【実施例】
【0141】
次に、本発明の実施例について説明する。
【0142】
(実施例1)
以下の方法で、導電性マイエナイト化合物を作製した。
【0143】
(仮焼粉の合成)
まず、酸化カルシウム(CaO):酸化アルミニウム(Al
2O
3)がモル比換算で12:7となるように、炭酸カルシウム(CaCO
3)粉末313.5gと、酸化アルミニウム(Al
2O
3)粉末186.5gとを混合した。
【0144】
次に、この混合粉末をアルミナ容器に入れ、大気中、300℃/時間の昇温速度で1000℃まで加熱し、1000℃で6時間保持した。その後、これを300℃/時間の冷却速度で降温し、約362gの白色粉を得た。
【0145】
次に、アルミナ製自動乳鉢により、この白色粉を解砕して仮焼粉を得た。レーザ回折散乱法(SALD−2100、島津製作所社製)により、得られた仮焼粉の粒度を測定したところ、仮焼粉の平均粒径は、20μmであった。
【0146】
(仮焼粉の成形)
前述の方法で得られた仮焼粉(12g)を、長さ40mm×幅20mm×高さ30mmの金型に敷き詰めた。この金型に対して、10MPaのプレス圧で1分間の一軸プレスを行った。さらに、180MPaの圧力で等方静水圧プレス処理を実施した。
【0147】
これにより、縦約40mm×横約20mm×高さ約10mmの寸法の成形体を得た。
【0148】
(導電性マイエナイト化合物焼結体の作製)
次に、
図3に示す装置を使用して成形体を高温で焼成処理し、導電性マイエナイト化合物を作製した。
【0149】
図3には、成形体の焼成処理に使用した装置を示す。
図3に示すように、この装置300は、アルミナ製の蓋315付きのアルミナ容器310と、カーボン製の蓋335付きの第1のカーボン容器330と、カーボン製の蓋355付きの第2のカーボン容器350と、を備える。また、アルミナ容器310の底部には、3gの金属アルミニウム粉末が敷き詰められて構成されたアルミニウム層320が配置されている。アルミニウム層320は、装置300が高温になった際に、アルミニウム蒸気を発生するアルミニウム蒸気ソースとなる。
【0150】
アルミナ容器310は、外径40mm×内径38mm×高さ40mmの略円筒状の形状を有する。また、第1のカーボン容器330は、外径60mm×内径50mm×高さ60mmの略円筒状の形状を有し、第2のカーボン容器350は、外径80mm×内径70mm×高さ75mmの略円筒状の形状を有する。
【0151】
この装置300は、以下のように使用した。
【0152】
まず、前述の成形体を市販のカッターで、長さ20mm×幅20mm×厚さ10mmの直方体形状に切断した。
【0153】
次に、この成形体B1を、アルミナ容器310内に配置した。この際には、アルミニウム層320の上に、2つの同一形状のアルミナブロック325を配置し、さらにこのアルミナブロック325の上に、厚さが1mmのアルミナ板328を配置した。このアルミナ板328の上に、成形体B1を配置した後、アルミナ容器310上に蓋315を被せた。この状態では、成形体B1は、アルミニウム層320とは直接接触しない。
【0154】
次に、この装置300を、雰囲気調整可能な電気炉内に設置した。また、ロータリーポンプを用いて、炉内を真空引きした。その後、炉内の圧力が20Pa以下になってから、装置300の加熱を開始し、300℃/時間の昇温速度で1320℃まで加熱した。装置300をこの状態で6時間保持した後、300℃/時間の降温速度で室温まで冷却させた。
【0155】
なお、1300℃でのアルミニウムとカーボンの酸化還元反応の平衡定数から熱力学的に計算される酸素分圧は、1.6×10
−20Paである。このため、この成形体の晒される環境中の酸素分圧は、計算上、1.6×10
−20Pa程度であると推察される。
【0156】
この処理により、成形体B1が焼結され、表面が薄白色の黒色物質(以下、黒色物質「C1」と称する)が得られた。黒色物質C1は、長さ16mm×幅16mm×厚さ8mmの直方体であり、相対密度は、97.8%であった。
【0157】
電子密度測定用サンプルを採取するため、アルミナ製自動乳鉢でこの黒色物質C1の粗粉砕を実施した。粗粉砕は、まず、黒色物質C1をアルミナ乳鉢で砕き、表面の薄白色部分を丁寧に取り除いてから、黒色部分だけを使用して実施した。
【0158】
得られた粉末は、焦げ茶色を呈していた。X線回折分析の結果、この粉末は、C12A7構造だけを有することがわかった。また、得られた粉末の光拡散反射スペクトルのピーク位置から求められた電子密度は、1.0×10
21cm
−3であり、電気伝導率は、11S/cmであった。このことから、黒色物質C1は、高導電性マイエナイト化合物の焼結体であることが確認された。
【0159】
表1には、実施例1における焼成工程の条件、および得られた焼結体の評価結果をまとめて示した。
【0160】
【表1】
(実施例2)
前述の実施例1と同様の方法により、導電性マイエナイト化合物を作製した。ただし、この実施例2では、前述の(導電性マイエナイト化合物の作製)の工程において、焼成温度を1230℃とした。その他の条件は、実施例1の場合と同様である。
【0161】
これにより、前述の(導電性マイエナイト化合物の作製)工程後に、表面が薄白色の黒色物質(以下、黒色物質「C2」と称する)が得られた。黒色物質C2は、長さ18mm×幅18mm×厚さ9mmの直方体形状であり、相対密度は、87.4%であった。
【0162】
さらに、実施例1と同様の方法により、この黒色物質C2を粉砕して得た粉末のX線回折の結果、黒色物質C2は、C12A7構造と僅かな異相のみを有することがわかった。黒色物質C2の電子密度は、6.6×10
20cm
−3であり、電気伝導率は7S/cmであった。
【0163】
このことから、黒色物質C2は、高導電性マイエナイト化合物の焼結体であることが確認された。
【0164】
前述の表1には、実施例2における焼成工程の条件、および得られた焼結体の評価結果をまとめて示した。
【0165】
(実施例3)
前述の実施例1と同様の方法により、導電性マイエナイト化合物を作製した。ただし、この実施例3では、前述の(導電性マイエナイト化合物の作製)の工程において、焼結させる温度を1340℃とした。その他の条件は、実施例1の場合と同様である。
【0166】
これにより、前述の(導電性マイエナイト化合物焼結体の作製)工程後に、表面が薄黄色の黒色物質(以下、黒色物質「C3」と称する)が得られた。黒色物質C3は、長さ16mm×幅16mm×厚さ8mmの直方体形状であり、相対密度は、98.5%であった。
【0167】
さらに、実施例1と同様の方法により、この黒色物質C3を粉砕して得た粉末のX線回折の結果、黒色物質C3は、C12A7構造と僅かな異相のみを有することがわかった。黒色物質C3の電子密度は、1.0×10
21cm
−3であり、導電率は11S/cmであった。
【0168】
このことから、黒色物質C3は、高導電性マイエナイト化合物の焼結体であることが確認された。
【0169】
前述の表1には、実施例3における焼成工程の条件、および得られた焼結体の評価結果をまとめて示した。
【0170】
(実施例4)
前述の実施例1と同様の方法により、導電性マイエナイト化合物焼結体を作製した。ただし、この実施例4では、前述の(導電性マイエナイト化合物焼結体の作製)の工程において、焼結させる温度を1300℃とした。その他の条件は、実施例1の場合と同様である。
【0171】
これにより、前述の(導電性マイエナイト化合物焼結体の作製)工程後に、表面が薄黄色の黒色物質(以下、黒色物質「C4」と称する)が得られた。黒色物質C4は、長さ16mm×幅16mm×厚さ8mmの直方体形状であり、相対密度は、91.0%であった。
【0172】
さらに、実施例1と同様の方法により、この黒色物質C4を粉砕して得た粉末のX線回折の結果、黒色物質C4は、C12A7構造と僅かな異相のみを有することがわかった。黒色物質C4の電子密度は、1.0×10
21cm
−3であり、導電率は11S/cmであった。
【0173】
このことから、黒色物質C4は、高導電性マイエナイト化合物の焼結体であることが確認された。
【0174】
前述の表1には、実施例4における焼成工程の条件、および得られた焼結体の評価結果をまとめて示した。
【0175】
(実施例5)
前述の実施例1と同様の方法により、導電性マイエナイト化合物焼結体を作製した。ただし、この実施例5では、前述の(導電性マイエナイト化合物焼結体の作製)の工程において、焼結させる温度を1300℃とし、保持時間を24時間とした。その他の条件は、実施例1の場合と同様である。
【0176】
これにより、前述の(導電性マイエナイト化合物焼結体の作製)工程後に、表面が薄黄色の黒色物質(以下、黒色物質「C5」と称する)が得られた。黒色物質C5は、長さ16mm×幅16mm×厚さ8mmの直方体形状であり、相対密度は、92.5%であった。
【0177】
さらに、実施例1と同様の方法により、この黒色物質C5を粉砕して得た粉末のX線回折の結果、黒色物質C5は、C12A7構造と僅かな異相のみを有することがわかった。黒色物質C5の電子密度は、1.2×10
21cm
−3であり、導電率は13S/cmであった。
【0178】
このことから、黒色物質C5は、高導電性マイエナイト化合物の焼結体であることが確認された。
【0179】
前述の表1には、実施例5における焼成工程の条件、および得られた焼結体の評価結果をまとめて示した。
【0180】
(実施例6)
前述の実施例1と同様の方法により、導電性マイエナイト化合物焼結体を作製した。ただし、この実施例6では、前述の(導電性マイエナイト化合物焼結体の作製)の工程において、焼結させる温度を1300℃とし、保持時間を48時間とした。その他の条件は、実施例1の場合と同様である。
【0181】
これにより、前述の(導電性マイエナイト化合物焼結体の作製)工程後に、表面が薄黄色の黒色物質(以下、黒色物質「C6」と称する)が得られた。黒色物質C6は、長さ16mm×幅16mm×厚さ8mmの直方体形状であり、相対密度は、93.0%であった。
【0182】
さらに、実施例1と同様の方法により、この黒色物質C6を粉砕して得た粉末のX線回折の結果、黒色物質C6は、C12A7構造と僅かな異相のみを有することがわかった。黒色物質C6の電子密度は、1.2×10
21cm
−3であり、導電率は13S/cmであった。
【0183】
このことから、黒色物質C6は、高導電性マイエナイト化合物の焼結体であることが確認された。
【0184】
なお、実施例5と実施例6の結果と比較すると、両者において、電子密度は、ほとんど変化していないことがわかる。このことから、焼成処理の時間を24時間より長くしても、電子密度をさらに高めることは難しいと考えられる。従って、エネルギー消費量の削減の観点から、保持時間は24時間以内とすることが好ましいといえる。
【0185】
前述の表1には、実施例6における焼成工程の条件、および得られた焼結体の評価結果をまとめて示した。
【0186】
(実施例7)
前述の実施例1と同様の方法により、導電性マイエナイト化合物焼結体を作製した。ただし、この実施例7では、前述の(仮焼粉の成形)の工程において、金型として、長さ40mm×幅20mm×高さ30mmの直方体の代わりに、直径110mm×高さ30mmのディスク型のものを使用した。これにより、直径100mmφ×高さ8mmの寸法の成形体B7が得られた。
【0187】
また、次の(導電性マイエナイト化合物焼結体の作製)工程では、以下のようにして、成形体B7を処理する装置を構成した。
【0188】
まず、内径190mmφ×外径210mmφ×高さ110mmの第1のカーボン容器の底部に、成形体B7を配置した。次に、この成形体B7の上部に、金属アルミニウムの入ったアルミナ容器を配置した。この状態で、第1のカーボン容器の上にカーボン製の蓋をした。
【0189】
次に、第1のカーボン容器を、内径230mmφ×外径250mmφ×高さ140mmの寸法の、第2のカーボン製容器内に設置した。また、第2の容器にカーボン製の蓋をした。
【0190】
このように構成した装置を、雰囲気調整可能な電気炉内に設置した。また、ロータリーポンプを用いて、炉内を真空引きした。その後、炉内の圧力が20Pa以下になってから、装置の加熱を開始し、300℃/時間の昇温速度で1320℃まで加熱した。装置をこの状態で24時間保持した後、300℃/時間の降温速度で室温まで冷却させた。
【0191】
これにより、(導電性マイエナイト化合物焼結体の作製)工程後に、表面が薄黄色の黒色物質(以下、黒色物質「C7」と称する)が得られた。黒色物質C7は、直径92mmφ×厚さ6mmの円板形状であり、相対密度は、98.0%であった。
【0192】
さらに、実施例1と同様の方法により、この黒色物質C7を分析した。
【0193】
ただし、黒色物質C7は、比較的大きな寸法を有するため、粉末を調製する際には、黒色物質C7の中心部分と外側部分の2ヵ所に分けて、サンプリングを行った。2箇所からサンプリングして得た粉末のX線回折の結果、何れの箇所においても、黒色物質C7は、C12A7構造と僅かな異相のみを有することがわかった。
【0194】
また、黒色物質C7の電子密度は、何れの箇所でも8.5×10
20cm
−3であり、導電率は、何れの箇所でも9S/cmであった。
【0195】
このことから、黒色物質C6は、高導電性マイエナイト化合物の焼結体であり、均一な状態であることが確認された。
【0196】
前述の表1には、実施例7における焼成工程の条件、および得られた焼結体の評価結果をまとめて示した。
【0197】
(実施例8)
前述の実施例1と同様の方法により、導電性マイエナイト化合物を作製した。ただし、この実施例8では、前述の(仮焼粉の成形)の工程を省略した。すなわち、実施例8では、成形体を作製せずに粉末状のまま、アルミナ板328上に仮焼粉を敷き詰めた。仮焼粉の重量は3gであった。その他の条件は、実施例1の場合と同様である。
【0198】
これにより、前述の(導電性マイエナイト化合物の作製)工程後に、表面が薄白色で円板状に潰れ、部分的に焼結された黒色物質(以下、黒色物質「C8」と称する)が得られた。黒色物質C8は、容易に折ることができた。破損しやすいため相対密度は測定できなかった。
【0199】
さらに、実施例8と同様の方法により、この黒色物質C8を粉砕して得た粉末のX線回折の結果、黒色物質C8は、C12A7構造と僅かな異相のみを有することがわかった。黒色物質C8の電子密度は、1.0×10
21cm
−3であった。電気伝導率は形状が不定形のため測定できなかった。
【0200】
このことから、黒色物質C8は、高導電性マイエナイト化合物であることが確認された。
【0201】
(比較例1)
前述の実施例1と同様の方法により、高導電性マイエナイト化合物の作製を試みた。ただし、この比較例1では、前述の(導電性マイエナイト化合物焼結体の焼成)の工程において、焼結させる温度を1200℃とした。その他の条件は、実施例1の場合と同様である。
【0202】
これにより、前述の(導電性マイエナイト化合物焼結体の作製)工程後に、表面が薄白色の黒色物質(以下、黒色物質「C9」と称する)が得られた。黒色物質C9は、長さ19mm×幅19mm×厚さ9mmの直方体形状であった。
【0203】
この黒色物質C9の電子密度測定を行うため、粗粉砕をしたところ、黒色物質C9の内部は白色を呈しており、還元不足であることがわかった。
【0204】
このように、比較例1では、均一な状態の導電性マイエナイト化合物の焼結体を得ることはできなかった。
【0205】
前述の表1には、比較例1における焼成工程の条件、および得られた焼結体の評価結果をまとめて示した。
【0206】
(比較例2)
前述の実施例1と同様の方法により、導電性マイエナイト化合物を作製した。ただし、この比較例2では、前述の(導電性マイエナイト化合物焼結体の作製)の工程において、焼結させる温度を1360℃とした。その他の条件は、実施例1の場合と同様である。
【0207】
これにより、前述の(導電性マイエナイト化合物焼結体の作製)工程後に、表面が黒色の黒色物質(以下、黒色物質「C10」と称する)が得られた。黒色物質C10は、変形が激しい上、アルミナ板に固着しており、アルミナ板から分離することができなかった。
【0208】
そのためアルミナ板を破壊し、黒色物質C10の一部を採取し、電子密度測定を行った。採取サンプルを粉砕して得た粉末のX線回折の結果、黒色物質C10は、C12A7構造と僅かな異相のみを有することがわかった。しかしながら、黒色物質C10の電子密度は、6.9×10
19cm
−3であり、導電率は0.7S/cmであった。
【0209】
このことから、黒色物質C10は、高導電性マイエナイト化合物の焼結体でないことが確認された。
【0210】
前述の表1には、比較例2における焼成工程の条件、および得られた焼結体の評価結果をまとめて示した。
【0211】
(比較例3)
前述の実施例1と同様の方法により、導電性マイエナイト化合物焼結体を作製した。ただし、この比較例3では、前述の(導電性マイエナイト化合物焼結体の作製)の工程において、蓋付きカーボン容器を使用せずに、蓋付きアルミナ容器だけを用いた。さらに電気炉は、アルミナ製の炉心管を使用し、カーボンが存在しない条件下で熱処理を施した。その他の条件は、実施例1の場合と同様である。
【0212】
これにより、前述の(導電性マイエナイト化合物焼結体の作製)工程後に、表面が薄白色および銀白色の黒色物質(以下、黒色物質「C11」と称する)が得られた。黒色物質C10は、長さ17mm×幅17mm×厚さ8mmの直方体形状であり、相対密度は、92.0%であった。
【0213】
得られた黒色物質C11を粉砕して得た粉末のX線回折の結果、黒色物質C11は、C12A7構造と僅かな異相のみを有することがわかった。また、得られた粉末の光拡散反射スペクトルからクベルカムンク変換により求められた電子密度は、1.2×10
19cm
−3であり、導電率は、0.1S/cmであった。
【0214】
このことから、黒色物質C11は、高導電性マイエナイト化合物焼結体でないことが確認された。
【0215】
前述の表1には、比較例3における焼成工程の条件、および得られた焼結体の評価結果をまとめて示した。
【0216】
(比較例4)
前述の実施例1と同様の方法により、導電性マイエナイト化合物焼結体を作製した。ただし、この比較例4では、前述の(導電性マイエナイト化合物焼結体の作製)の工程において、成形体B1を、直接金属アルミニウム粉末の上に設置した。その他の条件は、実施例1の場合と同様である。
【0217】
これにより、前述の(導電性マイエナイト化合物焼結体の作製)工程後に、黒色物質(以下、黒色物質「C12」と称する)が得られた。黒色物質C12は、金属アルミニウム層中に半分程埋没されており、容易に回収することはできなかった。
【0218】
このように、比較例4では、焼結体を回収するのに多大な労力が必要となり、導電性マイエナイト化合物焼結体を製造するための現実的な方法ではないことが確認された。
【0219】
前述の表1には、比較例4における焼成工程の条件、および得られた焼結体の評価結果をまとめて示した。
【0220】
(比較例5)
前述の実施例1と同様の方法により、導電性マイエナイト化合物焼結体を作製した。ただし、この比較例5では、前述の(導電性マイエナイト化合物焼結体の作製)の工程において、金属アルミニウム層を設置しなかった。その他の条件は、実施例1の場合と同様である。
【0221】
これにより、前述の(導電性マイエナイト化合物焼結体の作製)工程後に、表面が黒色の黒色物質(以下、黒色物質「C13」と称する)が得られた。黒色物質C13は、長さ17mm×幅17mm×厚さ8mmの直方体形状であり、相対密度は、96.0%であった。
【0222】
この黒色物質C13を粉砕して得た粉末のX線回折の結果、黒色物質C13は、C12A7構造だけであることがわかった。しかしながら、得られた粉末の光拡散反射スペクトルからクベルカムンク変換により求められた電子密度は、3.3×10
19cm
−3であり、導電率は、0.2S/cmであった。このことから、黒色物質C13は、高導電性マイエナイト化合物焼結体でないことが確認された。
【0223】
前述の表1には、比較例5における焼成工程の条件、および得られた焼結体の評価結果をまとめて示した。
【0224】
(実施例11)
以下の方法で、高導電性マイエナイト化合物を作製した。
【0225】
(マイエナイト化合物の合成)
酸化カルシウム(CaO):酸化アルミニウム(Al
2O
3)のモル比換算で12:7となるように、炭酸カルシウム(CaCO
3)粉末313.5gと、酸化アルミニウム(Al
2O
3)粉末186.5gとを混合した。次に、この混合粉末を、大気中、300℃/時間の昇温速度で1350℃まで加熱し、1350℃に6時間保持した。その後、これを300℃/時間の冷却速度で降温し、約362gの白色塊体を得た。
【0226】
次に、アルミナ製スタンプミルにより、この白色塊体を大きさが約5mmの破片になるよう粉砕した後、さらに、アルミナ製自動乳鉢で粗粉砕し、白色粒子(以下、粒子「SA1」と称する)を得た。レーザ回折散乱法(SALD−2100、島津製作所社製)により、得られた粒子SA1の粒度を測定したところ、平均粒径は、20μmであった。
【0227】
次に、粒子SA1を350gと、直径5mmのジルコニアボール3kgと、粉砕溶媒としての工業用ELグレードのイソプロピルアルコール350mlとを、2リットルのジルコニア製容器に入れ、容器にジルコニア製の蓋を載せてから、回転速度94rpmで、16時間、ボールミル粉砕処理を実施した。
【0228】
処理後、得られたスラリーを用いて吸引ろ過を行い、粉砕溶媒を除去した。また、残りの物質を80℃のオーブンに入れ、10時間乾燥させた。これにより、白色粉末(以下、粉末「SB1」と称する)を得た。X線回折分析の結果、得られた粉末SB1は、C12A7構造であることが確認された。また、前述のレーザ回折散乱法により得られた粉末SB1の平均粒径は、3.3μmであることがわかった。
【0229】
(マイエナイト化合物の成形体の作製)
前述の方法で得られた粉末SB1(13g)を、長さ40mm×幅20mm×高さ30mmの金型に敷き詰めた。この金型に対して、10MPaのプレス圧で1分間の一軸プレスを行った。さらに、180MPaの圧力で等方静水圧プレス処理し、縦約40mm×横約20mm×高さ約10mmの寸法の成形体SC1を得た。
【0230】
(高導電性マイエナイト化合物の作製)
次に、前述の
図3に示す装置を使用して成形体SC1を高温で焼成処理し、導電性マイエナイト化合物を作製した。
【0231】
実施例11では、前述の装置300は、以下のように使用した。
【0232】
まず、前述の成形体SC1を市販のカッターで、長さ8mm×幅6mm×厚さ6mmの直方体形状に切断した。
【0233】
次に、この成形体SC1を、アルミナ容器310内に配置した。この際には、アルミニウム層320の上に、2つの同一形状のアルミナブロック325を配置し、さらにこのアルミナブロック325の上に、厚さが1mmのアルミナ板328を配置した。このアルミナ板328の上に、成形体SC1を配置した後、アルミナ容器310上に蓋315を被せた。この状態では、成形体SC1は、アルミニウム層320とは直接接触しない。
【0234】
次に、この装置300を、雰囲気調整可能な電気炉内に設置した。また、ロータリーポンプを用いて、炉内を真空引きした。その後、炉内の圧力が5Pa以下になってから、装置300の加熱を開始し、300℃/時間の昇温速度で1250℃まで加熱した。装置300をこの状態で6時間保持した後、300℃/時間の降温速度で室温まで冷却させた。
【0235】
なお、1300℃でのアルミニウムとカーボンの酸化還元反応の平衡定数から熱力学的に計算される酸素分圧は、1.6×10
−20Paである。このため、1250℃におけるこの成形体SC1の晒される環境中の酸素分圧は、計算上、1.6×10
−20Pa未満であると推察される。
【0236】
この処理により、成形体SC1は、焼結され、表面が薄白色の黒色物質(以下、黒色物質「SD1」と称する)が得られた。この黒色物質SD1の相対密度は、97.0%であった。
【0237】
電子密度測定用サンプルを採取するため、アルミナ製自動乳鉢でこの黒色物質SD1の粗粉砕を実施した。粗粉砕は、まず、黒色物質SD1をアルミナ乳鉢で砕き、表面の薄白色部分を丁寧に取り除いてから、黒色部分だけを使用して実施した。
【0238】
得られた粉末は、焦げ茶色を呈していた。X線回折分析の結果、この粉末は、C12A7構造だけを有することがわかった。また、得られた粉末の光拡散反射スペクトルのピーク位置から求められた電子密度は、1.6×10
21cm
−3であり、電気伝導率は、17S/cmであった。このことから、黒色物質SD1は、高導電性マイエナイト化合物であることが確認された。
【0239】
(実施例12)
前述の実施例11と同様の方法により、導電性マイエナイト化合物を作製した。ただし、この実施例12では、前述の(高導電性マイエナイト化合物の作製)の工程において、焼成温度を1300℃とした。その他の条件は、実施例11の場合と同様である。
【0240】
なお、1300℃でのアルミニウムとカーボンの酸化還元反応の平衡定数から熱力学的に計算される酸素分圧は、1.6×10
−20Paである。このため、実施例12において、成形体SC1の晒される環境中の酸素分圧は、計算上、1.6×10
−20Pa程度であると推察される。
【0241】
これにより、前述の(高導電性マイエナイト化合物の作製)工程後に、表面が薄黄色の黒色物質(以下、黒色物質「SD2」と称する)が得られた。黒色物質SD2の相対密度は、96.1%であった。
【0242】
さらに、実施例11と同様の方法により、この黒色物質SD2を粉砕して得た粉末のX線回折の結果、黒色物質SD2は、C12A7構造のみを有することがわかった。黒色物質SD2の電子密度は、1.6×10
21cm
−3であり、電気伝導率は17S/cmであった。
【0243】
このことから、黒色物質SD2は、高導電性マイエナイト化合物であることが確認された。
【0244】
(実施例13)
前述の実施例11と同様の方法により、高導電性マイエナイト化合物を作製した。ただし、この実施例13では、前述の(高導電性マイエナイト化合物の作製)の工程において、焼結させる温度を1340℃とした。その他の条件は、実施例11の場合と同様である。
【0245】
なお、1415℃でのアルミニウムとカーボンの酸化還元反応の平衡定数から熱力学的に計算される酸素分圧は、6.2×10
−18Paである。このため、1340℃におけるこの成形体SC1の晒される環境中の酸素分圧は、計算上、6.2×10
−18Pa未満であると推察される。
【0246】
これにより、前述の(高導電性マイエナイト化合物の作製)工程後に、表面が黄色い粉末で覆われた、黒色物質(以下、黒色物質「SD3」と称する)が得られた。黒色物質SD3の相対密度は、95.5%であった。
【0247】
さらに、実施例11と同様の方法により、この黒色物質SD3を粉砕して得た粉末のX線回折の結果、黒色物質SD3は、C12A7構造のみを有することがわかった。黒色物質SD3の電子密度は、1.5×10
21cm
−3であり、電気伝導率は16S/cmであった。
【0248】
このことから、黒色物質SD3は、高導電性マイエナイト化合物であることが確認された。
【0249】
なお、この黒色物質SD3の表面を覆っている黄色い粉末は、軽く擦る程度で容易に除去することができた。除去した後の表面は黒色を呈しており、表面の黒色部分は、電気的導通を有することがわかった(テスターで確認)。
【0250】
さらに黄色い粉末について、X線回折分析を行ったところ、この黄色い粉末の主成分は、炭化アルミニウムAl
4C
3であることが確認された。
【0251】
(実施例14)
前述の実施例11と同様の方法により、高導電性マイエナイト化合物を作製した。ただし、この実施例14では、前述の(高導電性マイエナイト化合物の作製)の工程において、焼結させる温度を1300℃とし、保持時間を12時間とした。その他の条件は、実施例11の場合と同様である。
【0252】
なお、1300℃でのアルミニウムとカーボンの酸化還元反応の平衡定数から熱力学的に計算される酸素分圧は、1.6×10
−20Paである。このため、実施例14において、成形体SC1の晒される環境中の酸素分圧は、計算上、1.6×10
−20Pa程度であると推察される。
【0253】
これにより、前述の(高導電性マイエナイト化合物の作製)工程後に、表面が黄色い粉末で覆われた、黒色物質(以下、黒色物質「SD4」と称する)が得られた。黒色物質SD4の相対密度は、96.2%であった。
【0254】
さらに、実施例11と同様の方法により、この黒色物質SD4を粉砕して得た粉末のX線回折の結果、黒色物質SD4は、C12A7構造のみを有することがわかった。黒色物質SD4の電子密度は、1.5×10
21cm
−3であり、電気伝導率は16S/cmであった。
【0255】
このことから、黒色物質SD4は、高導電性マイエナイト化合物であることが確認された。
【0256】
なお、この黒色物質SD4の表面を覆っている黄色い粉末は、軽く擦る程度で容易に除去することができた。除去した後の表面は黒色を呈しており、表面の黒色部分は、電気的導通を有することがわかった(テスターで確認)。
【0257】
さらに黄色い粉末について、X線回折分析を行ったところ、この黄色い粉末の主成分は、炭化アルミニウムAl
4C
3であることが確認された。
【0258】
(実施例15)
前述の実施例11と同様の方法により、高導電性マイエナイト化合物を作製した。ただし、この実施例15では、前述の(高導電性マイエナイト化合物の作製)の工程において、焼結させる温度を1300℃とし、保持時間を2時間とした。その他の条件は、実施例11の場合と同様である。
【0259】
なお、1300℃でのアルミニウムとカーボンの酸化還元反応の平衡定数から熱力学的に計算される酸素分圧は、1.6×10
−20Paである。このため、実施例15において、成形体SC1の晒される環境中の酸素分圧は、計算上、1.6×10
−20Pa程度であると推察される。
【0260】
これにより、前述の(高導電性マイエナイト化合物の作製)工程後に、表面が薄黄色の黒色物質(以下、黒色物質「SD5」と称する)が得られた。黒色物質SD5の相対密度は、94.1%であった。
【0261】
さらに、実施例11と同様の方法により、この黒色物質SD5を粉砕して得た粉末のX線回折の結果、黒色物質SD5は、C12A7構造のみを有することがわかった。黒色物質SD5の電子密度は、1.4×10
21cm
−3であり、電気伝導率は15S/cmであった。
【0262】
このことから、黒色物質SD5は、高導電性マイエナイト化合物であることが確認された。
【0263】
(実施例16)
前述の実施例11と同様の方法により、高導電性マイエナイト化合物を作製した。ただし、この実施例16では、前述の(高導電性マイエナイト化合物の作製)の工程において、焼結させる温度を1380℃とし、保持時間を12時間とした。その他の条件は、実施例11の場合と同様である。
【0264】
なお、1415℃でのアルミニウムとカーボンの酸化還元反応の平衡定数から熱力学的に計算される酸素分圧は、6.2×10
−18Paである。このため、実施例16におけるこの成形体SC1の晒される環境中の酸素分圧は、計算上、6.2×10
−18Pa程度であると推察される。
【0265】
これにより、前述の(高導電性マイエナイト化合物の作製)工程後に、表面が薄白色の黒色物質(以下、黒色物質「SD6」と称する)が得られた。黒色物質(以下、黒色物質「SD6」と称する)が得られた。なお、この黒色物質SD6は、形状が大きく変形していた。
【0266】
さらに、実施例11と同様の方法により、この黒色物質SD6を粉砕して得た粉末のX線回折の結果、黒色物質SD6は、C12A7構造のみを有することがわかった。黒色物質SD6の電子密度は、1.0×10
21cm
−3であり、電気伝導率は13S/cmであった。
【0267】
このことから、黒色物質SD6は、高導電性マイエナイト化合物であることが確認された。
【0268】
(実施例17)
前述の実施例11と同様の方法により、高導電性マイエナイト化合物を作製した。ただし、この実施例17では、前述の(高導電性マイエナイト化合物の作製)の工程におけるアルミニウム層320として、実施例11と同条件で一回使用したものを用いた。すなわち、アルミニウム層320を構成する金属アルミニウム粉末は、前回の熱処理により溶融固化しているため、この実施例17では、アルミニウム層320は、塊状になっている。その他の条件は、実施例11の場合と同様である。
【0269】
なお、1300℃でのアルミニウムとカーボンの酸化還元反応の平衡定数から熱力学的に計算される酸素分圧は、1.6×10
−20Paである。このため、1250℃におけるこの成形体SC1の晒される環境中の酸素分圧は、計算上、1.6×10
−20Pa未満であると推察される。
【0270】
これにより、前述の(高導電性マイエナイト化合物の作製)工程後に、表面が薄白色の黒色物質(以下、黒色物質「SD7」と称する)が得られた。黒色物質SD7の相対密度は、97.2%であった。
【0271】
さらに、実施例11と同様の方法により、この黒色物質SD7を粉砕して得た粉末のX線回折の結果、黒色物質SD7は、C12A7構造のみを有することがわかった。黒色物質SD7の電子密度は、1.6×10
21cm
−3であり、電気伝導率は17S/cmであった。
【0272】
このことから、黒色物質SD7は、高導電性マイエナイト化合物であることが確認された。
【0273】
また、この結果から、アルミニウム層320は、再利用することが可能であることがわかった。ちなみに、その後の実験から、装置300において、アルミニウム層320を10回繰り返し使用しても、ほぼ同等の高導電性マイエナイト化合物が得られることが確認されている。
【0274】
(実施例18)
前述の実施例11と同様の方法により、高導電性マイエナイト化合物を作製した。ただし、この実施例18では、前述の(マイエナイト化合物の成形体の作製)の工程において、使用する粉末を、マイエナイト化合物ではなく、電子密度が5.0×10
19cm
−3の導電性マイエナイト化合物の粉末を使用した。その他の条件は、実施例11の場合と同様である。
【0275】
なお、1300℃でのアルミニウムとカーボンの酸化還元反応の平衡定数から熱力学的に計算される酸素分圧は、1.6×10
−20Paである。このため、1250℃におけるこの成形体SC1の晒される環境中の酸素分圧は、計算上、1.6×10
−20Pa未満であると推察される。
【0276】
これにより、前述の(高導電性マイエナイト化合物の作製)工程後に、表面が薄白色の黒色物質(以下、黒色物質「SD8」と称する)が得られた。黒色物質SD8の相対密度は、96.8%であった。
【0277】
さらに、実施例11と同様の方法により、この黒色物質SD8を粉砕して得た粉末のX線回折の結果、黒色物質SD8は、C12A7構造のみを有することがわかった。黒色物質SD8の電子密度は、1.6×10
21cm
−3であり、電気伝導率は17S/cmであった。
【0278】
このことから、黒色物質SD8は、高導電性マイエナイト化合物であることが確認された。
【0279】
(実施例19)
前述の実施例11と同様の方法により、高導電性マイエナイト化合物を作製した。ただし、この実施例19では、前述の(高導電性マイエナイト化合物の作製)の工程で使用される装置300において、蓋315付きアルミナ容器310、および蓋335付きの第1のカーボン容器330だけを使用し、蓋355付きの第2のカーボン容器350は、使用しなかった。その他の条件は、実施例11の場合と同様である。
【0280】
なお、1300℃でのアルミニウムとカーボンの酸化還元反応の平衡定数から熱力学的に計算される酸素分圧は、1.6×10
−20Paである。このため、1250℃におけるこの成形体SC1の晒される環境中の酸素分圧は、計算上、1.6×10
−20Pa未満であると推察される。
【0281】
これにより、前述の(高導電性マイエナイト化合物の作製)工程後に、表面が薄白色の黒色物質(以下、黒色物質「SD9」と称する)が得られた。黒色物質SD9の相対密度は、96.8%であった。
【0282】
さらに、実施例11と同様の方法により、この黒色物質SD9を粉砕して得た粉末のX線回折の結果、黒色物質SD9は、C12A7構造のみを有することがわかった。黒色物質SD9の電子密度は、1.4×10
21cm
−3であり、電気伝導率は15S/cmであった。
【0283】
このことから、黒色物質SD9は、高導電性マイエナイト化合物であることが確認された。
【0284】
(実施例20)
前述の実施例11と同様の方法により、高導電性マイエナイト化合物を作製した。ただし、この実施例20では、前述の(高導電性マイエナイト化合物の作製)の工程において、電気炉内の圧力は、30Paとした。その他の条件は、実施例11の場合と同様である。
【0285】
なお、1300℃でのアルミニウムとカーボンの酸化還元反応の平衡定数から熱力学的に計算される酸素分圧は、1.6×10
−20Paである。このため、1250℃におけるこの成形体SC1の晒される環境中の酸素分圧は、計算上、1.6×10
−20Pa未満であると推察される。
【0286】
これにより、前述の(高導電性マイエナイト化合物の作製)工程後に、表面が薄白色の黒色物質(以下、黒色物質「SD10」と称する)が得られた。黒色物質SD10の相対密度は、96.6%であった。
【0287】
さらに、実施例11と同様の方法により、この黒色物質SD10を粉砕して得た粉末のX線回折の結果、黒色物質SD10は、C12A7構造のみを有することがわかった。黒色物質SD10の電子密度は、1.4×10
21cm
−3であり、電気伝導率は15S/cmであった。
【0288】
このことから、黒色物質SD10は、高導電性マイエナイト化合物であることが確認された。
【0289】
(比較例6)
前述の実施例11と同様の方法により、高導電性マイエナイト化合物の作製を試みた。ただし、この比較例6では、前述の(高導電性マイエナイト化合物の作製)の工程において、焼結させる際の温度を1200℃とした。その他の条件は、実施例11の場合と同様である。
【0290】
なお、1230℃でのアルミニウムとカーボンの酸化還元反応の平衡定数から熱力学的に計算される酸素分圧は、2.8×10
−22Paである。このため、1200℃におけるこの成形体SC1の晒される環境中の酸素分圧は、計算上、2.8×10
−22Pa未満であると推察される。
【0291】
これにより、前述の(高導電性マイエナイト化合物の作製)工程後に、表面が薄白色の黒色物質(以下、黒色物質「SD11」と称する)が得られた。黒色物質SD11の相対密度は、94.0%であった。
【0292】
さらに、実施例11と同様の方法により、この黒色物質SD11を粉砕して得た粉末のX線回折の結果、黒色物質SD11は、C12A7構造の他、異相が存在することがわかった。黒色物質SD11では、異相が存在するため、正確な電子密度および電気伝導率は不明であるが、黒色物質SD11の電子密度は、おおよそ3.0×10
19cm
−3であり、電気伝導率は0.2S/cmであった。
【0293】
このことから、黒色物質SD11は、高い電子密度を有さないことが確認された。
【0294】
(比較例7)
前述の実施例11と同様の方法により、高導電性マイエナイト化合物の作製を試みた。ただし、この比較例7では、前述の(高導電性マイエナイト化合物の作製)の工程において、焼結させる温度を1420℃とした。その他の条件は、実施例11の場合と同様である。
【0295】
なお、1415℃でのアルミニウムとカーボンの酸化還元反応の平衡定数から熱力学的に計算される酸素分圧は、6.2×10
−18Paである。このため、1420℃におけるこの成形体SC1の晒される環境中の酸素分圧は、計算上、6.2×10
−18Paを超えると推察される。
【0296】
これにより、前述の(高導電性マイエナイト化合物の作製)工程後に、表面が薄白色の黒色物質(以下、黒色物質「SD12」と称する)が得られた。黒色物質SD12は、著しく変形していた。また、黒色物質SD12は、アルミナ板328に固着しており、アルミナ板328から分離することができなかった。そのためアルミナ板328を破壊し、黒色物質の欠片だけを採取した。黒色物質SD12の相対密度は、93.9%であった。
【0297】
電子密度測定用サンプルを採取するため、アルミナ製自動乳鉢でこの黒色物質SD12の粗粉砕を実施した。粗粉砕は、まず、黒色物質SD12をアルミナ乳鉢で砕き、表面の薄白色部分を丁寧に取り除いてから、黒色部分だけを使用して実施した。
【0298】
得られた粉末は、深緑色を呈していた。X線回折分析の結果、この粉末には、異相が存在し、C12A7構造のみではないことがわかった。なお、異相が存在するため、正確な電子密度および電気伝導率は不明であるが、黒色物質SD12の電子密度は、おおよそ5.2×10
19cm
−3であり、電気伝導率は0.4S/cmであると予想された。
【0299】
このことから、黒色物質SD12は、高い電子密度を有さないことが確認された。
【0300】
(比較例8)
前述の実施例11と同様の方法により、高導電性マイエナイト化合物の作製を試みた。ただし、この比較例8では、前述の(高導電性マイエナイト化合物の作製)の工程で使用される装置300において、蓋315付きアルミナ容器310のみを使用し、蓋335付きの第1のカーボン容器330および蓋355付きの第2のカーボン容器350は、使用しなかった。その他の条件は、実施例11の場合と同様である。
【0301】
なお、1300℃でのアルミニウムの酸化還元反応の平衡定数から熱力学的に計算される酸素分圧は、6.4×10
−22Paである。このため、1250℃におけるこの成形体SC1の晒される環境中の酸素分圧は、計算上、6.4×10
−22Pa未満であると推察される。
【0302】
これにより、前述の(高導電性マイエナイト化合物の作製)工程後に、表面が薄白色の黒色物質(以下、黒色物質「SD13」と称する)が得られた。黒色物質SD13の相対密度は、93.0%であった。
【0303】
さらに、実施例11と同様の方法により、この黒色物質SD13を粉砕して得た粉末のX線回折の結果、黒色物質SD13は、C12A7構造のみを有することがわかった。また、得られた粉末の光拡散反射スペクトルからクベルカムンク変換により求められた電子密度は、1.2×10
19cm
−3であり、電気伝導率は、0.1S/cmであった。
【0304】
このことから、黒色物質SD13は、高い電子密度を有さないことが確認された。
【0305】
(比較例9)
前述の実施例11と同様の方法により、高導電性マイエナイト化合物の作製を試みた。ただし、この比較例9では、前述の(高導電性マイエナイト化合物の作製)の工程で使用される装置300において、アルミナブロック325およびアルミナ板328は使用せず、マイエナイト化合物の成形体を、直接アルミニウム層320の上に設置した。その他の条件は、実施例11の場合と同様である。
【0306】
なお、1300℃でのアルミニウムとカーボンの酸化還元反応の平衡定数から熱力学的に計算される酸素分圧は、1.6×10
−20Paである。このため、1250℃におけるこの成形体SC1の晒される環境中の酸素分圧は、計算上、1.6×10
−20Pa未満であると推察される。
【0307】
これにより、前述の(高導電性マイエナイト化合物の作製)工程後に、黒色物質(以下、黒色物質「SD14」と称する)が得られた。黒色物質SD14は、アルミニウム層320中に半分沈んでおり、容易に回収することはできなかった。
【0308】
そこでアルミナ容器310をハンマーで破壊することにより、アルミニウム層320ごと、黒色物質SD14を回収した。黒色物質SD14の表面には、銀白色の金属アルミニウムの溶融物が固着しており、さらにアルミナと考えられる白色物が強固に固着していた。これら表面の物質を、電動ノコギリ、セラミックス製リューター、および紙やすりを用いて丁寧に除去してから、黒色物質SD14の相対密度と電子密度を調べた。黒色物質SD14の相対密度は、91.4%であった。
【0309】
さらに、実施例11と同様の方法により、この黒色物質SD14を粉砕して得た粉末のX線回折の結果、黒色物質SD14は、C12A7構造のみを有することがわかった。黒色物質SD14の電子密度は、1.4×10
21cm
−3であり、電気伝導率は、15S/cmであった。このことから、黒色物質SD14は、高導電性マイエナイト化合物であることが確認された。
【0310】
しかしながら、比較例9では、導電性マイエナイト化合物を回収するのに、多大な労力が必要であった。従って、この方法は、工業的な生産には適さない製造方法であると考えられる。
【0311】
(比較例10)
前述の実施例11と同様の方法により、高導電性マイエナイト化合物の作製を試みた。ただし、この比較例10では、前述の(高導電性マイエナイト化合物の作製)の工程で使用される装置300において、蓋315付きアルミナ容器310およびアルミニウム層320は、使用しなかった。すなわち、この比較例10では、蓋335付きの第1のカーボン容器330、および蓋355付きの第2のカーボン容器350のみを使用して、アルミニウム蒸気の存在しない環境下で、成形体SC1の焼成処理を行った。
【0312】
また、焼成処理の際には、炉内を真空引きし、100Paまで減圧した後、酸素濃度が1体積ppm以下の窒素ガスを大気圧になるまで炉内へ流入させた。その後、第2のカーボン容器350を、4時間で1600℃まで加熱し、この温度で2時間保持した後、4時間で室温まで冷却させた。
【0313】
従って、この比較例10の場合、成形体SC1の晒される環境中の酸素分圧は、0.1Pa程度である。
【0314】
これにより、表面が黒色の黒色物質(以下、黒色物質「SD15」と称する)が得られた。
【0315】
黒色物質SD15は、第1のカーボン容器330に融着しており、容易に回収することはできなかった。そこで第1のカーボン容器330をハンマーで破壊し、飛散した黒色物質SD15の欠片だけを回収した。
【0316】
さらに、実施例11と同様の方法により、この黒色物質SD15を粉砕して得た粉末のX線回折の結果、黒色物質SD15は、C12A7構造のみを有することがわかった。ただし、黒色物質SD15の電子密度は、3.4×10
19cm
−3であった。
【0317】
このことから、黒色物質SD15は、高い電子密度を有さないことが確認された。
【0318】
(比較例11)
前述の比較例10と同様の方法により、高導電性マイエナイト化合物の作製を試みた。ただし、この比較例11では、4時間で1300℃まで加熱し、この温度で6時間保持した後、4時間で室温まで冷却させて、黒色物質SD16を得た。黒色物質SD16はカーボン容器に固着しておらず、容易に回収できた。
【0319】
さらに、実施例11と同様の方法により、この黒色物質SD16を粉砕して得た粉末のX線回折の結果、黒色物質SD16は、C12A7構造のみを有することがわかった。ただし、黒色物質SD16の電子密度は、4.8×10
19cm
−3であった。
【0320】
このことから、黒色物質SD16は、高い電子密度を有さないことが確認された。
【0321】
以下の表2には、実施例11〜20と比較例6〜11における成形体の焼成温度、時間、およびアルミニウム蒸気の有無、ならびに得られた黒色物質の結晶構造、相対密度、電子密度、および電気伝導率をまとめて示した。
【0322】
【表2】
本願は、2011年5月13日に出願した日本国特許出願2011−107902号および2011年10月7日に出願した日本国特許出願2011−223029号に基づく優先権を主張するものであり、同日本国出願の全内容を本願の参照として援用する。