特許第5861459号(P5861459)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5861459タイヤトレッド用共役ジエン系ゴム組成物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5861459
(24)【登録日】2016年1月8日
(45)【発行日】2016年2月16日
(54)【発明の名称】タイヤトレッド用共役ジエン系ゴム組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 15/00 20060101AFI20160202BHJP
   C08L 83/04 20060101ALI20160202BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20160202BHJP
   C08C 19/25 20060101ALI20160202BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20160202BHJP
【FI】
   C08L15/00
   C08L83/04
   C08K3/36
   C08C19/25
   B60C1/00 A
【請求項の数】7
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2011-290201(P2011-290201)
(22)【出願日】2011年12月29日
(65)【公開番号】特開2013-139504(P2013-139504A)
(43)【公開日】2013年7月18日
【審査請求日】2014年8月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】とこしえ特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】倉本 直明
(72)【発明者】
【氏名】伊東 和哉
【審査官】 上前 明梨
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−155935(JP,A)
【文献】 特開2009−091498(JP,A)
【文献】 特開2010−126656(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/105362(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00−101/14
C08K 3/00−13/08
C08C 19/00−19/44
C08F 6/00−246/00
C08F 301/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも共役ジエン単量体(ただし、共役ジエン単量体がイソプレンである場合を除く)を、不活性溶媒中で重合開始剤を用いて重合させることにより得られる活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖を含有する溶液と、
(A)1分子中に、上記活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖の活性末端と反応しうる反応点を6以上有するケイ素化合物とを混合し、カップリング重合体を生成させるカップリング工程、および
(B)1分子中に、上記活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖の活性末端と反応しうる官能基を3〜200個有するポリオルガノシロキサンとを混合し、変性重合体を生成させる変性工程と、
を含んでなる、カップリング重合体および変性重合体の混合物を含むタイヤトレッド用共役ジエン系ゴム組成物の製造方法であって、
上記カップリング工程で用いる上記ケイ素化合物が下記一般式(1)で表される化合物であり、
上記活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖の、ゲルパーミエーションクロマトグラフィにより検出されるピークトップ分子量が200,000以上300,000未満であり、
上記カップリング重合体および変性重合体の混合物の、ゲルパーミエーションクロマトグラフィにより検出される分子量の最も小さいピークのピークトップ分子量の2.5倍以上のピークトップ分子量を有するピーク部分の、全溶出面積に対する面積比が25〜35%であることを特徴とする、タイヤトレッド用共役ジエン系ゴム組成物の製造方法。
SiL−A−SiL・・・(1)
(一般式(1)中、LおよびLは、それぞれ独立して、ハロゲン原子または炭素数1〜20のアルコキシル基であり、複数あるLまたはLは、同一であってもよいし、または異なっていてもよい。Aは、化学的単結合、炭素数1〜20のポリメチレン基((CH(kは1〜20の整数である。))、炭素数6〜20のアリーレン基、または炭素数5〜20のシクロアルキレン基である。)
【請求項2】
上記カップリング重合体および変性重合体の混合物のムーニー粘度(ML1+4,100℃)が35〜75であることを特徴とする、請求項1記載のタイヤトレッド用共役ジエン系ゴム組成物の製造方法。
【請求項3】
上記カップリング重合体および変性重合体の混合物の、共役ジエン単量体単位部分におけるビニル結合含有量が25重量%以下である請求項1または2に記載のタイヤトレッド用共役ジエン系ゴム組成物の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法により得られたタイヤトレッド用共役ジエン系ゴム組成物中のゴム成分100重量部に対し、シリカ10〜200重量部を配合する工程を備えるタイヤトレッド用シリカ含有共役ジエン系ゴム組成物の製造方法
【請求項5】
さらに、架橋剤を配合する工程を備える、請求項に記載のタイヤトレッド用シリカ含有共役ジエン系ゴム組成物の製造方法
【請求項6】
請求項に記載の製造方法により得られたタイヤトレッド用シリカ含有共役ジエン系ゴム組成物を架橋する工程を備えるタイヤトレッド用ゴム架橋物の製造方法
【請求項7】
請求項に記載の製造方法により得られたタイヤトレッド用ゴム架橋物をトレッド部位に用いるタイヤの製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤトレッド用共役ジエン系ゴム組成物の製造方法に関し、さらに詳しくは、低発熱性に優れたタイヤを与える、貯蔵安定性が良いタイヤトレッド用共役ジエン系ゴム組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題や資源問題から、自動車用のタイヤにも低発熱性が強く求められている。シリカを配合したゴム組成物から得られるタイヤは、通常使用されるカーボンブラックを配合したゴム組成物から得られるタイヤに比べて低発熱性に優れるため、これを用いることにより低燃費なタイヤを製造することができる。しかし、通常使用されているゴムをシリカと配合しても、シリカとの親和性が劣るため分離しやすく、未架橋ゴム組成物の加工性が劣り、得られるタイヤの低発熱性が不十分となり、種々のシランカップリング剤を添加して改良することが多い。しかしながら、シランカップリング剤を併用すると、スコーチが発生し、ゴム組成物の加工性が悪化したり、シランカップリング剤が高価であるため、配合量が多くなると製造コストが高くなるという問題があった。
【0003】
このような問題を解決するために、変性剤を反応させることにより、ゴム自体にシリカとの親和性を持たせる技術が検討されている。例えば、特許文献1には、活性末端を有する重合体鎖に、高分岐のカップリング剤と、変性剤として特定のポリオルガノシロキサン、またはアルコキシシラン化合物とを反応させることにより、シリカとの親和性を改良する技術が開示されている。しかしながら、特許文献1に記載の技術では、製造条件によっては、得られる共役ジエン重合体組成物の貯蔵安定性、およびその架橋物の低発熱性が、近年における要求に対して共に不十分となる場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−91498号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような事情に鑑み、低発熱性に優れたタイヤを与える、貯蔵安定性が良いタイヤトレッド用共役ジエン系ゴム組成物の製造方法を提供することを目的とする。さらに、本発明は、上記製造方法により得られるタイヤトレッド用共役ジエン系ゴム組成物、およびその架橋物、ならびにそのゴム架橋物をタイヤトレッドに用いてなるタイヤを提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、上記目的を達成するために鋭意研究した結果、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖と、(A)特定のケイ素化合物とを反応させ、カップリング重合体を生成させるカップリング工程、および(B)特定のポリオルガノシロキサンとを反応させ、変性重合体を生成させる変性工程と、を含んでなる、カップリング重合体および変性重合体の混合物を含むタイヤトレッド用共役ジエン系ゴム組成物の製造方法であって、上記活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖の、ゲルパーミエーションクロマトグラフィにより検出されるピークトップ分子量が特定範囲であり、上記カップリング重合体および変性重合体の混合物の、3分岐以上の重合体鎖の割合が特定範囲であることを特徴とする、タイヤトレッド用共役ジエン系ゴム組成物の製造方法により、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
すなわち、本発明によれば、少なくとも共役ジエン単量体を、不活性溶媒中で重合開始剤を用いて重合させることにより得られる活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖を含有する溶液と、(A)1分子中に、上記活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖の活性末端と反応しうる反応点を6以上有するケイ素化合物とを混合し、カップリング重合体を生成させるカップリング工程、および(B)1分子中に、上記活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖の活性末端と反応しうる官能基を3〜200個有するポリオルガノシロキサンとを混合し、変性重合体を生成させる変性工程と、を含んでなる、カップリング重合体および変性重合体の混合物を含むタイヤトレッド用共役ジエン系ゴム組成物の製造方法であって、上記活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖の、ゲルパーミエーションクロマトグラフィにより検出されるピークトップ分子量が200,000以上300,000未満であり、上記カップリング重合体および変性重合体の混合物の、ゲルパーミエーションクロマトグラフィにより検出される分子量の最も小さいピークのピークトップ分子量の2.5倍以上のピークトップ分子量を有するピーク部分の、全溶出面積に対する面積比が25〜35%であることを特徴とする、タイヤトレッド用共役ジエン系ゴム組成物の製造方法が提供される。
【0008】
好ましくは、上記カップリング重合体および変性重合体の混合物のムーニー粘度(ML1+4,100℃)が35〜75である。
【0009】
また、本発明によれば、上記製造方法により得られたタイヤトレッド用共役ジエン系ゴム組成物が提供される。
【0010】
好ましくは、上記タイヤトレッド用共役ジエン系ゴム組成物は、タイヤトレッド用共役ジエン系ゴム組成物中のゴム成分100重量部に対し、シリカ10〜200重量部を含有する。
【0011】
また、好ましくは、上記タイヤトレッド用共役ジエン系ゴム組成物は、さらに、架橋剤を含有する。
【0012】
また、本発明によれば、上記タイヤトレッド用共役ジエン系ゴム組成物を架橋してなるタイヤトレッド用ゴム架橋物が提供される。
【0013】
また、本発明によれば、上記タイヤトレッド用ゴム架橋物をトレッド部位に用いてなるタイヤが提供される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、低発熱性に優れたタイヤを与える、貯蔵安定性が良いタイヤトレッド用共役ジエン系ゴム組成物、およびその架橋物、ならびにそのゴム架橋物をタイヤトレッドに用いてなるタイヤを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<タイヤトレッド用共役ジエン系ゴム組成物の製造方法>
本発明のタイヤトレッド用共役ジエン系ゴム組成物の製造方法は、少なくとも共役ジエン単量体を、不活性溶媒中で重合開始剤を用いて重合させることにより得られる活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖を含有する溶液と、(A)1分子中に、上記活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖の活性末端と反応しうる反応点を6以上有するケイ素化合物とを混合し、カップリング重合体を生成させるカップリング工程、および(B)1分子中に、上記活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖の活性末端と反応しうる官能基を3〜200個有するポリオルガノシロキサンとを混合し、変性重合体を生成させる変性工程と、を含んでなる、カップリング重合体および変性重合体の混合物を含むタイヤトレッド用共役ジエン系ゴム組成物の製造方法であって、上記活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖の、ゲルパーミエーションクロマトグラフィにより検出されるピークトップ分子量が200,000以上300,000未満であり、上記カップリング重合体および変性重合体の混合物の、ゲルパーミエーションクロマトグラフィにより検出される分子量の最も小さいピークのピークトップ分子量の2.5倍以上のピークトップ分子量を有するピーク部分の、全溶出面積に対する面積比が25〜35%とするものである。
【0016】
(活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖)
本発明のタイヤトレッド用共役ジエン系ゴム組成物の製造方法では、まず、少なくとも共役ジエン単量体を、不活性溶媒中で重合開始剤を用いて重合させることにより、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖を含有する溶液を得る。
【0017】
本発明で用いられる共役ジエン単量体としては、特に限定されないが、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン(2−メチル−1,3−ブタジエン)、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−クロロ−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエンなどを用いることができる。これらの中でも、1,3−ブタジエン、イソプレンが好ましく、1,3−ブタジエンがより好ましい。これらの共役ジエン単量体は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0018】
本発明のタイヤトレッド用共役ジエン系ゴム組成物の製造方法では、共役ジエン単量体に加えて、芳香族ビニル単量体を含有するものであってもよい。芳香族ビニル単量体としては、特に限定されないが、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、2−エチルスチレン、3−エチルスチレン、4−エチルスチレン、2,4−ジイソプロピルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、4−t−ブチルスチレン、5−t−ブチル−2−メチルスチレン、ビニルナフタレン、ジメチルアミノメチルスチレン、ジメチルアミノエチルスチレンなどを用いることができる。これらの中でも、スチレン、α−メチルスチレン、4−メチルスチレンが好ましく、スチレンがより好ましい。これらの芳香族ビニル単量体は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0019】
本発明で用いられる活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖は、共役ジエン単量体の単独重合体鎖、または共役ジエン単量体と芳香族ビニル単量体との共重合体鎖であることが好ましく、最終的に得られるタイヤがより低発熱性に優れるといった観点より、共役ジエン単量体の単独重合体鎖であることがより好ましい。共役ジエン系重合体鎖は、共役ジエン単量体単位50〜100重量%を含むものが好ましく、60〜100重量%を含むものがより好ましく、70〜100重量%を含むものが特に好ましく、また、芳香族ビニル単量体単位50〜0重量%を含むものが好ましく、40〜0重量%を含むものがより好ましく、30〜0重量%を含むものが特に好ましい。
【0020】
本発明のタイヤトレッド用共役ジエン系ゴム組成物の製造方法では、所期の目的を損なわない範囲において、所望により、共役ジエン単量体、および芳香族ビニル単量体以外の他の単量体を含有するものであってもよい。他の単量体としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのα,β−不飽和ニトリル;アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸などの不飽和カルボン酸または酸無水物;メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチルなどの不飽和カルボン酸エステル;1,5−ヘキサジエン、1,6−ヘプタジエン、1,7−オクタジエン、ジシクロペンタジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネンなどの非共役ジエン;などを挙げることができる。これらの単量体は、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖中に、単量体単位として、10重量%以下とするのが好ましく、5重量%以下とするのがより好ましい。
【0021】
上記単量体の重合に用いられる不活性溶媒としては、溶液重合において通常使用されるものであって、重合反応を阻害しないものであれば、特に制限なく使用できる。その具体例としては、例えば、ブタン、ペンタン、ヘキサン、2−ブテンなどの脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロへキサン、シクロヘキセンなどの脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;などが挙げられる。不活性溶媒の使用量は、単量体濃度が、通常、1〜50重量%であり、好ましくは10〜40重量%である。
【0022】
上記単量体の重合に用いられる重合開始剤としては、これらの単量体を重合させて、活性末端を有する重合体鎖を与えることができるものであれば、特に限定されないが、例えば、有機アルカリ金属化合物、および有機アルカリ土類金属化合物、ならびにランタン系列金属化合物などを主触媒とする重合開始剤が好ましく使用される。有機アルカリ金属化合物の具体例としては、例えば、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム、ヘキシルリチウム、フェニルリチウム、およびスチルベンリチウムなどの有機モノリチウム化合物;ジリチオメタン、1,4−ジリチオブタン、1,4−ジリチオ−2−エチルシクロヘキサン、1,3,5−トリリチオベンゼン、および1,3,5−トリス(リチオメチル)ベンゼンなどの有機多価リチウム化合物;ナトリウムナフタレンなどの有機ナトリウム化合物;カリウムナフタレンなどの有機カリウム化合物;などが挙げられる。また、有機アルカリ土類金属化合物としては、ジ−n−ブチルマグネシウム、ジ−n−ヘキシルマグネシウム、ジエトキシカルシウム、ジステアリン酸カルシウム、ジ−t−ブトキシストロンチウム、ジエトキシバリウム、ジイソプロポキシバリウム、ジエチルメルカプトバリウム、ジ−t−ブトキシバリウム、ジフェノキシバリウム、ジエチルアミノバリウム、ジステアリン酸バリウム、およびジケチルバリウムなどが挙げられる。ランタン系列金属化合物を主触媒とする重合開始剤としては、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウムおよびガドリニウムなどのランタン系列金属と、カルボン酸、およびリン含有有機酸などとからなるランタン系列金属の塩を主触媒とし、これと、アルキルアルミニウム化合物、有機アルミニウムハイドライド化合物、および有機アルミニウムハライド化合物などの助触媒とからなる重合開始剤などが挙げられる。これらの重合開始剤の中でも、有機モノリチウム化合物、および有機多価リチウム化合物が好ましく、有機モノリチウム化合物がより好ましく、n−ブチルリチウムが特に好ましい。なお、有機アルカリ金属化合物は、予め、ジブチルアミン、ジヘキシルアミン、ジベンジルアミン、ピロリジン、ヘキサメチレンイミン、およびヘプタメチレンイミン(好ましくは、ピロリジン、ヘキサメチレンイミン、およびヘプタメチレンイミン)などの第2級アミンと反応させて、有機アルカリ金属アミド化合物として使用してもよい。これらの重合開始剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0023】
重合開始剤の使用量は、目的とする分子量に応じて決定すればよいが、単量体1000g当り、通常、1〜50ミリモル、好ましくは2〜20ミリモル、より好ましくは4〜15ミリモルの範囲である。
【0024】
上記単量体を重合するに際し、重合温度は、通常、−80〜+150℃、好ましくは0〜100℃、より好ましくは30〜90℃の範囲である。重合様式としては、回分式、連続式などいずれの様式をも採用できるが、共役ジエン単量体と芳香族ビニル単量体とを共重合させる場合は、共役ジエン単量体単位と芳香族ビニル単量体単位との結合のランダム性を制御しやすい点で、回分式が好ましい。
【0025】
活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖が共役ジエン単量体単位と芳香族ビニル単量体単位とを有する場合、共役ジエン単量体単位と芳香族ビニル単量体単位との結合様式は、例えば、ブロック状、テーパー状、ランダム状など種々の結合様式とすることができるが、ランダム状の結合様式であることが好ましい。ランダム状にすることにより、最終的に得られるタイヤの低発熱性が優れたものとなる。
【0026】
活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖における共役ジエン単量体単位中のビニル結合含有量を調節するために、重合に際し、不活性有機溶媒に極性化合物を添加することが好ましい。極性化合物としては、ジブチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル化合物;テトラメチルエチレンジアミンなどの第三級アミン;アルカリ金属アルコキシド;ホスフィン化合物;などが挙げられる。これらの中でも、エーテル化合物、および第三級アミンが好ましく、第三級アミンがより好ましく、テトラメチルエチレンジアミンが特に好ましい。これらの極性化合物は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。極性化合物の使用量は、目的とするビニル結合含有量に応じて決定すればよく、重合開始剤1モルに対して、通常、0.001〜100モル、好ましくは0.005〜50モル、より好ましくは0.01〜30モルの範囲である。極性化合物の使用量が上記範囲にあると、共役ジエン単量体単位中のビニル結合含有量の調節が容易であり、かつ重合開始剤の失活による不具合も発生し難い。
【0027】
本発明で用いられる活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖の、ゲルパーミエーションクロマトグラフィにより検出されるピークトップ分子量は、200,000以上、300,000未満であり、210,000以上〜280,000未満であることが好ましく、220,000以上〜260,000未満であることがより好ましい。なお、本発明において、ピークトップ分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィにより検出され、ポリスチレン換算分子量として求めるものとする。また、共役ジエン系重合体鎖のピークが複数認められる場合は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィにより検出される共役ジエン系重合体鎖に由来する、分子量の最も小さいピークのピークトップ分子量を、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖のピークトップ分子量とする。活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖のピークトップ分子量が上記範囲にあると、最終的に得られるタイヤの低発熱性が優れたものとなる。
【0028】
本発明で用いられる活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)で表わされる分子量分布は、好ましくは1.0〜1.5、より好ましくは1.0〜1.4、特に好ましくは1.0〜1.3である。この分子量分布の値(Mw/Mn)が上記範囲にあると、最終的に得られるタイヤの低発熱性が優れたものとなる。
【0029】
(カップリング工程:カップリング重合体の生成)
本発明のタイヤトレッド用共役ジエン系ゴム組成物の製造方法では、上述のようにして得られる活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖を含有する溶液と、1分子中に、上記活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖の活性末端と反応しうる反応点を6以上有するケイ素化合物(以下、単に「カップリング剤」ともいう。)とを混合し、カップリング重合体を生成させるカップリング工程を有する。このような高分岐カップリング剤を用いたカップリング工程を有することにより、高分岐なカップリング重合体を生成させることができ、その結果、得られる共役ジエン系ゴム組成物の貯蔵安定性が優れ、また、最終的に得られるタイヤは、機械的特性に優れたものとなる。
【0030】
カップリング工程で用いられるカップリング剤としては、1分子中に、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖の活性末端と反応しうる反応点を6以上有するケイ素化合物であり、1分子中に、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖の活性末端と反応しうる反応点を6〜9個有するケイ素化合物がより好ましく、1分子中に、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖の活性末端と反応しうる反応点を6個有するケイ素化合物がさらに好ましく、具体的には、下記一般式(1)で表されるケイ素化合物が特に好ましい。ケイ素化合物中の反応点の個数が少なすぎると、得られるカップリング重合体の分岐の度合いが不十分となり、その結果、得られる共役ジエン系ゴム組成物の貯蔵安定性が劣る可能性があり、一方、ケイ素化合物中の反応点の個数が多すぎると、反応中の重合溶液の粘度が高くなりすぎ、共役ジエン系ゴム組成物の製造が困難となるおそれがある。活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖の活性末端と反応しうる反応点としては、共役ジエン系重合体鎖の活性末端と反応できるものであれば特に限定されないが、例えば、ケイ素原子と結合している、ハロゲン原子やアルコキシル基などが挙げられる。
【0031】
SiL−A−SiL・・・(1)
(一般式(1)中、LおよびLは、それぞれ独立して、ハロゲン原子または炭素数1〜20のアルコキシル基であり、複数あるLまたはLは、同一であってもよいし、または異なっていてもよい。Aは、化学的単結合、炭素数1〜20のポリメチレン基((CH(kは1〜20の整数である。))、炭素数6〜20のアリーレン基、または炭素数5〜20のシクロアルキレン基である。)
【0032】
上記一般式(1)で表されるケイ素化合物のうち、Aは、炭素数1〜20のポリメチレン基((CH(kは1〜20の整数である。))であることが好ましく、このうち、kが1〜10の整数であることがより好ましく、kが1〜6の整数であることが特に好ましい。
【0033】
上記一般式(1)で表されるLおよびLのいずれもハロゲン原子であるときは、上記一般式(1)で表されるケイ素化合物はハロゲン化ケイ素化合物である。ハロゲン化ケイ素化合物において、LおよびLは、塩素原子であることがより好ましい。一方、上記一般式(1)で表されるLおよびLがいずれも炭素数1〜20のアルコキシル基であるときは、上記一般式(1)で表されるケイ素化合物はアルコキシシラン化合物である。アルコキシシラン化合物において、LおよびLは、炭素数1〜10のアルコキシル基であることが好ましく、炭素数1〜6のアルコキシル基であることがより好ましく、反応性の観点から、メトキシ基またはエトキシ基であることが特に好ましい。
【0034】
上記一般式(1)で表されるハロゲン化ケイ素化合物の具体例としては、ヘキサクロロジシラン、ビス(トリクロロシリル)メタン、1,2−ビス(トリクロロシリル)エタン、1,3−ビス(トリクロロシリル)プロパン、1,4−ビス(トリクロロシリル)ブタン、1,5−ビス(トリクロロシリル)ペンタン、および1,6−ビス(トリクロロシリル)ヘキサンなどが挙げられる。これらの中でも、1,6−ビス(トリクロロシリル)ヘキサンが好ましい。
【0035】
上記一般式(1)で表されるアルコキシシラン化合物の具体例としては、ヘキサメトキシジシラン、ヘキサエトキシジシラン、ビス(トリメトキシシリル)メタン、ビス(トリエトキシシリル)メタン、ビス(トリメトキシシリル)エタン、ビス(トリエトキシシリル)エタン、ビス(トリメトキシシリル)プロパン、ビス(トリエトキシシリル)プロパン、ビス(トリメトキシシリル)ブタン、ビス(トリエトキシシリル)ブタン、ビス(トリメトキシシリル)ペンタン、ビス(トリエトキシシリル)ペンタン、ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、ビス(トリエトキシシリル)ヘキサン、ビス(トリメトキシシリル)ベンゼン、ビス(トリエトキシシリル)ベンゼン、ビス(トリメトキシシリル)シクロヘキサン、ビス(トリエトキシシリル)シクロヘキサン、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)エタン、およびビス(3−トリエトキシシリルプロピル)エタンなどを示すことができる。これらの中でも、ビス(トリメトキシシリル)ヘキサンが好ましい。
【0036】
カップリング剤としてのその他の例としては、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)メチルアミン、およびトリス(トリメトキシシリルメチル)アミンなどを挙げることができる。これらのカップリング剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0037】
カップリング剤の使用量は、後述するカップリング率の範囲に合わせて調製するが、重合反応に使用した重合開始剤1モルに対して、共役ジエン系重合体鎖の活性末端と反応するカップリング剤の反応点のモル量が、通常、0.1〜0.35モルであり、好ましくは0.2〜0.3モルである。カップリング剤の使用量が上記範囲にあると、得られる共役ジエン系ゴム組成物の貯蔵安定性が優れ、また、最終的に得られるタイヤは、低発熱性に優れたものとなる。
【0038】
(変性工程:変性重合体の生成)
本発明のタイヤトレッド用共役ジエン系ゴム組成物の製造方法では、上述したカップリング工程の他に、上述のようにして得られる活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖を含有する溶液と、1分子中に、上記活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖の活性末端と反応しうる官能基を3〜200個有するポリオルガノシロキサン(以下、単に「変性剤」ともいう。)とを混合し、変性重合体を生成させる変性工程を有する。このようなポリオルガノシロキサンを用いた変性工程を有することにより、シリカとの親和性が向上した変性重合体を生成させることができ、その結果、最終的に得られるタイヤは、低発熱性に優れたものとなる。
【0039】
変性工程で用いられる変性剤としては、1分子中に、上記活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖の活性末端と反応しうる官能基を3〜200個有するポリオルガノシロキサンである。官能基の個数は、ポリオルガノシロキサン1分子中に、好ましくは20〜150個、より好ましくは30〜120個である。ポリオルガノシロキサン1分子中の官能基の個数が少なすぎると、得られる変性重合体は、シリカとの親和性が不十分となり、その結果、最終的に得られるタイヤは低発熱性が劣る可能性があり、一方、ポリオルガノシロキサン1分子中の官能基の個数が多すぎると、反応中の重合溶液の粘度が高くなりすぎ、共役ジエン系ゴム組成物の製造が困難となるおそれがある。共役ジエン系重合体鎖の活性末端と反応しうる官能基としては、共役ジエン系重合体鎖の活性末端と反応できるものであれば特に限定されないが、例えば、エポキシ基、アルコキシル基、ピロリドニル基、アリロキシル基、カルボニル基、イソシアネート基、ビニル基、およびハロゲン原子などが挙げられる。これらの中でも、シリカとの親和性に優れるという観点より、エポキシ基、アルコキシル基、およびピロリドニル基が好ましい。
【0040】
1分子中に、上記活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖の活性末端と反応しうる官能基を3〜200個有するポリオルガノシロキサンとしては、具体的には、下記一般式(2)で表されるポリオルガノシロキサンが好ましい。下記一般式(2)で示されるポリオルガノシロキサンを用いることにより、シリカとの親和性が向上した変性重合体を生成させることができ、その結果、最終的に得られるタイヤは、低発熱性に優れたものとなる。
【0041】
【化1】
(上記一般式(2)中、R〜Rは、それぞれ独立して、炭素数1〜6のアルキル基、または炭素数6〜12のアリール基である。XおよびXは、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖の活性末端と反応しうる官能基、または炭素数1〜6のアルキル基もしくは炭素数6〜12のアリール基であり、XおよびXは互いに同一であっても相違していてもよい。Xは、それぞれ独立して、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖の活性末端と反応しうる官能基である。Xは、2〜20のアルキレングリコールの繰返し単位を含有する基であり、Xの一部は2〜20のアルキレングリコールの繰返し単位を含有する基から導かれる基であってもよい。mは3〜200の整数、nは0〜200の整数、kは0〜200の整数である。)
【0042】
〜R、X、およびXを構成する炭素数1〜6のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、およびシクロヘキシル基などが挙げられる。炭素数6〜12のアリール基としては、例えば、フェニル基、およびメチルフェニル基などが挙げられる。これらのなかでも、ポリオルガノシロキサン自体の製造容易性の観点から、メチル基が好ましい。
【0043】
、X、およびXを構成する、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖の活性末端と反応しうる官能基としては、炭素数1〜5のアルコキシル基、2−ピロリドニル基を含有する炭化水素基、およびエポキシ基を含有する炭素数4〜12の基が好ましい。
【0044】
炭素数1〜5のアルコキシル基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、およびブトキシ基などが挙げられる。これらの中でも、反応性の観点から、メトキシ基が好ましい。
【0045】
2−ピロリドニル基を含有する炭化水素基としては、例えば、一般式(3)で表される。
【0046】
【化2】
(上記一般式(3)中、jは2〜10の整数であり、2であることが好ましい。)
【0047】
エポキシ基を含有する炭素数4〜12の基は、例えば、一般式(4)で表される。
−Z−Z−E・・・(4)
(上記一般式(4)中、Zは、炭素数1〜10のアルキレン基、またはアルキルアリーレン基であり、Zはメチレン基、硫黄原子、または酸素原子であり、Eはエポキシ基を有する炭素数2〜10の炭化水素基である。これらの中でも、Zが酸素原子であるものが好ましく、Zが酸素原子であり、かつ、Eがグリシジル基であるものがより好ましく、Zが炭素数3のアルキレン基であり、Zが酸素原子であり、かつ、Eがグリシジル基であるものが特に好ましい。
【0048】
一般式(2)で表されるポリオルガノシロキサンにおいて、R〜Rとしては、上記の中でも、炭素数1〜6のアルキル基であることが好ましく、XおよびXとしては、上記の中でも、炭素数1〜6のアルキル基であることが好ましく、Xとしては、上記の中でも、エポキシ基を含有する炭素数4〜12の基であることが好ましい。
【0049】
一般式(2)で表されるポリオルガノシロキサンにおいて、X、すなわち2〜20のアルキレングリコールの繰返し単位を含有する基としては、例えば、下記一般式(5)で表される。
【化3】
(上記一般式(5)中、tは2〜20の整数であり、Pは炭素数2〜10のアルキレン基またはアルキルアリーレン基であり、Rは水素原子またはメチル基であり、Qは炭素数1〜10のアルコキシル基またはアリーロキシ基である。これらの中でも、tが2〜8の整数であり、Pが炭素数3のアルキレン基であり、Rが水素原子であり、かつQがメトキシ基であるものが好ましい。
【0050】
一般式(2)で表されるポリオルガノシロキサンにおいて、mは3〜200、好ましくは20〜150、より好ましくは30〜120の整数である。
【0051】
一般式(2)で表されるポリオルガノシロキサンにおいて、nは0〜200、好ましくは0〜150、より好ましくは0〜120の整数である。kは0〜200、好ましくは0〜150、より好ましくは0〜120の整数である。m、n、およびkの合計数は、3〜400であることが好ましく、3〜300であることがより好ましく、3〜250であることが特に好ましい。これらの数が多すぎると、反応中の重合溶液の粘度が高くなりすぎ、共役ジエン系ゴム組成物の製造が困難となるおそれがある。
【0052】
変性剤の使用量は、後述するカップリング率の範囲に合わせて調製するが、重合反応に使用した重合開始剤1モルに対して、共役ジエン系重合体鎖の活性末端と反応しうる変性剤中の官能基のモル量が、通常、0.01〜0.9モルであり、好ましくは0.05〜0.8モル、より好ましくは0.1〜0.5モルである。変性剤の使用量が上記範囲にあると、得られる共役ジエン系ゴム組成物の貯蔵安定性が優れ、また、最終的に得られるタイヤは、低発熱性に優れたものとなる。これらの変性剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0053】
本発明の製造方法においては、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖を含有する溶液と、カップリング剤および変性剤とを混合する方法としては、特に限定されないが、カップリング反応および変性反応を良好に制御する観点より、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖を含有する溶液に、カップリング剤および変性剤を添加する方法が好ましい。その際、カップリング剤および変性剤は、不活性溶媒に溶解して重合系内に添加することが好ましい。その溶液濃度は、1〜50重量%の範囲とすることが好ましい。
【0054】
活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖を含有する溶液に、カップリング剤や変性剤を添加する時期は特に限定されないが、重合反応が完結しておらず活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖を含有する溶液が単量体をも含有している状態、より具体的には、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖を含有する溶液が、100ppm以上(より好ましくは300〜50,000ppm)の単量体を含有している状態で、該溶液にカップリング剤や変性剤を添加することが好ましい。カップリング剤や変性剤の添加をこのように行なうことにより、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖と重合系中に含まれる不純物等との副反応を抑制して、反応を良好に制御することが可能となる。
【0055】
カップリング剤、および変性剤を反応させるときの条件としては、反応温度が、通常、0〜100℃、好ましくは30〜90℃の範囲であり、それぞれの反応時間が、通常、1分〜120分、好ましくは2分〜60分の範囲である。
【0056】
本発明の製造方法においては、カップリング重合体を生成させるカップリング工程(A)と、変性重合体を生成させる変性工程(B)との順序は特に限定されず、どちらか一方の工程を先に行っても良いし、または同時に行っても良いが、カップリング重合体を生成させるカップリング工程(A)を、変性重合体を生成させる変性工程(B)より先に行うことが好ましい。このような順序で行なうことにより、共役ジエン系ゴム組成物中にカップリング重合体を確実に含有させることが可能となり、目的とする共役ジエン系ゴム組成物が得やすくなる。
【0057】
本発明の製造方法においては、カップリング工程(A)および変性工程(B)の前後において、本発明の効果を阻害しない範囲で、上述したカップリング剤および変性剤以外の共役ジエン系重合体鎖の活性末端と反応することができる公知の重合末端修飾剤を重合系内に添加してもよい。
【0058】
本発明の製造方法においては、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖に、カップリング剤や変性剤を反応させた後は、所望により、例えば、メタノール、イソプロパノールなどのアルコールや水を添加して反応を停止すれば、カップリング重合体および変性重合体の混合物を含む共役ジエン系ゴム組成物を含有する溶液を得ることができる。次いで、所望により、老化防止剤、クラム化剤、スケール防止剤などを重合溶液に添加した後、直接乾燥やスチームストリッピングにより溶媒を分離して、目的とする共役ジエン系ゴム組成物を回収する。
【0059】
本発明の製造方法により得られるタイヤトレッド用共役ジエン系ゴム組成物は、そのゴム組成物中に含まれるカップリング重合体および変性重合体の混合物の、ゲルパーミエーションクロマトグラフィにより検出される分子量の最も小さいピークのピークトップ分子量の2.5倍以上のピークトップ分子量を有するピーク部分の、全溶出面積に対する面積比(以下、「カップリング率」ともいう。)が25〜35%である。ここで、「カップリング重合体および変性重合体の混合物の、ゲルパーミエーションクロマトグラフィにより検出される分子量の最も小さいピーク」とは、「カップリング重合体および変性重合体の混合物に含まれる重合体の中で、分子量の最も小さい重合体に由来するピーク」を指す。カップリング率が上記範囲にあると、得られる共役ジエン系ゴム組成物は、フローしにくくなり、貯蔵安定性に優れる。また、最終的に得られるタイヤは、低発熱性に優れたものとなる。なお、本発明の製造方法において、カップリング率とは、カップリング重合体および変性重合体の混合物の中で、3以上の共役ジエン系重合体鎖が反応後のカップリング剤および/または変性剤の残部を介して結合された構造体の割合(重量分率)を指す。これは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(ポリスチレン換算)により測定することができる。
【0060】
本発明の製造方法により得られるタイヤトレッド用共役ジエン系ゴム組成物中のカップリング重合体および変性重合体の混合物の重量平均分子量は、特に限定されないが、ポリスチレン換算のゲルパーミエーションクロマトグラフィで測定される値として、好ましくは200,000〜800,000、より好ましくは300,000〜700,000の範囲である。カップリング重合体および変性重合体の混合物の重量平均分子量を上記範囲とすることにより、最終的に得られるタイヤは、低発熱性に優れたものとなる。
【0061】
また、本発明の製造方法により得られるタイヤトレッド用共役ジエン系ゴム組成物中のカップリング重合体および変性重合体の混合物の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)で表わされる分子量分布も、特に限定されないが、好ましくは1.1〜5.0、特に好ましくは1.2〜3.0である。カップリング重合体および変性重合体の混合物の分子量分布を上記範囲とすることにより、最終的に得られるタイヤは、低発熱性に優れたものとなる。
【0062】
また、本発明の製造方法により得られるタイヤトレッド用共役ジエン系ゴム組成物中のカップリング重合体および変性重合体の混合物のムーニー粘度(ML1+4,100℃)も、特に限定されないが、好ましくは30〜75の範囲である。カップリング重合体および変性重合体の混合物のムーニー粘度を上記範囲とすることにより、得られる共役ジエン系ゴム組成物の加工性が優れたものとなる。
【0063】
また、本発明の製造方法により得られるタイヤトレッド用共役ジエン系ゴム組成物中のカップリング重合体および変性重合体の混合物の共役ジエン単量体単位部分におけるビニル結合含有量は、好ましくは50重量%以下であり、より好ましくは25重量%以下である。ビニル結合量を上記範囲とすることにより、最終的に得られるタイヤは、低発熱性に優れたものとなる。
【0064】
<タイヤトレッド用共役ジエン系ゴム組成物>
本発明のタイヤトレッド用共役ジエン系ゴム組成物は、上述した本発明の製造方法により得られる。
【0065】
本発明の製造方法により得られるタイヤトレッド用共役ジエン系ゴム組成物には、その他のゴムを配合してもよい。その他のゴムとしては、特に限定されないが、例えば、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、乳化重合スチレン−ブタジエン共重合ゴム、溶液重合スチレン−ブタジエン共重合ゴム、ポリブタジエンゴム(1,2−ポリブタジエン重合体からなる結晶繊維を含むポリブタジエンゴムであってもよい)、スチレン−イソプレン共重合ゴム、ブタジエン−イソプレン共重合ゴム、スチレン−イソプレン−ブタジエン共重合ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、およびアクリロニトリル−スチレン−ブタジエン共重合ゴムなどのうち、本発明の製造方法により得られるカップリング重合体および変性重合体の混合物以外のものをいう。これらの中でも、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、ポリブタジエンゴム、および溶液重合スチレン−ブタジエン共重合ゴムが好ましい。これらのゴムは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0066】
本発明の製造方法により得られるタイヤトレッド用共役ジエン系ゴム組成物において、本発明の製造方法により得られるカップリング重合体および変性重合体の混合物は、タイヤトレッド用共役ジエン系ゴム組成物のゴム成分中、10〜100重量%を占めることが好ましく、20〜100重量%を占めることがより好ましく、50〜100重量%を占めることが特に好ましい。本発明の製造方法により得られるカップリング重合体および変性重合体の混合物の割合が上記範囲にあると、最終的に得られるタイヤは、機械的特性のバランスに優れたものとなる。
【0067】
本発明の製造方法により得られるタイヤトレッド用共役ジエン系ゴム組成物は、充填剤、および架橋剤などの配合剤を添加した上で、種々の用途に好適に用いることができる。これらの中でも、充填剤としてシリカを配合した場合に、最終的に得られるタイヤは、低発熱性に優れたものとなる。
【0068】
本発明の製造方法により得られるタイヤトレッド用共役ジエン系ゴム組成物は、タイヤトレッド用共役ジエン系ゴム組成物中のゴム成分100重量部に対し、シリカ10〜200重量部を含有することが好ましく、20〜150重量部を含有することがより好ましく、30〜120重量部を含有することが特に好ましい。シリカの含有量がこの範囲にあると、最終的に得られるタイヤは、低発熱性が特に良好となる。
【0069】
シリカとしては、特に限定されないが、例えば、乾式法ホワイトカーボン、湿式法ホワイトカーボン、コロイダルシリカ、および沈降シリカなどが挙げられる。これらの中でも、含水ケイ酸を主成分とする湿式法ホワイトカーボンが好ましい。また、カーボンブラック表面にシリカを担持させたカーボン−シリカデュアル・フェイズ・フィラーを用いてもよい。これらのシリカは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0070】
用いるシリカの窒素吸着比表面積(ASTM D3037−81に準じBET法で測定される)は、好ましくは50〜300m/g、より好ましくは80〜220m/g、特に好ましくは100〜170m/gである。シリカの窒素吸着比表面積がこの範囲にあると、最終的に得られるタイヤは、低発熱性が特に良好となる。また、シリカのpHは、pH7未満であることが好ましく、pH5〜6.9であることがより好ましい。
【0071】
タイヤの低発熱性をさらに改良する観点より、本発明の製造方法により得られるタイヤトレッド用共役ジエン系ゴム組成物には、さらにシランカップリング剤を配合することが好ましい。シランカップリング剤としては、特に限定されないが、例えば、ビニルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−オクタチオ−1−プロピル−トリエトキシシラン、ビス(3−(トリエトキシシリル)プロピル)ジスルフィド、ビス(3−(トリエトキシシリル)プロピル)テトラスルフィド、γ−トリメトキシシリルプロピルジメチルチオカルバミルテトラスルフィド、およびγ−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアジルテトラスルフィドなどを挙げることができる。これらの中でも、混練時のスコーチを避ける観点より、1分子中に含有される硫黄が4個以下のものが好ましい。これらのシランカップリング剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。シランカップリング剤の配合量は、シリカ100重量部に対し、好ましくは0.1〜30重量部、より好ましくは1〜15重量部である。
【0072】
本発明の製造方法により得られるタイヤトレッド用共役ジエン系ゴム組成物には、さらに、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、チャンネルブラック、およびグラファイトなどのカーボンブラックを配合してもよい。カーボンブラックを用いる場合、ファーネスブラックを用いることが好ましく、その具体例としては、SAF、ISAF、ISAF−HS、ISAF−LS、IISAF−HS、HAF、HAF−HS、HAF−LS、T−HS、T−NS、MAF、N234、およびFEFなどが挙げられる。これらのカーボンブラックは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。カーボンブラックの配合量は、タイヤトレッド用共役ジエン系ゴム組成物中のゴム成分100重量部に対し、通常、120重量部以下であり、シリカとカーボンブラックとの合計量は、タイヤトレッド用共役ジエン系ゴム組成物中のゴム成分100重量部に対し、10〜200重量部が好ましく、20〜150重量部がより好ましく、30〜120重量部が特に好ましい。
【0073】
カーボンブラックの窒素吸着比表面積(NSA)は、好ましくは5〜200m/g、より好ましくは20〜150m/g、特に好ましくは40〜130m/gであり、ジブチルフタレート(DBP)吸着量は、好ましくは5〜200ml/100g、より好ましくは50〜160ml/100g、特に好ましくは70〜130ml/100gである。カーボンブラックの窒素吸着比表面積がこの範囲にあると、最終的に得られるタイヤは、機械的強度が特に良好となる。
【0074】
タイヤトレッド用共役ジエン系ゴム組成物に、シリカ、およびカーボンブラックなどの充填剤を添加する方法は特に限定されず、固形ゴムに対して添加して混練する方法(乾式混練法)、およびゴムの溶液に添加して凝固・乾燥させる方法(湿式混練法)などを適用することができる。
【0075】
本発明の製造方法により得られるタイヤトレッド用共役ジエン系ゴム組成物は、さらに、架橋剤を含有することが好ましい。架橋剤としては、特に限定されないが、例えば、硫黄、ハロゲン化硫黄、有機過酸化物、キノンジオキシム類、有機多価アミン化合物、およびメチロール基を有するアルキルフェノール樹脂などが挙げられる。これらの中でも、硫黄が好ましく使用される。架橋剤の配合量は、タイヤトレッド用共役ジエン系ゴム組成物中のゴム成分100重量部に対し、好ましくは0.1〜15重量部、より好ましくは0.5〜5重量部、特に好ましくは1〜4重量部である。架橋剤の配合量が上記範囲にあると、架橋が十分に行われ、得られるゴム架橋物の機械的特性が優れたものとなる。
【0076】
架橋剤として、硫黄、または含硫黄化合物を用いる場合には、架橋促進剤、および架橋活性化剤を併用することが好ましい。架橋促進剤としては、例えば、スルフェンアミド系;グアニジン系;チオウレア系;チアゾール系;チウラム系;ジチオカルバミン酸塩系;キサントゲン酸系;などの各架橋促進剤を挙げることができる。これらの中でも、スルフェンアミド系架橋促進剤を含むものが好ましい。これらの架橋促進剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。架橋促進剤の配合量は、タイヤトレッド用共役ジエン系ゴム組成物中のゴム成分100重量部に対し、好ましくは0.1〜15重量部、より好ましくは0.5〜10重量部、特に好ましくは1〜5重量部である。
【0077】
架橋活性化剤としては、例えば、酸化亜鉛;ステアリン酸などの高級脂肪酸;などが挙げられる。これらの架橋活性化剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。架橋活性化剤の配合量は、タイヤトレッド用共役ジエン系ゴム組成物中のゴム成分100重量部に対し、好ましくは0.05〜20重量部、より好ましくは0.5〜15重量部である。架橋促進剤、および架橋活性化剤の配合量が上記範囲にあると、架橋が十分に行われ、得られるゴム架橋物の機械的特性が優れたものとなる。
【0078】
本発明の製造方法により得られるタイヤトレッド用共役ジエン系ゴム組成物には、上述の成分以外に、老化防止剤;スコーチ防止剤;活性剤;プロセス油;可塑剤;滑剤;充填剤(上述した、シリカ、およびカーボンブラックを除く);粘着付与剤;などの、ゴム加工分野において通常使用される配合剤を、配合目的に応じて、適宜配合できる。
【0079】
タイヤトレッド用共役ジエン系ゴム組成物中への各成分の混合方法は、常法に従って各成分を混練すればよい。例えば、架橋剤、および架橋促進剤を除く配合剤と、ゴム組成物中のゴム成分とを混練後、その混練物に、架橋剤、および架橋促進剤を混合して目的のゴム組成物を得ることができる。架橋剤、および架橋促進剤を除く配合剤と、ゴム成分との混練温度は、好ましくは80〜200℃、より好ましくは100〜180℃であり、その混練時間は、好ましくは30秒〜30分である。混練物と、架橋剤、および架橋促進剤との混合は、通常、100℃以下、好ましくは80℃以下まで冷却後に行われる。
【0080】
<タイヤトレッド用ゴム架橋物>
本発明のタイヤトレッド用ゴム架橋物は、本発明の製造方法により得られるタイヤトレッド用共役ジエン系ゴム組成物を架橋してなる。タイヤトレッド用共役ジエン系ゴム組成物の架橋および成形方法は、特に限定されず、架橋物の形状、大きさなどに応じて選択すればよい。金型中に、架橋剤を配合したゴム組成物を充填して加熱することにより成形と同時に架橋してもよく、架橋剤を配合したゴム組成物を予め成形した後、それを加熱して架橋してもよい。成形時の温度は、好ましくは20〜140℃、より好ましくは40〜130℃である。架橋温度は、好ましくは120〜200℃、より好ましくは140〜180℃であり、架橋時間は、通常、1〜120分である。
【0081】
本発明のタイヤトレッド用ゴム架橋物は、低発熱性に特に優れるので、タイヤ、特に低燃費タイヤのトレッド部位に好適に用いられる。
【実施例】
【0082】
以下に、実施例、および比較例を挙げて、本発明についてより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、各例中の「部」、および「%」は、特に断りのない限り、重量基準である。
【0083】
各特性については、以下の方法に従って評価した。
〔重量平均分子量、分子量分布、ピークトップ分子量、およびカップリング率〕
ゲルパーミエーションクロマトグラフィにより、ポリスチレン換算分子量として求めた。ゲルパーミエーションクロマトグラフィの具体的な測定条件は、以下の通りである。
測定器 :HLC−8020(東ソー社製)
カラム :GMH−HR−H(東ソー社製)を二本を直列に連結した。
検出器 :示差屈折計RI−8020(東ソー社製)
溶離液 :テトラヒドロフラン
カラム温度:40℃
カップリング率については、得られたチャートより、全溶出面積に対する、分子量の最も小さい重合体に由来するピークが示すピークトップ分子量の2.5倍以上のピークトップ分子量を有するピーク部分の面積比を、共役ジエン系重合体鎖の3分岐以上のカップリング率として示した。
〔ビニル結合含有量〕
H−NMRにより測定した。
〔ムーニー粘度〕
JIS K6300に従い、ムーニー粘度計(島津製作所社製)を用いて測定した。
〔貯蔵安定性〕
共役ジエン系ゴム組成物を直径25mm、厚さ2mmに成形した試験片を、ARES−G2(ティーエーインツルメント社製)を用い、温度130℃、せん断歪み2%の条件で周波数0.03Hzにおけるtanδを測定した。この数値が1.00よりも小さいと、貯蔵安定性に優れる。
〔低発熱性〕
長さ50mm、幅10mm、厚さ2mmに成形、および架橋した試験片(ゴム架橋物)を、Eplexor500N(GABO社製)を用い、伸張歪み0.5%、周波数10Hzの条件で温度60℃におけるtanδを測定した。この特性については、基準サンプルとして後述する比較例1の測定値を100とする指数で示した。この指数が小さいものほど、低発熱性に優れる。
【0084】
〔実施例1〕
(共役ジエン系ゴム組成物Iの製造)
攪拌機付きオートクレーブに、窒素雰囲気下、シクロヘキサン5670g、1,3−ブタジエン700gおよび、テトラメチルエチレンジアミン0.17mmolを仕込んだ後、n−ブチルリチウムをシクロヘキサンと1,3−ブタジエンとに含まれる重合を阻害する不純物の中和に必要な量を添加し、さらに、n−ブチルリチウムを重合反応に用いる分として8.33mmolを加え、50℃で重合を開始した。重合を開始してから20分経過後、1,3−ブタジエン300gを30分間かけて連続的に添加した。重合反応中の最高温度は80℃であった。連続添加終了後、さらに15分間重合反応を継続し、重合転化率が95%から100%の範囲になったことを確認してから、少量の重合溶液をサンプリングした。サンプリングした少量の重合溶液は、過剰のメタノールを添加して反応停止した後、風乾して、重合体を取得し、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ分析の試料とした。その試料を用いて、重合体(活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖に該当)のピークトップ分子量と分子量分布を測定した。その結果を表1に示す。
少量の重合溶液をサンプリングした直後、重合溶液に、1,6−ビス(トリクロロシリル)ヘキサン0.288mmol(重合に使用したn−ブチルリチウムの0.0345倍モルに相当)を40重量%シクロヘキサン溶液の状態で添加し、30分間反応させた。さらに、その後、下記式(6)で表されるポリオルガノシロキサンA(mとkの数値は平均値)0.0382mmol(重合に使用したn−ブチルリチウムの0.00459倍モルに相当)を20重量%キシレン溶液の状態で添加し、30分間反応させた。その後、重合停止剤として、使用したn−ブチルリチウムの2倍モルに相当する量のメタノールを添加して、共役ジエン系ゴム組成物I(カップリング重合体および変性重合体の混合物に該当)を含有する溶液を得た。この溶液に、ゴム成分100部あたり、老化防止剤として2,4−ビス(n−オクチルチオメチル)−6−メチルフェノール0.2部を添加した後、スチームストリッピングにより溶媒を除去し、60℃で24時間真空乾燥して、固形状の共役ジエン系ゴム組成物Iを得た。このゴム組成物について、重量平均分子量、分子量分布、カップリング率、ビニル結合含有量、ムーニー粘度、および貯蔵安定性を測定した。これらの測定結果を表1に示す。
【0085】
【化4】
【0086】
(共役ジエン系ゴム組成物Iから得られるゴム架橋物Iの評価)
容量250mlのバンバリーミキサーを用いて、上記共役ジエン系ゴム組成物I 100部を30秒素練りし、次いでシリカ(商品名「Zeosil 1115MP」、ローディア社製;BET比表面積=112m/g)50部、シランカップリング剤(ビス(3−(トリエトキシシリル)プロピル)テトラスルフィド、商品名「Si69」、デグッサ社製)6.0部、およびプロセスオイル(商品名「アロマックスtDAE」、JX日鉱日石エネルギー社製)20部を添加して、80℃を開始温度として1.5分間混練した。この混練物に、シリカ(商品名「Zeosil 1115MP」、ローディア社製;BET比表面積=112m/g)20部、酸化亜鉛3部、ステアリン酸2部、および老化防止剤(商品名「ノクラック6C」、大内新興化学工業社製)2部を添加し、さらに2.5分間混練し、バンバリーミキサーからゴム混練物を排出させた。混練終了時のゴム混練物の温度は150℃であった。このゴム混練物を、室温まで冷却した後、再度バンバリーミキサー中で、3分間混練した後、バンバリーミキサーからゴム混練物を排出させた。次いで、50℃のオープンロールを用いて、得られたゴム混練物と、硫黄1.7部、および架橋促進剤(N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド1.8部とジフェニルグアニジン1.0部との混合物)とを混練した後、シート状のゴム組成物を取り出した。このゴム組成物を、160℃で15分間プレス架橋して試験片(ゴム架橋物I)を作製し、この試験片について、低発熱性の評価を行なった。表1にその結果を示す。
【0087】
【表1】
【0088】
〔実施例2〕
(共役ジエン系ゴム組成物IIの製造)
1,6−ビス(トリクロロシリル)ヘキサン0.288mmolの代わりに0.383mmol(重合に使用したn−ブチルリチウムの0.046倍モルに相当)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、共役ジエン系ゴム組成物IIを得た。各種の測定結果を表1に示す。
【0089】
(共役ジエン系ゴム組成物IIから得られるゴム架橋物IIの評価)
共役ジエン系ゴム組成物Iに代えて、上記共役ジエン系ゴム組成物IIを同量用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で試験片(ゴム架橋物II)を作製し、この試験片について、低発熱性の評価を行なった。表1にその結果を示す。
【0090】
〔実施例3〕
(共役ジエン系ゴム組成物IIIの製造)
n−ブチルリチウムを重合反応に用いる分として8.33mmolの代わりに9.01mmolを用いたこと以外は実施例1と同様にして、共役ジエン系ゴム組成物IIIを得た。各種の測定結果を表1に示す。
【0091】
(共役ジエン系ゴム組成物IIIから得られるゴム架橋物IIIの評価)
共役ジエン系ゴム組成物Iに代えて、上記共役ジエン系ゴム組成物IIIを同量用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で試験片(ゴム架橋物III)を作製し、この試験片について、低発熱性の評価を行なった。表1にその結果を示す。
【0092】
〔実施例4〕
(共役ジエン系ゴム組成物IVの製造)
1,6−ビス(トリクロロシリル)ヘキサン0.288mmolの代わりに、1,6−ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン0.433mmol(重合に使用したn−ブチルリチウムの0.052倍モルに相当)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、共役ジエン系ゴム組成物IVを得た。各種の測定結果を表1に示す。
【0093】
(共役ジエン系ゴム組成物IVから得られるゴム架橋物IVの評価)
共役ジエン系ゴム組成物Iに代えて、上記共役ジエン系ゴム組成物IVを同量用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で試験片(ゴム架橋物IV)を作製し、この試験片について、低発熱性の評価を行なった。表1にその結果を示す。
【0094】
〔比較例1〕
(共役ジエン系ゴム組成物iの製造)
テトラメチルエチレンジアミン0.17mmolの代わりに0.12mmolを用い、n−ブチルリチウムを重合反応に用いる分として8.33mmolの代わりに5.88mmolを用い、1,6−ビス(トリクロロシリル)ヘキサン0.288mmolの代わりに0.206mmol(重合に使用したn−ブチルリチウムの0.0345倍モルに相当)を用い、上記式(6)で表されるポリオルガノシロキサンA0.0382mmolの代わりに0.0270mmol(重合に使用したn−ブチルリチウムの0.00459倍モルに相当)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、共役ジエン系ゴム組成物iを得た。各種の測定結果を表1に示す。
【0095】
(共役ジエン系ゴム組成物iから得られるゴム架橋物iの評価)
共役ジエン系ゴム組成物Iに代えて、上記共役ジエン系ゴム組成物iを同量用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で試験片(ゴム架橋物i)を作製し、この試験片について、低発熱性の評価を行なった。表1にその結果を示す。
【0096】
〔比較例2〕
(共役ジエン系ゴム組成物iiの製造)
1,6−ビス(トリクロロシリル)ヘキサン0.288mmolの代わりに0.500mmol(重合に使用したn−ブチルリチウムの0.06倍モルに相当)を用い、上記式(6)で表されるポリオルガノシロキサンA0.0382mmolの代わりに0.0358mmol(重合に使用したn−ブチルリチウムの0.00430倍モルに相当)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、共役ジエン系ゴム組成物iを得た。各種の測定結果を表1に示す。
【0097】
(共役ジエン系ゴム組成物iiから得られるゴム架橋物iiの評価)
共役ジエン系ゴム組成物Iに代えて、上記共役ジエン系ゴム組成物iiを同量用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で試験片(ゴム架橋物ii)を作製し、この試験片について、低発熱性の評価を行なった。表1にその結果を示す。
【0098】
〔比較例3〕
(共役ジエン系ゴム組成物iiiの製造)
n−ブチルリチウムを重合反応に用いる分として8.33mmolの代わりに10.0mmolを用い、1,6−ビス(トリクロロシリル)ヘキサン0.288mmolの代わりに0.345mmol(重合に使用したn−ブチルリチウムの0.0345倍モルに相当)を用い、上記式(6)で表されるポリオルガノシロキサンA0.0382mmolの代わりに0.0459mmol(重合に使用したn−ブチルリチウムの0.00459倍モルに相当)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、共役ジエン系ゴム組成物iiiを得た。各種の測定結果を表1に示す。
【0099】
(共役ジエン系ゴム組成物iiiから得られるゴム架橋物iiiの評価)
共役ジエン系ゴム組成物Iに代えて、上記共役ジエン系ゴム組成物iiiを同量用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で試験片(ゴム架橋物iii)を作製し、この試験片について、低発熱性の評価を行なった。表1にその結果を示す。
【0100】
〔比較例4〕
(共役ジエン系ゴム組成物ivの製造)
n−ブチルリチウムを重合反応に用いる分として8.33mmolの代わりに5.88mmolを用い、1,6−ビス(トリクロロシリル)ヘキサン0.288mmolの代わりに、四塩化スズ0.588mmol(重合に使用したn−ブチルリチウムの0.1倍モルに相当)を用い、上記式(6)で表されるポリオルガノシロキサンA0.0382mmolの代わりにN‐フェニルピロリドン5.292mmol(重合に使用したn−ブチルリチウムの0.9倍モルに相当)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、共役ジエン系ゴム組成物ivを得た。各種の測定結果を表1に示す。
【0101】
(共役ジエン系ゴム組成物ivから得られるゴム架橋物ivの評価)
共役ジエン系ゴム組成物Iに代えて、上記共役ジエン系ゴム組成物ivを同量用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で試験片(ゴム架橋物iv)を作製し、この試験片について、低発熱性の評価を行なった。表1にその結果を示す。
【0102】
表1の結果から、以下のようなことが分かった。すなわち、本発明のタイヤトレッド用共役ジエン系ゴム組成物の製造方法により得られたタイヤトレッド用共役ジエン系ゴム組成物(実施例1〜4)は、貯蔵安定性に優れていた。また、そのゴム架橋物(実施例1〜4)は、低発熱性に優れていたことから、本発明の製造方法により得られたタイヤトレッド用共役ジエン系ゴム組成物から得られるゴム架橋物は、タイヤのトレッド部位に好適に用いることができる。これに対し、活性末端を有する重合体鎖のピークトップ分子量および/または3分岐以上のカップリング率が本発明の範囲外である比較例1〜4は、貯蔵安定性または低発熱性に劣っていた。