特許第5861702号(P5861702)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5861702
(24)【登録日】2016年1月8日
(45)【発行日】2016年2月16日
(54)【発明の名称】導電性マイエナイト化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01F 7/00 20060101AFI20160202BHJP
   C04B 35/44 20060101ALI20160202BHJP
【FI】
   C01F7/00 C
   C04B35/44
【請求項の数】13
【全頁数】39
(21)【出願番号】特願2013-515080(P2013-515080)
(86)(22)【出願日】2012年5月7日
(86)【国際出願番号】JP2012061687
(87)【国際公開番号】WO2012157461
(87)【国際公開日】20121122
【審査請求日】2015年2月3日
(31)【優先権主張番号】特願2011-107902(P2011-107902)
(32)【優先日】2011年5月13日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2011-223029(P2011-223029)
(32)【優先日】2011年10月7日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】旭硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 和弘
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 俊成
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 暁
(72)【発明者】
【氏名】宮川 直通
【審査官】 佐藤 哲
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2006/129675(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/074092(WO,A1)
【文献】 国際公開第2006/129674(WO,A1)
【文献】 国際公開第2005/077859(WO,A1)
【文献】 国際公開第2007/060890(WO,A1)
【文献】 国際公開第2005/000741(WO,A1)
【文献】 特開2012−025636(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01F 1/00 − 17/00
C04B 35/44
CAplus(STN)
REGISTRY(STN)
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性マイエナイト化合物の製造方法であって、
(1)酸化カルシウムと酸化アルミニウムを、13:6〜11:8(CaO:Alに換算したモル比)の割合で含む仮焼粉を準備する工程と、
(2)前記工程(1)で準備された仮焼粉を含む被処理体を、一酸化炭素ガスおよびアルミニウム源から供給されるアルミニウム蒸気の存在下に、前記アルミニウム源に接触しない状態で配置し、還元性雰囲気下で、前記被処理体を1220℃〜1350℃の範囲の温度に保持する工程と、
を含むことを特徴とする製造方法。
【請求項2】
前記仮焼粉は、
酸化カルシウム、炭酸カルシウム、および水酸化カルシウムからなる群から選定された少なくとも一つを含む原料Aと、
酸化アルミニウムおよび水酸化アルミニウムからなる群から選定された少なくとも一つを含む原料Bと、
を含む混合物を熱処理することにより製造される請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記熱処理は、500℃〜1200℃で行われる、請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記仮焼粉を含む被処理体は、前記仮焼粉を含む成形体である請求項1乃至3のいずれか一つに記載の製造方法。
【請求項5】
前記(2)の工程は、前記被処理体および前記アルミニウム源を、カーボンを含む容器中に入れた状態で行われる請求項1乃至4のいずれか一つに記載の製造方法。
【請求項6】
前記(2)の工程は、100Pa以下の減圧環境、または窒素を除く不活性ガス雰囲気で行われる請求項1乃至5のいずれか一つに記載の製造方法。
【請求項7】
前記(1)の工程において、酸化カルシウムと酸化アルミニウムを、12.6:6.4〜11.7:7.3(CaO:Alに換算したモル比)の割合で含む仮焼粉を準備する、請求項1〜6のいずれか一つに記載の製造方法。
【請求項8】
高導電性マイエナイト化合物の製造方法であって、
(1)マイエナイト化合物の粉末を準備する工程と、
(2)前記工程(1)で準備された化合物の粉末を含む被処理体を、一酸化炭素ガスおよびアルミニウム源から供給されるアルミニウム蒸気の存在下に、前記アルミニウム源に接触しない状態で配置し、還元性雰囲気下で、前記被処理体を1230℃〜1415℃の範囲の温度に保持する工程と、
を含むことを特徴とする製造方法。
【請求項9】
前記(2)の工程は、前記被処理体および前記アルミニウム源を、カーボンを含む容器中に入れた状態で行われる請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
前記(2)の工程により、表面にアルミニウム炭化物層を有する高導電性マイエナイト化合物が得られる請求項8または9に記載の製造方法。
【請求項11】
前記マイエナイト化合物の粉末を含む被処理体は、前記マイエナイト化合物粉末を含む成形体である請求項8乃至10のいずれか一つに記載の製造方法。
【請求項12】
前記(2)の工程は、100Pa以下の減圧環境、または窒素を除く不活性ガス雰囲気で行われる請求項8乃至11のいずれか一つに記載の製造方法。
【請求項13】
電子密度が3×1020cm−3以上の高導電性マイエナイト化合物を得る請求項8乃至12のいずれか一つに記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性マイエナイト化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マイエナイト化合物は、12CaO・7Alで表される代表組成を有し、三次元的に連結された直径約0.4nmの空隙(ケージ)を有する特徴的な結晶構造を持つ。このケージを構成する骨格は、正電荷を帯びており、単位格子当たり12個のケージを形成する。このケージの1/6は、結晶の電気的中性条件を満たすため、内部が酸素イオンで占められている。しかしながら、このケージ内の酸素イオンは、骨格を構成する他の酸素イオンとは化学的に異なる特性を有しており、このため、ケージ内の酸素イオンは、特にフリー酸素イオンと呼ばれている。マイエナイト化合物は、[Ca24Al2864]4+・2O2−とも表記される(非特許文献1)。
マイエナイト化合物のケージ中のフリー酸素イオンの一部または全部を電子と置換した場合、マイエナイト化合物に導電性が付与される。これは、マイエナイト化合物のケージ内に包接された電子は、ケージにあまり拘束されず、結晶中を自由に動くことができるためである(特許文献1)。このような導電性を有するマイエナイト化合物は、特に、「導電性マイエナイト化合物」と称される。
【0003】
このような導電性マイエナイト化合物は、例えば、マイエナイト化合物の粉末を蓋付きカーボン容器に入れて、窒素ガス雰囲気下1300℃で熱処理して作製する方法(特許文献2)により製造することができる。以下、この方法を従来方法1という。
【0004】
また、導電性マイエナイト化合物は、マイエナイト化合物をアルミニウムとともに蓋付きアルミナ容器に入れ、真空中で1300℃で熱処理して作製する方法(特許文献2)により製造することができる。以下、この方法を従来方法2という。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2005/000741号
【特許文献2】国際公開第2006/129674号
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】F.M.Lea,C.H.Desch,The Chemistryof Cement and Concrete,2nd ed.,p.52,Edward Arnold&Co.,London,1956
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
導電性マイエナイト化合物は、例えば蛍光ランプの電極材料としての適用が期待されている。しかしながら、前述の従来方法1では、電子密度が十分に高い(すなわち電気伝導率が十分に高い)導電性マイエナイト化合物を得ることは難しいという問題がある。前述の従来方法1では、得られる導電性マイエナイト化合物の電子密度は、3×1020cm−3未満である。
【0008】
このような電子密度の低い導電性マイエナイト化合物を、例えば蛍光ランプ等の電極材料として用いると、導電率が小さいためジュール熱が発生し、導電性マイエナイト化合物が高温になる。一般に、蛍光ランプは数秒で点灯するため、点灯する度にジュール熱が発生し、導電性マイエナイト化合物に熱応力が発生する。熱応力が蓄積されると、導電性マイエナイト化合物に亀裂や割れが生じ、破損する恐れがある。このような背景から、導電性マイエナイト化合物の導電率をより大きくするため、導電性マイエナイト化合物をよりいっそう高電子密度化することが要求されている。なお、ほぼすべてのフリー酸素イオンが電子で置換された場合、導電性マイエナイト化合物の電子密度は、最大2.3×1021cm−3であることが知られている。
【0009】
一方、前述の従来方法2では、1×1021cm−3超の高い電子密度の導電性マイエナイト化合物を得ることができる。しかし、マイエナイト化合物をアルミニウムと接触させて加熱することが必要であり、その場合、以下の問題があることを本願発明者らは発見した。
【0010】
アルミニウムの融点は、660℃であるため、マイエナイト化合物とアルミニウムとをそれ以上の温度で加熱した場合、マイエナイト化合物の表面に、液体のアルミニウムが形成されることになる。このような状態で室温まで温度を下げると、導電性マイエナイト化合物の表面は、アルミニウムの固体が固着した状態となる。このような固着物は、導電性マイエナイト化合物と強固に密着しており、固着物を剥離したり、除去したりすることは容易ではない。従って、このような現象が生じると、加工処理を必要とし生産性に欠ける。
【0011】
一方、マイエナイト化合物をアルミニウム固体と接触させずにアルミニウム蒸気雰囲気下で加熱しても、現実的な時間内に高い電子密度の導電性マイエナイト化合物を得ることはできない。
【0012】
マイエナイト化合物をアルミニウム蒸気雰囲気下で加熱すると、マイエナイト化合物の表面にカルシウムアルミネート(例えばCaO・Al)を含んだ酸化物の絶縁層が形成される。このような絶縁層は、アルミニウム蒸気がマイエナイト化合物内部に拡散する際の障害となる。このため、マイエナイト化合物をアルミニウム固体と接触させずにアルミニウム蒸気雰囲気下で加熱した場合、マイエナイト化合物の還元反応が著しく遅くなり、電子密度を高くするには、極めて長時間の熱処理が必要になってしまう。
【0013】
本発明は、このような問題に鑑みなされたものであり、本発明では、高い電子密度を有する導電性マイエナイト化合物を効率良く製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本願の第1発明では、
導電性マイエナイト化合物の製造方法であって、
(1)酸化カルシウムと酸化アルミニウムを、13:6〜11:8(モル比)の割合で含む仮焼粉を準備する工程と、
(2)前記工程(1)で準備された仮焼粉を含む被処理体を、一酸化炭素ガスおよびアルミニウム源から供給されるアルミニウム蒸気の存在下に、前記アルミニウム源に接触しない状態で配置し、還元性雰囲気下で、前記被処理体を1220℃〜1350℃の範囲の温度に保持する工程と、
を含むことを特徴とする製造方法が提供される。
【0015】
ここで、本願の第1発明による製造方法において、前記仮焼粉は、
酸化カルシウム、炭酸カルシウム、および水酸化カルシウムからなる群から選定された少なくとも一つを含む原料Aと、
酸化アルミニウムおよび水酸化アルミニウムからなる群から選定された少なくとも一つを含む原料Bと、
を含む混合物を熱処理することにより製造されても良い。
【0016】
また、本願の第1発明による製造方法において、前記熱処理は、500℃〜1200℃で行われても良い。
【0017】
また、本願の第1発明による製造方法において、前記仮焼粉を含む被処理体は、前記仮焼粉を含む成形体であっても良い。
【0018】
また、本願の第1発明による製造方法において、前記(2)の工程は、前記被処理体および前記アルミニウム源を、カーボンを含む容器中に入れた状態で行われても良い。
【0019】
また、本願の第1発明による製造方法において、前記(2)の工程は、100Pa以下の減圧環境、または窒素を除く不活性ガス雰囲気で行われても良い。
【0020】
また、本願の第1発明による製造方法では、前記(1)の工程において、酸化カルシウムと酸化アルミニウムを、12.6:6.4〜11.7:7.3(モル比)の割合で含む仮焼粉が準備されても良い。
【0021】
本願の第2発明では、
高導電性マイエナイト化合物の製造方法であって、
(1)マイエナイト化合物の粉末を準備する工程と、
(2)前記工程(1)で準備された化合物の粉末を含む被処理体を、一酸化炭素ガスおよびアルミニウム源から供給されるアルミニウム蒸気の存在下に、前記アルミニウム源に接触しない状態で配置し、還元性雰囲気下で、前記被処理体を1230℃〜1415℃の範囲の温度に保持する工程と、
を含むことを特徴とする製造方法が提供される。
【0022】
ここで、本願の第2発明による製造方法において、前記(2)の工程は、前記被処理体および前記アルミニウム源を、カーボンを含む容器中に入れた状態で行われても良い。
【0023】
また、本願の第2発明による製造方法において、前記(2)の工程により、表面にアルミニウム炭化物層を有する高導電性マイエナイト化合物が得られても良い。
【0024】
また、本願の第2発明による製造方法において、前記マイエナイト化合物の粉末を含む被処理体は、前記マイエナイト化合物粉末を含む成形体であっても良い。
【0025】
また、本願の第2発明による製造方法において、前記(2)の工程は、100Pa以下の減圧環境、または窒素を除く不活性ガス雰囲気で行われても良い。
【0026】
また、本願の第2発明による製造方法において、電子密度が3×1020cm−3以上の高導電性マイエナイト化合物が得られても良い。
【発明の効果】
【0027】
本発明では、高い電子密度を有する導電性マイエナイト化合物を効率良く製造する方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本願の第1発明による導電性マイエナイト化合物の製造方法の一例を模式的に示したフロー図である。
図2】被処理体を高温処理する際に使用される装置の一構成例を模式的に示した図である。
図3】実施例1に係る成形体B1を高温処理する際に使用した装置の構成を模式的に示した図である。
図4】本願の第2発明による高導電性マイエナイト化合物の製造方法の一例を模式的に示したフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
(本願の第1発明)
本願の第1発明では、
導電性マイエナイト化合物の製造方法であって、
(1)酸化カルシウムと酸化アルミニウムを、14:5〜10:9(モル比)の割合で含む仮焼粉を準備する工程と、
(2)前記工程(1)で準備された仮焼粉を含む被処理体を、一酸化炭素ガスおよびアルミニウム源から供給されるアルミニウム蒸気の存在下に、前記アルミニウム源に接触しない状態で配置し、還元性雰囲気下で、前記被処理体を1220℃〜1350℃の範囲の温度に保持する工程と、
を含むことを特徴とする製造方法が提供される。
【0030】
ここで、本願において、「マイエナイト化合物」とは、ケージ(籠)構造を有する12CaO・7Al(以下「C12A7」ともいう)およびC12A7と同等の結晶構造を有する化合物(同型化合物)の総称である。
【0031】
また、本願において、「導電性マイエナイト化合物」とは、ケージ中に含まれる「フリー酸素イオン」の一部もしくは全てが電子で置換された、電子密度が1.0×1018cm−3以上のマイエナイト化合物を表す。全てのフリー酸素イオンが電子で置換されたときの電子密度は、2.3×1021cm−3である。
【0032】
従って、「マイエナイト化合物」には、「導電性マイエナイト化合物」および「非導電性マイエナイト化合物」が含まれる。
【0033】
本願の第1発明では、製造される「導電性マイエナイト化合物」の電子密度は、好ましくは3.0×1020cm−3以上であり、従来の蓋付きカーボン容器を用いた方法に比べて有意に大きな電子密度を有する「導電性マイエナイト化合物」を得ることができる。
【0034】
以下、本願において、3.0×1020cm−3以上の電子密度を有する導電性マイエナイト化合物を、特に「高導電性マイエナイト化合物」と称することにする。
【0035】
なお、一般に、導電性マイエナイト化合物の電子密度は、マイエナイト化合物の電子密度により、2つの方法で測定される。電子密度は、1.0×1018cm−3〜3.0×1020cm−3未満の場合、導電性マイエナイト化合物粉末の拡散反射を測定し、クベルカムンク変換させた吸収スペクトルの2.8eV(波長443nm)の吸光度(クベルカムンク変換値)から算出される。この方法は、電子密度とクベルカムンク変換値が比例関係になることを利用している。以下、検量線の作成方法について説明する。
【0036】
電子密度の異なる試料を4点作成しておき、それぞれの試料の電子密度を、電子スピン共鳴(ESR)のシグナル強度から求めておく。ESRで測定できる電子密度は、1.0×1014cm−3〜1.0×1019cm−3程度である。クベルカムンク値とESRで求めた電子密度をそれぞれ対数でプロットすると比例関係となり、これを検量線とした。すなわち、この方法では、電子密度が1.0×1019cm−3〜3.0×1020cm−3では検量線を外挿した値である。
【0037】
電子密度が3.0×1020cm−3〜2.3×1021cm−3の場合、電子密度は、導電性マイエナイト化合物粉末の拡散反射を測定し、クベルカムンク変換させた吸収スペクトルのピークの波長(エネルギー)から換算される。関係式は下記の式を用いた:

n=(−(Esp−2.83)/0.199)0.782

ここで、nは電子密度(cm−3)、Espはクベルカムンク変換した吸収スペクトルのピークのエネルギー(eV)を示す。
【0038】
また、本発明において、導電性マイエナイト化合物は、カルシウム(Ca)、アルミニウム(Al)および酸素(O)からなるC12A7結晶構造を有している限り、カルシウム(Ca)、アルミニウム(Al)および酸素(O)の中から選ばれた少なくとも1種の原子の一部が、他の原子や原子団に置換されていても良い。例えば、カルシウム(Ca)の一部は、マグネシウム(Mg)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、セリウム(Ce)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)および銅(Cu)からなる群から選択される1以上の原子で置換されていても良い。また、アルミニウム(Al)の一部は、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、ホウ素(B)、ガリウム(Ga)、チタン(Ti)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、セリウム(Ce)、プラセオジウム(Pr)、スカンジウム(Sc)、ランタン(La)、イットリウム(Y)、ヨーロピウム(Eu)、イットリビウム(Yb)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)およびテリビウム(Tb)からなる群から選択される1以上の原子で置換されても良い。また、ケージの骨格の酸素は、窒素(N)などで置換されていても良い。
【0039】
本願の第1発明による製造方法では、被処理体は、前述の従来方法2とは異なり、アルミニウム源に接触しない状態で、一酸化炭素ガスとアルミニウム蒸気の存在下に配置される。このため、本願の第1発明による製造方法では、得られる導電性マイエナイト化合物の表面に、アルミニウム固着物が付着しない。従って、処理後に、導電性マイエナイト化合物から固着物を剥離したり、除去したりする必要はない。
【0040】
また、本願の第1発明による製造方法では、被処理体として、前述の組成を有する仮焼粉が使用され、この仮焼粉が、一酸化炭素ガスとアルミニウム蒸気に晒される。このため、本願の第1発明では、仮焼粉がある温度以上の温度に加熱されると、仮焼粉中の酸化カルシウムと酸化アルミニウムとが反応して、非導電性マイエナイト化合物が生成される。生成した非導電性マイエナイト化合物は、ケージ内のフリー酸素が速やかに(実際には、非導電性マイエナイト化合物の生成と同時に)電子に置換され、還元される。これにより、高導電性マイエナイト化合物が生成される。その後は、通常のセラミックス粒子の焼結過程と同様の過程により、生成した高導電性マイエナイト化合物の粉末同士が焼結され、高導電性マイエナイト化合物の焼結体が形成される。
【0041】
このように、本願の第1発明では、仮焼粉を含む原料から、「直接」、導電性マイエナイト化合物の焼結体を生成することができる。従って、従来のような、マイエナイト化合物をアルミニウム固体と接触させずに、一酸化炭素ガスの存在しない、アルミニウム蒸気雰囲気下で加熱する方法とは異なり、本願の第1発明では、処理中にマイエナイト化合物の表面に絶縁層が形成され、還元種の内部への拡散が制限されるという問題を回避することができる。
【0042】
このように、本願の第1発明では、比較的短い時間で、十分に高い電子密度の導電性マイエナイト化合物を得ることができる。
【0043】
(本願の第1発明による導電性マイエナイト化合物の製造方法)
以下、図面を参照して、本願の第1発明による製造方法について、詳しく説明する。
【0044】
図1には、本願の第1発明による導電性マイエナイト化合物の製造方法を示す。
【0045】
図1に示すように、本願の第1発明による製造方法は、
(1)酸化カルシウムと酸化アルミニウムを、14:5〜10:9(モル比)の割合で含む仮焼粉を準備する工程(ステップS110)と、
(2)前記工程(1)で準備された仮焼粉を含む被処理体を、一酸化炭素ガスおよびアルミニウム源から供給されるアルミニウム蒸気の存在下に、前記アルミニウム源に接触しない状態で配置し、還元性雰囲気下で、前記被処理体を1220℃〜1350℃の範囲の温度に保持する工程(ステップS120)と、
を有する。以下、それぞれの工程について説明する。
【0046】
(工程S110:仮焼粉調製工程)
まず、被処理体用の仮焼粉が調製される。
【0047】
なお本願において、「仮焼粉」とは、熱処理により調合された、酸化カルシウムと酸化アルミニウムとを含む混合粉末を意味する。「仮焼粉」は、カルシウム(Ca)とアルミニウム(Al)の割合が、CaO:Alに換算したモル比で、14:5〜10:9となるように調合される。
【0048】
特に、カルシウム(Ca)とアルミニウム(Al)の割合は、CaO:Alに換算したモル比で、13:6〜11:8であることが好ましく、12.6:6.4〜11.7:7.3であることがより好ましく、12.3:6.7〜11.8:7.2であることがさらに好ましい。理想的には、酸化カルシウムと酸化アルミニウムのモル比は、約12:7である。
【0049】
仮焼粉は、以下のようにして調製することができる。
【0050】
まず、混合粉末を準備する。混合粉末は、少なくとも、酸化カルシウム源および酸化アルミニウム源となる原料を含む。
【0051】
例えば、混合粉末は、カルシウムアルミネートを含むか、または、カルシウム化合物、アルミニウム化合物、およびカルシウムアルミネートからなる群から選定された少なくとも2つを含むことが好ましい。
【0052】
原料粉末は、例えば、カルシウム化合物とアルミニウム化合物とを含む混合粉末であっても良い。原料粉末は、例えば、カルシウム化合物とカルシウムアルミネートとを含む混合粉末であっても良い。また、原料粉末は、例えば、アルミニウム化合物とカルシウムアルミネートとを含む混合粉末であっても良い。また、原料粉末は、例えば、カルシウム化合物と、アルミニウム化合物と、カルシウムアルミネートとを含む混合粉末であっても良い。さらに、原料粉末は、例えば、カルシウムアルミネートのみを含む混合粉末であっても良い。
【0053】
以下、代表例として、混合粉末が少なくとも、酸化カルシウム源となる原料Aと、酸化アルミニウム源となる原料Bとを含む場合を想定して、工程S110について説明する。
【0054】
原料Aとしては、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸水素カルシウム、硫酸カルシウム、メタリン酸カルシウム、シュウ酸カルシウム、酢酸カルシウム、硝酸カルシウム、およびハロゲン化カルシウムなどが挙げられる。これらの中では、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、および水酸化カルシウムが好ましい。
【0055】
原料Bとしては、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、およびハロゲン化アルミニウムなどが挙げられる。これらの中では、水酸化アルミニウムおよび酸化アルミニウムが好ましい。
【0056】
なお、仮焼粉は、原料Aおよび原料B以外の物質を含んでも良い。
【0057】
次に、原料Aおよび原料Bを含む混合粉末が熱処理される。これにより、酸化カルシウムと酸化アルミニウムを含む仮焼粉が得られる。前述のように、仮焼粉中の酸化カルシウムと酸化アルミニウムの割合は、モル比で、12.6:6.4〜11.7:7.3の範囲である。
【0058】
なお、熱処理の温度は、おおよそ500℃〜1200℃の範囲である。
【0059】
ただし、正確には、熱処理の温度は、使用する原料Aおよび原料Bによって変化する。例えば、原料Aとして酸化カルシウムを使用し、原料Bとして酸化アルミニウムを使用した場合、熱処理温度は、例えば500℃〜1200℃の範囲である。また、原料Aとして炭酸カルシウムを選定した場合、炭酸カルシウムが酸化カルシウムと二酸化炭素に分解する温度は、約900℃であるため、混合粉末の熱処理温度は、少なくとも900℃以上である必要がある。同様に、原料Aとして水酸化カルシウムを選定した場合、水酸化カルシウムが酸化カルシウムと水に分解する温度は、約450℃〜約500℃であるため、混合粉末の熱処理温度は、少なくとも約500℃以上である必要がある。その他の化合物の場合も、同様に考えられる。
【0060】
熱処理は、大気中で実施しても良い。
【0061】
熱処理後に得られた仮焼粉は、通常、一部または全てが焼結した塊状である。このため、必要に応じて、塊状焼結体の粉砕処理を実施しても良い。
【0062】
粉砕処理(粗粉砕)には、例えば、スタンプミル等が使用される。その後、さらに、自動乳鉢や乾式ボールミルで、平均粒径が10μm〜100μm程度まで粉砕処理が行われても良い。ここで、「平均粒径」は、レーザ回折散乱法で測定して得た値を意味するものとする。以下、粉末の平均粒径は、同様の方法で測定した値を意味するものとする。
【0063】
さらに微細で均一な粉末を得たい場合は、例えば、C2n+1OH(nは3以上の整数)で表されるアルコール(例えば、イソプロピルアルコール)を溶媒として用いた、湿式ボールミル、または循環式ビーズミルなどを用いることにより、粉末の平均粒径を0.5μm〜50μmまで微細化することができる。
【0064】
以上の工程により、仮焼粉が調製される。
【0065】
(工程S120:焼成工程)
次に、以下に示すように、得られた仮焼粉を含む被処理体を高温に保持することにより、直接、導電性マイエナイト化合物が製造される。
【0066】
仮焼粉を含む被処理体としては、工程S110で調製した粉末である仮焼粉を成形せずに、そのまま使用しても良い。あるいは、被処理体として、工程S110で調製した仮焼粉を含む成形体が使用されても良い。
【0067】
成形体の形成方法は、特に限られず、従来の各種方法を用いて、成形体を形成しても良い。例えば、成形体は、工程S110で調製した粉末、または該粉末を含む混練物からなる成形材料の加圧成形により、調製しても良い。
【0068】
成形材料には、必要に応じて、バインダ、潤滑剤、可塑剤または溶媒が含まれる。バインダとしては、例えば、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリビニルブチラール、EVA(エチレンビニルアセテート)樹脂、EEA(エチレンエチルアクリレート)樹脂、アクリル系樹脂、セルロース系樹脂(ニトロセルロース、エチルセルロース)、ポリエチレンオキシド、などが使用できる。潤滑剤としてワックス類やステアリン酸が使用できる。可塑剤としてフタル酸エステルが使用できる。溶媒としては、トルエン、キシレンのような芳香族化合物、酢酸ブチル、テルピネオール、ブチルカルビトールアセテート、化学式C2n+1OH(n=1〜4)で表されるアルコール(例えばイソプロピルアルコール)等が使用できる。
【0069】
成形材料をシート成形、押出成形、または射出成形することにより、成形体を得ることができる。ニアネットシェイプ成形が可能である、すなわち、最終製品に近い形状を生産性よく製造可能であることから、射出成形が好ましい。
【0070】
射出成形では、予め仮焼粉とバインダを加熱混練して成形材料を用意し、この成形材料を射出成形機へ投入して、所望の形状の成形体を得ることができる。例えば、仮焼粉をバインダと加熱混練し、冷却することで、大きさ1〜10mm程度のペレットまたは粉末状の成形材料を得る。加熱混練では、ラボプラストミルなどが用いられ、せん断力により粉末の凝集がほぐれ、粉末の1次粒子にバインダがコーティングされる。この成形材料を射出成型機に投入し、120〜250℃に加熱してバインダに流動性を発現させる。金型は予め50〜80℃で加熱しておき、3〜10MPaの圧力で金型へ材料を注入することで、所望の形状の成形体を得ることができる。
【0071】
あるいは、前述の工程S110で調製した粉末、または該粉末を含む混練物を金型に入れ、この金型を加圧することにより、所望の形状の成形体を形成しても良い。金型の加圧には、例えば、等方静水圧プレス(CIP)処理を利用しても良い。CIP処理の際の圧力は、特に限られないが、例えば、50MPa〜200MPaの範囲である。
【0072】
また、成形体を調製した場合であって、成形体が溶媒を含む場合は、予め成形体を50℃〜200℃の温度範囲で20分〜2時間程度保持し、溶媒を揮発させて除去しても良い。また、成形体がバインダを含む場合は、予め成形体を200〜800℃の温度範囲で30分〜6時間程度保持し、または50℃/時間で昇温し、バインダを除去することが好ましい。あるいは、両者の処理を同時に行っても良い。
【0073】
次に、被処理体が還元性雰囲気下で高温処理される。これにより、仮焼粉中の酸化カルシウムと酸化アルミニウムが反応してマイエナイト化合物が生成するとともに、これが還元され、導電性マイエナイト化合物が形成される。
【0074】
ここで、前述のように、本願の第1発明では、被処理体は、一酸化炭素ガスおよびアルミニウム蒸気源から供給されるアルミニウム蒸気の存在下に配置される。
【0075】
被処理体の高温処理は、還元性雰囲気下で実施される。「還元性雰囲気」とは、環境中の酸素分圧が10−3Pa以下の雰囲気の総称を意味し、該環境は、不活性ガス雰囲気、または減圧環境(例えば圧力が100Pa以下の真空環境)であっても良い。酸素分圧は、10−5Pa以下が好ましく、10−10Pa以下がより好ましく、10−15Pa以下がさらに好ましい。
【0076】
アルミニウム蒸気源は、特に限られないが、例えばアルミニウム粒子の層であっても良い。また、アルミニウム蒸気源は、アルシック(アルミニウムと炭化ケイ素の複合体)のような複合材料の一部のアルミニウムであっても良い。なお、前述のように、被処理体は、アルミニウム蒸気源と直接接触しないようにして、アルミニウム蒸気の存在下に配置されることに留意する必要がある。
【0077】
一酸化炭素ガスは、被処理体の置かれる環境に外部から供給しても良いが、被処理体をカーボンを含む容器に配置することが好ましい。カーボン製容器を用いても良く、カーボン製シートを環境中に配置しても良い。
【0078】
一酸化炭素ガスおよびアルミニウム蒸気を供給するため、例えば、蓋付きカーボン製容器内に被処理体とアルミニウム層とを配置した状態で、加熱処理が実施されても良い。なお、アルミニウム蒸気源とカーボン製容器とは、直接接触させないことが好ましい。これは、両者を接触させた状態のまま高温に保持すると、両者が接触部で反応してしまい、反応環境に、十分な量のアルミニウム蒸気および一酸化炭素ガスを供給することが難しくなるためである。アルミニウム蒸気源とカーボン製容器とは、アルミナ等のセパレータにより分離されていることが好ましい。
【0079】
被処理体の高温処理の際に、反応環境を還元性雰囲気に調整する方法は、特に限られない。
【0080】
例えば、カーボンを含む容器を、圧力が100Pa以下の真空雰囲気に置いても良い。この場合、圧力は、より好ましくは60Pa以下であり、さらに好ましくは40Pa以下であり、特に好ましくは20Pa以下である。
【0081】
あるいは、カーボンを含む容器に、酸素分圧が1000Pa以下の不活性ガス雰囲気(ただし窒素ガスを除く)を供給しても良い。この場合、供給する不活性ガス雰囲気の酸素分圧は、好ましくは100Pa以下であり、より好ましくは10Pa以下であり、さらに好ましくは1Pa以下であり、特に好ましくは0.1Pa以下である。
【0082】
不活性ガス雰囲気は、アルゴンガス雰囲気等であっても良い。ただし、本発明において、不活性ガスとして、窒素ガスを使用することは好ましくない。窒素ガスは、本発明において反応環境中に存在するアルミニウム蒸気と反応して、窒化アルミニウムを生成する。このため、窒化アルミニウムが生成すると、マイエナイト化合物を還元するのに必要な、アルミニウム蒸気が供給され難くなるからである。
【0083】
処理温度は、1220℃〜1350℃の範囲であり、特に、1270℃〜1350℃の範囲であることが好ましく、1310℃〜1350℃の範囲であることがより好ましい。処理温度が1220℃よりも低い場合、酸化カルシウムと酸化アルミニウムの間で反応が十分に進行しないおそれがある。また、処理温度が1350℃よりも高い場合、電子密度が低くなる場合がある。特に、処理温度が1270℃〜1350℃の範囲である場合、電子密度が7.0×1020cm−3以上の導電性マイエナイト化合物が得られやすく、処理温度が1310℃〜1350℃の範囲である場合、電子密度が1.0×1021cm−3以上の導電性マイエナイト化合物が得られやすい。
【0084】
被処理体の高温保持時間は、30分〜50時間の範囲であることが好ましく、2時間〜40時間の範囲であることがさらに好ましく、3時間〜30時間の範囲であることがさらに好ましく、2時間〜8時間がもっとも好ましい。被処理体の保持時間が30分未満の場合、十分に高い電子密度を有する導電性マイエナイト化合物を得ることができなくなるおそれがある上、焼結も不十分であり、得られた焼結体が壊れやすくなるおそれがある。また、保持時間を長くしても、特性上は特に問題はないが、効率上、保持時間は24時間以内であることが好ましい。
【0085】
以上の工程により、電子密度が3.0×1020cm−3以上の導電性マイエナイト化合物を得ることができる。
【0086】
図2には、被処理体を高温処理する際に使用される装置の一構成図を模式的に示す。
【0087】
装置100は、全体が耐熱性密閉容器で構成されており、排気口170が排気系と接続されている。
【0088】
装置100は、耐熱性密閉容器内に、上部が開放されているカーボン容器120と、該カーボン容器120の上部に配置されるカーボン蓋130と、カーボン容器120内に配置された仕切り板140とを有する。カーボン容器120の底部には、アルミニウム蒸気源として、耐熱皿(例えばアルミナ製皿)145に置載された金属アルミニウム粉末の層150が配置されている。
【0089】
仕切り板140の上部には、被処理体160が配置される。仕切り板140は、層150からのアルミニウム蒸気が被処理体160に到達することが妨害されないような構成を有する。また、仕切り板140は、高温処理の際に、アルミニウム蒸気や被処理体160と反応しない材料で構成される必要がある。例えば、仕切り板140は、多数の貫通孔を有するアルミナ板で構成される。
【0090】
カーボン容器120およびカーボン蓋130は、被処理体160の高温処理の際に、一酸化炭素ガスの供給源となる。すなわち、被処理体160の高温保持中には、カーボン容器120およびカーボン蓋130側から一酸化炭素ガスが生じる。
【0091】
装置100を使用して、被処理体160を高温に保持した場合、仮焼粉中の酸化カルシウムと酸化アルミニウムの間で反応が生じ、マイエナイト化合物が生成される。このマイエナイト化合物のケージ中のフリー酸素イオンは、マイエナイト化合物が生成されると同時に、アルミニウム蒸気により、以下の反応で還元される:

3O2− + 2Al → 6e + Al(1)式

従って、被処理体160を高温に保持することにより、直接、導電性マイエナイト化合物が形成され、これが焼結される。
【0092】
なお、図2の装置構成は、一例であって、この他の装置を使用して、被処理体を高温処理しても良いことは、当業者には明らかであろう。
【0093】
本願の第1発明において、仮焼粉を含む被処理体として、仮焼粉を含む成形体を還元性雰囲気下で高温処理した場合、緻密度の高い導電性マイエナイト化合物の焼結体を得ることができる。得られる焼結体の緻密度は、好ましくは90%以上であり、より好ましくは92%であり、さらに好ましくは95%以上、特に好ましくは97%以上である。相対密度が高いほど、導電性マイエナイト化合物の焼結体が衝撃や熱応力に対して壊れにくくなる。
【0094】
被処理体が還元性雰囲気下で高温処理されるときの処理温度を1270℃〜1350℃の範囲とすれば、相対密度が90%以上の導電性マイエナイト化合物が得られやすく、1310℃〜1350℃の範囲とすれば、相対密度が97%以上の導電性マイエナイト化合物が得られやすい。
【0095】
(本願の第2発明)
次に、本願の第2発明について、説明する。
【0096】
本願の第2発明では、導電性マイエナイト化合物を製造する際に、被処理体であるマイエナイト化合物を、1230℃〜1415℃の温度範囲内で、一酸化炭素ガスおよびアルミニウムの蒸気中に、アルミニウム源に接触しない状態で配置することにより、高導電性マイエナイト化合物を得ることができる特徴を有する。
【0097】
本願の第2発明による製造方法では、マイエナイト化合物の環境下に、一酸化炭素ガスとアルミニウム蒸気を存在させることにより、マイエナイト化合物の表面には、おもにアルミニウム炭化物が生成する。このアルミニウム炭化物は、酸化物であるマイエナイト化合物と親和性が低いため、固着することはなく、さらにその融点がマイエナイト化合物よりも高いため焼結することもない。マイエナイト化合物の表面は常にアルミニウム蒸気に晒される状態を保持でき、マイエナイト化合物のケージ内のフリー酸素が継続的に引き抜かれる状態にできる。そのため、短い時間で、十分に高い電子密度の、高導電性マイエナイト化合物を得ることが可能になる。
【0098】
(本願の第2発明による高導電性マイエナイト化合物の製造方法)
以下、図面を参照して、本願の第2発明の製造方法について、詳しく説明する。
【0099】
図4には、本願の第2発明による高導電性マイエナイト化合物の製造方法を示す。
【0100】
図4に示すように、本願の第2発明による製造方法は、
(1)マイエナイト化合物の粉末を準備する工程(工程S210)と、
(2)前記工程(1)で準備された化合物の粉末を含む被処理体を、一酸化炭素ガスおよびアルミニウム源から供給されるアルミニウム蒸気の存在下に、前記アルミニウム源に接触しない状態で配置し、還元性雰囲気下で、前記被処理体を1230℃〜1415℃の範囲の温度に保持する工程(工程S220)と、
を有する。以下、それぞれの工程について説明する。
【0101】
(工程S210:マイエナイト化合物粉末調製工程)
最初に、マイエナイト化合物粉末が調製される。マイエナイト化合物粉末は、以下に示すように、原料粉末を高温に加熱することにより合成、製造される。
【0102】
まず、マイエナイト化合物粉末を合成するための原料粉末が調合される。
【0103】
原料粉末は、カルシウム(Ca)とアルミニウム(Al)の割合が、CaO:Alに換算したモル比で、12.6:6.4〜11.7:7.3となるように調合される。CaO:Al(モル比)は、約12:7であることが好ましい。
【0104】
なお、原料粉末に使用される化合物は、前記割合が維持される限り、特に限られない。
【0105】
原料粉末は、カルシウムアルミネートを含むか、または、カルシウム化合物、アルミニウム化合物、およびカルシウムアルミネートからなる群から選定された少なくとも2つを含むことが好ましい。原料粉末は、例えば、カルシウム化合物とアルミニウム化合物とを含む混合粉末であっても良い。原料粉末は、例えば、カルシウム化合物とカルシウムアルミネートとを含む混合粉末であっても良い。また、原料粉末は、例えば、アルミニウム化合物とカルシウムアルミネートとを含む混合粉末であっても良い。また、原料粉末は、例えば、カルシウム化合物と、アルミニウム化合物と、カルシウムアルミネートとを含む混合粉末であっても良い。さらに、原料粉末は、例えば、カルシウムアルミネートのみを含む混合粉末であっても良い。
【0106】
カルシウム化合物としては、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸水素カルシウム、硫酸カルシウム、メタリン酸カルシウム、シュウ酸カルシウム、酢酸カルシウム、硝酸カルシウム、およびハロゲン化カルシウムなどが挙げられる。これらの中では、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、および水酸化カルシウムが好ましい。
【0107】
アルミニウム化合物としては、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、およびハロゲン化アルミニウムなどが挙げられる。これらの中では、水酸化アルミニウムおよび酸化アルミニウムが好ましい。
【0108】
次に、調合した原料粉末が高温に保持され、マイエナイト化合物が合成される。合成は、不活性ガス雰囲気下や真空下で行っても良いが、大気下で行うことが好ましい。
【0109】
合成温度は、特に限られないが、例えば、1200℃〜1415℃の範囲であり、1250℃〜1400℃の範囲であることが好ましく、1300℃〜1350℃の範囲であることがより好ましい。1200℃〜1415℃の温度範囲で合成した場合、C12A7の結晶構造を多く含むマイエナイト化合物が得られ易くなる。合成温度が低すぎると、C12A7結晶構造が少なくなるおそれがある。一方、合成温度が高すぎると、マイエナイト化合物の融点を超えるため、C12A7の結晶構造が少なくなるおそれがある。
【0110】
高温の保持時間は、特に限られず、これは、合成量および保持温度等によっても変動する。保持時間は、例えば、1時間〜12時間である。保持時間は、例えば、2時間〜10時間であることが好ましく、4時間〜8時間であることがより好ましい。原料粉末を2時間以上、高温で保持することにより、固相反応が十分に進行し、均質なマイエナイト化合物を得ることができる。
【0111】
合成により得られるマイエナイト化合物は、一部または全てが焼結した塊状である。塊状のマイエナイト化合物は、スタンプミル等で、例えば、5mm程度の大きさまで粉砕処理される。さらに、自動乳鉢や乾式ボールミルで、平均粒径が10μm〜100μm程度まで粉砕処理が行われる。ここで、「平均粒径」は、レーザ回折散乱法で測定して得た値を意味するものとする。以下、粉末の平均粒径は、同様の方法で測定した値を意味するものとする。
【0112】
さらに微細で均一な粉末を得たい場合は、例えば、C2n+1OH(nは3以上の整数)で表されるアルコール(例えば、イソプロピルアルコール)を溶媒として用いた、湿式ボールミル、または循環式ビーズミルなどを用いることにより、粉末の平均粒径を0.5μm〜50μmまで微細化することができる。溶媒としては、水は使用できない。マイエナイト化合物はアルミナセメントの一成分であり、容易に水と反応し、水和物を生成するからである。
【0113】
以上の工程により、マイエナイト化合物の粉末が調製される。
【0114】
粉末として調整されるマイエナイト化合物は、導電性マイエナイト化合物であってもよい。導電性マイエナイト化合物は非導電性の化合物より粉砕性に優れるからである。なお、導電性マイエナイト化合物の粉末を用いても、後の工程において被処理体(特に成形体)を調整する際に、酸化され導電性のないマイエナイト化合物となる場合がある。電子密度が3×1020cm−3未満の導電性マイエナイト化合物が好適に調整される。
【0115】
導電性マイエナイト化合物の合成方法は、特に限定されないが、下記の方法が挙げられる。例えば、マイエナイト化合物を蓋付きカーボン容器中に入れて、1600℃で熱処理して作製する方法(国際公開第2005/000741号)、マイエナイト化合物を蓋付きカーボン容器に入れて、窒素中1300℃で熱処理して作製する方法(国際公開第2006/129674号)、炭酸カルシウム粉末と酸化アルミニウム粉末から作られる、カルシウムアルミネートなどの粉末を蓋付きカーボン坩堝に入れて、窒素中1300℃で熱処理して作製する方法(国際公開第2010/041558号)、炭酸カルシウム粉末と酸化アルミニウム粉末を混合した粉末を、蓋付きカーボン坩堝に入れて、窒素中1300℃で熱処理して作製する方法(特開2010−132467号公報)などがある。
【0116】
導電性マイエナイト化合物の粉砕方法は、上記マイエナイト化合物の粉砕方法と同様である。
【0117】
以上の工程により、導電性マイエナイト化合物の粉末が調整される。なお、マイエナイト化合物と導電性マイエナイト化合物の混合粉末を用いても良い。
【0118】
(工程S220:焼成工程)
次に、以下に示すように、得られたマイエナイト化合物の粉末を含む被処理体を高温に保持することにより、マイエナイト化合物粉末が焼結されるとともに、マイエナイト化合のケージ中の酸素イオンが電子と置換(還元)され、高導電性マイエナイト化合物が製造される。
【0119】
マイエナイト化合物の粉末を含む被処理体としては、工程S210で調製した粉末をそのまま使用しても良い。ただし、通常の場合、被処理体としては、工程S210で調製したマイエナイト化合物の粉末を含む成形体が使用される。
【0120】
成形体の形成方法は、特に限られず、従来の各種方法を用いて、成形体を形成しても良い。例えば、成形体は、工程S210で調製した粉末、または該粉末を含む混練物からなる成形材料の加圧成形により、調製しても良い。
【0121】
成形材料には、必要に応じて、バインダ、潤滑剤、可塑剤または溶媒が含まれる。バインダとしては、例えば、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリビニルブチラール、EVA(エチレンビニルアセテート)樹脂、EEA(エチレンエチルアクリレート)樹脂、アクリル系樹脂、セルロース系樹脂(ニトロセルロース、エチルセルロース)、ポリエチレンオキシド、などが使用できる。潤滑剤としてワックス類やステアリン酸が使用できる。可塑剤としてフタル酸エステルが使用できる。溶媒としては、トルエン、キシレンのような芳香族化合物、酢酸ブチル、テルピネオール、ブチルカルビトールアセテート、化学式C2n+1OH(n=1〜4)で表されるアルコール(例えばイソプロピルアルコール)等が使用できる。溶媒として水を使用すると、マイエナイト化合物が水和による化学反応を起こすため、安定したスラリーが得られないおそれがある。n=1、2のアルコール(例えばエタノール)も水和しやすい傾向があり、n=3、4のアルコールが好ましい。
【0122】
成形材料をシート成形、押出成形、または射出成形することにより、成形体を得ることができる。ニアネットシェイプ成形が可能である、すなわち、最終製品に近い形状を生産性よく製造可能であることから、射出成形が好ましい。
【0123】
射出成形では、予めマイエナイト化合物の粉末とバインダを加熱混練して成形材料を用意し、この成形材料を射出成形機へ投入して、所望の形状の成形体を得ることができる。例えば、マイエナイト化合物の粉末をバインダと加熱混練し、冷却することで、大きさ1〜10mm程度のペレットまたは粉末状の成形材料を得る。加熱混練では、ラボプラストミルなどが用いられ、せん断力により粉末の凝集がほぐれ、粉末の1次粒子にバインダがコーティングされる。この成形材料を射出成型機に投入し、120〜250℃に加熱してバインダに流動性を発現させる。金型は予め50〜80℃で加熱しておき、3〜10MPaの圧力で金型へ材料を注入することで、所望の成形体を得ることができる。
【0124】
あるいは、前述の調製粉末または混練物を金型に入れ、この金型を加圧することにより、所望の形状の成形体を形成しても良い。金型の加圧には、例えば、等方静水圧プレス(CIP)処理を利用しても良い。CIP処理の際の圧力は、特に限られないが、例えば、
50〜200MPaの範囲である。
【0125】
また、成形体を調製した場合であって、成形体が溶媒を含む場合は、予め成形体を50℃〜200℃の温度範囲で20分〜2時間程度保持し、溶媒を揮発させて除去しても良い。また、成形体がバインダを含む場合は、予め成形体を200〜800℃の温度範囲で30分〜6時間程度保持し、または50℃/時間で昇温し、バインダを除去することが好ましい。あるいは、両者の処理を同時に行っても良い。
【0126】
次に、成形体などの被処理体として、被処理体が還元性雰囲気下で高温処理される。これにより、被処理体中のマイエナイト化合物粒子の焼結が進行するとともに、マイエナイト化合物のケージ中の酸素イオンが電子と置換され、導電性マイエナイト化合物が生成される。
【0127】
ここで、前述のように、本願の第2発明では、被処理体は、一酸化炭素ガスおよびアルミニウム蒸気源から供給されるアルミニウム蒸気の存在下に配置される。
【0128】
被処理体の高温処理は、還元性雰囲気下で実施される。酸素分圧は、10−5Pa以下が好ましく、10−10Pa以下がより好ましく、10−15Pa以下がさらに好ましい。
【0129】
アルミニウム蒸気源は、特に限られないが、例えばアルミニウム粒子の層であっても良い。また、アルミニウム蒸気源は、アルシック(アルミニウムと炭化ケイ素の複合体)のような複合材料の一部のアルミニウムであっても良い。なお、前述のように、被処理体は、アルミニウム蒸気源と直接接触しないようにして、アルミニウム蒸気の存在下に配置されることに留意する必要がある。
【0130】
一酸化炭素ガスは、被処理体の置かれる環境に外部から供給しても良いが、被処理体をカーボンを含む容器に配置することが好ましい。カーボン製容器を用いても良く、カーボン製シートを環境中に配置しても良い。
【0131】
一酸化炭素ガスおよびアルミニウム蒸気を供給するため、例えば、蓋付きカーボン製容器内に被処理体とアルミニウム層とを配置した状態で、加熱処理が実施されても良い。なお、アルミニウム蒸気源とカーボン製容器とは、直接接触させないことが好ましい。これは、両者を接触させた状態のまま高温に保持すると、両者が接触部で反応してしまい、反応環境に、十分な量のアルミニウム蒸気および一酸化炭素ガスを供給することが難しくなるためである。アルミニウム蒸気源とカーボン製容器とは、アルミナ等のセパレータにより分離されていることが好ましい。
【0132】
被処理体の高温処理の際に、反応環境を還元性雰囲気に調整する方法は、特に限られない。
【0133】
例えば、カーボンを含む容器を、圧力が100Pa以下の真空雰囲気に置いてもよく、圧力はより好ましくは60Pa以下であり、さらに好ましくは40Pa以下であり、特に好ましくは20Pa以下である。
【0134】
あるいは、カーボンを含む容器に、酸素分圧が1000Pa以下の不活性ガス雰囲気(ただし窒素ガスを除く)を供給してもよく、供給する不活性ガス雰囲気の酸素分圧は、好ましくは100Pa以下であり、より好ましくは10Pa以下であり、さらに好ましくは1Pa以下であり、特に好ましくは0.1Pa以下である。
【0135】
不活性ガス雰囲気は、アルゴンガス雰囲気等であっても良い。ただし、本発明において、不活性ガスとして、窒素ガスを使用することは好ましくない。窒素ガスは、本発明において反応環境中に存在するアルミニウム蒸気と反応して、窒化アルミニウムを生成する。このため、窒化アルミニウムが生成すると、マイエナイト化合物を還元するのに必要な、アルミニウム蒸気が供給され難くなるからである。
【0136】
処理温度は、1230℃〜1415℃の範囲であり、特に、1250℃〜1370℃の範囲であることが好ましく、1250℃〜1320℃の範囲であることがより好ましい。処理温度が1230℃よりも低い場合、マイエナイト化合物に十分な導電性を付与することができないおそれがある。また、処理温度が1415℃よりも高い場合、マイエナイト化合物の融点を超えるため結晶構造が分解してしまい、電子密度が低くなるからである。所望の形状の導電性マイエナイト化合物が得られやすいことから、1370℃以下で熱処理することが好ましい。また、表面のアルミニウム炭化物層が厚くなりすぎることを抑えられることから、1320℃以下で熱処理することがより好ましい。
【0137】
被処理体の高温保持時間は、5分〜48時間の範囲であることが好ましく、30分〜24時間の範囲であることがさらに好ましく、1時間〜12時間の範囲であることがさらに好ましく、2時間〜8時間がもっとも好ましい。被処理体の保持時間が5分未満の場合、十分に高い電子密度を有する導電性マイエナイト化合物を得ることができなくなるおそれがある上、焼結も不十分であり、得られた焼結体が壊れやすくなるおそれがある。また、保持時間を長くしても、特性上は特に問題はないが、マイエナイト化合物の保所望の形状が保持しやすいことから、保持時間は24時間以内であることが好ましい。また、表面のアルミニウム炭化物層が厚くなりすぎることを抑えられることから、保持時間は12時間以内であることがより好ましい。
【0138】
アルミニウム炭化物が生成すると、一般的な酸化物層とは異なり、軽く擦るだけで導電性マイエナイト化合物の表面から、容易に脱落除去させることができる。このため、アルミニウムと一酸化炭素を使用した場合、得られた高導電性マイエナイト化合物は、簡単に新生面を露出させることができる。この場合、得られた高導電性マイエナイト化合物は、ほぼそのままの状態で、電極材料として適用することができる。
【0139】
以上の工程により、電子密度が3.0×1020cm−3以上の高導電性マイエナイト化合物が得られる。
【0140】
なお、本願の第2発明による製造方法を実施する際にも、前述の図2に示した装置を使用することができる。
【実施例】
【0141】
次に、本発明の実施例について説明する。
【0142】
(実施例1)
以下の方法で、導電性マイエナイト化合物を作製した。
【0143】
(仮焼粉の合成)
まず、酸化カルシウム(CaO):酸化アルミニウム(Al)がモル比換算で12:7となるように、炭酸カルシウム(CaCO)粉末313.5gと、酸化アルミニウム(Al)粉末186.5gとを混合した。
【0144】
次に、この混合粉末をアルミナ容器に入れ、大気中、300℃/時間の昇温速度で1000℃まで加熱し、1000℃で6時間保持した。その後、これを300℃/時間の冷却速度で降温し、約362gの白色粉を得た。
【0145】
次に、アルミナ製自動乳鉢により、この白色粉を解砕して仮焼粉を得た。レーザ回折散乱法(SALD−2100、島津製作所社製)により、得られた仮焼粉の粒度を測定したところ、仮焼粉の平均粒径は、20μmであった。
【0146】
(仮焼粉の成形)
前述の方法で得られた仮焼粉(12g)を、長さ40mm×幅20mm×高さ30mmの金型に敷き詰めた。この金型に対して、10MPaのプレス圧で1分間の一軸プレスを行った。さらに、180MPaの圧力で等方静水圧プレス処理を実施した。
【0147】
これにより、縦約40mm×横約20mm×高さ約10mmの寸法の成形体を得た。
【0148】
(導電性マイエナイト化合物焼結体の作製)
次に、図3に示す装置を使用して成形体を高温で焼成処理し、導電性マイエナイト化合物を作製した。
【0149】
図3には、成形体の焼成処理に使用した装置を示す。図3に示すように、この装置300は、アルミナ製の蓋315付きのアルミナ容器310と、カーボン製の蓋335付きの第1のカーボン容器330と、カーボン製の蓋355付きの第2のカーボン容器350と、を備える。また、アルミナ容器310の底部には、3gの金属アルミニウム粉末が敷き詰められて構成されたアルミニウム層320が配置されている。アルミニウム層320は、装置300が高温になった際に、アルミニウム蒸気を発生するアルミニウム蒸気ソースとなる。
【0150】
アルミナ容器310は、外径40mm×内径38mm×高さ40mmの略円筒状の形状を有する。また、第1のカーボン容器330は、外径60mm×内径50mm×高さ60mmの略円筒状の形状を有し、第2のカーボン容器350は、外径80mm×内径70mm×高さ75mmの略円筒状の形状を有する。
【0151】
この装置300は、以下のように使用した。
【0152】
まず、前述の成形体を市販のカッターで、長さ20mm×幅20mm×厚さ10mmの直方体形状に切断した。
【0153】
次に、この成形体B1を、アルミナ容器310内に配置した。この際には、アルミニウム層320の上に、2つの同一形状のアルミナブロック325を配置し、さらにこのアルミナブロック325の上に、厚さが1mmのアルミナ板328を配置した。このアルミナ板328の上に、成形体B1を配置した後、アルミナ容器310上に蓋315を被せた。この状態では、成形体B1は、アルミニウム層320とは直接接触しない。
【0154】
次に、この装置300を、雰囲気調整可能な電気炉内に設置した。また、ロータリーポンプを用いて、炉内を真空引きした。その後、炉内の圧力が20Pa以下になってから、装置300の加熱を開始し、300℃/時間の昇温速度で1320℃まで加熱した。装置300をこの状態で6時間保持した後、300℃/時間の降温速度で室温まで冷却させた。
【0155】
なお、1300℃でのアルミニウムとカーボンの酸化還元反応の平衡定数から熱力学的に計算される酸素分圧は、1.6×10−20Paである。このため、この成形体の晒される環境中の酸素分圧は、計算上、1.6×10−20Pa程度であると推察される。
【0156】
この処理により、成形体B1が焼結され、表面が薄白色の黒色物質(以下、黒色物質「C1」と称する)が得られた。黒色物質C1は、長さ16mm×幅16mm×厚さ8mmの直方体であり、相対密度は、97.8%であった。
【0157】
電子密度測定用サンプルを採取するため、アルミナ製自動乳鉢でこの黒色物質C1の粗粉砕を実施した。粗粉砕は、まず、黒色物質C1をアルミナ乳鉢で砕き、表面の薄白色部分を丁寧に取り除いてから、黒色部分だけを使用して実施した。
【0158】
得られた粉末は、焦げ茶色を呈していた。X線回折分析の結果、この粉末は、C12A7構造だけを有することがわかった。また、得られた粉末の光拡散反射スペクトルのピーク位置から求められた電子密度は、1.0×1021cm−3であり、電気伝導率は、11S/cmであった。このことから、黒色物質C1は、高導電性マイエナイト化合物の焼結体であることが確認された。
【0159】
表1には、実施例1における焼成工程の条件、および得られた焼結体の評価結果をまとめて示した。
【0160】
【表1】

(実施例2)
前述の実施例1と同様の方法により、導電性マイエナイト化合物を作製した。ただし、この実施例2では、前述の(導電性マイエナイト化合物の作製)の工程において、焼成温度を1230℃とした。その他の条件は、実施例1の場合と同様である。
【0161】
これにより、前述の(導電性マイエナイト化合物の作製)工程後に、表面が薄白色の黒色物質(以下、黒色物質「C2」と称する)が得られた。黒色物質C2は、長さ18mm×幅18mm×厚さ9mmの直方体形状であり、相対密度は、87.4%であった。
【0162】
さらに、実施例1と同様の方法により、この黒色物質C2を粉砕して得た粉末のX線回折の結果、黒色物質C2は、C12A7構造と僅かな異相のみを有することがわかった。黒色物質C2の電子密度は、6.6×1020cm−3であり、電気伝導率は7S/cmであった。
【0163】
このことから、黒色物質C2は、高導電性マイエナイト化合物の焼結体であることが確認された。
【0164】
前述の表1には、実施例2における焼成工程の条件、および得られた焼結体の評価結果をまとめて示した。
【0165】
(実施例3)
前述の実施例1と同様の方法により、導電性マイエナイト化合物を作製した。ただし、この実施例3では、前述の(導電性マイエナイト化合物の作製)の工程において、焼結させる温度を1340℃とした。その他の条件は、実施例1の場合と同様である。
【0166】
これにより、前述の(導電性マイエナイト化合物焼結体の作製)工程後に、表面が薄黄色の黒色物質(以下、黒色物質「C3」と称する)が得られた。黒色物質C3は、長さ16mm×幅16mm×厚さ8mmの直方体形状であり、相対密度は、98.5%であった。
【0167】
さらに、実施例1と同様の方法により、この黒色物質C3を粉砕して得た粉末のX線回折の結果、黒色物質C3は、C12A7構造と僅かな異相のみを有することがわかった。黒色物質C3の電子密度は、1.0×1021cm−3であり、導電率は11S/cmであった。
【0168】
このことから、黒色物質C3は、高導電性マイエナイト化合物の焼結体であることが確認された。
【0169】
前述の表1には、実施例3における焼成工程の条件、および得られた焼結体の評価結果をまとめて示した。
【0170】
(実施例4)
前述の実施例1と同様の方法により、導電性マイエナイト化合物焼結体を作製した。ただし、この実施例4では、前述の(導電性マイエナイト化合物焼結体の作製)の工程において、焼結させる温度を1300℃とした。その他の条件は、実施例1の場合と同様である。
【0171】
これにより、前述の(導電性マイエナイト化合物焼結体の作製)工程後に、表面が薄黄色の黒色物質(以下、黒色物質「C4」と称する)が得られた。黒色物質C4は、長さ16mm×幅16mm×厚さ8mmの直方体形状であり、相対密度は、91.0%であった。
【0172】
さらに、実施例1と同様の方法により、この黒色物質C4を粉砕して得た粉末のX線回折の結果、黒色物質C4は、C12A7構造と僅かな異相のみを有することがわかった。黒色物質C4の電子密度は、1.0×1021cm−3であり、導電率は11S/cmであった。
【0173】
このことから、黒色物質C4は、高導電性マイエナイト化合物の焼結体であることが確認された。
【0174】
前述の表1には、実施例4における焼成工程の条件、および得られた焼結体の評価結果をまとめて示した。
【0175】
(実施例5)
前述の実施例1と同様の方法により、導電性マイエナイト化合物焼結体を作製した。ただし、この実施例5では、前述の(導電性マイエナイト化合物焼結体の作製)の工程において、焼結させる温度を1300℃とし、保持時間を24時間とした。その他の条件は、実施例1の場合と同様である。
【0176】
これにより、前述の(導電性マイエナイト化合物焼結体の作製)工程後に、表面が薄黄色の黒色物質(以下、黒色物質「C5」と称する)が得られた。黒色物質C5は、長さ16mm×幅16mm×厚さ8mmの直方体形状であり、相対密度は、92.5%であった。
【0177】
さらに、実施例1と同様の方法により、この黒色物質C5を粉砕して得た粉末のX線回折の結果、黒色物質C5は、C12A7構造と僅かな異相のみを有することがわかった。黒色物質C5の電子密度は、1.2×1021cm−3であり、導電率は13S/cmであった。
【0178】
このことから、黒色物質C5は、高導電性マイエナイト化合物の焼結体であることが確認された。
【0179】
前述の表1には、実施例5における焼成工程の条件、および得られた焼結体の評価結果をまとめて示した。
【0180】
(実施例6)
前述の実施例1と同様の方法により、導電性マイエナイト化合物焼結体を作製した。ただし、この実施例6では、前述の(導電性マイエナイト化合物焼結体の作製)の工程において、焼結させる温度を1300℃とし、保持時間を48時間とした。その他の条件は、実施例1の場合と同様である。
【0181】
これにより、前述の(導電性マイエナイト化合物焼結体の作製)工程後に、表面が薄黄色の黒色物質(以下、黒色物質「C6」と称する)が得られた。黒色物質C6は、長さ16mm×幅16mm×厚さ8mmの直方体形状であり、相対密度は、93.0%であった。
【0182】
さらに、実施例1と同様の方法により、この黒色物質C6を粉砕して得た粉末のX線回折の結果、黒色物質C6は、C12A7構造と僅かな異相のみを有することがわかった。黒色物質C6の電子密度は、1.2×1021cm−3であり、導電率は13S/cmであった。
【0183】
このことから、黒色物質C6は、高導電性マイエナイト化合物の焼結体であることが確認された。
【0184】
なお、実施例5と実施例6の結果と比較すると、両者において、電子密度は、ほとんど変化していないことがわかる。このことから、焼成処理の時間を24時間より長くしても、電子密度をさらに高めることは難しいと考えられる。従って、エネルギー消費量の削減の観点から、保持時間は24時間以内とすることが好ましいといえる。
【0185】
前述の表1には、実施例6における焼成工程の条件、および得られた焼結体の評価結果をまとめて示した。
【0186】
(実施例7)
前述の実施例1と同様の方法により、導電性マイエナイト化合物焼結体を作製した。ただし、この実施例7では、前述の(仮焼粉の成形)の工程において、金型として、長さ40mm×幅20mm×高さ30mmの直方体の代わりに、直径110mm×高さ30mmのディスク型のものを使用した。これにより、直径100mmφ×高さ8mmの寸法の成形体B7が得られた。
【0187】
また、次の(導電性マイエナイト化合物焼結体の作製)工程では、以下のようにして、成形体B7を処理する装置を構成した。
【0188】
まず、内径190mmφ×外径210mmφ×高さ110mmの第1のカーボン容器の底部に、成形体B7を配置した。次に、この成形体B7の上部に、金属アルミニウムの入ったアルミナ容器を配置した。この状態で、第1のカーボン容器の上にカーボン製の蓋をした。
【0189】
次に、第1のカーボン容器を、内径230mmφ×外径250mmφ×高さ140mmの寸法の、第2のカーボン製容器内に設置した。また、第2の容器にカーボン製の蓋をした。
【0190】
このように構成した装置を、雰囲気調整可能な電気炉内に設置した。また、ロータリーポンプを用いて、炉内を真空引きした。その後、炉内の圧力が20Pa以下になってから、装置の加熱を開始し、300℃/時間の昇温速度で1320℃まで加熱した。装置をこの状態で24時間保持した後、300℃/時間の降温速度で室温まで冷却させた。
【0191】
これにより、(導電性マイエナイト化合物焼結体の作製)工程後に、表面が薄黄色の黒色物質(以下、黒色物質「C7」と称する)が得られた。黒色物質C7は、直径92mmφ×厚さ6mmの円板形状であり、相対密度は、98.0%であった。
【0192】
さらに、実施例1と同様の方法により、この黒色物質C7を分析した。
【0193】
ただし、黒色物質C7は、比較的大きな寸法を有するため、粉末を調製する際には、黒色物質C7の中心部分と外側部分の2ヵ所に分けて、サンプリングを行った。2箇所からサンプリングして得た粉末のX線回折の結果、何れの箇所においても、黒色物質C7は、C12A7構造と僅かな異相のみを有することがわかった。
【0194】
また、黒色物質C7の電子密度は、何れの箇所でも8.5×1020cm−3であり、導電率は、何れの箇所でも9S/cmであった。
【0195】
このことから、黒色物質C6は、高導電性マイエナイト化合物の焼結体であり、均一な状態であることが確認された。
【0196】
前述の表1には、実施例7における焼成工程の条件、および得られた焼結体の評価結果をまとめて示した。
【0197】
(実施例8)
前述の実施例1と同様の方法により、導電性マイエナイト化合物を作製した。ただし、この実施例8では、前述の(仮焼粉の成形)の工程を省略した。すなわち、実施例8では、成形体を作製せずに粉末状のまま、アルミナ板328上に仮焼粉を敷き詰めた。仮焼粉の重量は3gであった。その他の条件は、実施例1の場合と同様である。
【0198】
これにより、前述の(導電性マイエナイト化合物の作製)工程後に、表面が薄白色で円板状に潰れ、部分的に焼結された黒色物質(以下、黒色物質「C8」と称する)が得られた。黒色物質C8は、容易に折ることができた。破損しやすいため相対密度は測定できなかった。
【0199】
さらに、実施例8と同様の方法により、この黒色物質C8を粉砕して得た粉末のX線回折の結果、黒色物質C8は、C12A7構造と僅かな異相のみを有することがわかった。黒色物質C8の電子密度は、1.0×1021cm−3であった。電気伝導率は形状が不定形のため測定できなかった。
【0200】
このことから、黒色物質C8は、高導電性マイエナイト化合物であることが確認された。
【0201】
(比較例1)
前述の実施例1と同様の方法により、高導電性マイエナイト化合物の作製を試みた。ただし、この比較例1では、前述の(導電性マイエナイト化合物焼結体の焼成)の工程において、焼結させる温度を1200℃とした。その他の条件は、実施例1の場合と同様である。
【0202】
これにより、前述の(導電性マイエナイト化合物焼結体の作製)工程後に、表面が薄白色の黒色物質(以下、黒色物質「C9」と称する)が得られた。黒色物質C9は、長さ19mm×幅19mm×厚さ9mmの直方体形状であった。
【0203】
この黒色物質C9の電子密度測定を行うため、粗粉砕をしたところ、黒色物質C9の内部は白色を呈しており、還元不足であることがわかった。
【0204】
このように、比較例1では、均一な状態の導電性マイエナイト化合物の焼結体を得ることはできなかった。
【0205】
前述の表1には、比較例1における焼成工程の条件、および得られた焼結体の評価結果をまとめて示した。
【0206】
(比較例2)
前述の実施例1と同様の方法により、導電性マイエナイト化合物を作製した。ただし、この比較例2では、前述の(導電性マイエナイト化合物焼結体の作製)の工程において、焼結させる温度を1360℃とした。その他の条件は、実施例1の場合と同様である。
【0207】
これにより、前述の(導電性マイエナイト化合物焼結体の作製)工程後に、表面が黒色の黒色物質(以下、黒色物質「C10」と称する)が得られた。黒色物質C10は、変形が激しい上、アルミナ板に固着しており、アルミナ板から分離することができなかった。
【0208】
そのためアルミナ板を破壊し、黒色物質C10の一部を採取し、電子密度測定を行った。採取サンプルを粉砕して得た粉末のX線回折の結果、黒色物質C10は、C12A7構造と僅かな異相のみを有することがわかった。しかしながら、黒色物質C10の電子密度は、6.9×1019cm−3であり、導電率は0.7S/cmであった。
【0209】
このことから、黒色物質C10は、高導電性マイエナイト化合物の焼結体でないことが確認された。
【0210】
前述の表1には、比較例2における焼成工程の条件、および得られた焼結体の評価結果をまとめて示した。
【0211】
(比較例3)
前述の実施例1と同様の方法により、導電性マイエナイト化合物焼結体を作製した。ただし、この比較例3では、前述の(導電性マイエナイト化合物焼結体の作製)の工程において、蓋付きカーボン容器を使用せずに、蓋付きアルミナ容器だけを用いた。さらに電気炉は、アルミナ製の炉心管を使用し、カーボンが存在しない条件下で熱処理を施した。その他の条件は、実施例1の場合と同様である。
【0212】
これにより、前述の(導電性マイエナイト化合物焼結体の作製)工程後に、表面が薄白色および銀白色の黒色物質(以下、黒色物質「C11」と称する)が得られた。黒色物質C10は、長さ17mm×幅17mm×厚さ8mmの直方体形状であり、相対密度は、92.0%であった。
【0213】
得られた黒色物質C11を粉砕して得た粉末のX線回折の結果、黒色物質C11は、C12A7構造と僅かな異相のみを有することがわかった。また、得られた粉末の光拡散反射スペクトルからクベルカムンク変換により求められた電子密度は、1.2×1019cm−3であり、導電率は、0.1S/cmであった。
【0214】
このことから、黒色物質C11は、高導電性マイエナイト化合物焼結体でないことが確認された。
【0215】
前述の表1には、比較例3における焼成工程の条件、および得られた焼結体の評価結果をまとめて示した。
【0216】
(比較例4)
前述の実施例1と同様の方法により、導電性マイエナイト化合物焼結体を作製した。ただし、この比較例4では、前述の(導電性マイエナイト化合物焼結体の作製)の工程において、成形体B1を、直接金属アルミニウム粉末の上に設置した。その他の条件は、実施例1の場合と同様である。
【0217】
これにより、前述の(導電性マイエナイト化合物焼結体の作製)工程後に、黒色物質(以下、黒色物質「C12」と称する)が得られた。黒色物質C12は、金属アルミニウム層中に半分程埋没されており、容易に回収することはできなかった。
【0218】
このように、比較例4では、焼結体を回収するのに多大な労力が必要となり、導電性マイエナイト化合物焼結体を製造するための現実的な方法ではないことが確認された。
【0219】
前述の表1には、比較例4における焼成工程の条件、および得られた焼結体の評価結果をまとめて示した。
【0220】
(比較例5)
前述の実施例1と同様の方法により、導電性マイエナイト化合物焼結体を作製した。ただし、この比較例5では、前述の(導電性マイエナイト化合物焼結体の作製)の工程において、金属アルミニウム層を設置しなかった。その他の条件は、実施例1の場合と同様である。
【0221】
これにより、前述の(導電性マイエナイト化合物焼結体の作製)工程後に、表面が黒色の黒色物質(以下、黒色物質「C13」と称する)が得られた。黒色物質C13は、長さ17mm×幅17mm×厚さ8mmの直方体形状であり、相対密度は、96.0%であった。
【0222】
この黒色物質C13を粉砕して得た粉末のX線回折の結果、黒色物質C13は、C12A7構造だけであることがわかった。しかしながら、得られた粉末の光拡散反射スペクトルからクベルカムンク変換により求められた電子密度は、3.3×1019cm−3であり、導電率は、0.2S/cmであった。このことから、黒色物質C13は、高導電性マイエナイト化合物焼結体でないことが確認された。
【0223】
前述の表1には、比較例5における焼成工程の条件、および得られた焼結体の評価結果をまとめて示した。
【0224】
(実施例11)
以下の方法で、高導電性マイエナイト化合物を作製した。
【0225】
(マイエナイト化合物の合成)
酸化カルシウム(CaO):酸化アルミニウム(Al)のモル比換算で12:7となるように、炭酸カルシウム(CaCO)粉末313.5gと、酸化アルミニウム(Al)粉末186.5gとを混合した。次に、この混合粉末を、大気中、300℃/時間の昇温速度で1350℃まで加熱し、1350℃に6時間保持した。その後、これを300℃/時間の冷却速度で降温し、約362gの白色塊体を得た。
【0226】
次に、アルミナ製スタンプミルにより、この白色塊体を大きさが約5mmの破片になるよう粉砕した後、さらに、アルミナ製自動乳鉢で粗粉砕し、白色粒子(以下、粒子「SA1」と称する)を得た。レーザ回折散乱法(SALD−2100、島津製作所社製)により、得られた粒子SA1の粒度を測定したところ、平均粒径は、20μmであった。
【0227】
次に、粒子SA1を350gと、直径5mmのジルコニアボール3kgと、粉砕溶媒としての工業用ELグレードのイソプロピルアルコール350mlとを、2リットルのジルコニア製容器に入れ、容器にジルコニア製の蓋を載せてから、回転速度94rpmで、16時間、ボールミル粉砕処理を実施した。
【0228】
処理後、得られたスラリーを用いて吸引ろ過を行い、粉砕溶媒を除去した。また、残りの物質を80℃のオーブンに入れ、10時間乾燥させた。これにより、白色粉末(以下、粉末「SB1」と称する)を得た。X線回折分析の結果、得られた粉末SB1は、C12A7構造であることが確認された。また、前述のレーザ回折散乱法により得られた粉末SB1の平均粒径は、3.3μmであることがわかった。
【0229】
(マイエナイト化合物の成形体の作製)
前述の方法で得られた粉末SB1(13g)を、長さ40mm×幅20mm×高さ30mmの金型に敷き詰めた。この金型に対して、10MPaのプレス圧で1分間の一軸プレスを行った。さらに、180MPaの圧力で等方静水圧プレス処理し、縦約40mm×横約20mm×高さ約10mmの寸法の成形体SC1を得た。
【0230】
(高導電性マイエナイト化合物の作製)
次に、前述の図3に示す装置を使用して成形体SC1を高温で焼成処理し、導電性マイエナイト化合物を作製した。
【0231】
実施例11では、前述の装置300は、以下のように使用した。
【0232】
まず、前述の成形体SC1を市販のカッターで、長さ8mm×幅6mm×厚さ6mmの直方体形状に切断した。
【0233】
次に、この成形体SC1を、アルミナ容器310内に配置した。この際には、アルミニウム層320の上に、2つの同一形状のアルミナブロック325を配置し、さらにこのアルミナブロック325の上に、厚さが1mmのアルミナ板328を配置した。このアルミナ板328の上に、成形体SC1を配置した後、アルミナ容器310上に蓋315を被せた。この状態では、成形体SC1は、アルミニウム層320とは直接接触しない。
【0234】
次に、この装置300を、雰囲気調整可能な電気炉内に設置した。また、ロータリーポンプを用いて、炉内を真空引きした。その後、炉内の圧力が5Pa以下になってから、装置300の加熱を開始し、300℃/時間の昇温速度で1250℃まで加熱した。装置300をこの状態で6時間保持した後、300℃/時間の降温速度で室温まで冷却させた。
【0235】
なお、1300℃でのアルミニウムとカーボンの酸化還元反応の平衡定数から熱力学的に計算される酸素分圧は、1.6×10−20Paである。このため、1250℃におけるこの成形体SC1の晒される環境中の酸素分圧は、計算上、1.6×10−20Pa未満であると推察される。
【0236】
この処理により、成形体SC1は、焼結され、表面が薄白色の黒色物質(以下、黒色物質「SD1」と称する)が得られた。この黒色物質SD1の相対密度は、97.0%であった。
【0237】
電子密度測定用サンプルを採取するため、アルミナ製自動乳鉢でこの黒色物質SD1の粗粉砕を実施した。粗粉砕は、まず、黒色物質SD1をアルミナ乳鉢で砕き、表面の薄白色部分を丁寧に取り除いてから、黒色部分だけを使用して実施した。
【0238】
得られた粉末は、焦げ茶色を呈していた。X線回折分析の結果、この粉末は、C12A7構造だけを有することがわかった。また、得られた粉末の光拡散反射スペクトルのピーク位置から求められた電子密度は、1.6×1021cm−3であり、電気伝導率は、17S/cmであった。このことから、黒色物質SD1は、高導電性マイエナイト化合物であることが確認された。
【0239】
(実施例12)
前述の実施例11と同様の方法により、導電性マイエナイト化合物を作製した。ただし、この実施例12では、前述の(高導電性マイエナイト化合物の作製)の工程において、焼成温度を1300℃とした。その他の条件は、実施例11の場合と同様である。
【0240】
なお、1300℃でのアルミニウムとカーボンの酸化還元反応の平衡定数から熱力学的に計算される酸素分圧は、1.6×10−20Paである。このため、実施例12において、成形体SC1の晒される環境中の酸素分圧は、計算上、1.6×10−20Pa程度であると推察される。
【0241】
これにより、前述の(高導電性マイエナイト化合物の作製)工程後に、表面が薄黄色の黒色物質(以下、黒色物質「SD2」と称する)が得られた。黒色物質SD2の相対密度は、96.1%であった。
【0242】
さらに、実施例11と同様の方法により、この黒色物質SD2を粉砕して得た粉末のX線回折の結果、黒色物質SD2は、C12A7構造のみを有することがわかった。黒色物質SD2の電子密度は、1.6×1021cm−3であり、電気伝導率は17S/cmであった。
【0243】
このことから、黒色物質SD2は、高導電性マイエナイト化合物であることが確認された。
【0244】
(実施例13)
前述の実施例11と同様の方法により、高導電性マイエナイト化合物を作製した。ただし、この実施例13では、前述の(高導電性マイエナイト化合物の作製)の工程において、焼結させる温度を1340℃とした。その他の条件は、実施例11の場合と同様である。
【0245】
なお、1415℃でのアルミニウムとカーボンの酸化還元反応の平衡定数から熱力学的に計算される酸素分圧は、6.2×10−18Paである。このため、1340℃におけるこの成形体SC1の晒される環境中の酸素分圧は、計算上、6.2×10−18Pa未満であると推察される。
【0246】
これにより、前述の(高導電性マイエナイト化合物の作製)工程後に、表面が黄色い粉末で覆われた、黒色物質(以下、黒色物質「SD3」と称する)が得られた。黒色物質SD3の相対密度は、95.5%であった。
【0247】
さらに、実施例11と同様の方法により、この黒色物質SD3を粉砕して得た粉末のX線回折の結果、黒色物質SD3は、C12A7構造のみを有することがわかった。黒色物質SD3の電子密度は、1.5×1021cm−3であり、電気伝導率は16S/cmであった。
【0248】
このことから、黒色物質SD3は、高導電性マイエナイト化合物であることが確認された。
【0249】
なお、この黒色物質SD3の表面を覆っている黄色い粉末は、軽く擦る程度で容易に除去することができた。除去した後の表面は黒色を呈しており、表面の黒色部分は、電気的導通を有することがわかった(テスターで確認)。
【0250】
さらに黄色い粉末について、X線回折分析を行ったところ、この黄色い粉末の主成分は、炭化アルミニウムAlであることが確認された。
【0251】
(実施例14)
前述の実施例11と同様の方法により、高導電性マイエナイト化合物を作製した。ただし、この実施例14では、前述の(高導電性マイエナイト化合物の作製)の工程において、焼結させる温度を1300℃とし、保持時間を12時間とした。その他の条件は、実施例11の場合と同様である。
【0252】
なお、1300℃でのアルミニウムとカーボンの酸化還元反応の平衡定数から熱力学的に計算される酸素分圧は、1.6×10−20Paである。このため、実施例14において、成形体SC1の晒される環境中の酸素分圧は、計算上、1.6×10−20Pa程度であると推察される。
【0253】
これにより、前述の(高導電性マイエナイト化合物の作製)工程後に、表面が黄色い粉末で覆われた、黒色物質(以下、黒色物質「SD4」と称する)が得られた。黒色物質SD4の相対密度は、96.2%であった。
【0254】
さらに、実施例11と同様の方法により、この黒色物質SD4を粉砕して得た粉末のX線回折の結果、黒色物質SD4は、C12A7構造のみを有することがわかった。黒色物質SD4の電子密度は、1.5×1021cm−3であり、電気伝導率は16S/cmであった。
【0255】
このことから、黒色物質SD4は、高導電性マイエナイト化合物であることが確認された。
【0256】
なお、この黒色物質SD4の表面を覆っている黄色い粉末は、軽く擦る程度で容易に除去することができた。除去した後の表面は黒色を呈しており、表面の黒色部分は、電気的導通を有することがわかった(テスターで確認)。
【0257】
さらに黄色い粉末について、X線回折分析を行ったところ、この黄色い粉末の主成分は、炭化アルミニウムAlであることが確認された。
【0258】
(実施例15)
前述の実施例11と同様の方法により、高導電性マイエナイト化合物を作製した。ただし、この実施例15では、前述の(高導電性マイエナイト化合物の作製)の工程において、焼結させる温度を1300℃とし、保持時間を2時間とした。その他の条件は、実施例11の場合と同様である。
【0259】
なお、1300℃でのアルミニウムとカーボンの酸化還元反応の平衡定数から熱力学的に計算される酸素分圧は、1.6×10−20Paである。このため、実施例15において、成形体SC1の晒される環境中の酸素分圧は、計算上、1.6×10−20Pa程度であると推察される。
【0260】
これにより、前述の(高導電性マイエナイト化合物の作製)工程後に、表面が薄黄色の黒色物質(以下、黒色物質「SD5」と称する)が得られた。黒色物質SD5の相対密度は、94.1%であった。
【0261】
さらに、実施例11と同様の方法により、この黒色物質SD5を粉砕して得た粉末のX線回折の結果、黒色物質SD5は、C12A7構造のみを有することがわかった。黒色物質SD5の電子密度は、1.4×1021cm−3であり、電気伝導率は15S/cmであった。
【0262】
このことから、黒色物質SD5は、高導電性マイエナイト化合物であることが確認された。
【0263】
(実施例16)
前述の実施例11と同様の方法により、高導電性マイエナイト化合物を作製した。ただし、この実施例16では、前述の(高導電性マイエナイト化合物の作製)の工程において、焼結させる温度を1380℃とし、保持時間を12時間とした。その他の条件は、実施例11の場合と同様である。
【0264】
なお、1415℃でのアルミニウムとカーボンの酸化還元反応の平衡定数から熱力学的に計算される酸素分圧は、6.2×10−18Paである。このため、実施例16におけるこの成形体SC1の晒される環境中の酸素分圧は、計算上、6.2×10−18Pa程度であると推察される。
【0265】
これにより、前述の(高導電性マイエナイト化合物の作製)工程後に、表面が薄白色の黒色物質(以下、黒色物質「SD6」と称する)が得られた。黒色物質(以下、黒色物質「SD6」と称する)が得られた。なお、この黒色物質SD6は、形状が大きく変形していた。
【0266】
さらに、実施例11と同様の方法により、この黒色物質SD6を粉砕して得た粉末のX線回折の結果、黒色物質SD6は、C12A7構造のみを有することがわかった。黒色物質SD6の電子密度は、1.0×1021cm−3であり、電気伝導率は13S/cmであった。
【0267】
このことから、黒色物質SD6は、高導電性マイエナイト化合物であることが確認された。
【0268】
(実施例17)
前述の実施例11と同様の方法により、高導電性マイエナイト化合物を作製した。ただし、この実施例17では、前述の(高導電性マイエナイト化合物の作製)の工程におけるアルミニウム層320として、実施例11と同条件で一回使用したものを用いた。すなわち、アルミニウム層320を構成する金属アルミニウム粉末は、前回の熱処理により溶融固化しているため、この実施例17では、アルミニウム層320は、塊状になっている。その他の条件は、実施例11の場合と同様である。
【0269】
なお、1300℃でのアルミニウムとカーボンの酸化還元反応の平衡定数から熱力学的に計算される酸素分圧は、1.6×10−20Paである。このため、1250℃におけるこの成形体SC1の晒される環境中の酸素分圧は、計算上、1.6×10−20Pa未満であると推察される。
【0270】
これにより、前述の(高導電性マイエナイト化合物の作製)工程後に、表面が薄白色の黒色物質(以下、黒色物質「SD7」と称する)が得られた。黒色物質SD7の相対密度は、97.2%であった。
【0271】
さらに、実施例11と同様の方法により、この黒色物質SD7を粉砕して得た粉末のX線回折の結果、黒色物質SD7は、C12A7構造のみを有することがわかった。黒色物質SD7の電子密度は、1.6×1021cm−3であり、電気伝導率は17S/cmであった。
【0272】
このことから、黒色物質SD7は、高導電性マイエナイト化合物であることが確認された。
【0273】
また、この結果から、アルミニウム層320は、再利用することが可能であることがわかった。ちなみに、その後の実験から、装置300において、アルミニウム層320を10回繰り返し使用しても、ほぼ同等の高導電性マイエナイト化合物が得られることが確認されている。
【0274】
(実施例18)
前述の実施例11と同様の方法により、高導電性マイエナイト化合物を作製した。ただし、この実施例18では、前述の(マイエナイト化合物の成形体の作製)の工程において、使用する粉末を、マイエナイト化合物ではなく、電子密度が5.0×1019cm−3の導電性マイエナイト化合物の粉末を使用した。その他の条件は、実施例11の場合と同様である。
【0275】
なお、1300℃でのアルミニウムとカーボンの酸化還元反応の平衡定数から熱力学的に計算される酸素分圧は、1.6×10−20Paである。このため、1250℃におけるこの成形体SC1の晒される環境中の酸素分圧は、計算上、1.6×10−20Pa未満であると推察される。
【0276】
これにより、前述の(高導電性マイエナイト化合物の作製)工程後に、表面が薄白色の黒色物質(以下、黒色物質「SD8」と称する)が得られた。黒色物質SD8の相対密度は、96.8%であった。
【0277】
さらに、実施例11と同様の方法により、この黒色物質SD8を粉砕して得た粉末のX線回折の結果、黒色物質SD8は、C12A7構造のみを有することがわかった。黒色物質SD8の電子密度は、1.6×1021cm−3であり、電気伝導率は17S/cmであった。
【0278】
このことから、黒色物質SD8は、高導電性マイエナイト化合物であることが確認された。
【0279】
(実施例19)
前述の実施例11と同様の方法により、高導電性マイエナイト化合物を作製した。ただし、この実施例19では、前述の(高導電性マイエナイト化合物の作製)の工程で使用される装置300において、蓋315付きアルミナ容器310、および蓋335付きの第1のカーボン容器330だけを使用し、蓋355付きの第2のカーボン容器350は、使用しなかった。その他の条件は、実施例11の場合と同様である。
【0280】
なお、1300℃でのアルミニウムとカーボンの酸化還元反応の平衡定数から熱力学的に計算される酸素分圧は、1.6×10−20Paである。このため、1250℃におけるこの成形体SC1の晒される環境中の酸素分圧は、計算上、1.6×10−20Pa未満であると推察される。
【0281】
これにより、前述の(高導電性マイエナイト化合物の作製)工程後に、表面が薄白色の黒色物質(以下、黒色物質「SD9」と称する)が得られた。黒色物質SD9の相対密度は、96.8%であった。
【0282】
さらに、実施例11と同様の方法により、この黒色物質SD9を粉砕して得た粉末のX線回折の結果、黒色物質SD9は、C12A7構造のみを有することがわかった。黒色物質SD9の電子密度は、1.4×1021cm−3であり、電気伝導率は15S/cmであった。
【0283】
このことから、黒色物質SD9は、高導電性マイエナイト化合物であることが確認された。
【0284】
(実施例20)
前述の実施例11と同様の方法により、高導電性マイエナイト化合物を作製した。ただし、この実施例20では、前述の(高導電性マイエナイト化合物の作製)の工程において、電気炉内の圧力は、30Paとした。その他の条件は、実施例11の場合と同様である。
【0285】
なお、1300℃でのアルミニウムとカーボンの酸化還元反応の平衡定数から熱力学的に計算される酸素分圧は、1.6×10−20Paである。このため、1250℃におけるこの成形体SC1の晒される環境中の酸素分圧は、計算上、1.6×10−20Pa未満であると推察される。
【0286】
これにより、前述の(高導電性マイエナイト化合物の作製)工程後に、表面が薄白色の黒色物質(以下、黒色物質「SD10」と称する)が得られた。黒色物質SD10の相対密度は、96.6%であった。
【0287】
さらに、実施例11と同様の方法により、この黒色物質SD10を粉砕して得た粉末のX線回折の結果、黒色物質SD10は、C12A7構造のみを有することがわかった。黒色物質SD10の電子密度は、1.4×1021cm−3であり、電気伝導率は15S/cmであった。
【0288】
このことから、黒色物質SD10は、高導電性マイエナイト化合物であることが確認された。
【0289】
(比較例6)
前述の実施例11と同様の方法により、高導電性マイエナイト化合物の作製を試みた。ただし、この比較例6では、前述の(高導電性マイエナイト化合物の作製)の工程において、焼結させる際の温度を1200℃とした。その他の条件は、実施例11の場合と同様である。
【0290】
なお、1230℃でのアルミニウムとカーボンの酸化還元反応の平衡定数から熱力学的に計算される酸素分圧は、2.8×10−22Paである。このため、1200℃におけるこの成形体SC1の晒される環境中の酸素分圧は、計算上、2.8×10−22Pa未満であると推察される。
【0291】
これにより、前述の(高導電性マイエナイト化合物の作製)工程後に、表面が薄白色の黒色物質(以下、黒色物質「SD11」と称する)が得られた。黒色物質SD11の相対密度は、94.0%であった。
【0292】
さらに、実施例11と同様の方法により、この黒色物質SD11を粉砕して得た粉末のX線回折の結果、黒色物質SD11は、C12A7構造の他、異相が存在することがわかった。黒色物質SD11では、異相が存在するため、正確な電子密度および電気伝導率は不明であるが、黒色物質SD11の電子密度は、おおよそ3.0×1019cm−3であり、電気伝導率は0.2S/cmであった。
【0293】
このことから、黒色物質SD11は、高い電子密度を有さないことが確認された。
【0294】
(比較例7)
前述の実施例11と同様の方法により、高導電性マイエナイト化合物の作製を試みた。ただし、この比較例7では、前述の(高導電性マイエナイト化合物の作製)の工程において、焼結させる温度を1420℃とした。その他の条件は、実施例11の場合と同様である。
【0295】
なお、1415℃でのアルミニウムとカーボンの酸化還元反応の平衡定数から熱力学的に計算される酸素分圧は、6.2×10−18Paである。このため、1420℃におけるこの成形体SC1の晒される環境中の酸素分圧は、計算上、6.2×10−18Paを超えると推察される。
【0296】
これにより、前述の(高導電性マイエナイト化合物の作製)工程後に、表面が薄白色の黒色物質(以下、黒色物質「SD12」と称する)が得られた。黒色物質SD12は、著しく変形していた。また、黒色物質SD12は、アルミナ板328に固着しており、アルミナ板328から分離することができなかった。そのためアルミナ板328を破壊し、黒色物質の欠片だけを採取した。黒色物質SD12の相対密度は、93.9%であった。
【0297】
電子密度測定用サンプルを採取するため、アルミナ製自動乳鉢でこの黒色物質SD12の粗粉砕を実施した。粗粉砕は、まず、黒色物質SD12をアルミナ乳鉢で砕き、表面の薄白色部分を丁寧に取り除いてから、黒色部分だけを使用して実施した。
【0298】
得られた粉末は、深緑色を呈していた。X線回折分析の結果、この粉末には、異相が存在し、C12A7構造のみではないことがわかった。なお、異相が存在するため、正確な電子密度および電気伝導率は不明であるが、黒色物質SD12の電子密度は、おおよそ5.2×1019cm−3であり、電気伝導率は0.4S/cmであると予想された。
【0299】
このことから、黒色物質SD12は、高い電子密度を有さないことが確認された。
【0300】
(比較例8)
前述の実施例11と同様の方法により、高導電性マイエナイト化合物の作製を試みた。ただし、この比較例8では、前述の(高導電性マイエナイト化合物の作製)の工程で使用される装置300において、蓋315付きアルミナ容器310のみを使用し、蓋335付きの第1のカーボン容器330および蓋355付きの第2のカーボン容器350は、使用しなかった。その他の条件は、実施例11の場合と同様である。
【0301】
なお、1300℃でのアルミニウムの酸化還元反応の平衡定数から熱力学的に計算される酸素分圧は、6.4×10−22Paである。このため、1250℃におけるこの成形体SC1の晒される環境中の酸素分圧は、計算上、6.4×10−22Pa未満であると推察される。
【0302】
これにより、前述の(高導電性マイエナイト化合物の作製)工程後に、表面が薄白色の黒色物質(以下、黒色物質「SD13」と称する)が得られた。黒色物質SD13の相対密度は、93.0%であった。
【0303】
さらに、実施例11と同様の方法により、この黒色物質SD13を粉砕して得た粉末のX線回折の結果、黒色物質SD13は、C12A7構造のみを有することがわかった。また、得られた粉末の光拡散反射スペクトルからクベルカムンク変換により求められた電子密度は、1.2×1019cm−3であり、電気伝導率は、0.1S/cmであった。
【0304】
このことから、黒色物質SD13は、高い電子密度を有さないことが確認された。
【0305】
(比較例9)
前述の実施例11と同様の方法により、高導電性マイエナイト化合物の作製を試みた。ただし、この比較例9では、前述の(高導電性マイエナイト化合物の作製)の工程で使用される装置300において、アルミナブロック325およびアルミナ板328は使用せず、マイエナイト化合物の成形体を、直接アルミニウム層320の上に設置した。その他の条件は、実施例11の場合と同様である。
【0306】
なお、1300℃でのアルミニウムとカーボンの酸化還元反応の平衡定数から熱力学的に計算される酸素分圧は、1.6×10−20Paである。このため、1250℃におけるこの成形体SC1の晒される環境中の酸素分圧は、計算上、1.6×10−20Pa未満であると推察される。
【0307】
これにより、前述の(高導電性マイエナイト化合物の作製)工程後に、黒色物質(以下、黒色物質「SD14」と称する)が得られた。黒色物質SD14は、アルミニウム層320中に半分沈んでおり、容易に回収することはできなかった。
【0308】
そこでアルミナ容器310をハンマーで破壊することにより、アルミニウム層320ごと、黒色物質SD14を回収した。黒色物質SD14の表面には、銀白色の金属アルミニウムの溶融物が固着しており、さらにアルミナと考えられる白色物が強固に固着していた。これら表面の物質を、電動ノコギリ、セラミックス製リューター、および紙やすりを用いて丁寧に除去してから、黒色物質SD14の相対密度と電子密度を調べた。黒色物質SD14の相対密度は、91.4%であった。
【0309】
さらに、実施例11と同様の方法により、この黒色物質SD14を粉砕して得た粉末のX線回折の結果、黒色物質SD14は、C12A7構造のみを有することがわかった。黒色物質SD14の電子密度は、1.4×1021cm−3であり、電気伝導率は、15S/cmであった。このことから、黒色物質SD14は、高導電性マイエナイト化合物であることが確認された。
【0310】
しかしながら、比較例9では、導電性マイエナイト化合物を回収するのに、多大な労力が必要であった。従って、この方法は、工業的な生産には適さない製造方法であると考えられる。
【0311】
(比較例10)
前述の実施例11と同様の方法により、高導電性マイエナイト化合物の作製を試みた。ただし、この比較例10では、前述の(高導電性マイエナイト化合物の作製)の工程で使用される装置300において、蓋315付きアルミナ容器310およびアルミニウム層320は、使用しなかった。すなわち、この比較例10では、蓋335付きの第1のカーボン容器330、および蓋355付きの第2のカーボン容器350のみを使用して、アルミニウム蒸気の存在しない環境下で、成形体SC1の焼成処理を行った。
【0312】
また、焼成処理の際には、炉内を真空引きし、100Paまで減圧した後、酸素濃度が1体積ppm以下の窒素ガスを大気圧になるまで炉内へ流入させた。その後、第2のカーボン容器350を、4時間で1600℃まで加熱し、この温度で2時間保持した後、4時間で室温まで冷却させた。
【0313】
従って、この比較例10の場合、成形体SC1の晒される環境中の酸素分圧は、0.1Pa程度である。
【0314】
これにより、表面が黒色の黒色物質(以下、黒色物質「SD15」と称する)が得られた。
【0315】
黒色物質SD15は、第1のカーボン容器330に融着しており、容易に回収することはできなかった。そこで第1のカーボン容器330をハンマーで破壊し、飛散した黒色物質SD15の欠片だけを回収した。
【0316】
さらに、実施例11と同様の方法により、この黒色物質SD15を粉砕して得た粉末のX線回折の結果、黒色物質SD15は、C12A7構造のみを有することがわかった。ただし、黒色物質SD15の電子密度は、3.4×1019cm−3であった。
【0317】
このことから、黒色物質SD15は、高い電子密度を有さないことが確認された。
【0318】
(比較例11)
前述の比較例10と同様の方法により、高導電性マイエナイト化合物の作製を試みた。ただし、この比較例11では、4時間で1300℃まで加熱し、この温度で6時間保持した後、4時間で室温まで冷却させて、黒色物質SD16を得た。黒色物質SD16はカーボン容器に固着しておらず、容易に回収できた。
【0319】
さらに、実施例11と同様の方法により、この黒色物質SD16を粉砕して得た粉末のX線回折の結果、黒色物質SD16は、C12A7構造のみを有することがわかった。ただし、黒色物質SD16の電子密度は、4.8×1019cm−3であった。
【0320】
このことから、黒色物質SD16は、高い電子密度を有さないことが確認された。
【0321】
以下の表2には、実施例11〜20と比較例6〜11における成形体の焼成温度、時間、およびアルミニウム蒸気の有無、ならびに得られた黒色物質の結晶構造、相対密度、電子密度、および電気伝導率をまとめて示した。
【0322】
【表2】
本願は、2011年5月13日に出願した日本国特許出願2011−107902号および2011年10月7日に出願した日本国特許出願2011−223029号に基づく優先権を主張するものであり、同日本国出願の全内容を本願の参照として援用する。
【符号の説明】
【0323】
100 装置
120 カーボン容器
130 カーボン蓋
140 仕切り板
145 耐熱皿
150 アルミニウム金属粉末の層
160 被処理体
170 排気口
300 装置
310 アルミナ容器
315 アルミナ製の蓋
320 アルミニウム層
325 アルミナブロック
328 アルミナ板
330 第1のカーボン容器
335 カーボン製の蓋
350 第2のカーボン容器
355 カーボン製の蓋
B1 成形体。
図1
図2
図3
図4