【実施例】
【0034】
以下、実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
イオン注入剥離法によって、直径300mmのSOI基板(SOI層厚300nm、BOX層厚150nm、ベースウエーハ775μm)を作製した。
剥離直後のSOI基板の表面には、目視にてブリスター不良が数個観察された。
そこで、このブリスターの発生原因を調査するため、下記の手順によってブリスター部分の貼り合わせ面(ベースウエーハ表面)を分析した(
図1〜5参照)。
【0035】
(1)測定ウエーハ1のブリスター2のある部分の座標を算出し(
図1(a))、測定ウエーハをウエーハホルダー3に固定した(
図1(b))。
(2)TOF−SIMS装置(アルバックファイ社製TRIFT II)のロードロック室5内から引き出したロッド部4にウエーハホルダー3を固定し(
図2(a))、ウエーハホルダー3をロードロック室5内に挿入後、真空に引いた。この時点でブリスター2は破裂した(
図2(b))。
(3)ロードロック室5内が真空になったら、ゲートバルブ7を開けてウエーハホルダー3を分析室6へ移動し(
図3(a))、ウエーハホルダー3をステージ8に受け渡した(
図3(b))。
(4)ウエーハホルダー3を分析室6へ移動後、前記算出したブリスターの座標を元に、ステージ8を回転させて分析部分(ブリスター破裂部のベースウエーハ表面)9を分析エリア10内へ移動した(
図4)。
(5)分析部分9に照射ビーム(Gaイオン)が当たるように調整し、測定面から発生する二次イオンを分析した(測定時間10分。分析エリア40μm×40μm)。
【0036】
尚、照射ビームの調整は、以下のように行った。
モニター画像内に分析対象物9が入ったら(
図5(a))、ジョイスティックを使用して、モニター画面の端に分析対象物9を移動させる。移動させたら、連続ビーム設定にして、ビームを表面に5−10秒照射する。四角い枠のようにサンプル表面の有機物が除去されてラスター部分がわかる(
図5(b))。その場所がビームの当たる位置なので、その部分に分析対象物9を移動させ(
図5(c))、パルスモードにビームを切り替えて分析を開始。
【0037】
上記分析の結果、ブリスター部分の貼り合わせ面には有機物が検出され、その有機物の組成は、貼り合わせ前のベースウエーハを保管していたウエーハ収納容器のガスケットの可塑剤から発生した有機物汚染であることが推定された。
【0038】
(比較例1)
実施例1と同一の貼り合わせ基板を用い、実施例1における分析を行う前にブリスター部分を赤外線顕微鏡にて観察した。その結果、ブリスター部分にはパーティクルなどの異物は全く観察されず、ブリスターの発生原因が特定できなかった。
【0039】
(実施例2)
化合物半導体からなる発光素子製造用の貼り合わせ基板(厚さ200μmのGaPからなる支持基板上に、GaP/AlGaInPからなるエピタキシャル層50μmを貼り合せた構造)を常法により作製した。
その貼り合わせ基板の表面には、目視にてブリスター不良が数個観察された。
そこで、このブリスターの発生原因を調査するため、下記の手順によってエピタキシャル層側の貼り合わせ面を分析した。
【0040】
(1)貼り合わせ基板表面の色により、薄膜であるエピタキシャル層側を識別した。
(2)エピタキシャル面を上側にして、実体顕微鏡のステージに置いた。
(3)実体顕微鏡を覗きながら、ブリスター部分のエピタキシャル層を、ダイヤモンドペンを用いて割らないように切り取った。
(4)切り取ったエピタキシャル層の貼り合わせ面側をレーザー顕微鏡及びSEMにて観察した。
【0041】
切り取ったエピタキシャル層の貼り合わせ面側には白く曇った部分(面粗れ部分)が見られたので、レーザー顕微鏡により観察すると、基板の面方位を反映した突起が多数検出された。その突起の一部の高さを測定したところ82nmであった。すなわち、この突起がブリスターの発生原因と考えられるため、さらにその部分を走査型電子顕微鏡にて観察し、突起部分をEDX(Energy Dispersive X−ray Spectrometer;エネルギー分散型X線分光分析)より元素分析を行った。
【0042】
上記分析の結果、突起部分には酸素が多く検出されたことにより、貼り合わせ前に突起部分が既に酸化していたと考えられる。これより、GaP/AlGaInPからなるエピタキシャル層を形成するためのGaAs基板のエピ成長前洗浄時にピットが発生したか、エピ成長後、GaAs基板をエッチング除去する際にエッチングがうまくできずに残渣として残ったものと推定された。
【0043】
(比較例2)
実施例2と同一の貼り合わせ基板を用い、実施例2で分析したブリスター部分以外のブリスター部分を赤外線顕微鏡にて観察した。その結果、赤外線顕微鏡の分解能が低いため、実施例2で検出された白く曇った部分は検出されず、ブリスターの発生原因が特定できなかった。
【0044】
尚、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。