(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
[ナノマテリアル組成物]
<フッ素化アルコール>
本発明で用いるフッ素化アルコールとは、炭化水素基中の水素原子の一部または全部がフッ素原子で置換されているアルコールをいう。フッ素化アルコールは、一種単独で用いても複数種を混合して用いてもよいが、一種単独で用いるのが好ましい。上記の炭化水素基はアルキル基であることが好ましい。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等の炭素原子数1〜10のアルキル基が挙げられる。
フッ素化アルコールにおけるフッ素化の割合、即ち、フッ素化アルコール中の炭化水素基における(フッ素原子の数)/((フッ素原子の数)+(水素原子の数))の値は、0.05以上であることが好ましく、0.2以上であることがより好ましく、0.4以上であることがさらに好ましく、0.6以上であることが特に好ましく、0.7以上であることが最も好ましい。フッ素化アルコール中のヒドロキシル基の数に制限はないが、2つ以下が好ましく、1つが好ましい。
【0010】
フッ素化アルコールの具体例としては、以下のものが挙げられる。括弧内の数値は引火点を表し、*は100℃以下では引火しないことを意味する。
2,2,3,3−テトラフルオロプロパノール(49℃)、
2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロパノール(*)、
2,2,3,3,4,4−ヘキサフルオロブタノール(*)、
2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンタノール(75℃)、
1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール(*)、
2,2,2−トリフルオロ−1−エタノール(29℃)、
1,3−ジフルオロ−2−プロパノール(42℃)、
2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロ−1−ブタノール(91℃)、
2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロ−1−ペンタノール(75℃)、
2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7−ドデカフルオロ−1−ヘプタノール(*)、
2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−ペンタデカフルオロ−1−オクタノール(*)、
3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロ−1−オクタノール(*)、
1H,1H,2H,2H−パーフルオロ−1−デカノール(*)
【0011】
これらの中でも以下のものが好ましい。
2,2,3,3−テトラフルオロプロパノール(49℃)、
2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロパノール(*)、
2,2,3,3,4,4−ヘキサフルオロブタノール(*)、
2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンタノール(75℃)、
1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール(*)、
1,3−ジフルオロ−2−プロパノール(42℃)、
2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロ−1−ブタノール(91℃)、
2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロ−1−ペンタノール(75℃)、
2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7−ドデカフルオロ−1−ヘプタノール(*)、
2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−ペンタデカフルオロ−1−オクタノール(*)、
3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロ−1−オクタノール(*)
【0012】
更に、以下のものがより好ましい。
2,2,3,3,4,4−ヘキサフルオロブタノール(*)、
2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンタノール(75℃)、
2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロ−1−ブタノール(91℃)、
2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロ−1−ペンタノール(75℃)、
2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7−ドデカフルオロ−1−ヘプタノール(*)、
2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−ペンタデカフルオロ−1−オクタノール(*)、
3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロ−1−オクタノール(*)
【0013】
本発明のナノマテリアル組成物中のフッ素化アルコールの含有量は、1重量%以上99.999重量%以下であり、5重量%以上99.999重量%以下が好ましく、10重量%以上99.999重量%以下がより好ましく、20重量%以上99.999重量%以下がさらに好ましく、40重量%以上99.999重量%以下が特に好ましく、85重量%以上99.999重量%以下が最も好ましい。
フッ素化アルコールの含有量が1重量%未満では、得られる組成物の塗布性を確保しにくい。前記含有量が99.999重量%を超えると、ナノマテリアルの含有量が少なすぎてナノマテリアル含有層の形成が困難になる場合がある。なお、前記含有量は、複数種のフッ素化アルコールを用いる場合には、これらのフッ素化アルコールの合計の含有量である。なお、複数のナノマテリアルを用いる場合も同様である。
【0014】
<その他の溶媒>
本発明のナノマテリアル組成物はフッ素化アルコール以外の溶媒を含んでいてもよい。フッ素化アルコール以外の溶媒としては、クロロホルム、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン等の塩素化炭化水素溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル溶媒、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ペンタン、ヘキサン、へプタン、オクタン、ノナン、デカン等の脂肪族炭化水素溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルセルソルブアセテート等のエステル溶媒、エチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジメトキシエタン、プロピレングリコール、ジエトキシメタン、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、グリセリン、1,2−ヘキサンジオール等の多価アルコール及びその誘導体、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、シクロヘキサノール等のアルコール溶媒、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド溶媒、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド溶媒が例示される。
これらの中でも、ナノマテリアルの分散安定性を更に向上させるためには、上記の多価アルコール及びその誘導体又はアルコール溶媒が好ましく、エチレングリコール、グリセリン、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコールがより好ましく、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールがさらに好ましい。フッ素化アルコール以外の溶媒は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
本発明のナノマテリアル組成物中において、フッ素化アルコール以外の溶媒の割合は、フッ素化アルコールに対し、100重量%以下が好ましく、75重量%以下がより好ましく、45重量%以下がさらに好ましく、15重量%以下が特に好ましく、0重量%であることが最も好ましい(即ち、本発明の組成物はフッ素化アルコール以外の溶媒を含まないことが最も好ましい)。
【0015】
<ナノマテリアル>
本発明において「ナノマテリアル」とは、少なくとも1つの寸法が1000nm以下である物質をいう。ナノマテリアルは1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。該ナノマテリアルは金属、金属化合物又はこれらの組み合わせからなることが好ましい。該金属及び該金属化合物のそれぞれは、1種類を単独で用いても2種類以上を併用してもよい。該金属としては、例えば、アルミニウム、金、白金、銀、銅等が挙げられる。該金属化合物としては、例えば、金属酸化物が挙げられ、具体的には、酸化インジウム、酸化亜鉛及び酸化スズ、並びにこれらの2種以上を含む複合体、例えば、インジウムスズ酸化物(ITO)、アルミニウム亜鉛酸化物(AZO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、スズアンチモン酸化物、NESA等が挙げられる。
【0016】
本発明のナノマテリアル組成物で用いられるナノマテリアルはナノ粒子とナノロッドとナノワイヤーに大別できる。
【0017】
前記ナノ粒子は、数平均のフェレー径(Feret径)が、通常1000nm以下であるが、合成の容易さの観点から、好ましくは800nm以下、より好ましくは600nm以下、更に好ましくは400nm以下、特に好ましくは300nm以下である。また、前記ナノ粒子の数平均のフェレー径は、通常1nm以上である。
【0018】
また、ナノ粒子の形状を規定する指標となるアスペクト比は、通常1.5未満であり、好ましくは1.4以下、より好ましくは1.2以下である。本明細書において、アスペクト比とは、(最も長い径)/(最も短い径)を意味し、このアスペクト比に分布がある場合には算術平均値を意味する。
【0019】
前記ナノロッド及びナノワイヤーの形状は、太さ(d)が1nm〜1μmで、長さ(l)が1.5nm〜1mmで、(l/d)が1.5以上の柱状である。なお、長さは、通常、1.5nm以上である。d及びlは、走査型電子顕微鏡に代表される電子顕微鏡による写真で測定することができるが、光学式の顕微鏡による観察でも測定することができる場合がある。
「柱状」とは、顕微鏡により確認したときに、長軸と短軸とを有し、長軸方向の各点における短軸方向の寸法の最大値と最小値との比が1.0〜5.0、好ましくは1.0〜1.25である形状をいう。即ち、柱状の導電材料において、長軸方向の各点における短軸方向の寸法は長軸方向に沿って一定又はほぼ一定である。長軸方向の各点における短軸方向の寸法が最大値と最小値を有する場合、上記の太さ(d)は該最大値と該最小値との平均値と定義される。該柱状の形状は屈曲していてもよい。
なお、一般的に、l/dの値が小さいものをナノロッドと呼び、l/dの値が大きいものをナノワイヤーと呼ぶが、明確な境目はない。本明細書においては、l/dが20未満のものをナノロッド、l/dが20以上のものをナノワイヤーと定義する。本発明のナノマテリアル組成物においては、ナノロッドよりもナノワイヤーが好ましい。
【0020】
前記ナノワイヤーのl/dは、好ましくは30以上であり、より好ましくは50以上であり、更に好ましくは100以上であり、特に好ましくは300以上である。l/dの上限は、特に限定されないが、実用的には10
7以下であり、より実用的には10
6以下であり、更に実用的には10
5以下であり、特に実用的には10
4以下であり、とりわけ実用的には10
3以下である。
【0021】
前記ナノワイヤーのdは、好ましくは800nm以下、より好ましくは600nm以下、更に好ましくは300nm以下であり、特に好ましくは150nm以下であり、とりわけ好ましくは100nm以下である。下限は通常1nm以上であるが、導電性がより優れるので、5nm以上が好ましく、10nm以上がより好ましく、30nm以上が更に好ましい。
【0022】
前記ナノワイヤーのlは、好ましくは1300nm以上、より好ましくは1600nm以上、更に好ましくは2000nm以上であり、特に好ましくは2500nm以上であり、とりわけ好ましくは3000nm以上である。lは、好ましくは1cm以下であり、より好ましくは1mm以下、更に好ましくは0.5mm以下、特に好ましくは0.3mm以下であり、とりわけ好ましくは0.1mm以下である。
【0023】
l、d及びl/dに分布がある場合には、これらの平均値を採用する。本明細書において平均値とは、算術平均値である。
【0024】
ナノロッド及びナノワイヤーの太さ(d)方向の断面は円形、三角形、四角形、五角形、六角形又はそれよりも多くの辺を有する多角形の他、円形以外の曲線を含む形状でもよい。断面が多角形の場合、複数の辺の長さは互いに同一でも異なっていてもよいが、最長辺と最短辺の比が10以下であることが好ましく、2以下であることがより好ましく、1.3以下であることが特に好ましい。断面は、多角形である場合、正三角形、正四角形、正五角形、正六角形またはそれよりも多くの辺を有する正多角形であることがとりわけ好ましい。断面が円形以外の曲線を含む形状である場合、その断面上で重心を通る最も長い直線と最も短い直線の比が10以下であることが好ましく、2以下であることがより好ましく、1.3以下であることが特に好ましい。この断面は、一種類のナノマテリアルの中で大きさと形が異なっていてもよいが、大きさのばらつきが少ない方が好ましく、大きさと形の双方のばらつきが少ない方がより好ましい。
【0025】
ナノロッド及びナノワイヤーとしては、例えば、市販品やナノロッド及びナノワイヤーの技術分野で公知の方法で製造した生産品を使用することができる。該方法としては、例えば、液相法や気相法等の製造法を用いることが出来るが、特に制限は無く、いかなる方法であってもよい。具体的には、特開2006−233252号公報;Xia,Y. et al., Chem. Mater.(2002)、14、4736−4745;Xia,Y. et al., Nano Letters(2003)3、955−960;Xia,Y. et al., J. Mater. Chem.,(2008)18、437−441;特開2002−266007号公報;及び特開2004−149871号公報等に記載の方法が挙げられる。
【0026】
本発明のナノマテリアル組成物で用いるナノマテリアルの表面には、有機物が吸着していてもよい。該有機物は極性溶媒との相互作用が大きい基、例えば、ヒドロキシル基、式:−OCH
2CH
2−で表される2価の基、カルボキシル基又はその水素原子がアルカリ金属原子で置き換えられた基を有することが好ましい。また、該有機物はナノマテリアルと相互作用が大きい置換基を有することが好ましい。そのような置換基としては、ナノマテリアルを構成する金属原子に配位結合又は共有結合しやすい置換基が挙げられ、具体的にはメルカプト基、式:−S−、−O−、もしくは−OCH
2CH
2−で表される2価の基、カルボニル基、非置換もしくは置換のホスフィノ基、ピリジニル基、エテニレン基、又はカルボキシル基もしくはその水素原子がアルカリ金属原子で置き換えられた基が挙げられる。該有機物の1分子が有するこれらの置換基は多い方が、ナノマテリアルを構成する金属原子との相互作用が大きくなるので好ましい。置換基の数を増やすため、該有機物は高分子化合物であることが好ましい。
【0027】
ここで「吸着(adsorption)」とは、化学吸着でも物理吸着でもそれらが組み合わさった吸着でもよい。吸着の強さの観点からは、化学吸着が好ましい。化学吸着とは、吸着質と吸着媒の間で共有結合、イオン結合、金属結合、配位結合、水素結合等の化学結合を伴って起こる吸着を意味する。物理吸着とは、ファンデルワールス力、静電引力、磁力等の相互作用により起こる吸着を意味する。本発明では、吸着質は有機物であり、吸着媒はナノマテリアルである。
【0028】
本発明のナノマテリアル組成物を用いて製造したナノマテリアル含有層に電気を流して使用する場合、ナノマテリアルの表面に吸着している有機物は導電性が高い方が、ナノマテリアル同士の接点での電気のやり取りにおける抵抗が小さくなる傾向にあるため、ナノマテリアル含有層における導電性が高くなりやすく、透明性を維持したまま導電性の高いナノマテリアル含有層を得ることが容易である。例えば、該ナノマテリアル含有層を電子素子の透明配線として使用する場合に、抵抗を小さくすることができる。したがって、該有機物は芳香族化合物であることが好ましく、芳香環を有する高分子化合物であることがより好ましく、芳香環を主鎖に有する高分子化合物であることがさらに好ましい。
【0029】
芳香環を主鎖に有する高分子化合物としては、例えば、下記式(4)で表される2価の繰り返し単位(以下、「2価の繰り返し単位V」ということがある。)を主鎖に有する高分子化合物が挙げられる。下記式(4)において、Arは2価の芳香族基であり、ヘテロ原子を有してもよい。Arとしては、例えば、芳香環を有する化合物から芳香環の炭素原子に直結した2個の水素原子を取り除いた残りの原子団が例示できる。この2価の芳香族基は、置換基を有していてもよい。
【0031】
芳香環を有する化合物としては、下記式(Ar-1)〜(Ar-62)のいずれかで表される化合物が挙げられ、合成容易さの観点から、下記式(Ar-1)〜(Ar-12)、(Ar-15)〜(Ar-31)又は(Ar-37)〜(Ar-40)のいずれかで表される化合物が好ましく、下記式(Ar-1)〜(Ar-3)、(Ar-8)〜(Ar-10)、(Ar-15)〜(Ar-21)、(Ar-24)〜(Ar-31)、(Ar-37)又は(Ar-38)で表される化合物がより好ましく、下記式(Ar-1)〜(Ar-3)、(Ar-8)、(Ar-10)、(Ar-15)、(Ar-17)〜(Ar-19)、(Ar-21)、(Ar-24)、(Ar-37)又は(Ar-38)で表される化合物がさらに好ましく、下記式(Ar-1)〜(Ar-3)、(Ar-8)、(Ar-10)、(Ar-17)、(Ar-18)又は(Ar-37)で表される化合物が特に好ましく、下記式(Ar-1)、(Ar-8)、(Ar-10)、(Ar-17)又は(Ar-18)で表される化合物が最も好ましい。
【0034】
式(4)で表される2価の繰り返し単位Vを主鎖に有する高分子化合物は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる標準ポリスチレン換算の数平均分子量(ただし、標準ポリスチレンが溶解する溶媒に該高分子化合物が溶解しない場合は、標準ポリエチレングリコール換算の数平均分子量)が500以上1000万以下であることが好ましく、3000以上100万以下であることがより好ましい。
【0035】
式(4)における2価の芳香族基Arが有していてもよい置換基としては、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいヒドロカルビル基、メルカプト基、メルカプトカルボニル基、メルカプトチオカルボニル基、置換基を有していてもよいヒドロカルビルチオ基、置換基を有していてもよいヒドロカルビルチオカルボニル基、置換基を有していてもよいヒドロカルビルジチオ基、ヒドロキシル基、置換基を有していてもよいヒドロカルビルオキシ基、カルボキシル基、置換基を有していてもよいヒドロカルビルカルボニル基、シアノ基、アミノ基、置換基を有していてもよいヒドロカルビルアミノ基、置換基を有していてもよいジヒドロカルビルアミノ基、ホスフィノ基、置換基を有していてもよいヒドロカルビルホスフィノ基、置換基を有していてもよいジヒドロカルビルホスフィノ基、置換基を有していてもよい1価の複素環基、ホルミル基、置換基を有していてもよいヒドロカルビルオキシカルボニル基、置換基を有していてもよいヒドロカルビルカルボニルオキシ基、ニトロ基、式:−OP(=O)(OH)
2で表される基、式:−P(=O)(OH)
2で表される基、カルバモイル基、置換基を有していてもよいヒドロカルビルカルバモイル基、置換基を有していてもよいジヒドロカルビルカルバモイル基、式:−C(=S)NR
2で表される基、式:−B(OH)
2で表される基、式:−BR
2で表される基、ホウ酸エステル残基、式:−Si(OR)
3で表される基、スルホ基、置換基を有していてもよいヒドロカルビルスルホ基、置換基を有していてもよいヒドロカルビルスルホニル基、スルフィノ基、置換基を有していてもよいヒドロカルビルスルフィノ基、式:−NRC(=O)ORで表される基、式:−NRC(=O)SRで表される基、式:−NRC(=S)ORで表される基、式:−NRC(=S)SRで表される基、式:−OC(=O)NR
2で表される基、式:−SC(=O)NR
2で表される基、式:−OC(=S)NR
2で表される基、式:−SC(=S)NR
2で表される基、式:−NRC(=O)NR
2で表される基、式:−NRC(=S)NR
2で表される基、2個以上のエーテル結合を有するヒドロカルビル基、2個以上のエステル結合を有するヒドロカルビル基、2個以上のアミド結合を有するヒドロカルビル基、式:−SMで表される基、式:−C(=O)SMで表される基、式:−CS
2Mで表される基、式:−OMで表される基、式:−CO
2Mで表される基、式:−NM
2で表される基、式:−NHMで表される基、式:−NRMで表される基、式:−PO
3Mで表される基、式:−OP(=O)(OM)
2で表される基、式:−P(=O)(OM)
2で表される基、式:−C(=O)NM
2で表される基、式:−C(=O)NHMで表される基、式:−C(=O)NRMで表される基、式:−C(=S)NHMで表される基、式:−C(=S)NRMで表される基、式:−C(=S)NM
2で表される基、式:−B(OM)
2で表される基、式:−BR
3Mで表される基、式:−B(OR)
3Mで表される基、式:−SO
3Mで表される基、式:−SO
2Mで表される基、式:−NRC(=O)OMで表される基、式:−NRC(=O)SMで表される基、式:−NRC(=S)OMで表される基、式:−NRC(=S)SMで表される基、式:−OC(=O)NM
2で表される基、式:−OC(=O)NRMで表される基、式:−OC(=S)NM
2で表される基、式:−OC(=S)NRMで表される基、式:−SC(=O)NM
2で表される基、式:−SC(=O)NRMで表される基、式:−SC(=S)NM
2で表される基、式:−SC(=S)NRMで表される基、式:−NRC(=O)NM
2で表される基、式:−NRC(=O)NRMで表される基、式:−NRC(=S)NM
2で表される基、式:−NRC(=S)NRMで表される基、式:−NR
3M’で表される基、式:−PR
3M’で表される基、式:−OR
2M’で表される基、式:−SR
2M’で表される基、式:−IRM’で表される基、及びカチオン化された窒素原子を複素環内に有する複素環基が挙げられる。
なお、Rは、水素原子又は置換基を有していてもよいヒドロカルビル基(例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基)を表し、Mは、金属カチオン又は置換基を有していてもよいアンモニウムカチオンを表し、M’は、アニオンを表す。)また、これらの置換基同士は結合して環を形成してもよい。
【0036】
前記の置換基のうち好ましい例としては、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいヒドロカルビル基、メルカプト基、置換基を有していてもよいヒドロカルビルチオ基、置換基を有していてもよいヒドロカルビルジチオ基、ヒドロキシル基、置換基を有していてもよいヒドロカルビルオキシ基、カルボキシル基、置換基を有していてもよいヒドロカルビルカルボニル基、シアノ基、アミノ基、置換基を有していてもよいヒドロカルビルアミノ基、置換基を有していてもよいジヒドロカルビルアミノ基、式:−OP(=O)(OH)
2で表される基、スルホ基、置換基を有していてもよい1価の複素環基、2個以上のエーテル結合を有するヒドロカルビル基、式:−CO
2Mで表される基、式:−PO
3Mで表される基、式:−SO
3Mで表される基、又は式:−NR
3M’で表される基が挙げられ、より好ましい例としては、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいヒドロカルビル基、メルカプト基、水酸基、カルボキシル基、シアノ基、アミノ基、式:−P(=O)(OH)
2で表される基、スルホ基、複素環基、2個以上のエーテル結合を有するヒドロカルビル基、式:−CO
2Mで表される基、式:−PO
3Mで表される基、式:−NR
3M’で表される基が挙げられ、更に好ましい例としては、置換基を有していてもよいヒドロカルビル基、メルカプト基、カルボキシル基、置換基を有していてもよいピリジル基、2個以上のエーテル結合を有するヒドロカルビル基、式:−CO
2Mで表される基が挙げられ、特に好ましい例としては2個以上のエーテル結合を有するヒドロカルビル基が挙げられる。
【0037】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられ、フッ素原子、塩素原子、臭素原子が好ましい。
【0038】
置換基を有していてもよいヒドロカルビル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ノニル基、ドデシル基、ペンタデシル基、オクタデシル基、ドコシル基等の炭素原子数1〜50のアルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、シクロノニル基、シクロドデシル基、ノルボニル基、アダマンチル基等の炭素原子数3〜50の環状飽和炭化水素基;エテニル基、プロペニル基、3−ブテニル基、2−ブテニル基、2−ペンテニル基、2−ヘキセニル基、2−ノネニル基、2−ドデセニル基等の炭素原子数2〜50のアルケニル基;フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、4−エチルフェニル基、4−プロピルフェニル基、4−イソプロピルフェニル基、4−ブチルフェニル基、4−tert−ブチルフェニル基、4−ヘキシルフェニル基、4−シクロヘキシルフェニル基、4−アダマンチルフェニル基、4−フェニルフェニル基等の炭素原子数6〜50のアリール基;フェニルメチル基、1−フェニレンエチル基、2−フェニルエチル基、1−フェニル−1−プロピル基、1−フェニル−2−プロピル基、2−フェニル−2−プロピル基、3−フェニル−1−プロピル基、4−フェニル−1−ブチル基、5−フェニル−1−ペンチル基、6−フェニル−1−ヘキシル基等の炭素原子数7〜50のアラルキル基が挙げられる。炭素原子数1〜50のアルキル基、炭素原子数6〜50のアリール基が好ましく、炭素原子数1〜12のアルキル基、炭素原子数6〜18のアリール基がより好ましく、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数6〜12のアリール基が更に好ましい。
【0039】
置換基を有していてもよいヒドロカルビルチオ基、置換基を有していてもよいヒドロカルビルチオカルボニル基、置換基を有していてもよいヒドロカルビルジチオ基、置換基を有していてもよいヒドロカルビルオキシ基、置換基を有していてもよいヒドロカルビルカルボニル基、置換基を有していてもよいヒドロカルビルオキシカルボニル基、及び置換基を有していてもよいヒドロカルビルカルボニルオキシ基とはそれぞれ、置換基を有していてもよいヒドロカルビル基とチオ基、チオカルボニル基、ジチオ基、オキシ基、カルボニル基、オキシカルボニル基、及びカルボニルオキシ基との組み合わせからなる基をいう。
【0040】
置換基を有していてもよいヒドロカルビルアミノ基、置換基を有していてもよいヒドロカルビルホスフィノ基、及び置換基を有していてもよいヒドロカルビルカルバモイル基とはそれぞれ、アミノ基、ホスフィノ基、及びカルバモイル基中の水素原子一個が置換基を有していてもよいヒドロカルビル基で置換された基をいう。
【0041】
置換基を有していてもよいジヒドロカルビルアミノ基、置換基を有していてもよいジヒドロカルビルホスフィノ基、及び置換基を有していてもよいジヒドロカルビルカルバモイル基とはそれぞれ、アミノ基、ホスフィノ基、及びカルバモイル基中の水素原子二個が置換基を有していてもよいヒドロカルビル基で置換された基をいう。
【0042】
式:−C(=S)NR
2で表される基、式:−BR
2で表される基及び式:−Si(OR)
3で表される基において、Rは前述のとおり水素原子又は前記ヒドロカルビル基であり、該ヒドロカルビル基の好ましい例は前述と同じである。
【0043】
ホウ酸エステル残基としては、以下の式で表される基が挙げられる。
【0045】
置換基を有していてもよいヒドロカルビルスルホ基及び置換基を有していてもよいヒドロカルビルスルフィノ基とはそれぞれ、スルホ基及びヒドロカルビルスルフィノ基中の水素原子一個が置換基を有していてもよいヒドロカルビル基で置換された基をいう。
置換基を有していてもよいヒドロカルビルスルホニル基とは、置換基を有していてもよいヒドロカルビル基とスルホニル基との組み合わせからなる基をいう。
【0046】
式:−NRC(=O)ORで表される基、式:−NRC(=O)SRで表される基、式:−NRC(=S)ORで表される基、式:−NRC(=S)SRで表される基、式:−OC(=O)NR
2で表される基、式:−SC(=O)NR
2で表される基、式:−OC(=S)NR
2で表される基、式:−SC(=S)NR
2で表される基、式:−NRC(=O)NR
2で表される基、及び式:−NRC(=S)NR
2で表される基において、Rは前述のとおり水素原子又は前記ヒドロカルビル基であり、該ヒドロカルビル基の好ましい例は前述と同じである。
【0047】
1価の複素環基は、置換基を有していてもよい複素環式化合物から水素原子を1個取り除いた残りの原子団である。複素環としては、ピリジン環、1,2−ジアジン環、1,3−ジアジン環、1,4−ジアジン環、1,3,5−トリアジン環、フラン環、ピロール環、チオフェン環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、オキサジアゾール環、チアジアゾール環、アザジアゾール環等の単環式複素環;単環式芳香環から選んだ2個以上の環が縮合した縮合多環式複素環;2個の複素環、又は1個の複素環と1個の芳香環とを、メチレン基、エチレン基、カルボニル基等の2価の基で橋かけした構造を有する有橋多環式芳香環等が挙げられ、ピリジン環、1,2−ジアジン環、1,3−ジアジン環、1,4−ジアジン環、1,3,5−トリアジン環が好ましく、ピリジン環、1,3,5−トリアジン環がより好ましい。
【0048】
2個以上のエーテル結合を有するヒドロカルビル基としては、以下の式で表される基が挙げられる。
【0049】
【化3】
(式中、R’は置換基を有していてもよいヒドロカーボンジイル基を示し、複数あるR’は同一でも異なっていてもよい。n
2は2以上の整数である。好ましくはR‘=−CH
2CH
2−であり、n
2は2〜5の整数である。)
【0050】
置換基を有していてもよいヒドロカーボンジイル基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、1,2−ブチレン基、1,3−ブチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ノナメチレン基、ドデカメチレン基、これらの基の中の少なくとも1個の水素原子を置換基で置換した基等の、置換基を有していてもよい炭素原子数1〜50の飽和ヒドロカーボンジイル基;エテニレン基、プロペニレン基、3−ブテニレン基、2−ブテニレン基、2−ペンテニレン基、2−ヘキセニレン基、2−ノネニレン基、2−ドデセニレン基、これらの基の中の少なくとも1個の水素原子を置換基で置換した基等の、置換基を有していてもよい炭素原子数2〜50のアルケニレン基、及び、エチニレン基を含む、置換基を有し又は有さない炭素原子数2〜50の不飽和ヒドロカーボンジイル基;シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロへキシレン基、シクロノニレン基、シクロドデシレン基、ノルボニレン基、アダマンチレン基、これらの基の中の少なくとも1個の水素原子を置換基で置換した基等の、置換基を有していてもよい炭素原子数3〜50の飽和環状ヒドロカーボンジイル基;1,3−フェニレン基、1,4−フェニレン基、1,4−ナフチレン基、1,5−ナフチレン基、2,6−ナフチレン基、ビフェニル−4,4’−ジイル基、これらの基の中の少なくとも1個の水素原子を置換基で置換した基等の、置換基を有していてもよい炭素原子数6〜50のアリーレン基が挙げられる。エーテル結合を有するヒドロカルビル基が複数ある場合は、これらの基同士は環を形成してもよい。
【0051】
2個以上のエステル結合を有するヒドロカルビル基としては、以下の式で表される基が挙げられる。
【0052】
【化4】
(式中、R’及びn
2は、前述と同様の意味である。)
【0053】
2個以上のアミド結合を有するヒドロカルビル基としては、以下の式で表される基が挙げられる。
【0054】
【化5】
(式中、R’及びn
2は、前述と同様の意味である。)
【0055】
Mで示される金属カチオンとしては、1価、2価又は3価の金属カチオンが好ましく、Li、Na、K、Cs、Be、Mg、Ca、Ba、Ag、Al、Bi、Cu、Fe、Ga、Mn、Pb、Sn、Ti、V、W、Y、Yb、Zn、Zr等由来の金属カチオンが挙げられ、Li、Na、K、又はCs由来の金属カチオンが好ましい。
【0056】
Mで示される置換基を有していてもよいアンモニウムカチオンにおいて置換基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基等の炭素原子数1〜10のアルキル基が挙げられる。
【0057】
Mを有する前記式で表される基には、該基全体の電荷が中和されるように、M以外の別の金属カチオンが伴ってもよく、また、アニオンが伴ってもよい。アニオンの具体例としては、後述のM’で示されるアニオンと同様のものが挙げられる。
【0058】
M’で示されるアニオンとしては、F
-、Cl
-、Br
-、I
-、OH
-、ClO
-、ClO
2-、ClO
3-、ClO
4-、SCN
-、CN
-、NO
3-、SO
42-、HSO
4-、PO
43-、HPO
42-、H
2PO
4-、BF
4-、PF
6-、CH
3SO
3-、CF
3SO
3-、[(CF
3SO
2)
2N]
-、テトラキス(イミダゾリル)ボレートアニオン、8−キノリノラトアニオン、2−メチル−8−キノリノラトアニオン、2−フェニル−8−キノリノラトアニオン等が挙げられる。
【0059】
Mで示される置換基を有していてもよいアンモニウムカチオンは、カチオン化された窒素原子を複素環内に有するアンモニウムカチオンを含み、具体例としては以下の式(n−1)〜(n−13)で表される複素環から水素原子を取り除いた残りの原子団が挙げられる。これらの複素環は、置換基を有していてもよい。置換基としては、Arについて上述したものが挙げられる。芳香環を主鎖に有する高分子化合物の合成が容易となるので、式(n−1)、(n−5)、(n−7)、(n−9)、(n−11)又は(n−13)で表される複素環が好ましく、式(n−1)、(n−5)、(n−11)又は(n−13)で表される複素環がより好ましく、式(n−1)、(n−5)又は(n−13)で表される複素環が更に好ましい。
【0060】
【化6】
(式中、R及びM’は上述のとおりである。)
【0061】
置換されているArの具体例としては、以下の式(a−1)〜(a−35)、(b−1)〜(b−39)、(c−1)〜(c−37)、(d−1)〜(d−47)、(e−1)〜(e−16)、(f−1)〜(f−35)、(g−1)〜(g−24)のいずれかで表される2価の芳香族基が挙げられる。これらの式中、n
3は2以上の整数を表し、2〜30の整数が好ましく、2〜20の整数がより好ましく、6〜10の整数が更に好ましい。n
4は1以上の整数を表し、1〜10の整数が好ましく、2〜6の整数がより好ましい。これらの式中、Rは水素原子又は置換基を有していてもよいヒドロカルビル基を表し、炭素原子数1〜6のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基がより好ましい。
【0070】
置換されているArとしては、式(a−1)〜(a−7)、(a−10)〜(a−19)、(a−21)〜(a−27)、(a−29)〜(a−35)、(b−1)〜(b−6)、(b−9)、(b−11)〜(b−16)、(b−22)、(b−31)〜(b−39)、(c−1)〜(c−15)、(c−17)、(c−20)〜(c−22)、(c−24)〜(c−27)、(c−29)、(c−30)〜(c−37)、(d−1)〜(d−6)、(d−9)、(d−11)〜(d−16)、(d−22)、(d−31)〜(d−39)、(d−41)〜(d−47)、(e−1)〜(e−3)、(e−5)〜(e−16)、(f−1)〜(f−6)、(f−9)、(f−11)〜(f−16)、(f−22)、(f−31)〜(f−35)、(g−1)〜(g−13)、(g−16)〜(g−24)で表される2価の芳香族基が好ましく、式(a−1)〜(a−3)、(a−5)、(a−7)、(a−10)、(a−12)、(a−14)〜(a−19)、(a−21)〜(a−27)、(a−29)〜(a−33)、(b−1)〜(b−6)、(b−9)、(b−11)、(b−13)、(b−15)、(b−16)、(b−22)、(b−34)〜(b−39)、(c−1)〜(c−15)、(c−17)、(c−20)〜(c−22)、(c−24)〜(c−27)、(c−29)〜(c−37)、(d−1)〜(d−6)、(d−9)、(d−11)、(d−13)、(d−15)、(d−16)、(d−22)、(d−31)〜(d−39)、(d−41)、(d−42)、(d−44)、(d−45)、(d−47)、(e−1)、(e−5)〜(e−8)、(e−11)、(e−12)、(e−15)、(e−16)、(f−1)〜(f−6)、(f−9)、(f−11)、(f−13)、(f−15)、(f−16)、(f−22)、(f−31)、(f−34)、(f−35)、(g−1)〜(g−3)、(g−6)〜(g−13)、(g−16)〜(g−24)で表される2価の芳香族基がより好ましく、式(a−1)、(a−3)、(a−7)、(a−10)、(a−14)、(a−15)、(a−17)、(a−19)、(a−22)、(a−23)、(a−25)〜(a−27)、(a−30)、(a−31)、(b−1)、(b−2)、(b−5)、(b−6)、(b−9)、(b−11)、(b−13)、(b−22)、(b−34)〜(b−39)、(c−1)〜(c−4)、(c−13)(c−15)、(c−20)〜(c−22)、(c−25)〜(c−27)、(c−33)〜(c−36)、(d−1)、(d−2)、(d−5)、(d−6)、(d−9)、(d−11)、(d−13)、(d−22)、(d−31)〜(d−38)、(d−41)、(d−42)、(d−44)、(d−45)、(d−47)、(e−1)、(e−5)、(e−7)、(e−8)、(e−11)、(e−12)、(e−15)、(e−16)、(f−1)、(f−2)、(f−5)、(f−6)、(f−9)、(f−11)、(f−13)、(f−22)、(f−31)、(f−34)、(f−35)、(g−1)〜(g−3)、(g−6)、(g−7)、(g−9)〜(g−13)、(g−18)〜(g−21)で表される2価の芳香族基が更に好ましく、式(a−3)、(a−14)、(a−22)、(a−17)、(a−25)、(a−30)、(a−31)、(b−6)、(b−22)、(b−34)〜(b−37)、(b−39)、(c−1)〜(c−4)、(c−15)、(c−22)、(c−27)、(c−33)〜(c−36)、(d−6)、(d−22)、(d−34)〜(d−38)、(d−41)、(d−42)、(d−44)、(d−45)、(e−1)、(e−5)、(e−8)、(e−12)、(e−15)、(f−6)、(f−34)、(g−2)、(g−6)、(g−7)、(g−10)〜(g−12)、(g−18)〜(g−21)で表される2価の芳香族基が特に好ましく、式(b−6)、(b−34)、(b−35)、(b−37)、(c−1)〜(c−4)、(c−33)〜(c−36)、(d−6)、(d−34)、(d−36)〜(d−38)、(d−41)、(d−42)、(d−44)、(d−45)、(f−6)、(f−34)、(g−2)、(g−10)〜(g−12)で表される2価の芳香族基がとりわけ好ましく、式(b−6)、(b−34)、(b−37)、(c−1)〜(c−4)、(d−38)、(d−41)又は(d−42)で表される2価の芳香族基が殊更に好ましい。
【0071】
本発明において、ナノマテリアルの表面に有機物を吸着させる方法としては、該ナノマテリアルの分散液に該有機物を混合し、得られた混合物を攪拌する方法が例示できる。この方法を実施した結果、ナノマテリアルに吸着しない該有機物が残存した場合でもそれを取り除く必要は必ずしもなく、最終的に本発明の組成物にナノマテリアルに吸着しない該有機物が混入してもよい。
【0072】
本発明の組成物におけるナノマテリアルの含有量は0.001重量%以上であるが、0.01重量%以上であることが好ましく、0.1重量%以上であることがより好ましく、1重量%以上であることがさらに好ましい。前記含有量が0.001重量%未満では、ナノマテリアルの含有量が少なすぎてナノマテリアル含有層の形成が困難になる場合がある。該含有量の上限は、得られる組成物の塗布性の観点から、99重量%以下であることが好ましく、95重量%以下であることがより好ましく、90重量%以下であることが更に好ましく、80重量%以下であることが特に好ましく、60重量%以下であることがとりわけ好ましく、15重量%以下であることが殊更好ましい。
【0073】
本発明のナノマテリアル組成物は、室温(25℃)において流動性を有することが好ましい。即ち、室温での該組成物の粘度は、好ましくは10
4Pa・s以下であり、より好ましくは100Pa・s以下であり、更に好ましくは10Pa・s以下である。
【0074】
[ナノマテリアル含有層の形成方法]
本発明のナノマテリアル含有層は、本発明のナノマテリアル組成物を基材に塗布することにより形成される。
【0075】
本発明の組成物を塗布する方法としては、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイヤーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェット印刷法、キャピラリ−コート法、ノズルコート法等が挙げられる。これらの方法によって形成された膜は、適宜、乾燥及び熱処理などの後処理に供される。
【0076】
前記基材を構成する材料は特に限定されない。ただし、-OCH
2CH
2-で表される構造を有する有機物はフッ素化アルコールに溶けやすいため、そのような有機物を含む基材に本発明の組成物を塗布すると、架橋などの非溶解化処理を該基材に施していない限り、該基材は侵されるか、消失するか、ナノマテリアル含有層と一体化する場合がある。このような有機物を含まない基材の上であれば、本発明の方法によりナノマテリアル含有層を良好に形成させることができる。
【0077】
本発明の形成方法を用いて得たナノマテリアル含有層は、後述の積層構造体及び有機電子素子のほか、発熱体、電磁波遮断フィルム、アンテナ、集積回路、帯電防止材等に用いることができる。
【0078】
[積層構造体]
本発明の積層構造体は、上記の形成方法を用いて得たナノマテリアル含有層を含む。該積層構造体としては、例えば、後述する有機電子素子中に含まれる積層構造体が挙げられる。
【0079】
[有機電子素子]
本発明の有機電子素子は、上記の形成方法を用いて得たナノマテリアル含有層を含む。該有機電子素子としては、例えば、有機エレクトロルミネッセンス素子等の発光素子、有機トランジスタ、太陽電池等の光電変換素子等が挙げられる。
【0080】
前記発光素子は、陽極及び陰極からなる電極と、該電極間に設けられた発光層とを含む積層構造体である。この発光素子は、正孔注入層、電子注入層、正孔輸送層、電子輸送層等を更に有していてもよい。これらのうち、陽極及び陰極は、ナノマテリアル含有層として、本発明の形成方法によって形成することができる。これらの電極は、ナノマテリアルを含み、ナノマテリアルの表面に有機物が吸着してる場合は該有機物も含む。
【0081】
前記有機トランジスタは、ソース電極と、ドレイン電極と、絶縁されたゲート電極とを含む積層構造体である。この有機トランジスタは、半導体層等を更に有していてもよい。これらのうち、ソース電極、ドレイン電極及びゲート電極は、ナノマテリアル含有層として、本発明の形成方法によって形成することができる。これらの電極は、ナノマテリアルを含み、ナノマテリアルの表面に有機物が吸着している場合は該有機物も含む。
【0082】
前記光電変換素子は、陽極及び陰極からなる電極と、該電極間に設けられた正孔輸送層と、電子輸送層又は電荷分離層とを含む積層構造体である。これらのうち、陽極、陰極、及び電荷分離層は、ナノマテリアル含有層として、本発明の形成方法によって形成することができる。これらの電極及び電荷分離層は、ナノマテリアルを含み、ナノマテリアルの表面に有機物が吸着している場合は該有機物も含む。
【実施例】
【0083】
<実施例1>
エチレングリコール1Lをフラスコに入れ、乾燥させた空気をバブリングさせながら、150℃に加熱して、2時間攪拌した。空気のバブリングを止め、フラスコ内を窒素気流下にして、塩化銅(II)二水和物の1mMエチレングリコール溶液(予め窒素でバブリングしたもの)48mLを加え、15分間150℃で攪拌した。その後、ポリビニルピロリドン(重量平均分子量55000、シグマアルドリッチジャパン(株)製)の16.7g/Lエチレングリコール溶液(予め窒素でバブリングしたもの)450mLを加えて混合し、反応液が150℃に戻るのを待ってから、硝酸銀の100mMエチレングリコール溶液(予め窒素でバブリングし、100℃に加熱したもの)450mLを滴下した。その後、150℃でさらに2時間攪拌した後、反応液を室温まで冷却した。該反応液の一部を取り出して5〜10倍体積量のアセトンに滴下して沈殿を生成した。デカンテーションにより沈殿を取り出し、少量のメタノールに分散させて再度5〜10倍体積量のアセトンに滴下して沈殿を生成した。この操作(即ち、沈殿の取り出し、メタノール中での分散、及び沈殿の生成)を3回繰り返し、銀のナノワイヤーを得た。走査型電子顕微鏡により、このナノワイヤーは、太さ(d)が0.05〜0.15nmで、長さ(l)が数μm〜数10μmであることが確認された。各ナノワイヤーにおいて、長軸方向の各点における短軸方向の寸法の最大値と最小値との比は1.3以下であった。l/dには分布があった。
【0084】
銀のナノワイヤーを沈殿物として取り出し、乾燥させることなく、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロ−1−ペンタノール(OFP、沸点140−141℃、引火点75℃)に入れたところ、銀のナノワイヤーは分散し、銀のナノワイヤーを1.3重量%の濃度で含むOFP分散液を調製することができた。この液を用いてガラス基板の上にスプレー塗布を行った。塗布直後から乾燥するのが目視で確認でき、5秒以内で乾燥した。これによって、銀のナノワイヤーを含む層を形成できた。これを光学式顕微鏡で観察し、均一な塗布ができていることを確認した。結果を
図1に示す。
【0085】
<比較例1>
実施例1において、OFPのかわりにペンタノール(沸点137℃、引火点43℃)を用いた以外は、実施例1と同じ方法でスプレー塗布を行った。塗布直後、塗布面は濡れたままであり、空気気流下に置くと、乾燥するまで5分かかった。これによって銀のナノワイヤーを含む層は形成できたが、これを光学式顕微鏡で観察したところ不均一であった。結果を
図2に示す。
【0086】
<合成例1>(高分子化合物P−3の合成)
2,7−ジブロモ−9−フルオレノン52.5g(0.16mol)、サリチル酸エチル154.8g(0.93mol)及びメルカプト酢酸1.4g(0.016mol)を容量3000mLのフラスコに入れ、窒素ガスで置換した。該フラスコに、メタンスルホン酸(630mL)を添加し、得られた混合物を75℃で終夜撹拌した。得られた混合物を放冷し、氷水に添加して1時間撹拌した。生じた固体をろ別し、加熱したアセトニトリルで洗浄した。洗浄した固体をアセトンに溶解させ、得られたアセトン溶液から固体を再結晶させて、ろ別した。得られた固体(62.7g)、3,6,9−トリオキサデシルオキシ−p−トルエンスルホネート86.3g(0.27mmol)、炭酸カリウム62.6g(0.45mmol)及び1,4,7,10,13,16−ヘキサオキサシクロオクタデカン(「18−クラウン−6」と呼ばれることもある。) 7.2g(0.027mol)をN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)(670mL)に溶解させ、得られた溶液をフラスコに移して105℃で終夜撹拌した。得られた混合物を室温まで放冷し、フラスコに氷水を加え、1時間撹拌した。反応液にクロロホルム(300mL)を加えて分液抽出を行い、得られたクロロホルム溶液を濃縮することで、下記式で表される化合物B(51.2g)を得た。収率は31%であった。
【0087】
【化15】
【0088】
アルゴンガス置換した容量1000mLのフラスコに、化合物B(15g)、ビス(ピナコラート)ジボロン(8.9g)、[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)ジクロロメタン錯体(0.8g)、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン(0.5g)、酢酸カリウム(9.4g)及びジオキサン(400mL)を入れて混合し、110℃に加熱して、10時間加熱還流させた。放冷後、反応液をろ過し、ろ液を減圧濃縮した。反応混合物をメタノールで3回洗浄した。沈殿物をトルエンに溶解させ、溶液に活性炭を加えて攪拌した。その後、ろ過を行い、ろ液を減圧濃縮することで、下記式で表される化合物D(11.7g)を得た。
【0089】
【化16】
【0090】
アルゴンガス置換した容量100mLのフラスコに、化合物B(0.55g)、化合物D(0.61g)、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0.01g)、メチルトリオクチルアンモニウムクロライド(シグマアルドリッチジャパン(株)製、商品名Aliquat336(登録商標))(0.20g)及びトルエン(10mL)を入れて混合し、105℃に加熱した。この温度に反応液を維持しながら、該反応液に2M炭酸ナトリウム水溶液(6mL)を滴下し、8時間還流させた。得られた反応液に4−tert−ブチルフェニルボロン酸(0.01g)を加え、さらに6時間還流させた。その後、ジエチルジチアカルバミン酸ナトリウム水溶液(10mL、濃度:0.05g/mL)を加え、室温にて2時間撹拌した。得られた混合溶液を、室温下のメタノール300mL中に滴下し、次いで1時間攪拌した後、析出した沈殿をろ過して2時間減圧乾燥させ、テトラヒドロフラン20mLに溶解させた。得られた溶液をメタノール120mL、3重量%酢酸水溶液50mLの混合溶媒中に滴下し、次いで1時間攪拌した後、析出した沈殿をろ過し、テトラヒドロフラン20mLに溶解させた。こうして得られた溶液をメタノール200mLに滴下し、次いで30分攪拌した後、析出した沈殿をろ過により固体として得た。得られた固体をテトラヒドロフランに溶解させ、アルミナカラム、シリカゲルカラムを通すことにより精製した。カラムから回収したテトラヒドロフラン溶液を濃縮した後、メタノール(200mL)に滴下し、固体を析出させた。析出した固体をろ取し、乾燥することにより、高分子化合物(以下、「高分子化合物P−3」という)を520mg得た。
【0091】
1H−NMRの測定結果から、高分子化合物P−3は下記式で表される構造を有することが確認された。
【0092】
【化17】
【0093】
高分子化合物P−3のGPCで測定されたポリスチレン換算の数平均分子量は5.2×10
4であった。なお、上記式中のnは該数平均分子量と式中の構造単位の式量から66と決定された。
【0094】
<合成例2>(高分子化合物P−4の合成)
合成例1で得られた高分子化合物P−3(200mg)を容量100mLのフラスコに入れ、窒素ガスで置換した。テトラヒドロフラン(20mL)及びエタノール(20mL)を添加し、それらの混合物を55℃に昇温した。そこに、水酸化セシウム(200mg)を水(2mL)に溶解させた水溶液を添加し、55℃で6時間撹拌した。得られた混合物を室温まで冷却した後、反応溶媒を減圧留去した。生じた固体を水で洗浄し、減圧乾燥させることにより、下記式:
【0095】
【化18】
で表される構造を有する高分子化合物(以下、「高分子化合物P−4」という)を150mg得た。
1H−NMRスペクトルにより、高分子化合物P−3内に存在したエチルエステル部位のエチル基由来のシグナルが完全に消失していることを確認した。なお、上記式中、nは66である。
【0096】
<実施例2>
高分子化合物P−4を17mgとり、OFP1.05gに溶解させ、高分子化合物P−4のOFP溶液を作成した。
【0097】
上記の銀のナノワイヤーのOFP分散液9.06gと上記の高分子化合物P−4のOFP溶液1.05gを混合し、塗布溶液を作製した。このときの組成は、銀のナノワイヤーが1.7重量%で高分子化合物P−4が0.17重量%であった。この塗布溶液を用いてドロップキャスト及びエアーブラシで銀ナノワイヤーを含む層膜を形成できた。
【0098】
<実施例3>
ITOナノ粒子のイソプロパノール分散液(シグマアルドリッチジャパン(株)製、Indium tin oxi nanoparticles dispersion)69.1mgを減圧乾固させ、ITOナノ粒子を取り出し、OFP62mgに加えたところ、ITOナノ粒子は分散し、分散液を得ることができた。
【0099】
<実施例4>
ITOナノ粒子(シグマアルドリッチジャパン(株)製、Indium-tin oxide nanopowder)0.6mgを、OFP94.5mgに加えたところ、ITOナノ粒子は分散し、分散液を得ることができた。
【0100】
<実施例5>
銀ナノ粒子の水分散液(シグマアルドリッチジャパン(株)製、Silver nanoparticles, ~157 nm particle size, 0.25 mM in H
2O, contains citrate as stabilizer)0.55gを減圧乾固させ、銀ナノ粒子を取り出し、OFP102.5mgに加えたところ、銀ナノ粒子は分散し、分散液を得ることができた。
【0101】
<実施例6>
銅・銀合金ナノ粒子(シグマアルドリッチジャパン(株)製、Silver-copper alloy nanopowder, <100 nm particle size)1.1mgをOFP0.75mgに加えたところ、銅・銀合金ナノ粒子は分散し、分散液を得ることができた。
【0102】
<実施例7>
500mLフラスコに、2.08g(18.75mol)のポリピニルピロリドン(以下、「PVP」と言う。)(ポリスチレン換算の重量平均分子量:55000)及び200mLのエチレングリコールを加え、PVPが溶けるまで撹拌を行った。次いで、そこに、2.12g(12.50mmol)の硝酸銀を加え、50mLのエチレングリコールでフラスコ壁面に付着した硝酸銀をフラスコ内に流し込んだ。次いで、このフラスコを、165℃のオイルバスに浸漬し、120分間撹拌したところ、銀粒子の分散液が得られた。得られた分散液を40℃まで冷却した後、遠心分離し、沈殿物を取得した。取得した沈殿物を乾燥し、銀ナノ粒子を得た。この銀ナノ粒子9.4mgをOFP159.5mgに加えたところ銀ナノ粒子は分散し、分散液を得ることができた。