(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5857864
(24)【登録日】2015年12月25日
(45)【発行日】2016年2月10日
(54)【発明の名称】液処理装置、液処理方法及び記憶媒体
(51)【国際特許分類】
H01L 21/027 20060101AFI20160128BHJP
B05C 11/08 20060101ALI20160128BHJP
B05C 9/10 20060101ALI20160128BHJP
【FI】
H01L21/30 564C
H01L21/30 563
H01L21/30 569C
B05C11/08
B05C9/10
【請求項の数】13
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-98079(P2012-98079)
(22)【出願日】2012年4月23日
(65)【公開番号】特開2013-225628(P2013-225628A)
(43)【公開日】2013年10月31日
【審査請求日】2014年5月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091513
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 俊夫
(74)【代理人】
【識別番号】100133776
【弁理士】
【氏名又は名称】三井田 友昭
(72)【発明者】
【氏名】吉田 勇一
(72)【発明者】
【氏名】吉原 孝介
【審査官】
新井 重雄
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−319682(JP,A)
【文献】
特開2005−166843(JP,A)
【文献】
特開2011−238666(JP,A)
【文献】
特開平07−130694(JP,A)
【文献】
特開平11−202117(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
B05C 9/10
B05C 11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板保持部に水平に保持された基板に対して、ノズルを介して有機溶剤を供給して液処理を行う液処理装置において、
ノズルに未使用の有機溶剤である第1の有機溶剤を供給する第1の有機溶剤供給機構と、
未使用の有機溶剤を精製するための溶剤精製機構を備え、前記溶剤精製機構により前記第1の有機溶剤よりも清浄度を高めた第2の有機溶剤をノズルに供給する第2の有機溶剤供給機構と、
前記基板に前記第1の有機溶剤を供給し、次いで当該基板に前記第2の有機溶剤を供給するように制御を行う制御部と、を備え、
前記溶剤精製機構は、フィルタが設けられると共に有機溶剤を当該フィルタに繰り返し通流させるための循環経路を備えていることを特徴とする液処理装置。
【請求項2】
1枚の基板に対する有機溶剤の吐出量については、第2の有機溶剤の吐出量が前記第1の有機溶剤の吐出量よりも少ないことを特徴とする請求項1記載の液処理装置。
【請求項3】
前記第1の有機溶剤のノズルと第2の有機溶剤のノズルとは、互いに異なることを特徴とする請求項1または2記載の液処理装置。
【請求項4】
前記溶剤精製機構は、ポンプとフィルタとを含む溶剤の循環経路を備え、この循環経路を複数回循環させることにより溶剤に含まれている異物を除去するものであることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の液処理装置。
【請求項5】
有機溶剤を供給して行われる液処理は、基板にレジスト液を供給する前に、基板の中央部に有機溶剤を吐出すると共に基板を回転させて、当該基板の表面を有機溶剤により濡らす処理であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載の液処理装置。
【請求項6】
有機溶剤を供給して行われる液処理は、露光された後の基板に対して行われるネガ現像処理であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載の液処理装置。
【請求項7】
基板保持部に水平に保持された基板に対して、ノズルを介して有機溶剤を供給して液処理を行う液処理方法において、
未使用の有機溶剤である第1の有機溶剤を基板に供給する工程と、
未使用の有機溶剤を、フィルタが設けられた循環経路を複数回循環させることにより当該フィルタを繰り返し通流させて、前記第1の有機溶剤よりも清浄度の高い第2の有機溶剤を得る工程と、
前記第1の有機溶剤を基板に供給する工程の後、前記第2の有機溶剤を前記基板に供給する工程と、を含むことを特徴とする液処理方法。
【請求項8】
1枚の基板に対する有機溶剤の吐出量については、第2の有機溶剤の吐出量が前記第1の有機溶剤の吐出量よりも少ないことを特徴とする請求項7記載の液処理方法。
【請求項9】
前記第2の有機溶剤は、第1の有機溶剤を吐出するノズルとは、異なるノズルから吐出することを特徴とする請求項7または8記載の液処理方法。
【請求項10】
前記第1の有機溶剤よりも清浄度の高い第2の有機溶剤を得る工程は、ポンプとフィルタとを含む溶剤の循環経路を複数回循環させることにより溶剤に含まれている異物を除去する工程であることを特徴とする請求項7ないし9のいずれか一項に記載の液処理方法。
【請求項11】
有機溶剤を供給して行われる液処理は、基板にレジスト液を供給する前に、基板の中央部に有機溶剤を吐出すると共に基板を回転させて、当該基板の表面を有機溶剤により濡らす処理であることを特徴とする請求項7ないし10のいずれか一項に記載の液処理方法。
【請求項12】
有機溶剤を供給して行われる液処理は、露光された後の基板に対して行われるネガ現像処理であることを特徴とする請求項7ないし10のいずれか一項に記載の液処理方法。
【請求項13】
基板保持部に水平に保持された基板に対して、ノズルを介して有機溶剤を供給して液処理を行う液処理装置に用いられるコンピュータプログラムを記憶した記憶媒体であって、
前記コンピュータプログラムは、請求項7ないし12のいずれか一項に記載された液処理方法を実行するようにステップ群が組み込まれていることを特徴とする記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板保持部に保持された基板に対してノズルから有機溶剤を供給して液処理を行う技術に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造プロセスにおいては、薬液を用いて液処理を行うプロセスがあり、薬液として有機溶剤を用いる場合がある。具体的には、フォトリソグラフィ工程のレジスト塗布処理において、半導体ウエハ(以下「ウエハ」という)の表面にレジスト液を供給する前に、溶剤を供給するプリウェット処理が挙げられる(特許文献1)。また有機溶剤は現像処理に用いられる場合もある。
【0003】
一方、回路パターンの微細化が進んでいるため、これまではあまり問題にならなかった極小サイズの異物(パーティクル)の存在が、歩留まりに影響を及ぼすことが予想される。このようなパーティクルは、有機溶剤の原液由来の異物や、有機溶剤が原液タンクから流路を通る間に混入した輸送経路由来の異物、あるいはイオン化した金属などが挙げられる。
【0004】
このようなウェットプロセス処理後の、ウエハ上に残されるパーティクルを抑制する手法として、吐出する処理液の清浄度自体を向上する手法が考えられ、例えばフィルタリング条件の最適化や循環ろ過の繰り返しにより行われる。しかしウェットプロセスの処理液のろ過レートは、処理液の供給レートと同じ場合が多く、最適なろ過レートに設定することができない場合がある。更にはまた必要な量の処理液を、限られた処理時間内(スループットを考慮)でプロセス上必要なろ過精度を達成する為にフィルタリング条件を最適化すると、現実的にはろ過精度とスループットがトレードオフの関係になることから、本来達成したい性能が得られないという問題が発生していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−299941号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はこのような事情の下なされたものであり、その目的は、基板に対して有機溶剤を供給して液処理を行うにあたって、スループットの低下を抑えながら、液処理後の基板上の異物の残存を抑えることができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の液処理装置は、基板保持部に水平に保持された基板に対して、ノズルを介して有機溶剤を供給して液処理を行う液処理装置において、
ノズルに
未使用の有機溶剤である第1の有機溶剤を供給する第1の有機溶剤供給機構と、
未使用の有機溶剤を精製するための溶剤精製機構を備え、前記溶剤精製機構により前記第1の有機溶剤よりも清浄度
を高めた第2の有機溶剤を
ノズルに供給する第2の有機溶剤供給機構と、
前記基板に前記第1の有機溶剤を供給し、次いで当該基板に前記第2の有機溶剤を供給するように制御を行う制御部と、を備え、
前記溶剤精製機構は、フィルタが設けられると共に有機溶剤を当該フィルタに繰り返し通流させるための循環経路を備えていることを特徴とする。
【0008】
本発明の液処理方法は、基板保持部に水平に保持された基板に対して、ノズルを介して有機溶剤を供給して液処理を行う液処理方法において、
未使用の有機溶剤である第1の有機溶剤を基板に供給する工程と、
未使用の有機溶剤を、フィルタが設けられた循環経路を複数回循環させることにより当該フィルタを繰り返し通流させて、前記第1の有機溶剤よりも清浄度の高い第2の有機溶剤を得る工程と、
前記第1の有機溶剤を基板に供給する工程の後、前記第2の有機溶剤を前記基板に供給する工程と、を含むことを特徴とする。
【0009】
本発明の記憶媒体は、基板保持部に水平に保持された基板に対して、ノズルを介して有機溶剤を供給して液処理を行う液処理装置に用いられるコンピュータプログラムを記憶した記憶媒体であって、
前記コンピュータプログラムは、上述の液処理方法を実行するようにステップ群が組み込まれていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、液処理モジュールに載置された基板に対して、ノズルから有機溶剤を供給するにあたって、清浄度の低い有機溶剤を基板に供給した後、清浄度の高い有機溶剤を供給するようにしている。そのため清浄度の高い有機溶剤の供給量を少なく抑えながら、基板に残る異物の量を抑えることができる。また清浄度の高い有機溶剤を多量に精製する必要がなく、有機溶剤の精製に要する時間が短縮できるため、液処理装置のスループットの低下も抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施の形態に係るレジスト塗布装置を示す構成図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係るレジスト塗布装置の一部を示す斜視図である。
【
図3】本発明の実施の形態に用いられる、第1の溶剤供給機構の構成を示す構成図である。
【
図4】本発明の実施の形態に係る、第2の溶剤供給機構の構成を示す構成図である。
【
図5】本発明の実施の形態に係る、有機溶剤の精製工程を示す説明図である。
【
図6】本発明の実施の形態に係るプリウェット処理工程を示す説明図である。
【
図7】本発明の実施の形態に係るプリウェット処理工程を示す説明図である。
【
図8】本発明の実施の形態に係るレジスト液塗布工程を示す説明図である。
【
図9】第2の供給流路の他の実施例の構成を示す構成図である。
【
図10】本発明の液処理装置を用いたネガ式システムの構成を示す概略縦断面図である。
【
図11】本発明の液処理装置を用いたネガ式システムの現像処理の工程を示すフローチャートである。
【
図12】実施例に係る液処理装置の特性を示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[第1の実施の形態]
本発明の液処理装置をレジスト塗布装置に適用した実施形態について説明する。まずレジスト塗布装置の全体構成について簡単に説明すると、レジスト塗布装置は、
図1に示すように、有機溶剤(以下「溶剤」という)を吐出する2本の溶剤ノズル3、4及びレジスト液ノズル5を含むノズル部1と、これら溶剤ノズル3、4及びレジスト液ノズル5毎に設けられた処理液の供給源31、41、51及び処理液の供給機構30、40、50と、一連の処理工程を含むレジスト塗布装置の動作を制御する制御部9と、を備えている。
【0013】
液処理モジュール2は、ウエハWの裏面中央部を吸着して水平に保持する基板保持部であるスピンチャック21を備え、スピンチャック21は回転軸22を介して回転機構23と接続されている。スピンチャック21の周囲にはスピンチャック21上のウエハWを囲むようにして、上方側に開口部を備えたカップ体(詳しくはカップ組立体)24が設けられている。カップ体24はウエハWから振り切られた溶剤を受け止め、下部の排液路25から排出すると共に、下部の排気路26から排気してミストが処理雰囲気に飛散しないように構成されている。
【0014】
ノズル部1は、
図2に示すようにアーム11、移動体12、図示しない昇降機構及びガイドレール13を含む移動機構により、ウエハWの中央部上方の吐出位置とカップ体24の外の待機部27との間で移動するように構成されている。
ノズル部1に含まれる溶剤ノズル3、4はウエハWにレジスト液を吐出する前に溶剤を供給して、ウエハW上でレジストを広がり易くするためのプリウェット処理を行うためのものである。
【0015】
次に溶剤供給源31(41)及び溶剤供給機構30(40)について述べる。溶剤供給機構30を通り、ここから溶剤ノズル3に送られる溶剤を第1の溶剤、溶剤供給機構30を第1の溶剤供給機構30と呼ぶことにする。また溶剤供給機構40を通り、ここから溶剤ノズル4に送られる溶剤を第2の溶剤、溶剤供給機構40を第2の溶剤供給機構40と呼ぶことにする。
【0016】
第1の溶剤供給機構30は、
図3に示すように供給路38の上流側から溶剤供給源である溶剤タンク31、溶剤を一旦貯留する中間タンク32、ポンプ33、フィルタ部34及び流量調整バルブ35を備えている。
フィルタ部34は、内部にパーティクル除去用の例えばナイロンやポリエチレン等からなるフィルタが設けられ、50nm程度の大きさのパーティクルを除去することができる。なお中間タンク32、ポンプ33及びフィルタ部34には、図示していないが、ベントバルブが設けられ、ベントバルブを開くことにより、溶剤中に溶存する気体を脱気できるようになっている。
【0017】
第2の溶剤供給機構40は、
図4に示すように、工場内における装置外部の用力室から溶剤が配管39を介して中間タンク32に供給されるように構成されており、この配管39及び用力室内の溶剤を送る部位が溶剤供給源に相当する。中間タンク32から第2の溶剤ノズル4に至るまでの供給路49には、上流側から順にバルブV1、後述の循環タンク47、フィルタ部37、トラップ43、ポンプ36、トラップ44、バルブV3及び流量調整バルブ45が設けられ、流量調整バルブ45に第2の溶剤ノズル4が接続されている。そして供給路49におけるトラップ44の下流側と流量制御バルブ45の上流側との間には、例えば配管からなる循環路48が設けられ、フィルタ部37の上流側に置いては、循環路48は循環タンク47に接続されている。また循環路48は、トラップ44側から循環タンク47に向かってバルブV4、流量調整バルブ46、バルブV2がこの順に設けられている。
【0018】
溶剤を循環するときは、
図5に示すように溶剤は、フィルタ部37の上流側の分岐点から、トラップ44の下流側の分岐点に至るまでのフィルタ部37側の流路と循環路48とを循環することになり、このときのループを循環経路という用語を用いることにより循環路48と区別する。この例では、この循環経路が溶剤精製機構42に相当する。
【0019】
第2の溶剤供給機構40の一部の機器について述べておくと、トラップ43は、フィルタ部37に設けられた図示しないベントバルブだけでは除去しきれない比較的大きな気泡を取り除くためのものである。トラップ44は、ポンプ36内に残留し得るガスを取り除くためのものである。
レジスト供給機構50は、ポンプ、バルブ、フィルタなどの機器が配管に設けられ、ノズル5からレジスト液を所定量吐出するように構成されている。
【0020】
図1に戻って液処理装置には、例えばコンピュータからなる制御部9が設けられている。制御部9は、プログラム格納部を有しており、プログラム格納部には、外部の搬送アームと、スピンチャック21と、の間のウエハWの受け渡しや、スピンチャック21の回転、レジスト液や溶剤の供給シーケンスが実施されるように命令が組まれた、プログラムが格納される。このプログラムは、例えばフレキシブルディスク、コンパクトディスク、ハードディスク、MO(光磁気ディスク)、メモリーカードなどの記憶媒体により格納されて制御部9にインストールされる。
【0021】
続いて上述の液処理装置の作用について説明する。まずウエハWが図示しない外部の搬送機構によりスピンチャック21に受け渡され保持される。続いて、ウエハWを例えば50rpmの回転数で鉛直軸周りに回転させると共に、ノズル部1を、第1の溶剤ノズル3がウエハWの中央部上方に位置するように移動させる。
【0022】
一方第1の溶剤供給機構30では、第1の溶剤タンク31から供給される溶剤を、一時的に中間タンク32に貯留した後、ポンプ33により、フィルタ部34に送り、フィルタの目(孔部)より大きなパーティクルの除去が行われる。そして、ポンプ33による吐出動作により、流量調整バルブ35により、設定された流量で、第1の溶剤ノズル3から第1の溶剤がウエハWに対して、例えば1.5ml供給される。
図6はこの状態を示しており、第1の溶剤は遠心力により徐々にウエハWの外周方向に向けて広がる。
【0023】
ノズル部1は、第1の溶剤を供給した後、速やかに移動して、第2の溶剤ノズル4がウエハWの中央部上方に位置するように移動する。なおウエハWは緩やかに回転された状態を保たれる。ここで第2の溶剤が第2の溶剤ノズル4から吐出される前の処理について述べておく。
第2の溶剤供給機構40では、工場内の用力室内から溶剤が配管39を介して中間タンク41に送られ、更に循環タンク47に送られる。なお装置の立ち上げ時には、循環路48も含めて溶剤が満たされている。そして
図5に示すようにバルブV1,V3を閉じ、バルブV2、V4を開き、ポンプ36を駆動することにより、溶剤は、循環路48を介して循環する。即ち溶剤は循環タンク47→フィルタ部37→トラップ43→ポンプ36→トラップ44→流量調整バルブ46→循環タンク47からなるループ(循環経路)を流れ、例えば50周循環させる。
【0024】
この操作により溶剤は、ろ過が繰り返されて、清浄度が高められる。フィルタ部37に1回通過させたときには、例えば70nm程度の大きさのパーティクルはフィルタ部37を通過できずに除去されるが、フィルタ部37の開口部よりも小さいパーティクル、例えば40nm程度の大きさの微細なパーティクルは、フィルタ部37を通過してしまう。ところがフィルタ部37を繰り返し通過させるうちに、前記微細なパーティクルは分子間力によりフィルタ部37に付着し始め、その付着量は次第に多くなっていく。さらに分子間力によって微細なパーティクルの付着が増加するにつれて、開口部も狭まるため、より微細なパーティクルの除去も可能となる。こうして溶剤が、フィルタ部37を繰り返し通過すると、1回の通過では、除去仕切れなかった微細なパーティクルについても高い除去率で除去することができる。
【0025】
次いでポンプ36を停止し、バルブV2、V4を閉じ、バルブV1、V3を開く。しかる後ポンプ36を駆動することにより、清浄度の高い第2の溶剤がノズル4からウエハWに吐出される。この場合においても、流量調整バルブ45により、調整した流量で吐出が行われる。説明が重複するが、第2の溶剤ノズル4は、ウエハWの中央部上方に移動後、速やかに第2の溶剤をウエハWの中央部(中心部)に対して、例えば1.0ml供給する。
図7に示すように第2の溶剤は、第1の溶剤と同様に、遠心力により、ウエハWの中央部から周縁に広がり、このとき第1の溶剤を中央部から外周方向に押し出すように広がっていく。
【0026】
続いてウエハWの回転数をレジスト塗布のための設定回転数まで上昇させる。第1の溶剤は、フィルタ部34を1回通過したのみであるため、溶剤中には、微細なパーティクルが残っている。これに対し第2の溶剤は、既述のように循環路48により、フィルタ部37を繰り返し通過しており、微細なパーティクルまで除去されている。従って第1の溶剤を供給した後に、清浄度の高い第2の溶剤を供給すると、第2の溶剤は、パーティクルを第1の溶剤と共に、ウエハWの外周方向に押し出す。そのため第2の溶剤を供給した後は、ウエハW上に残されるパ−ティクルは少なくなる。
【0027】
プリウェット処理の終了後は、
図8に示すように、レジスト液ノズル5をウエハWの中央部上方に移動させ、ウエハWの回転数を上昇させた状態で、レジスト液ノズル5からウエハWにレジストの吐出を行う。ウエハWの表面は、溶剤により濡れていることから、レジスト液が高い均一性をもってウエハWの表面全体に広がり、均一性の高いレジスト膜が形成される。
【0028】
上述のように、溶剤を繰り返し循環させて精製処理をする工程は、装置のメンテナンス時やウエハWのロット間において空き時間が長い場合などに行い、レジストの塗布処理を行う時には、この例では、精製処理を終えた循環タンク47内の溶剤をウエハWに供給する。しかしウエハWが装置内を流れているときに、循環タンク47内の精製済み溶剤が少なくなったときには、例えばロット間において溶剤の精製処理を行わざるを得ない。この場合ウエハWの塗布処理が停止するが、第1の溶剤と第2の溶剤とを使用することにより第2の溶剤の使用量を抑えている。例えばプリウェットを行うにあたって2.5mlの溶剤が必要な場合に第2の溶剤の使用量を抑えている。このためバッファタンクの役割を果たす循環タンク47内の第2の溶剤の消費速度が遅いので、精製工程の時間間隔がその分長くなる。また溶剤を多量に精製しなくとも良いので、これらの要因が重なって、結果として塗布処理のトータルの停止時間が短くなる。そのため液処理装置のスループットの低下を抑えることができる。
【0029】
上述の実施の形態によれば、液処理モジュール2に載置されたウエハWに対して、ノズル部1から溶剤を供給するにあたって、未精製の清浄度の低い第1の溶剤をウエハWに供給した後、精製された清浄度の高い第2の溶剤を供給する。そのため清浄度の高い第2の溶剤の使用量を抑えながら、ウエハWに残る異物の量を少なく抑えることができる。そしてこの手法によれば、既述のように液処理装置のスループットの低下が抑えられる。
【0030】
また溶剤精製機構42としては、溶剤を蒸留して清浄度を高める構成としてもよい。例えばプリウェット用の溶剤として、PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)やPGME(プロピレングリコールモノメチルエーテル)等を用いる場合には、蒸留によって精製することもできる。
図9はこのような溶剤精製機構42を示しており、
図3に示す第1の溶剤供給機構30と同様の構成において、フィルタ部34の後段に蒸留タンク61を設ける。蒸留タンク61は、蒸留タンク61中の溶剤を加熱するための加熱部64を備えており、溶剤の沸点以上の一定温度に加熱することが可能である。蒸留タンク61の上部には、冷却器62が設けられる。冷却器62はスパイラル状の内管と、内管を囲い、内管の周囲に冷却水を通流させるための外管と、で構成されており、回収された薬液の蒸気を内管を通過させる間に冷却し、液化するように構成されている。
【0031】
冷却器62の出口側の下方には、貯留タンク63を設けて、冷却器62で液化された溶剤を回収する。溶剤は、蒸留によって、含有されていた異物(例えばパーティクルやイオン化したメタル)が除去されており、清浄度の高い溶剤となっている。貯留タンク63に貯留された清浄度の高い第2の溶剤は、ポンプ64により溶剤ノズル4からウエハWに吐出される。このような構成にすることでも清浄度の高い溶剤を精製することができる。
【0032】
また第1の溶剤供給機構30と同様な構成の供給路において、溶剤の流速を遅くして、フィルタ部34の通過速度が遅くなるように構成しても清浄度の高い溶剤を得ることができる。例えばポンプ33の吸引量を下げて、溶剤の速度を遅くする。溶剤に含まれるパーティクルは、フィルタ部34を緩やかに通過する場合には、分子間力によりフィルタに吸着されやすいため、除去効率が上がる。このような構成によっても溶剤の清浄度を高めることができるため、同様の効果が得られる。
【0033】
また本発明の液処理装置は、ウエハWを回転させずに、ウエハWの幅方向に一列に並べられた複数のノズルを有機溶剤を吐出した状態で、ウエハW上を横切らせることにより、ウエハWの表面全体に液処理を施す液処理装置であっても良い。
【0034】
[第2の実施の形態]
また本発明の液処理装置は、現像装置に適用しても良い。ネガ型システムの現像装置では、露光されたレジスト膜の領域のうち、光照射強度の弱い領域を選択的に溶解、除去を行い、パターン形成を行う。このネガ型システムの現像装置の現像処理工程としては、溶剤を含有する現像液を、例えば一定速度で回転している基板に供給してウエハW上に液膜を形成する液膜形成工程と、現像液の液膜によって、レジスト膜を溶解してパターン形成を行う現像工程があり、液膜形成工程と現像工程が交互に繰り返されることにより現像を行う。
【0035】
現像装置は、
図10に示すように、前述の液処理装置と同様にスピンチャック71により、ウエハWを水平に保持し、回転軸72を介して鉛直軸周りに回転され、なおスピンチャック71の周囲には、第1の実施の形態と同様のカップ体が設けられている。また第1の実施の形態と同様のカップ体を用いることもできる。ウエハWの上方には、スピンチャック71に保持されたウエハWに現像液を供給するノズル部73が設けられる。
【0036】
ノズル部73は、清浄度の低い第1の現像液を供給するための第1の現像液ノズル75と、清浄度の高い第2の現像液を供給するための第2の現像液ノズル76と、を備えている。第1の現像液ノズル75は、現像液供給源81と、第1の現像液供給機構77を介して接続されており、第2の現像液ノズル76は、現像液供給源82と、第2の現像液供給路78を介して接続される。第2の現像液供給機構78は、例えば
図4に示すと同様の、繰り返しフィルタ部を通過させる循環経路を含む溶剤精製機構80を備えており、第2の現像液の清浄度を高めることができる。また現像装置は、スピンチャック71で保持されたウエハWの上方側にリンス液を供給するためのリンス液ノズル部74が設けられる。リンス液ノズル74は、リンス液供給源83と、リンス液供給機構79を介して接続されており、ノズル部73と同様に、ガイドレールに沿って移動し、昇降機構により昇降可能に構成されている。また一連の処理工程を含む現像装置の動作を制御する制御部90と、を備えている。
【0037】
現像装置における工程を
図11に示すフローチャートで説明すると、露光処理終了後のウエハWが現像装置に搬入される(ステップS1)と、ウエハWが回転する(ステップS2)と共に、第1の現像液ノズル75がウエハWの中心部上方に移動する(ステップS3)。次いで、液膜形成工程と、現像工程を繰り返す現像処理工程が行われる(ステップS4)。液膜形成工程では、ウエハWを回転させた状態で、現像液が例えば0.5秒供給され、ウエハW上に現像液の液膜が形成される。現像工程では、現像液の供給が1.5秒間停止され、液膜によりレジスト膜の溶解、即ち現像処理が行われる。この液膜形成工程と現像工程を交互に複数回、例えばn=8回繰り返すことにより現像処理工程が達成される。
【0038】
1回目から(n−1)回目までの液膜形成工程は、未精製の第1の現像液を、例えば合計23ml供給する。その後n回目の液膜形成工程は、清浄度の高い第2の現像液を2ml供給する。現像処理工程が終了した後は、ウエハW上の残存溶解物や、パーティクルを除去するためのリンス処理が行われ(ステップS5)、乾燥された後(ステップS6)、外部の搬送装置により搬出される。
【0039】
本発明の液処理装置を用いた現像装置では、未精製の清浄度の低い第1の現像液で現像処理を行った後、精製された清浄度の高い第2の現像液で現像を行うため、現像に必要な現像液の量、例えば25mlに対して、清浄度の高い現像液を少量、例えば2mlに抑えながら、パーティクルの残存が少ない現像処理を行うことができる。従って清浄度の高い現像液を多量に精製する必要が無いためスループットの低下を防ぐことができる。また現像処理後にウエハWに残存するパーティクルが少なくなるため、ステップS5のリンス処理の時間やリンス液の量を減少させることができ、あるいはリンス処理工程の省略が可能となる。
【0040】
また現像工程は、n回供給を行ううちの1〜m回目(mはm<nである自然数)は、第1の現像液の供給を行い、m+1〜n回目(m=n−1の時はn回目のみ)は第2の現像液を供給するようにしてもよく、1〜n−1回目は第1の現像液の供給を行い、n回目は、第1の現像液を加えた後、第2の現像液を加えるようにしても良い。なお1〜n−1回目までの間に第2の現像液を用いる行為が含まれていたとしても本発明の特許請求の範囲に含まれる。
【実施例】
【0041】
本発明を評価するために第1の実施の形態に係る液処理装置を用いて、次のような評価試験を行った。ウエハW(直径30cm)に対して、清浄度の高い溶剤を2ml用いて処理を行った場合(参考例)と、清浄度の低い溶剤を10ml用いて処理を行った場合(比較例)と、清浄度の低い溶剤を10ml供給した後に、清浄度の高い溶剤を2ml供給して処理を行った場合(実施例)の各々について、ウエハWを2000rpmで15秒回転させて、振り切り乾燥を行った後のウエハW1枚あたりの残存する40nm以上のパーティクル数を調べた。なお清浄度の高い溶剤とは、
図4に示すと同様の第2の溶剤供給機構40で得られたものであり、清浄度の低い溶剤とは、
図3に示すと同様の第1の溶剤供給機構30で得られたものである。
【0042】
図12は、各例毎に、残存するパーティクル数を示した説明図である。清浄度の低い溶剤(10ml)のみで処理を行った比較例では、残存するパーティクル数は172個/ウエハとなっている。また清浄度の高い溶剤(2ml)のみで処理を行った参考例は、残存するパーティクル数は76個/ウエハとなっている。一方で清浄度の低い溶剤(10ml)を供給した後に、清浄度の高い溶剤(2ml)を供給して処理を行った実施例では、残存するパーティクル数は82個/ウエハとなっており、清浄度の高い溶剤(2ml)のみで処理を行った参考例と比較して略同水準まで改善していることが分かる。この結果は、清浄度の低い溶剤を用いると清浄度の低い分に応じて、ウエハW上に付着するが、その後清浄度の高い溶剤により、そのパーティクルが洗い流されていることを裏付けている。従って本発明の実施の形態に係る液処理装置を用いた場合には、清浄度の高い溶剤の使用する量を少なく限定して、高いスループットを維持しながら、パーティクルの残存数を少なく抑えることができる。
【符号の説明】
【0043】
21 スピンチャック
1 ノズル部
3 第1の溶剤ノズル
4 第2の溶剤ノズル
30 第1の溶剤供給機構
31 第1の溶剤タンク
33、36 ポンプ
34、37 フィルタ部
40 第2の溶剤供給機構
41 第2の溶剤タンク
42 溶剤精製機構
48 循環路
9 制御部
W ウエハ