(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5861600
(24)【登録日】2016年1月8日
(45)【発行日】2016年2月16日
(54)【発明の名称】導電性接着剤組成物及びそれを用いた電子素子
(51)【国際特許分類】
C09J 163/00 20060101AFI20160202BHJP
C09J 9/02 20060101ALI20160202BHJP
C09J 11/04 20060101ALI20160202BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20160202BHJP
C09J 161/10 20060101ALI20160202BHJP
H01B 1/22 20060101ALI20160202BHJP
H01B 1/00 20060101ALI20160202BHJP
H05K 1/11 20060101ALI20160202BHJP
【FI】
C09J163/00
C09J9/02
C09J11/04
C09J11/06
C09J161/10
H01B1/22 D
H01B1/00 C
H05K1/11 N
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-193914(P2012-193914)
(22)【出願日】2012年9月4日
(65)【公開番号】特開2014-47336(P2014-47336A)
(43)【公開日】2014年3月17日
【審査請求日】2014年12月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107836
【弁理士】
【氏名又は名称】西 和哉
(74)【代理人】
【識別番号】100185018
【弁理士】
【氏名又は名称】宇佐美 亜矢
(72)【発明者】
【氏名】両見 春樹
【審査官】
澤村 茂実
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−286824(JP,A)
【文献】
特開2000−082332(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00−201/10
H01B 1/00− 1/24
H05K 1/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
銀被覆金属粉末(A)、エポキシ樹脂化合物(B)、フェノール樹脂化合物(C)、硬化促進剤(D)を必須成分とする導電性接着剤であって、
銀被覆金属粉末(A)は、平均粒径が、1〜10μmの金属粒子表面に銀が被覆され、金属粒子と銀の合計量に対する銀の割合が10〜30重量%、かつタップ密度が3〜8g/cm3、また、エポキシ樹脂化合物(B)は、25℃での粘度が3Pa.s以下、またフェノール樹脂化合物(C)は、軟化点が50℃以上のノボラックフェノール樹脂であり、さらに硬化促進剤(D)は、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、または2,4−ジアミノ−6−〔2’−メチルイミダゾリル−(1’)〕−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物から選ばれるイミダゾール系化合物であり、
各成分の含有量は、銀被覆金属粉末(A)が、全量に対して70〜95重量%、フェノール樹脂化合物(C)が、エポキシ樹脂化合物(B)の100重量部に対して10〜60重量部、また、硬化促進剤(D)がエポキシ樹脂化合物(B)の100重量部に対して0.05〜5重量部であることを特徴とする導電性接着剤組成物。
【請求項2】
前記の銀が被覆される金属粉末(A)は、比重が6以上の金属または合金であることを特徴とする請求項1に記載の導電性接着剤組成物。
【請求項3】
前記エポキシ樹脂化合物(B)の含有量は、全量に対して2〜20重量%であることを特徴とする請求項1に記載の導電性接着剤組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の導電性接着剤組成物をプリント基板のスルーホール又はビアホールの電極用として用いてなる電子素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性接着剤組成物及びそれを用いた電子素子に関するもので、詳しくは、プリント基板のスルーホールやビアホールの電極用として低抵抗で、高密着性で、且つ保存安定性の優れた導電性接着剤組成物及びそれを用いた電子素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、導電性接着剤組成物は、ハンダ代替品として電子素子などのチップ部品をリードフレームや各種基板に接着し、電気的もしくは熱的に導通させる材料として使用されている(例えば、特許文献1)。そして近年では、電子素子内部の電極やスルーホールやビアホールを埋め層間の電気的接続として使用されるようになってきた。
【0003】
スルーホールやビアホールを通じて多層プリント基板を導通する手段としては、メッキ工程によるものが多かったが、湿式プロセスであるため製造工程が複雑となったり、部品実装に制約が加えられることがあり、高密度の部品実装が難しい。
【0004】
そこで、層間の電気接続を導電性樹脂ペーストで行なう方法が提案され、実用化されている。この方法によって個々の層間および任意の位置で電気接続が可能となり、実装密度は飛躍的に向上した。
【0005】
これらの導電性樹脂ペーストでは、導電性粉末として銀粉末が主に使用されていたが、昨今の銀価格の高騰もあり、安価な金属の適用範囲が拡がっている。前記チップ部品の導電性接着剤として、これまでに低体積抵抗率、高信頼性といった観点から銀粉末が必要とされてきたが、例えば、特許文献2では、銀粉だけでなく銀被覆銅粉を使用して低体積抵抗率を維持するようにしている。ただ、銀粉も銀被覆銅粉とほぼ同量程度と多量に使用しているためコストが十分には低減しない。
【0006】
一方、スルーホールやビアホールの充填用でもコスト低減が要請されていて、例えば、特許文献3では、銀被覆銅粉が使用されている。ただ、特許文献3では特定のエポキシ樹脂に対して樹脂の硬化剤として、カチオン重合開始剤を使用しているので、環境問題の懸念があり体積抵抗率も十分ではない。また、特許文献4では銀被覆銅粉を例示しているが、その銀含有量や粉末の密度など詳細は明らかにしておらず、銀被覆銅粉の最適化が記載されていないという点で、やはり体積抵抗率が十分に得られるものではない。また、キシレン樹脂を配合する場合があるが環境や人体に有害である。
【0007】
また、特許文献5では、電磁波シールド用として、銅粉を使用しているのでコスト低減が実現されるが、銀被覆銅粉を使用していないことから、体積抵抗率が十分ではない。
【0008】
こうした状況の下、半導体などのチップ部品やスルーホールやビアホールの充填用、電磁波シールド用に使用される低抵抗且つ、低コスト、高密着性の導電性接着剤が切望されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第4467120
【特許文献2】特許第3254626
【特許文献3】特許第3683506
【特許文献4】特許第4109156
【特許文献5】特許第2528230
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、前述した従来技術の問題点に鑑み、低体積抵抗率で低コスト化、保存安定性に優れた導電性接着剤組成物及びそれを用いた電子素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、銀被覆金属粉末、エポキシ樹脂化合物、フェノール樹脂化合物および硬化促進剤を必須成分とする導電性接着剤において、銀被覆金属粉末として、特定量の銀を含有しタップ密度が3〜8g/cm
3であるものを特定量使用し、低粘度のエポキシ樹脂化合物にフェノール樹脂化合物および硬化促進剤を特定量配合すると、低体積抵抗率、低コスト化、保存安定性に優れた導電性接着剤樹脂組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、銀被覆金属粉末(A)、エポキシ樹脂化合物(B)、フェノール樹脂化合物(C)、硬化促進剤(D)を必須成分とする導電性接着剤であって、
銀被覆金属粉末(A)は、平均粒径が、1〜10μmの金属粒子表面に銀が被覆され、金属粒子と銀の合計量に対する銀の割合が
10〜30重量%、かつタップ密度が3〜8g/cm
3、また、エポキシ樹脂化合物(B)は、25℃での粘度が3Pa.s以下
、またフェノール樹脂化合物(C)は、軟化点が50℃以上のノボラックフェノール樹脂であり、さらに硬化促進剤(D)は、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、または2,4−ジアミノ−6−〔2’−メチルイミダゾリル−(1’)〕−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物から選ばれるイミダゾール系化合物であり、
各成分の含有量は、銀被覆金属粉末(A)が、全量に対して70〜95重量%、フェノール樹脂化合物(C)が、エポキシ樹脂化合物(B)
の100重量部に対して10〜60重量部、また、硬化促進剤(D)がエポキシ樹脂化合物(B)
の100重量部に対して0.05〜5重量部であることを特徴とする導電性接着剤組成物が提供される。
【0013】
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、前記の銀が被覆される金属粉末(A)は、比重が6以上の金属または合金であることを特徴とする導電性接着剤組成物が提供される。
【0014】
また、本発明の第3の発明によれば、第1の発明において、前記エポキシ樹脂化合物(B)の含有量は、全量に対して2〜20重量%であることを特徴とする導電性接着剤組成物が提供される。
【0018】
一方、本発明の第
4の発明によれば、第1〜
3の発明のいずれかの導電性接着剤組成物を
プリント基板のスルーホール又はビアホールの電極用として用いてなる電子素子が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0020】
I.導電性接着剤組成物
本発明に係る導電性接着剤組成物は、銀被覆金属粉末(A)、エポキシ樹脂化合物(B)、フェノール樹脂化合物(C)、硬化促進剤(D)を必須成分とする導電性接着剤であって、銀被覆金属粉末(A)は、平均粒径が、1〜10μmの金属粒子表面に銀が被覆され、金属粒子と銀の合計量に対する銀の割合が
10〜30重量%、かつタップ密度が3〜8g/cm
3、また、エポキシ樹脂化合物(B)は、25℃での粘度が3Pa.s以下
、またフェノール樹脂化合物(C)は、軟化点が50℃以上のノボラックフェノール樹脂であり、さらに硬化促進剤(D)は、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、または2,4−ジアミノ−6−〔2’−メチルイミダゾリル−(1’)〕−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物から選ばれるイミダゾール系化合物であり、各成分の含有量は、銀被覆金属粉末(A)が、全量に対して70〜95重量%、フェノール樹脂化合物(C)が、エポキシ樹脂化合物(B)
の100重量部に対して10〜60重量部、また、硬化促進剤(D)がエポキシ樹脂化合物(B)
の100重量部に対して0.05〜5重量部であることを特徴としている。
【0021】
A.銀被覆金属粉末
本発明において重要な銀被覆金属粉末(以下、銀粉末ともいう)は、導電性接着剤組成物の導電性成分である。該銀粉末は、タップ密度や粒径の大きさによって特性が異なることが究明され、タップ密度3〜8g/cm
3の銀被覆金属粉末を使用する必要がある。なお、上記を満たすのであれば、粒径や銀含有量の異なる銀被覆金属粉末を2種類以上入れても差し支えない。
【0022】
ここで、タップ密度とは、金属粉末などの粉体の嵩密度であり、JIS Z2500に準拠し、シリンダー容量:20mm、タップストローク:20mm、ストローク回数:50回の条件で測定した数値である。また、平均粒径は、マイクロトラックで測定した時の値を示す。タップ密度が3〜8g/cm
3の銀被覆金属粉末は分散性が優れている。一方、3g/cm
3より小さいと分散性が劣るので、導電性接着剤組成物中に高充填できない。また,タップ密度が8g/cm
3以上の銀被覆金属粉末は現在のところ入手困難であり、調製も容易ではない。好ましいタップ密度は3.5〜7g/cm
3で、より好ましいタップ密度は4〜6g/cm
3である。
【0023】
また、銀被覆金属粉末の配合割合は、70〜95重量%の範囲内とする。銀被覆金属粉末が70重量%未満であると電気伝導性が著しく劣り、95重量%を超えるとペースト化し辛く、また、密着力も著しく低下し、導電性接着剤組成物としての役割を果たさなくなる。銀被覆金属粉末の配合割合は、75〜94重量%の範囲が好ましい。より好ましくは、80〜93重量%である。
【0024】
銀が被覆される金属の平均粒径は、1〜10μmの範囲に限定される。平均粒径が1μm未満であると金属同士の接触抵抗が増えるので電気伝導性が劣ったり、比表面積が大きくなるのでペースト化が難しくなり、一方、10μmを超えるとペースト化はできるが、微細塗布が難しくなるからである。銀が被覆される金属の平均粒径は、2〜7μmの範囲が好ましい。
【0025】
金属粉末への銀被覆率は、0.5〜30重量%の範囲に限定される。銀被覆率が0.5重量%未満であると被覆が不十分で電気伝導性が劣り、30重量%を超えると低コストでなくなる。銀被覆率は、1〜20重量%の範囲が好ましく、5〜15重量%の範囲がより好ましい。なお、本発明の目的を損なわない範囲で銀粉を入れてもよい。
【0026】
銀を被覆する粉末は、比重が6以上の金属または合金が好ましい。例えば、銅、ニッケル、亜鉛、錫、鉄、コバルトなど、またそれらの合金とすることができる。比重が6未満の金属は、融点が低いものが多く、銀被覆には適しておらず、また、本発明を満足させるための必要量を添加すると、比重が6以上のものに比して体積換算で多く添加することになって、ペースト化することが困難になる。上記を満足するのであれば、銅、ニッケル、亜鉛などから選ばれる2種類以上の金属や合金を選択しても構わない。但し、低コストという観点から、銀より安価な金属や合金を選択するのが望ましい。
【0027】
B.エポキシ樹脂化合物
エポキシ樹脂化合物は、25℃での粘度が3Pa.s以下のものを使用する。粘度が、3Pa.sを超えるとペースト化が難しくなりやすいためである。粘度が2Pa.s以下のエポキシ樹脂化合物が好ましく、1Pa.s以下のエポキシ樹脂化合物がより好ましい。
エポキシ樹脂は、その構造によって限定されないが、2官能以上のエポキシ基を有するものが好ましい。
例えば、N,N−ビス(2,3−エポキシプロピル)−4−(2,3−エポキシプロポキシ)アニリン、(3’,4’−エポキシシクロヘキサン)メチル3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレートやダイマー酸のエピクロルヒドリンによるジグリシジルエステル化変性物などが挙げられる。なお、本発明の目的を損なわない範囲で2種類以上入れても構わない。
【0028】
エポキシ樹脂化合物の配合量は、全量に対して2〜20重量%の範囲とすることが望ましい。配合量が、2重量%未満であると密着力が不十分となり、20重量%を超えると絶縁体である樹脂成分が多くなるので電気伝導性が劣ることがある。好ましい配合量は2.5〜15重量%、より好ましくは、3〜10重量%である。
【0029】
C.フェノール樹脂化合物
本発明では、エポキシ樹脂化合物の硬化剤としてフェノール樹脂化合物を使用する。フェノール樹脂化合物としては、公知の軟化点が50℃以上のノボラックフェノールやレゾールフェノール樹脂が挙げられる。好ましいのは、軟化点が60℃以上のノボラックフェノール樹脂、より好ましいのは軟化点が70℃以上のノボラックフェノール樹脂である。フェノール樹脂を使用することで導電性接着剤組成物の体積抵抗率を低下させることができる。なお、フェノール樹脂には、本発明の目的を損なわない範囲で、ジシアンジアミドに代表されるアミン系、酸無水物系、カチオン重合開始剤などの硬化剤を配合しても構わない。
【0030】
フェノール樹脂化合物は、エポキシ樹脂化合物
の100重量部に対して10〜60重量部の範囲に限定されるが、10重量部未満であると硬化剤が少ないので密着性が劣り、60重量部を超えると導電を妨げる要因となり電気伝導性が劣化する。好ましい配合量は15〜55重量部、より好ましくは20〜53重量部である。
【0031】
D.硬化促進剤
また、本発明では、エポキシ樹脂化合物に対して、フェノール樹脂化合物のほかに硬化促進剤を配合する。
硬化促進剤としては、60〜300℃に加熱すると、エポキシ樹脂化合物とフェノール樹脂化合物との反応を速やかに促し、かつ室温で長期間の貯蔵安定性を満足できるものが使用できる。一般的には2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2,4−ジアミノ−6−〔2’−メチルイミダゾリル−(1’)〕−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物などのイミダゾール系化合物が望ましい。なお、本発明の目的を損なわない範囲で2種類以上入れても構わない。
【0032】
硬化促進剤は、エポキシ樹脂化合物
の100重量部に対して0.05〜5重量部の範囲で配合される。配合量が、0.05重量部未満であると硬化が十分に促進されず、5重量部を超えると保存安定性が劣るし、使用時に経時粘度上昇が早くなり塗布が困難になる。好ましくは0.07〜4重量部、より好ましくは0.1〜3重量部である。
【0033】
E.溶剤
溶剤は本発明の組成物の任意成分であり、添加せずとも本発明を達成することが可能であるが、微量ないし少量の溶剤を添加することでペースト化が容易になる。
溶剤としては、導電性接着剤組成物が硬化する際、溶剤成分が揮発・蒸発し、又は分解して飛散してしまう有機化合物が使用できる。一般には、酢酸2−(2−エトキシエトキシ)エチル、酢酸2−(2−n−ブトキシエトキシ)エチル、酢酸2−n−ブトキシエチル等が挙げられる。これらは単独でも、複数種を混合して使用してもよい。
【実施例】
【0034】
以下に、実施例に基づき本発明を具体的に説明するが、本発明は、これら実施例によって何ら限定されるものではない。
なお、実施例1〜10及び、比較例1〜12の各試料は混練後、下記に示す評価を行なった。
【0035】
(1)体積抵抗値の測定
アルミナ基板上に幅0.6mm、長さ60mmの長方形状に試料(導電性接着剤組成物)を印刷し、200℃のオーブン中に60分間放置し、硬化した後、室温まで冷却し、導電性接着剤組成物上の両端で抵抗値を測定した。続いて、印刷し硬化した導電性接着剤組成物の膜厚を測定し、抵抗値と膜厚から体積抵抗率を求めた。
【0036】
(2)接着強度の測定
銅基板上に試料(導電性接着剤組成物)を印刷し、1.5mm角のシリコンチップを載せ、200℃のオーブン中に60分間放置して硬化させた。室温まで冷却した後、この基板に対し、水平方向からシリコンチップに力を加え、該シリコンチップが剥がれた時の力を接着強度として測定した。
【0037】
(3)塗布性の評価
試料(導電性接着剤組成物)を用いて、400メッシュのスクリーンにて幅100μm、長さ20mmの直線を10本印刷し、印刷面に欠け、かすれ、ダレ等があるものは不可(×)、それらが確認されない場合は良(○)とした。
【0038】
(4)保存安定性の評価
試料(導電性接着剤組成物)を軟膏瓶に入れ密閉し、25℃に5日間放置した。放置前後の粘度を粘度計で測定し、放置後の粘度が放置前の粘度に比べ1.2倍以内であれば良(○)、それを超えた場合を不可(×)とした。
【0039】
(5)コストメリット
銀含有率が30wt%以下の場合を良(○)、それ以上の場合を不可(×)とした.
【0040】
(6)総合評価
上記の4項目において、体積抵抗値は1×10
−4Ω・cm未満、接着強度は20N以上、塗布性については良(○)、保存安定性については良(○)、コストメリットについては良(○)の条件を全て満たしたもののみ合格(○)とし、接着強度1つでも条件に満たさないものがある場合は不合格(×)とした。
【0041】
表1中、各成分の濃度は重量%で示している。銀被覆銅粉末Aは、金属粒子(銅の平均粒径3μm)と銀の合計量に対する銀の割合が10重量%、かつタップ密度が4.5g/cm
3であり、また、金属粒子(銅の平均粒径0.6μm)と銀の合計量に対する銀の割合が10重量%の銀被覆銅粉末Bはタップ密度が2g/cm
3、金属粒子(銅の平均粒径3μm)と銀の合計量に対する銀の割合が0.3重量%の銀被覆銅粉末Cはタップ密度が4.3g/cm
3、金属粒子(銅の平均粒径3μm)と銀の合計量に対する銀の割合が40重量%の銀被覆銅粉末Dはタップ密度が4.9g/cm
3、さらに、金属粒子(ニッケルの平均粒径5μm)と銀の合計量に対する銀の割合が10重量%の銀被覆ニッケル粉末Eはタップ密度が4.8g/cm
3、金属粒子(ニッケルの平均粒径5μm)と銀の合計量に対する銀の割合が30重量%の銀被覆ニッケル粉末Fはタップ密度が4.9g/cm
3、金属粒子(銅−亜鉛の平均粒径5μm)と銀の合計量に対する銀の割合が10重量%の銀被覆銅−亜鉛合金粉末Gはタップ密度が5.7g/cm
3である。一方、銀粉末Hはタップ密度が3.8g/cm
3、銅粉末Iはタップ密度が3.2g/cm
3である。
【0042】
また、エポキシ樹脂化合物Aは、エポキシ樹脂化合物(三菱化学株式会社製:jER630、25℃での粘度は1Pa.s)であり、エポキシ樹脂化合物Bは、エポキシ樹脂化合物(三菱化学株式会社製:jER828、25℃での粘度15Pa.s)である。
【0043】
硬化剤Aとしてのフェノール樹脂化合物は、ノボラックフェノール樹脂化合物(明和化成株式会社製:MEHC−7800H、軟化点120℃)で、硬化剤Bは液状のレゾールフェノール樹脂化合物(住友ベークライト株式会社:PR−50607B)、硬化剤Cはジシアンジアミド(三菱化学株式会社:DICY7)である。
【0044】
さらには硬化促進剤Aとして2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール(四国化成株式会社:キュアゾール2P4MHZ−PW)を使用した。
溶剤Aとしては、酢酸2−(2−エトキシエトキシ)エチル(関東化学株式会社:酢酸2−(2−エトキシエトキシ)エチル)を使用した。
【0045】
(実施例1)
金属粉末として、金属粒子と銀の合計量に対する銀の割合が10重量%でタップ密度が4.5g/cm
3の銀被覆銅粉末A、樹脂成分としてエポキシ樹脂化合物A:p−アミノフェノール型液状エポキシ樹脂化合物(三菱化学株式会社製:jER630)、硬化剤Aとしてフェノール樹脂化合物(明和化成株式会社製:MEHC−7800H)、硬化促進剤Aとして2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール(四国化成株式会社:キュアゾール2P4MHZ−PW)を用意し、溶剤Aの酢酸2−(2−エトキシエトキシ)エチル(関東化学株式会社:酢酸2−(2−エトキシエトキシ)エチル)と混合し、導電性接着剤組成物を調製し、3本ロール型混練機を使用して混練して、本発明の導電性接着剤組成物を得た。
この導電性接着剤組成物を用いて、アルミナ基板上に印刷し、上記の条件で体積抵抗率を測定した。また、銅基板上に印刷し、硬化させてから接着強度を測定した。また、本発明の導電性接着剤組成物をスクリーンによりアルミナ基板へ印刷し、塗布性を評価した。これらの結果を表1に併記した。
【0046】
(実施例2〜5、10)
表1に記載した金属粉末成分、樹脂成分、硬化剤成分、硬化促進剤成分、および溶剤成分の配合量を変えた以外は実施例1と同様にして、導電性接着剤組成物を調整し、3本ロール型混練機を使用し混練して、本発明の導電性接着剤組成物を得た。その後、この導電性接着剤組成物を用いて、アルミナ基板上に印刷し、上記の条件で体積抵抗率を測定した。また、銅基板上に印刷し、硬化させてから接着強度を測定した。また、本発明の導電性接着剤組成物をスクリーンによりアルミナ基板へ印刷し、塗布性を評価した。これらの結果を表1に併記した。
【0047】
(実施例6〜9)
表1に記載したように、実施例1の硬化剤をレゾールフェノール樹脂化合物(住友ベークライト株式会社:PR−50607B)に変えるか、実施例1の金属粉末(銀被覆銅粉末A)を、金属粒子と銀の合計量に対する銀の割合が10重量%でタップ密度が4.8g/cm
3の銀被覆ニッケル粉末E、又は金属粉末を金属粒子と銀の合計量に対する銀の割合が30重量%でタップ密度が4.8g/cm
3の銀被覆ニッケル粉末F、あるいは金属粒子と銀の合計量に対する銀の割合が10重量%でタップ密度が5.7g/cm
3の銀被覆銅−亜鉛合金粉末Gに変えた以外は実施例1と同様にして、導電性接着剤組成物を調製し、3本ロール型混練機を使用して混練し、本発明の導電性接着剤組成物を得た。また、
その後、この導電性接着剤組成物を用いて、アルミナ基板上に印刷し、上記の条件で体積抵抗率を測定した。また、銅基板上に印刷し、硬化させてから接着強度を測定した。また、本発明の導電性接着剤組成物をスクリーンによりアルミナ基板へ印刷し、塗布性を評価した。これらの結果を表1に併記した。
なお、このうち実施例6は参考例である。
【0048】
(比較例1〜5)
表2に記載したように、金属粉末成分と樹脂成分のエポキシ樹脂化合物Aの配合量を変えるか、硬化剤Aと硬化促進剤Aの配合量を変えた以外は実施例1と同様にして、導電性接着剤組成物を調整し、3本ロール型混練機を使用して混練し、本発明の導電性接着剤組成物を得た。その後、この導電性接着剤組成物を用いて、アルミナ基板上に印刷し、上記の条件で体積抵抗率を測定した。また、銅基板上に印刷し、硬化させてから接着強度を測定した。また、本発明の導電性接着剤組成物をスクリーンによりアルミナ基板へ印刷し、塗布性を評価した。これらの結果を表2に併記した。
【0049】
(比較例6〜12)
表2に記載したように、銀被覆銅粉末Aの代わりに銀被覆銅粉末Bや銀被覆銅粉末C、銀被覆銅粉末D、銀粉末H、銅粉末Iを用いたか、エポキシ樹脂Aの代わりにエポキシ樹脂B:ビスフェノールAジグリシジルエーテル(三菱化学株式会社:jER828)を用いたか、硬化剤Aの代わりに硬化剤C:ジシアンジアミド(三菱化学株式会社:DICY7)を使用した以外は実施例1と同様にして、導電性接着剤組成物を調製し、3本ロール型混練機を使用して混練し、本発明の導電性接着剤組成物を得た。その後、この導電性接着剤組成物を用いて、アルミナ基板上に印刷し、上記の条件で体積抵抗率を測定した。また、銅基板上に印刷し、硬化させてから接着強度を測定した。また、本発明の導電性接着剤組成物をスクリーンによりアルミナ基板へ印刷し、塗布性を評価した。これらの結果を表2に併記した。
【表1】
【表2】
【0050】
「評価」
上記結果を示す表1、2から明らかなように、実施例1〜10
(ただし、実施例6は参考例)の導電性接着剤組成物は、本発明の特定成分を特定量含むため導電性、接着性、塗布性、コストメリットのいずれも優れていることが分かる。なお、実施例2は、やや導電性が低いが、実用上問題の無いレベルである。実施例3、10はやや接着性が弱いが、実用上問題の無いレベルである。
【0051】
これに対し、比較例1は銀被覆銅粉末Aの含有量が70重量部未満と少ないため、体積抵抗率が高く不可となった。比較例2は硬化剤Aが60重量部を超えているため、体積抵抗率が高く不可となった。比較例3は硬化剤Aが10重量部未満のため、体積抵抗率が高く不可となった。比較例4は硬化促進剤Aが0.05重量部未満のため、体積抵抗率が高く、接着強度が弱く不可となった。比較例5は硬化促進剤Aが5重量部を超えているため、体積抵抗率が高く、塗布性や保存安定性も悪く不可となった。比較例6はタップ密度が2g/cm
3と小さい銀被覆銅粉末Bを使用しているため、体積抵抗率が高く、塗布性が悪く不可となった。比較例7は金属粒子と銀の合計量に対する銀の割合が0.3重量%と小さい銀被覆銅粉末Cを使用しているため、体積抵抗率が高く不可となった。比較例8は金属粒子と銀の合計量に対する銀の割合が40重量%と大きすぎる銀被覆銅粉末Dを使用しているため、コストメリットが無く不可となった。比較例9は銀粉末Hが銀被覆粉末ではないため、コストメリットが無く不可となった。比較例10は銅粉末Iを使用し、銀を含まないため、体積抵抗率が高く不可となった。比較例11は粘度が高すぎるエポキシ樹脂化合物Bを使用しているため、体積抵抗率が高く、塗布性が悪く不可となった。比較例12はフェノール樹脂化合物以外の硬化剤Cを使用しているため、体積抵抗率が高く不可となった。
【0052】
本発明によれば、銀被覆金属粉末、エポキシ樹脂化合物、フェノール樹脂化合物、硬化促進剤を必須成分とし、特定したタップ密度の銀被覆金属粉末を特定量組み合わせて調製したため、導電性、接着性、塗布性、保存安定性を改善することができる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明の導電性接着剤樹脂組成物は、金属粉末として特定のタップ密度で特定量銀を含有する銀被覆金属粉末を特定量配合し、樹脂成分としてエポキシ樹脂化合物を用い、硬化剤としてフェノール樹脂化合物を用い、硬化促進剤をそれぞれ特定量使用しているため、スルーホールやビアホールに充填し層間の導通や、ICなど各種電子素子の接着に適用できる.また、電磁波シールド用としても適用できる。低い抵抗値が実現でき、コストメリットも高いため、高導電性や低価格が必要なスルーホールやビアホールの充填用として特に好ましく適用できる。