特許第5860235号(P5860235)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5860235高分子化合物及び該高分子化合物を含有する組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5860235
(24)【登録日】2015年12月25日
(45)【発行日】2016年2月16日
(54)【発明の名称】高分子化合物及び該高分子化合物を含有する組成物
(51)【国際特許分類】
   C08G 61/12 20060101AFI20160202BHJP
   C08L 65/00 20060101ALI20160202BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20160202BHJP
   C09K 11/06 20060101ALI20160202BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20160202BHJP
【FI】
   C08G61/12
   C08L65/00
   C08J5/18CEZ
   C09K11/06 660
   C09K11/06 690
   H05B33/14 B
【請求項の数】17
【全頁数】111
(21)【出願番号】特願2011-156590(P2011-156590)
(22)【出願日】2011年7月15日
(65)【公開番号】特開2012-36388(P2012-36388A)
(43)【公開日】2012年2月23日
【審査請求日】2014年6月9日
(31)【優先権主張番号】特願2010-161681(P2010-161681)
(32)【優先日】2010年7月16日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】浅田 浩平
(72)【発明者】
【氏名】後藤 修
(72)【発明者】
【氏名】石井 佑典
【審査官】 杉江 渉
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/131255(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/064627(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/041559(WO,A1)
【文献】 国際公開第2009/157424(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 65/00
C08K 3/00
C08K 5/00
C08G 61/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される繰り返し単位及び下記式(2)で表される繰り返し単位を含有する高分子化合物と、
発光性有機金属錯体化合物とを含有する組成物。
【化1】
【化2】
(式中、
1、R2、R3、R4及びR5は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アシル基、アシルオキシ基、アミド基、酸イミド基、イミン残基、置換シリル基、置換シリルオキシ基、置換シリルチオ基、1価の芳香族複素環基、ヘテロアリールオキシ基、ヘテロアリールチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、置換カルボキシル基、又はシアノ基を表す。R1、R2、R3、R4及びR5のうち隣接する基同士が結合して環を形成していてもよい。但し、R3が炭素原子数12以上のアルキル基であるか、又は、R2及びR4の少なくとも一方がアルキル基、アリール基若しくはアルキル基で置換されたアリール基である。
Ar1及びAr2は、それぞれ独立に、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アシル基、アシルオキシ基、アミド基、酸イミド基、イミン残基、置換シリル基、置換シリルオキシ基、置換シリルチオ基、1価の芳香族複素環基、ヘテロアリールオキシ基、ヘテロアリールチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、置換カルボキシル基、及びシアノ基からなる群から選ばれる置換基を有していてもよい2価の芳香族基を表す。
Ar3は、アリール基又は1価の芳香族複素環基を表す。
Ar4は、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アシル基、アシルオキシ基、アミド基、酸イミド基、イミン残基、置換アミノ基、置換シリル基、置換シリルオキシ基、置換シリルチオ基、置換シリルアミノ基、1価の芳香族複素環基、ヘテロアリールオキシ基、ヘテロアリールチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、置換カルボキシル基、又はシアノ基を表す。
6は、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アシル基、アシルオキシ基、アミド基、酸イミド基、イミン残基、置換アミノ基、置換シリル基、置換シリルオキシ基、置換シリルチオ基、置換シリルアミノ基、1価の芳香族複素環基、ヘテロアリールオキシ基、ヘテロアリールチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、置換カルボキシル基、又はシアノ基を表す。R6が複数個存在する場合、それらは同一であっても異なっていてもよい。
aは0又は1を表す。2個存在するaは同一であっても異なっていてもよい。)
【請求項2】
前記R2及びR4が、アルキル基で置換されたアリール基である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記Ar4が、水素原子、アルキル基、アリール基又は1価の芳香族複素環基である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記Ar1及びAr2が、それぞれ独立に、下記式(3)又は(4)で表される2価の芳香族基である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
【化3】
【化4】
(式中、R’は水素原子、又はアルキル基を表す。)
【請求項5】
組成物に含有される高分子化合物を構成する全繰り返し単位中の、前記式(1)で表される繰り返し単位と前記式(2)で表される繰り返し単位の合計の割合が、30モル%以上である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
組成物に含有される高分子化合物が、下記式(5)で表される繰り返し単位をさらに含有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物。
【化5】
(式中、Ar5はアリーレン基又は2価の芳香族複素環基を表す。)
【請求項7】
前記式(5)で表される繰り返し単位が、下記式(6)で表される繰り返し単位である、請求項6に記載の組成物。
【化6】
(式中、Ar6及びAr7は、それぞれ独立に、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アシル基、アシルオキシ基、アミド基、酸イミド基、イミン残基、置換アミノ基、置換シリル基、置換シリルオキシ基、置換シリルチオ基、置換シリルアミノ基、ヘテロアリールオキシ基、ヘテロアリールチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、置換カルボキシル基、又はシアノ基を表す。R7は、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アシル基、アシルオキシ基、アミド基、酸イミド基、イミン残基、置換アミノ基、置換シリル基、置換シリルオキシ基、置換シリルチオ基、置換シリルアミノ基、1価の芳香族複素環基、ヘテロアリールオキシ基、ヘテロアリールチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、置換カルボキシル基、又はシアノ基を表す。aは0又は1を表す。2個存在するaは同一であっても異なっていてもよい。R7が複数個存在する場合、それらは同一であっても異なっていてもよい。)
【請求項8】
前記式(5)で表される繰り返し単位が、下記式(7)で表される繰り返し単位及び/又は下記式(8)で表される繰り返し単位である、請求項6に記載の組成物。
【化7】
【化8】
(式中、R8、R9、R10及びR11は、それぞれ独立に、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アシル基、アシルオキシ基、アミド基、酸イミド基、イミン残基、置換アミノ基、置換シリル基、置換シリルオキシ基、置換シリルチオ基、置換シリルアミノ基、1価の芳香族複素環基、ヘテロアリールオキシ基、ヘテロアリールチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、置換カルボキシル基、又はシアノ基を表す。bは0又は1を表す。)
【請求項9】
組成物に含有される高分子化合物を構成する全繰り返し単位中の、前記式(1)で表される繰り返し単位、前記式(2)で表される繰り返し単位及び前記式(5)で表される繰り返し単位の合計の割合が、80モル%以上である、請求項6〜8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
組成物に含有される高分子化合物が、下記式(9)で表される繰り返し単位をさらに含有する、請求項1〜9のいずれか一項に記載の組成物。
【化9】
(式中、Ar8、Ar9、Ar10及びAr14は、それぞれ独立に、アリーレン基又は2価の芳香族複素環基を表す。Ar11、Ar12及びAr13は、それぞれ独立に、アリール基又は1価の芳香族複素環基を表す。x及びyは、それぞれ独立に、0又は1である。但し、x+yの値は0又は1である。)
【請求項11】
正孔輸送材料、電子輸送材料及び発光材料(但し、発光性有機金属錯体化合物を除く)からなる群から選ばれる少なくとも一種の材料を更に含有する、請求項1〜10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の組成物と溶媒又は分散媒とを含有する液状組成物。
【請求項13】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の組成物を含有する薄膜。
【請求項14】
陽極及び陰極からなる電極と、該電極間に設けられた請求項1〜11のいずれか一項に記載の組成物を含有する有機層とを有する素子。
【請求項15】
請求項14に記載の素子を備える面状光源。
【請求項16】
請求項14に記載の素子を備える表示装置。
【請求項17】
下記式(1)で表される繰り返し単位及び下記式(2)で表される繰り返し単位を含有する高分子化合物。
【化10】
【化11】
(式中、
1、R2、R3、R4及びR5は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アシル基、アシルオキシ基、アミド基、酸イミド基、イミン残基、置換シリル基、置換シリルオキシ基、置換シリルチオ基、1価の芳香族複素環基、ヘテロアリールオキシ基、ヘテロアリールチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、置換カルボキシル基、又はシアノ基を表す。R1、R2、R3、R4及びR5のうち隣接する基同士が結合して環を形成していてもよい。但し、R3が炭素原子数12以上のアルキル基であるか、又は、R2及びR4の少なくとも一方がアルキル基、アリール基若しくはアルキル基で置換されたアリール基である。
Ar1及びAr2は、それぞれ独立に、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アシル基、アシルオキシ基、アミド基、酸イミド基、イミン残基、置換シリル基、置換シリルオキシ基、置換シリルチオ基、1価の芳香族複素環基、ヘテロアリールオキシ基、ヘテロアリールチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、置換カルボキシル基、及びシアノ基からなる群から選ばれる置換基を有していてもよい2価の芳香族基を表す。
Ar3は、アリール基又は1価の芳香族複素環基を表す。
Ar4は、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アシル基、アシルオキシ基、アミド基、酸イミド基、イミン残基、置換アミノ基、置換シリル基、置換シリルオキシ基、置換シリルチオ基、置換シリルアミノ基、1価の芳香族複素環基、ヘテロアリールオキシ基、ヘテロアリールチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、置換カルボキシル基、又はシアノ基を表す。
6は、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アシル基、アシルオキシ基、アミド基、酸イミド基、イミン残基、置換アミノ基、置換シリル基、置換シリルオキシ基、置換シリルチオ基、置換シリルアミノ基、1価の芳香族複素環基、ヘテロアリールオキシ基、ヘテロアリールチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、置換カルボキシル基、又はシアノ基を表す。R6が複数個存在する場合、それらは同一であっても異なっていてもよい。
aは0又は1を表す。2個存在するaは同一であっても異なっていてもよい。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子化合物並びに該高分子化合物を含有する組成物及びこれらを含む素子に関する。
【背景技術】
【0002】
発光性有機金属錯体をドーパントとしてホスト材料にドーピングしてなる組成物を発光層の材料として含む発光素子は、高効率な発光特性を示すことが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−31246号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1には、有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、「有機EL素子」という。)等の発光素子の作製に用いた場合に、長寿命な素子をもたらす材料について、具体的には記載されていなかった。
【0005】
そこで、本発明は、有機EL素子等の発光素子の作製に用いた場合、長寿命な素子をもたらす材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は第一に、下記式(1)で表される繰り返し単位及び下記式(2)で表される繰り返し単位を含有する高分子化合物を提供する。
【化1】
【化2】
(式中、
1、R2、R3、R4及びR5は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アシル基、アシルオキシ基、アミド基、酸イミド基、イミン残基、置換シリル基、置換シリルオキシ基、置換シリルチオ基、1価の芳香族複素環基、ヘテロアリールオキシ基、ヘテロアリールチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、置換カルボキシル基、又はシアノ基を表し、R1、R2、R3、R4及びR5のうち少なくとも一つは水素原子以外の基を表す。R1、R2、R3、R4及びR5のうち隣接する基同士が結合して環を形成していてもよい。
Ar1及びAr2は、それぞれ独立に、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アシル基、アシルオキシ基、アミド基、酸イミド基、イミン残基、置換シリル基、置換シリルオキシ基、置換シリルチオ基、1価の芳香族複素環基、ヘテロアリールオキシ基、ヘテロアリールチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、置換カルボキシル基、及びシアノ基からなる群から選ばれる置換基を有していてもよい2価の芳香族基を表す。
Ar3は、アリール基又は1価の芳香族複素環基を表す。
Ar4は、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アシル基、アシルオキシ基、アミド基、酸イミド基、イミン残基、置換アミノ基、置換シリル基、置換シリルオキシ基、置換シリルチオ基、置換シリルアミノ基、1価の芳香族複素環基、ヘテロアリールオキシ基、ヘテロアリールチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、置換カルボキシル基、又はシアノ基を表す。
6は、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アシル基、アシルオキシ基、アミド基、酸イミド基、イミン残基、置換アミノ基、置換シリル基、置換シリルオキシ基、置換シリルチオ基、置換シリルアミノ基、1価の芳香族複素環基、ヘテロアリールオキシ基、ヘテロアリールチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、置換カルボキシル基、又はシアノ基を表す。R6が複数個存在する場合には、それらは同一であっても異なっていてもよい。
aは0又は1を表す。2個存在するaは同一であっても異なっていてもよい。)
【0007】
本発明は第二に、前記式(1)で表される繰り返し単位及び前記式(2)で表される繰り返し単位に加えて、下記式(5)で表される繰り返し単位を含有する高分子化合物を提供する。
【化3】
(式中、Ar5はアリーレン基又は2価の芳香族複素環基を表す。)
【0008】
本発明は第三に、前記高分子化合物と、発光性有機金属錯体化合物とを含有する組成物を提供する。
【0009】
本発明は第四に、陽極及び陰極からなる電極と、該電極間に設けられた前記高分子化合物を含有する有機層とを有する素子を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の高分子化合物及び組成物(以下、「本発明の高分子化合物等」ともいう。)は、有機EL素子等の作製に用いた場合、長寿命な素子をもたらす。好ましい実施形態では、本発明の高分子化合物等は、さらに発光効率にも優れる(即ち、量子収率が高い)素子をもたらす。したがって、本発明の高分子化合物等は、有機EL素子等の発光素子の製造に特に有用である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
[用語の説明]
以下、本明細書において共通して用いられる用語を説明する。
【0012】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が例示される。
【0013】
「繰り返し単位」とは、高分子化合物中に2個以上存在する単位を意味する。
【0014】
「Cm〜Cn」(m及びnはm<nを満たす正の整数である)という用語は、この用語の直後に記載された有機基の炭素原子数がm〜nであることを表す。
【0015】
基の直前に付されている「非置換の」という用語は、該基の水素原子が置換基で置換されていないことを意味する。基の直前に付されている「置換(されている)」という用語は、該基の水素原子の一部又は全部が置換基で置換されていることを意味する。基の直前に付されている「置換基を有していてもよい」という用語は、該基の水素原子が置換基で置換されていない場合、及び、該基の水素原子の一部又は全部が置換基で置換されている場合の双方を意味する。
【0016】
「置換基を有していてもよい」という用語は、「置換されていてもよい」と言い換え得る。置換基としては、特に説明がない限り、ハロゲン原子、炭素原子数1〜30のヒドロカルビル基及び炭素原子数1〜30のヒドロカルビルオキシ基が例示され、これらの中でも、ハロゲン原子、炭素原子数1〜18のヒドロカルビル基及び炭素原子数1〜18のヒドロカルビルオキシ基が好ましく、ハロゲン原子、炭素原子数1〜12のヒドロカルビル基及び炭素原子数1〜12のヒドロカルビルオキシ基がより好ましく、ハロゲン原子及び炭素原子数1〜12のヒドロカルビル基がさらに好ましく、ハロゲン原子及び炭素原子数1〜6のヒドロカルビル基が特に好ましい。
【0017】
アルキル基は、非置換のアルキル基、並びに、ハロゲン原子、アミノ基及びメルカプト基等の置換基で置換されているアルキル基を意味する。アルキル基は、直鎖状アルキル基及び環状アルキル基(シクロアルキル基)の両方を含む。アルキル基は分岐を有していてもよい。アルキル基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常1〜20である。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、4−メチルドデシル基、ペンタデシル基、2,2,4,4,6,8,8−ヘプタメチルノニル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、2,6,10,14−テトラメチルペンタデシル基、ノナデシル基、3,7−ジメチルオクチル基、ドデシル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロヘキシル基、パーフルオロオクチル基、トリフルオロプロピル基、トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチル基、ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシル基、メルカプトプロピル基、メルカプトオクチル基及びメルカプトデシル基が挙げられる。C1〜C20アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソアミル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基及びドデシル基が挙げられる。
【0018】
アルコキシ基は、非置換のアルコキシ基、並びに、ハロゲン原子及びアルコキシ基等の置換基で置換されているアルコキシ基を意味する。アルコキシ基は、直鎖状アルコキシ基及び環状アルコキシ基(シクロアルコキシ基)の両方を含む。アルコキシ基は分岐を有していてもよい。アルコキシ基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常1〜20であり、好ましくは1〜15であり、より好ましくは1〜10である。アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、3,7−ジメチルオクチルオキシ基、ドデシルオキシ基、トリフルオロメトキシ基、ペンタフルオロエトキシ基、パーフルオロブトキシ基、パーフルオロヘキシル基、パーフルオロオクチル基、メトキシメチルオキシ基及び2−メトキシエチルオキシ基が挙げられる。C1〜C12アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、3,7−ジメチルオクチルオキシ基及びドデシルオキシ基が挙げられる。
【0019】
アルキルチオ基は、非置換のアルキルチオ基、並びに、ハロゲン原子等の置換基で置換されているアルキルチオ基を意味する。アルキルチオ基は、直鎖状アルキルチオ基及び環状アルキルチオ基(シクロアルキルチオ基)の両方を含む。アルキルチオ基は分岐を有していてもよい。アルキルチオ基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常1〜20であり、好ましくは1〜15であり、より好ましくは1〜10である。アルキルチオ基としては、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、イソプロピルチオ基、ブチルチオ基、イソブチルチオ基、tert−ブチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、シクロヘキシルチオ基、ヘプチルチオ基、オクチルチオ基、2−エチルヘキシルチオ基、ノニルチオ基、デシルチオ基、3,7−ジメチルオクチルチオ基、ドデシルチオ基及びトリフルオロメチルチオ基が挙げられる。C1〜C12アルキルチオ基としては、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、イソプロピルチオ基、ブチルチオ基、イソブチルチオ基、tert−ブチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、シクロヘキシルチオ基、ヘプチルチオ基、オクチルチオ基、2−エチルヘキシルチオ基、ノニルチオ基、デシルチオ基、3,7−ジメチルオクチルチオ基及びドデシルチオ基が挙げられる。
【0020】
アリール基は、芳香族炭化水素から芳香環を構成する炭素原子に結合した水素原子1個を除いた残りの原子団である。アリール基は、非置換のアリール基、並びに、ハロゲン原子、アルコキシ基及びアルキル基等の置換基で置換されているアリール基を意味する。アリール基には、縮合環をもつもの;独立したベンゼン環及び縮合環から選ばれる2個以上の環が単結合したもの;独立したベンゼン環及び縮合環から選ばれる2個以上の環が2価の有機基(例えば、ビニレン基等のアルケニレン基)を介して結合したもの、も含まれる。アリール基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常6〜60であり、好ましくは7〜48であり、より好ましくは7〜30である。アリール基としては、例えば、フェニル基、C1〜C12アルコキシフェニル基、C1〜C12アルキルフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−アントラセニル基、2−アントラセニル基、9−アントラセニル基及びペンタフルオロフェニル基が挙げられ、C1〜C12アルコキシフェニル基又はC1〜C12アルキルフェニル基が好ましい。
【0021】
1〜C12アルコキシフェニル基としては、例えば、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、プロピルオキシフェニル基、イソプロピルオキシフェニル基、ブトキシフェニル基、イソブトキシフェニル基、tert−ブトキシフェニル基、ペンチルオキシフェニル基、ヘキシルオキシフェニル基、シクロヘキシルオキシフェニル基、ヘプチルオキシフェニル基、オクチルオキシフェニル基、2−エチルヘキシルオキシフェニル基、ノニルオキシフェニル基、デシルオキシフェニル基、3,7−ジメチルオクチルオキシフェニル基及びドデシルオキシフェニル基が挙げられる。
【0022】
1〜C12アルキルフェニル基としては、例えば、メチルフェニル基、エチルフェニル基、ジメチルフェニル基、プロピルフェニル基、メシチル基、メチルエチルフェニル基、イソプロピルフェニル基、ブチルフェニル基、イソブチルフェニル基、tert−ブチルフェニル基、ペンチルフェニル基、イソアミルフェニル基、ヘキシルフェニル基、ヘプチルフェニル基、オクチルフェニル基、ノニルフェニル基、デシルフェニル基及びドデシルフェニル基が挙げられる。
【0023】
アリールオキシ基は、非置換のアリールオキシ基、並びに、ハロゲン原子、アルコキシ基及びアルキル基等の置換基で置換されているアリールオキシ基を意味する。アリールオキシ基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常6〜60であり、好ましくは7〜48であり、より好ましくは7〜30である。アリールオキシ基としては、例えば、フェノキシ基、C1〜C12アルコキシフェノキシ基、C1〜C12アルキルフェノキシ基、1−ナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基及びペンタフルオロフェニルオキシ基が挙げられ、C1〜C12アルコキシフェノキシ基又はC1〜C12アルキルフェノキシ基が好ましい。
【0024】
1〜C12アルコキシフェノキシ基としては、例えば、メトキシフェノキシ基、エトキシフェノキシ基、プロピルオキシフェノキシ基、イソプロピルオキシフェノキシ基、ブトキシフェノキシ基、イソブトキシフェノキシ基、tert−ブトキシフェノキシ基、ペンチルオキシフェノキシ基、ヘキシルオキシフェノキシ基、シクロヘキシルオキシフェノキシ基、ヘプチルオキシフェノキシ基、オクチルオキシフェノキシ基、2−エチルヘキシルオキシフェノキシ基、ノニルオキシフェノキシ基、デシルオキシフェノキシ基、3,7−ジメチルオクチルオキシフェノキシ基及びドデシルオキシフェノキシ基が挙げられる。
【0025】
1〜C12アルキルフェノキシ基としては、例えば、メチルフェノキシ基、エチルフェノキシ基、ジメチルフェノキシ基、プロピルフェノキシ基、1,3,5−トリメチルフェノキシ基、メチルエチルフェノキシ基、イソプロピルフェノキシ基、ブチルフェノキシ基、イソブチルフェノキシ基、tert−ブチルフェノキシ基、ペンチルフェノキシ基、イソアミルフェノキシ基、ヘキシルフェノキシ基、ヘプチルフェノキシ基、オクチルフェノキシ基、ノニルフェノキシ基、デシルフェノキシ基及びドデシルフェノキシ基が挙げられる。
【0026】
アリールチオ基は、非置換のアリールチオ基、並びに、ハロゲン原子、アルコキシ基及びアルキル基等の置換基で置換されているアリールチオ基を意味する。アリールチオ基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常6〜60であり、好ましくは7〜48であり、より好ましくは7〜30である。アリールチオ基としては、例えば、フェニルチオ基、C1〜C12アルコキシフェニルチオ基、C1〜C12アルキルフェニルチオ基、1−ナフチルチオ基、2−ナフチルチオ基及びペンタフルオロフェニルチオ基が挙げられる。
【0027】
アリールアルキル基は、非置換のアリールアルキル基、並びに、ハロゲン原子、アルコキシ基及びアルキル基等の置換基で置換されているアリールアルキル基を意味する。アリールアルキル基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常7〜60であり、好ましくは7〜48であり、より好ましくは7〜30である。アリールアルキル基としては、例えば、フェニル−C1〜C20アルキル基、C1〜C12アルコキシフェニル−C1〜C12アルキル基、C1〜C12アルキルフェニル−C1〜C20アルキル基、1−ナフチル−C1〜C20アルキル基及び2−ナフチル−C1〜C20アルキル基が挙げられる。
【0028】
アリールアルコキシ基は、非置換のアリールアルコキシ基、並びに、ハロゲン原子、アルコキシ基及びアルキル基等の置換基で置換されているアリールアルコキシ基を意味する。アリールアルコキシ基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常7〜60であり、好ましくは7〜48であり、より好ましくは7〜30である。アリールアルコキシ基としては、例えば、フェニル−C1〜C12アルコキシ基、C1〜C12アルコキシフェニル−C1〜C12アルコキシ基、C1〜C12アルキルフェニル−C1〜C12アルコキシ基、1−ナフチル−C1〜C12アルコキシ基及び2−ナフチル−C1〜C12アルコキシ基が挙げられる。
【0029】
アリールアルキルチオ基は、非置換のアリールアルキルチオ基、並びに、ハロゲン原子、アルコキシ基及びアルキル基等の置換基で置換されているアリールアルキルチオ基を意味する。アリールアルキルチオ基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常7〜60であり、好ましくは7〜48であり、より好ましくは7〜30である。アリールアルキルチオ基としては、例えば、フェニル−C1〜C12アルキルチオ基、C1〜C12アルコキシフェニル−C1〜C12アルキルチオ基、C1〜C12アルキルフェニル−C1〜C12アルキルチオ基、1−ナフチル−C1〜C12アルキルチオ基及び2−ナフチル−C1〜C12アルキルチオ基が挙げられる。
【0030】
アリールアルケニル基は、非置換のアリールアルケニル基、並びに、ハロゲン原子、アルコキシ基及びアルキル基等の置換基で置換されているアリールアルケニル基を意味する。アリールアルケニル基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常8〜60であり、好ましくは8〜48であり、より好ましくは8〜30である。アリールアルケニル基としては、例えば、フェニル−C2〜C12アルケニル基、C1〜C12アルコキシフェニル−C2〜C12アルケニル基、C1〜C12アルキルフェニル−C2〜C12アルケニル基、1−ナフチル−C2〜C12アルケニル基及び2−ナフチル−C2〜C12アルケニル基が挙げられ、C1〜C12アルコキシフェニル−C2〜C12アルケニル基又はC1〜C12アルキルフェニル−C2〜C12アルケニル基が好ましい。
【0031】
2〜C12アルケニル基としては、例えば、ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、1−ペンテニル基、2−ペンテニル基、1−ヘキセニル基、2−ヘキセニル基及び1−オクテニル基が挙げられる。
【0032】
アリールアルキニル基は、非置換のアリールアルキニル基、並びに、ハロゲン原子、アルコキシ基及びアルキル基等の置換基で置換されているアリールアルキニル基を意味する。アリールアルキニル基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常8〜60であり、好ましくは8〜48であり、より好ましくは8〜30である。アリールアルキニル基としては、フェニル−C2〜C12アルキニル基、C1〜C12アルコキシフェニル−C2〜C12アルキニル基、C1〜C12アルキルフェニル−C2〜C12アルキニル基、1−ナフチル−C2〜C12アルキニル基及び2−ナフチル−C2〜C12アルキニル基が挙げられ、C1〜C12アルコキシフェニル−C2〜C12アルキニル基又はC1〜C12アルキルフェニル−C2〜C12アルキニル基が好ましい。
【0033】
2〜C12アルキニル基としては、例えば、エチニル基、1−プロピニル基、2−プロピニル基、1−ブチニル基、2−ブチニル基、1−ペンチニル基、2−ペンチニル基、1−ヘキシニル基、2−ヘキシニル基及び1−オクチニル基が挙げられる。
【0034】
ヘテロアリールオキシ基は、非置換のヘテロアリールオキシ基及び置換されているヘテロアリールオキシ基を意味する。ヘテロアリールオキシ基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常、6〜60であり、好ましくは7〜48である。ヘテロアリールオキシ基としては、例えば、C1〜C12アルコキシピリジルオキシ基、C1〜C12アルキルピリジルオキシ基、チエニルオキシ基、C1〜C12アルコキシチエニルオキシ基、ピリジルオキシ基及びイソキノリルオキシ基が挙げられ、C1〜C12アルコキシピリジルオキシ基又はC1〜C12アルキルピリジルオキシ基が好ましい。
【0035】
1〜C12アルコキシピリジルオキシ基としては、例えば、メトキシピリジルオキシ基、エトキシピリジルオキシ基、プロピルオキシピリジルオキシ基、イソプロピルオキシピリジルオキシ基、ブトキシピリジルオキシ基、イソブトキシピリジルオキシ基、sec−ブトキシピリジルオキシ基、tert−ブトキシピリジルオキシ基、ペンチルオキシピリジルオキシ基、ヘキシルオキシピリジルオキシ基、シクロヘキシルオキシピリジルオキシ基、ヘプチルオキシピリジルオキシ基、オクチルオキシピリジルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシピリジルオキシ基、ノニルオキシピリジルオキシ基、デシルオキシピリジルオキシ基、3,7−ジメチルオクチルオキシピリジルオキシ基及びドデシルオキシピリジルオキシ基が挙げられる。
【0036】
1〜C12アルキルピリジルオキシ基としては、例えば、メチルピリジルオキシ基、エチルピリジルオキシ基、ジメチルピリジルオキシ基、プロピルピリジルオキシ基、1,3,5−トリメチルピリジルオキシ基、メチルエチルピリジルオキシ基、イソプロピルピリジルオキシ基、ブチルピリジルオキシ基、イソブチルピリジルオキシ基、sec−ブチルピリジルオキシ基、tert−ブチルピリジルオキシ基、ペンチルピリジルオキシ基、イソアミルピリジルオキシ基、ヘキシルピリジルオキシ基、ヘプチルピリジルオキシ基、オクチルピリジルオキシ基、ノニルピリジルオキシ基、デシルピリジルオキシ基及びドデシルピリジルオキシ基が挙げられる。
【0037】
ヘテロアリールチオ基は、非置換のヘテロアリールチオ基及び置換されているヘテロアリールチオ基を意味する。ヘテロアリールチオ基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常、6〜60であり、好ましくは7〜48である。ヘテロアリールチオ基としては、例えば、ピリジルチオ基、C1〜C12アルコキシピリジルチオ基、C1〜C12アルキルピリジルチオ基及びイソキノリルチオ基が挙げられ、C1〜C12アルコキシピリジルチオ基又はC1〜C12アルキルピリジルチオ基が好ましい。
【0038】
1価の芳香族複素環基とは、芳香族性を有する複素環式化合物から、芳香環に直接結合した水素原子1個を除いた残りの原子団を意味し、縮合環を有するものを含む。1価の芳香族複素環基は、非置換の1価の芳香族複素環基、及び、アルキル基等の置換基で置換されている1価の芳香族複素環基を意味する。複素環式化合物とは、環式構造をもつ有機化合物のうち、環を構成する元素として、炭素原子だけでなく、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、リン原子、ホウ素原子及びケイ素原子等のヘテロ原子を含むものをいう。芳香族性を有する複素環式化合物としては、例えば、オキサジアゾール、チアジアゾール、チアゾール、オキサゾール、チオフェン、ピロール、ホスホ−イソキノリン、カルバゾール及びジベンゾホスホール等の、ヘテロ原子を含む複素環式化合物であって複素環自体が芳香性を示すもの;フェノキサジン、フェノチアジン、ジベンゾボロール、ジベンゾシロール及びジベンゾピラン等の、ヘテロ原子を含む複素環式化合物であって、該化合物中に含まれるヘテロ原子を含む複素環自体は芳香性を示さないが、複素環に芳香環が縮環されている構造を有するものが挙げられる。
【0039】
1価の芳香族複素環基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常4〜60であり、好ましくは4〜30である。1価の芳香族複素環基としては、例えば、チエニル基、C1〜C12アルキルチエニル基、ピロリル基、フリル基、ピリジル基、C1〜C12アルキルピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジル基、ピラジニル基、トリアジニル基、キノリル基及びイソキノリル基が挙げられ、チエニル基、C1〜C12アルキルチエニル基、ピリジル基又はC1〜C12アルキルピリジル基が好ましい。
【0040】
アミノ基は、非置換のアミノ基、並びに、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基及び1価の芳香族複素環基から選ばれる1個又は2個の置換基で置換されているアミノ基(以下、「置換アミノ基」という。)を意味する。該置換基は更に置換基(以下、「二次置換基」という場合がある。)を有していてもよい。置換アミノ基の炭素原子数は、二次置換基の炭素原子数を含めないで、通常1〜60であり、好ましくは2〜48であり、より好ましくは2〜40である。置換アミノ基としては、例えば、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基、プロピルアミノ基、ジプロピルアミノ基、イソプロピルアミノ基、ジ−イソプロピルアミノ基、ブチルアミノ基、イソブチルアミノ基、sec−ブチルアミノ基、tert−ブチルアミノ基、ペンチルアミノ基、ヘキシルアミノ基、ヘプチルアミノ基、オクチルアミノ基、2−エチルヘキシルアミノ基、ノニルアミノ基、デシルアミノ基、3,7−ジメチルオクチルアミノ基、ドデシルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、ジシクロペンチルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基、ジシクロヘキシルアミノ基、ジトリフルオロメチルアミノ基、フェニルアミノ基、ジフェニルアミノ基、C1〜C12アルコキシフェニルアミノ基、ジ(C1〜C12アルコキシフェニル)アミノ基、C1〜C12アルキルフェニルアミノ基、ジ(C1〜C12アルキルフェニル)アミノ基、1−ナフチルアミノ基、2−ナフチルアミノ基、ペンタフルオロフェニルアミノ基、ピリジルアミノ基、ピリダジニルアミノ基、ピリミジルアミノ基、ピラジニルアミノ基、トリアジニルアミノ基、フェニル−C1〜C12アルキルアミノ基、C1〜C12アルコキシフェニル−C1〜C12アルキルアミノ基、ジ(C1〜C12アルコキシフェニル−C1〜C12アルキル)アミノ基、C1〜C12アルキルフェニル−C1〜C12アルキルアミノ基、ジ(C1〜C12アルキルフェニル−C1〜C12アルキル)アミノ基、1−ナフチル−C1〜C12アルキルアミノ基及び2−ナフチル−C1〜C12アルキルアミノ基が挙げられる。
【0041】
シリル基は、非置換のシリル基、並びに、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基及び1価の芳香族複素環基から選ばれる1個、2個又は3個の置換基で置換されているシリル基(以下、「置換シリル基」という。)を意味する。置換基は二次置換基を有していてもよい。置換シリル基の炭素原子数は、二次置換基の炭素原子数を含めないで、通常1〜60であり、好ましくは3〜48であり、より好ましくは3〜40である。置換シリル基としては、例えば、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリプロピルシリル基、トリ−イソプロピルシリル基、ジメチル−イソプロピルシリル基、ジエチル−イソプロピルシリル基、tert−ブチルシリルジメチルシリル基、ペンチルジメチルシリル基、ヘキシルジメチルシリル基、ヘプチルジメチルシリル基、オクチルジメチルシリル基、2−エチルヘキシル−ジメチルシリル基、ノニルジメチルシリル基、デシルジメチルシリル基、3,7−ジメチルオクチル−ジメチルシリル基、ドデシルジメチルシリル基、フェニル−C1〜C12アルキルシリル基、C1〜C12アルコキシフェニル−C1〜C12アルキルシリル基、C1〜C12アルキルフェニル−C1〜C12アルキルシリル基、1−ナフチル−C1〜C12アルキルシリル基、2−ナフチル−C1〜C12アルキルシリル基、フェニル−C1〜C12アルキルジメチルシリル基、トリフェニルシリル基、トリ−p−キシリルシリル基、トリベンジルシリル基、ジフェニルメチルシリル基、tert−ブチルジフェニルシリル基及びジメチルフェニルシリル基が挙げられる。
【0042】
置換シリルオキシ基は、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アリールアルコキシ基及び1価の複素環オキシ基からなる群から選ばれる1個、2個又は3個の置換基で置換されているシリルオキシ基を意味する。置換基は二次置換基を有していてもよい。置換シリルオキシ基の炭素原子数は、二次置換基の炭素原子数を含めないで、通常、1〜60であり、好ましくは3〜48である。置換シリルオキシ基としては、例えば、トリメチルシリルオキシ基、トリエチルシリルオキシ基、トリプロピルシリルオキシ基、トリ−イソプロピルシリルオキシ基、ジメチル−イソプロピルシリルオキシ基、ジエチル−イソプロピルシリルオキシ基、tert−ブチルジメチルシリルオキシ基、ペンチルジメチルシリルオキシ基、ヘキシルジメチルシリルオキシ基、ヘプチルジメチルシリルオキシ基、オクチルジメチルシリルオキシ基、2−エチルヘキシル−ジメチルシリルオキシ基、ノニルジメチルシリルオキシ基、デシルジメチルシリルオキシ基、3,7−ジメチルオクチル−ジメチルシリルオキシ基、ドデシルジメチルシリルオキシ基、フェニル−C1〜C12アルキルシリルオキシ基、C1〜C12アルコキシフェニル−C1〜C12アルキルシリルオキシ基、C1〜C12アルキルフェニル−C1〜C12アルキルシリルオキシ基、1−ナフチル−C1〜C12アルキルシリルオキシ基、2−ナフチル−C1〜C12アルキルシリルオキシ基、フェニル−C1〜C12アルキルジメチルシリルオキシ基、トリフェニルシリルオキシ基、トリ−p−キシリルシリルオキシ基、トリベンジルシリルオキシ基、ジフェニルメチルシリルオキシ基、tert−ブチルジフェニルシリルオキシ基及びジメチルフェニルシリルオキシ基が挙げられる。
【0043】
置換シリルチオ基は、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アリールアルキルチオ基及び1価の複素環チオ基からなる群から選ばれる1個、2個又は3個の置換基で置換されているシリルチオ基を意味する。置換基は二次置換基を有していてもよい。置換シリルチオ基の炭素原子数は、二次置換基の炭素原子数を含めないで、通常、1〜60であり、好ましくは3〜48である。置換シリルチオ基としては、例えば、トリメチルシリルチオ基、トリエチルシリルチオ基、トリプロピルシリルチオ基、トリ−イソプロピルシリルチオ基、ジメチル−イソプロピルシリルチオ基、ジエチル−イソプロピルシリルチオ基、tert−ブチルジメチルシリルチオ基、ペンチルジメチルシリルチオ基、ヘキシルジメチルシリルチオ基、ヘプチルジメチルシリルチオ基、オクチルジメチルシリルチオ基、2−エチルヘキシル−ジメチルシリルチオ基、ノニルジメチルシリルチオ基、デシルジメチルシリルチオ基、3,7−ジメチルオクチル−ジメチルシリルチオ基、ドデシルジメチルシリルチオ基、フェニル−C1〜C12アルキルシリルチオ基、C1〜C12アルコキシフェニル−C1〜C12アルキルシリルチオ基、C1〜C12アルキルフェニル−C1〜C12アルキルシリルチオ基、1−ナフチル−C1〜C12アルキルシリルチオ基、2−ナフチル−C1〜C12アルキルシリルチオ基、フェニル−C1〜C12アルキルジメチルシリルチオ基、トリフェニルシリルチオ基、トリ−p−キシリルシリルチオ基、トリベンジルシリルチオ基、ジフェニルメチルシリルチオ基、tert−ブチルジフェニルシリルチオ基及びジメチルフェニルシリルチオ基が挙げられる。
【0044】
複素環チオ基は、メルカプト基の水素原子が1価の芳香族複素環基で置換されている基を意味する。複素環チオ基としては、例えば、ヘテロアリールチオ基(例えば、ピリジルチオ基、ピリダジニルチオ基、ピリミジルチオ基、ピラジニルチオ基及びトリアジニルチオ基)が挙げられる。
【0045】
置換シリルアミノ基は、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、アリールアルキルアミノ基及び1価の複素環アミノ基からなる群から選ばれる1個、2個又は3個の置換基で置換されているシリルアミノ基を意味する。置換基は二次置換基を有していてもよい。置換シリルアミノ基の炭素原子数は、二次置換基の炭素原子数を含めないで、通常、1〜60であり、好ましくは3〜48である。置換シリルアミノ基としては、例えば、トリメチルシリルアミノ基、トリエチルシリルアミノ基、トリプロピルシリルアミノ基、トリ−イソプロピルシリルアミノ基、ジメチル−イソプロピルシリルアミノ基、ジエチル−イソプロピルシリルアミノ基、tert−ブチルジメチルシリルアミノ基、ペンチルジメチルシリルアミノ基、ヘキシルジメチルシリルアミノ基、ヘプチルジメチルシリルアミノ基、オクチルジメチルシリルアミノ基、2−エチルヘキシル−ジメチルシリルアミノ基、ノニルジメチルシリルアミノ基、デシルジメチルシリルアミノ基、3,7−ジメチルオクチル−ジメチルシリルアミノ基、ドデシルジメチルシリルアミノ基、フェニル−C1〜C12アルキルシリルオキシ基、C1〜C12アルコキシフェニル−C1〜C12アルキルシリルアミノ基、C1〜C12アルキルフェニル−C1〜C12アルキルシリルアミノ基、1−ナフチル−C1〜C12アルキルシリルアミノ基、2−ナフチル−C1〜C12アルキルシリルアミノ基、フェニル−C1〜C12アルキルジメチルシリルアミノ基、トリフェニルシリルアミノ基、トリ−p−キシリルシリルアミノ基、トリベンジルシリルアミノ基、ジフェニルメチルシリルアミノ基、tert−ブチルジフェニルシリルオアミノ基及びジメチルフェニルシリルアミノ基が挙げられる。
【0046】
アシル基は、非置換のアシル基、及び、ハロゲン原子等の置換基で置換されているアシル基を意味する。アシル基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常1〜20であり、好ましくは2〜18であり、より好ましくは2〜16である。アシル基としては、例えば、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、ピバロイル基、ベンゾイル基、トリフルオロアセチル基及びペンタフルオロベンゾイル基が挙げられる。
【0047】
アシルオキシ基は、非置換のアシルオキシ基、及び、ハロゲン原子等の置換基で置換されているアシルオキシ基を意味する。アシルオキシ基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常1〜20であり、好ましくは2〜18であり、より好ましくは2〜16である。アシルオキシ基としては、例えば、ホルミルオキシ基、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、ブチリルオキシ基、イソブチリルオキシ基、ピバロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、トリフルオロアセチルオキシ基及びペンタフルオロベンゾイルオキシ基が挙げられる。
【0048】
イミン残基は、式:H−N=C<及び式:−N=CH−の少なくとも一方で表される構造を有するイミン化合物から、該構造中の水素原子1個を除いた残基を意味する。該構造としては、例えば、アルジミン;ケチミン;アルジミン中の窒素原子に結合した水素原子が、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アリールアルケニル基及びアリールアルキニル基等の置換基で置換されている化合物が挙げられる。イミン残基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常2〜20であり、好ましくは2〜18であり、より好ましくは2〜16である。イミン残基としては、例えば、一般式:−CR'=N−R''又は一般式:−N=C(R'')2(式中、R'は水素原子、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アリールアルケニル基又はアリールアルキニル基を表し、R''は、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アリールアルケニル基又はアリールアルキニル基を表す。後者の一般式において、2個のR''は互いに同一であっても異なっていてもよい。2個のR''は相互に結合して2価の基(例えば、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基及びヘキサメチレン基等の、炭素原子数2〜18のアルキレン基)を形成し、残りの原子団と一体となって環を形成してもよい。)で表される基が挙げられる。
【0049】
イミン残基としては、例えば、以下の構造式で示される基が挙げられる。
【化4】
(式中、Meはメチル基を表す。)
【0050】
アミド基は、酸アミドから、その窒素原子に結合した水素原子を除いて得られる残基を意味する。本明細書において、酸アミドは、アンモニアの水素原子が1個又は2個のアシル基によって置換された1級又は2級アミド(但し、環式構造を有する2級アミド、即ち、酸イミドは除く。)を意味する。アミド基は、非置換のアミド基、及び、ハロゲン原子等の置換基で置換されているアミド基を意味する。アミド基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常2〜20であり、好ましくは2〜18であり、より好ましくは2〜16である。アミド基としては、例えば、ホルムアミド基、アセトアミド基、プロピオアミド基、ブチロアミド基、ベンズアミド基、トリフルオロアセトアミド基、ペンタフルオロベンズアミド基、ジホルムアミド基、ジアセトアミド基、ジプロピオアミド基、ジブチロアミド基、ジベンズアミド基、ジトリフルオロアセトアミド基及びジペンタフルオロベンズアミド基が挙げられる。
【0051】
酸イミド基は、酸イミドから、その窒素原子に結合した水素原子を除いて得られる残基を意味する。酸イミド基は、非置換の酸イミド基及び置換されている酸イミド基を意味する。酸イミド基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常4〜20であり、好ましくは4〜18であり、より好ましくは4〜16である。酸イミド基としては、例えば、以下に示す基が挙げられる。
【化5】
(式中、Meはメチル基を表す。)
【0052】
カルボキシル基は、非置換のカルボキシル基、並びに、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基及び1価の芳香族複素環基等の置換基で置換されているカルボキシル基(以下、「置換カルボキシル基」という。)を意味する。置換基は二次置換基を有していてもよい。置換カルボキシル基の炭素原子数は、二次置換基の炭素原子数を含めないで、通常1〜60であり、好ましくは2〜48であり、より好ましくは2〜45である。置換カルボキシル基としては、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基、sec−ブトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基、ペンチルオキシカルボニル基、ヘキシルオキシカルボニル基、シクロヘキシルオキシカルボニル基、ヘプチルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、2−エチルヘキシルオキシカルボニル基、ノニルオキシカルボニル基、デシロキシカルボニル基、3,7−ジメチルオクチルオキシカルボニル基、ドデシルオキシカルボニル基、トリフルオロメトキシカルボニル基、ペンタフルオロエトキシカルボニル基、パーフルオロブトキシカルボニル基、パーフルオロヘキシルオキシカルボニル基、パーフルオロオクチルオキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基、ナフトキシカルボニル基及びピリジルオキシカルボニル基が挙げられる。
【0053】
2価の芳香族基は、芳香族炭化水素及び芳香族性を有する複素環式化合物のいずれかから水素原子2個を除いてなる原子団を意味する。2価の芳香族基は、非置換の2価の芳香族基及び置換されている2価の芳香族基を含む。2価の芳香族基としてはアリーレン基及び2価の芳香族複素環基が例示される。
【0054】
アリーレン基は、芳香族炭化水素から水素原子2個を除いてなる原子団を意味する。アリーレン基は、独立したベンゼン環又は縮合環を持つものを含む。アリーレン基は、非置換のアリーレン基及び置換されているアリーレン基を意味する。アリーレン基の炭素原子数は、通常6〜60であり、好ましくは6〜48であり、より好ましくは6〜30であり、更に好ましくは6〜18である。該炭素原子数は置換基の炭素原子数は含まない。
【0055】
2価の芳香族複素環基は、芳香族性を有する複素環式化合物から、芳香環に直接結合した水素原子2個を除いた残りの原子団を意味し、縮合環を有するものを含む。ここで、芳香族性を有する複素環式化合物の例は、1価の芳香族複素環基について説明したものと同様である。2価の芳香族複素環基は、非置換の2価の芳香族複素環基、及び、アルキル基等の置換基で置換されている2価の芳香族複素環基を意味する。
【0056】
<高分子化合物>
本発明の高分子化合物は、該高分子化合物を発光素子の作製に用いる場合の成膜性並びに得られる発光素子の発光効率及び寿命が向上し得るので、そのポリスチレン換算の数平均分子量が、通常、2×103以上であり、2×103〜1×108であることが好ましく、1×104〜1×106であることが好ましい。なお、本明細書において、ポリスチレン換算の数平均分子量が2×103以上である化合物を高分子化合物といい、他方、ポリスチレン換算の数平均分子量が2×103未満である化合物を低分子化合物という。なお、ポリスチレン換算の数平均分子量が2×103以上である限り、デンドリマー及びオリゴマーも本発明の高分子化合物に含まれる。
【0057】
本発明の高分子化合物は、式(1)で表される繰り返し単位及び式(2)で表される繰り返し単位を含有する。まず、式(1)で表される繰り返し単位について説明する。
【化6】
【0058】
式(1)中、R1、R2、R3、R4及びR5は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アシル基、アシルオキシ基、アミド基、酸イミド基、イミン残基、置換シリル基、置換シリルオキシ基、置換シリルチオ基、1価の芳香族複素環基、ヘテロアリールオキシ基、ヘテロアリールチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、置換カルボキシル基、又はシアノ基を表し、R1、R2、R3、R4及びR5のうち少なくとも一つは水素原子以外の基を表す。R1、R2、R3、R4及びR5は互いに同一であっても異なっていてもよい。R1、R2、R3、R4及びR5のうち隣接する基同士が結合して環を形成していてもよい。
【0059】
式(1)中のR1、R2、R3、R4及びR5のうちの少なくとも一つは、水素原子以外の基を表す。R1、R2、R3、R4及びR5のうちの少なくとも一つは、アルキル基を含む基であることが好ましい。アルキル基を含む基とは、アルキル基自体、及びアルキル基をその一部に含む基(例えば、アルコキシ基;アルキルチオ基;及びアルキル基で置換されている、上記R1〜R5の候補として挙げられている基)を意味する。本発明の高分子化合物を用いて得られる発光素子の寿命の観点からは、アルキル基を含む基は、アルキル基であることが好ましい。また、本発明の高分子化合物を用いて得られる発光素子の耐熱性の観点からは、アルキル基を含む基は、アルキル基で置換されているアリール基であることが好ましい。
【0060】
アルキル基を含む基中の、アルキル基を構成する脂肪族炭素原子数は、本発明の高分子化合物を発光素子の作製に用いる場合の溶媒への溶解性と、得られる発光素子の寿命とを両立できるので、6以上であることが好ましく、12以上であることがより好ましい。また、本発明の高分子化合物を用いて得られる発光素子の寿命及び耐熱性が向上し得るので、前記脂肪族炭素原子数は100以下であることが好ましく、60以下であることがより好ましく、30以下であることがさらに好ましい。なお、脂肪族炭素原子数とは、対象の基のうち脂肪族の骨格部分に含まれる炭素原子の数を意味する。
【0061】
中でも、式(1)中のR1、R2、R3、R4及びR5のうちの少なくとも一つが、炭素原子数が6以上のアルキル基であることが好ましく、炭素原子数が12以上のアルキル基であることがより好ましい。
【0062】
さらに、R3が炭素原子数12以上のアルキル基であることがより好ましい。R1及びR5の少なくとも一方は、水素原子であることが好ましい。R2及びR4の少なくとも一方は、アルキル基、アリール基又はアルキル基で置換されたアリール基であることが好ましく、R2及びR4が、アルキル基で置換されたアリール基であることがより好ましい。
【0063】
式(1)中、Ar1及びAr2は、それぞれ独立に、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アシル基、アシルオキシ基、アミド基、酸イミド基、イミン残基、置換シリル基、置換シリルオキシ基、置換シリルチオ基、1価の芳香族複素環基、ヘテロアリールオキシ基、ヘテロアリールチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、置換カルボキシル基、及びシアノ基からなる群から選ばれる置換基を有していてもよい2価の芳香族基を表す。
【0064】
ここで、2価の芳香族基としてはアリーレン基又は2価の芳香族複素環基が例示される。
【0065】
Ar1及びAr2で表されるアリーレン基としては、例えば、1,4−フェニレン基、1,3−フェニレン基及び1,2−フェニレン基等のフェニレン基;2,7−ビフェニリレン基及び3,6−ビフェニリレン基等のビフェニリレン基;1,4−ナフタレン−ジイル基、1,5−ナフタレン−ジイル基及び2,6−ナフタレン−ジイル基等のナフタレン−ジイル基;1,4−アントラセン−ジイル基、1,5−アントラセンジイル基、2,6−アントラセン−ジイル基及び9,10−アントラセン−ジイル基等のアントラセン−ジイル基;2,7−フェナントレン−ジイル基等のフェナントレン−ジイル基;1,7−ナフタセン−ジイル基、2,8−ナフタセン−ジイル基及び5,12−ナフタセン−ジイル基等のナフタセンジイル基;2,7−フルオレン−ジイル基及び3,6−フルオレン−ジイル基等のフルオレン−ジイル基;1,6−ピレン−ジイル基、1,8−ピレン−ジイル基、2,7−ピレン−ジイル基及び4,9−ピレン−ジイル基等のピレンジイル基;3,9−ペリレン−ジイル基及び3,10−ペリレン−ジイル基等のペリレン−ジイル基;ビフェニル−ジイル基;ターフェニル−ジイル基;ベンゾフルオレン−ジイル基;及びジベンゾフルオレン−ジイル基が挙げられ、好ましくは、フェニレン基又はフルオレンジイル基である。
【0066】
Ar1及びAr2で表される2価の芳香族複素環基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで通常4〜60であり、好ましくは4〜30であり、より好ましくは6〜12である。前記2価の芳香族複素環基としては、例えば、2,5−ピリジン−ジイル基及び2,6−ピリジン−ジイル基等のピリジン−ジイル基;2,5−チオフェン−ジイル基等のチオフェン−ジイル基;2,5−フラン−ジイル基等のフラン−ジイル基;2,6−キノリン−ジイル基等のキノリン−ジイル基;1,4−イソキノリン−ジイル基及び1,5−イソキノリンジイル基等のイソキノリン−ジイル基;5,8−キノキサリン−ジイル基等のキノキサリン−ジイル基;4,7−ベンゾ[1,2,5]チアジアゾール−ジイル基等のベンゾ[1,2,5]チアジアゾール−ジイル基;4,7−ベンゾチアゾール−ジイル基等のベンゾチアゾール−ジイル基;2,7−カルバゾール−ジイル基及び3,6−カルバゾール−ジイル基等のカルバゾール−ジイル基;3,7−フェノキサジン−ジイル基等のフェノキサジン−ジイル基;3,7−フェノチアジン−ジイル基等のフェノチアジン−ジイル基;及び2,7−ジベンゾシロール−ジイル基等のジベンゾシロール−ジイル基が挙げられ、好ましくは、ピリジン−ジイル基、キノリン−ジイル基又はキノキサリン−ジイル基である。
【0067】
Ar1及びAr2の少なくとも一方は、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アシル基、アシルオキシ基、アミド基、酸イミド基、イミン残基、置換シリル基、置換シリルオキシ基、置換シリルチオ基、1価の芳香族複素環基、ヘテロアリールオキシ基、ヘテロアリールチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、カルボキシル基、及びシアノ基からなる群から選ばれる置換基を有していてもよい、アリーレン基又は2価の芳香族複素環基であることが好ましい。
【0068】
Ar1及びAr2で表されるアリーレン基としては、例えば、フェニレン基(例えば、下式1〜3)、ナフタレンジイル基(例えば、下式4〜13)、ビフェニル−ジイル基(例えば、下式20〜25)、ターフェニル−ジイル基(例えば、下式26〜28)、フェナントレン−ジイル基(例えば、下式29)、縮合環を有するビフェニリレン基(例えば、下式31及び32)、インデン−ジイル基(例えば、式34及び35)、フルオレン−ジイル基(例えば、下式36〜38)、ベンゾフルオレン−ジイル基(例えば、下式A−1〜A−3)及びジベンゾフルオレン−ジイル基(例えば、下式A−4)が挙げられる。
【0069】
【化7】
【0070】
【化8】
【0071】
【化9】
【0072】
【化10】
【0073】
【化11】
【0074】
【化12】
(式中、Rは、水素原子又は置換基を表す。複数個のRは、互いに同一であっても異なっていてもよい。)
【0075】
上記の式1〜29、31〜38及びA−1〜A−4中、Rで表される置換基としては、例えば、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、置換シリル基、ハロゲン原子、アシル基、アシルオキシ基、イミン残基、アミド基、酸イミド基、1価の芳香族複素環基、カルボキシル基、置換カルボキシル基、シアノ基、置換シリルオキシ基、置換シリルチオ基、ヘテロアリールオキシ基及びヘテロアリールチオ基が挙げられる。これらの置換基に含まれる水素原子は、フッ素原子で置換されていてもよい。本発明の高分子化合物の溶媒への溶解性、及び得られる発光素子の素子特性が向上し得るので、複数個のRのうち少なくとも1個が水素原子以外の基(即ち、上記の置換基)であることが好ましい。Rで表される置換基は、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基又は1価の芳香族複素環基であることが好ましく、アルキル基、アルコキシ基又はアリール基であることがより好ましい。
【0076】
Ar1及びAr2で表される2価の芳香族複素環基としては、例えば、ピリジン−ジイル基(例えば、下式45〜50)、ジアザフェニレン基(例えば、下式51〜54)、キノリンジイル基(例えば、下式55〜69)、キノキサリンジイル基(例えば、下式70〜74)、ビピリジルジイル基(例えば、下式79〜81)、フェナントロリンジイル基(例えば、下式82〜84)、カルバゾール構造を有する基(例えば、下式85〜87)等の、ヘテロ原子である窒素原子を含む2価の芳香族複素環基;酸素原子、けい素原子、窒素原子、硫黄原子及びセレン原子等のヘテロ原子を含む5員芳香族複素環基(例えば、下式88〜92);並びに酸素原子、けい素原子、窒素原子及びセレン原子等のヘテロ原子を含む5員縮合芳香族複素環基(例えば、下式93〜103)が挙げられる。
【0077】
【化13】
【0078】
【化14】
【0079】
【化15】
【0080】
【化16】
【0081】
【化17】
【0082】
【化18】
(式中、Rは、水素原子又は置換基を表す。複数個のRは、互いに同一であっても異なっていてもよい。)
【0083】
上式45〜74及び79〜103中、Rで表される置換基の例は、前記式1におけるRで表される置換基の例と同様である。なお、本発明の高分子化合物の溶媒への溶解性、及び得られる発光素子の素子特性が向上し得るので、複数個のRのうち少なくとも1個が水素原子以外の基(即ち、上記の置換基)であることが好ましい。
【0084】
Ar1及びAr2の少なくとも一方は、下記式(3)又は(4)で表される2価の芳香族基であることが好ましく、Ar1及びAr2が、それぞれ独立に、下記式(3)又は(4)で表される2価の芳香族基であることがより好ましい。下記式(3)又は(4)で表される2価の芳香族基の中でも、非置換の下記式(3)で表される2価の芳香族基がより好ましい。
【化19】
【化20】
式(3)及び(4)において、R’は水素原子又はアルキル基を示す。
【0085】
式(3)で表される2価の芳香族基の好ましい例としては、下式3−1〜3−15で表される2価の基が挙げられる。
【化21】
(式中、Meはメチル基を表す。)
【0086】
式(4)で表される2価の芳香族基の好ましい例としては、下式4−1〜4−14で表される2価の基が挙げられる。
【化22】
(式中、Meはメチル基を表し、t−Buはtert−ブチル基を表す。)
【0087】
式(1)で表される繰り返し単位は、本発明の高分子化合物中に、一種のみ含まれていても二種以上含まれていてもよい。
【0088】
式(1)で表される繰り返し単位の好ましい例としては、下式1−1〜1−52で表される繰り返し単位が挙げられる。
【0089】
【化23】
【0090】
【化24】
【0091】
【化25】
【0092】
【化26】
【0093】
【化27】
【0094】
【化28】
【0095】
【化29】
【0096】
【化30】
【0097】
【化31】
(式中、Ar1及びAr2は、前記と同じ意味を表す。)
【0098】
続いて、本発明の高分子化合物に含まれる式(2)で表される繰り返し単位について説明する。
【化32】
【0099】
式(2)中、Ar3は、アリール基又は1価の芳香族複素環基を表す。本発明の高分子化合物を用いて得られる発光素子の寿命が向上し得るので、Ar3はアリール基であることが好ましい。
【0100】
式(2)中、Ar4は、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アシル基、アシルオキシ基、アミド基、酸イミド基、イミン残基、置換アミノ基、置換シリル基、置換シリルオキシ基、置換シリルチオ基、置換シリルアミノ基、1価の芳香族複素環基、ヘテロアリールオキシ基、ヘテロアリールチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、置換カルボキシル基、又はシアノ基を表す。Ar4は、水素原子、アルキル基、アリール基又は1価の芳香族複素環基であることが好ましく、水素原子、アルキル基又はアリール基であることがより好ましい。
【0101】
式(2)中、R6は、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アシル基、アシルオキシ基、アミド基、酸イミド基、イミン残基、置換アミノ基、置換シリル基、置換シリルオキシ基、置換シリルチオ基、置換シリルアミノ基、1価の芳香族複素環基、ヘテロアリールオキシ基、ヘテロアリールチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、置換カルボキシル基、又はシアノ基を表す。R6が複数個存在する場合には、それらは同一であっても異なっていてもよい。
【0102】
式(2)中、aは0又は1を表す。2個存在するaは同一であっても異なっていてもよい。
【0103】
式(2)で表される繰り返し単位の中でも、下記式(20)で表される繰り返し単位が好ましい。
【化33】
(式(20)中、Ar3及びAr4の定義は、式(2)のAr3及びAr4の定義と同じである。)
【0104】
式(20)中、Ar4は、水素原子、アルキル基、アリール基又は1価の芳香族複素環基であることが好ましく、水素原子、アルキル基又はアリール基であることがより好ましい。
【0105】
式(20)中、Ar3又はAr4がアリール基である場合、本発明の高分子化合物の溶媒への溶解性が向上し得るので、該アリール基は、炭素原子数2以上の置換基を有することが好ましい。
【0106】
式(20)で表される繰り返し単位としては、下式1e〜8eで表される繰り返し単位が例示される。
【化34】
(式中、n−Buはn−ブチル基を表し、t−Buはtert−ブチル基を表す。)
【0107】
式(2)で表される繰り返し単位は、本発明の高分子化合物中に、一種のみ含まれていても二種以上含まれていてもよい。
【0108】
本発明の高分子化合物を構成する全繰り返し単位に対する、式(1)で表される繰り返し単位の割合は、電子輸送性の観点(即ち、電子輸送性を向上させる)からは大きい方が好ましく、該高分子化合物を発光素子の作製に用いた場合に得られる発光素子の寿命の観点からは小さい方が好ましい。よって前記割合は、10モル%以上30モル%以下であることが好ましく、10モル%以上20モル%以下であることがより好ましく、10モル%以上15モル%以下であることが特に好ましい。一方で、本発明の高分子化合物を構成する全繰り返し単位に対する、式(2)で表される繰り返し単位の割合は、熱安定性、及び、該高分子化合物を発光素子の作製に用いた場合に得られる発光素子の寿命が向上し得るので、20モル%以上であることが好ましい。なお該割合の上限は特に限定されないが、通常は75モル%以下である。本発明の高分子化合物を構成する全繰り返し単位に対する、式(1)で表される繰り返し単位及び式(2)で表される繰り返し単位の合計の割合は、本発明の高分子化合物を用いて得られる発光素子の電子輸送性及び寿命が向上し得るので、30モル%以上であることが好ましく、40モル%以上であることがより好ましく、50モル%以上であることが特に好ましい。
【0109】
本発明の高分子化合物は、下記式(5)で表される繰り返し単位をさらに含有していてもよい。
【化35】
【0110】
式(5)中、Ar5は、アリーレン基又は2価の芳香族複素環基を表す。Ar5におけるアリーレン基の例は、Ar1及びAr2において上述したアリーレン基と同様である。Ar5における2価の芳香族複素環基の例は、Ar1及びAr2において上述した2価の芳香族複素環基と同様である。
【0111】
式(5)で表される繰り返し単位としては、下記式(6)で表される繰り返し単位が例示される。
【化36】
【0112】
式(6)中、Ar6及びAr7は、それぞれ独立に、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アシル基、アシルオキシ基、アミド基、酸イミド基、イミン残基、置換アミノ基、置換シリル基、置換シリルオキシ基、置換シリルチオ基、置換シリルアミノ基、ヘテロアリールオキシ基、ヘテロアリールチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、置換カルボキシル基、又はシアノ基を表す。R7は、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アシル基、アシルオキシ基、アミド基、酸イミド基、イミン残基、置換アミノ基、置換シリル基、置換シリルオキシ基、置換シリルチオ基、置換シリルアミノ基、1価の芳香族複素環基、ヘテロアリールオキシ基、ヘテロアリールチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、置換カルボキシル基、又はシアノ基を表す。本発明の高分子化合物の溶媒への溶解性及び得られる発光素子の寿命が向上し得るので、Ar6及びAr7の少なくとも一方は、水素原子又はアルキル基であることが好ましい。
【0113】
式(6)中、aは0又は1を表す。2個存在するaは同一であっても異なっていてもよい。R7が複数個存在する場合には、それらは同一であっても異なっていてもよい。
【0114】
式(5)で表される繰り返し単位としては、さらに、下記式(7)で表される繰り返し単位、及び下記式(8)で表される繰り返し単位が例示される。
【0115】
【化37】
【0116】
式(7)中、R8及びR9は、それぞれ独立に、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アシル基、アシルオキシ基、アミド基、酸イミド基、イミン残基、置換アミノ基、置換シリル基、置換シリルオキシ基、置換シリルチオ基、置換シリルアミノ基、1価の芳香族複素環基、ヘテロアリールオキシ基、ヘテロアリールチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、置換カルボキシル基、又はシアノ基を表す。R8及びR9は互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0117】
式(7)中、R8及びR9は、本発明の高分子化合物の耐熱性と有機溶媒への溶解性のバランスの観点から、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基、1価の芳香族複素環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アリールアルキル基又は置換アミノ基であることが好ましく、アルキル基又はアリールアルキル基であることがより好ましく、アルキル基であることが更に好ましく、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、イソアミル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、ノニル基、デシル基、3,7−ジメチルオクチル基又はドデシル基であることが特に好ましい。R8とR9は互いに同一であっても異なっていてもよいが、同一である方が好ましい。
【0118】
【化38】
【0119】
式(8)中、R10及びR11は、それぞれ独立に、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アシル基、アシルオキシ基、アミド基、酸イミド基、イミン残基、置換アミノ基、置換シリル基、置換シリルオキシ基、置換シリルチオ基、置換シリルアミノ基、1価の芳香族複素環基、ヘテロアリールオキシ基、ヘテロアリールチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、置換カルボキシル基、又はシアノ基を表す。R10及びR11は互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0120】
式(8)中、R10及びR11の少なくとも一方は、本発明の高分子化合物の耐熱性と有機溶媒への溶解性のバランスの観点から、アルキル基、アリール基、1価の芳香族複素環基、アリールアルキル基又はアミノ基であることが好ましく、アルキル基、アリール基、1価の芳香族複素環基又はアミノ基であることがより好ましく、アルキル基、アリール基又は1価の芳香族複素環基であることが更に好ましく、アルキル基又はアリール基であることが特に好ましい。R10及びR11は互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0121】
式(8)中、bは、0又は1を表す。
【0122】
式(7)で表される繰り返し単位としては、下記式7−001〜7−019、7−101〜7−105で表される繰り返し単位が例示される。
【0123】
【化39】
【0124】
【化40】
【0125】
【化41】
【0126】
【化42】
(式中、Meはメチル基を表す。)
【0127】
式(8)で表される繰り返し単位としては、下記式8−001〜8−017、8−101〜8−113、8−201〜8−208で表される繰り返し単位が例示される。
【0128】
【化43】
【0129】
【化44】
【0130】
【化45】
【0131】
【化46】
【0132】
【化47】
【0133】
【化48】
(式中、Meはメチル基を表し、Etはエチル基を表し、i−Prはイソプロピル基を表し、n−Buはn−ブチル基を表し、t−Buはtert−ブチル基を表す。)
【0134】
式(5)で表される繰り返し単位は、本発明の高分子化合物中に、一種のみ含まれていても二種以上含まれていてもよい。本発明の高分子化合物には、式(5)で表される繰り返し単位として、式(6)で表される繰り返し単位、式(7)で表される繰り返し単位及び式(8)で表される繰り返し単位から選ばれる一種の繰り返し単位、又は二種以上の繰り返し単位の組み合わせが含まれていてもよい。また、式(5)で表される繰り返し単位として、式(6)で表される繰り返し単位、式(7)で表される繰り返し単位及び式(8)で表される繰り返し単位は、それぞれ、二種以上ずつ組み合わせて本発明の高分子化合物に含まれていてもよい。
【0135】
本発明の高分子化合物を構成する全繰り返し単位に対する、式(5)で表される繰り返し単位の割合は、通常、0モル%以上80モル%以下であり、5モル%以上70モル%以下であることが好ましく、10モル%以上60モル%以下であることがより好ましく、10モル%以上50モル%以下であることが特に好ましい。前記全繰り返し単位に対する、式(1)で表される繰り返し単位、式(2)で表される繰り返し単位、及び式(5)で表される繰り返し単位の合計の割合は、80モル%以上であることが好ましく、85モル%以上であることがより好ましく、90モル%以上であることが特に好ましい。
【0136】
本発明の高分子化合物はさらに、下記式(9)で表される繰り返し単位を含有することが好ましい。
【化49】
【0137】
式(9)中、Ar8、Ar9、Ar10及びAr14は、それぞれ独立に、アリーレン基又は2価の芳香族複素環基を表す。
【0138】
式(9)中、Ar11、Ar12及びAr13は、それぞれ独立に、アリール基又は1価の芳香族複素環基を表す。
【0139】
式(9)中、Ar8、Ar9、Ar10、Ar11、Ar12、Ar13及びAr14は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい。
【0140】
式(9)中、x及びyは、それぞれ独立に、0又は1である。但し、x+yの値は0又は1である。
【0141】
式(9)において、Ar8、Ar9、Ar10、Ar11、Ar12、Ar13又はAr14が置換基を有する場合、該置換基としては、例えば、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、アミノ基、置換アミノ基、ハロゲン原子、アシル基、アシルオキシ基、1価の芳香族複素環基、カルボキシル基、ニトロ基及びシアノ基が挙げられ、好ましくは、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、置換アミノ基、アシル基又はシアノ基であり、より好ましくは、アルキル基、アルコキシ基又はアリール基である。
【0142】
式(9)中、Ar8、Ar9、Ar10及びAr14で表されるアリーレン基としては、例えば、1,3−フェニレン基、1,4−フェニレン基、1,4−ナフタレンジイル基、2,6−ナフタレンジイル基、9,10−アントラセンジイル基、2,7−フェナントレンジイル基、5,12−ナフタセンジイル基及び2,7−フルオレンジイル基が挙げられる。
【0143】
式(9)中、Ar8、Ar9、Ar10及びAr14で表される2価の芳香族複素環基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常、4〜60であり、好ましくは4〜20であり、より好ましくは4〜9である。前記2価の芳香族複素環基としては、例えば、2,5−チオフェンジイル基、N−メチル−2,5−ピロールジイル基、2,5−フランジイル基、ベンゾ[2,1,3]チアジアゾール−4,7-ジイル、3,7−フェノキサジンジイル基及び3,6−カルバゾールジイル基が挙げられる。
【0144】
式(9)中、Ar8、Ar9、Ar10及びAr14としては、例えば、以下の式1b〜3bで表される2価の基が挙げられる。
【化50】
【0145】
式(9)中、Ar8及びAr10は、好ましくは、アリーレン基であり、より好ましくは、1,3−フェニレン基、1,4−フェニレン基、1,4−ナフタレンジイル基、2,6−ナフタレンジイル基又は前記式1bで表される基であり、更に好ましくは、1,4−フェニレン基又は1,4−ナフタレンジイル基であり、特に好ましくは、1,4−フェニレン基である。
【0146】
式(9)中、Ar9は、好ましくは、1,3−フェニレン基、1,4−フェニレン基、1,4−ナフタレンジイル基、2,7−フルオレンジイル基、ベンゾ[2,1,3]チアジアゾール−4,7−ジイル基、3,7−フェノキサジンジイル基、又は前記式1bで表される基であり、好ましくは、1,4−フェニレン基、1,4−ナフタレンジイル基、2,7−フルオレンジイル基、又は前記式1bで表される基であり、更に好ましくは1,4−フェニレン基、又は前記式1bで表される基である。
【0147】
式(9)中、Ar11、Ar12及びAr13は、それぞれ独立に、好ましくは、アルキル基、アリール基、又は1価の芳香族複素環基であり、より好ましくは、アルキル基、又はアリール基であり、更に好ましくは、アリール基である。
【0148】
式(9)で表される繰り返し単位の好ましい例としては、以下の式1c〜4cで表される繰り返し単位が挙げられる。なお、式1c〜4c中、R21は、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、アミノ基、置換アミノ基、ハロゲン原子、アシル基、アシルオキシ基、1価の芳香族複素環基、カルボキシル基、ニトロ基、又はシアノ基を表す。複数個存在するR21は、同一であっても異なっていてもよい。
【化51】
【0149】
式(9)で表される繰り返し単位の中で、下記式(10)で表される繰り返し単位が好ましい。
【化52】
【0150】
式(10)中、R31、R41及びR51は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数1〜20のアルコキシ基、炭素原子数7〜26のフェニルアルキル基、炭素原子数7〜26のフェニルアルコキシ基、フェニル基、フェノキシ基、炭素原子数7〜26のアルキルフェニル基、炭素原子数7〜26のアルコキシフェニル基、炭素原子数2〜21のアルキルカルボニル基、ホルミル基、炭素原子数2〜21のアルコキシカルボニル基、又はカルボキシル基を表す。あるいは、R31とR41は、上記の基を表す代わりに、一緒になって、環を形成していてもよい。R31が複数個存在する場合、それらは同一であっても異なっていてもよく、R41が複数個存在する場合、それらは同一であっても異なっていてもよく、R51が複数個存在する場合、それらは同一であっても異なっていてもよい。
【0151】
式(10)中、s及びtは、それぞれ独立に、0〜4の整数である。uは1又は2である。vは0〜5の整数である。
【0152】
式(10)中、R31とR41が、一緒になって環を形成する場合、その環としては、例えば、置換基を有していてもよいC5〜C14の複素環が挙げられる。該複素環としては、例えば、モルホリン環、チオモルホリン環、ピロール環、ピペリジン環及びピペラジン環が挙げられる。
【0153】
式(10)で表される繰り返し単位としては、例えば、下記式1d〜10dで表される繰り返し単位が挙げられる。
【化53】
【0154】
本発明の高分子化合物を構成する全繰り返し単位に対する、式(5)で表される繰り返し単位の割合は、通常、0モル%以上20モル%以下であり、0モル%以上10モル%以下であることが好ましい。前記全繰り返し単位に対する、式(1)で表される繰り返し単位、式(2)で表される繰り返し単位、式(5)で表される繰り返し単位、及び式(9)で表される繰り返し単位の合計の割合は、90モル%以上であることが好ましく、95モル%以上であることがより好ましく、99モル%以上であることが更に好ましく、100モル%(不可避的な不純物を除く)であることが特に好ましい。
【0155】
以下、本発明の高分子化合物の好ましい製造方法を説明する。本発明の高分子化合物は、例えば、縮合重合により製造することができる。
【0156】
上記縮合重合の方法としては、例えば、Suzuki反応により重合する方法(ケミカル レビュー(Chem. Rev.),第95巻,2457頁(1995年))、Grignard反応により重合する方法(共立出版、高分子機能材料シリーズ第2巻、高分子の合成と反応(2)、432〜433頁)、Yamamotoカップリング反応により重合する方法(プログレッシブ ポリマー サイエンス(Prog. Polym. Sci.),第17巻, 1153〜1205頁, 1992年)、0価ニッケル錯体により重合する方法、FeCl3等の酸化剤により重合する方法、電気化学的に酸化重合する方法、適切な脱離基を有する中間体高分子の分解による方法等が挙げられ、Suzukiカップリング反応により重合する方法、Grignard反応により重合する方法、及び0価ニッケル錯体により重合する方法が、構造制御の観点から好ましい。
【0157】
上記高分子化合物は、例えば、式:Y3−W1−Y4で示される化合物と、式:Y5−W2−Y6で示される化合物とを縮合重合させることにより製造することができる。式中、W1及びW2は、それぞれ独立に、前記式(1)、前記式(2)、前記式(5)又は前記式(9)で表される繰り返し単位を表す。Y3、Y4、Y5及びY6は、それぞれ独立に、重合反応性基を表す。本発明の高分子化合物が上記以外の繰り返し単位を有する場合には、上記以外の繰り返し単位となる2個の重合反応性基を有する化合物を共存させて縮合重合させればよい。
【0158】
上記重合反応性基としては、ハロゲン原子、アルキルスルホネート基、アリールスルホネート基、アリールアルキルスルホネート基、ホウ酸エステル残基、スルホニウムメチル基、ホスホニウムメチル基、ホスホネートメチル基、モノハロゲン化メチル基、ホウ酸残基(−B(OH)2)、ホルミル基、シアノ基、ビニル基等が挙げられる。
【0159】
上記重合反応性基であるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が例示される。
【0160】
上記重合反応性基であるアルキルスルホネート基としては、メタンスルホネート基、エタンスルホネート基、トリフルオロメタンスルホネート基等が挙げられる。
【0161】
上記重合反応性基であるアリールスルホネート基としては、ベンゼンスルホネート基、p−トルエンスルホネート基等が挙げられる。
【0162】
上記重合反応性基であるアリールアルキルスルホネート基としては、ベンジルスルホネート基等が挙げられる。
【0163】
上記重合反応性基であるホウ酸エステル残基としては、下記式で示される基が挙げられる。
【化54】
(式中、Meはメチル基、Etはエチル基を表す。)
【0164】
上記重合反応性基であるスルホニウムメチル基としては、下記式で示される基が挙げられる。
−CH2+Me20-、−CH2+Ph20-
(式中、X0はハロゲン原子を表し、Phはフェニル基を表す。)
【0165】
上記重合反応性基であるホスホニウムメチル基としては、下記式で示される基が挙げられる。
−CH2+Ph30-
(式中、X0はハロゲン原子を表す。)
【0166】
上記重合反応性基であるホスホネートメチル基としては、下記式で示される基が挙げられる。
−CH2PO(OR'')2
(式中、R''はアルキル基又はアリール基を表す。)
【0167】
上記重合反応性基であるモノハロゲン化メチル基としては、フッ化メチル基、塩化メチル基、臭化メチル基、ヨウ化メチル基が挙げられる。
【0168】
上記重合反応性基は、例えば、Yamamotoカップリング反応等の0価ニッケル錯体を用いる場合には、ハロゲン原子、アルキルスルホネート基、アリールスルホネート基、アリールアルキルスルホネート基等であり、Suzukiカップリング反応等のニッケル触媒又はパラジウム触媒を用いる場合には、アルキルスルホネート基、ハロゲン原子、ホウ酸エステル残基、ホウ酸残基等である。
【0169】
本発明の高分子化合物の製造方法としては、高分子化合物の合成が容易であるので、重合反応性基が、ハロゲン原子、アルキルスルホネート基、アリールスルホネート基、アリールアルキルスルホネート基、ホウ酸残基及びホウ酸エステル残基からなる群からなる1種以上の基から選ばれ、かつ、全原料化合物が有するハロゲン原子、アルキルスルホネート基、アリールスルホネート基及びアリールアルキルスルホネート基のモル数の合計(J)と、ホウ酸残基及びホウ酸エステル残基のモル数の合計(K)の比が実質的に1(通常、K/Jは0.7〜1.2)であり、ニッケル触媒又はパラジウム触媒を用いて縮合重合する製造方法が好ましい。
【0170】
上記原料となる化合物の組み合わせ(即ち、式:Y3−W1−Y4で示される化合物と、式:Y5−W2−Y6で示される化合物)としては、ジハロゲン化化合物、ビス(アルキルスルホネート)化合物、ビス(アリールスルホネート)化合物又はビス(アリールアルキルスルホネート)化合物と、ジホウ酸化合物又はジホウ酸エステル化合物との組み合わせ等が挙げられる。
【0171】
シーケンスを制御した高分子化合物を製造する場合には、上記化合物としては、ハロゲン−ホウ酸化合物、ハロゲン−ホウ酸エステル化合物、アルキルスルホネート−ホウ酸化合物、アルキルスルホネート−ホウ酸エステル化合物、アリールスルホネート−ホウ酸化合物、アリールスルホネート−ホウ酸エステル化合物、アリールアルキルスルホネート−ホウ酸化合物、アリールアルキルスルホネート−ホウ酸化合物、アリールアルキルスルホネート−ホウ酸エステル化合物等を用いるのがよい。
【0172】
ここで、式:Y3−W1−Y4で示される化合物のうち、前記式(1)で表される繰り返し単位をもたらす化合物としては、下記式(i)で表される化合物が好ましい。
【化55】
(式中、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表し、R、R、R及びRは、それぞれ独立に、アルキル基、又はアルキル基で置換されたアリール基を表す。Ar1及びAr2は、それぞれ、式(1)中のAr1及びAr2と同じ意味を示す。Xは、ハロゲン原子、ホウ酸エステル残基、ホウ酸残基、下記式(a−1)で表される基、下記式(a−2)で表される基、下記式(a−3)で表される基、又は下記式(a−4)で表される基を表す。2個存在するXは同一であっても異なっていてもよい。)
【化56】
【化57】
【化58】
【化59】
(式中、Rは、アルキル基又はアリール基を表し、置換基を有していてもよい。Xは、ハロゲン原子を表す。なお、式(a−4)中、3個存在するRは同一であっても異なっていてもよい。)
【0173】
上記縮合重合に用いられる有機溶媒は、副反応を抑制するために、十分に脱酸素処理、脱水処理を施しておくことが好ましい。但し、Suzukiカップリング反応等の水との2相系での反応の場合にはその限りではない。
【0174】
上記縮合重合に用いられる有機溶媒としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン等の飽和炭化水素、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン等の不飽和炭化水素、四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、クロロブタン、ブロモブタン、クロロペンタン、ブロモペンタン、クロロヘキサン、ブロモヘキサン、クロロシクロヘキサン、ブロモシクロヘキサン等のハロゲン化飽和炭化水素、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン等のハロゲン化不飽和炭化水素、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、tert−ブチルアルコール等のアルコール類、蟻酸、酢酸、プロピオン酸等のカルボン酸類、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチル−tert−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジオキサン等のエーテル類、トリメチルアミン、トリエチルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、ピリジン等のアミン類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N−メチルモルホリンオキシド等のアミド類等が挙げられ、エーテル類が好ましく、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテルが特に好ましい。これらの有機溶媒は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0175】
上記縮合重合において、反応を促進させるために、アルカリ及び/又は触媒を添加してもよい。上記アルカリ及び触媒は、反応に用いる溶媒に十分に溶解するものが好ましい。アルカリ及び/又は触媒を混合するには、反応液をアルゴン、窒素等の不活性雰囲気下で攪拌しながらゆっくりとアルカリ又は触媒の溶液を添加するか、逆に、アルカリ及び/又は触媒の溶液に反応液をゆっくりと添加すればよい。
【0176】
本発明の高分子化合物を発光素子等の作製に用いる場合、その純度が発光特性等の発光素子の性能に影響を与えるため、重合前の原料となる化合物を蒸留、昇華精製、再結晶等の方法で精製した後に重合することが好ましい。また、重合後、再沈澱による精製、クロマトグラフィーによる分別等の純化処理をすることが好ましい。
【0177】
<組成物>
本発明の組成物は、本発明の高分子化合物と、正孔輸送材料、電子輸送材料及び発光材料からなる群から選ばれる少なくとも一種の材料とを含有する。
【0178】
発光材料としては、低分子蛍光発光材料、発光性有機金属錯体化合物及び高分子蛍光発光材料が例示される。
【0179】
一般に、発光性有機金属錯体化合物をドーパントとして前記高分子化合物にドーピングしてなる組成物を、発光素子の発光材料に用いる場合、ホスト材料としては、最低三重項励起エネルギーが高いことが好ましい。従って、本発明の組成物において、発光材料として発光ピーク波長が600nm以上の赤色発光を示す発光性有機金属錯体化合物を用いる場合には、該組成物に含まれる本発明の高分子化合物は、前記式(5)で表される繰り返し単位として、前記式(6)で表される繰り返し単位をさらに含むことが好ましい。一方、本発明の組成物において、発光材料として発光ピーク波長が500nm以上600nm未満の緑色発光を示す発光性有機金属錯体化合物を用いる場合には、該組成物に含まれる本発明の高分子化合物は、前記式(5)で表される繰り返し単位として、前記式(7)で表される繰り返し単位及び/又は前記式(8)で表される繰り返し単位をさらに含むことが好ましい。
【0180】
発光性金属錯体化合物の発光ピーク波長は、例えば、該化合物を、キシレン、トルエン及びクロロホルム等の有機溶媒に溶解させ、希薄溶液を調製し、該希薄溶液のPLスペクトルを測定することで、評価し得る。
【0181】
前記発光性有機金属錯体化合物としては、例えば、三重項発光錯体等の公知の化合物、従来から低分子系の有機EL素子の発光材料として利用されてきた化合物、並びにNature,(1998),395,151、Appl.Phys.Lett.(1999),75(1),4、Proc.SPIE−Int.Soc.Opt.Eng.(2001),4105(Organic Light−Emitting Materials and DevicesIV),119、J.Am.Chem.Soc.,(2001),123,4304、Appl.Phys.Lett.,(1997),71(18),2596、Syn.Met.,(1998),94(1),103、Syn.Met.,(1999),99(2),1361、Adv.Mater.,(1999),11(10),852、Inorg.Chem.,(2003),42,8609、Inorg.Chem.,(2004),43,6513、Journal of the SID 11/1、161(2003)、WO2002/066552、WO2004/020504、及びWO2004/020448等の文献に記載されている化合物が挙げられる。高発光効率の発光素子を得ることができるので、前記発光性有機金属錯体化合物としては、金属錯体の最高被占分子軌道(HOMO)における、中心金属の最外殻d軌道の軌道係数の2乗の和の、全原子軌道係数の2乗の和に占める割合が1/3以上である化合物が好ましい。該化合物としては、中心金属が周期表の第6周期に属する遷移金属であるオルトメタル化錯体が例示される。
【0182】
前記発光性有機金属錯体化合物の中心金属としては、例えば、原子番号が50以上であり、該錯体に対しスピン−軌道相互作用を発揮でき、一重項状態と三重項状態間の項間交差を起こし得る金属が挙げられる。該中心金属は、好ましくは、金、白金、イリジウム、オスミウム、レニウム、タングステン、ユーロピウム、テルビウム、ツリウム、ディスプロシウム、サマリウム、プラセオジム、ガドリニウム又はイッテルビウムであり、より好ましくは、金、白金、イリジウム、オスミウム、レニウム又はタングステンであり、更に好ましくは、金、白金、イリジウム、オスミウム又はレニウムであり、特に好ましくは、金、白金、イリジウム又はレニウムであり、とりわけ好ましくは、白金又はイリジウムである。
【0183】
前記発光性有機金属錯体化合物の配位子としては、例えば、8−キノリノール及びその誘導体、ベンゾキノリノール及びその誘導体、並びに、2−フェニル−ピリジン及びその誘導体が挙げられる。
【0184】
前記発光性有機金属錯体化合物の配位子は、溶媒への溶解性が向上し得るので、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいアリール基、及び置換基を有していてもよいヘテロアリール基からなる群から選ばれる置換基(以下、「配位子置換基」という。)を有していることがより好ましい。配位子置換基に含まれる水素原子以外の原子の総数は3個以上であることが好ましく、5個以上であることがより好ましく、7個以上であることが更に好ましく、10個以上であることが特に好ましい。また、配位子置換基は、配位子毎に存在することが好ましく、その種類は、配位子毎に同一であっても異なっていてもよい。
【0185】
発光ピーク波長が500nm以上600nm未満の発光色を示す発光性有機金属錯体化合物として、好ましくは、下記式(11)で表される構造を有する有機金属錯体化合物が例示される。
【化60】
(式中、R1p、R2p、R3p、R4p、R5p、R6p、R7p及びR8pは、それぞれ独立に、水素原子、又はアリール基を表す。
下記式
【化61】
で表される部分は、モノアニオン性の2座配位子を表す。Rx及びRyは、中心金属Irに配位する原子であり、それぞれ独立に、炭素原子、酸素原子又は窒素原子を表す。mは1〜3の整数を表し、nは0〜2の整数を表す。)
【0186】
前記モノアニオン性の2座配位子としては、式(11)におけるRxとRyとを結ぶ円弧の部分が水素原子以外の原子数が3〜30の2価の基であるモノアニオン性の2座配位子が好ましく、例えば、下式で表される構造を有する配位子が挙げられる。
【化62】
(式中、*は配位原子の位置を示す。)
【0187】
式(11)中、左側に示す配位子及び右側に示す配位子は、それぞれ独立に、前記配位子置換基を有していてもよく、溶媒への溶解性が向上し得るので、前記配位子置換基を有することが好ましい。
【0188】
中でも、発光ピーク波長が500nm以上600nm未満の発光色を示す発光性有機金属錯体化合物としては、以下の化合物が好ましい。
【化63】
【化64】
【化65】
(式中、tBuはtert−ブチル基を表し、Rは水素原子又は置換基を表す。複数個存在するRは、同一であっても異なっていてもよい。)
【0189】
発光ピーク波長が600nm以上の赤色の発光色を示す発光性有機金属錯体化合物として、好ましくは、下記式(12)、(12−1)又は(12−2)で表される構造を有する化合物が例示される。
【化66】
【化67】
【化68】
【0190】
式(12)、(12−1)及び(12−2)中、R9p、R10p、R11p、R12p、R13p、R14p、R15p、R16p、R17p、R18p、R19p、R20p、R21p、R22p、R23p、R24p及びR25pは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アシル基、アシルオキシ基、アミド基、酸イミド基、イミン残基、置換アミノ基、置換シリル基、置換シリルオキシ基、置換シリルチオ基、置換シリルアミノ基、1価の芳香族複素環基、ヘテロアリールオキシ基、ヘテロアリールチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、置換カルボキシル基、又はシアノ基を表す。これらの基は、置換基を有していてもよい。mは0〜3の整数を表す。
下記式で表される部分は、式(11)で上述したものと同じ意味を表す。
【化69】
【0191】
式(12)及び(12−1)中、Z1、Z2、Z3、Z4及びZ5は、それぞれ独立に、−C(R*)=又は窒素原子を表す。R*は、水素原子又は置換基を表す。
【0192】
式(12)、(12−1)及び(12−2)において、R9p、R10p、R11p、R12p、R13p、R14p、R15p、R16p、R17p、R18p、R19p、R20p、R21p、R22p、R23p、R24p、R25p、Z1、Z2、Z3、Z4及びZ5は、各々、複数個存在する場合、同一であっても異なっていてもよい。但し、Z1、Z2、Z3、Z4及びZ5の少なくとも2個は、窒素原子である。
【0193】
中でも、発光ピーク波長が600nm以上の発光色を示す発光性有機金属錯体化合物としては、以下の化合物が好ましい。
【化70】
【化71】
【化72】
【化73】
【化74】
【化75】
【化76】
【化77】
(式中、tBuはtert−ブチル基を表し、Meはメチル基を表す。)
【0194】
前記発光性有機金属錯体化合物は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0195】
前記低分子蛍光材料は、通常、400nm以上700nm以下の波長範囲に蛍光発光の極大ピークを有する材料であり、その分子量は、通常、3000未満であり、好ましくは100〜2000であり、より好ましくは100〜1000である。
【0196】
前記低分子蛍光材料は、有機EL素子の発光材料として公知の材料であればよい。前記低分子蛍光材料としては、例えば、ナフタレン誘導体、アントラセン及びその誘導体、ペリレン及びその誘導体、キナクリドン誘導体、キサンテン系色素、クマリン系色素、シアニン系色素、トリフェニルアミン誘導体、オキサジアゾール誘導体、ピラゾロキノリン誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、ジスチリルアリーレン誘導体、ピロール誘導体、チオフェン環化合物、ピリジン環化合物、及びオリゴチオフェン誘導体等の色素系材料;アルミキノリノール錯体、ベンゾキノリノールベリリウム錯体、ベンゾオキサゾリル亜鉛錯体、ベンゾチアゾール亜鉛錯体、アゾメチル亜鉛錯体、ポルフィリン亜鉛錯体、及びユーロピウム錯体等の、中心金属に、Al、Zn、Be、又は希土類金属(例えば、Tb、Eu、Dy等)等を有し、配位子にオキサジアゾール、チアジアゾール、フェニルピリジン、フェニルベンゾイミダゾール、又はキノリン構造等を有する金属錯体系材料が挙げられる。
【0197】
前記高分子蛍光材料としては、例えば、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリシラン誘導体、ポリアセチレン誘導体、ポリフルオレン誘導体、ポリビニルカルバゾール誘導体、及び上記低分子蛍光材料において例示した色素系材料を含む色素体が挙げられる。
【0198】
本発明の組成物において、「正孔輸送材料、電子輸送材料及び発光材料からなる群から選ばれる少なくとも一種の材料」と前記高分子化合物との比率は、前記高分子化合物100重量部に対し、「正孔輸送材料、電子輸送材料及び発光材料からなる群から選ばれる少なくとも1種の材料」が、材料ごとに、通常、0.01重量部〜400重量部となるように設定され、好ましくは0.05重量部〜150重量部となるように設定される。
【0199】
前記正孔輸送材料は、有機EL素子の正孔輸送材料として公知の材料であればよい。前記正孔輸送材料としては、例えば、ポリビニルカルバゾール及びその誘導体;ポリシラン及びその誘導体;側鎖又は主鎖に芳香族アミンを有するポリシロキサン誘導体;ピラゾリン誘導体;アリールアミン誘導体;スチルベン誘導体;ポリアニリン及びその誘導体;ポリチオフェン及びその誘導体;ポリアリールアミン及びその誘導体;ポリピロール及びその誘導体;ポリ(p−フェニレンビニレン)及びその誘導体;ポリ(2,5−チエニレンビニレン)及びその誘導体が挙げられる。前記正孔輸送材料は、アリーレン基、2価の芳香族複素環基を共重合成分(構成単位)として有していてもよい。
【0200】
前記電子輸送材料は、有機EL素子の電子輸送材料として公知の材料であればよい。前記電子輸送材料としては、例えば、オキサジアゾール誘導体、アントラキノジメタン及びその誘導体、ベンゾキノン及びその誘導体、ナフトキノン及びその誘導体、アントラキノン及びその誘導体、テトラシアノアンスラキノジメタン及びその誘導体、フルオレノン誘導体、ジフェニルジシアノエチレン及びその誘導体、ジフェノキノン誘導体、8−ヒドロキシキノリン及びその誘導体の金属錯体、トリアリールトリアジン及びその誘導体、ポリキノリン及びその誘導体、ポリキノキサリン及びその誘導体、ポリフルオレン及びその誘導体が挙げられる。前記電子輸送材料は、アリーレン基又は2価の芳香族複素環基を共重合成分(構成単位)として有していてもよい。
【0201】
なお、本発明の組成物において、各成分は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0202】
<液状組成物>
本発明の液状組成物は、本発明の高分子化合物と、溶媒又は分散媒とを含有してなるものである。
【0203】
本発明の液状組成物に用いられる溶媒、分散媒としては、薄膜の成分を均一に溶解又は分散することができ安定なものを公知の溶媒から選択し得る。このような溶媒としては、下記が挙げられる。
芳香族炭化水素系溶媒:トルエン、キシレン(各異性体又はそれらの混合物)、1,2,3−トリメチルベンゼン、1,2,4−トリメチルベンゼン、メシチレン(1,3,5−トリメチルベンゼン)、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、イソプロピルベンゼン、ブチルベンゼン、イソブチルベンゼン、2−フェニルブタン、tert−ブチルベンゼン、ペンチルベンゼン、ネオペンチルベンゼン、イソアミルベンゼン、ヘキシルベンゼン、シクロヘキシルベンゼン、ヘプチルベンゼン、オクチルベンゼン、3−プロピルトルエン、4−プロピルトルエン、1−メチル−4−プロピルベンゼン、1,4−ジエチルベンゼン、1,4−ジプロピルベンゼン、1,4−ジ−tert−ブチルベンゼン、インダン、及びテトラリン(1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン)等。
脂肪族炭化水素系溶媒:n−ペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、n−へプタン、n−オクタン、n−ノナン、n−デカン、及びデカリン等。
芳香族エーテル系溶媒:アニソール、エトキシベンゼン、プロポキシベンゼン、ブチロキシベンゼン、ペンチルオキシベンゼン、シクロペンチルオキシベンゼン、ヘキシルオキシベンゼン、シクロヘキシルオキシベンゼン、ヘプチルオキシベンゼン、オクチルオキシベンゼン、2−メチルアニソール、3−メチルアニソール、4−メチルアニソール、4−エチルアニソール、4−プロピルアニソール、4−ブチルアニソール、4−ペンチルアニソール、4−ヘキシルアニソール、ジフェニルエーテル、4−メチルフェノキシベンゼン、4−エチルフェノキシベンゼン、4−プロピルフェノキシベンゼン、4−ブチルフェノキシベンゼン、4−ペンチルフェノキシベンゼン、4−ヘキシルフェノキシベンゼン、4−フェノキシトルエン、3−フェノキシトルエン、1,3−ジメトキシベンゼン、2,6−ジメチルアニソール、2,5−ジメチルアニソール、2,3−ジメチルアニソール、及び3,5−ジメチルアニソール等。
脂肪族エーテル系溶媒:テトラヒドロフラン、ジオキサン、及びジオキソラン等。
ケトン系溶媒:アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、及びアセトフェノン等。
エステル系溶媒:酢酸エチル、酢酸ブチル、安息香酸メチル、及びエチルセルソルブアセテート等。
塩素系溶媒:塩化メチレン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、クロロベンゼン、及びo−ジクロロベンゼン等。
アルコール系溶媒:メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、シクロヘキサノール、及びフェノール等。
多価アルコール及びその誘導体:エチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジメトキシエタン、プロピレングリコール、ジエトキシメタン、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、グリセリン、及び1,2−ヘキサンジオール等。
非プロトン性極性溶媒:ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、及びN,N−ジメチルアセトアミド等。
これらの溶媒は、一種単独で用いても二種以上を混合溶媒として使用してもよい。
混合溶媒を用いる場合、上記の溶媒群から二種又は三種以上を組み合わせることが好ましく、その場合、同じ系の溶媒群から複数を選択して組み合わせても、異なる系の溶媒群から1種以上ずつを選択して組み合わせてもよい。混合溶媒の組成比は、各溶媒の物性、及び高分子化合物等の溶解性を考慮して決定することができる。
【0204】
同じ系の溶媒群から複数を選択し組み合わせてなる混合溶媒の好ましい例としては、芳香族炭化水素系溶媒から複数を選択し組み合わせてなる混合溶媒、及び芳香族エーテル系溶媒から複数を選択し組み合わせてなる混合溶媒が挙げられる。異なる系の溶媒群から1種以上ずつを選択し組み合わせてなる混合溶媒の好ましい例としては、以下の組み合わせが挙げられる。
芳香族炭化水素系溶媒と脂肪族炭化水素系溶媒の組み合わせ、芳香族炭化水素系溶媒と芳香族エーテル系溶媒の組み合わせ、芳香族炭化水素系溶媒と脂肪族エーテル系溶媒の組み合わせ、芳香族炭化水素系溶媒と非プロトン性極性溶媒の組み合わせ、及び芳香族エーテル系溶媒と非プロトン性極性溶媒の組み合わせ等。
また、上記の単独溶媒又は混合溶媒に水を添加してもよい。
粘度及び成膜性の観点から、ベンゼン環を含む構造を有し、融点が0℃以下であり、且つ沸点が100℃以上である有機溶媒を含む単独溶媒又は混合溶媒が好ましく、中でも、芳香族炭化水素系溶媒若しくは芳香族エーテル系溶媒を含む単独溶媒又は混合溶媒が好ましい。
【0205】
溶媒は、単独溶媒でも混合溶媒でもよいが、成膜性の観点から、混合溶媒を用いることが好ましい。溶媒は、洗浄、蒸留、及び吸着剤への接触等の精製方法により精製したものを用いてもよい。
【0206】
本発明の液状組成物によれば、前記高分子化合物を含有する有機薄膜を容易に製造することができる。例えば、本発明の液状組成物を基板上に塗布して、加熱、送風、又は減圧によって溶媒を留去することにより、前記高分子化合物を含有する有機薄膜が得られる。溶媒の留去の条件は、使用される有機溶媒に応じて変更することができる。該条件としては、例えば、50〜150℃程度の雰囲気温度(加熱雰囲気)、及び10−3Pa程度の減圧雰囲気が挙げられる。
【0207】
本発明の液状組成物の好適な粘度は、印刷法によっても異なるが、25℃において、好ましくは0.5〜1000mPa・sであり、より好ましくは0.5〜500mPa・sである。また、インクジェットプリント法のように上記液状組成物が吐出装置を経由する場合、吐出時の目詰まりや飛行曲がりを防止するために、液状組成物の25℃における粘度は、好ましくは0.5〜50mPa・sであり、より好ましくは0.5〜20mPa・sである。液状組成物中の本発明の高分子化合物の含有量は、特に限定されないが、0.01〜10重量%であることが好ましく、0.1〜5重量%であることがより好ましい。
【0208】
<薄膜>
本発明の薄膜は、本発明の高分子化合物を含有するものであり、発光性薄膜又は導電性薄膜である。
【0209】
本発明の薄膜は、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビア印刷法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェット法、キャピラリーコート法、及びノズルコート法等の方法で作製し得る。
【0210】
本発明の液状組成物を用いて薄膜を作製する場合、該液状組成物に含まれる高分子化合物のガラス転移温度にもよるが、通常、100℃以上の温度(例えば、130℃、160℃)でベークして作製してもよい。
【0211】
本発明の薄膜の発光量子収率は、素子の輝度及び発光電圧の観点から、30%以上であることが好ましく、40%以上であることがより好ましく、50%以上であることが更に好ましく、60%以上であることが特に好ましい。
【0212】
本発明の薄膜の表面抵抗は、1KΩ/□以下であることが好ましく、100Ω/□以下であることがより好ましく、10Ω/□以下であることが更に好ましい。薄膜に、ルイス酸又はイオン性化合物等をドープすることにより、電気伝導度を高め得る。
【0213】
<発光素子>
本発明の素子は、本発明の高分子化合物を含むものであり、例えば、陽極及び陰極からなる電極と、該電極間に設けられた本発明の高分子化合物を含有する有機層とを有する素子である。以下、その代表的なものとして、本発明の素子が、有機EL素子等の発光素子である場合について説明する。
【0214】
本発明の発光素子が単層型の発光素子(陽極/発光層/陰極)である場合には、発光層が前記薄膜からなり、この発光層が本発明の高分子化合物を含有する。また、本発明の発光素子が、陽極と陰極との間に二以上の層を有する多層型である場合には、それらの少なくとも一層が前記薄膜からなる。多層型の発光素子の層構成としては、例えば、以下の(a)〜(c)が挙げられる。
(a)陽極/正孔注入層(正孔輸送層)/発光層/陰極
(b)陽極/発光層/電子注入層(電子輸送層)/陰極
(c)陽極/正孔注入層(正孔輸送層)/発光層/電子注入層(電子輸送層)/陰極
(ここで、「/」は各層が隣接して積層されていることを示す。)
【0215】
本発明の発光素子の陽極は、正孔注入層、正孔輸送層、及び発光層等に正孔を供給する機能を有する。前記陽極は、4.5eV以上の仕事関数を有することが効果的である。陽極の材料には、金属、合金、金属酸化物、電気伝導性化合物、又はこれらの混合物を用い得る。陽極の材料として、具体的には、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化インジウム、及び酸化インジウムスズ(ITO)等の導電性金属酸化物;金、銀、クロム、及びニッケル等の金属;前記導電性金属酸化物と金属との混合物又は積層物;ヨウ化銅及び硫化銅等の無機導電性物質;ポリアニリン類、ポリチオフェン類(PEDOT等)、及びポリピロール等の有機導電性材料;上記材料から選ばれる1又は2以上の材料とITOとの積層物が例示される。
【0216】
本発明の発光素子の陰極は、電子注入層、電子輸送層、及び発光層等に電子を供給する機能を有する。陰極の材料としては、金属、合金、金属ハロゲン化物、金属酸化物、電気伝導性化合物又はこれらの混合物を用い得る。陰極の材料としては、例えば、アルカリ金属(リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム等)並びにそのフッ化物及び酸化物;アルカリ土類金属(マグネシウム、カルシウム、バリウム等)並びにそのフッ化物及び酸化物;金、銀、鉛、アルミニウム等の金属類;合金及び混合金属類(ナトリウム−カリウム合金、ナトリウム−カリウム混合金属、リチウム−アルミニウム合金、リチウム−アルミニウム混合金属、マグネシウム−銀合金、マグネシウム−銀混合金属等);及び希土類金属(イッテルビウム等)、インジウムが挙げられる。
【0217】
本発明の発光素子の正孔注入層及び正孔輸送層は、陽極から正孔を注入する機能、正孔を輸送する機能、陰極から注入された電子を障壁する機能のいずれかを有する。これらの層の材料には、公知の材料を選択して使用し得る。係る材料としては、例えば、カルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリディン系化合物、ポルフィリン系化合物、ポリシラン系化合物、ポリ(N−ビニルカルバゾール)誘導体、有機シラン誘導体、及びこれらを含む重合体;アニリン系共重合体、チオフェンオリゴマー及びポリチオフェン等の導電性高分子オリゴマーが挙げられる。前記材料は一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。また、正孔注入層及び正孔輸送層は、それぞれ独立に、前記材料の一種又は二種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
【0218】
本発明の発光素子の電子注入層及び電子輸送層は、陰極から電子を注入する機能、電子を輸送する機能、及び、陽極から注入された正孔を障壁する機能のいずれかを有する。これらの層の材料には、公知の材料を選択して使用し得る。係る材料としては、例えば、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、フルオレノン誘導体、アントラキノジメタン誘導体、アントロン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド誘導体、フルオレニリデンメタン誘導体、ジスチリルピラジン誘導体、ナフタレン及びペリレン等の芳香環のテトラカルボン酸無水物、フタロシアニン誘導体、金属錯体(例えば、8−キノリノール誘導体の金属錯体、メタルフタロシアニン、ベンゾオキサゾールを配位子とする金属錯体、及びベンゾチアゾールを配位子とする金属錯体)、及び有機シラン誘導体が挙げられる。電子注入層及び電子輸送層は、それぞれ独立に、前記材料の一種又は二種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
【0219】
また、本発明の発光素子において、電子注入層及び電子輸送層の材料として、絶縁体及び半導体等の無機化合物も使用してよい。電子注入層及び電子輸送層が絶縁体又は半導体で構成されていれば、電流のリークを有効に防止して、電子注入性を向上させ得る。前記絶縁体としては、例えば、アルカリ金属カルコゲニド、アルカリ土類金属カルコゲニド、アルカリ金属のハロゲン化物及びアルカリ土類金属のハロゲン化物からなる群から選ばれる少なくとも一つの金属化合物が挙げられる。アルカリ金属カルコゲニドの好ましい例としては、CaO、BaO、SrO、BeO、BaS及びCaSeが挙げられる。また、電子注入層及び電子輸送層を構成する半導体としては、例えば、Ba、Ca、Sr、Yb、Al、Ga、In、Li、Na、Cd、Mg、Si、Ta、Sb及びZnからなる群から選ばれる少なくとも一つの元素を含む酸化物、窒化物及び酸化窒化物が挙げられる。これら酸化物、窒化物及び酸化窒化物は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0220】
本発明の発光素子において、陰極と陰極に接する薄膜との界面領域に還元性ドーパントが添加されていてもよい。還元性ドーパントとしては、アルカリ金属、アルカリ土類金属の酸化物、アルカリ土類金属、希土類金属、アルカリ金属の酸化物、アルカリ金属のハロゲン化物、アルカリ土類金属の酸化物、アルカリ土類金属のハロゲン化物、希土類金属の酸化物、希土類金属のハロゲン化物、アルカリ金属錯体、アルカリ土類金属錯体及び希土類金属錯体からなる群から選ばれる少なくとも一つの化合物が好ましい。
【0221】
本発明の発光素子の発光層は、電圧印加時に、陽極、正孔注入層又は正孔輸送層より正孔を注入することができ、陰極、電子注入層又は電子輸送層より電子を注入することができる機能、注入した電荷(電子と正孔)を電界の力で移動させる機能、及び電子と正孔の再結合の場を提供し発光につなげる機能のいずれかを有する。本発明の発光素子の発光層は、少なくとも本発明の高分子化合物を含有することが好ましい。発光層中の高分子化合物は、発光層全体の重量に対して、通常、10重量%〜100重量%であり、50重量%〜100重量%であることが好ましく、80重量%〜100重量%であることがより好ましい。本発明の発光素子は、発光層が、本発明の高分子化合物を発光材料として含有することが好ましい。
【0222】
本発明の発光素子において、前記各層の形成方法は特に限定されず、公知の方法を使用してよい。係る方法として、例えば、真空蒸着法(抵抗加熱蒸着法、電子ビーム法等)、スパッタリング法、LB法、分子積層法、塗布法(キャスティング法、スピンコート法、バーコート方、ブレードコート法、ロールコート法、グラビア印刷、スクリーン印刷、インクジェット法等)等が挙げられる。中でも、製造プロセスを簡略化できるので、塗布法で成膜することが好ましい。前記塗布法では、本発明の高分子化合物等を溶媒に溶解して塗布液を調製し、該塗布液を所望の層(又は電極)上に、塗布・乾燥することによって形成し得る。該塗布液中には、バインダーとして樹脂を含有させてもよく、該樹脂は溶媒に溶解させても、分散させてもよい。前記樹脂としては、非共役系高分子(例えば、ポリビニルカルバゾール)、共役系高分子(例えば、ポリオレフィン系高分子)を使用し得る。より具体的には、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリエステル、ポリスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリブタジエン、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、炭化水素樹脂、ケトン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリアミド、エチルセルロース、酢酸ビニル、ABS樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、及びシリコン樹脂が挙げられ、目的に応じて選択し得る。塗布液は目的に応じて、酸化防止剤及び粘度調整剤等の任意成分を含有してもよい。
【0223】
本発明の発光素子の各層の好ましい厚さは、材料の種類や層構成によって異なるが、通常、1nm〜100nmであり、数nm〜1μmが好ましい。
【0224】
本発明の発光素子の用途としては、面状光源、照明用光源(あるいは、光源)、サイン用光源、バックライト用光源、表示装置(ディスプレイ装置)及びプリンターヘッドが例示される。前記ディスプレイ装置としては、公知の駆動技術、駆動回路等を用い、セグメント型、ドットマトリクス型等の構成を選択し得る。
【実施例】
【0225】
実施例を用いて、本発明を具体的に説明する。
【0226】
(数平均分子量及び重量平均分子量)
数平均分子量及び重量平均分子量は、サイズエクスクルージョンクロマトグラフィー(SEC)により、ポリスチレン換算の数平均分子量及び重量平均分子量として求めた。SECのうち移動相が有機溶媒である場合をゲル浸透クロマトグラフィー(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー、GPC)と言う。なお、該GPCの分析条件として、下記の分析条件1又は分析条件2に示す方法を用いた。
【0227】
[分析条件1]
測定試料は、約0.05重量%の濃度でテトラヒドロフランに溶解させ、GPC(島津製作所製、商品名:LC−10Avp)に30μL注入した。GPCの移動相はテトラヒドロフランを用い、0.6mL/分の流量で流した。カラムは、TSKgel SuperHM−H(東ソー製)2本とTSKgel SuperH2000(東ソー製)1本を直列に繋げた。検出器には示差屈折率検出器(島津製作所製、商品名:RID−10A)を用いた。
【0228】
[分析条件2]
測定試料は、約0.05重量%の濃度でテトラヒドロフランに溶解させ、GPC(島津製作所製、商品名:LC−10Avp)に10μL注入した。GPCの移動相はテトラヒドロフランを用い、2.0mL/分の流量で流した。カラムは、PLgel MIXED−B(ポリマーラボラトリーズ製)を用いた。検出器にはUV−VIS検出器(島津製作所製、商品名:SPD−10Avp)を用いた。
【0229】
(NMR測定)
実施例において、NMR測定は、以下の条件で行った。
装置 : 核磁気共鳴装置、INOVA300(商品名)、バリアン社製
測定溶媒 : 重水素化クロロホルム
サンプル濃度 : 約1重量%
測定温度 : 25℃
【0230】
(高速液体クロマトグラフィー)
実施例において、高速液体クロマトグラフィー(以下、「HPLC」という。)は、以下の条件で行った。
装置 : LC−20A(商品名)、島津製作所製
カラム : Kaseisorb LC ODS−AM 4.6mmI.D.×100mm、東京化成製
移動相 : 0.1重量%酢酸含有水/0.1重量%酢酸含有アセトニトリル
検出器 : UV検出器、検出波長254nm
【0231】
(ガスクロマトグラフィー)
実施例において、ガスクロマトグラフィー(以下、「GC」という。)は、以下の条件で行った。
装置 :Agilent Technology社 6890N ネットワーク GC
カラム:BPX5 0.25mmI.D.×30m、SGE Analytical Science製
移動相:ヘリウム
検出器:水素炎イオン化検出器(FID)
【0232】
(発光スペクトルピークの評価)
実施例において、発光性有機金属錯体化合物の発光スペクトルピークの評価は、特に記載がない限り、以下の方法で行った。燐光性発光化合物をキシレン(関東化学社製:電子工業用(ELグレード))に溶解させた。このとき、固形分の濃度が0.0008重量%となるように溶液を調製した。この溶液を、蛍光分光光度計(日本分光社製、FP−6500)を用いて、350nmの波長で励起し、該溶液のPLスペクトルを測定することで、発光スペクトルピークを評価した。
【0233】
(MALDI−TOFMSの測定)
実施例において、MALDI−TOFMSの測定は、以下の測定条件1で行った。
[測定条件1]
α−シアノ−4−ヒドロキシ桂皮酸をメタノールに溶解させて飽和溶液を調製し、これをマトリックス溶液とした。測定する高分子化合物約4mgに200μLのクロロホルムを加えて溶解させ、得られた溶液20μLを200μLのクロロホルムで希釈し、これを試料溶液とした。マトリックス溶液20μLと試料溶液20μLを混合し、これをMALDIプレートに塗布して、MALDI−TOFMSの測定を行った。測定は、MALDI−TOFMS装置: Voyager−DE STR(Applied Biosystems社製)を用いて、測定モード: Reflector、加速電圧: 20kV、レーザー: N2(337nm)で行った。
【0234】
<合成例1>
(化合物M−1の合成)
【化78】
【0235】
アルゴンガス雰囲気下、フラスコ中、1,4−ジヘキシル−2,5−ジブロモベンゼン(化合物CM−1、8.08g、20.0mmol)、ビス(ピナコラート)ジボロン(12.19g、48.0mmol)、[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)(0.98g、1.2mmol)、酢酸カリウム(11.78g、120.0mmol)、及び脱水1,4−ジオキサン(100ml)を混合し、加熱還流下で6時間攪拌した。トルエン及びイオン交換水を加え、分液し、イオン交換水で洗浄した。無水硫酸ナトリウム及び活性炭を加え、セライトをプレコートした漏斗でろ過した。ろ液を濃縮し、粗生成物(11.94g)を得た。ヘキサンで再結晶し、メタノールで結晶を洗浄した。得られた結晶を減圧乾燥させることにより、目的物である1,4−ジヘキシル−2,5−ビス(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)ベンゼン(4.23g、収率42%、化合物M−1)を白色針状結晶として得た。
【0236】
化合物M−1のH−NMR分析の結果及びLC/MSの結果を、それぞれ以下に示す。
1H−NMR(300MHz、CDCl3):δ(ppm)=0.95(t、6H)、1.39〜1.42(bd、36H)、1.62(m、4H)、2.88(t、4H)、7.59(bd、2H)
LC/MS(ESI posi KCl添加):[M+K]+573
【0237】
<合成例2>
(化合物M−2の合成)
【化79】
【0238】
アルゴンガス雰囲気下、フラスコ中、マグネシウム小片(19.45g、800mmol)に少量の脱水テトラヒドロフランと1,2−ジブロモエタン(1.50g、8mmol)を順次加えた。発熱と発泡により、マグネシウムが活性化されたことを確認した後に、2,6−ジブロモトルエン(49.99g、200mmol)を脱水テトラヒドロフラン(200ml)に溶解した溶液を約2時間かけて滴下した。滴下終了後、80℃のオイルバスにより加熱し、還流下で1時間攪拌した。オイルバスを外し、脱水テトラヒドロフラン(400ml)で希釈し、更に氷浴にて冷却してから、2−イソプロピルオキシ−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン(148.85g、800mmol)を加えた。氷浴をはずし、80℃のオイルバスで加熱することにより、還流下で1時間半攪拌した。オイルバスを外し、更に氷浴にて冷却してから、飽和塩化アンモニウム水溶液(50ml)を加え、30分間攪拌した。氷浴を外し、ヘキサン(1500ml)を加え、30分間激しく攪拌した。攪拌を停止し、そのまま15分間静置した後に、シリカゲルを敷き詰めたグラスフィルターによりろ過し、ヘキサン(1000ml)でシリカゲルを洗浄し、合一したろ液を減圧濃縮することにより粗生成物(72.0g)を得た。同様の操作を再度行い、粗生成物(75.4g)を得た。
【0239】
次に、粗生成物の合計にメタノール(740ml)を加え、85℃のオイルバスを用いて1時間加熱還流下で攪拌した。オイルバスを外し、攪拌しながら室温まで冷却した後に、固体をろ取、メタノールで洗浄、減圧乾燥させることにより、白色結晶を得た(59.7g)。乾燥させた結晶をイソプロパノールに加熱溶解させた後、静置した状態でゆっくりと室温まで冷却することにより結晶を析出させ、ろ取、メタノールで洗浄、50℃で一晩の間減圧乾燥させることにより、目的物である化合物M−2(50.8g、HPLC面積百分率(紫外線波長254nm)で99.8%、収率37%)を白色結晶として得た。
【0240】
化合物M−2のH−NMR分析の結果を以下に示す。
1H−NMR(300MHz、CDCl3):δ(ppm)=1.34(s、24H)、2.74(s、3H)、7.14(t、1H)、7.79(d、2H)
【0241】
<合成例3>
(化合物M−3の合成)
・化合物CM−3の合成
4口フラスコの内部の気体を窒素ガスで置換し、2,7−ジブロモフルオレノン(1当量)を入れ、 ジフェニルエーテル(27当量)に懸濁させた。得られた懸濁液を120℃まで加熱し、2,7−ジブロモフルオレノンを溶解させた後、そこに、水酸化カリウム(5.7当量)を加え、160℃まで昇温し、2.5時間攪拌した。室温まで放冷後、ヘキサン(23当量)を加え、ろ過した後、ヘキサンで洗浄することにより粗生成物を得た。4口フラスコの内部の気体を窒素ガスで置換し、得られた粗生成物を入れ、脱水DMF(40当量)に溶解させた。得られた溶液を90℃に昇温後、ヨウ化メチル(7.7当量)を徐々に加えた。その後、10時間反応させた。得られた反応液を、室温まで放冷後、0℃に冷却した水(340当量)中に滴下し、ヘキサン(46当量)で2回抽出した。得られた抽出液を、シリカゲルを敷いたグラスフィルターでろ過した後、得られた有機層を濃縮した。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、下記式:
【化80】
で表される化合物CM−3を得た(収率74%)。
【0242】
化合物CM−3のH−NMR分析の結果及び13C−NMR分析の結果を、それぞれ以下に示す。
1H−NMR(300MHz/CDCl3):
δ(ppm)=3.68(s,3H)、7.15(d,2H)、7.20(d,1H)、7.52(d,2H)、7.65(d,1H)、8.00(brs,1H)
【0243】
13C−NMR(300MHz/CDCl3):
δ(ppm)=52.6、121.8、122.2、130.1、131.6、132.3、132.4、133.2、134.7、139.4、140.6、167.8
【0244】
・化合物CM−4の合成
3口丸底フラスコに、1−ブロモ−4−n−ヘキシルベンゼン(1当量)及び無水テトラヒドロフラン(以下THFとも記す)(34当量)を仕込み、−78℃に冷却した。そこに、ゆっくりとn−ブチルリチウム(n−BuLi)(1.6Mヘキサン溶液)(1当量)を仕込み、−78℃で2時間攪拌して、反応液を得た。化合物CM−3(0.43当量)を無水THF (5.6当量)に溶かした溶液を滴下ロートに仕込み、反応液の温度が−70℃以下をこえないような滴下速度で滴下した。滴下終了後、2時間同温で攪拌し、ゆっくり室温まで昇温した。その後、そこに、塩化アンモニウム飽和水溶液を加えた無水THFの約半分の体積量加えて攪拌し、分液ロートに移して水層を除去した。得られた有機層を水で2回洗浄し、得られた有機層に無水硫酸ナトリウムを加えて乾燥させた。グラスフィルターにシリカゲルの層を敷き、THF溶液を通じてろ過した後、THFで洗浄した。得られた溶液を濃縮し乾燥させた。ヘキサンでリパルプ洗浄し、下記式:
【化81】
で表される化合物CM−4を得た(収率27%)。
【0245】
・化合物M−3の合成
3口フラスコに化合物CM−4(1当量)及びジクロロメタン(38当量)を仕込み、氷浴を用いて0℃に冷却した。三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体(22当量)を滴下ロートに仕込み、そこに、滴下した。反応液を2時間0℃で攪拌した後、水と氷を仕込んだビーカーに注加して反応を停止させた。反応液を分液ロートへ移して分液し、ジクロロメタンで抽出した後、有機層を合わせて水で2回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。グラスフィルターにシリカゲルの層を敷き、THF溶液を通じて硫酸ナトリウムをろ過し、濃縮した。得られた油状物にトルエンを加え、加熱して還流させた。次いで、70℃まで冷却した後、イソプロピルアルコールを加えて攪拌し、室温まで放置したところ、結晶が生じた。この結晶をろ過し、乾燥させた後、ナスフラスコに仕込み、ヘキサン、活性炭を加えて加熱し、還流を2時間行って混合物を得た。グラスフィルターにラジオライトを敷き、その上にセライトを敷き、オーブンで70℃に加熱しておき、これを用いて前記混合物をろ過した。得られた溶液を半量濃縮し、濃縮物を加熱し還流させた後、室温で1時間攪拌した。さらに氷浴を用いて冷やしながら2時間攪拌し、生じた結晶をろ過して集めたところ、下記式:
【化82】
で表される化合物M−3を得た(収率92%)。
【0246】
化合物M−3のH−NMR分析の結果及び13C−NMR分析の結果を、それぞれ以下に示す。
1H−NMR(300MHz/CDCl3):
δ(ppm)=0.87(t,6H)、1.28〜1.37(m,12H)、1.50〜1.62(m,4H)、2.54(t,4H)、7.04(s,8H)、7.45(d,2H)、7.49(s,2H)、7.55(d,2H)
【0247】
13C−NMR(300MHz/CDCl3):
δ(ppm)=14.4、22.9、29.4、31.6、32.0、35.8、65.4、121.8、122.1、128.1、128.7、129.7、131.1、138.3、141.9、142.1、153.7
【0248】
<合成例4>
(化合物M−4の合成)
【化83】
【0249】
窒素雰囲気下、1,4−ジブロモベンゼン(27.1g)の脱水ジエチルエーテル(217ml)溶液をドライアイス/メタノール混合浴を用いて冷却した。得られた懸濁液に2.77Mのn−ブチルリチウム(n−BuLi)のヘキサン溶液(37.2ml)をゆっくりと滴下した後、1時間攪拌し、リチウム試薬を調製した。
【0250】
窒素雰囲気下、塩化シアヌル(10.0g)の脱水ジエチルエーテル(68ml)懸濁液をドライアイス/メタノール混合浴を用いて冷却し、前記リチウム試薬をゆっくり加えた後に室温まで昇温し、室温で反応させた。得られた生成物をろ過し、減圧乾燥させた。得られた固体(16.5g)を精製し、13.2gの針状結晶(化合物CM−11)を得た。
【0251】
【化84】
【0252】
窒素雰囲気下、マグネシウム(1.37g)に脱水テトラヒドロフラン(65ml)を加えた懸濁液に、4−ドデシルブロモベンゼン(14.2g)の脱水テトラヒドロフラン(15ml)溶液を少量ずつ加え、加熱して、還流下で攪拌した。放冷後、反応液にマグネシウム(0.39g)を追加し、再び加熱して、還流下で反応させ、グリニャール試薬を調製した。
【0253】
窒素雰囲気下、前記針状結晶(12.0g、化合物CM−11)の脱水テトラヒドロフラン(100ml)懸濁液に前記グリニャール試薬を撹拌しながら加え、加熱還流させた。放冷後、反応液を、希塩酸水溶液で洗浄した。有機層と水層を分け、水層をジエチルエーテルで抽出した。得られた有機層を合わせて、再び水で洗浄し、有機層を無水硫酸マグネシウムで脱水させた後、ろ過し、濃縮した。得られた白色固体をシリカゲルカラムで精製し、更に再結晶することによって、白色固体として化合物M−4を6.5g得た。
【0254】
<合成例5>
(化合物M−5の合成)
合成例4と同様にして、13.2gの針状結晶(化合物CM−11)を得た。
【0255】
【化85】
【0256】
窒素雰囲気下、マグネシウム(1.37g)に脱水テトラヒドロフラン(65ml)を加えた懸濁液に、4−ヘキシルブロモベンゼン(14.2g)の脱水テトラヒドロフラン(15ml)溶液を少量ずつ加え、加熱して、還流下で攪拌した。放冷後、反応液にマグネシウム(0.39g)を追加し、再び加熱して、還流下で反応させ、グリニャール試薬を調製した。
【0257】
窒素雰囲気下、前記針状結晶(12.0g)の脱水テトラヒドロフラン(100ml)懸濁液に前記グリニャヤール試薬を撹拌しながら加え、加熱還流させた。放冷後、反応液を、希塩酸水溶液で洗浄した。有機層と水層を分け、水層をジエチルエーテルで抽出した。得られた有機層を合わせて、再び水で洗浄し、有機層を無水硫酸マグネシウムで脱水させた後、ろ過し、濃縮した。得られた白色固体をシリカゲルカラムで精製し、更に再結晶することによって、白色固体として化合物M−5(6.5g)を得た。
【0258】
化合物M−5のH−NMR分析の結果を以下に示す。
1H−NMR(300MHz、CDCl3):δ(ppm)=0.90(t、J=6.2Hz、3H)、1.25−1.42(m、6H)、1.63−1.73(m、2H)、2.71(t、J=7.6Hz、2H)、7.34(d、J=7.9Hz、2H)、7.65(d、J=7.9Hz、4H)、8.53−8.58(m、6H)
LC−MS(APCI、positive): m/z+=566 [M+H]+
【0259】
<合成例6>
(化合物M−6の合成)
【化86】
(式中、Meはメチル基を表す。)
【0260】
内部の気体を窒素ガスで置換した反応容器に、酢酸パラジウム(II)(0.90g)、トリス(2−メチルフェニル)ホスフィン(2.435g)及びトルエン(125mL)を入れ、室温で15分間撹拌した。そこに、2,7−ジブロモ−9,9−ジオクチルフルオレン(27.4g)、(4−メチルフェニル)フェニルアミン(22.91g)及びナトリウム−tert−ブトキシド(tert−BuONa、19.75g)を加え、一晩加熱還流させた後、室温まで冷却し、水を加えて洗浄した。有機層を取り出し溶媒を減圧留去した。その残留物をトルエンに溶解させ、得られた溶液をアルミナカラムに通した。その溶出液を減圧して濃縮し、そこへメタノールを加え、沈殿を生成させた。その沈殿を濾取し、p−キシレンで再結晶させた。この結晶をトルエン中に再溶解させ、得られた溶液をアルミナカラムに通した。その溶液を濃縮した後、撹拌されているメタノール中に注いだところ、沈殿が生じた。その沈殿を集め、室温で減圧して18時間乾燥させたところ、白色の2,7−ビス[N−(4−メチルフェニル)−N−フェニル]アミノ−9,9−ジオクチルフルオレン(25.0g)が得られた。
【0261】
内部の気体を窒素ガスで置換した反応容器に、2,7−ビス[N−(4−メチルフェニル)−N−フェニル]アミノ−9,9−ジオクチルフルオレン12.5gとジクロロメタン95mLを加え、撹拌しながら、反応液を−10℃に冷却した。そこへ、ジメチルホルムアミド(DMF)20mLに溶解させたN−ブロモスクシンイミド(NBS)5.91gの溶液をゆっくりと滴下した。3.5時間撹拌した後、冷メタノールと混合させ、生じた沈殿を濾取し、p−キシレンにより再結晶した。得られた結晶をトルエンとメタノールを用いて、再び再結晶し、化合物M−6を白色固体として12.1g得た。
【0262】
化合物M−6のH−NMR分析の結果を以下に示す。
1H−NMR(300MHz、CDCl3):δ(ppm)=0.61−0.71(m、4H)、0.86(t、J=6.8Hz、6H)、0.98−1.32(m、20H)、1.72−1.77(m、4H)、2.32(br、6H)、6.98−7.08(m、16H)、7.29(d、J=8.3Hz、4H)、7.44(br、2H)
【0263】
<合成例7>
(化合物M−7の合成)
・化合物CM−5の合成
3つ口フラスコの内部の気体を窒素ガスで置換し、1−ブロモ−3−n−ヘキシルベンゼン(1当量)を計り取り、脱水テトラヒドロフラン(33当量)に溶解させた。得られた溶液を−75℃以下に冷却し、2.5M n−ブチルリチウム/n−ヘキサン溶液(0.95当量)を滴下し、−75℃以下に保ちながら5時間攪拌した。得られた溶液に2−メトキシカルボニル−4,4’−ジブロモビフェニル(0.43当量)を脱水テトラヒドロフラン(5.3当量)に溶解させた溶液を−70℃以下に保ちながら滴下した。得られた溶液を室温までゆっくりと昇温後、終夜攪拌した。反応液を0℃で攪拌しながら、そこに、水を滴下した。溶媒を留去した後、残渣に水を加えヘキサン1回とヘキサン2回で抽出した。有機層を合わせ、飽和食塩水で洗浄し、水層をヘキサンで再抽出した後、得られた有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させた。溶媒を留去したところ、下記式:
【化87】
で表される化合物CM−5の粗生成物を得た(42%)。精製は行わず、次の工程に用いた。
【0264】
なお、2−メトキシカルボニル−4,4’−ジブロモビフェニルは、Journal of the American Chemical Society(1956),78,3196−3198.に記載の方法で合成した。
【0265】
・化合物CM−6の合成
3つ口フラスコに化合物CM−5(1当量)を秤り取り、ジクロロメタン(35当量)に溶解させ、該フラスコ内の気体を窒素ガスで置換した。得られた溶液を0℃以下に冷却し、5℃以下に保ちながら三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体(4.8当量)を滴下した。室温までゆっくり昇温後、終夜攪拌した。反応液を氷水中に攪拌しながら注ぎ、30分攪拌した。得られた溶液を分液し、水層をジクロロメタンで抽出した。有機層を合わせ、10重量%リン酸カリウム水溶液を加えて分液し、有機層を水2回で洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させた後、溶媒を留去して得られたオイルをトルエンに溶解させ、シリカゲルを敷いたグラスフィルターを通し、ろ過した。溶媒を留去した後、メタノールを加えて激しく攪拌した。得られた結晶をろ過し、メタノールで洗浄した。ヘキサン/酢酸ブチル混合溶媒で再結晶を行うことにより、下記式:
【化88】
で表される化合物CM−6を得た(収率47%)。
【0266】
化合物CM−6の1H−NMR分析の結果を以下に示す。
1H−NMR(300MHz,CDCl3);δ(ppm)=0.86(6H,t)、1.26(12H,m)、1.52(4H,m)、2.51(4H,t)、6.87(2H,d)、7.00(2H,s)、7.04(2H,d)、7.12(2H,t)、7.46(2H,dd)、7.48(2H,d)、7.55(2H,d)
【0267】
・化合物M−7の合成
3つ口フラスコにCM−6(1当量)を秤り取り、該フラスコ内の気体を窒素ガスで置換した。そこに、脱水テトラヒドロフラン(80当量)を加え、−70℃以下に冷却した。得られた溶液を−70℃以下に保ちながら2.5M n−ブチルリチウム/n−ヘキサン溶液(2.2当量)を滴下した。滴下後、温度を保ちながら4時間攪拌した。2−イソプロピルオキシ−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン(3.9当量)を加えた後、室温までゆっくり昇温し終夜攪拌した。反応液を−30℃に冷却した。そこに、2M塩酸/ジエチルエーテル溶液(2当量)を滴下した後、室温まで昇温した。溶媒を留去した後、トルエンを加えて溶解し、シリカゲルを敷いたグラスフィルターを通してろ過し、得られた溶液の溶媒を留去したところ粗生成物が得られた。窒素雰囲気下でトルエン/アセトニトリル溶媒から再結晶することにより、下記式:
【化89】
で表されるM−7を得た(収率60%)。
【0268】
化合物M−7のH−NMR分析の結果を以下に示す。
1H−NMR(300MHz,CDCl3);δ(ppm)=0.86(6H,t)、1.26−1.29(12H,m)、1.31(24H,s)、1.52−1.53(4H,m)、2.50(4H,t)、6.92(2H,d)、7.00(2H,d)、7.08(2H,t)、7.13(2H,s)、7.77(2H,d)、7.81−7.82(4H,m)
【0269】
<合成例8>
(化合物M−8の合成)
【0270】
・CM−8の合成
【化90】
【0271】
アルゴン気流下、反応容器に1−ブロモ−3,5−ジ−n−ヘキシルベンゼン(1当量)とテトラヒドロフラン(36当量)を仕込み、均一溶液を調製し、該溶液を−69℃まで冷却した。該溶液に2.76Mのn−ブチルリチウムヘキサン溶液(1当量)を−68℃で1.5時間かけて滴下し、さらに−70℃で1.5時間撹拌した。次いで、化合物CM−3(0.4当量)とテトラヒドロフラン(3.6当量)からなる溶液を−70℃で1時間かけて滴下し、−70℃で2時間撹拌した。次いで、−70℃にてメタノール(2.4当量)、蒸留水(5.5当量)を加え撹拌した後、室温まで昇温し、室温にて一晩撹拌した。次いで、反応混合物をろ過し、ろ液を濃縮し、ヘプタン及び水を加え撹拌し、静置して分液した有機層から水層を除去した。該有機層に飽和食塩水を加え撹拌し、静置して分液した有機層から水層を除去した。有機層に硫酸マグネシウム加え撹拌し、ろ過して得られたろ液を濃縮し、目的とする化合物CM−8を得た(収率46%)。
【0272】
・化合物CM−9の合成
【化91】
【0273】
アルゴン気流下、反応容器に化合物CM−8(1当量)及びジクロロメタン(29当量)を仕込み、均一溶液を調製し、−30℃に冷却した。該溶液にボロントリフルオライドジエチルエーテル錯体(BF3・OEt2、1当量)を30分間かけて滴下した。その後、室温にて一晩撹拌した。次いで、該反応混合物を−20℃に冷却し、蒸留水(112当量)を加え、1時間撹拌した後、静置して分液した水屑を有機層から除去した。次いで、水(57当量)を加え攪拌し、静置して分液した水層を有機層から除去した。得られた有機層に10重量%炭酸水素ナトリウム水溶液(22当量)を加え撹拌し、静置して分液した水層を有機層から除去した。該有機層を濃縮し溶媒を除去した。次いで、トルエン及びヘプタンを展開溶媒としてシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、濃縮して溶媒を除去した。次いで、酢酸ブチルとメタノールを用い再結晶することにより、目的とする化合物CM−9を得た(収率57%)。
【0274】
・化合物M−8の合成
【化92】
【0275】
アルゴン気流下、4つ口フラスコに化合物CM−9(1当量)、化合物CM−10(2.2当量)、1,4−ジオキサン(87当量)、酢酸カリウム(6.1当量)、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン(dppf、1.5mol%)、及び、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセンジクロロパラジウム(II)塩化メチレン錯体(PdCl2dppf・CH2Cl2、1.5mol%)を仕込み、100〜102℃で5時間撹拌した。次いで、得られた反応混合物を室温まで冷却した後、セライト及びシリカゲルを敷き詰めたろ過器で濾過し、得られたろ液を濃縮して溶媒を除去した。次いで、ヘキサンを加えて調製した溶液に、活性炭を加え、ヘキサンが還流する温度にて1時間撹拌した。室温まで冷却後、セライトを敷き詰めたろ過器でろ過し、濃縮して溶媒を除去した。次いで、トルエン及びアセトニトリルで再結晶を行うことにより、目的とする化合物M−8を得た(95%)。
【0276】
<合成例9>
(化合物M−9の合成)
【化93】
内部の気体をアルゴンガスで置換したセパラブルフラスコに、化合物L−5(4.0g、8.5mmol)、化合物CM−11(16g、37.6mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(Pd(PPh、494mg、0.43mmol、5mol%)、トルエン(780mL)、及びエタノール(260mL)を加え、撹拌しながら35℃に加熱した。次いで、イオン交換水(260mL)に炭酸カリウム(3.54g、26mmol)を溶解させた水溶液を滴下し、64時間撹拌した。反応液を分液ロートに移し、イオン交換水及び10重量%食塩水で洗浄し、有機層を硫酸ナトリウムにて脱水した後、シリカゲルを敷き詰めたロートに通液し、溶媒を減圧留去した。得られた残渣を、中圧分取カラムクロマトグラフィー(シリカゲルカラム、展開溶媒:クロロホルム/ヘキサン=4/6(体積比))にて精製した後、トルエンにて再結晶し、得られた固体を真空乾燥機で十分に乾燥させることにより、目的とする化合物M−9を白色粉末として得た(1.5g、収率24%)。
なお、化合物L−5は、WO02/66552に記載の方法に準じて合成した。
【0277】
<合成例10>
(化合物M−10の合成)
【化94】
内部の気体をアルゴンガスで置換したセパラブルフラスコに、化合物CM−13(4.0g、4.5mmol)、化合物CM−11(8.4g、20.0mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(Pd(PPh、261mg、0.23mmol、5mol%)、トルエン(780mL)及びエタノール(260mL)を加え撹拌しながら35℃に加熱した。次いで、イオン交換水(260mL)に炭酸カリウム(1.87g、14mmol、3当量)を溶解させた水溶液を滴下し、23時間撹拌した。反応液を分液ロートに移し、イオン交換水及び10重量%食塩水で洗浄し、有機層を硫酸ナトリウムにて脱水した後、シリカゲルを敷き詰めたロートに通液し、溶媒を減圧留去した。
上記の作業を2回行い、得られた残渣をまとめて秤量したところ、残渣の合計は22gであった。得られた残渣を、中圧分取カラムクロマトグラフィー(シリカゲルカラム、展開溶媒:クロロホルム/ヘキサン=4/6(体積比))にて精製した後、ヘキサンにてリパルブ洗浄及び熱時濾過を行い、得られた粉末を真空乾燥機で十分に乾燥させることにより、目的とする化合物M−10を白色粉末として得た(5g、収率50%)。
【0278】
<合成例11>
(発光性有機金属錯体化合物MC−1の合成)
国際公開2002/066552号パンフレットに記載の合成法に従って燐光発光性化合物Aを合成した。具体的には、窒素雰囲気下、2−ブロモピリジンと、1.2当量の3−ブロモフェニルホウ酸との鈴木カップリング(触媒:テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)、塩基:2M炭酸ナトリウム水溶液、溶媒:エタノール、トルエン)により、下記式:
【化95】
で表される2−(3'−ブロモフェニル)ピリジンを得た。
【0279】
次に、窒素雰囲気下、トリブロモベンゼンと、2.2当量の4−tert−ブチルフェニルホウ酸との鈴木カップリング(触媒:テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)、塩基:2M炭酸ナトリウム水溶液、溶媒:エタノール、トルエン)により下記式:
【化96】
で表されるブロモ化合物を得た。
【0280】
窒素雰囲気下、前記ブロモ化合物を、無水THFに溶解後、−78℃に冷却し、小過剰のtert−ブチルリチウムを滴下した。冷却下、更に、B(OC493を滴下し、室温にて反応させた。得られた反応液を3M塩酸水で後処理したところ、下記式:
【化97】
で表されるホウ酸化合物を得た。
【0281】
2−(3'−ブロモフェニル)ピリジンと、1.2当量の前記ホウ酸化合物との鈴木カップリング(触媒:テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)、塩基:2M炭酸ナトリウム水溶液、溶媒:エタノール、トルエン)により、下記式:
【化98】
で表される配位子(即ち、配位子となる化合物)を得た。
【0282】
アルゴン雰囲気下、IrCl3・3H2Oと、2.2当量の前記配位子、2−エトキシエタノール、及び、イオン交換水を仕込み、還流させた。析出した固体を吸引ろ過した。得られた固体をエタノール、イオン交換水の順番で洗浄後、乾燥させ、下記式:
【化99】
で表される化合物を黄色粉体として得た。
【0283】
アルゴン雰囲気下、前記黄色粉体に、2当量の前記配位子と、2当量のトリフルオロメタンスルホン酸銀とを加え、ジエチレングリコールジメチルエーテル中で加熱することにより、下記式:
【化100】
で表される発光性有機金属錯体化合物MC−1を得た。
【0284】
発光性有機金属錯体化合物MC−1のH−NMR分析の結果及びLC−MSの結果を、それぞれ以下に示す。
1H−NMR(300MHz、CDCl3):δ(ppm)=1.38(s、54H)、6.93(dd、J=6.3Hz and 6.6Hz、3H)、7.04(br、3H)、7.30(d、J=7.9Hz、3H)、7.48(d、J=7.3Hz、12H)、7.61−7.70(m、21H)、7.82(s、6H)、8.01(s、3H)、8.03(d、J=7.9Hz、3H)
【0285】
LC−MS(APCI、positive):m/z+=1677[M+H]+
【0286】
発光性有機金属錯体化合物MC−1の発光スペクトルピークは、513nmであった。
【0287】
<合成例12>
(発光性有機金属錯体化合物MC−2の合成)
【0288】
【化101】
(式中、t−Buはtert−ブチル基を表す。)
【0289】
まず、5−ブロモ−2−フェニルピリジン及び4,6−ビス(4−tert−ブチルフェニル)−2−クロロ−1,3,5−トリアジンを、特開2008−179617号公報に記載の方法に従って合成した。
【0290】
窒素気流下、反応容器に5−ブロモ−2−フェニルピリジン(103.0g、440mmol)と脱水ジエチルエーテル1320mLとを量り取り、−67℃に冷却した。これに、n−ブチルリチウム/ヘキサン溶液(1.59M、318.2mL、506mmol)を20分かけて滴下した。滴下終了後、得られた溶液を−67℃で1.5時間撹拌し、次いで、ホウ酸トリ−イソプロピル(B(O−i−Pr)3、95.2g、506mmol)を加え、−67℃で4時間攪拌してから徐々に室温まで昇温させ、終夜攪拌した。反応液に1N水酸化ナトリウム水溶液440mLと蒸留水500mLとを加えて室温で30分間攪拌した。反応液から分液操作で水層を回収し、これに3N塩酸約400mLを加えてpH5に調整したところ、アメ状の沈殿が生じた。反応液から上澄みをデカンテーションして除き、この沈澱を蒸留水で2回洗浄した後、メタノールに溶解させて、メタノール溶液を得た。上澄みは酢酸エチルで2回抽出し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた後、このメタノール溶液と合わせて減圧濃縮した。得られた残渣に酢酸エチルを加え、水分を共沸除去することにより、薄灰色粉末として化合物L−1(82.9g)を得た。
【0291】
反応容器に、4,6−ビス(4−tert−ブチルフェニル)−2−クロロ−1,3,5−トリアジン(137.1g、361mmol)、化合物L−1(82.6g、415mmol)、トルエン(2890mL)、及びテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(Pd(PPh34、8.34g、7.22mmol)を量り取り、窒素気流下、50℃で撹拌しながら固形分を溶解させた。得られた溶液に2M炭酸ナトリウム水溶液(722mL)を加えて、17時間還流させた。反応液から有機層を回収し、5重量%炭酸水素ナトリウム水溶液及び10重量%食塩水で洗浄した。洗浄した有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ濃縮した。得られた濃縮液をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン)で精製し、溶媒を留去した。得られた残渣をクロロホルムに溶解させ、エタノールを加えて結晶化させた。結晶をろ別回収した後、該結晶をエタノールで洗浄し、乾燥させることにより、化合物L−2(169.2g)を得た。
【0292】
化合物L−2のLC−MSの結果及びH−NMR分析の結果を、それぞれ以下に示す。
LC−MS(APPI,positive)m/z:499([M+H]+
【0293】
1H−NMR(300MHz、CDCl3
δ(ppm)=1.42(s,18H),7.52(m,3H),7.62(d,J=6.8Hz,4H),7.95(d,J=8.4Hz,1H),8.16(d,J=7.3Hz,2H),8.69(d,J=6.8Hz,4H),9.04(d,J=8.4Hz,1H),10.02(s,1H)
【0294】
【化102】
【0295】
反応容器に、化合物L−2(22.17g、44mmol)、塩化イリジウム三水和物(6.95g、20mmol)、2−エトキシエタノール(96mL)、及び水(32mL)を量り取り、アルゴン気流下、140℃で15時間加熱した。空冷後、得られた混合物をろ別し、残渣をメタノール、水、メタノールの順で洗浄することにより、赤色固体を得た。この赤色固体をクロロホルムに溶解させ、エタノールを加えて2時間還流させた。空冷後、析出した固体をろ別回収し、エタノールで洗浄した。この操作を3回繰り返した後、得られた固体を集め、減圧乾燥させることにより、金属錯体complex 1(20.03g)を得た。
【0296】
反応容器に、金属錯体complex 1(759mg、0.30mmol)、国際公開第2006/062226号パンフレットに記載の方法に従って合成した化合物L−3(330mg、0.61mmol)、及びジグライム(9mL)を量り取り、トリフルオロメタンスルホン酸銀(AgOTf、157mg、0.61mmol)を加え、アルゴン気流下100℃で10時間撹拌した。空冷後、反応混合物に純水(50mL)を加え、生じた沈澱をろ別した。この沈澱にトルエン/ヘキサン(1/2(体積基準))混合溶媒(40mL)を加え、ろ過した。ろ液を硫酸ナトリウムで乾燥させた。この溶液をろ過し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/トルエン=1/1.5(体積基準))で精製し、溶媒を留去した。得られた残渣をメタノールで洗浄し、減圧乾燥させることにより、発光性有機金属錯体化合物MC−2(252mg、0.15mmol)を得た。
【0297】
発光性有機金属錯体化合物MC−2のLC−MSの結果及びH−NMR分析の結果を、それぞれ以下に示す。
LC−MS(APCI, positive)m/z:1733([M+H]+
【0298】
1H−NMR(600MHz、THF−d
δ(ppm)=1.22(s,18H),1.35(s,18H),1.38(s,18H),6.81(m,1H),6.82(m,1H),6.86(m,1H),6.90(m,1H),6.96(d,J=7.1Hz,1H),7.41(d,J=7.1Hz,1H),7.22(d,J=8.2Hz,1H),7.24(d,J=8.2Hz,1H),7.47(d,J=8.2Hz,4H),7.48(d,J=8.5Hz,4H),7.50(d,J=8.2Hz,4H),7.66(m,1H),7.66(d,J=8.2Hz,4H),7.71(m,2H),7.74(s,1H),7.84(s,2H),7.89(d,J=7.9Hz,1H),7.93(d,J=7.9Hz,1H),8.03(d,J=6.4Hz,1H),8.06(m,1H),8.29(d,J=8.8Hz,1H),8.38(d,J=8.5Hz,4H),8.41(d,J=8.8Hz,1H),8.43(d,J=8.2Hz,4H),8.67(s,1H),8.99(d,J=8.8Hz,1H),9.21(m,1H),9.23(d,J=8.8Hz,1H),9.28(s,1H),9.44(s,1H)
【0299】
発光性有機金属錯体化合物MC−2の発光スペクトルピークは、611nmであった。
【0300】
<合成例13>
(発光性有機金属錯体化合物MC−3の合成)
・5−ブロモ−2−フェニルピリジンの合成
【化103】
反応容器に、2,5−ジブロモピリジン(7.11g、30mmol)、トルエン(130mL)、フェニルホウ酸(4.57g、37.5mmol)、及びテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(1.73g、1.5mmol)を量り取り、窒素気流下、50℃で撹拌し、反応物を溶解させた。次いで、2M炭酸ナトリウム水溶液(30mL)を加えて、80℃で6時間撹拌した。得られた反応液の有機層を回収し、炭酸ナトリウム水溶液及び飽和食塩水で洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過した後に溶媒を留去した。この残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/トルエン)で精製し、溶媒を留去して、5−ブロモ−2−フェニルピリジン(6.21g、26.5mmol)を得た。
【0301】
・金属錯体complex 2の合成
【化104】
反応容器に、5−ブロモ−2−フェニルピリジン(7.39g、30mmol)、塩化イリジウム三水和物(4.76g、13.5mmol)、2−エトキシエタノール(58mL)、及び水(19mL)を量り取り、窒素気流下、140℃で16時間加熱した。空冷後、得られた反応混合物を濾別し、水、メタノール、及びヘキサンの順で洗浄することにより、黄色固体として、上式で表される金属錯体complex 1(9.10g、6.58mmol)を得た。
次いで、反応容器に、金属錯体complex 1(6.94g、5.0mmol)、5−ブロモ−2−フェニルピリジン(7.32g、30.0mmol)及びジグライム(43mL)を量り取り、トリフルオロメタンスルホン酸銀(2.57g、10.0mmol)を加え、130℃で14時間撹拌した。得られた反応生成物を濾別し、固体を塩化メチレンに溶解させた。この溶液を濾過し、濾液を濃縮した。析出した固体を濾別回収し、ヘキサンで洗浄することにより、上式で表される金属錯体complex 2(6.35g、7.1mmol)を得た。
【0302】
金属錯体complex 2のLC−MSの結果及びH−NMR分析の結果を、それぞれ以下に示す。
LC−MS(positive) m/z:890 ([M+H]
H NMR(300MHz,DMSO−d
δ(ppm)=6.51 (d,J=7.8Hz,3H), 6.72(m,3H), 6.84 (m,3H), 7.66(d,J=2.0Hz,3H), 7.80(d,J=7.8Hz,3H),8.05(dd,J=2.0,8.8Hz,3H),8.14(d,J=8.8Hz,3H)
【0303】
・金属錯体complex 3の合成
【化105】
窒素気流下、反応容器に、金属錯体complex 2(3.27g、3.7mmol)、酢酸カリウム(3.27g、33.3mmol)、ビス(ピナコラート)ジボロン(3.38g、13.3mmol)、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン(245mg、0.44mmol)、[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)(361mg、0.44mmol)、及びテトラヒドロフラン(400mL)を量り取り、30時間還流した。得られた反応液を濃縮し、塩化メチレンを加えて溶解させた後に、ろ過した。濾液をシリカゲルクロマトグラフィー(塩化メチレン)で精製し、溶媒を留去して残渣をジエチルエーテルで洗浄することにより、上式で表される金属錯体complex 3(2.55g、2.47mmol)を得た。
【0304】
金属錯体complex 3のLC−MSの結果及びH−NMR分析の結果を、それぞれ以下に示す。
LC−MS(positive) m/z: 1072([M+K]
1H NMR(300MHz,CDCl
δ(ppm)=1.21(s,36H), 6.87(m,9H), 7.69(d,J=7.7Hz,3H), 7.82(s,3H), 7.86(m,6H)
【0305】
・2,4−ジ(4’−tert−ブチルフェニル)−6−クロロ−1,3,5−トリアジンの合成
【化106】
(式中、t−Buはtert−ブチル基を表す。)
【0306】
アルゴン気流下、反応容器に、1−ブロモ−4−tert−ブチルベンゼン(125 g、587mmol)とテトラヒドロフラン(470mL)を仕込み、−70℃に冷却した。次いで、n−ブチルリチウム/ヘキサン溶液(1.6M、367mL、587mmol)を−70℃で90分かけて滴下した。滴下終了後、−70℃で2時間攪拌して4−tert−ブチルフェニルリチウム/テトラヒドロフラン溶液を得た。
アルゴン気流下、別の反応容器に塩化シアヌル(50.8g、276mmol)及びテトラヒドロフラン(463mL)を仕込み、−70℃に冷却した。得られた混合物に、先に調製した4−tert−ブチルフェニルリチウム/テトラヒドロフラン溶液を、反応温度が−60℃以下となるように冷却しながらゆっくりと滴下した。滴下終了後、反応液を−40℃で4時間、及び室温で4時間攪拌した。反応混合物に水を加えて反応を終了させ、テトラヒドロフランを留去した。得られた残渣に水とクロロホルムを加えて有機層を抽出し、さらに水で有機層を洗浄した後に溶媒を留去した。残渣をアセトニトリルに溶解させ、熱時濾過により不溶固体を取り除いた。得られた濾液を濃縮し、−70℃に冷却させて析出した固体を濾別回収した。回収した固体をクロロホルム/ヘキサン混合溶媒に溶解させ、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルム/ヘキサン)で精製した。溶媒を留去し、この残渣をアセトニトリルで再結晶することにより、2,4−ジ(4’−tert-ブチルフェニル)−6−クロロ−1,3,5−トリアジン(41.3g、109mmol)を得た。
【0307】
2,4−ジ(4’−tert−ブチルフェニル)−6−クロロ−1,3,5−トリアジンのLC−MSの結果及びH−NMR分析の結果を、それぞれ以下に示す。
LC−MS(APPI,positive) m/z:380([M+H]
H NMR(300MHz,CDCl
δ(ppm)=1.39(s,18H),7.56(d,J=8.4Hz,4H),8.54(d,J=8.4Hz,4H)
【0308】
・発光性有機金属錯体化合物MC−3の合成
【化107】
(式中、t−Buはtert−ブチル基を表す。)
【0309】
窒素気流下、反応容器に、金属錯体complex 3(546mg、0.53mmol)、2,4−ジ(4’−tert−ブチルフェニル)−6−クロロ−1,3,5−トリアジン(702mg、1.85mmol)、炭酸セシウム(1.73g、5.31mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(196mg、0.17mmol)、及びテトラヒドロフラン(53mL)を量り取り、9時間還流した。反応液を濃縮し、これにトルエンを加えて溶解させた。この溶液を濾過し、濾液をシリカゲルクロマトグラフィーで2回精製した(1回目の展開溶媒:トルエン、2回目の展開溶媒:ヘキサン/トルエン=1/1(体積比))。溶媒を留去し、残渣をメタノールで洗浄することにより、上式で表される発光性有機金属錯体化合物MC−3(257mg、0.15mmol)を得た。
【0310】
発光性有機金属錯体化合物MC−3のLC−MSの結果及びH−NMR分析の結果を、それぞれ以下に示す。
LC−MS(APCI,positive) m/z:1686([M+H]
1H NMR(300MHz,CDCl
δ(ppm)=1.14(s,54H),6.96(m,9H),7.39(d,J=8.4Hz,12H),7.83(d,J=7.5Hz,3H),8.18(d,J=8.4Hz,3H),8.36(d,J=8.4Hz,12H),9.14(d,J=8.4Hz,3H),9.33(s,3H)
【0311】
<合成例14>
(発光性有機金属錯体化合物MC−4の合成)
下記式:
【化108】
で表される発光性有機金属錯体化合物MC−4を、国際公開第2002/44189号に記載の方法に従って合成した。
【0312】
<合成例15>
(発光性有機金属錯体化合物MC−5の合成)
・金属錯体complex 4の合成
【化109】
アルゴン気流下、反応容器に、発光性有機金属錯体化合物MC−1(4.25g、2.5 mmol)とクロロホルム(400mL)を量り取り、発光性有機金属錯体化合物MC−1を溶解させた。次いで、N−ブロモスクシンイミド (872mg、4.9mmol)を加え、室温で24時間攪拌した。溶媒を留去し、残渣にクロロホルム/ヘキサン混合溶媒(100mL)を加えて溶解させた。得られた溶液をシリカゲルクロマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルム/ヘキサン混合溶媒)で精製した。溶出した溶液を回収し、溶媒を留去した後、残渣をメタノールで洗浄することにより、上式で表される金属錯体complex4(3.76g、2.0mmol)を得た。
【0313】
金属錯体Complex4のMALDI−TOFMSの結果及びH−NMR分析の結果を、それぞれ以下に示す。
MALDI−TOFMS(positive、[測定方法1]) m/z : 1890 ([M])
H NMR(300MHz,THF−d
δ(ppm)=1.27(s,18H),1.36(s,18H),1.41(s,18H),6.95(m,4H),7.24(m,2H),7.48(m,12H),7.69(m,5H),7.74(m,3H),7.83(s,2H),7.99(d,J=6.0Hz,1H),8.09(m,3H),8.40(m,9H),8.54(d,J=8.6Hz,1H),8.68(s,1H),9.05(m,1H),9.22(m,2H),9.28(d,J=8.6Hz,1H),9.46(s,1H)
【0314】
・発光性有機金属錯体化合物MC−5の合成
【化110】
アルゴン気流下、反応容器に、金属錯体complex4(2.84g、1.5mmol)、化合物L−5(1.56g、3.3mmol)、20重量%テトラエチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(5.42g、7.4mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(61mg、0.05mmol)、及びテトラヒドロフラン(90mL)を量り取り、14時間還流した。反応液にトルエンと水を加えて洗浄し、有機層を回収した。この有機層を、飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させた。得られた溶液をろ過し濃縮した。得られた濃縮液をシリカゲルクロマトグラフィー(展開溶媒:トルエン)で精製した。溶出した溶液を回収し、溶媒を留去した後、残渣に、クロロホルム/ヘキサン混合溶媒を加えて溶解させた。得られた溶液をシリカゲルクロマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルム/ヘキサン)で精製し、溶媒を留去した。残渣をトルエンに溶解させ、得られた溶液にアセトニトリルを加え、結晶化することにより精製した。得られた固体を濾別して回収し、上式で表される発光性有機金属錯体化合物MC−5(2.85g、1.2mmol)を得た。
なお、化合物L−5は、WO02/66552に記載の方法に準じて合成した。
【0315】
金属錯体MC−5のMALDI−TOFMSの結果及びH−NMR分析の結果を、それぞれ以下に示す。
MALDI−TOFMS(positive、[測定方法1]) m/z : 2413 ([M])
H NMR(300MHz,THF−d
δ(ppm)=1.26(s,18H),1.37(s,18H),1.38(s,18H),1.40(s,18H),1.42(s,18H),7.26(d,J=8.1Hz,1H),7.31(d,J=8.1Hz,1H),7.33(d,J=8.1Hz,2H),7.35(d,J=8.1Hz,1H),7.39(d,J=8.1Hz,1H),7.48(d,J=8.4Hz,4H),7.49(d,J=8.3Hz,4H),7.50(d,J=8.1Hz,4H),7.51(d,J=8.1Hz,4H),7.52(d,J=8.5Hz,4H),7.68(d,J=8.4Hz,4H),7.69(d,J=8.5Hz,4H),7.72(d,J=8.3Hz,4H),7.74(m,4H),7.75(s,1H),7.78(s,1H),7.88(s,2H),7.91(s,2H),7.92(s,2H),8.10(m,1H),8.11(d,J=6.2Hz,1H),8.35(s,1H),8.39(m,5H),8.44(d,J=8.1Hz,4H),8.56(d,J=8.8Hz,1H),8.69(d,J=8.8Hz,1H),8.73(s,1H),9.03(d,J=8.8Hz,1H),9.26(m,1H),9.27(d,J=8.8Hz,1H),9.38(s,1H),9.51(s,1H)
【0316】
<正孔輸送性高分子化合物HP−1>
正孔輸送性高分子化合物HP−1は、以下の手順で調製した。
不活性ガス雰囲気下、化合物M−8(17.3g)、化合物M−6(10.4g)、9,9−ジオクチル−2,7−ジブロモフルオレン(2.62g)、9,9−ビス(ベンゾシクロブテン−4−イル)−2,7−ジブロモフルオレン(1.51g)、及びトルエン(580mL)を混合し、加熱しながら攪拌した。そこに、酢酸パラジウム(4.30mg)及びトリス(2−メトキシフェニル)ホスフィン(27.0mg)を加え、100℃に加熱した後、20重量%テトラエチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(68.5g)を滴下し、7時間加熱還流させた。
次にフェニルホウ酸(0.230g)、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウムジクロリド(13.4mg)及び20重量%テトラエチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(68.5g)を加え、終夜加熱還流させた。
反応液から水層を除いた後、N,N−ジエチルジチオカルバミド酸ナトリウム三水和物(10.8g)及びイオン交換水(120mL)を加え、40℃で3時間攪拌した。
反応液において、有機層と水層を分離した後、有機層をイオン交換水で1回、10重量%塩酸で2回、3重量%アンモニア水溶液で2回、イオン交換水で2回、順次洗浄した。
得られた有機層を、予めトルエンを通液したシリカゲル及びアルミナを充填したカラムに通液し、通過した溶液をメタノールに滴下し沈殿物を析出させた。沈殿物を濾取した後乾燥し、高分子化合物(以下、「高分子化合物HP−1」と言う。)を19.5g得た。高分子化合物HP−1のポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)は、それぞれMn=7.5×10、Mw=3.6×10であった。
高分子化合物HP−1は、原料単量体の仕込み比から、以下の構成単位及びモル比率を有し、(PA)の構成単位と(PB)から選ばれる構成単位とが交互に重合した高分子化合物と推定される。
【化111】
【0317】
<正孔輸送性高分子化合物HP−2>
正孔輸送性高分子化合物HP−2は、以下の手順で調製した。
不活性ガス雰囲気下、化合物M−8(0.9339g)、N,N'−ビス(4−ブロモフェニル)−N,N'−ビス(2,6−ジメチル−4−n−ブチルフェニル)−1,4−フェニレンジアミン(1.9223g)、9,9−ジオクチル−2,7−ジブロモフルオレン(0.5947g)、9,9−ビス(ベンゾシクロブテン−4−イル)−2,7−ジブロモフルオレン(0.3437g)、及び、トルエン(118mL)を混合し、加熱しながら攪拌した。反応液に、酢酸パラジウム(1.0mg)、及び、トリス(2−メトキシフェニル)ホスフィン(6.1mg)を加え、100℃に加熱した後、20重量%テトラエチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(15.3g)を滴下し、11時間加熱しながら還流させた。
次に、反応液に、フェニルホウ酸(0.053g)、酢酸パラジウム(1.0mg)、トリス(2−メトキシフェニル)ホスフィン(6.1mg)、及び、20重量%テトラエチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(15.3g)を加え、終夜加熱しながら還流させた。
反応液から水層を除いた後、N,N−ジエチルジチオカルバミド酸ナトリウム三水和物(2.41g)、及び、イオン交換水(48mL)を加え、85℃で2時間攪拌した。
反応液において、有機層を水層と分離した後、有機層をイオン交換水で2回、3重量%酢酸水溶液で2回、イオン交換水で2回の順番で洗浄した。
得られた有機層をメタノールに滴下して生じた沈殿を濾取した後、乾燥し固体を得た。この固体をトルエンに溶解させ、あらかじめトルエンを通液したシリカゲル/アルミナカラムにトルエン溶液を通液させた。通液後の溶出液をメタノールに滴下して生じた沈殿を濾取した後、乾燥し、正孔輸送性高分子化合物HP−2を3.71g得た。分析条件1で測定したポリスチレン換算の数平均分子量及び重量平均分子量は、それぞれMn=5.6×10、Mw=1.5×10であった。
正孔輸送性高分子化合物HP−2は、単量体の仕込み比から以下の構成単位及びモル比率を有し、(PA)の構成単位と(PB)から選ばれる構成単位とが交互に重合した高分子化合物と推定される。
【化112】
(式中、Meはメチル基、n−Buはn−ブチル基を表す。)
【0318】
[実施例1]
<高分子化合物Aの合成>
不活性ガス雰囲気下、化合物M−1(2,5−ビス(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−1,4−ジヘキシルベンゼン)(1.451g)、化合物M−2(2,6−ビス(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−トルエン)(0.424g)、化合物M−3(9,9−ビス(4−n−ヘキシルフェニル)−2,7−ジブロモフルオレン)(2.120g)、化合物M−4(2,4−ビス(4−ブロモフェニル)−6−(4−n−ドデシルフェニル)−1,3,5−トリアジン(0.523g))、及び、トルエン(59mL)を混合し、加熱しながら攪拌した。酢酸パラジウム(1.4mg)、及び、トリス(2−メトキシフェニル)ホスフィン(8.7mg)を加え、20重量%テトラエチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(14.7g)を滴下し、17時間加熱還流させた。
【0319】
次にフェニルホウ酸(0.051g)、酢酸パラジウム(1.4mg)、トリス(2−メトキシフェニル)ホスフィン(8.7mg)、及び、20重量%テトラエチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(14.7g)を加え、17時間加熱還流させた。
【0320】
水層を除いた後、N,N−ジエチルジチオカルバミド酸ナトリウム三水和物(2.28g)、及び、イオン交換水(46mL)を加え85℃で2時間攪拌した。有機層を水層と分離した後、有機層をイオン交換水で2回、3重量%酢酸水溶液で2回、イオン交換水で2回の順番で洗浄した。
【0321】
有機層をメタノールに滴下して生じた沈殿を濾取した後、乾燥し固体を得た。この固体をトルエンに溶解させ、あらかじめトルエンを通液したシリカゲル/アルミナカラムにトルエン溶液を通液させた。通液後の溶出液をメタノールに滴下して生じた沈殿を濾取した後乾燥し、高分子化合物(以下、「高分子化合物A」と言う。)を2.43g得た。高分子化合物Aの、分析条件2に基づき測定されたポリスチレン換算の数平均分子量及び重量平均分子量は、それぞれMn=8.6×104、Mw=2.8×105であった。
【0322】
高分子化合物Aは、単量体の仕込み比から以下の繰り返し単位及びモル比率を有し、(PA)の繰り返し単位と(PB)から選ばれる繰り返し単位とが交互に重合した高分子化合物と推定される。
【0323】
【化113】
【0324】
<有機EL素子の作製及び評価>
スパッタリング法により45nmの厚さでITO膜を付けたガラス基板に、ポリチオフェンスルホン酸のエチレングリコールモノブチルエーテル/水(3/2(体積比))溶液(シグマアルドリッチ社、商品名:Plexcore OC 1200)をスピンコートして、65nmの厚さで成膜し、ホットプレート上で170℃で15分間乾燥した。
【0325】
次に、正孔輸送性高分子化合物HP−1を0.7重量%のキシレン溶液の状態でスピンコートして、約20nmの厚さに成膜した。その後、ホットプレート上で180℃、60分間加熱した。
【0326】
続いて、キシレン溶媒中に1.8重量%の濃度で溶解させた高分子化合物Aの溶液と、1.8重量%の濃度でキシレン溶媒中に溶解させた発光性有機金属錯体化合物MC−1の溶液とを、重量比で、70:30となるように混合して、組成物1を調製した。該組成物1をスピンコートにより1800rpmの回転速度で成膜した。膜の厚さは約80nmであった。これを窒素ガス雰囲気下130℃で10分間乾燥した後、陰極としてフッ化ナトリウムを約3nm、次いでアルミニウムを約80nm蒸着して、有機EL素子を作製した。なお、真空度が、1×10-4Pa以下に到達した後に金属の蒸着を開始した。
【0327】
得られた有機EL素子に電圧を印加したところ、この素子から発光性有機金属錯体化合物MC−1に由来する520nmにピークを有するエレクトロルミネッセンス発光(以下、EL発光という。)が得られた。該素子は3.0Vから発光が開始し、6.2Vで1000cd/m2の発光を示し、最大発光効率は60.88cd/Aであった。
【0328】
上記で得られた有機EL素子を初期輝度が8000cd/m2となるように電流値を設定後、定電流で駆動させ、輝度の時間変化を測定した。その結果、輝度は72.1時間後に初期輝度の80%まで減衰し、235時間後に初期輝度の70%まで減衰した。
【0329】
[実施例2]
<高分子化合物Bの合成>
不活性ガス雰囲気下、化合物M−1(2,5−ビス(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−1,4−ジヘキシルベンゼン)(8.182g)、化合物M−3(9,9−ビス(4−n−ヘキシルフェニル)−2,7−ジブロモフルオレン)(8.508g)、化合物M−4(2,4−ビス(4−ブロモフェニル)−6−(4−n−ドデシルフェニル)−1,3,5−トリアジン)(2.097g)、及び、トルエン(250mL)を混合し、加熱しながら攪拌した。酢酸パラジウム(3.7mg)、及び、トリス(2−メトキシフェニル)ホスフィン(23.2mg)を加え、100℃に加熱した。得られた溶液に、20重量%テトラエチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(61.3g)を滴下し、8時間加熱還流させた。
【0330】
次にフェニルホウ酸(0.20g)、酢酸パラジウム(3.7mg)、トリス(2−メトキシフェニル)ホスフィン(23.3mg)、及び、20重量%テトラエチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(58.3g)を加え、15時間加熱還流させた。
【0331】
水層を除いた後、N,N−ジエチルジチオカルバミド酸ナトリウム三水和物(9.31g)、及び、イオン交換水(60mL)を加え40℃で3時間攪拌した。
【0332】
有機層を水層と分離した後、有機層をイオン交換水で1回、10重量%塩酸で2回、3重量%アンモニア水溶液で2回、イオン交換水で2回の順番で洗浄した。
【0333】
有機層を、あらかじめトルエンを通液したシリカゲル及びアルミナを充填したカラムに溶液を通液し、通過した溶液をメタノールに滴下し沈殿物を析出させた。沈殿物を濾取した後乾燥し、高分子化合物(以下、「高分子化合物B」と言う。)を9.80g得た。高分子化合物Bの、分析条件1に基づき測定された、ポリスチレン換算の数平均分子量及び重量平均分子量は、それぞれMn=9.2×10、Mw=2.3×105であった。
【0334】
高分子化合物Bは、単量体の仕込み比から以下の繰り返し単位及びモル比率を有し、(PA)の繰り返し単位と(PB)から選ばれる繰り返し単位とが交互に重合した高分子化合物と推定される。
【0335】
【化114】
【0336】
<有機EL素子の作製及び評価>
実施例1において、組成物1に代えて、1.9重量%の濃度でキシレン溶媒中に溶解させた高分子化合物Bの溶液と、1.9重量%の濃度でキシレン溶媒中に溶解させた発光性有機金属錯体化合物MC−1の溶液とを、重量比で、70:30となるように混合して、組成物2を調製した以外は実施例1と同様にして、有機EL素子を作製した。
【0337】
得られた有機EL素子に電圧を印加したところ、この素子から発光性有機金属錯体化合物MC−1に由来する520nmにピークを有するEL発光が得られた。該素子は2.9Vから発光が開始し、5.8Vで1000cd/m2の発光を示し、最大発光効率は55.4cd/Aであった。
【0338】
上記で得られた有機EL素子を初期輝度が8000cd/m2となるように電流値を設定後、定電流で駆動させ、輝度の時間変化を測定した。その結果、輝度は101.6時間後に初期輝度の80%まで減衰し、262.5時間後に初期輝度の70%まで減衰した。
【0339】
[実施例3]
<高分子化合物Cの合成>
不活性ガス雰囲気下、化合物M−1(2,5−ビス(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−1,4−ジヘキシルベンゼン)(1.688g)、化合物M−2(2,6−ビス(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−トルエン)(0.497g)、化合物M−3(9,9−ビス(4−n−ヘキシルフェニル)−2,7−ジブロモフルオレン)(2.484g)、化合物M−5(2,4−ビス(4−ブロモフェニル)−6−(4−n−ヘキシルフェニル)−1,3,5−トリアジン(0.531g))、及び、トルエン(66mL)を混合し、加熱しながら攪拌した。酢酸パラジウム(1.7mg)、及び、トリス(2−メトキシフェニル)ホスフィン(10.2mg)を加え、20重量%テトラエチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(17.2g)を滴下し、7時間加熱還流させた。
【0340】
次にフェニルホウ酸(0.059g)、酢酸パラジウム(1.7mg)、トリス(2−メトキシフェニル)ホスフィン(10.3mg)、及び、20重量%テトラエチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(17.1g)を加え、15時間加熱還流させた。
【0341】
反応液から水層を除いた後、N,N−ジエチルジチオカルバミド酸ナトリウム三水和物(2.68g)、イオン交換水(54mL)を加え85℃で2時間攪拌した。反応液において、有機層を水層と分離した後、有機層をイオン交換水で2回、3重量%酢酸水溶液で2回、イオン交換水で2回の順番で洗浄した。
【0342】
有機層をメタノールに滴下して生じた沈殿を濾取した後、乾燥し固体を得た。この固体をトルエンに溶解させ、あらかじめトルエンを通液したシリカゲル/アルミナカラムにトルエン溶液を通液させた。通液後の溶出液をメタノールに滴下して生じた沈殿を濾取した後乾燥し、高分子化合物(以下、「高分子化合物C」と言う。)を2.81g得た。高分子化合物Cの、分析条件2に基づき測定された、ポリスチレン換算の数平均分子量及び重量平均分子量は、それぞれMn=8.1×104、Mw=2.8×105であった。
【0343】
<有機EL素子の作製及び評価>
実施例1において、組成物1に代えて、1.9重量%の濃度でキシレン溶媒中に溶解させた高分子化合物Cの溶液と、1.9重量%の濃度でキシレン溶媒中に溶解させた発光性有機金属錯体化合物MC−1の溶液とを、重量比で、70:30となるように混合して、組成物3を調製した以外は実施例1と同様にして、有機EL素子を作製した。
【0344】
得られた有機EL素子に電圧を印加したところ、この素子から発光性有機金属錯体化合物MC−1に由来する520nmにピークを有するEL発光が得られた。該素子は2.9Vから発光が開始し、6.1Vで1000cd/m2の発光を示し、最大発光効率は61.8cd/Aであった。
【0345】
上記で得られた有機EL素子を初期輝度が8000cd/m2となるように電流値を設定後、定電流で駆動させ、輝度の時間変化を測定した。その結果、輝度は44.4時間後に初期輝度の80%まで減衰し、163.5時間後に初期輝度の70%まで減衰した。
【0346】
高分子化合物Cは、単量体の仕込み比から以下の繰り返し単位及びモル比率を有し、(PA)の繰り返し単位と(PB)から選ばれる繰り返し単位とが交互に重合した高分子化合物と推定される。
【化115】
【0347】
[実施例4]
<高分子化合物Dの合成>
不活性ガス雰囲気下、化合物M−1(2,5−ビス(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−1,4−ジヘキシルベンゼン(2.807g))、化合物M−3(9,9−ビス(4−n−ヘキシルフェニル)−2,7−ジブロモフルオレン)(2.903g)、化合物M−5(2,4−ビス(4−ブロモフェニル)−6−(4−n−ヘキシルフェニル)−1,3,5−トリアジン)(0.621g)、及び、トルエン(85mL)を混合し、加熱しながら攪拌した。酢酸パラジウム(1.9mg)、及び、トリス(2−メトキシフェニル)ホスフィン(11.9mg)を加え、20重量%テトラエチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(19.9g)を滴下し、5時間加熱還流させた。
【0348】
次に、フェニルホウ酸(0.069g)、酢酸パラジウム(1.9mg)、及び、トリス(2−メトキシフェニル)ホスフィン(11.9mg)を加え、15.5時間加熱還流させた。
【0349】
反応液から水層を除いた後、N,N−ジエチルジチオカルバミド酸ナトリウム三水和物(3.13g)、及び、イオン交換水(63mL)を加え、85℃で2時間攪拌した。反応液において、有機層を水層と分離した後、有機層をイオン交換水で2回、3重量%酢酸水溶液で2回、イオン交換水で2回の順番で洗浄した。
【0350】
有機層をメタノールに滴下して生じた沈殿を濾取した後、乾燥し固体を得た。この固体をトルエンに溶解させ、あらかじめトルエンを通液したシリカゲル/アルミナカラムにトルエン溶液を通液させた。通液後の溶出液をメタノールに滴下して生じた沈殿を濾取した後乾燥し、高分子化合物(以下、「高分子化合物D」と言う。)を3.52g得た。高分子化合物Dの、分析条件1に基づき測定された、ポリスチレン換算の数平均分子量及び重量平均分子量は、それぞれMn=1.5×105、Mw=4.7×105であった。
【0351】
高分子化合物Dは、単量体の仕込み比から以下の繰り返し単位及びモル比率を有し、(PA)の繰り返し単位と(PB)から選ばれる繰り返し単位とが交互に重合した高分子化合物と推定される。
【0352】
【化116】
【0353】
<有機EL素子の作製及び評価>
実施例1において、組成物1に代えて、1.5重量%の濃度でキシレン溶媒中に溶解させた高分子化合物Dの溶液と、1.5重量%の濃度でキシレン溶媒中に溶解させた発光性有機金属錯体化合物MC−1の溶液とを、重量比で、70:30となるように混合して、組成物4を調製した以外は実施例1と同様にして、有機EL素子を作製した。
【0354】
得られた有機EL素子に電圧を印加したところ、この素子から発光性有機金属錯体化合物MC−1に由来する520nmにピークを有するEL発光が得られた。該素子は2.9Vから発光が開始し、6.0Vで1000cd/m2の発光を示し、最大発光効率は56.48cd/Aであった。
【0355】
上記で得られた有機EL素子を初期輝度が8000cd/m2となるように電流値を設定後、定電流で駆動させ、輝度の時間変化を測定した。その結果、輝度は19.6時間後に初期輝度の80%まで減衰し、75.4時間後に初期輝度の70%まで減衰した。
【0356】
[比較例1]
<高分子化合物Eの合成>
不活性ガス雰囲気下、化合物M−1(2,5−ビス(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−1,4−ジヘキシルベンゼン)(3.124g)、9,9−ジオクチル−2,7−ジブロモフルオレン(2.770g)、化合物M−5(2,4−ビス(4−ブロモフェニル)−6−(4−n−ヘキシルフェニル)−1,3,5−トリアジン(0.696g))、及び、トルエン(82mL)を混合し、加熱しながら攪拌した。酢酸パラジウム(2.1mg)、及び、トリス(2−メトキシフェニル)ホスフィン(13.4mg)を加え、20重量%テトラエチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(22.3g)を滴下し、5時間加熱還流させた。
【0357】
次に、フェニルホウ酸(0.078g)、酢酸パラジウム(2.1mg)、トリス(2−メトキシフェニル)ホスフィン(13.3mg)、及び、20重量%テトラエチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(22.3g)を加え、17.5時間加熱還流させた。
【0358】
反応液から水層を除いた後、N,N−ジエチルジチオカルバミド酸ナトリウム三水和物(3.51g)、及び、イオン交換水(70mL)を加え85℃で2時間攪拌した。反応液において、有機層を水層と分離した後、有機層をイオン交換水で3回、3重量%酢酸水溶液で3回、イオン交換水で3回の順番で洗浄した。
【0359】
有機層をメタノールに滴下して生じた沈殿を濾取した後、乾燥し固体を得た。この固体をトルエンに溶解させ、あらかじめトルエンを通液したシリカゲル/アルミナカラムにトルエン溶液を通液させた。通液後の溶出液をメタノールに滴下して生じた沈殿を濾取した後乾燥し、高分子化合物(以下、「高分子化合物E」と言う。)を3.43g得た。高分子化合物Eの、分析条件2に基づき測定された、ポリスチレン換算の数平均分子量及び重量平均分子量は、それぞれMn=1.6×105、Mw=5.2×105であった。
【0360】
高分子化合物Eは、単量体の仕込み比から以下の繰り返し単位及びモル比率を有し、(PA)の繰り返し単位と(PB)から選ばれる繰り返し単位とが交互に重合した高分子化合物と推定される。
【0361】
【化117】
【0362】
<有機EL素子の作製及び評価>
実施例1において、組成物1に代えて、1.6重量%の濃度でキシレン溶媒中に溶解させた高分子化合物Eの溶液と、1.6重量%の濃度でキシレン溶媒中に溶解させた発光性有機金属錯体化合物MC−1の溶液とを、重量比で、70:30となるように混合して、組成物5を調製した以外は実施例1と同様にして、有機EL素子を作製した。
【0363】
得られた有機EL素子に電圧を印加したところ、この素子から発光性有機金属錯体化合物MC−1に由来する520nmにピークを有するEL発光が得られた。該素子は3.0Vから発光が開始し、6.7Vで1000cd/m2の発光を示し、最大発光効率は47.54cd/Aであった。
【0364】
上記で得られた有機EL素子を初期輝度が8000cd/m2となるように電流値を設定後、定電流で駆動させ、輝度の時間変化を測定した。その結果、輝度は11.3時間後に初期輝度の80%まで減衰し、28.9時間後に初期輝度の70%まで減衰した。
【0365】
[実施例5]
<高分子化合物Fの合成>
不活性ガス雰囲気下、9,9−ビス(4−n−ヘキシルフェニル)−2,7−ビス(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−フルオレン(2.875g)、9,9−ジオクチル−2,7−ビス(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−フルオレン(0.942g)、9,9−ビス(3−n−ヘキシルフェニル)−2,7−ジブロモフルオレン(2.194g)、化合物M−4(2,4−ビス(4−ブロモフェニル)−6−(4−n−ドデシルフェニル)−1,3,5−トリアジン)(0.666g)、N,N’−ビス(4−ブロモフェニル)−N,N’−ビス(2,6−ジメチル−4−tert−ブチルフェニル)−1,4−フェニレンジアミン(0.580g)、及び、トルエン(114mL)を混合し、加熱しながら攪拌した。ビストリフェニルホスフィンパラジウムジクロリド(3.7mg)を加え100℃に加熱し、20重量%テトラエチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(18.5g)を滴下し、8時間加熱還流させた。
【0366】
次にフェニルホウ酸(0.065g)、ビストリフェニルホスフィンパラジウムジクロリド(3.7mg)、及び、20重量%テトラエチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(18.5g)を加え、終夜加熱還流させた。
【0367】
反応液から水層を除いた後、N,N−ジエチルジチオカルバミド酸ナトリウム三水和物(2.91g)、及び、イオン交換水(58mL)を加え85℃で2時間攪拌した。反応液において、有機層を水層と分離した後、有機層をイオン交換水で2回、3重量%酢酸水溶液で2回、イオン交換水で2回の順番で洗浄した。
【0368】
有機層をメタノールに滴下して生じた沈殿を濾取した後、乾燥し固体を得た。この固体をトルエンに溶解させ、あらかじめトルエンを通液したシリカゲル/アルミナカラムにトルエン溶液を通液させた。通液後の溶出液をメタノールに滴下して生じた沈殿を濾取した後乾燥し、高分子化合物(以下、「高分子化合物F」と言う。)を4.28g得た。高分子化合物Fの、分析条件2に基づき測定された、ポリスチレン換算の数平均分子量及び重量平均分子量は、それぞれMn=9.0×104、Mw=2.4×105であった。
【0369】
高分子化合物Fは、単量体の仕込み比から以下の繰り返し単位及びモル比率を有し、(PA)の繰り返し単位と(PB)から選ばれる繰り返し単位とが交互に重合した高分子化合物と推定される。
【0370】
【化118】
(式中、Meはメチル基を表し、t−Buはtert−ブチル基を表す。)
【0371】
<有機EL素子の作製及び評価>
実施例1において、正孔輸送性高分子化合物HP−2を0.7重量%のキシレン溶液の状態でスピンコートして、約20nmの厚さに成膜した点、組成物1に代えて、1.6重量%の濃度でキシレン溶媒中に溶解させた高分子化合物Fの溶液と、1.6重量%の濃度でキシレン溶媒中に溶解させた発光性有機金属錯体化合物MC−2の溶液とを、重量比で、92.5:7.5となるように混合して、組成物6を調製した点、並びに該組成物6をスピンコートにより1550rpmの回転速度で膜の厚さが約80nmとなるように成膜した点以外は実施例1と同様にして、有機EL素子を作製した。
【0372】
得られた有機EL素子に電圧を印加したところ、この素子から発光性有機金属錯体化合物MC−2に由来する615nmにピークを有するEL発光が得られた。該素子は2.3Vから発光が開始し、4.7Vで1000cd/m2の発光を示し、最大発光効率は21.15cd/Aであった。
【0373】
上記で得られた有機EL素子を初期輝度が8000cd/m2となるように電流値を設定後、定電流で駆動させ、輝度の時間変化を測定した。その結果、輝度は525時間後に初期輝度の80%まで減衰し、1244.4時間後に初期輝度の70%まで減衰した。
【0374】
[実施例6]
<高分子化合物Gの合成>
不活性ガス雰囲気下、9,9−ビス(4−n−ヘキシルフェニル)−2,7−ビス(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−フルオレン(2.021g)、9,9−ジオクチル−2,7−ビス(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−フルオレン(0.691g)、9,9−ビス(3−n−ヘキシルフェニル)−2,7−ジブロモフルオレン(1.608g)、化合物M−5(2,4−ビス(4−ブロモフェニル)−6−(4−n−ヘキシルフェニル)−1,3,5−トリアジン)(0.423g)、N,N’−ビス(4−ブロモフェニル)−N,N’−ビス(2,6−ジメチル−4−tert−ブチルフェニル)−1,4−フェニレンジアミン(0.425g)、及び、トルエン(82mL)を混合し、加熱しながら攪拌した。ビストリフェニルホスフィンパラジウムジクロリド(2.7mg)を加え、20重量%テトラエチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(13.7g)を滴下し、7時間加熱還流させた。
【0375】
次に、フェニルホウ酸(0.047g)、ビストリフェニルホスフィンパラジウムジクロリド(1.4mg)、及び、20重量%テトラエチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(13.6g)を加え、16.5時間加熱還流させた。
【0376】
反応液から水層を除いた後、N,N−ジエチルジチオカルバミド酸ナトリウム三水和物(1.81g)、及び、イオン交換水(36mL)を加え85℃で2時間攪拌した。反応液において、有機層を水層と分離した後、有機層をイオン交換水で2回、3重量%酢酸水溶液で2回、イオン交換水で2回の順番で洗浄した。
【0377】
有機層をメタノールに滴下して生じた沈殿を濾取した後、乾燥し固体を得た。この固体をトルエンに溶解させ、あらかじめトルエンを通液したシリカゲル/アルミナカラムにトルエン溶液を通液させた。通液後の溶出液をメタノールに滴下して生じた沈殿を濾取した後乾燥し、高分子化合物(以下、「高分子化合物G」と言う。)を3.04g得た。高分子化合物Gの、分析条件2に基づき測定された、ポリスチレン換算の数平均分子量及び重量平均分子量は、それぞれMn=9.1×10、Mw=2.5×105であった。
【0378】
高分子化合物Gは、単量体の仕込み比から以下の繰り返し単位及びモル比率を有し、(PA)の繰り返し単位と(PB)から選ばれる繰り返し単位とが交互に重合した高分子化合物と推定される。
【0379】
【化119】
(式中、Meはメチル基を表し、t−Buはtert−ブチル基を表す。)
【0380】
<有機EL素子の作製及び評価>
実施例5において、組成物6に代えて、1.5重量%の濃度で溶解させた高分子化合物Fの溶液と、1.5重量%の濃度でキシレン溶媒中に溶解させた発光性有機金属錯体化合物MC−2の溶液とを、重量比で、92.5:7.5となるように混合して、組成物7を調製した以外は実施例5と同様にして、有機EL素子を作製した。
【0381】
得られた有機EL素子に電圧を印加したところ、この素子から発光性有機金属錯体化合物MC−2に由来する615nmにピークを有するEL発光が得られた。該素子は2.5Vから発光が開始し、5.0Vで1000cd/m2の発光を示し、最大発光効率は16.93cd/Aであった。
【0382】
上記で得られた有機EL素子を初期輝度が8000cd/m2となるように電流値を設定後、定電流で駆動させ、輝度の時間変化を測定した。その結果、輝度は105時間後に初期輝度の80%まで減衰し、408時間後に初期輝度の70%まで減衰した。
【0383】
[比較例2]
<高分子化合物Hの合成>
不活性ガス雰囲気下、9,9−ジオクチル−2,7−ビス(1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−フルオレン(2.652g)、9,9−ジオクチル−2,7−ジブロモフルオレン(1.920g)、2,4−ビス(4−ブロモフェニル)−6−(4−n−ヘキシルフェニル)−1,3,5−トリアジン(0.531g)、N,N’−ビス(4−ブロモフェニル)−N,N’−ビス(2,6−ジメチル−4−tert−ブチルフェニル)−1,4−フェニレンジアミン(0.369g)、メチルトリオクチルアンモニウムクロライド(商品名:Aliquat336、アルドリッチ社製)(0.65g)、及び、トルエン(50mL)を混合し、加熱しながら攪拌した。ビストリフェニルホスフィンパラジウムジクロリド(3.5mg)を加え、17.5重量%炭酸ナトリウム水溶液(13.5mL)を滴下し、3時間加熱還流させた。
【0384】
次に、フェニルホウ酸(0.610g)、ビストリフェニルホスフィンパラジウムジクロリド(3.5mg)、及び、トルエン(50mL)を加え、16時間加熱還流させた。
【0385】
反応液から水層を除いた後、N,N−ジエチルジチオカルバミド酸ナトリウム三水和物(3.04g)、及び、イオン交換水(30mL)を加え85℃で2時間攪拌した。反応液において、有機層を水層と分離した後、有機層をイオン交換水で2回、3重量%酢酸水溶液で2回、イオン交換水で2回の順番で洗浄した。
【0386】
有機層をメタノールに滴下して生じた沈殿を濾取した後、乾燥し固体を得た。この固体をトルエンに溶解させ、あらかじめトルエンを通液したシリカゲル/アルミナカラムにトルエン溶液を通液させた。通液後の溶出液をメタノールに滴下して生じた沈殿を濾取した後乾燥し、高分子化合物(以下、「高分子化合物H」と言う。)を3.48g得た。高分子化合物Hの、分析条件1に基づき測定された、ポリスチレン換算の数平均分子量及び重量平均分子量は、それぞれMn=1.4×105、Mw=3.7×105であった。
【0387】
高分子化合物Hは、単量体の仕込み比から以下の繰り返し単位及びモル比率を有し、(PA)の繰り返し単位と(PB)から選ばれる繰り返し単位とが交互に重合した高分子化合物と推定される。
【0388】
【化120】
(式中、Meはメチル基を表し、t−Buはtert−ブチル基を表す。)
【0389】
<有機EL素子の作製及び評価>
実施例5において、組成物6に代えて、1.6重量%の濃度でキシレン溶媒中に溶解させた高分子化合物Hの溶液と、1.6重量%の濃度でキシレン溶媒中に溶解させた発光性有機金属錯体化合物MC−2の溶液とを、重量比で、92.5:7.5となるように混合して、組成物8を調製した以外は実施例5と同様にして、有機EL素子を作製した。
【0390】
得られた有機EL素子に電圧を印加したところ、この素子から発光性有機金属錯体化合物MC−2に由来する615nmにピークを有するEL発光が得られた。該素子は2.5Vから発光が開始し、5.5Vで1000cd/m2の発光を示し、最大発光効率は18.20cd/Aであった。
【0391】
上記で得られた有機EL素子を初期輝度が8000cd/m2となるように電流値を設定後、定電流で駆動させ、輝度の時間変化を測定した。その結果、輝度は63時間後に初期輝度の80%まで減衰し、148.2時間後に初期輝度の70%まで減衰した。
【0392】
[実施例7]
<高分子化合物Iの合成>
内部の気体を窒素ガスで置換した反応容器に、1,4−ビス(1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−2,5−ジヘキシルベンゼン(1.11g、2.23mmol)、1,3−ビス(1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−2−メチルベンゼン(0.19g、0.56mmol)、2,7−ジブロモ−9,9−ビス(4−ヘキシルフェニル)フルオレン(1.44g、2.24mmol)、化合物M−9(0.43g、0.56mmol)、酢酸パラジウム(II)0.6mg、トリス(2−メトキシフェニル)ホスフィン3.9mg、及びトルエン43mLを量り取り、100℃で加熱しながら混合した。反応液に20重量%テトラエチルアンモニウムヒドロキシド水溶液10mlを滴下し、5時間還流させた。反応後、フェニルホウ酸69mg、酢酸パラジウム(II)0.6mg、トリス(2−メトキシフェニル)ホスフィン3.9mg、トルエン7mL、及び20重量%テトラエチルアンモニウムヒドロキシド水溶液10mlを加え、更に15時間還流させた。次いで、0.2Mのジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム水溶液16mlを加え、85℃で2時間撹拌した。反応液を室温まで冷却し、トルエンで希釈した後、水で2回、3重量%酢酸水溶液で2回、水で4回、順次洗浄した。有機層をメタノールに滴下したところ沈殿が生じた。この沈殿を濾過した後、乾燥させ、固体を得た。この固体をトルエンに溶解させ、得られた溶液をアルミナカラム及びシリカゲルカラムを通すことにより精製した。溶出液をメタノールに滴下したところ、高分子化合物(以下、「高分子化合物I」と言う。)を1.56g得た。高分子化合物Iの、分析条件2に基づき測定された、ポリスチレン換算の数平均分子量は5.0×104であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量は1.1×10であった。
【0393】
高分子化合物Iは、仕込み原料から求めた理論値では、下記式:
【化121】
で表される繰り返し単位と、下記式:
【化122】
(式中、Meはメチル基を表す。)
で表される繰り返し単位と、下記式:
【化123】
で表される繰り返し単位と、下記式:
【化124】
(式中、t−Buはtert−ブチル基を表す。)
で表される繰り返し単位とが、40:10:40:10のモル比で含まれる共重合体である。
【0394】
<有機EL素子の作製及び評価>
実施例1において、組成物1に代えて、2.2重量%の濃度でキシレン溶媒中に溶解させた高分子化合物Iの溶液と、2.2重量%の濃度でキシレン溶媒中に溶解させた発光性有機金属錯体化合物MC−1の溶液とを、重量比で、70:30となるように混合して、組成物9を調製した点、並びに該組成物9をスピンコートにより1600rpmの回転速度で成膜した点以外は実施例1と同様にして、有機EL素子を作製した。
【0395】
得られた有機EL素子に電圧を印加したところ、この素子から発光性有機金属錯体化合物MC−1に由来する520nmにピークを有するEL発光が得られた。該素子は2.64Vから発光が開始し、5.7Vで1000cd/m2の発光を示し、最大発光効率は62.80cd/Aであった。
【0396】
上記で得られた有機EL素子を初期輝度が8000cd/m2となるように電流値を設定後、定電流で駆動させ、輝度の時間変化を測定した。その結果、輝度は82時間後に初期輝度の80%まで減衰した。
【0397】
[実施例8]
<高分子化合物Jの合成>
内部の気体を窒素ガスで置換した反応容器に、1,4−ビス(1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−2,5−ジヘキシルベンゼン(1.00g、2.00mmol)、1,3−ビス(1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−2−メチルベンゼン(0.17g、0.50mmol)、2,7−ジブロモ−9,9−ビス(4−ヘキシルフェニル)フルオレン(1.29g、2.00mmol)、化合物M−10(0.58g、0.5mmol)、酢酸パラジウム(II)0.6mg、トリス(2−メトキシフェニル)ホスフィン3.5mg、及びトルエン44mLを量り取り、100℃で加熱しながら混合した。反応液に20重量%テトラエチルアンモニウムヒドロキシド水溶液9mlを滴下し、11時間還流させた。反応後、フェニルホウ酸62mg、酢酸パラジウム(II)0.6mg、トリス(2−メトキシフェニル)ホスフィン3.5mg、トルエン7mL、及び20重量%テトラエチルアンモニウムヒドロキシド水溶液9mLを加え、更に15時間還流させた。次いで、0.2Mのジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム水溶液14mLを加え、85℃で2時間撹拌した。反応液を室温まで冷却し、トルエンで希釈した後、水で2回、3重量%酢酸水溶液で2回、水で6回、順次洗浄した。有機層をメタノールに滴下したところ沈殿が生じた。この沈殿を濾過した後、乾燥させ、固体を得た。この固体をトルエンに溶解させ、得られた溶液アルミナカラム及びシリカゲルカラムを通すことにより精製した。溶出液をメタノールに滴下したところ、高分子化合物(以下、「高分子化合物J」と言う。)を1.46g得た。高分子化合物Jの、分析条件2に基づき測定された、ポリスチレン換算の数平均分子量は4.9×104であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量は1.1×10であった。
【0398】
高分子化合物Jは、仕込み原料から求めた理論値では、下記式:
【化125】
で表される繰り返し単位と、下記式:
【化126】
(式中、Meはメチル基を表す。)
で表される繰り返し単位と、下記式:
【化127】
で表される繰り返し単位と、下記式:
【化128】
(式中、t−Buはtert−ブチル基を表す。)
で表される繰り返し単位とが、40:10:40:10のモル比で含まれる共重合体である。
【0399】
<有機EL素子の作製及び評価>
実施例1において、組成物1に代えて、2.2重量%の濃度でキシレン溶媒中に溶解させた高分子化合物Jの溶液と、2.2重量%の濃度でキシレン溶媒中に溶解させた発光性有機金属錯体化合物MC−1の溶液とを、重量比で、70:30となるように混合して、組成物10を調製した点、並びに該組成物10をスピンコートにより1690rpmの回転速度で成膜した点以外は実施例1と同様にして、有機EL素子を作製した。
【0400】
得られた有機EL素子に電圧を印加したところ、この素子から発光性有機金属錯体化合物MC−1に由来する520nmにピークを有するEL発光が得られた。該素子は2.69Vから発光が開始し、5.4Vで1000cd/m2の発光を示し、最大発光効率は58.50cd/Aであった。
【0401】
上記で得られた有機EL素子を初期輝度が8000cd/m2となるように電流値を設定後、定電流で駆動させ、輝度の時間変化を測定した。その結果、輝度は100時間後に初期輝度の80%まで減衰した。
【0402】
[実施例9]
<有機EL素子の作製及び評価>
実施例7において、組成物9に代えて、2.2重量%の濃度でキシレン溶媒中に溶解させた高分子化合物Iの溶液と、2.2重量%の濃度でキシレン溶媒中に溶解させた発光性有機金属錯体化合物MC−3の溶液とを、重量比で、70:30となるように混合して、組成物11を調製した点、並びに該組成物11をスピンコートにより1580rpmの回転速度で成膜した点以外は実施例7と同様にして、有機EL素子を作製した。
【0403】
得られた有機EL素子に電圧を印加したところ、この素子から発光性有機金属錯体化合物MC−3に由来する605nmにピークを有するEL発光が得られた。該素子は2.74Vから発光が開始し、7.6Vで1000cd/m2の発光を示し、最大発光効率は27.80cd/Aであった。
【0404】
上記で得られた有機EL素子を初期輝度が8000cd/m2となるように電流値を設定後、定電流で駆動させ、輝度の時間変化を測定した。その結果、輝度は41.9時間後に初期輝度の80%まで減衰した。
【0405】
[実施例10]
<有機EL素子の作製及び評価>
実施例8において、組成物10に代えて、2.2重量%の濃度でキシレン溶媒中に溶解させた高分子化合物Jの溶液と、2.2重量%の濃度でキシレン溶媒中に溶解させた発光性有機金属錯体化合物MC−3の溶液とを、重量比で、70:30となるように混合して、組成物12を調製した点、並びに該組成物12をスピンコートにより1620rpmの回転速度で成膜した点以外は実施例8と同様にして、有機EL素子を作製した。
【0406】
得られた有機EL素子に電圧を印加したところ、この素子から発光性有機金属錯体化合物MC−3に由来する605nmにピークを有するEL発光が得られた。該素子は2.82Vから発光が開始し、7.7Vで1000cd/m2の発光を示し、最大発光効率は24.60cd/Aであった。
【0407】
上記で得られた有機EL素子を初期輝度が8000cd/m2となるように電流値を設定後、定電流で駆動させ、輝度の時間変化を測定した。その結果、輝度は50.6時間後に初期輝度の80%まで減衰した。
【0408】
[比較例3]
<有機EL素子の作製及び評価>
比較例1において、組成物5に代えて、2.2重量%の濃度でキシレン溶媒中に溶解させた高分子化合物Eの溶液と、2.2重量%の濃度でキシレン溶媒中に溶解させた発光性有機金属錯体化合物MC−3の溶液とを、重量比で、70:30となるように混合して、組成物13を調製した点、並びに該組成物13をスピンコートにより2400rpmの回転速度で成膜した点以外は比較例1と同様にして、有機EL素子を作製した。
【0409】
得られた有機EL素子に電圧を印加したところ、この素子から発光性有機金属錯体化合物MC−3に由来する605nmにピークを有するEL発光が得られた。該素子は2.96Vから発光が開始し、8.3Vで1000cd/m2の発光を示し、最大発光効率は23.00cd/Aであった。
【0410】
上記で得られた有機EL素子を初期輝度が8000cd/m2となるように電流値を設定後、定電流で駆動させ、輝度の時間変化を測定した。その結果、輝度は5.3時間後に初期輝度の80%まで減衰した。
【0411】
[実施例11]
<有機EL素子の作製及び評価>
実施例5において、組成物6に代えて、1.8重量%の濃度でキシレン溶媒中に溶解させた高分子化合物Fの溶液と、1.8重量%の濃度でキシレン溶媒中に溶解させた発光性有機金属錯体化合物MC−4の溶液とを、重量比で、92.5:7.5となるように混合して、組成物14を調製した点、並びに該組成物14をスピンコートにより2540rpmの回転速度で成膜した以外は実施例5と同様にして、有機EL素子を作製した。
【0412】
得られた有機EL素子に電圧を印加したところ、この素子から発光性有機金属錯体化合物MC−4に由来する625nmにピークを有するEL発光が得られた。該素子は2.41Vから発光が開始し、4.5Vで1000cd/m2の発光を示し、最大発光効率は11.70cd/Aであった。
【0413】
上記で得られた有機EL素子を初期輝度が8000cd/m2となるように電流値を設定後、定電流で駆動させ、輝度の時間変化を測定した。その結果、輝度は107.2時間後に初期輝度の80%まで減衰した。これは比較例4に対して、6.7倍の長寿命化を示した。
【0414】
[実施例12]
<有機EL素子の作製及び評価>
実施例5において、組成物6に代えて、1.8重量%の濃度でキシレン溶媒中に溶解させた高分子化合物Fの溶液と、1.8重量%の濃度でキシレン溶媒中に溶解させた発光性有機金属錯体化合物MC−3の溶液とを、重量比で、92.5:7.5となるように混合して、組成物15を調製した点、並びに該組成物15をスピンコートにより2570rpmの回転速度で成膜した点以外は実施例5と同様にして、有機EL素子を作製した。
【0415】
得られた有機EL素子に電圧を印加したところ、この素子から発光性有機金属錯体化合物MC−3に由来する600nmにピークを有するEL発光が得られた。該素子は2.29Vから発光が開始し、4.2Vで1000cd/m2の発光を示し、最大発光効率は31.20cd/Aであった。
【0416】
上記で得られた有機EL素子を初期輝度が8000cd/m2となるように電流値を設定後、定電流で駆動させ、輝度の時間変化を測定した。その結果、輝度は593.8時間後に初期輝度の80%まで減衰した。これは比較例5に対して、5.76倍の長寿命化を示した。
【0417】
[実施例13]
<有機EL素子の作製及び評価>
実施例5において、組成物6に代えて、1.8重量%の濃度でキシレン溶媒中に溶解させた高分子化合物Fの溶液と、1.8重量%の濃度でキシレン溶媒中に溶解させた発光性有機金属錯体化合物MC−5の溶液とを、重量比で、92.5:7.5となるように混合して、組成物16を調製した点、並びに該組成物16をスピンコートにより2740rpmの回転速度で成膜した点以外は実施例5と同様にして、有機EL素子を作製した。
【0418】
得られた有機EL素子に電圧を印加したところ、この素子から発光性有機金属錯体化合物MC−5に由来する615nmにピークを有するEL発光が得られた。該素子は2.39Vから発光が開始し、5.0Vで1000cd/m2の発光を示し、最大発光効率は20.40cd/Aであった。
【0419】
上記で得られた有機EL素子を初期輝度が8000cd/m2となるように電流値を設定後、定電流で駆動させ、輝度の時間変化を測定した。その結果、輝度は493.6時間後に初期輝度の80%まで減衰した。これは比較例6に対して、8.9倍の長寿命化を示した。
【0420】
[実施例14]
<高分子化合物Kの合成>
不活性ガス雰囲気下、9,9−ビス(4−n−ヘキシルフェニル)−2,7−ビス(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−フルオレン(2.79g)、9,9−ジオクチル−2,7−ビス(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−フルオレン(0.943g)、9,9−ビス(3−n−ヘキシルフェニル)−2,7−ジブロモフルオレン(1.86g)、2,4−ビス(4−ブロモフェニル)−6−(4−n−ドデシルフェニル)−1,3,5−トリアジン(0.999g)、N,N’−ビス(4−ブロモフェニル)−N,N’−ビス(2,6−ジメチル−4−tert−ブチルフェニル)−1,4−フェニレンジアミン(0.581g)及びトルエン(114mL)を混合し、加熱しながら攪拌した。混合物にビス(トリフェニルホスフィン)パラジウムジクロリド(3.70mg)を加え100℃に加熱し、20重量%テトラエチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(18.5g)を滴下し、加熱還流させた。
次に、フェニルホウ酸(0.0650g)、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウムジクロリド(3.70mg)及び20重量%テトラエチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(18.5g)を加え、終夜加熱還流させた。
反応液から水層を除いた後、N,N−ジエチルジチオカルバミド酸ナトリウム三水和物(2.91g)及びイオン交換水(58mL)を加え85℃で2時間攪拌した。反応液において、有機層と水層を分離した後、有機層をイオン交換水で2回、3重量%酢酸水溶液で2回、イオン交換水で3回、順次洗浄した。
有機層をメタノールに滴下して生じた沈殿を濾取した後、乾燥し、固体を得た。この固体をトルエンに溶解させ、得られた溶液を、予めトルエンを通液したシリカゲル/アルミナカラムに通液させた。通過した溶液をメタノールに滴下し沈殿物を析出させた。沈殿物を濾取した後乾燥し、高分子化合物(以下、「高分子化合物K」と言う。)を4.25g得た。高分子化合物Kの、分析条件2に基づき測定された、ポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)は、それぞれMn=1.4×10、Mw=4.3×10であった。
【0421】
高分子化合物Kは、単量体の仕込み比から以下の構成単位及びモル比率を有し、(PA)の構成単位と(PB)から選ばれる構成単位とが交互に重合した高分子化合物と推定される。
【化129】
(式中、Meはメチル基、n−Buはn−ブチル基を表す。)
【0422】
<有機EL素子の作製及び評価>
実施例5において、組成物6に代えて、1.8重量%の濃度でキシレン溶媒中に溶解させた高分子化合物Kの溶液と、1.8重量%の濃度でキシレン溶媒中に溶解させた発光性有機金属錯体化合物MC−4の溶液とを、重量比で、92.5:7.5となるように混合して、組成物17を調製した点、並びに該組成物17をスピンコートにより2000rpmの回転速度で成膜した点以外は実施例5と同様にして、有機EL素子を作製した。
【0423】
得られた有機EL素子に電圧を印加したところ、この素子から発光性有機金属錯体化合物MC−4に由来する625nmにピークを有するEL発光が得られた。該素子は2.34Vから発光が開始し、4.2Vで1000cd/m2の発光を示し、最大発光効率は11.40cd/Aであった。
【0424】
上記で得られた有機EL素子を初期輝度が8000cd/m2となるように電流値を設定後、定電流で駆動させ、輝度の時間変化を測定した。その結果、輝度は71.1時間後に初期輝度の80%まで減衰した。これは比較例4に対して、4.44倍の長寿命化を示した。
【0425】
[実施例15]
<有機EL素子の作製及び評価>
実施例5において、組成物6に代えて、1.8重量%の濃度でキシレン溶媒中に溶解させた高分子化合物Kの溶液と、1.8重量%の濃度でキシレン溶媒中に溶解させた発光性有機金属錯体化合物MC−3の溶液とを、重量比で、92.5:7.5となるように混合して、組成物18を調製した点、並びに該組成物18をスピンコートにより2120rpmの回転速度で成膜した点以外は実施例5と同様にして、有機EL素子を作製した。
【0426】
得られた有機EL素子に電圧を印加したところ、この素子から発光性有機金属錯体化合物MC−3に由来する600nmにピークを有するEL発光が得られた。該素子は2.26Vから発光が開始し、3.9Vで1000cd/m2の発光を示し、最大発光効率は30.90cd/Aであった。
【0427】
上記で得られた有機EL素子を初期輝度が8000cd/m2となるように電流値を設定後、定電流で駆動させ、輝度の時間変化を測定した。その結果、輝度は360.2時間後に初期輝度の80%まで減衰した。これは比較例5に対して、3.49倍の長寿命化を示した。
【0428】
[実施例16]
<有機EL素子の作製及び評価>
実施例5において、組成物6に代えて、1.8重量%の濃度でキシレン溶媒中に溶解させた高分子化合物Kの溶液と、1.8重量%の濃度でキシレン溶媒中に溶解させた発光性有機金属錯体化合物MC−5の溶液とを、重量比で、92.5:7.5となるように混合して、組成物19を調製した点、並びに該組成物19をスピンコートにより2090rpmの回転速度で成膜した点以外は実施例5と同様にして、有機EL素子を作製した。
【0429】
得られた有機EL素子に電圧を印加したところ、この素子から発光性有機金属錯体化合物MC−5に由来する615nmにピークを有するEL発光が得られた。該素子は2.27Vから発光が開始し、4.3Vで1000cd/m2の発光を示し、最大発光効率は19.60cd/Aであった。
【0430】
上記で得られた有機EL素子を初期輝度が8000cd/m2となるように電流値を設定後、定電流で駆動させ、輝度の時間変化を測定した。その結果、輝度は297.1時間後に初期輝度の80%まで減衰した。これは比較例6に対して、5.35倍の長寿命化を示した。
【0431】
[実施例17]
<高分子化合物Lの合成>
不活性ガス雰囲気下、9,9−ビス(4−n−ヘキシルフェニル)−2,7−ビス(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−フルオレン(0.754g)、9,9−ジオクチル−2,7−ビス(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−フルオレン(0.259g)、9,9−ビス(3−n−ヘキシルフェニル)−2,7−ジブロモフルオレン(0.602g)、2,4−ビス(4−ブロモフェニル)−6−(3,5−ビス(4−tert−ブチルフェニル)フェニル)−1,3,5−トリアジン(0.210g)、N,N’−ビス(4−ブロモフェニル)−N,N’−ビス(2,6−ジメチル−4−tert−ブチルフェニル)−1,4−フェニレンジアミン(0.159g)及びトルエン(35mL)を混合し、加熱しながら攪拌した。混合物にビス(トリフェニルホスフィン)パラジウムジクロリド(1.0mg)を加え100℃に加熱し、20重量%テトラエチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(7.64g)を滴下し、5時間加熱還流させた。
【0432】
次にフェニルホウ酸(0.035g)、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウムジクロリド(1.0mg)及び20重量%テトラエチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(7.64g)を加え、終夜加熱還流させた。
【0433】
反応液から水層を除いた後、N,N−ジエチルジチオカルバミド酸ナトリウム三水和物(0.40g)及びイオン交換水(8mL)を加え、85℃で2時間攪拌した。反応液において、有機層と水層を分離した後、有機層を3.6重量%塩酸で2回、2.5重量%アンモニア水溶液で2回、イオン交換水で4回、順次洗浄した。
【0434】
有機層をメタノールに滴下して沈殿物を析出させた。沈殿物を濾取した後乾燥し固体を得た。この固体をトルエンに溶解させ、得られた溶液を、予めトルエンを通液したシリカゲル/アルミナカラムに通液させた。通過した溶液をメタノールに滴下して生じた沈殿を濾取した後乾燥し、高分子化合物(以下、「高分子化合物L」と言う。)を1.21g得た。高分子化合物Lの、分析条件2に基づき測定された、ポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)は、それぞれMn=7.3×10、Mw=2.1×10であった。
【0435】
高分子化合物Lは、単量体の仕込み比から、以下の構成単位及びモル比率を有し、(PA)の構成単位と(PB)から選ばれる構成単位とが交互に重合した高分子化合物と推定される。
【化130】
(式中、Meはメチル基を表し、t−Buはtert−ブチル基を表す。)
【0436】
<有機EL素子の作製及び評価>
実施例5において、組成物6に代えて、2.0重量%の濃度でキシレン溶媒中に溶解させた高分子化合物Lの溶液と、2.0重量%の濃度でキシレン溶媒中に溶解させた発光性有機金属錯体化合物MC−2の溶液とを、重量比で、92.5:7.5となるように混合して、組成物20を調製した点、並びに該組成物20をスピンコートにより3500rpmの回転速度で成膜した点以外は実施例5と同様にして、有機EL素子を作製した。
【0437】
得られた有機EL素子に電圧を印加したところ、この素子から発光性有機金属錯体化合物MC−2に由来する615nmにピークを有するEL発光が得られた。該素子は2.28Vから発光が開始し、4.4Vで1000cd/m2の発光を示し、最大発光効率は18.20cd/Aであった。
【0438】
上記で得られた有機EL素子を初期輝度が8000cd/m2となるように電流値を設定後、定電流で駆動させ、輝度の時間変化を測定した。その結果、輝度は238.2時間後に初期輝度の80%まで減衰した。これは比較例2に対して、3.78倍の長寿命化を示した。
【0439】
[実施例18]
<有機EL素子の作製及び評価>
実施例5において、組成物6に代えて、2.0重量%の濃度でキシレン溶媒中に溶解させた高分子化合物Lの溶液と、2.0重量%の濃度でキシレン溶媒中に溶解させた発光性有機金属錯体化合物MC−3の溶液とを、重量比で、92.5:7.5となるように混合して、組成物21を調製した点、並びに該組成物21をスピンコートにより3000rpmの回転速度で成膜した点以外は実施例5と同様にして、有機EL素子を作製した。
【0440】
得られた有機EL素子に電圧を印加したところ、この素子から発光性有機金属錯体化合物MC−3に由来する600nmにピークを有するEL発光が得られた。該素子は2.24Vから発光が開始し、4.2Vで1000cd/m2の発光を示し、最大発光効率は29.80cd/Aであった。
【0441】
上記で得られた有機EL素子を初期輝度が8000cd/m2となるように電流値を設定後、定電流で駆動させ、輝度の時間変化を測定した。その結果、輝度は517.3時間後に初期輝度の80%まで減衰した。これは比較例5に対して、5.02倍の長寿命化を示した。
【0442】
[実施例19]
<有機EL素子の作製及び評価>
実施例5において、組成物6に代えて、1.8重量%の濃度でキシレン溶媒中に溶解させた高分子化合物Gの溶液と、1.8重量%の濃度でキシレン溶媒中に溶解させた発光性有機金属錯体化合物MC−4の溶液とを、重量比で、92.5:7.5となるように混合して、組成物22を調製した点、並びに該組成物22をスピンコートにより2500rpmの回転速度で成膜した点以外は実施例5と同様にして、有機EL素子を作製した。
【0443】
得られた有機EL素子に電圧を印加したところ、この素子から発光性有機金属錯体化合物MC−4に由来する625nmにピークを有するEL発光が得られた。該素子は2.41Vから発光が開始し、4.6Vで1000cd/m2の発光を示し、最大発光効率は11.40cd/Aであった。
【0444】
上記で得られた有機EL素子を初期輝度が8000cd/m2となるように電流値を設定後、定電流で駆動させ、輝度の時間変化を測定した。その結果、輝度は86.1時間後に初期輝度の80%まで減衰した。これは比較例4に対して、5.38倍の長寿命化を示した。
【0445】
[実施例20]
<有機EL素子の作製及び評価>
実施例5において、組成物6に代えて、1.8重量%の濃度でキシレン溶媒中に溶解させた高分子化合物Gの溶液と、1.8重量%の濃度でキシレン溶媒中に溶解させた発光性有機金属錯体化合物MC−3の溶液とを、重量比で、92.5:7.5となるように混合して、組成物23を調製した点、並びに該組成物23をスピンコートにより2370rpmの回転速度で成膜した点以外は実施例5と同様にして、有機EL素子を作製した。
【0446】
得られた有機EL素子に電圧を印加したところ、この素子から発光性有機金属錯体化合物MC−3に由来する600nmにピークを有するEL発光が得られた。該素子は2.31Vから発光が開始し、4.3Vで1000cd/m2の発光を示し、最大発光効率は31.80cd/Aであった。
【0447】
上記で得られた有機EL素子を初期輝度が8000cd/m2となるように電流値を設定後、定電流で駆動させ、輝度の時間変化を測定した。その結果、輝度は308.1時間後に初期輝度の80%まで減衰した。これは比較例5に対して、2.99倍の長寿命化を示した。
【0448】
[実施例21]
<有機EL素子の作製及び評価>
実施例5において、組成物6に代えて、1.8重量%の濃度でキシレン溶媒中に溶解させた高分子化合物Gの溶液と、1.8重量%の濃度でキシレン溶媒中に溶解させた発光性有機金属錯体化合物MC−5の溶液とを、重量比で、92.5:7.5となるように混合して、組成物24を調製した点、並びに該組成物24をスピンコートにより2500rpmの回転速度で成膜した点以外は実施例5と同様にして、有機EL素子を作製した。
【0449】
得られた有機EL素子に電圧を印加したところ、この素子から発光性有機金属錯体化合物MC−5に由来する615nmにピークを有するEL発光が得られた。該素子は2.39Vから発光が開始し、5.0Vで1000cd/m2の発光を示し、最大発光効率は20.40cd/Aであった。
【0450】
上記で得られた有機EL素子を初期輝度が8000cd/m2となるように電流値を設定後、定電流で駆動させ、輝度の時間変化を測定した。その結果、輝度は443.4時間後に初期輝度の80%まで減衰した。これは比較例6に対して、7.99倍の長寿命化を示した。
【0451】
[比較例4]
<有機EL素子の作製及び評価>
実施例5において、組成物6に代えて、1.4重量%の濃度でキシレン溶媒中に溶解させた高分子化合物Hの溶液と、1.4重量%の濃度でキシレン溶媒中に溶解させた発光性有機金属錯体化合物MC−4の溶液とを、重量比で、92.5:7.5となるように混合して、組成物25を調製した点、並びに該組成物25をスピンコートにより2000rpmの回転速度で成膜した点以外は実施例5と同様にして、有機EL素子を作製した。
【0452】
得られた有機EL素子に電圧を印加したところ、この素子から発光性有機金属錯体化合物MC−4に由来する625nmにピークを有するEL発光が得られた。該素子は2.59Vから発光が開始し、5.1Vで1000cd/m2の発光を示し、最大発光効率は10.80cd/Aであった。
【0453】
上記で得られた有機EL素子を初期輝度が8000cd/m2となるように電流値を設定後、定電流で駆動させ、輝度の時間変化を測定した。その結果、輝度は16.0時間後に初期輝度の80%まで減衰した。
【0454】
[比較例5]
<有機EL素子の作製及び評価>
実施例5において、組成物6に代えて、1.5重量%の濃度でキシレン溶媒中に溶解させた高分子化合物Hの溶液と、1.5重量%の濃度でキシレン溶媒中に溶解させた発光性有機金属錯体化合物MC−3の溶液とを、重量比で、92.5:7.5となるように混合して、組成物26を調製した点、並びに該組成物26をスピンコートにより2950rpmの回転速度で成膜した点以外は実施例5と同様にして、有機EL素子を作製した。
【0455】
得られた有機EL素子に電圧を印加したところ、この素子から発光性有機金属錯体化合物MC−3に由来する600nmにピークを有するEL発光が得られた。該素子は2.46Vから発光が開始し、4.5Vで1000cd/m2の発光を示し、最大発光効率は29.10cd/Aであった。
【0456】
上記で得られた有機EL素子を初期輝度が8000cd/m2となるように電流値を設定後、定電流で駆動させ、輝度の時間変化を測定した。その結果、輝度は103.1時間後に初期輝度の80%まで減衰した。
【0457】
[比較例6]
<有機EL素子の作製及び評価>
実施例5において、組成物6に代えて、1.4重量%の濃度でキシレン溶媒中に溶解させた高分子化合物Hの溶液と、1.4重量%の濃度でキシレン溶媒中に溶解させた発光性有機金属錯体化合物MC−5の溶液とを、重量比で、92.5:7.5となるように混合して、組成物27を調製した点、並びに該組成物27をスピンコートにより2110rpmの回転速度で成膜した点以外は実施例5と同様にして、有機EL素子を作製した。
【0458】
得られた有機EL素子に電圧を印加したところ、この素子から発光性有機金属錯体化合物MC−5に由来する615nmにピークを有するEL発光が得られた。該素子は2.56Vから発光が開始し、5.3Vで1000cd/m2の発光を示し、最大発光効率は18.60cd/Aであった。
【0459】
上記で得られた有機EL素子を初期輝度が8000cd/m2となるように電流値を設定後、定電流で駆動させ、輝度の時間変化を測定した。その結果、輝度は55.5時間後に初期輝度の80%まで減衰した。
【0460】
[実施例22]
<化合物M−11の合成>
・CM−16の合成
【化131】
(式中、Meはメチル基を表し、t−Buはtert−ブチル基を表す。)
【0461】
内部の気体をアルゴンガスで置換したセパラブルフラスコに、3,5−ジブロモ−4−メチル安息香酸(化合物CM−14、60g、205mmol)、化合物CM−15(200g、430mmol)、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウムジクロリド(8.6g、12mmol、6mol%)、及びトルエン(1300mL)を加え、撹拌しながら90℃に加熱する。次いで、20重量%テトラエチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(600mL)を滴下する。滴下終了後、24時間加熱還流させる。反応液を分液ロートに移し、0.5mol/Lの塩酸、及び、10重量%食塩水で洗浄し、有機層を硫酸マグネシウムにて脱水した後、シリカゲルを敷き詰めたロートに通液し、溶媒を減圧溜去する。得られた残渣をクロロホルム−メタノール系にて再結晶することにより、白色の化合物CM−16が得られる。
【0462】
【化132】
(式中、Meはメチル基を表し、t−Buはtert−ブチル基を表す。)
【0463】
内部の気体をアルゴンガスで置換したセパラブルフラスコに、化合物CM−16(41g、50mmol)、モノクロロベンゼン(100mL)及びDMF(0.1mL)を加え、60℃で加熱撹拌する。次に、塩化チオニル(12.5g、105mmol、2.1当量)をゆっくりと滴下する。10時間以上加熱撹拌した後、溶媒を減圧溜去する。得られた残渣に、モノクロロベンゼン(200mL)及び4−ブロモベンゾニトリル(18g、100mmol)を加え、反応器を氷冷し撹拌する。続いて、五塩化アンチモン(15g、50mmol)をゆっくりと滴下し、滴下終了後に室温まで昇温させ、48時間以上撹拌する。得られた反応混合物を、25重量%アンモニア水溶液に撹拌しながら滴下する。有機層に沈殿が生じる場合やエマルジョンを形成する場合は、クロロホルムで希釈する。反応液から水層を除去し、有機層をイオン交換水で2回以上洗浄し、硫酸ナトリウムで脱水する。溶媒を減圧留去し、得られた残渣をクロロホルムに溶解させ、シリカゲルを敷き詰めたロートに通液し、溶媒を減圧溜去する。得られた残渣をクロロホルム−メタノール系にて再結晶することにより、白色の化合物M−11が得られる。