(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の一つの実施形態について、
図1〜
図3を用いて説明する。
なお、以下の各図面においては各構成要素を見やすくするため、構成要素によって寸法の縮尺を異ならせて示すことがある。
本形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
【0025】
[電極材料]
図1〜
図3に示すように、本実施形態の電極材料1,11,21は、電極活物質粒子2の表面に、イオン伝導性物質3を含有する炭素質被膜4が形成されている点を特徴としている。詳しくは後述するが、このような電極材料1,11,21は、電極活物質粒子2、イオン伝導性物質3および炭素質被膜前駆体を混合して得られた混合物を加熱することにより形成できる。炭素質被膜4中でのイオン伝導性物質3の含有形態は、各原料の種類や製造条件等により様々である。例えば、イオン伝導性物質3の種類によって炭素質被膜4との親和性が異なり、その親和性や炭素質被膜4の膜厚に応じて
図1〜
図3のような3つの形態を取り得る。
具体的な形態について、以下説明する。
【0026】
図1に示す電極材料1の形態は、電極活物質粒子2の表面にイオン伝導性物質3を含有する炭素質被膜4が形成され、イオン伝導性物質3の表面のうち、一部は炭素質被膜4と接触しており、それ以外の箇所は炭素質被膜4に被覆されることなく外部に露出した状態となっている。この電極材料1の場合、電子伝導性が十分に高く、かつイオン伝導性の高いイオン伝導性物質3を選択することにより、イオン伝導性物質3においては、炭素質被膜4がリチウムイオンの酸化還元反応時の障壁になる効果と、炭素質被膜4がリチウムイオンの拡散を阻害する効果と、が解消され、電極材料1のイオン伝導性の改善が可能となる。
【0027】
図2に示す電極材料11の形態は、電極活物質粒子2の表面にイオン伝導性物質3を含有する炭素質被膜4が形成され、
図1に示す電極材料1のようにイオン伝導性物質3の表面は外部に露出していない。すなわち、イオン伝導性物質3の表面の一部は、イオン伝導性物質3の表面に沿う形状で電極活物質粒子2の表面の炭素質被膜4の膜厚t1よりも薄い膜厚t2の炭素質被膜4により被覆されている。この電極材料11の場合、電子伝導性は十分であり、かつ炭素質被膜4に比してイオン伝導性の高いイオン伝導性物質を選択することにより、電極材料11のイオン伝導性を改善することが可能となる。なお、
図2に示す電極材料11の場合、イオン伝導性物質3の表面の炭素質被膜4の形状がイオン伝導性物質3の外形を反映しなくなるまで炭素質被膜4を厚く形成すると、炭素質被膜4がリチウムイオンの拡散を阻害するため好ましくない。したがって、イオン伝導性物質3の表面の炭素質被膜4の膜厚は薄い方が好ましい。
【0028】
図3に示す電極材料21の形態は、電極活物質粒子2の表面にイオン伝導性物質3を含有する炭素質被膜4が形成され、
図2に示す電極材料11と同様、イオン伝導性物質3の表面は外部に露出していない。ただし、
図3に示す電極材料21は、
図2の電極材料11のように、炭素質被膜4の外形による凸部が炭素質被膜4の表面形状に反映される程には炭素質被膜4の膜厚が薄くなく、イオン伝導性物質3が炭素質被膜4の内部に完全に埋め込まれている。このような形態であっても、イオン伝導性物質3が存在する領域では炭素質被膜4の実質的な膜厚が薄くなる。その結果、炭素質被膜4がリチウムイオンの酸化還元反応時の障壁になる効果と、炭素質被膜4がリチウムイオンの拡散を阻害する効果と、が解消され、電極材料21のイオン伝導性の改善が可能となる。
【0029】
より具体的には、炭素質被膜4は、電極活物質粒子2の表面に50%以上の被覆率にて形成されている。また、電極活物質粒子2の表面に、少なくとも一部が炭素質被膜4と接触するイオン伝導性物質3が、0.1質量%以上、30質量%以下含有するように固着している。このように、電子伝導性が担保され、かつリチウム伝導性の高い炭素質被膜4とイオン伝導性物質3との複合体が、電極活物質粒子2の表面に形成されている。
【0030】
ここで、炭素質被膜4に被覆された電極活物質粒子2は凝集体を形成している。以下、炭素質被膜4に被覆された電極活物質粒子2のことを炭素質被覆電極活物質粒子と称する。これは、炭素質被覆電極活物質粒子同士が、接触した状態で凝集していることを意味する。炭素質被覆電極活物質粒子の接触状態は特に限定されないが、粒子同士の接触面積が小さく、接触部分が断面積の小さい頸部状となって強固に接続された状態の凝集体であることが好ましい。このように、これら炭素質被覆電極活物質粒子の電極活物質粒子同士の接触部分が断面積の小さい頸部状となることで、凝集体内部にチャネル状(網目状)の空隙が三次元に広がった構造となる。
【0031】
また、炭素質被覆電極活物質粒子において、リチウムイオン電池の電極材料として用いる際に電子伝導性を担保することによって、リチウムイオンの脱挿入に関わる反応が律速となるように、電極活物質粒子2の表面の50%以上、好ましくは80%以上が炭素質被膜4にて被覆されていることが好ましい。
【0032】
炭素質被膜4の被覆率は、透過電子顕微鏡(TEM)、エネルギー分散型X線分光器(EDX)を用いて測定することができる。ここで、炭素質被膜4の被覆率が50%未満であると、炭素質被膜4の被覆効果が不十分となり、リチウムイオンの脱挿入反応が電極活物質粒子2の表面にて行なわれる際に、炭素質被膜4が形成されていない箇所においてリチウムイオンの脱挿入に関わる反応抵抗が高くなり、放電末期の電圧降下が顕著になるので、好ましくない。
【0033】
イオン伝導性物質3は、リチウムイオンを伝導する際の電荷バランスを維持するため、電子伝導性が高いことが好ましく、電極活物質粒子2の表面においてイオン伝導性物質3は少なくともその一部が炭素質被膜4と接触しており、電子伝導性が担保されていることが好ましい。
【0034】
また、イオン伝導性物質3は、少なくともその一部が電極活物質粒子2と接触しており、イオン伝導性物質3と電極活物質粒子2とが部分的もしくは全体的に固溶することが好ましい。その理由は、イオン伝導性物質3と電極活物質粒子2とが固溶すると、イオン伝導性物質3と電極活物質粒子2との界面におけるリチウムイオンの伝導性が損なわれなくなるからである。また、イオン伝導性物質3と電極活物質粒子2との結晶構造が異なる場合に、イオン伝導性物質3と電極活物質粒子2とが固溶している必要はなく、イオン伝導性物質3と電極活物質粒子2とが接しているだけでも良く、またイオン伝導性物質3と電極活物質粒子2との間に結晶粒界が存在しても良い。イオン伝導性物質3は、電極活物質粒子2と接触せず、炭素質被膜4に全周囲を覆われていても良い。
【0035】
イオン伝導性物質3は、電極活物質粒子2の表面全体に均一に存在していても良く、粒子状として電極活物質粒子2の表面で偏在していても良く、円錐状として電極活物質粒子2の表面で偏在していても良く、円柱状として電極活物質粒子2の表面で偏在していても良い。
【0036】
イオン伝導性物質3は、リチウムイオン伝導性を有する化合物であれば良く、イオン伝導性物質3が結晶質であっても非晶質であっても構わない。
イオン伝導性物質3は、Li、Fe、Mn、Co、Ni、Si、Oからなる元素群の内の一つ以上の元素を構成元素とするリチウム化合物もしくはマンガン化合物である。具体的には、リン酸リチウム、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウム、チタン酸リチウム、酸化マンガン、及びLi
xA
yD
zPO
4(ただし、AはCo、Mn、Ni、Feの群から選択される1種または2種以上、DはMg、Ca、S、Sr、Ba、Ti、Zn、B、Al、Ga、In、Si、Ge、Sc、Y、希土類元素の群から選択される1種または2種以上、0<x<2、0<y<1.5、0≦z<1.5)の群から選択される1種を主成分とすることができる。
【0037】
炭素質被膜4の膜厚は、1.0nm以上かつ10.0nm以下であって、平均膜厚が2.0nm以上かつ7.0nm以下であることが好ましい。炭素質被覆電極活物質粒子の平均膜厚が2.0nm以上かつ7.0nm以下であることが好ましい理由は、平均膜厚が2.0nm以下であると、炭素質被膜4中の電子の移動抵抗の総和が高くなる結果、電池の内部抵抗が上昇し、高速充放電レートにおける電圧低下が著しくなるからである。一方、平均膜厚が7.0nmを超えると、リチウムイオンが炭素質被膜4中を拡散する際の立体障害によりリチウムイオンの移動抵抗が高くなる結果、電池の内部抵抗が上昇し、高速充放電レートにおける電圧低下が著しくなるからである。炭素質被膜4の膜厚が1.0nm未満であると、平均膜厚を2.0nmを超える膜厚に保つことが困難となり、一方、炭素質被膜4の膜厚が10.0nmを超えると、平均膜厚を7.0nm以下に抑えることが困難になる。
【0038】
ここで言う「内部抵抗」とは、主として電子の移動抵抗とリチウムイオン移動抵抗とを合算したものであり、電子の移動抵抗は、炭素質被膜の膜厚、炭素質被膜の密度及び結晶性と比例し、リチウムイオン移動抵抗は、炭素質被膜の膜厚、炭素質被膜の密度及び結晶性と反比例する。
内部抵抗の評価方法としては、例えば、電流休止法等が用いられる。電流休止法では、内部抵抗は、配線抵抗、接触抵抗、電子の移動抵抗、リチウムイオン移動抵抗、正負電極におけるリチウム反応抵抗、正負極間距離によって定まる極間抵抗、リチウムイオンの溶媒和、脱溶媒和に関わる抵抗およびリチウムイオンのSEI(Solid Electrolyte Interface)移動抵抗の総和として測定される。
【0039】
上記の凝集体の体積密度としては、この凝集体を中実とした場合の体積密度の50体積%以上かつ80体積%以下が好ましく、より好ましくは55体積%以上かつ75体積%以下、さらに好ましくは60体積%以上かつ75体積%以下である。
ここで、中実な凝集体とは、空隙が全く存在しない凝集体のことであり、この中実な凝集体の密度は電極活物質の理論密度に等しいものとする。
【0040】
この体積密度は、水銀ポロシメーターを用いて測定することができ、この凝集体により構成される電極材料全体の質量と、凝集体を構成する粒子の間隙の体積と、から算出されるものである。換言すれば、体積密度は、この凝集体を構成している粒子間隙の体積の総和から粒子間の間隙を除いた凝集体の粒子内部の粒子間隙と、この凝集体により構成される電極材料全体の質量と、から算出される凝集体の密度のことである。
【0041】
このように、この凝集体の体積密度を50体積%以上かつ80体積%以下とすることで、凝集体がある一定量の細孔(空隙)を有する状態で緻密化することにより、凝集体全体の強度が増す。例えば、電極活物質をバインダー、導電助剤、溶媒と混合して電極スラリーを調製する際に、凝集体が崩れ難くなり、その結果、電極スラリーの粘度の上昇が抑制され、かつ流動性が保たれる。これにより、塗工性が向上するとともに、電極スラリーの塗膜における電極活物質の充填性の向上をも図ることができる。
【0042】
電極活物質粒子2を構成する電極活物質としては、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウム、チタン酸リチウム及びLi
xA
yD
zPO
4(ただし、AはCo、Mn、Ni、Fe、Cu、Crの群から選択される1種または2種以上、DはMg、Ca、S、Sr、Ba、Ti、Zn、B、Al、Ga、In、Si、Ge、Sc、Y、希土類元素の群から選択される1種または2種以上、0<x<2、0<y<1.5、0≦z<1.5)の群から選択される1種を主成分とすることが好ましい。
【0043】
ここで、Aについては、Co、Mn、Ni、Feが、高い放電電位が得られやすいため好ましい。Dについては、Mg、Ca、Sr、Ba、Ti、Zn、Alが、高い放電電位が得られやすいため好ましい。
ここで、希土類元素とは、ランタン系列であるLa、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luの15元素のことである。
【0044】
上記の炭素質被覆電極活物質粒子では、電極活物質粒子2の比表面積は5m
2/g以上かつ20m
2/g以下であることが好ましく、より好ましくは9m
2/g以上かつ13m
2/g以下である。
【0045】
この電極材料を評価する場合、電極膜厚が60μmの2032型コインタイプセルを用い、電流休止法により、この電極材料の内部抵抗を測定する方法が用いられる。このようにして求められる内部抵抗は、20Ω以下であることが好ましい。
ここで、内部抵抗を20Ω以下と限定した理由は、内部抵抗が20Ωを超えると、電極膜厚を薄くすることにより電池としての内部抵抗を低減する必要が生じ、よって、電極一枚当たりの電池容量が減少し、その結果、電池における所望の電池容量を実現するために電極枚数を増やさなければならなくなるからである。
電極枚数を増やすことは、電池活性の無い集電体、セパレーター、等の電極部材が電極枚数に応じて増えてしまい、結果として電池容量の減少につながるので、好ましくない。
【0046】
[電極材料の製造方法]
本実施形態の電極材料の製造方法は、特に限定されないが、電極活物質またはその前駆体と、イオン伝導性物質と有機化合物と、水とを含み、かつ、この電極活物質またはその前駆体の粒度分布における累積体積百分率が90%のときの粒子径(D90)の累積体積百分率が10%のときの粒子径(D10)に対する比(D90/D10)が、5以上かつ30以下のスラリーを乾燥し、次いで、得られた乾燥物を500℃以上かつ1000℃以下の非酸化性雰囲気下にて焼成することにより、電極活物質粒子の表面に、イオン伝導性物質を含有する炭素質被膜が形成され、前記イオン伝導性物質の表面の少なくとも一部が前記炭素質被膜に被覆されずに露出しているか、もしくは前記イオン伝導性物質が前記炭素質被膜に包含されている電極材料を得る方法である。
【0047】
電極活物質としては、上記の電極材料にて記載したのと同様、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウム、チタン酸リチウム及びLi
xA
yD
zPO
4(ただし、AはCo、Mn、Ni、Fe、Cu、Crの群から選択される1種または2種以上、DはMg、Ca、S、Sr、Ba、Ti、Zn、B、Al、Ga、In、Si、Ge、Sc、Y、希土類元素の群から選択される1種または2種以上、0<x<2、0<y<1.5、0≦z<1.5)の群から選択される1種を主成分とすることが好ましい。
【0048】
ここで、Aについては、Co、Mn、Ni、Feが、高い放電電位が得られやすいため好ましく、Dについては、Mg、Ca、Sr、Ba、Ti、Zn、Alが、高い放電電位が得られやすいため好ましい。
ここで、希土類元素とは、ランタン系列であるLa、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luの15元素のことである。
【0049】
Li
xA
yD
zPO
4にて表される化合物(Li
xA
yD
zPO
4粉体)としては、固相法、液相法、気相法等の従来の方法により製造したものを用いることができる。
化合物(Li
xA
yD
zPO
4粉体)としては、例えば、酢酸リチウム(LiCH
3COO)、塩化リチウム(LiCl)等のリチウム塩、あるいは水酸化リチウム(LiOH)からなる群から選択されたLi源と、塩化鉄(II)(FeCl
2)、酢酸鉄(II)(Fe(CH
3COO)
2)、硫酸鉄(II)(FeSO
4)等の2価の鉄塩と、リン酸(H
3PO
4)、リン酸二水素アンモニウム(NH
4H
2PO
4)、リン酸水素二アンモニウム((NH
4)
2HPO
4)等のリン酸化合物と、水とを混合して得られるスラリー状の混合物を、耐圧密閉容器を用いて水熱合成し、得られた沈殿物を水洗してケーキ状の前駆体物質を生成し、このケーキ状の前駆体物質を焼成して得られた化合物(Li
xA
yD
zPO
4粒子)を好適に用いることができる。
【0050】
Li
xA
yD
zPO
4粉体は、結晶性粒子であっても非晶質粒子であってもよく、結晶質粒子と非晶質粒子が共存した混晶粒子であってもよい。ここで、Li
xA
yD
zPO
4粉体が非晶質粒子でも良いとする理由は、非晶質のLi
xA
yD
zPO
4粉体は、500℃以上かつ1000℃以下の非酸化性雰囲気下にて熱処理すると、結晶化するからである。
【0051】
電極活物質の大きさは、特に限定されないが、1次粒子の平均粒径は0.01μm以上かつ20μm以下であることが好ましく、より好ましくは0.02μm以上かつ5μm以下である。
ここで、電極活物質の1次粒子の平均粒径を上記の範囲に限定した理由は、1次粒子の平均粒径が0.01μm未満では、1次粒子の表面を薄膜状の炭素で充分に被覆することが困難となり、高速充放電レートにおける放電容量が低くなり、充分な充放電レート性能を実現することが困難となるので、好ましくなく、一方、1次粒子の平均粒径が20μmを超えると、1次粒子の内部抵抗が大きくなり、したがって、高速充放電レートにおける放電容量が不充分となるので、好ましくないからである。
【0052】
電極活物質の形状は、特に限定されないが、球状、特に真球状の凝集体が生成し易いことから、電極活物質の形状も、球状、特に真球状のものが好適である。
ここで、電極活物質の形状が球状であることが好ましい理由は、電極活物質と、バインダー樹脂(結着剤)と、溶媒とを混合して正電極用ペーストを調製する際の溶媒量を低減させることができるとともに、正電極用ペーストの集電体への塗工も容易となるからである。
【0053】
また、電極活物質の形状が球状であれば、電極活物質の表面積が最小となり、電極材料合剤に添加するバインダー樹脂(結着剤)の配合量を最小限にすることができ、得られる正電極の内部抵抗を小さくすることができるので、好ましい。
さらに、電極活物質の形状が球状であれば、電極活物質が最密充填し易いので、単位体積あたりの正極材料の充填量が多くなり、よって、電極密度を高くすることができる。その結果、リチウムイオン電池の高容量化を図ることができるので、好ましい。
【0054】
イオン伝導性物質としては、上記の電極材料にて記載したのと同様、Li、Fe、Mn、Co、Ni、Si、Oからなる元素群のうちの一つ以上の元素を構成元素とする。具体的には、リン酸リチウム、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウム、チタン酸リチウム、酸化マンガン、及びLi
xA
yD
zPO
4(ただし、AはCo、Mn、Ni、Feの群から選択される1種または2種以上、DはMg、Ca、S、Sr、Ba、Ti、Zn、B、Al、Ga、In、Si、Ge、Sc、Y、希土類元素の群から選択される1種または2種以上、0<x<2、0<y<1.5、0≦z<1.5)の群から選択される1種を主成分とすることができる。
【0055】
また、有機化合物としては、電極活物質粒子の表面に炭素質被膜を形成できる化合物であれば特に限定されず、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、セルロース、デンプン、ゼラチン、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリアクリル酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリアクリルアミド、ポリ酢酸ビニル、グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース、マルトース、スクロース、ラクトース、グリコーゲン、ペクチン、アルギン酸、グルコマンナン、キチン、ヒアルロン酸、コンドロイチン、アガロース、ポリエーテル、2価アルコール、3価アルコール等が挙げられる。
【0056】
電極活物質と有機化合物との配合比は、有機化合物の全量を炭素量に換算したとき、電極活物質100質量部に対して0.6質量部以上かつ4.0質量部以下であることが好ましく、より好ましくは1.1質量部以上かつ1.7質量部以下である。
ここで、有機化合物の炭素量換算の配合比が0.6質量部未満では、電池を形成した場合に高速充放電レートにおける放電容量が低くなり、充分な充放電レート性能を実現することが困難となる。一方、有機化合物の炭素量換算の配合比が4.0質量部を超えると、リチウムイオンが炭素質被膜中を拡散する際に立体障害によってリチウムイオン移動抵抗が高くなり、その結果、電池を形成した場合に電池の内部抵抗が上昇し、高速充放電レートにおける電圧低下が無視できなくなる。
【0057】
これら電極活物質とイオン伝導性物質と有機化合物とを、水に溶解あるいは分散させて、均一なスラリーを調製する。溶解あるいは分散の際には、分散剤を加えるとなお良い。電極活物質とイオン伝導性物質と有機化合物とを水に溶解あるいは分散させる方法としては、電極活物質が分散し、有機化合物が溶解または分散する方法であればよく、特に限定されないが、例えば、遊星ボールミル、振動ボールミル、ビーズミル、ペイントシェーカー、アトライタ等の分散装置を用いることが好ましい。
【0058】
溶解あるいは分散の際には、電極活物質を1次粒子として分散し、その後、イオン伝導性物質と有機化合物を添加して溶解するように攪拌することが好ましい。このようにすれば、電極活物質の1次粒子の表面が有機化合物で被覆され、かつイオン伝導性物質が前記有機化合物に包含される。その結果として、電極活物質の1次粒子表面にイオン伝導性物質が偏在し、かつ電極活物質表面およびイオン伝導性物質の少なくとも一部が有機化合物由来の炭素によって被覆される。
【0059】
このスラリーを調整する際には、電極活物質またはその前駆体の比(D90/D10)を5以上かつ30以下とするように、スラリーの分散条件、例えば、スラリー中の電極活物質及び有機化合物の濃度、撹拌時間等を適宜調整する。これにより、得られた凝集体の体積密度を、この凝集体を中実とした場合の体積密度の50体積%以上かつ80体積%以下とすることができる。
【0060】
次いで、このスラリーを高温雰囲気中、例えば70℃以上かつ250℃以下の大気中に噴霧し、乾燥させる。
次いで、この乾燥物を、非酸化性雰囲気下、500℃以上かつ1000℃以下、好ましくは600℃以上かつ900℃以下の範囲内の温度にて、0.1時間以上かつ40時間以下、焼成する。
【0061】
非酸化性雰囲気としては、窒素(N
2)、アルゴン(Ar)等の不活性雰囲気が好ましく、より酸化を抑えたい場合には水素(H
2)等の還元性ガスを数体積%程度含む還元性雰囲気が好ましい。また、焼成時に非酸化性雰囲気中に蒸発した有機分を除去する目的で、酸素(O
2)等の支燃性または可燃性ガスを不活性雰囲気中に導入することとしてもよい。
【0062】
ここで、焼成温度を500℃以上かつ1000℃以下とした理由は、焼成温度が500℃未満では、乾燥物に含まれる有機化合物の分解・反応が充分に進行しないために、有機化合物の炭化が不充分なものとなり、その結果、得られた凝集体中に高抵抗の有機化合物の分解物が生成することとなるので好ましくないからである。一方、焼成温度が1000℃を超えると、電極活物質中のLiが蒸発して電極活物質に組成のズレが生じるだけでなく、電極活物質の粒成長が促進され、その結果、高速充放電レートにおける放電容量が低くなり、充分な充放電レート性能を実現することが困難となるので好ましくないからである。
【0063】
この焼成過程では、乾燥物を焼成する際の条件、例えば、昇温速度、最高保持温度、保持時間等を適宜調整することにより、得られる凝集体の粒度分布を制御することが可能である。
以上により、乾燥物中の有機化合物が熱分解して生成した炭素により電極活物質の1次粒子の表面が被覆され、かつイオン伝導性物質が前記炭素に包含される。その結果として、電極活物質の1次粒子表面にイオン伝導性物質が偏在し、かつ電極活物質表面およびイオン伝導性物質の少なくとも一部が炭素によって被覆された、電極活物質の1次粒子の間に炭素が介在した凝集体が得られる。
【0064】
[電極]
本実施形態の電極は、本実施形態の電極材料を含有してなる電極である。
本実施形態の電極を作製するには、上記の電極材料と、バインダー樹脂からなる結着剤と、溶媒とを混合して、電極形成用塗料または電極形成用ペーストを調整する。この際、必要に応じてカーボンブラック等の導電助剤を添加してもよい。
上記の結着剤、すなわちバインダー樹脂としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)樹脂、フッ素ゴム等が好適に用いられる。
上記の電極材料とバインダー樹脂との配合比は、特に限定されないが、例えば、電極材料100質量部に対してバインダー樹脂を1質量部以上かつ30質量部以下、好ましくは3質量部以上かつ20質量部以下とする。
【0065】
電極形成用塗料または電極形成用ペーストに用いる溶媒としては、バインダー樹脂の性質に合わせて適宜選択すればよい。例えば、水、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール(イソプロピルアルコール:IPA)、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、オクタノール、ジアセトンアルコール等のアルコール類、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン等のエステル類、ジエチルエーテル、エチレングルコールモノメチルエーテル(メチルセロソルブ)、エチレングルコールモノエチルエーテル(エチルセロソルブ)、エチレングルコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、アセチルアセトン、シクロヘキサノン等のケトン類、ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類等を挙げることができる。これらは、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0066】
次いで、電極形成用塗料または電極形成用ペーストを、金属箔の一方の面に塗布し、その後、乾燥し、上記の電極材料とバインダー樹脂との混合物からなる塗膜が一方の面に形成された金属箔を得る。
次いで、塗膜を加圧圧着し、乾燥して、金属箔の一方の面に電極材料層を有する集電体(電極)を作製する。
このようにして、本実施形態のリチウムイオン伝導性を損なうことなく、電子伝導性を向上させることができる電極を作製することができる。
【0067】
[リチウムイオン電池]
本実施形態のリチウムイオン電池は、本実施形態の電極からなる正極を備えている。
このリチウムイオン電池は、本実施形態の電極材料を用いて電極を作製することにより、電極の内部抵抗を小さくすることができる。したがって、電池の内部抵抗を低く抑えることができ、その結果、電圧が著しく低下する虞もなく、高速の充放電を行うことができるリチウムイオン電池を提供することができる。
本実施形態のリチウムイオン電池では、負極、電解液、セパレーター等は特に限定されない。例えば、負極としては、金属Li、炭素材料、Li合金、Li
4Ti
5O
12等の負極材料を用いることができる。また、電解液とセパレーターの代わりに、固体電解質を用いても良い。
【0068】
以上説明したように、本実施例の電極材料によれば、電極活物質粒子の表面に炭素質被膜が50%以上の被覆率にて形成された炭素質被覆電極活物質粒子の表面で、炭素質被膜と少なくとも一部が接触するイオン伝導性物質が0.1重量%以上30重量%以下存在することによって、電子伝導性が担保され、かつリチウム伝導性の高い炭素質被膜とイオン伝導性化合物との複合体が形成されているので、電極材料のリチウムイオン伝導性を改善することができる。
【0069】
さらに、炭素担持量、炭素質被膜の膜厚、炭素質被膜の密度、電極活物質粒子の比表面積、炭素質被膜を構成する炭素成分の質量百分率を制御することにより、この電極材料の内部抵抗を小さくすることができる。
【0070】
本実施形態の電極によれば、本実施形態の電極材料を含有したので、電子伝導性を損なうことなく、リチウムイオン伝導性を向上させた電極を提供することができる。
【0071】
本実施形態のリチウムイオン電池によれば、本実施形態の電極からなる正極を備えたので、電池の内部抵抗を低く抑えることができ、その結果、電圧が著しく低下する虞もなく、高速の充放電を行うことができる。
【0072】
さらに、上記の電極材料の炭素担持量、炭素質被膜の膜厚、炭素質被膜の密度、電極活物質粒子の比表面積、炭素質被膜を構成する炭素成分の質量百分率を制御することにより、この電極材料をリチウムイオン電池に用いた場合に、電池の内部抵抗が小さくなり、リチウムイオン電池を高出力電源として利用することができる。
【実施例】
【0073】
以下、実施例1〜19および比較例1により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
例えば、本実施例では、電極材料自体の挙動をデータに反映させるために負極に金属Liを用いたが、炭素材料、Li合金、Li
4Ti
5O
12等の負極材料を用いてもかまわない。また、電解液とセパレーターの代わりに固体電解質を用いても良い。
【0074】
「実施例1」
(電極材料の作製)
水2L(リットル)に、4molの酢酸リチウム(LiCH
3COO)、2molの硫酸鉄(II)(FeSO
4)、2molのリン酸(H
3PO
4)を、全体量が4Lになるように混合し、均一なスラリー状の混合物を調製した。
次いで、この混合物を容量8Lの耐圧密閉容器に収容し、200℃にて1時間、水熱合成を行った。
次いで、得られた沈殿物を水洗し、ケーキ状の電極活物質の前駆体を得た。
【0075】
次いで、この電極活物質の前駆体150g(固形分換算)とイオン伝導性物質としてリン酸リチウム(Li
3PO
4)0.15gと、有機化合物としてポリビニルアルコール(PVA)5.4gを水100gに溶解したポリビニルアルコール水溶液と、を混合してスラリーとし、このスラリーを、二流体式湿式ジェット粉砕機を用いて、スラリー中の電極活物質の前駆体粒子の粒度分布におけるD50が100nmとなるように、分散処理を行った。
次いで、この分散処理を行ったスラリーを180℃の大気雰囲気中に噴霧し、乾燥して、平均粒子径が6μmの乾燥物を得た。
次いで、得られた乾燥物を700℃の窒素雰囲気下にて1時間、焼成し、平均粒子径が6μmである実施例1の電極材料を得た。
【0076】
(電極材料の評価)
この電極材料の電極活物質の炭素量、炭素質被膜の被覆率それぞれの評価を行った。
評価方法は下記の通りである。
【0077】
(1)炭素量
炭素分析計を用いて電極活物質の炭素量を測定した。
(2) 炭素質被膜の被覆率
電極活物質を構成している凝集体の炭素質被膜を透過型電子顕微鏡(TEM)、エネルギー分散型X線分光器(EDX)を用いて観察し、凝集体の表面のうち炭素質被膜が覆っている部分の割合を算出し、被覆率とした。
【0078】
(リチウムイオン電池の作製)
上記の電極材料と、バインダーとしてポリフッ化ビニリデン(PVdF)と、導電助剤としてアセチレンブラック(AB)とを、質量比が90:5:5となるように混合し、さらに溶媒としてN−メチル−2−ピロリジノン(NMP)を加えて流動性を付与し、スラリーを作製した。
次いで、このスラリーを厚み15μmのアルミニウム(Al)箔上に塗布し、乾燥した。その後、600kgf/cm
2の圧力にて加圧し、実施例1のリチウムイオン電池の正極を作製した。
【0079】
このリチウムイオン電池の正極に対し、負極としてリチウム金属を配置し、これら正極と負極の間に多孔質ポリプロピレンからなるセパレーターを配置し、電池用部材とした。
一方、炭酸エチレンと炭酸ジエチルとを1:1(質量比)にて混合し、さらに1MのLiPF
6溶液を加えて、リチウムイオン伝導性を有する電解質溶液を作製した。
次いで、上記の電池用部材を上記の電解質溶液に浸漬し、実施例1のリチウムイオン電池を作製した。
【0080】
(リチウムイオン電池の評価)
このリチウムイオン電池の内部抵抗の評価を行った。評価方法は下記の通りである。
電極面積が2平方cm、電極密度が2.0g/ccの正極と、リチウム金属からなる負極とを、多孔質ポリプロピレンからなる25μmのセパレーターを介して対向させ、直径2cm、厚み3.2mmのコインセル容器内に配置し、放電深度50%、1C放電時に電流休止法により測定される電圧上昇と、1C放電電流とから、内部抵抗を算出した。内部抵抗を表1に示す。
【0081】
「実施例2」
イオン伝導性物質としてリン酸鉄リチウム(LiFePO
4)7.5gを混合した他は、実施例1と同様にして実施例2の電極材料及びリチウムイオン電池を作製し、評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0082】
「実施例3」
イオン伝導性物質としてリン酸マンガンリチウム(LiMnPO
4)15.0gを混合した他は、実施例1と同様にして実施例3の電極材料及びリチウムイオン電池を作製し、評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0083】
「実施例4」
イオン伝導性物質としてリン酸コバルトリチウム(LiCoPO
4)22.5gを混合した他は、実施例1と同様にして実施例4の電極材料及びリチウムイオン電池を作製し、評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0084】
「実施例5」
イオン伝導性物質としてリン酸ニッケルリチウム(LiNiPO
4)45.0gを混合した他は、実施例1と同様にして実施例5の電極材料及びリチウムイオン電池を作製し、評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0085】
「実施例6」
(電極材料の作製)
水2L(リットル)に、4molの酢酸リチウム(LiCH
3COO)、2molの硫酸鉄(II)(FeSO
4)、2molのリン酸(H
3PO
4)を、全体量が4Lになるように混合し、均一なスラリー状の混合物を調製した。
次いで、この混合物を容量8Lの耐圧密閉容器に収容し、200℃にて1時間、水熱合成を行った。
次いで、得られた沈殿物を水洗し、ケーキ状の電極活物質の前駆体を得た。
【0086】
次いで、この電極活物質の前駆体150g(固形分換算)とイオン伝導性物質としてコバルト酸リチウム(LiCoO
2)0.15gと、有機化合物としてポリビニルアルコール(PVA)10.8gを水100gに溶解したポリビニルアルコール水溶液と、を混合してスラリーとし、このスラリーを、二流体式湿式ジェット粉砕機を用いて、スラリー中の電極活物質の前駆体粒子の粒度分布におけるD50が100nmとなるように、分散処理を行った。
【0087】
次いで、この分散処理を行ったスラリーを180℃の大気雰囲気中に噴霧し、乾燥して、平均粒子径が6μmの乾燥物を得た。
次いで、得られた乾燥物を700℃の窒素雰囲気下にて1時間、焼成し、平均粒子径が6μmである実施例6の電極材料を得た。
【0088】
次いで、この電極材料の評価を、実施例1と同様にして行った。
また、この電極材料を用いて、実施例1と同様にして実施例6のリチウムイオン電池を作製し、評価を行った。これらの評価結果を表1に示す。
【0089】
「実施例7」
イオン伝導性物質としてマンガン酸リチウム(LiMn
2O
4)7.5gを混合した他は、実施例6と同様にして実施例7の電極材料及びリチウムイオン電池を作製し、評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0090】
「実施例8」
イオン伝導性物質としてチタン酸リチウム(Li
4Ti
5O
12)15.0gを混合した他は、実施例6と同様にして実施例8の電極材料及びリチウムイオン電池を作製し、評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0091】
「実施例9」
イオン伝導性物質としてニッケル酸リチウム(LiNiO
2)22.5gを混合した他は、実施例6と同様にして実施例9の電極材料及びリチウムイオン電池を作製し、評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0092】
「実施例10」
イオン伝導性物質としてLi
7P
3S
11 45gを混合した他は、実施例6と同様にして実施例10の電極材料及びリチウムイオン電池を作製し、評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0093】
「実施例11」
(電極材料の作製)
水2L(リットル)に、4molの酢酸リチウム(LiCH
3COO)、2molの硫酸鉄(II)(FeSO
4)、2molのリン酸(H
3PO
4)を、全体量が4Lになるように混合し、均一なスラリー状の混合物を調製した。
次いで、この混合物を容量8Lの耐圧密閉容器に収容し、200℃にて1時間、水熱合成を行った。
次いで、得られた沈殿物を水洗し、ケーキ状の電極活物質の前駆体を得た。
【0094】
次いで、この電極活物質の前駆体150g(固形分換算)とイオン伝導性物質として酸化マンガン(MnO
2)0.15gと、有機化合物としてポリビニルアルコール(PVA)21.6gを水100gに溶解したポリビニルアルコール水溶液とを混合してスラリーとし、このスラリーを、二流体式湿式ジェット粉砕機を用いて、スラリー中の電極活物質の前駆体粒子の粒度分布におけるD50が100nmとなるように、分散処理を行った。
【0095】
次いで、この分散処理を行ったスラリーを180℃の大気雰囲気中に噴霧し、乾燥して、平均粒子径が6μmの乾燥物を得た。
次いで、得られた乾燥物を700℃の窒素雰囲気下にて1時間、焼成し、平均粒子径が6μmである実施例11の電極材料を得た。
【0096】
次いで、この電極材料の評価を、実施例1と同様にして行った。
また、この電極材料を用いて、実施例1と同様にして実施例11のリチウムイオン電池を作製し、評価を行った。これらの評価結果を表1に示す。
【0097】
「実施例12」
イオン伝導性物質としてLiPON 7.5gを混合した他は、実施例11と同様にして実施例12の電極材料及びリチウムイオン電池を作製し、評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0098】
「実施例13」
イオン伝導性物質としてLi
7La
3Zr
2O
12 15.0gを混合した他は、実施例11と同様にして実施例13の電極材料及びリチウムイオン電池を作製し、評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0099】
「実施例14」
イオン伝導性物質としてLa
0.62Li
0.16TiO
3 22.5gを混合した他は、実施例11と同様にして実施例14の電極材料及びリチウムイオン電池を作製し、評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0100】
「実施例15」
イオン伝導性物質としてLi
10GeP
2S
12 45.0gを混合した他は、実施例11と同様にして実施例15の電極材料及びリチウムイオン電池を作製し、評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0101】
「実施例16」
(電極材料の作製)
水2L(リットル)に、4molの酢酸リチウム(LiCH
3COO)、2molの硫酸鉄(II)(FeSO
4)、2molのリン酸(H
3PO
4)を、全体量が4Lになるように混合し、均一なスラリー状の混合物を調製した。
次いで、この混合物を容量8Lの耐圧密閉容器に収容し、200℃にて1時間、水熱合成を行った。
次いで、得られた沈殿物を水洗し、ケーキ状の電極活物質の前駆体を得た。
【0102】
次いで、この電極活物質の前駆体150g(固形分換算)とイオン伝導性物質としてコバルト酸リチウム(LiCoO
2)60.0gと、有機化合物としてポリビニルアルコール(PVA)2.16gを水100gに溶解したポリビニルアルコール水溶液と、を混合してスラリーとし、このスラリーを、二流体式湿式ジェット粉砕機を用いて、スラリー中の電極活物質の前駆体粒子の粒度分布におけるD50が100nmとなるように、分散処理を行った。
【0103】
次いで、この分散処理を行ったスラリーを180℃の大気雰囲気中に噴霧し、乾燥して、平均粒子径が6μmの乾燥物を得た。
次いで、得られた乾燥物を700℃の窒素雰囲気下にて1時間、焼成し、平均粒子径が6μmである比較例1の電極材料を得た。
【0104】
次いで、この電極材料の評価を、実施例1と同様にして行った。
また、この電極材料を用いて、実施例1と同様にして実施例16のリチウムイオン電池を作製し、評価を行った。これらの評価結果を表1に示す。
【0105】
「実施例17」
イオン伝導性物質としてコバルト酸リチウム(LiCoO
2)40.0gと、有機化合物としてポリビニルアルコール(PVA)3.78gを水100gに溶解したポリビニルアルコール水溶液と、を混合してスラリーとした他は、実施例16と同様にして実施例17の電極材料及びリチウムイオン電池を作製し、評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0106】
「実施例18」
イオン伝導性物質としてコバルト酸リチウム(LiCoO2)0.075gと、有機化合物としてポリビニルアルコール(PVA)27.0gを水100gに溶解したポリビニルアルコール水溶液とを混合してスラリーとした他は、実施例16と同様にして実施例18の電極材料及びリチウムイオン電池を作製し、評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0107】
「実施例19」
イオン伝導性物質としてコバルト酸リチウム(LiCoO2)0.75gと、有機化合物としてポリビニルアルコール(PVA)4.25gを水100gに溶解したポリビニルアルコール水溶液と、を混合してスラリーとした他は、実施例16と同様にして比較例4の電極材料及びリチウムイオン電池を作製し、評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0108】
「比較例1」
(電極材料の作製)
水2L(リットル)に、4molの酢酸リチウム(LiCH
3COO)、2molの硫酸鉄(II)(FeSO
4)、2molのリン酸(H
3PO
4)を、全体量が4Lになるように混合し、均一なスラリー状の混合物を調製した。
次いで、この混合物を容量8Lの耐圧密閉容器に収容し、200℃にて1時間、水熱合成を行った。
次いで、得られた沈殿物を水洗し、ケーキ状の電極活物質の前駆体を得た。
次いで、この電極活物質の前駆体150g(固形分換算)と有機化合物としてポリビニルアルコール(PVA)27.0gを水100gに溶解したポリビニルアルコール水溶液を混合してスラリーとし、このスラリーを、二流体式湿式ジェット粉砕機を用いて、スラリー中の電極活物質の前駆体粒子の粒度分布におけるD50が100nmとなるように、分散処理を行った。
【0109】
次いで、この分散処理を行ったスラリーを180℃の大気雰囲気中に噴霧し、乾燥して、平均粒子径が6μmの乾燥物を得た。
次いで、得られた乾燥物を700℃の窒素雰囲気下にて1時間、焼成し、平均粒子径が6μmである比較例1の電極材料を得た。
【0110】
次いで、この電極材料の評価を、実施例1と同様にして行った。
また、この電極材料を用いて、実施例1と同様にして比較例1のリチウムイオン電池を作製し、評価を行った。これらの評価結果を表1に示す。
【0111】
【表1】
【0112】
以上の結果によれば、実施例1〜19の電極材料の内部抵抗は11〜30Ω程度であり、比較例1の電極材料の内部抵抗は35Ωであった。このように、実施例1〜19の電極材料は、比較例1の電極材料に比べて内部抵抗が低く、リチウムイオン電池の電極材料として用いた場合に、内部抵抗を低下させることができることが分かった。
【0113】
さらに、実施例1〜19の電極材料の中で比較すると、実施例1〜15の電極材料は、電極活物質粒子の表面に炭素質被膜が50%以上の被覆率にて形成された炭素質被覆電極活物質粒子を凝集してなる凝集体からなり、イオン伝導性物質を0.1重量%以上30重量%以下含有し、さらに内部抵抗が11.6Ω以上かつ19.9Ω以下の範囲にあることが分かった。
また、これらの電極材料は、内部抵抗が20.0Ωを下回ることから、実施例16〜19の電極材料と比べて内部抵抗が低く、リチウムイオン電池の電極材料として用いた場合に、内部抵抗を低下させることができることが分かった。