドライバ33に接続されたレンズ側マイコン34と、レンズ側電源回路35と、レンズ位置検出器36と、不図示のカム筒と、不図示の絞り機構と、を備える。
本実施形態では、ステッピングモータ32は、カメラ1のフォーカス動作時にレンズ31を駆動する駆動源として用いられており、ステッピングモータ32から得られた駆動力は、不図示のカム筒に伝えられる。レンズ31は、不図示のカム筒とカム係合しており、ステッピングモータ32の駆動力によって不図示のカム筒が回転すると、レンズ31は、不図示のカム筒とのカム係合によって光軸方向へ移動して、焦点調節が行われる。
【0016】
レンズ鏡筒3は、電源が投入された直後又はレンズ鏡筒3の初期化が必要な場合に、初期化動作が実施される。例えば、レンズ鏡筒3の初期化動作とは、フォーカス調整をするためにレンズ31を基準位置に移動させる動作や、レンズ31の絞り調整をするために不図示の絞り機構を開放側に移動させる動作などである。これにより、レンズ鏡筒3は、基準位置を検出して、基準位置出しをする調整を行う。
また、レンズ鏡筒3の初期化動作には、ボディ側マイコン22が、各種の初期設定データを、レンズ側マイコン34に送信する動作なども含まれる。この各種の初期設定データには、レンズ鏡筒3の各種設定データや撮影モードの設定データ等が含まれる。
【0017】
モータドライバ33は、後述するレンズ側マイコン34と通信することにより動作する周辺部品である。モータドライバ33は、レンズ側マイコン34により制御される。レンズ側マイコン34は、レンズ鏡筒3の初期化動作として、モータドライバ33において、ステッピングモータ32の駆動方法、駆動電圧、駆動電流、動作ステップ数等の初期設定を実施する。
【0018】
モータドライバ33には、第1モニタ端子331(出力部)と、第2モニタ端子332(出力部)と、が設けられる。第1モニタ端子331及び第2モニタ端子332は、レンズ鏡筒3の電源がON状態の間、レンズ鏡筒3の初期化が必要であるかがレンズ側マイコン34により継続的に監視される。
【0019】
第1モニタ端子331は、初期値である第1の状態と、第1の状態とは異なる第2の状態との間で変化される信号を出力可能である。本実施形態においては、第1モニタ端子331から出力される第1の状態の信号は、Low信号である(図3参照)。また、第1モニタ端子331から出力される第2の状態の信号は、High信号である(図3参照)。本実施形態においては、第1モニタ端子331は、初期値の信号として、第1の状態の信号(Low信号)を出力している。
【0020】
第1モニタ端子331は、レンズ鏡筒3の電源がONになった場合又はレンズ鏡筒3の初期化動作が完了した場合に、Low信号(第1の状態の信号)からHigh信号(第2の状態の信号)に変化させる信号を出力する。第1モニタ端子331から出力されるHigh信号(第2の状態の信号)は、外来ノイズなどの外的要因が加えられて、モータドライバ33が一時的にリセット状態となり、第1モニタ端子331から出力される信号が初期値のLow信号(第1の状態の信号)になるまで維持される。
【0021】
第1モニタ端子331は、High信号(第2の状態の信号)からLow信号(第1の状態の信号)に変化する信号を出力した場合に、レンズ鏡筒3の初期化が必要であると判断される。第1モニタ端子331は、例えば外来ノイズにより、レンズ鏡筒3の電源のON及びOFF動作に伴って第1モニタ端子331から出力される信号がHigh信号からLow信号に切り替わった場合に、レンズ鏡筒3の初期化が必要であると判断される。
【0022】
第2モニタ端子332は、初期値であるLow信号(第1の状態の信号)と、Low信号(第1の状態の信号)とは異なるHigh信号(第2の状態の信号)との間で、繰り返される複数のパルス状の信号を出力可能である(図5参照)。本実施形態においては、第2モニタ端子332は、初期値の信号として、Low信号(第1の状態の信号)を出力している。
【0023】
具体的には、第2モニタ端子332は、レンズ鏡筒3の電源がONになった場合又はレンズ鏡筒3の初期化動作が完了した場合に、各種の動作処理が完了するごとに、High信号とLow信号との間で切り替えられる繰り返しのパルス状の信号を出力する(図5参照)。
【0024】
第2モニタ端子332は、High信号(第2の状態の信号)とLow信号(第1の状態の信号)との繰り返しのパルス状の信号が出力されなくなった場合に、レンズ鏡筒3の初期化が必要であると判断される。具体的には、第2モニタ端子332は、レンズ鏡筒3が動作開始後に暴走状態になった場合に、レンズ鏡筒3の初期化が必要であると判断される。詳細には、第2モニタ端子332は、モータドライバ33内の制御用プロセッサ部の暴走やレンズ側マイコン34の暴走により、レンズ鏡筒3の電源のON及びOFFの動作に伴わずに第2モニタ端子332の出力信号がLow信号又はHigh信号に固定されて切り替わらない場合に、レンズ鏡筒3の初期化が必要であると判断される。
【0025】
レンズ側マイコン34は、レンズ鏡筒3の動作を制御する。
レンズ側マイコン34は、第1モニタ端子331がHigh信号(第2の状態の信号)からLow信号(第1の状態の信号)に変化する信号を出力した場合に、レンズ鏡筒3の初期化が必要であると判断する。また、レンズ側マイコン34は、第2モニタ端子332から出力されるHigh信号(第2の状態の信号)とLow信号(第1の状態の信号)との間で切り替えられるパルス状の信号がLow信号又はHigh信号に固定されて切り替わらない状態になった場合に、レンズ鏡筒3の初期化が必要であると判断する。
【0026】
レンズ側マイコン34は、第1モニタ端子331及び第2モニタ端子332を監視してレンズ鏡筒3の初期化が必要であると判断した場合に、ボディ側マイコン22に初期化を要求する信号を出力し、ボディ側マイコン22の指示により、レンズ鏡筒3の初期化動作を実施する。
【0027】
レンズ側マイコン34は、レンズ鏡筒3の初期化動作を実施した後、レンズ鏡筒3の初期化動作の直前の動作を継続して実行する。具体的には、レンズ側マイコン34は、例えば、動画撮影時において、一次的に中断した撮影状態を、初期化動作の実施前の状態に復帰させて、動画撮影を継続して行うことができる。
【0028】
詳細には、外来ノイズ(例えば静電気)などの外部要因や、レンズ側マイコン34が暴走状態になったことで、レンズ鏡筒3の初期化が必要である場合に、レンズ鏡筒3の初期化動作を実施すると、カメラ1の動作が途中で中断する。しかし、レンズ鏡筒3の初期化動作を実施した後において、初期化動作の直前のカメラ1の状態を記憶しておき、カメラ1の動作を継続して実行することができる。例えば、動画撮影時において、レンズ鏡筒3の初期化を実施する前の動画撮影の状態を記憶して、フォーカス動作のためのレンズ31の位置、絞り動作のための絞り機構の位置、動画モードの設定データ等の全ての状態を初期化動作の直前の状態に復帰させて、カメラ1の動作を継続して実行することができる。
【0029】
レンズ位置検出器36は、光軸方向におけるレンズ31の位置を検出する。レンズ位置検出器36により検出された検出信号は、レンズ側マイコン34に出力される。レンズ位置検出器36に検出された検出信号に基づいて、レンズ側マイコン34は、レンズ鏡筒3の初期化動作を実施する。
【0030】
(第1動作例)
次に、本発明の一実施形態のカメラ1の第1動作例について、フローチャート及びタイミングチャートに基づいて説明する。図2は、カメラ1の第1動作例の動作フローを示すフローチャートである。図3は、カメラ1の第1動作例の動作を示すタイミングチャートである。
第1動作例は、例えば、静電気等の外来ノイズによりレンズ鏡筒3の初期化動作が必要な場合に、レンズ鏡筒3の初期化動作を実施する場合の動作例である。詳細には、第1モニタ端子331から出力される信号が、静電気等の外来ノイズにより一時的にリセット状態となり、High信号からLow信号に変化することで、レンズ鏡筒3の初期化が必要であると判断される場合の動作例である。
【0031】
ステップS101において、カメラ1の主電源がONされることで、ボディ側マイコン22の制御により、ボディ側電源回路21からレンズ側電源回路35に電源が供給される。レンズ側電源回路35は、レンズ側マイコン34に電源を供給する。これにより、レンズ鏡筒3の電源は、ON状態になる。
このステップS101におけるレンズ鏡筒3の動作は、図3に示すタイミングt11からt12へ切り替わるタイミングにおいて実施される。
【0032】
ステップS102において、レンズ側マイコン34は、自己のリセットが解除されたか否かを監視している。レンズ側マイコン34のリセットが解除された場合(YES)には、処理は、ステップS103に進む。レンズ側マイコン34のリセットが解除されていない場合(NO)には、処理は、ステップS102に戻る。
【0033】
ステップS103において、レンズ側マイコン34の立ち上げ処理が実行される。
このステップS102及びS103におけるレンズ鏡筒3の動作は、図3に示すタイミングt12において実施される。
【0034】
ステップS104において、レンズ側マイコン34の立ち上げ処理の完了後、レンズ側マイコン34は、レンズ鏡筒3の電源がONになると、レンズ鏡筒3の初期化が必要であるため、ボディ側マイコン22に初期化要求の信号を出力する。ボディ側マイコン22は、レンズ側マイコン34から出力されるレンズ鏡筒3の初期化を要求する信号を受信した場合に、レンズ鏡筒3の初期化の実施を指示するための信号をレンズ側マイコン34に出力する。
このステップS104におけるレンズ鏡筒3の動作は、図3に示すタイミングt13において実施される。
【0035】
ステップS105において、レンズ側マイコン34は、ボディ側マイコン22からレンズ鏡筒3の初期化動作の実行を要求する信号が入力されているか否かを判定する。ボディ側マイコン22からレンズ鏡筒3の初期化動作を実行する信号が入力されている場合(YES)には、処理は、ステップS106に進む。ボディ側マイコン22からレンズ鏡筒3の初期化動作を実行する信号が入力されていない場合(NO)には、処理は、ステップS105に戻る。
【0036】
ステップS106において、レンズ側マイコン34は、レンズ鏡筒3の初期化動作を実施する。レンズ鏡筒3の初期化動作とは、例えば、レンズ31をフォーカス調整するための基準位置を検出するために基準位置に移動させる動作や、レンズ31の絞り調整のための基準位置を検出するために不図示の絞り機構を開放側に移動させる動作や、ボディ側マイコン22が、レンズ鏡筒3の各種設定データや撮影モードの設定データなどの初期設定データを、レンズ側マイコン34に送信する動作などである。
これらの動作を実施することにより、レンズ鏡筒3の初期化動作が完了する。これにより、レンズ鏡筒3の初期化動作が実施され、レンズ鏡筒3を安定して動作させることができる。
このステップS106におけるレンズ鏡筒3の動作は、図3に示すタイミングt14において実行される。
【0037】
ステップS107において、レンズ側マイコン34は、モータドライバ33の第1モニタ端子331から出力される信号をLow信号からHigh信号に変化させる。第1モニタ端子331から出力されるHigh信号は、外来ノイズなどの外的要因により一時的にリセット状態となり、第1モニタ端子331から出力される信号がLow信号になるまで維持される。
このステップS107における第1モニタ端子331から出力される信号がLow信号からHigh信号に切り替えられるタイミングの動作は、図3に示すタイミングt14からt15へ切り替わるタイミングにおいて実施される。また、このステップS107における第1モニタ端子331から出力されるHigh信号が維持される動作は、図3に示すタイミングt15において実行される。
【0038】
ステップS108において、レンズ鏡筒3は、通常の処理を実行する。通常の処理とは、カメラ1の通常の撮影状態における動作である。このステップS108におけるレンズ鏡筒3の動作は、図3に示すタイミングt15において実行される。この通常の処理中においては、第1モニタ端子331からは、High信号が出力された状態で維持される。
【0039】
ステップS109において、レンズ側マイコン34は、レンズ鏡筒3の電源がONの状態の間、第1モニタ端子331の出力信号を継続的に監視している。そして、レンズ側マイコン34は、第1モニタ端子331の出力がHigh信号からLow信号に変化したか否かを判断する。
【0040】
第1モニタ端子331から出力されるHigh信号がLow信号に変化した場合(YES)には、外来ノイズなどの外的要因が加えられた可能性があり、レンズ鏡筒3を初期化する必要があるため、処理は、ステップS104に戻る。このステップS109における第1モニタ端子331から出力されるHigh信号がLow信号に変化するタイミングの動作は、図3に示すタイミングt15からt16へ切り替わるタイミングにおいて実行されている。第1モニタ端子331から出力されるHigh信号が変化しない場合(NO)には、通常処理を継続して実行するため、処理は、ステップS108に戻る。
【0041】
ステップS109の第1モニタ端子331から出力されるHigh信号がLow信号に変化した場合(YES)におけるステップS104において、レンズ側マイコン34は、レンズ鏡筒3の初期化が必要であると判断して、ボディ側マイコン22に初期化を要求する信号を出力する。
【0042】
ステップS109のYESにおけるステップS104以降においては、カメラ1の動作は、電源投入時でなくカメラ1の動作の途中であるという点を除いて、ステップS104からS108の動作と同様である。つまり、レンズ側マイコン34は、カメラ1の動作の途中において、レンズ鏡筒3の初期化動作を実施する。レンズ鏡筒3の初期化動作とは、前述のレンズ鏡筒3の電源がONになった場合と同様に、例えば、レンズ31をフォーカス調整するための基準位置を検出するために基準位置に移動させる動作や、レンズ31の絞り調整のための基準位置を検出するために不図示の絞り機構を開放側に移動させる動作や、ボディ側マイコン22が、レンズ鏡筒3の各種設定データや撮影モードの設定データなどの初期設定データを、レンズ側マイコン34に送信する動作などである。
これらの動作を実施することにより、レンズ鏡筒3の初期化動作が完了する。これにより、カメラ1の動作の途中において、レンズ鏡筒3の初期化動作を実施することができる。従って、カメラ1の動作の途中であっても、レンズ鏡筒3の初期化動作が実施され、レンズ鏡筒3を安定して動作させることができる。
このステップS109のYESにおけるステップS104以降の動作において、ステップS104からS108におけるカメラ1の動作は、図3に示すタイミングt17からt19に対応する。
【0043】
ここで、レンズ側マイコン34は、レンズ鏡筒3の初期化動作を実施した後、レンズ鏡筒3の初期化動作の直前の動作を継続して実施する。
例えば、フォーカス動作が実行されている途中に初期化動作が実行された場合には、初期化動作の直前のフォーカス位置にレンズ31を移動させて、直前のレンズ31の動作を継続して実施する。
特に動作撮影中においては、外来ノイズが印加されてレンズ鏡筒3の初期化動作が実行された場合においても、初期化動作の前の動画動作に復帰することができる。これにより、外部ノイズによる初期化動作の影響を最小限にして、動画撮影を継続して実行することができる。
【0044】
(第2動作例)
次に、本発明の一実施形態のカメラ1の第2動作例について、フローチャート及びタイミングチャートに基づいて説明する。図4は、カメラ1の第2動作例の動作フローを示すフローチャートである。図5は、カメラ1の第2動作例の動作を示すタイミングチャートである。
【0045】
第2動作例は、例えば、モータドライバ33にモータ制御用プロセッサ部があり、前記プロセッサ部が暴走状態になることによりレンズ鏡筒3の初期化動作が必要な場合に、レンズ鏡筒3の初期化動作を実施する場合の動作例である。詳細には、電源のON及びOFFの動作に伴わずに第2モニタ端子332の出力信号がLow信号又はHigh信号に固定されて切り替わらない場合に、レンズ鏡筒3の初期化が必要であると判断される場合の動作例である。
【0046】
第2動作例のカメラ1においては、レンズ鏡筒3の電源がONになった場合又はレンズ鏡筒3の初期化動作が完了した場合に、第2モニタ端子332から出力される信号を継続して監視している点において、第1動作例とは異なる。具体的には、第2モニタ端子332から出力される信号は、モータドライバ33内の制御用プロセッサ部の処理ごとに、第2モニタ端子332からの出力信号がHigh信号及びLow信号に繰り返して切り替えられる。レンズ側マイコン34は、レンズ鏡筒3の電源がONの状態の間、第2モニタ端子332の出力信号を継続的に監視する。
【0047】
そのため、第2動作例については、第1動作例と異なる点について主に説明する。
第2動作例におけるステップS201からステップS206までの動作については、第1動作例におけるステップS101からステップS106までの動作と同様である。そのため、第2動作例におけるステップS201からステップS206までの動作については、第1動作例におけるステップS101からステップS106までの動作の説明を援用して、説明を省略する。
また、第2動作例における図5に示すt21からt24までの動作は、第1動作例における図3に示すt11からt14までの動作と同様である。そのため、第2動作例におけるt21からt24までの動作については、第1動作例におけるt11からt14までの動作の説明を援用して、説明を省略する。
【0048】
ステップS207において、カメラ1の動作時において、モータドライバ33内の制御用プロセッサ部の処理ごとに、所定間隔で割り込み動作が実行される。具体的には、図4におけるステップS207において、モータドライバ33内の制御用プロセッサ部の動作処理が1つ実行されると、第2モニタ端子332がLow信号を出力している場合、モータドライバ33は、第2モニタ端子332の出力信号をLow信号からHigh信号に切り替える。また、第2モニタ端子332がHigh信号を出力している場合、モータドライバ33は、第2モニタ端子332の出力信号をHigh信号からLow信号に切り替える。これにより、第2モニタ端子332は、Low信号とHigh信号とが繰り返されたパルス状の信号を出力する。このステップS207の処理は、モータドライバ33内の制御用プロセッサ部の動作処理が実行されるごとに、繰り返して実行される。
【0049】
第2モニタ端子332から出力されるLow信号とHigh信号とが繰り返されたパルス状の信号は、モータドライバ33内の制御用プロセッサ部が暴走状態になって第2モニタ端子332から出力される信号が変化しなくなるまで維持される。
このステップS207における第2モニタ端子332からLow信号とHigh信号とが繰り返されたパルス状の信号の出力が開始されるタイミングの動作は、図5に示すタイミングt24からt25へ切り替わるタイミングにおいて実行される。また、このステップS207における第2モニタ端子332から出力されるLow信号とHigh信号とが繰り返されたパルス状の信号が維持される動作は、図5に示すタイミングt25において実行される。
【0050】
ステップS208において、レンズ鏡筒3は、通常の処理を実行する。通常の処理とは、カメラ1における通常の撮影状態の動作である。このステップS208におけるレンズ鏡筒3の動作は、図5に示すタイミングt25において実行される。この通常の処理の間においては、第2モニタ端子332からは、Low信号とHigh信号とが繰り返されたパルス状の信号が出力された状態で維持されている。
【0051】
ステップS209において、レンズ側マイコン34は、レンズ鏡筒3の電源がONの状態の間、第2モニタ端子332の出力信号を継続的に監視している。第2モニタ端子332から出力される信号が変化しなくなった場合(YES)には、ステップS204に戻る。第2モニタ端子332から出力される信号が変化している場合(NO)には、通常処理を継続して実行するため、処理は、ステップS208に戻る。
【0052】
第2動作例におけるステップS204以降の動作及びステップS208以降の動作は、前述の第1動作例におけるステップS104以降の動作及び第2動作例におけるステップS208以降の動作と同様であるため、説明を省略する。
第2動作例においては、モータドライバ33内の制御用プロセッサ部が暴走状態になることによりレンズ鏡筒3の初期化動作が必要な場合に、レンズ鏡筒3の初期化動作を実施することができる。これにより、第2動作例は、前述の第1動作例と同様に、カメラ1の動作の途中であっても、レンズ鏡筒3の初期化動作が実施され、レンズ鏡筒3を安定して動作させることができる。
【0053】
以上、本実施形態によると、以下の効果を有する。
(1)第1モニタ端子331又は第2モニタ端子332が継続的に監視されることによりレンズ鏡筒3の初期化が必要であると判断された場合に、レンズ鏡筒3の初期化動作が実施される。これにより、レンズ鏡筒3を安定して動作させることができる。
(2)モータドライバ33は、レンズ側マイコン34と通信することにより動作する周辺部品である。また、第1モニタ端子331は、モータドライバ33に設けられる。そのため、第1モニタ端子331は、外来ノイズなどの外部要因による影響を受けやすいモータドライバ33に設けられている。従って、第1モニタ端子331を監視することにより、レンズ鏡筒3の初期化動作が必要であるかを効率的に判断することができる。
(3)レンズ側マイコン34は、レンズ鏡筒3の初期化動作を実施した後、レンズ鏡筒3の初期化動作の直前の動作を継続して実行する。そのため、特に、動画撮影を実行している最中に初期化動作が実施された場合等に、初期化動作の直前の動作を継続して実行することができる。従って、カメラ1を使用するユーザは、レンズ鏡筒3を安定した状態で使用することができる。
(4)第2モニタ端子332は、レンズ鏡筒3が動作開始後に暴走状態になった場合に、レンズ鏡筒3の初期化が必要であると判断される。これにより、レンズ鏡筒3の初期化動作が実施される。従って、レンズ鏡筒3の動作が不安定になったりレンズ鏡筒3の暴走によりレンズ鏡筒3が破損することなどが抑制されて、レンズ鏡筒3を安定して動作させることができる。
【0054】
(変形形態)
以上、説明した実施形態に限定されることなく、以下に示すような種々の変形や変更が可能であり、それらも本発明の範囲内である。
(1)前記実施形態では、レンズ側マイコン34が、ボディ側マイコン22の指示を受けて、レンズ鏡筒3の初期化動作を実施する構成としているが、これに制限されない。レンズ側マイコン34は、ボディ側マイコン22の指示を受けずに、レンズ側マイコン34自身が、初期化が必要であるかを判断して、レンズ鏡筒3の初期化動作を実施してもよい。この場合には、レンズ鏡筒3の処理のみで、初期化の必要性の判断及び初期化の実施を行うことができる。
また、ボディ側マイコン22は、レンズ鏡筒3の初期化動作を直接実施する構成としてもよい。
(2)前記実施形態では、第1モニタ端子331及び第2モニタ端子332は、モータドライバ33に設けられているが、これに制限されない。例えば、第1モニタ端子331及び第2モニタ端子332は、別の周辺部品に設けられていてもよい。
(3)前記実施形態では、第1モニタ端子331及び第2モニタ端子332の両方を設けたが、これに制限されず、いずれか一方を設けてもよい。
(4)前記実施形態では、レンズ鏡筒3の初期化が必要であると判断される例として、外来ノイズが加えられた場合、又は、レンズ側マイコン34が暴走状態になった場合について説明したが、これに制限されない。例えば、ボディ側マイコン22は、レンズ側マイコン34がボディ側マイコン22からの通信に応答しない場合に、レンズ鏡筒の初期化が必要であると判断してもよい。この場合には、レンズ側マイコン34がボディ側マイコン22と通信できない状況であることから、レンズ側マイコン34が何らかの要因により通信不能になったと考えられる。そのため、レンズ側マイコン34を初期化する必要があると判断される。従って、ボディ側マイコン22は、レンズ側マイコン34がボディ側マイコン22からの通信に応答しない場合に、レンズ鏡筒3の初期化が必要であると判断して、レンズ鏡筒3の初期化動作を実施することができる。
(5)前記実施形態では、レンズ31をフォーカス用のレンズとして説明したが、これに制限されない。例えば、ズーム用のレンズと、ズームレンズを駆動するモータと、モータを駆動するドライバと、を備えるレンズ鏡筒において、ズームレンズが初期化動作を実施するように構成してもよい。
(6)前記実施形態では、第1モニタ端子331及び第2モニタ端子332から出力される初期値の信号はLow信号であったが、これに制限されず、初期値の信号はHigh信号であってもよい。
(7)前記実施形態では、第1の状態の信号及び第2の状態の信号を、Low信号及びHigh信号とするデジタル信号としているが、アナログ信号でもよい。アナログ信号の場合には、例えば、閾値を設けて、第1の状態の信号と第2の状態の信号とを区別すればよい。
なお、実施形態及び変形形態は、適宜組み合わせて用いることもできるが、詳細な説明は省略する。また、本発明は以上説明した実施形態によって限定されることはない。
【符号の説明】
【0055】
1:カメラ、2:カメラボディ、3:レンズ鏡筒、22:ボディ側マイコン、33:モータドライバ、34:レンズ側マイコン、331:第1モニタ端子、332:第2モニタ端子
図1
図2
図3
図4
図5