特許第5858837号(P5858837)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5858837
(24)【登録日】2015年12月25日
(45)【発行日】2016年2月10日
(54)【発明の名称】吸引保持手段の被加工物離脱方法
(51)【国際特許分類】
   B23Q 7/04 20060101AFI20160128BHJP
   B24B 41/06 20120101ALI20160128BHJP
   H01L 21/677 20060101ALI20160128BHJP
   H01L 21/301 20060101ALI20160128BHJP
   B23Q 3/08 20060101ALN20160128BHJP
【FI】
   B23Q7/04 K
   B24B41/06 A
   H01L21/68 B
   H01L21/78 N
   !B23Q3/08 A
【請求項の数】1
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-68341(P2012-68341)
(22)【出願日】2012年3月23日
(65)【公開番号】特開2013-198953(P2013-198953A)
(43)【公開日】2013年10月3日
【審査請求日】2015年2月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】福岡 武臣
(72)【発明者】
【氏名】水島 亮
【審査官】 山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−117870(JP,A)
【文献】 特開2009−90446(JP,A)
【文献】 特開2010−153585(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0267317(US,A1)
【文献】 特開2009−76720(JP,A)
【文献】 特開2009−202330(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0135047(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 7/04,3/08,
B24B 41/06,
H01L 21/68,21/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸引保持手段の保持部に保持された被加工物を所定の処理終了後に該吸引保持手段から離脱させる吸引保持手段の被加工物離脱方法であって、
該所定の処理を実施後、該被加工物を吸引保持した該吸引保持手段を該被加工物を離脱する離脱位置に位置づける位置づけステップと、
該位置づけステップ終了後、該吸引保持手段の保持部に作用し、該被加工物を吸引保持する吸引力を停止し、その後該保持部に流体を間欠的に供給して保持部から噴出させて、該吸引保持手段から確実に該被加工物を離脱させる離脱ステップと、を備えることを特徴とする吸引保持手段の被加工物離脱方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板状の被加工物を吸引保持する吸引保持手段の被加工物離脱方法に関する。
【背景技術】
【0002】
各種加工装置に於いて、吸引保持手段がウエーハ等の板状の被加工物を吸引保持することで何らかの処理を行う場面は多く見受けられ、例えば、チャックテーブルや搬送機構がそれにあたる。切削装置に於いては、チャックテーブルや搬送機構は被加工物に対して負圧を作用させ、その吸引力で被加工物を保持し、チャックテーブルであれば加工手段によって加工を施したり(特許文献1参照)、搬送機構であれば所定の位置に搬送したりといった処理を行う(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−049193号公報
【特許文献2】特開2010−099733号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、加工で発生する切削屑が吸引保持手段の被加工物との接触面(吸引面)に付着して、それが接着剤のような役割を果たしてしまったり、吸引面のわずかな凹凸に被加工物が密着してしまうことで、被加工物が強固に固定されてしまうような場合がある。このような状態では、吸引作用を停止しても被加工物が吸引保持手段から離脱しないといった問題が発生する。
【0005】
上記の問題を解決するために、例えば特許文献2のように、被加工物を離脱する方向に押圧部材を押し出す機構を設ける方法があるが、部品点数も多く、装置に追加するにはコストが掛かるという問題が有った。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、低コストに被加工物を吸引保持手段から確実に離脱させることを可能とする吸引保持手段の被加工物離脱方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の吸引保持手段の被加工物離脱方法は、吸引保持手段の保持部に保持された被加工物を所定の処理終了後に該吸引保持手段から離脱させる吸引保持手段の被加工物離脱方法であって、該所定の処理を実施後、該被加工物を吸引保持した該吸引保持手段を該被加工物を離脱する離脱位置に位置づける位置づけステップと、該位置づけステップ終了後、該吸引保持手段の保持部に作用し、該被加工物を吸引保持する吸引力を停止し、その後該保持部に流体を間欠的に供給して保持部から噴出させて、該吸引保持手段から確実に該被加工物を離脱させる離脱ステップと、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
そこで、本発明の吸引保持手段の被加工物離脱方法では、吸引を停止するとともに間欠的に流体(水や加圧された気体等)を噴出させることで被加工物に振動を与えるので、振動によって容易に吸引保持手段から離脱する事を可能とするという効果を奏する。
【0009】
吸引源に連通して被加工物に吸引力を作用させていた吸引路を利用して、そこから流体を間欠的に噴出するだけでよく、新たに吸引保持手段に部品等を追加する必要が無く、流体供給源と吸引路を連通させ、途中に間欠的に流体を噴出させるために流路を間欠的に開閉する電磁弁等を配置させることで実現可能であるため、低コストで実現できるという効果がある。
【0010】
したがって、本発明の吸引保持手段の被加工物離脱方法では、低コストで被加工物を吸引保持手段から確実に離脱させることを可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、実施形態1に係る切削装置の構成例の一部を示す図である。
図2図2は、実施形態1に係る切削装置のチャックテーブル及び被加工物としてのパッケージ基板などを示す斜視図である。
図3図3は、実施形態1に係る切削装置のチャックテーブルなどの要部の構成を示す図である。
図4図4は、実施形態1に係る切削装置の切削加工中のチャックテーブルなどの要部の構成を示す図である。
図5図5は、実施形態1に係る切削装置の個々に分割されたデバイスを搬送手段により搬送し始められるチャックテーブルなどの要部の構成を示す図である。
図6図6は、実施形態1に係る切削装置の個々に分割されたデバイスが離脱したチャックテーブルなどの要部の構成を示す図である。
図7図7は、実施形態1に係る切削装置の動作を示すフローチャートである。
図8図8は、実施形態2に係る切削装置の構成例の一部を示す図である。
図9図9は、実施形態2に係る被加工物としてのウエーハなどを示す斜視図である。
図10図10は、実施形態2に係る切削装置の搬送手段の吸引保持手段及び被加工物としてのウエーハなどを示す斜視図である。
図11図11は、実施形態2に係る切削装置の搬送中の搬送手段の吸引保持手段などの構成を示す図である。
図12図12は、実施形態2に係る切削装置の載置場所にウエーハなどを載置した搬送手段の吸引保持手段などの構成を示す図である。
図13図13は、実施形態2に係る切削装置のウエーハの離脱中の搬送手段の吸引保持手段などの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0013】
〔実施形態1〕
図1は、実施形態1に係る切削装置の構成例の一部を示す図である。図2は、実施形態1に係る切削装置のチャックテーブル及び被加工物としてのパッケージ基板などを示す斜視図である。図3は、実施形態1に係る切削装置のチャックテーブルなどの要部の構成を示す図である。図4は、実施形態1に係る切削装置の切削加工中のチャックテーブルなどの要部の構成を示す図である。図5は、実施形態1に係る切削装置の個々に分割されたデバイスを搬送手段により搬送し始められるチャックテーブルなどの要部の構成を示す図である。図6は、実施形態1に係る切削装置の個々に分割されたデバイスが離脱したチャックテーブルなどの要部の構成を示す図である。図7は、実施形態1に係る切削装置の動作を示すフローチャートである。
【0014】
実施形態1に係る吸引保持手段の被加工物離脱方法は、チャックテーブル10(吸引保持手段に相当)の表面10a(保持部に相当)に保持されたパッケージ基板P(被加工物に相当)を切削加工(所定の処理)終了後に、チャックテーブル10から離脱させる方法であって、図1に示す切削装置1において実行される方法である。
【0015】
なお、実施形態1において、被加工物としてのパッケージ基板Pは、切削装置1により切削加工される被加工物であり、本実施形態では、互いに直行する分割予定ラインLによって区画されかつ所定の電極等を有して樹脂により封止されたデバイスD1を複数有している。パッケージ基板Pは、切削装置1がチャックテーブル10と切削ブレード21を有する加工手段20とを相対移動させて、分割予定ラインLに切削加工が施されることで、個々のデバイスD1(被加工物に相当する)に分割される。
【0016】
切削装置1は、図1に示すように、チャックテーブル10と、加工手段20と、搬送手段30(図5に示し吸引保持手段に相当する)と、制御手段90とを含んで構成されている。切削装置1は、更に、チャックテーブル10と加工手段20とをX軸方向に相対移動させる図示しないX軸移動手段と、チャックテーブル10と加工手段20とをY軸方向に相対移動させる図示しないY軸移動手段と、チャックテーブル10と加工手段20とをZ軸方向に相対移動させる図示しないZ軸移動手段とを含んで構成されている。
【0017】
チャックテーブル10は、切削加工前のパッケージ基板Pが搬送手段30により載置されて、当該パッケージ基板Pを吸引保持するものである。チャックテーブル10は、図2及び図3に示すように、分割予定ラインLに切り込んだ切削ブレード21との接触を回避するための逃げ溝11が表面10aに複数形成されている。また、チャックテーブル10は、パッケージ基板Pの個々のデバイスD1を吸引するための吸引孔12が前記表面10aに各デバイスD1毎に形成されている。吸引孔12には、図3に示すように、電磁弁13を介して吸引源14に接続した吸引路15が接続しているとともに、吸引路15の途中には、電磁弁16を介して流体供給源17に接続した流路18が接続している。電磁弁13,16は、制御手段90からの命令通りに吸引路15及び流路18を開閉するものである。吸引源14は、吸引路15を介して吸引孔12から雰囲気を吸引するものであり、流体供給源17は、流路18及び吸引路15を介して吸引孔12から加圧された気体を噴出するものである。
【0018】
なお、チャックテーブル10は、切削装置1の装置本体2に設けられた図示しないテーブル移動基台に着脱可能である。なお、テーブル移動基台は、X軸移動手段によりX軸方向に移動自在に設けられかつ図示しない基台駆動源により中心軸線(Z軸と平行である)回りに回転自在に設けられている。
【0019】
加工手段20は、チャックテーブル10に保持されたパッケージ基板Pを切削加工するものである。加工手段20は、チャックテーブル10に保持されたパッケージ基板Pに対して、Y軸移動手段によりY軸方向に移動自在に設けられ、かつ、Z軸移動手段によりZ軸方向に移動自在に設けられている。加工手段20は、切削ブレード21と、スピンドル22と、図示しないハウジングとを含んで構成されている。切削ブレード21は、略リング形状を有する極薄の切削砥石であり、回転することでパッケージ基板Pに切削加工を施すものである。切削ブレード21は、スピンドル22に着脱自在に装着される。スピンドル22は、円筒形状のハウジングに回転自在に支持され、ハウジングに連結されている図示しないブレード駆動源に連結されている。切削ブレード21は、ブレード駆動源により発生した回転力により回転駆動する。ハウジングは、Y軸移動手段及びZ軸移動手段を介して装置本体2に取り付けられている。
【0020】
搬送手段30は、切削加工前のパッケージ基板Pをチャックテーブル10に載置し、切削加工後の分割された個々のデバイスD1をチャックテーブル10から離脱させるものである。搬送手段30には、図5に示すように、パッケージ基板Pの個々のデバイスD1を吸引するための吸引孔31が下面30a(保持部に相当する)に各デバイスD1毎に形成されている。吸引孔31には、前述したチャックテーブル10に設けられた同等の構成の吸引路32、流路、電磁弁、吸引源、流体供給源が接続している。
【0021】
制御手段90は、切削装置1を構成する上述した構成要素をそれぞれ制御するものである。制御手段90は、パッケージ基板Pに対する加工動作を切削装置1に行わせるものである。また、制御手段90は、切削加工前後のパッケージ基板P及び個々に分割されたデバイスD1をチャックテーブル10及び搬送手段30から離脱させる際に、吸引源14からの吸引力を停止した後、表面10a及び下面30aの吸引孔12,31から加圧された気体(流体に相当する)を所定時間間欠的に噴出させて、チャックテーブル10の表面10a及び搬送手段30の下面30aから切削加工後のパッケージ基板即ち個々に分割されたデバイスD1を離脱させるものでもある。なお、制御手段90は、例えばCPU等で構成された演算処理装置やROM、RAM等を備える図示しないマイクロプロセッサを主体として構成されており、加工動作の状態を表示する図示しない表示手段や、オペレータが加工内容情報などを登録する際に用いる図示しない操作手段と接続されている。
【0022】
次に、実施形態1に係る切削装置1を用いたパッケージ基板Pの加工方法及び吸引保持手段の被加工物離脱方法について説明する。オペレータが加工内容情報を制御手段90に登録し、オペレータから加工動作の開始指示があった場合に、切削装置1が加工動作を開始する。加工動作において、制御手段90が、まず、図7のステップS1において、制御手段90は、切削加工前のパッケージ基板Pをチャックテーブル10に載置し、図4に示すように、電磁弁13を開きかつ電磁弁16を閉じて、吸引源14を駆動して、吸引孔12を通してチャックテーブル10の表面10aにパッケージ基板Pを吸引保持する。
【0023】
次に、制御手段90は、X軸移動手段によりチャックテーブル10を移動して、チャックテーブル10に保持されたパッケージ基板Pの加工手段20に対する相対位置を調整する。加工内容情報に基づいて、図4に示すように、パッケージ基板Pの分割予定ラインLを切削し個々のデバイスD1に分割する分割加工やパッケージ基板Pの外周部を切削除去する加工などの切削加工を実行する。そして、制御手段90は、全ての分割予定ラインLなどに対する切削加工が終了すると、ステップS2に進む。
【0024】
制御手段90は、ステップS2では、全ての分割予定ラインLなどに対する切削加工を実施後、X軸駆動手段により個々に分割された複数のデバイスD1を吸引保持したチャックテーブル10を、加工手段20の下方から退避させて、搬送手段30の下方に位置してデバイスD1を離脱する離脱位置に位置付ける。そして、制御手段90は、ステップS2終了後、ステップS3に進む。なお、ステップS2は、位置づけステップに相当する。
【0025】
制御手段90は、ステップS2終了後、ステップS3では、図5に示すように、搬送手段30の下面30aをチャックテーブル10に保持されたパッケージ基板Pに重ねて、搬送手段30の吸引源を駆動させるなどして、下面30aにパッケージ基板Pを吸引保持する。そして、制御手段90は、図6に示すように、吸引源14を停止して、電磁弁13を閉じて、チャックテーブル10の表面10aに作用し、分割された個々のデバイスD1を吸引保持する吸引力を停止する。
【0026】
その後、制御手段90は、流体供給源17を駆動し、電磁弁16を所定時間間欠的に開閉して、表面10aの吸引孔12に加圧された気体を所定時間間欠的に供給して、表面10aの吸引孔12から噴出させる。そして、制御手段90は、チャックテーブル10から確実に個々に分割された複数のデバイスD1に加圧された気体により振動を与えて、チャックテーブル10から個々に分割された複数のデバイスD1を確実に離脱させる。ステップS3は、離脱ステップに相当する。なお、実施形態1では、流体供給源17から表面10aの吸引孔12に加圧された気体を、周波数が10Hz、デユーティー比が50%で所定時間間欠的に供給するのが好ましい。
【0027】
制御手段90は、チャックテーブル10からの個々に分割された複数のデバイスD1の離脱が終了すると、搬送手段30に切削加工前のパッケージ基板Pを吸引保持されて、チャックテーブル10の表面10aに載置させる。そして、制御手段90は、チャックテーブル10と同様に搬送手段30から切削加工前のパッケージ基板Pを離脱させる。こうして、制御手段90は、切削加工が施されて個々に分割されたデバイスD1と切削加工前のパッケージ基板Pとの交換が終了すると、前述したステップS1に戻り、前述した工程通りに、パッケージ基板Pに切削加工を施す。
【0028】
以上のように、実施形態1に係る吸引保持手段の被加工物離脱方法によれば、吸引を停止するとともに間欠的に加圧された流体を噴出させることで、個々に分割されたデバイスD1や切削加工前のパッケージ基板Pに振動を与えるので、振動によって容易にチャックテーブル10や搬送手段30から離脱させることができる。
【0029】
また、吸引源14に連通して個々に分割されたデバイスD1や切削加工前のパッケージ基板Pに吸引力を作用させていた吸引路15,32を利用して、そこから加圧された気体を間欠的に噴出するだけでよく、新たに吸引保持手段に部品等を追加する必要が無く、流体供給源17と吸引路15,32を連通させ、途中に間欠的に加圧された気体を噴出させるために流路18を間欠的に開閉する電磁弁16等を配置させることで実現可能であるため、低コストで実現することができる。したがって、実施形態1の吸引保持手段の被加工物離脱方法では、低コストで個々に分割されたデバイスD1や切削加工前のパッケージ基板Pをチャックテーブル10や搬送手段30から確実に離脱させることを可能とすることができる。
【0030】
さらに、周波数が10Hz、デユーティー比が50%で電磁弁16を所定時間間欠的に開閉して、吸引孔12に加圧された気体を供給する場合には、短時間のうちに個々に分割されたデバイスD1をチャックテーブル10から離脱させることができ、個々に分割されたデバイスD1をチャックテーブル10から取り除くことができる。
【0031】
〔実施形態2〕
次に、実施形態2に係る吸引保持手段の被加工物離脱方法を説明する。なお、実施形態1と同一部分には、同一符号を付して説明を省略する。図8は、実施形態2に係る切削装置の構成例の一部を示す図である。図9は、実施形態2に係る被加工物としてのウエーハなどを示す斜視図である。図10は、実施形態2に係る切削装置の搬送手段の吸引保持手段及び被加工物としてのウエーハなどを示す斜視図である。図11は、実施形態2に係る切削装置の搬送中の搬送手段の吸引保持手段などの構成を示す図である。図12は、実施形態2に係る切削装置の載置場所にウエーハなどを載置した搬送手段の吸引保持手段などの構成を示す図である。図13は、実施形態2に係る切削装置のウエーハの離脱中の搬送手段の吸引保持手段などの構成を示す図である。
【0032】
実施形態2に係る吸引保持手段の被加工物離脱方法は、搬送手段81,82の吸引保持手段83のパッド85(保持部に相当)に吸引保持された被加工物Wを搬送(所定の処理)終了後に、搬送手段81,82の吸引保持手段83のパッド85から離脱させる方法であって、図8に示す切削装置1において実行される方法である。
【0033】
なお、実施形態2において、被加工物Wは、切削装置1により切削加工される被加工物であり、本実施形態では、ウエーハWAと、環状フレームFと、粘着テープTとを含んで構成されている。ウエーハWAは、シリコン、サファイア、ガリウムなどを母材とする円板状の半導体ウエーハや光デバイスウエーハである。ウエーハWAは、図9及び図10に示すように、表面に形成された複数のデバイスD2が複数のストリートSによって格子状に区画されている。被加工物Wは、ウエーハWAの表面の反対側の裏面に粘着テープTが貼着され、粘着テープTに環状フレームFが貼着されて構成され、切削装置1がチャックテーブル10と切削ブレード21を有する加工手段20とを相対移動させて、粘着テープTを残してストリートSに切削加工が施される。なお、本発明では、被加工物Wは、ウエーハWAに限ることなく、ガラス、樹脂などからなる板状部材と粘着テープTと環状フレームFとを含んで構成されても良い。
【0034】
実施形態2に係る切削装置1のチャックテーブル10(吸引保持手段に相当する)は、搬送手段81,82により切削加工前の被加工物Wが載置されて、当該被加工物Wを保持するものである。チャックテーブル10は、表面を構成する部分がポーラスセラミック等から形成された円盤形状であり、図示しない真空吸引経路を介して図示しない真空吸引源と接続され、表面に載置された被加工物Wを吸引することで保持する。
【0035】
また、実施形態2に係る切削装置1は、切削加工前後の被加工物Wを複数収容するカセットエレベータ50と、カセットエレベータ50に切削加工前後の被加工物Wを出し入れする搬出入手段61と、切削加工前後の被加工物Wが仮置きされる仮置き手段60と、切削加工後の被加工物Wを洗浄する洗浄手段70と、切削加工前後の被加工物Wを搬送する第1及び第2の搬送手段81,82と、を含んで構成されている。
【0036】
第1の搬送手段81は、仮置き手段60のレール62上の切削加工前の被加工物Wをチャックテーブル10上まで搬送するとともに、洗浄手段70により洗浄された被加工物Wを仮置き手段60上まで搬送する。第2の搬送手段82は、チャックテーブル10上の切削加工後の被加工物Wを洗浄手段70の図示しないスピンナーテーブルまで搬送する。第1及び第2の搬送手段82は、図10に示す吸引保持手段83を備えている。吸引保持手段83は、図10に示すように、H字状のフレーム84と、フレーム84の四隅に設けられたパッド85とを備えている。
【0037】
吸引保持手段83のパッド85には、図11図12及び図13に示すように、被加工物Wの環状フレームFを吸引するための吸引孔12が形成されている。吸引孔12には、吸引路15、流路18、電磁弁13,16、吸引源14、流体供給源17が接続している。
【0038】
次に、実施形態2に係る切削装置1の吸引保持手段の被加工物離脱方法は、搬送手段81,82においては、以下のように実行される。制御手段90は、搬送手段81,82の搬送中には、図11に示すように、電磁弁13を開きかつ電磁弁16を閉じて、吸引源14を駆動して、吸引孔12を通してパッド85に被加工物Wの環状フレームFを吸引保持する。そして、制御手段90は、被加工物Wの搬送(所定の処理)を実施後、制御手段90は、図12に示すように、被加工物Wを吸引保持した吸引保持手段83を、被加工物Wを離脱する離脱位置としてのチャックテーブル10、洗浄手段70、仮置き手段60のいずれかの載置場所に位置付ける位置づけステップを実行する。
【0039】
制御手段90は、位置づけステップ終了後、図13に示すように、吸引源14を停止して、電磁弁13を閉じて、吸引保持手段83のパッド85に作用し、被加工物Wを吸引保持する吸引力を停止する。その後、制御手段90は、図13に示すように、流体供給源17を駆動し、電磁弁16を所定時間間欠的に開閉して、パッド85の吸引孔12に加圧された流体を所定時間間欠的に供給して、パッド85の吸引孔12から噴出させる。そして、制御手段90は、吸引保持手段83から被加工物Wに加圧された流体により振動を与えて、吸引保持手段83から被加工物Wを確実に離脱させる離脱ステップを実行する。なお、実施形態2において、チャックテーブル10及び洗浄手段70のスピンナーテーブルからの被加工物Wの離脱は、実施形態1に示された吸引保持手段の被加工物離脱方法と同様に実行される。
【0040】
以上のように、実施形態2に係る吸引保持手段の被加工物離脱方法によれば、吸引を停止するとともに間欠的に加圧された流体を噴出させることで、被加工物Wに振動を与えるので、振動によって容易に搬送手段81,82の吸引保持手段83から離脱させることができる。また、吸引源14に連通して被加工物Wに吸引力を作用させていた吸引路15を利用して、そこから加圧された流体を間欠的に噴出するので、低コストで実現することができる。したがって、実施形態2の吸引保持手段の被加工物離脱方法では、実施形態1と同様に、低コストで被加工物Wを搬送手段81,82の吸引保持手段83から確実に離脱させることを可能とすることができる。
【0041】
前述した実施形態1及び実施形態2では、流体供給源17は、流体としての加圧された気体を供給しているが、本発明は、これに限ることなく、流体としての水などの液体を供給しても良い。特に、流体供給源17は、チャックテーブル10の場合には、流体としての水などの液体を間欠的に供給して噴出させても良い。また、本発明は、円盤形状のチャックテーブル10や、洗浄手段70のスピンナーテーブルなどに適用しても良い。さらに、本発明は、切削装置1に限ることなく、種々の被加工物の種々の処理を施す処理装置の種々の吸引保持手段に適用しても良い。
【0042】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0043】
10 チャックテーブル(吸引保持手段)
10a 表面(保持部)
30 搬送手段(吸引保持手段)
30a 下面(保持部)
83 吸引保持手段
85 パッド(保持部)
P パッケージ基板(被加工物)
D1 デバイス(被加工物)
W 被加工物
S2 位置づけステップ
S3 離脱ステップ
図1
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