特許第5860216号(P5860216)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5860216
(24)【登録日】2015年12月25日
(45)【発行日】2016年2月16日
(54)【発明の名称】ウエーハの面取り部除去方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20160202BHJP
   B24B 9/00 20060101ALI20160202BHJP
【FI】
   H01L21/304 601Z
   H01L21/304 622J
   B24B9/00 601H
   B24B9/00 601Z
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2011-45174(P2011-45174)
(22)【出願日】2011年3月2日
(65)【公開番号】特開2012-182366(P2012-182366A)
(43)【公開日】2012年9月20日
【審査請求日】2014年2月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075177
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 尚純
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(72)【発明者】
【氏名】関家 一馬
【審査官】 内田 正和
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−114354(JP,A)
【文献】 特開2010−129854(JP,A)
【文献】 特開2003−059865(JP,A)
【文献】 特開2010−245254(JP,A)
【文献】 特開2010−245253(JP,A)
【文献】 特開2007−158239(JP,A)
【文献】 特開2000−173961(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
B24B 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に複数のストリートが格子状に形成され該複数のストリートによって区画された複数の領域にデバイスが形成されたデバイス領域と該デバイス領域を囲繞し外周に面取り部を備えた外周余剰領域とを有するウエーハの面取り部除去方法であって、
ウエーハの表面に保護部材を貼着する保護部材貼着工程と、
回転可能なチャックテーブルの保持面にウエーハの表面に貼着された保護部材側を保持するウエーハ保持工程と、
該チャックテーブルを回転させながら該チャックテーブルの回転中心と直交する直線上に配設された回転スピンドルに装着された切削ブレードを回転しつつ外周余剰領域における面取り部の境界部に位置付けて該保護部材に達する切削深さで面取り部を切断する面取り部切断工程と、
該チャックテーブルを回転させながら該チャックテーブルの回転中心と直交する直線上に配設された回転スピンドルに装着された研削砥石を回転しつつ面取り部が切断された外周余剰領域の切断面に接触させないで切断された面取り部に位置付けて該保護部材から切断された面取り部を研削して除去する面取り部研削工程と、を含む、
ことを特徴とするウエーハの面取り部除去方法。
【請求項2】
該面取り部切断工程を実施して面取り部の切断開始位置が該研削砥石に達した時点で該面取り部研削工程を開始する、請求項1記載のウエーハの面取り部除去方法。
【請求項3】
表面に複数のストリートが格子状に形成され該複数のストリートによって区画された複数の領域にデバイスが形成されたデバイス領域と該デバイス領域を囲繞し外周に面取り部を備えた外周余剰領域とを有するウエーハの面取り部除去方法であって、
ウエーハの表面に保護部材を貼着する保護部材貼着工程と、
回転可能なチャックテーブルの保持面にウエーハの表面に貼着された保護部材側を保持するウエーハ保持工程と、
該チャックテーブルを回転させながら該チャックテーブルの回転中心と直交する直線上に配設された回転スピンドルに装着された切削ブレードを回転しつつ外周余剰領域における面取り部の境界部に位置付けて該保護部材に達する切削深さで面取り部を切断する面取り部切断工程と、
該チャックテーブルを回転させながら該チャックテーブルの回転中心と直交する直線上に配設された回転スピンドルに装着された研削砥石を回転しつつ外周余剰領域における面取り部の境界部に位置付けて面取り部を研削して除去する面取り部研削工程と、を含み、
該面取り部切断工程と該面取り部研削工程は、同時に実施する、
ことを特徴とするウエーハの面取り部除去方法。
【請求項4】
該面取り部研削工程の実施により面取り部の研削開始位置が該切削ブレードに達した時点で該チャックテーブルの回転速度を速める、請求項3記載のウエーハの面取り部除去方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面に複数のストリートが格子状に形成され該複数のストリートによって区画された複数の領域にデバイスが形成されたデバイス領域と該デバイス領域を囲繞し外周に面取り部を備えた外周余剰領域とを有するウエーハの面取り部除去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス製造工程においては、略円板形状である半導体ウエーハの表面に格子状に配列されたストリートと呼ばれる複数のストリートが格子状に形成され、この区画された領域にIC、LSI等のデバイスを形成する。そして、半導体ウエーハをストリートに沿って切断することによりデバイスが形成された領域を分割して個々の半導体デバイスを製造している。
【0003】
半導体デバイスの小型化および軽量化を図るために、半導体ウエーハをストリートに沿って切断して個々のデバイスに分割するのに先立って、半導体ウエーハの裏面を研削して所定の厚さに形成している。
【0004】
しかるに、半導体ウエーハは、半導体デバイスを形成するプロセス中に割れや発塵を防止するためにデバイスが形成されたデバイス領域を囲繞する外周余剰領域の外周部には円弧状の面取りが形成されている。このように外周部に円弧状の面取りが形成された厚みが例えば600μmの半導体ウエーハの裏面を研削して100μmの厚みに仕上げると、半導体ウエーハの外周に所謂ナイフエッジが形成され、危険であるとともに外周から欠けが発生して半導体ウエーハが損傷するという問題がある。
【0005】
上述した問題を解消するために、半導体ウエーハの裏面を研削して所定の厚みに形成する前に、半導体ウエーハの表面側から面取り部を切削ブレードによって切削して除去し、その後半導体ウエーハの裏面を研削して所定の厚みに形成する技術が下記特許文献1に開示されている。
【0006】
また、上述した問題を解消するために、半導体ウエーハの裏面を研削して所定の厚みに形成する前に、半導体ウエーハを保護テープまたはサブストレートで支持し、半導体ウエーハの外周部に形成された面取り部を研削砥石によって研削して除去する方法が下記特許文献2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−158239号公報
【特許文献2】特開2000−173961号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献1に記載されたようにウエーハの表面側から面取り部を切削ブレードによって切削して除去すると、ウエーハの表面に切削屑が付着してデバイス面が汚染されるという問題がある。
なお、ウエーハの表面に保護テープを貼着して該保護テープ側を切削装置のチャックテーブルに保持した状態でウエーハの裏面側から面取り部を切削ブレードによって完全切断すると環状の面取り部が保護テープに貼着した状態で残存し、その状態でウエーハの裏面を研削すると環状の切断溝に研削屑が入り込みウエーハの外周を汚染するという問題がある。
また、特許文献2に記載されたようにウエーハの外周部に形成された面取り部を研削砥石によって研削して除去する方法は、研削によって面取り部が除去されたウエーハの外周に欠けを発生させないために、粒径が小さい(例えば2μm程度)砥粒からなる仕上げ用の研削砥石を用いる必要がある。このため、ウエーハの外周部に形成された面取り部を研削砥石によって研削して除去する方法は、上述した切削ブレードによる切断に比して相当の時間を要し、生産性が極めて悪いという問題がある。
【0009】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、その主たる技術的課題は、ウエーハのデバイス面や外周を汚染することなく、外周部に形成された面取り部を効率よく除去することができるウエーハの面取り部除去方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記主たる技術課題を解決するため、本発明によれば、表面に複数のストリートが格子状に形成され該複数のストリートによって区画された複数の領域にデバイスが形成されたデバイス領域と該デバイス領域を囲繞し外周に面取り部を備えた外周余剰領域とを有するウエーハの面取り部除去方法であって、
ウエーハの表面に保護部材を貼着する保護部材貼着工程と、
回転可能なチャックテーブルの保持面にウエーハの表面に貼着された保護部材側を保持するウエーハ保持工程と、
該チャックテーブルを回転させながら該チャックテーブルの回転中心と直交する直線上に配設された回転スピンドルに装着された切削ブレードを回転しつつ外周余剰領域における面取り部の境界部に位置付けて該保護部材に達する切削深さで面取り部を切断する面取り部切断工程と、
該チャックテーブルを回転させながら該チャックテーブルの回転中心と直交する直線上に配設された回転スピンドルに装着された研削砥石を回転しつつ面取り部が切断された外周余剰領域の切断面に接触させないで切断された面取り部に位置付けて該保護部材から切断された面取り部を研削して除去する面取り部研削工程と、を含む、
ことを特徴とするウエーハの面取り部除去方法が提供される。
【0011】
上記面取り部切断工程を実施して面取り部の切断開始位置が研削砥石に達した時点で面取り部研削工程を開始する。
【0012】
また、本発明によれば、表面に複数のストリートが格子状に形成され該複数のストリートによって区画された複数の領域にデバイスが形成されたデバイス領域と該デバイス領域を囲繞し外周に面取り部を備えた外周余剰領域とを有するウエーハの面取り部除去方法であって、
ウエーハの表面に保護部材を貼着する保護部材貼着工程と、
回転可能なチャックテーブルの保持面にウエーハの表面に貼着された保護部材側を保持するウエーハ保持工程と、
該チャックテーブルを回転させながら該チャックテーブルの回転中心と直交する直線上に配設された回転スピンドルに装着された切削ブレードを回転しつつ外周余剰領域における面取り部の境界部に位置付けて該保護部材に達する切削深さで面取り部を切断する面取り部切断工程と、
該チャックテーブルを回転させながら該チャックテーブルの回転中心と直交する直線上に配設された回転スピンドルに装着された研削砥石を回転しつつ外周余剰領域における面取り部の境界部に位置付けて面取り部を研削して除去する面取り部研削工程と、を含み、
該面取り部切断工程と該面取り部研削工程は、同時に実施する、
ことを特徴とするウエーハの面取り部除去方法が提供される。
【0013】
上記面取り部研削工程の実施により面取り部の研削開始位置が該切削ブレードに達した時点でチャックテーブルの回転速度を速めることが望ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によるウエーハの面取り部除去方法においては、ウエーハの表面に保護部材を貼着し、該保護部材側をチャックテーブル上に保持した状態で、面取り部切断工程および切断された面取り部を研削して除去する面取り部研削工程を実施するので、ウエーハの表面が汚染されることがない。また、ウエーハの外周が切削ブレードの切削によって仕上げられ、研削砥石は切削ブレードの切削によって仕上げられた切断面に接触しない状態で切断された面取り部を研削するので、ウエーハの外周に欠けを生じさせることなく効率よく面取り部を除去することができる。更に、本発明によるウエーハの面取り部除去方法においては、切削ブレードによって切断された面取り部が面取り部研削工程を実施することにより完全に除去されているので、その後に実施するウエーハの裏面を研削して所定の厚みに形成する裏面研削工程において、ウエーハの外周面が研削屑によって汚染されることはない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明によるウエーハの面取り部除去方法によって加工されるウエーハとしての半導体ウエーハの斜視図。
図2図1に示す半導体ウエーハを拡大して示す断面図。
図3】本発明によるウエーハの面取り部除去方法における保護部材貼着工程の説明図。
図4】本発明によるウエーハの面取り部除去方法における面取り部切断工程および面取り部研削工程を実施するための加工装置の要部斜視図。
図5】本発明によるウエーハの面取り部除去方法におけるウエーハ保持工程の説明図。
図6】本発明によるウエーハの面取り部除去方法における面取り部切断工程の説明図。
図7】本発明によるウエーハの面取り部除去方法における面取り部切断工程および面取り部研削工程の説明図。
図8】本発明によるウエーハの面取り部除去方法における面取り部切断工程および面取り部研削工程の他の実施形態を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明によるウエーハの面取り部除去方法の好適な実施形態について、添付図面を参照して更に詳細に説明する。
【0017】
図1には、本発明によるウエーハの面取り部除去方法によって加工されるウエーハとしての半導体ウエーハ2の斜視図が示されている。図1に示す半導体ウエーハ2は、例えば厚さが600μmの円板形状をしたシリコンウエーハからなり、その表面2aに複数のストリート21が格子状に配列されているとともに、該複数のストリート21によって区画された複数の領域にIC、LSI等のデバイス22が形成されている。このように構成された半導体ウエーハ2は、デバイス22が形成されているデバイス領域220と、該デバイス領域220を囲繞する外周余剰領域230を備えており、該外周余剰領域230の外周部には、図2に示すように表面2aから裏面2bに渡り面対称に形成された円弧状の面取り部2cが形成されている。
【0018】
以下、図1および図2に示す半導体ウエーハ2の外周部に形成された円弧状の面取り部2cを除去するウエーハの面取り部除去方法について説明する。
本発明によるウエーハの面取り部除去方法においては、先ず半導体ウエーハ2の表面2aに形成されたデバイス22を保護するために、図3の(a)および(b)に示すように半導体ウエーハ2の表面2aに保護テープ等の保護部材Tを貼着する(保護部材貼着工程)。
【0019】
上述した保護部材貼着工程を実施したならば、半導体ウエーハ2の面取り部2cを切断する面取り部切断工程と、切断された面取り部を研削して除去する面取り部研削工程を実施する。この面取り部切断工程および面取り部研削工程は、図4に示す加工装置によって実施する。図4に示す加工装置3は、被加工物を保持するチャックテーブル31と、該チャックテーブル31に保持された被加工物を切削する切削手段32と、該チャックテーブル31に保持された被加工物を研削する研削手段33を具備している。チャックテーブル31は、チャックテーブル本体311と、該チャックテーブル本体311の上面に配設され多孔質セラミック材によって形成された吸着チャック312とからなっている。このように構成されたチャックテーブル31は、吸着チャック312の上面である保持面に被加工物を吸引保持するように構成されており、図示しない回転機構によって回転せしめられるように構成されている。
【0020】
上記切削手段32は、実質上水平に配置されたスピンドルハウジング321と、該スピンドルハウジング321にチャックテーブル31の上面である保持面と平行に回転自在に支持されチャックテーブル31の回転中心と直交する直線上に配設された回転スピンドル322と、該回転スピンドル322の先端部に装着された切削ブレード323を含んでおり、回転スピンドル322がスピンドルハウジング321内に配設された図示しないサーボモータによって回転せしめられるようになっている。なお、切削ブレード323は、図示の実施形態においては粒径が1〜2μmのダイヤモンド砥粒をニッケル等の金属メッキで結合した厚みが20〜30μmの電鋳ブレードからなっている。
【0021】
上記研削手段33は、実質上水平に配置されたスピンドルハウジング331と、該スピンドルハウジング331にチャックテーブル31の上面である保持面と平行に回転自在に支持されチャックテーブル31の回転中心と直交する直線上に上記切削手段32の回転スピンドル322と対向して配設された回転スピンドル332と、該回転スピンドル332の先端部に装着された円盤状の研削砥石333を含んでおり、回転スピンドル332がスピンドルハウジング331内に配設された図示しないサーボモータによって回転せしめられるようになっている。なお、研削砥石333は、図示の実施形態においては粒径が30〜40μmのダイヤモンド砥粒をレジンボンド材に混錬し環状に成型して焼成したレジノイド砥石や、砥粒を金属ボンド材に混錬し環状に成型して焼成したメタル砥石からなり、厚みが1mm程度に設定されている。
【0022】
上述した加工装置3を用いて半導体ウエーハ2の面取り部2cを切断する面取り部切断工程および切断された面取り部を研削して除去する面取り部研削工程を実施するには、図5に示すようにチャックテーブル31を構成する吸着チャック312の上面である保持面上に上記保護部材貼着工程によって表面に保護部材Tが貼着された半導体ウエーハ2の保護部材T側を載置する。そして、図示しない吸引手段を作動することによりチャックテーブル31上に保護部材Tを介して導体ウエーハ2を吸引保持する(ウエーハ保持工程)。従って、チャックテーブル31上に吸引保持された半導体ウエーハ2は、裏面2bが上側となる。
【0023】
上述したウエーハ保持工程を実施したならば、図6の(a)に示すように切削手段32の回転スピンドル322に装着された切削ブレード323を矢印323aで示す方向(正面から見て時計回り)に例えば20000rpmの回転速度で回転しつつチャックテーブル31上に吸引保持された半導体ウエーハ2の外周余剰領域230における円弧状の面取り部2cの境界部に位置付ける。そして、切削ブレード323を図6の(a)において下方に切削送りして切削ブレード323の外周縁が保護部材Tに達する所定の切削送り位置に位置付ける。このようにして切削ブレード323を所定の切削送り位置に位置付けたならば、チャックテーブル31を矢印31aで示す方向(正面から見て時計回り)に例えば2度/秒の回転速度で回転せしめる。この結果、図6の(b)に示すように半導体ウエーハ2の外周余剰領域230における円弧状の面取り部2cの境界部は切削ブレード323により切削された切削溝240によって切断される(面取り部切断工程)。なお、面取り部切断工程においては、切削ブレード323による切削加工部に純水でよい加工水が供給される。
【0024】
上述した面取り部切断工程を開始し、図6の(b)において矢印240aで示す面取り部の切断開始位置が研削手段33の回転スピンドル332に装着された円盤状の研削砥石333による研削領域に達したら、図7の(a)に示すように研削砥石333を矢印333aで示す方向(正面から見て反時計回り)に例えば20000rpmの回転速度で回転しつつ研削砥石333を図7の(a)において下方に研削送りして研削砥石333の外周縁が保護部材Tに達する所定の研削送り位置に位置付ける。このとき研削砥石333は、チャックテーブル31の中心側の側面が外周余剰領域230の切断面に接触しない状態で位置付けられる。この結果、図7の(b)に示すように上述したように切削ブレード323によって切断された面取り部2cが研削砥石333の外周面によって研削され、保護部材Tから除去される(面取り部研削工程)。この面取り部研削工程を切削ブレード323によって切断された面取り部2cが研削砥石333を通過するまで実施することにより、図7の(c)に示すように半導体ウエーハ2の外周余剰領域230における円弧状の面取り部2cを完全に除去することができ、保護部材Tの外周部が露出される。なお、面取り部研削工程においては、研削砥石333による研削加工部に純水でよい加工水が供給される。
【0025】
以上のように図示の実施形態においては、半導体ウエーハ2の表面に保護部材Tを貼着し、該保護部材T側を加工装置3のチャックテーブル31上に保持した状態で、上記面取り部切断工程および切断された面取り部を研削して除去する面取り部研削工程を実施するので、半導体ウエーハ2の表面が汚染されることがない。また、図示の実施形態においては、半導体ウエーハ2の外周が粒径が小さく微細な砥粒によって形成された切削ブレード323の切削によって仕上げられ、粒径が大きく粗い砥粒によって形成された研削砥石333は切削ブレード323の切削によって仕上げられた切断面に接触しない状態で切断された面取り部2cを研削するので、半導体ウエーハ2の外周に欠けを生じさせることなく効率よく面取り部を除去することができる。
【0026】
以上のようにして半導体ウエーハ2の外周余剰領域230における円弧状の面取り部2cが除去されたならば、半導体ウエーハ2は表面に保護テープTが貼着された状態で裏面を研削する裏面研削装置に搬送される。そして、裏面研削装置に搬送された半導体ウエーハ2は、裏面が研削されて所定の厚みに形成される。この裏面研削工程を実施する際には、上述したように切削ブレード323によって切断され分離された面取り部2cが上記面取り部研削工程を実施することにより完全に除去されているので、研削屑によって半導体ウエーハ2の外周面が汚染されることはない。
【0027】
次に、本発明によるウエーハの面取り部除去方法の他の実施形態について、図8を参照して説明する。
図8に示す実施形態においても、上述したウエーハの面取り部除去方法における図3に示す保護部材貼着工程および図5に示すウエーハ保持工程を実施する。図3に示す保護部材貼着工程および図5に示すウエーハ保持工程を実施したならば、図8の(a)に示すように切削手段32の回転スピンドル322に装着された切削ブレード323を矢印323aで示す方向(正面から見て時計回り)に例えば20000rpmの回転速度で回転しつつチャックテーブル31上に吸引保持された半導体ウエーハ2の外周余剰領域230における円弧状の面取り部2cの境界部に位置付ける。そして、切削ブレード323を図8の(a)において下方に切削送りして切削ブレード323の外周縁が保護部材Tに達する所定の切削送り位置に位置付ける。また、図8の(a)に示すように研削手段33の回転スピンドル332に装着された円盤状の研削砥石333を矢印333aで示す方向(正面から見て反時計回り)に例えば20000rpmの回転速度で回転しつつチャックテーブル31上に吸引保持された半導体ウエーハ2の外周余剰領域230における円弧状の面取り部2cの境界部に位置付ける。そして、研削砥石333を図8の(a)において下方に研削送りして研削砥石333の外周縁が保護部材Tに達する所定の研削送り位置に位置付ける。このとき、研削砥石333は、チャックテーブル31の中心側の側面が上記切削ブレード323による切断溝内に対応する位置となるように位置付ける。
【0028】
このようにして切削ブレード323を所定の切削送り位置に位置付けるとともに研削砥石333を所定の研削送り位置に位置付けたならば、チャックテーブル31を矢印31aで示す方向(正面から見て時計回り)に例えば2度/秒の回転速度で回転せしめる。この結果、図8の(b)に示すように半導体ウエーハ2の外周余剰領域230における円弧状の面取り部2cの境界部は切削ブレード323により切削された切削溝240によって切断される(面取り部切断工程)とともに、研削砥石333によって半導体ウエーハ2の外周余剰領域230における円弧状の面取り部2cが研削され除去される(面取り部研削工程)。なお、面取り部切断工程および面取り部研削工程においては、切削ブレード323による切削加工部および研削砥石333による研削加工部に純水でよい加工水が供給される。
【0029】
上述したように切削ブレード323による面取り部切断工程と、研削砥石333による面取り部研削工程を同時に実施すると、半導体ウエーハ2の外周余剰領域230における円弧状の面取り部2cの一方の半分の領域は切削ブレード323による面取り部切断工程が先に実施され、他の半分の領域は研削砥石333による面取り部研削工程が先に実施される。従って、半導体ウエーハ2の外周余剰領域230における円弧状の面取り部2cの一方の半分の領域は、切削ブレード323により切削された切削溝240によって切断された面取り部2cが研削砥石333の外周面によって研削され、保護部材Tから除去される。このとき、研削砥石333はチャックテーブル31の中心側の側面が切削ブレード323による切断溝内に対応する位置となるように位置付けられているので、上述した実施形態と同様に切削ブレード323による切断と接触することがないため、微細な砥粒によって形成された切削ブレード323による切断面が粗い砥粒によって形成された研削砥石333によって研削されることはない。従って、半導体ウエーハ2の外周余剰領域230の切断面に欠けが生ずることがない。
【0030】
一方、半導体ウエーハ2の外周余剰領域230における円弧状の面取り部2cの他方の半分の領域は、研削砥石333によって円弧状の面取り部2cが研削され除去された半導体ウエーハ2の外周余剰領域230の外周面が切削ブレード323によって研磨面のように修正される。即ち、粗い砥粒によって形成された研削砥石333によって研削された半導体ウエーハ2の外周余剰領域230の外周面には欠けが発生するが、この外周部は切削ブレード323が僅かに作用するように位置付けられているので、微細な砥粒によって形成された切削ブレード323の作用によって研磨面のように修正される。以上のように、切削ブレード323による面取り部切断工程と研削砥石333による面取り部研削工程を同時に実施することにより、半導体ウエーハ2を保持したチャックテーブル31を1回転することにより、図8の(c)に示すように半導体ウエーハ2の外周余剰領域230における円弧状の面取り部2cを除去することができるとともに、外周余剰領域230の外周面が微細な砥粒によって形成された切削ブレード323によって研磨面のように形成された状態となる。
【0031】
なお、上記図8に示す実施形態においては、面取り部研削工程の実施により図8の(b)において矢印250aで示す研削開始位置が切削ブレード323に達した時点でチャックテーブル31の回転速度を例えば3度/秒の回転速度に速める。即ち、研削砥石333によって研削された半導体ウエーハ2の外周余剰領域230の外周面を修正する切削ブレード323による切削作業は、切削ブレード323を外周余剰領域230の外周面に僅かに作用させるだけなので、半導体ウエーハ2を完全に切断する面取り部切断工程のように切削時間をかけなくても微細な砥粒によって形成された切削ブレード323の作用により研磨面のように修正することができる。従って、研削開始位置250aが切削ブレード323に達した時点でチャックテーブル31の回転速度を例えば3度/秒の回転速度に速めることにより、加工時間を短縮することができる。一方、切削ブレード323によって切断された面取り部2cは研削砥石333によって研削され保護部材Tから除去されるが、切削ブレード323によって切断された面取り部2cは半導体ウエーハ2から完全に分離されているので、チャックテーブル31の回転速度が速くなって研削精度が粗くなっても、半導体ウエーハ2の外周余剰領域230の外周面の加工精度には何らの影響がない。
【符号の説明】
【0032】
2:半導体ウエーハ
22:デバイス
220:デバイス領域
230:外周余剰領域
2c:円弧状の面取り部
3:加工装置
31:チャックテーブル
32:切削手段
323:切削ブレード
33:研削手段
333:研削砥石
T:保護部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8