【実施例】
【0144】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。なお、実施例で用いた各測定装置は以下のとおりである。
【0145】
赤外吸収スペクトル(以下、「FT−IR」と略す)は、ニコレー・ジャパン株式会社製、商品名Nexus670を使用した。
【0146】
ポリマーの分子量測定(以下、「GPC」と略す)は、昭和電工株式会社製、商品名Shodex GPC−104/101システムを使用した。
【0147】
ガスクロマトグラフ測定(以下、「GC」と略す)は、島津製作所(株)製、商品名Shimadzu GC−14Bを用い、下記の条件で測定した。
カラム:キャピラリーカラム CBP1−W25−100(25mm×0.53mmφ×1μm)
カラム温度:開始温度50℃から15℃/分で昇温して到達温度290℃(3分)とした。
サンプル注入量:1μL、インジェクション温度:240℃、検出器温度:290℃、キャリヤーガス:窒素(流量30mL/min)、検出方法:FID法で行った。
【0148】
via基板内への埋め込み性評価はJEOL製、FE−SEM(以下、「SEM」と略す)JSM−7400Fを使用した。
【0149】
[ポリシロキサンの合成]
<合成例1:TEOSを用いたポリシロキサンの合成>
還流管を備えつけた4つ口反応フラスコ内を窒素置換した後、当該フラスコに0.36gの蓚酸(4mmol、全加水分解性シランに対して0.01等量)、94.84gの脱水エタノール、28.80gの純水(1.6mol)を加え、室温で30分攪拌させ、蓚酸を完全に溶解させた。次いで、蓚酸のエタノール溶液を攪拌させながらオイルバス浴で過熱し、還流を確認後、83.20gのテトラエトキシシラン(0.4mol、以下、「TEOS」と略す)を内圧平衡型の滴下ロートを用い、一定の滴下速度で20分かけて滴下した。滴下後、還流下で2時間反応させた。反応終了後、オイルバス浴を除き、23℃まで放冷し、ポリシロキサンワニス(以下、PSV1と略す)を得た。
PSV1は溶剤としてエタノールを含み、SiO
2固形分換算濃度が12質量%であり
、GPC測定による分子量はMwが2500、Mnが1700であった。PSV1をGCで測定したところ、アルコキシシランモノマーは検出されなかった。
【0150】
<合成例2:TEOSとMTESとを共重合したポリシロキサンの合成>
還流管を備えつけた4つ口反応フラスコ内を窒素置換した後、当該フラスコに0.36gの蓚酸(4mmol、全加水分解性シランに対して0.01等量)、100.78gの脱水エタノール、28.80gの純水(1.6mol)を加え、室温で30分攪拌させ、蓚酸を完全に溶解させた。次いで、蓚酸のエタノール溶液を攪拌させながらオイルバス浴で過熱し、還流を確認後、41.60gのTEOS(0.2mol)及び35.66gのメチルトリエトキシシラン(0.2mol、以下、「MTES」と略す)の混合溶液を内
圧平衡型の滴下ロートを用い、一定の滴下速度で20分かけて滴下した。滴下後、還流下で2時間反応させた。反応終了後、オイルバス浴を除き、23℃まで放冷し、ポリシロキサンワニス(以下、PSV2と略す)を得た。
PSV2は溶剤としてエタノールを含み、SiO
2固形分換算濃度が12質量%であり
、GPC測定による分子量はMwが2100、Mnが1700であった。PSV2をGCで測定したところ、アルコキシシランモノマーは検出されなかった。
【0151】
<合成例3:TEOSとMTESとDMDESとを共重合したポリシロキサンの合成>
還流管を備えつけた4つ口反応フラスコ内を窒素置換した後、当該フラスコに0.36gの蓚酸(4mmol、全加水分解性シランに対して0.01等量)、102.58gの脱水エタノール、28.80gの純水(1.6mol)を加え、室温で30分攪拌させ、蓚酸を完全に溶解させた。次いで、蓚酸のエタノール溶液を攪拌させながらオイルバス浴で過熱し、還流を確認後、41.60gのTEOS(0.2mol)、24.96gのMTES(0.14mol)及び8.90gのジメチルジエトキシシラン(0.06mol、以下、「DMDES」)の混合溶液を内圧平衡型の滴下ロートを用い、一定の滴下速度で20分かけて滴下した。滴下後、還流下で2時間反応させた。反応終了後、オイルバス浴を除き、23℃まで放冷し、ポリシロキサンワニス(以下、PSV3と略す)を得た。
PSV3は溶剤としてエタノールを含み、SiO
2固形分換算濃度が12質量%であり
、GPC測定による分子量はMwが2200、Mn1700がであった。PSV3をGCで測定したところ、アルコキシシランモノマーは検出されなかった。
【0152】
<合成例4:MTESを用いたポリシロキサンの合成>
還流管を備えつけた4つ口反応フラスコ内を窒素置換した後、当該フラスコに、0.36gの蓚酸(4mmol、全加水分解性シランに対して0.01等量)、106.72gの脱水エタノール、28.80gの純水(1.6mol)を加え、室温で30分攪拌させ、蓚酸を完全に溶解させた。次いで、蓚酸のエタノール溶液を攪拌させながらオイルバス浴で過熱し、還流を確認後、71.32gのMTES(0.4mol)を内圧平衡型の滴下ロートを用い、一定の滴下速度で20分かけて滴下した。滴下後、還流下で2時間反応させた。反応終了後、オイルバス浴を除き、23℃まで放冷し、ポリシロキサンワニス(以下、PSV4と略す)を得た。
PSV4は溶剤としてエタノールを含み、SiO
2固形分換算濃度が12質量%であり
、GPC測定による分子量はMwが2100、Mnが1700であった。PSV4をGCで測定したところ、アルコキシシランモノマーは検出されなかった。
【0153】
[添加剤を含むポリシロキサンワニスの調製]
<実施例1>
合成例1で得た100gのポリシロキサンワニスPSV1(SiO
2固形分換算濃度が
12質量%)にアミノ酸発生剤として、下記式(A−1)に表す、N−α−t−ブトキシカルボニル−L−アラニン(以下、「Boc−Ala」と略す)を0.60g(5phr、即ちSiO
2の100質量部に対して5質量部を含有している。)加えた。その後、室
温で30分攪拌させ、Boc−Alaを完全に溶解させて、無色透明な溶液としてアミノ酸発生剤を含むポリシロキサンワニスを調製し、被膜形成組成物(以下、「PSV1−BAla」と略す)とした。
【0154】
【化28】
【0155】
<実施例2>
アミノ酸発生剤として、下記式(A−2)に表す、N−α,N−ω1,N−ω2−トリ−t−ブトキシカルボニル−L−アルギニン(以下、「Boc−Arg」と略す)を用いた以外は実施例1と同様の手順で、アミノ酸発生剤を含むポリシロキサンワニスを調製し、被膜形成組成物(以下、「PSV1−BArg」と略す)とした。
【0156】
【化29】
【0157】
<実施例3>
アミノ酸発生剤として、下記式(A−3)に表す、N−α−t−ブトキシカルボニル−L−アスパラギン酸(以下、「Boc−Asp」と略す)を用いた以外は実施例1と同様の手順で、アミノ酸発生剤を含むポリシロキサンワニスを調製し、被膜形成組成物(以下、「PSV1−BAsp」と略す)とした。
【0158】
【化30】
【0159】
<実施例4>
アミノ酸発生剤として、下記式(A−4)に表す、N−t−ブトキシカルボニル−グリシン(以下、「Boc−Gly」と略す)を用いた以外は実施例1と同様の手順で、アミノ酸発生剤を含むポリシロキサンワニスを調製し、被膜形成組成物(以下、「PSV1−BGly」と略す)とした。
【0160】
【化31】
【0161】
<実施例5>
アミノ酸発生剤として、下記式(A−5)に表す、N−α, im−ジ−t−ブトキシカルボニル−L−ヒスチジン(以下、「Boc−His」と略す)を用いた以外は実施例1と同様の手順で、アミノ酸発生剤を含むポリシロキサンワニスを調製し、被膜形成組成物(以下、「PSV1−BHis」と略す)とした。
【0162】
【化32】
【0163】
<実施例6>
アミノ酸発生剤として、下記式(A−6)に表す、N−α, N−ε−ジ−t−ブトキシカルボニル−L−リシン(以下、「Boc−Lys」と略す)を用いた以外は実施例1と同様の手順で、アミノ酸発生剤を含むポリシロキサンワニスを調製し、被膜形成組成物(以下、「PSV1−BLys」と略す)とした。
【0164】
【化33】
【0165】
<実施例7>
アミノ酸発生剤として、下記式(A−7)に表す、N−α−(9−フルオレニルメトキシカルボニル)−N−ω1,N−ω2−ジ−t−ブトキシカルボニル−L−アルギニン(以下、「FB−Arg」と略す)を用いた以外は実施例1と同様の手順で、アミノ酸発生剤を含むポリシロキサンワニスを調製し、被膜形成組成物(以下、「PSV1−FBArg」と略す)とした。
【0166】
【化34】
【0167】
<実施例8>
アミノ酸発生剤として、下記式(A−8)に表す、N−α−t−ブトキシカルボニル−N−δ−(9−フルオレニルメトキシカルボニル)−L−オルニチン(以下、「FB−Orn」と略す)を用いた以外は実施例1と同様の手順で、アミノ酸発生剤を含むポリシロキサンワニスを調製し、被膜形成組成物(以下、「PSV1−FBOrn」と略す)とした。
【0168】
【化35】
【0169】
<実施例9>
アミノ酸発生剤として、下記式(A−9)に表す、N−α,δ−ジ−(9−フルオレニルメトキシカルボニル)−L−オルニチン(以下、「FF−Orn」と略す)を用いた以外は実施例1と同様の手順で、アミノ酸発生剤を含むポリシロキサンワニスを調製し、被膜形成組成物(以下、「PSV1−FFOrn」と略す)とした。
【0170】
【化36】
【0171】
<比較例1>
アミノ酸発生剤の代わりに塩基性成分として、モノエタノールアミン(以下、「MEA」と略す)を用いた以外は実施例1と同様に調製し、被膜形成組成物(以下、「PSV1−MEA」と略す)とした。
【0172】
<比較例2>
アミノ酸発生剤の代わりに塩基性成分として、下記式(A−10)に表す、4−アミノピリジン(以下、「4AP」と略す)を用いた以外は実施例1と同様に調製し、被膜形成組成物(以下、「PSV1−4AP」と略す)とした。
【0173】
【化37】
【0174】
<比較例3>
アミノ酸発生剤の代わりに熱塩基発生剤として、下記式(A−11)に表す、ジメチルアミノピリジン(以下、「DMAP」と略す)を用いた以外は実施例1と同様に調製し、被膜形成組成物(以下、「PSV1−DMAP」と略す)とした。
【0175】
【化38】
【0176】
<比較例4>
アミノ酸発生剤の代わりにアミノ酸として、L−アラニン(以下、「Ala」と略す)を用いた以外は実施例1と同様に調製し、被膜形成組成物(以下、「PSV1−Ala」と略す)とした。
【0177】
<比較例5>
アミノ酸発生剤の代わりにアミノ酸として、L−アルギニン(以下、「Arg」と略す)を用いた以外は実施例1と同様に調製し、被膜形成組成物(以下、「PSV1−Arg」と略す)とした。
【0178】
<比較例6>
アミノ酸発生剤の代わりにアミノ酸として、L−アスパラギン酸(以下、「Asp」と略す)を用いた以外は実施例1と同様に調製し、被膜形成組成物(以下、「PSV1−Asp」と略す)とした。
【0179】
<比較例7>
アミノ酸発生剤の代わりにアミノ酸として、グリシン(以下、「Gly」と略す)を用いた以外は実施例1と同様に調製し、被膜形成組成物(以下、「PSV1−Gly」と略す)とした。
【0180】
<比較例8>
アミノ酸発生剤の代わりにアミノ酸として、L−ヒスチジン(以下、「His」と略す)を用いた以外は実施例1と同様に調製し、被膜形成組成物(以下、「PSV1−His」と略す)とした。
【0181】
<比較例9>
アミノ酸発生剤の代わりにアミノ酸として、L−リシン(以下、「Lys」と略す)を用いた以外は実施例1と同様に調製し、被膜形成組成物(以下、「PSV1−Lys」と略す)とした。
【0182】
<比較例10>
アミノ酸発生剤の代わりにアミノ酸として、L−オルニチン(以下、「Orn」と略す)を用いた以外は実施例1と同様に調製し、被膜形成組成物(以下、「PSV1−Orn」と略す)とした。
【0183】
[pH測定と保存安定性試験]
実施例1乃至9及び比較例1乃至10の被膜形成組成物の保存安定性試験を行った。
保存安定性試験は各々の被膜形成組成物を50mLの透明な低アルカリ硝子容器に50mL充填し、23℃、55RH%のクラス1000のクリーンルーム内で保管し、経時変
化を確認することで行った。具体的には、被膜形成組成物の室温保存を開始してから何日目で欠陥が発生したかを欠陥発生経過日と規定し、欠陥が発生した場合、その欠陥の状況を示した。
【0184】
<実施例10>
実施例1で得たPSV1−BAlaの保存安定性試験を行った。
【0185】
<実施例11>
実施例2で得たPSV1−BArgの保存安定性試験を行った。
【0186】
<実施例12>
実施例3で得たPSV1−BAspの保存安定性試験を行った。
【0187】
<実施例13>
実施例4で得たPSV1−BGlyの保存安定性試験を行った。
【0188】
<実施例14>
実施例5で得たPSV1−BHisの保存安定性試験を行った。
【0189】
<実施例15>
実施例6で得たPSV1−BLysの保存安定性試験を行った。
【0190】
<実施例16>
実施例7で得たPSV1−FBArgの保存安定性試験を行った。
【0191】
<実施例17>
実施例8で得たPSV1−FBOrnの保存安定性試験を行った。
【0192】
<実施例18>
実施例9で得たPSV1−FFOrnの保存安定性試験を行った。
【0193】
<比較例11>
比較例1で得たPSV1−MEAの保存安定性試験を行った。
【0194】
<比較例12>
比較例2で得たPSV1−4APの保存安定性試験を行った。
【0195】
<比較例13>
比較例3で得たPSV1−DMAPの保存安定性試験を行った。
【0196】
<比較例14>
比較例4で得たPSV1−Alaの保存安定性試験を行った。
【0197】
<比較例15>
比較例5で得たPSV1−Argの保存安定性試験を行った。
【0198】
<比較例16>
比較例6で得たPSV1−Aspの保存安定性試験を行った。
【0199】
<比較例17>
比較例7で得たPSV1−Glyの保存安定性試験を行った。
【0200】
<比較例18>
比較例8で得たPSV1−Hisの保存安定性試験を行った。
【0201】
<比較例19>
比較例9で得たPSV1−Lysの保存安定性試験を行った。
【0202】
<比較例20>
比較例10で得たPSV1−Ornの保存安定性試験を行った。
【0203】
上記保存安定性試験の結果を表1に示す。
【0204】
【表1】
【0205】
実施例10乃至18に示される様にアミノ酸発生剤を加えたポリシロキサンワニスは非常に溶解性が良く、室温で60日間保存しても、析出及びゲル化することなく安定に保存できることが分かった。
一方で、比較例11乃至13に示した添加剤を加えたポリシロキサンワニスは攪拌している最中にゲル化してしまい、ポリシロキサンワニスの安定性が非常に悪いことが分かった。
また、比較例14乃至20のアミノ酸のアミン部位を脱離基で保護していないアミノ酸を用いた場合、溶媒のエタノールに難溶解性を示し、ポリシロキサンワニスを調製することができなかった。
以上の結果から、アミノ酸発生剤は溶解性が著しく高く、保存安定性に優れた添加剤であり、ポリシロキサンワニスに加えても異物を発生させないことが分かった。
【0206】
[焼成条件によるSi−OHの減少挙動]
アミノ酸発生剤を含むポリシロキサンワニスを用いて被膜形成組成物を作成し、基板に被覆し被膜を作製する際の焼成条件の違いによるSi−OHの減少挙動の相違を確認した。
製膜の作成は被膜形成組成物の基板(基材)へのスピンコートによって行い、条件は2000rpmで20秒とした。スピンコート後、焼成機器はホットプレートを用い、大気中で焼成した。膜厚は500nmとした。基材には4インチのシリコンウェハを用いた。
【0207】
<実施例19>
実施例1で得た被膜形成組成物(PSV1−BAla)をスピンコート後、250℃で5分間焼成した。焼成後の被膜を削り取り、KBr法でFT−IRスペクトルを測定した。
【0208】
<実施例20>
実施例2で得た被膜形成組成物(PSV1−BArg)を用いた以外は実施例19と同様の手順で製膜し、KBr法でFT−IRスペクトルを測定した。
【0209】
<実施例21>
実施例3で得た被膜形成組成物(PSV1−BAsp)を用いた以外は実施例19と同様の手順で製膜し、KBr法でFT−IRスペクトル測定した。
【0210】
<実施例22>
実施例4で得た被膜形成組成物(PSV1−BGly)を用いた以外は実施例19と同様の手順で製膜し、KBr法でFT−IRスペクトル測定した。
【0211】
<実施例23>
実施例5で得た被膜形成組成物(PSV1−BHis)を用いた以外は実施例19と同様の手順で製膜し、KBr法でFT−IRスペクトル測定した。
【0212】
<実施例24>
実施例6で得た被膜形成組成物(PSV1−BLys)を用いた以外は実施例19と同様の手順で製膜し、KBr法でFT−IRスペクトル測定した。
【0213】
<実施例25>
実施例7で得た被膜形成組成物(PSV1−FBArg)を用いた以外は実施例19と同様の手順で製膜し、KBr法でFT−IRスペクトル測定した。
【0214】
<実施例26>
実施例8で得た被膜形成組成物(PSV1−FBOrn)を用いた以外は実施例19と同様の手順で製膜し、KBr法でFT−IRスペクトル測定した。
【0215】
<実施例27>
実施例9で得た被膜形成組成物(PSV1−FFOrn)を用いた以外は実施例19と同様の手順で製膜し、KBr法でFT−IRスペクトル測定した。
【0216】
<比較例21>
合成例1で得たポリシロキサンワニス(PSV1)を被膜形成組成物にした以外は実施例19と同様の手順で製膜し、KBr法でFT−IRスペクトル測定した。
【0217】
<比較例22>
合成例1で得たポリシロキサンワニス(PSV1)を被膜形成組成物にしてスピンコート後、250℃で120分間焼成した。焼成後の被膜を削り取り、KBr法でFT−IRスペクトルを測定した。
【0218】
<比較例23>
合成例1で得たポリシロキサンワニス(PSV1)を被膜形成組成物にしてスピンコート後、300℃で120分間焼成した。焼成後の被膜を削り取り、KBr法でFT−IRスペクトルを測定した。
【0219】
<比較例24>
合成例1で得たポリシロキサンワニス(PSV1)を被膜形成組成物にしてスピンコート後、400℃で120分間焼成した。焼成後の被膜を削り取り、KBr法でFT−IRスペクトルを測定した。
【0220】
実施例19乃至27及び比較例21乃至24で測定したFT−IRの結果を
図1乃至9及び
図30乃至33に示す。図では、Si−OHのOH伸縮振動に起因する3500cm
-1付近のピークに着目した。
図1乃至9において、ポリシロキサンワニス(PSV1)にアミノ酸発生剤を加えた被膜形成組成物を用いた膜を250℃で5分間焼成した膜のSi−OHは著しく減少していた。アミノ酸発生剤の中でも実施例20、23及び24で用いたアルギニン、ヒスチジン及びリシンではSi−OHのピークは完全に消失していることを確認した。
また、比較例21のポリシロキサンワニス(PSV1)を被膜形成組成物として用いた膜を250℃で5分間焼成した膜はSi−OHが非常に残留しており、比較例22乃至24のとおり、焼成温度の増大、焼成時間の延長を経てもSi−OHが消失しないことが分かった。
【0221】
[アミノ酸発生剤のpH測定]
アミノ酸発生剤において、アミノ酸が有するアミン部位のN原子に置換した脱離基が外れる前後のpHを把握するために以下のようにpHの測定を行った。
pHの測定はデジタルpHメーターを用い、校正用として、pH4、7及び9のpH標準液で校正を行った後に測定した。
【0222】
<測定例1>
純水とエタノールとの質量比1:5の混合溶液を調製し、溶液の濃度が5質量%となるようにBoc−Alaを加え、完全に溶解させ、pHを測定した。
【0223】
<測定例2>
Boc−Alaに変えてBoc−Argを用いた以外は測定例1と同様の手順で溶液を
調製し、pHを測定した。
【0224】
<測定例3>
Boc−Alaに変えてBoc−Aspを用いた以外は測定例1と同様の手順で溶液を調製し、pHを測定した。
【0225】
<測定例4>
Boc−Alaに変えてBoc−Glyを用いた以外は測定例1と同様の手順で溶液を調製し、pHを測定した。
【0226】
<測定例5>
Boc−Alaに変えてBoc−Hisを用いた以外は測定例1と同様の手順で溶液を調製し、pHを測定した。
【0227】
<測定例6>
Boc−Alaに変えてBoc−Lysを用いた以外は測定例1と同様の手順で溶液を調製し、pHを測定した。
【0228】
<測定例7>
Boc−Alaに変えてFB−Argを用いた以外は測定例1と同様の手順で溶液を調製し、pHを測定した。
【0229】
<測定例8>
Boc−Alaに変えてFB−Ornを用いた以外は測定例1と同様の手順で溶液を調製し、pHを測定した。
【0230】
<測定例9>
Boc−Alaに変えてFF−Ornを用いた以外は測定例1と同様の手順で溶液を調製し、pHを測定した。
【0231】
<測定例10>
Boc−Alaに変えてAlaを用いた以外は測定例1と同様の手順で溶液を調製し、pHを測定した。
【0232】
<測定例11>
Boc−Alaに変えてArgを用いた以外は測定例1と同様の手順で溶液を調製し、pHを測定した。
【0233】
<測定例12>
Boc−Alaに変えてAspを用いた以外は測定例1と同様の手順で溶液を調製し、pHを測定した。
【0234】
<測定例13>
Boc−Alaに変えてGlyを用いた以外は測定例1と同様の手順で溶液を調製し、pHを測定した。
【0235】
<測定例14>
Boc−Alaに変えてHisを用いた以外は測定例1と同様の手順で溶液を調製し、pHを測定した。
【0236】
<測定例15>
Boc−Alaに変えてLysを用いた以外は測定例1と同様の手順で溶液を調製し、pHを測定した。
【0237】
<測定例16>
Boc−Alaに変えてOrnを用いた以外は測定例1と同様の手順で溶液を調製し、pHを測定した。
【0238】
上記測定例1乃至16の結果を表2に示す。
【0239】
【表2】
【0240】
アミノ酸発生剤は塩基性を発現するアミン部位が保護基で保護されており、カルボン酸の性質を発現することから、測定例1乃至9に示したようにpHは4.11乃至2.40の間となった。pHが4付近であることは、ポリシロキサンワニスが安定して保存できるpH領域であり、非常に好ましい。
【0241】
一方、保護基が外れてアミンの性質を発現すると、測定例10乃至16のようになり、特にアルギニン、ヒスチジン、リシン及びオルニチンではpHが塩基性に傾くことを確認した。保護基が外れる外部刺激は熱であることから、すなわち、ポリシロキサンワニスを基材上に製膜後、焼成中に膜が塩基性に傾くことを意味している。ポリシロキサンの重縮
合は塩基性領域で進行が著しく進行するため、pHが塩基性に傾くアルギニン、ヒスチジン、リシン及びオルニチンが非常に好ましい。また、保護基が外れた後、塩基性に傾かないアミノ酸発生剤に関しても、
図3の結果を踏まえるとSi−OHのピークが減少していることから、ポリシロキサンの重縮合はアミン部位が出現した際に進行すると示唆される。
【0242】
[焼成温度によるSi−OHの減少挙動]
最もSi−OHの低減に効果があったBoc−Argをアミノ酸発生剤として用いた時の焼成温度依存性を確認した。
製膜はスピンコート法によって行い、条件は2000rpmで20秒とした。スピンコート後、焼成機器はホットプレートを用い、大気中で焼成した。膜厚は500nmとした。基材には4インチのシリコンウェハを用いた。
【0243】
<実施例28>
実施例2で得た被膜形成組成物(PSV1−BArg)をスピンコート後、100℃で5分間焼成した。焼成後の被膜を削り取り、KBr法でFT−IRスペクトルを測定した。
【0244】
<実施例29>
実施例2で得た被膜形成組成物(PSV1−BArg)をスピンコート後、150℃で5分間焼成した。焼成後の被膜を削り取り、KBr法でFT−IRスペクトルを測定した。
【0245】
<実施例30>
実施例2で得た被膜形成組成物(PSV1−BArg)をスピンコート後、200℃で5分間焼成した。焼成後の被膜を削り取り、KBr法でFT−IRスペクトルを測定した。
【0246】
<比較例25>
合成例1で得たポリシロキサンワニス(PSV1)を被膜形成組成物としてスピンコート後、100℃で5分間焼成した。焼成後の被膜を削り取り、KBr法でFT−IRスペクトルを測定した。
【0247】
<比較例26>
合成例1で得たポリシロキサンワニス(PSV1)を被膜形成組成物としてスピンコート後、150℃で5分間焼成した。焼成後の被膜を削り取り、KBr法でFT−IRスペクトルを測定した。
【0248】
<比較例27>
合成例1で得たポリシロキサンワニス(PSV1)を被膜形成組成物としてスピンコート後、200℃で5分間焼成した。焼成後の被膜を削り取り、KBr法でFT−IRスペクトルを測定した。
【0249】
実施例20及び実施例28乃至30の結果を
図2及び
図10乃至12に、比較例21及び比較例25乃至27の結果を
図30及び
図34乃至36に示す。
図2及び
図12の結果から、Boc−Argをアミノ酸発生剤としてポリシロキサンワニスに添加して得られた被膜形成組成物を基材に塗布することによって得られた膜は、焼成温度が200℃で5分間焼成しただけでSi−OHが著しく消失し、250℃で5分間焼成では完全に消失することが分かった。
一方で、ポリシロキサンワニス(PSV1)単独を被膜形成組成物として基材に塗布す
る事によって得られた膜の焼成温度依存性は250℃で5分間焼成すれば、一定のSi−OHは消失するものの、劇的には消失せず残留することが確認された。
実施例29と比較例21とを比較すると、FT−IRの相対評価ではあるが、ほぼ同様のSi−OHのピーク強度となり、アミノ酸発生剤が熱によってアミンの塩基性が発現する温度は、150℃付近から開始されると考えられる。
【0250】
[アミノ酸発生剤の添加量によるSi−OHの減少挙動]
最もSi−OHの低減に効果があったBoc−Argをアミノ酸発生剤として用いた時の添加量依存性を確認した。
製膜はスピンコート法によって行い、条件は2000rpmで20秒とした。スピンコート後、焼成機器はホットプレートを用い、大気中で焼成した。膜厚は500nmとした。基材には4インチのシリコンウェハを用いた。
【0251】
<実施例31>
Boc−Argを0.1phr(即ち、ポリシロキサンワニスPSV1中のSiO
2の
100質量部に対してBoc−Argを0.1質量部を含有している。)とした以外は実施例2と同様の手順で、被膜形成組成物(以下、PSV1−BArg−0.1phrと略す)を調製した。得られた被膜形成組成物(PSV1−BArg−0.1phr)をスピンコート後、250℃で5分間焼成した。焼成後の被膜を削り取り、KBr法でFT−IRスペクトルを測定した。
【0252】
<実施例32>
Boc−Argを0.5phr(即ち、ポリシロキサンワニスPSV1中のSiO
2の
100質量部に対してBoc−Argを0.5質量部を含有している。)とした以外は実施例2と同様の手順で、被膜形成組成物(以下、PSV1−BArg−0.5phrと略す)を調製した。得られた被膜形成組成物(PSV1−BArg−0.5phr)をスピンコート後、250℃で5分間焼成した。焼成後の被膜を削り取り、KBr法でFT−IRスペクトルを測定した。
【0253】
<実施例33>
Boc−Argを1.0phr(即ち、ポリシロキサンワニスPSV1中のSiO
2の
100質量部に対してBoc−Argを1.0質量部を含有している。)とした以外は実施例2と同様の手順で、被膜形成組成物(以下、PSV1−BArg−1.0phrと略す)を調製した。得られた被膜形成組成物(PSV1−BArg−1.0phr)をスピンコート後、250℃で5分間焼成した。焼成後の被膜は削り取り、KBr法でFT−IRスペクトルを測定した。
【0254】
<実施例34>
Boc−Argを2.5phr(即ち、ポリシロキサンワニスPSV1中のSiO
2の
100質量部に対してBoc−Argを2.5質量部を含有している。)とした以外は実施例2と同様の手順で、被膜形成組成物(以下、PSV1−BArg−2.5phrと略す)を調製した。得られた被膜形成組成物(PSV1−BArg−2.5phr)をスピンコート後、250℃で5分間焼成した。焼成後の被膜を削り取り、KBr法でFT−IRスペクトルを測定した。
【0255】
実施例20及び実施例31乃至34までの結果を
図2及び
図13乃至16に示す。
図14及び
図15に示したように、最もSi−OHの低減に効果があったBoc−Argを用い、ポリシロキサンワニスへの添加量を変更させた被膜形成組成物を用いて作製した膜のFT−IRは、0.1phr加えたものではSi−OHの低減に効果がないが、0.5phrから効果が発現し、Si−OHが完全に消失することが分かった。
非常に少量な0.5phrで効果が発現することから、ポリシロキサンの性質を大きく変化させることなく、Si−OHの量を劇的に低減させることができる。
【0256】
[共重合したポリシロキサンの焼成条件によるSi−OHの減少挙動]
共重合したポリシロキサンワニスに関しても、アミノ酸発生剤を用いることでSi−OHを低減できるかを検討した。
製膜はスピンコート法によって行い、条件は2000rpmで20秒とした。スピンコート後、焼成機器はホットプレートを用い、大気中で焼成した。膜厚は500nmとした。基材には4インチのシリコンウェハを用いた。
【0257】
<実施例35>
合成例2で得たポリシロキサンワニスPSV2に実施例1と同様にBoc−Argを添加し、被膜形成組成物(以下、「PSV2−BArg」と略す)を調製した。被膜形成組成物(PSV2−BArg)をスピンコート後、250℃で5分間焼成した。焼成後の被膜を削り取り、KBr法でFT−IRスペクトルを測定した。
【0258】
<実施例36>
合成例2で得たポリシロキサンワニスPSV2に実施例1と同様にBoc−Lysを添加し、被膜形成組成物(以下、「PSV2−BLys」と略す)を調製した。被膜形成組成物(PSV2−BLys)をスピンコート後、250℃で5分間焼成した。焼成後の被膜を削り取り、KBr法でFT−IRスペクトルを測定した。
【0259】
<実施例37>
合成例2で得たポリシロキサンワニスPSV2に実施例1と同様にBoc−Hisを添加し、被膜形成組成物(以下、「PSV2−BHis」と略す)を調製した。被膜形成組成物(PSV2−BHis)をスピンコート後、250℃で5分間焼成した。焼成後の被膜を削り取り、KBr法でFT−IRスペクトルを測定した。
【0260】
<実施例38>
合成例3で得たポリシロキサンワニスPSV3に実施例1と同様にBoc−Argを添加し、被膜形成組成物(以下、「PSV3−BArg」と略す)を調製した。被膜形成組成物(PSV3−BArg)をスピンコート後、250℃で5分間焼成した。焼成後の被膜を削り取り、KBr法でFT−IRスペクトルを測定した。
【0261】
<実施例39>
合成例3で得たポリシロキサンワニスPSV3に実施例1と同様にBoc−Lysを添加し、被膜形成組成物(以下、「PSV3−BLys」と略す)を調製した。被膜形成組成物(PSV3−BLys)をスピンコート後、250℃で5分間焼成した。焼成後の被膜を削り取り、KBr法でFT−IRスペクトルを測定した。
【0262】
<実施例40>
合成例3で得たポリシロキサンワニスPSV3に実施例1と同様にBoc−Hisを添加し、被膜形成組成物(以下、「PSV3−BHis」と略す)を調製した。被膜形成組成物(PSV3−BHis)をスピンコート後、250℃で5分間焼成した。焼成後の被膜を削り取り、KBr法でFT−IRスペクトルを測定した。
【0263】
<実施例41>
合成例4で得たポリシロキサンワニスPSV4に実施例1と同様にBoc−Argを添加し、被膜形成組成物(以下、「PSV4−BArg」と略す)を調製した。被膜形成組成物(PSV4−BArg)をスピンコート後、250℃で5分間焼成した。焼成後の被
膜を削り取り、KBr法でFT−IRスペクトルを測定した。
【0264】
<実施例42>
合成例4で得たポリシロキサンワニスPSV4に実施例1と同様にBoc−Lysを添加し、被膜形成組成物(以下、「PSV4−BLys」と略す)を調製した。被膜形成組成物(PSV4−BLys)をスピンコート後、250℃で5分間焼成した。焼成後の被膜を削り取り、KBr法でFT−IRスペクトルを測定した。
【0265】
<実施例43>
合成例4で得たポリシロキサンワニスPSV4に実施例1と同様にBoc−Hisを添加し、被膜形成組成物(以下、「PSV4−BHis」と略す)を調製した。被膜形成組成物(PSV4−BHis)をスピンコート後、250℃で5分間焼成した。焼成後の被膜を削り取り、KBr法でFT−IRスペクトルを測定した。
【0266】
<比較例28>
合成例2で得たポリシロキサンワニスPSV2を被膜形成組成物として用い、スピンコート後、250℃で5分間焼成した。焼成後の被膜を削り取り、KBr法でFT−IRスペクトルを測定した。
【0267】
<比較例29>
合成例2で得たポリシロキサンワニスPSV2を被膜形成組成物として用い、スピンコート後、400℃で5分間焼成した。焼成後の被膜を削り取り、KBr法でFT−IRスペクトルを測定した。
【0268】
<比較例30>
合成例3で得たポリシロキサンワニスPSV3を被膜形成組成物として用い、スピンコート後、250℃で5分間焼成した。焼成後の被膜を削り取り、KBr法でFT−IRスペクトルを測定した。
【0269】
<比較例31>
合成例3で得たポリシロキサンワニスPSV3を被膜形成組成物として用い、スピンコート後、400℃で5分間焼成した。焼成後の被膜を削り取り、KBr法でFT−IRスペクトルを測定した。
【0270】
<比較例32>
合成例4で得たポリシロキサンワニスPSV4を被膜形成組成物として用い、スピンコート後、250℃で5分間焼成した。焼成後の被膜を削り取り、KBr法でFT−IRスペクトルを測定した。
【0271】
<比較例33>
合成例4で得たポリシロキサンワニスPSV4を被膜形成組成物として用い、スピンコート後、400℃で5分間焼成した。焼成後の被膜を削り取り、KBr法でFT−IRスペクトルを測定した。
【0272】
実施例35乃至37及び比較例28乃至29の結果を
図17乃至19及び
図37乃至38に、実施例38乃至40及び比較例30乃至31の結果を
図20乃至22及び
図39乃至40に、実施例41乃至43及び比較例32乃至33の結果を
図23乃至25及び
図41乃至42に示す。
図17乃至25に示したように、特にポリシロキサンの重縮合を促進させる能力が高いアルギニン、ヒスチジン及びリシンをアミノ酸発生剤としてポリシロキサンワニスに添加
した被膜形成組成物から得られた膜は、ポリシロキサンワニスPSV2乃至4においてもPSV1と同様にSi−OHの消化に有効であることが分かった。この結果は、4官能のシランモノマー(4つの加水分解基を有する加水分解性シランモノマー)から合成したポリシロキサンワニスPSV1、4官能及び3官能のシランモノマー(4つの加水分解基を有する加水分解性シランモノマーと3つの加水分解基を有する加水分解性シランモノマー)の共重合で得られたポリシロキサンワニスPSV2、4官能、3官能及び2官能のシランモノマー(4つの加水分解基を有する加水分解性シランモノマーと3つの加水分解基を有する加水分解性シランモノマーと2つの加水分解基を有する加水分解性シランモノマー)の共重合で得られたポリシロキサンワニスPSV3、3官能のシランモノマー(3つの加水分解基を有する加水分解性シランモノマー)から合成したポリシロキサンワニスPSV4のいずれも効果があることを示し、一般的なポリシロキサンポリマーであれば低焼成温度でSi−OHを消化できることを示唆している。
【0273】
また、アミノ酸発生剤を添加していないポリシロキサンワニスによる被膜形成組成物の場合、PSV2であれば400℃で5分間焼成してもSi−OHは残留し、PSV3であれば400℃で5分間焼成しないと、アミノ酸発生剤を加えた場合の250℃で5分間焼成した膜のSi−OH量と同等にならないことが分かった。
【0274】
[溶媒置換後の効果]
合成例1乃至4で得たポリシロキサンワニスの合成時溶媒を溶媒置換した後に、アミノ酸発生剤を添加しても同様の効果が得られるかを検討した。
製膜はスピンコート法によって行い、条件は2000rpmで20秒とした。スピンコート後、焼成機器はホットプレートを用い、大気中で焼成した。膜厚は500nmとした。基材には4インチのシリコンウェハを用いた。
【0275】
<実施例44>
合成例1で得たポリシロキサンワニスPSV1に、加水分解と縮合反応時に溶剤として使用したエタノールと同量の94.84gのプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以下、「PGMEA」と略す)を加え、その後、エバポレータを用いて、水浴が20℃の条件で減圧下にて6時間、溶媒置換を行った。
得られた溶媒置換後のポリシロキサンワニスにBoc−Argを実施例1と同様に添加し、被膜形成組成物(以下、「PSV1−BArg−PGMEA」と略す)を得た。
得られた被膜形成組成物(PSV1−BArg−PGMEA)をスピンコート後、250℃で5分間焼成した。焼成後の被膜を削り取り、KBr法でFT−IRスペクトルを測定した。
【0276】
<実施例45>
合成例2で得たポリシロキサンワニスPSV2を用いて、実施例44と同様にPGMEAに溶媒置換し、Boc−Argを添加した。
得られた被膜形成組成物(以下、「PSV2−Boc−Arg−PGMEA」と略す。)をスピンコート後、250℃で5分間焼成した。焼成後の被膜を削り取り、KBr法でFT−IRスペクトルを測定した。
【0277】
<実施例46>
合成例3で得たポリシロキサンワニスPSV3を用いて、実施例44と同様にPGMEAに溶媒置換し、Boc−Argを添加した。
得られた被膜形成組成物(以下、「PSV3−Boc−Arg−PGMEA」と略す。)をスピンコート後、250℃で5分間焼成した。焼成後の被膜を削り取り、KBr法でFT−IRスペクトルを測定した。
【0278】
<実施例47>
合成例4で得たポリシロキサンワニスPSV4を用いて、実施例44と同様にPGMEAに溶媒置換し、Boc−Argを添加した。
得られた被膜形成組成物(以下、「PSV4−Boc−Arg−PGMEA」と略す。)をスピンコート後、250℃で5分間焼成した。焼成後の被膜を削り取り、KBr法でFT−IRスペクトルを測定した。
【0279】
<比較例34>
合成例1で得たポリシロキサンワニスPSV1に、加水分解と縮合反応時に溶媒として使用したエタノールと同量の94.84gのPGMEAを加え、その後、エバポレータを用いて、水浴が20℃の条件で減圧下にて6時間、溶媒置換を行った。
得られた溶媒置換後の被膜形成組成物(以下、「PSV1−PGMEA」と略す)をスピンコート後、250℃で5分間焼成した。焼成後の被膜を削り取り、KBr法でFT−IRスペクトルを測定した。
【0280】
<比較例35>
合成例2で得たポリシロキサンワニスPSV2を用いて、比較例34と同様にPGMEAに溶媒置換した。
得られた被膜形成組成物(以下、「PSV2−PGMEA」と略す。)はスピンコート後、250℃で5分間焼成した。焼成後の被膜を削り取り、KBr法でFT−IRスペクトルを測定した。
【0281】
<比較例36>
合成例3で得たポリシロキサンワニスPSV3を用いて、比較例34と同様にPGMEAに溶媒置換した。
得られた被膜形成組成物(以下、「PSV3−PGMEA」と略す。)をスピンコート後、250℃で5分間焼成した。焼成後の被膜を削り取り、KBr法でFT−IRスペクトルを測定した。
【0282】
<比較例37>
合成例4で得たポリシロキサンワニスPSV4を用いて、比較例34と同様にPGMEAに溶媒置換した。
得られた被膜形成組成物(以下、「PSV3−PGMEA」と略す。)をスピンコート後、250℃で5分間焼成した。焼成後の被膜を削り取り、KBr法でFT−IRスペクトルを測定した。
【0283】
実施例44乃至47及び比較例34乃至37の結果を
図26乃至29及び
図43乃至46に示す。
図26乃至29に示したように、ポリシロキサンワニスの溶媒を加水分解と縮合反応時に使用した溶媒のエタノールから、PGMEAに溶媒置換したポリシロキサンワニスにおいても、アミノ酸発生剤の効果は発現し、異なった溶媒種を用いた場合でも、膜中のSi−OHを著しく消化できることが分かった。
【0284】
以上、上記の結果から、ポリシロキサンワニスにアミノ酸発生剤を加えたポリシロキサン組成物がポリシロキサンワニスの保存安定性を良好に保持し、且つ焼成時に重縮合を促進させ、且つ残留Si−OHを著しく低減でき、被膜形成用組成物として有効であることを確認できた。
【0285】
[露光条件によるSi−OHの減少挙動]
光アミノ酸発生剤を含むポリシロキサンワニスを用いて被膜形成組成物を作成し、基板
に被覆し被膜を作製する際の露光条件の違いによるSi−OHの減少挙動の相違を確認した。
製膜の作成は被膜形成組成物の基板(基材)へのスピンコートによって行い、条件は2000rpmで20秒とした。スピンコート後、室温(約20℃)で溶剤を乾燥し除去した後、UV照射装置で1J/cm
2の露光量(250nmのエネルギー換算)で大気中に
て露光した。膜厚は500nmとした。基材には4インチのシリコンウェハを用いた。
【0286】
<実施例48>
実施例1で得た被膜形成組成物(PSV1−BAla)をスピンコート後、室温で溶剤を乾燥し除去した後、1J/cm
2露光した。露光後の被膜を削り取り、KBr法でFT
−IRスペクトルを測定した。
【0287】
<実施例49>
実施例2で得た被膜形成組成物(PSV1−BArg)を用いた以外は実施例48と同様に製膜し、測定した。
【0288】
<実施例50>
実施例3で得た被膜形成組成物(PSV1−BAsp)を用いた以外は実施例48と同様に製膜し、測定した。
【0289】
<実施例51>
実施例4で得た被膜形成組成物(PSV1−BGly)を用いた以外は実施例48と同様に製膜し、測定した。
【0290】
<実施例52>
実施例5で得た被膜形成組成物(PSV1−BHis)を用いた以外は実施例48と同様に製膜し、測定した。
【0291】
<実施例53>
実施例6で得た被膜形成組成物(PSV1−BLys)を用いた以外は実施例48と同様に製膜し、測定した。
【0292】
<実施例54>
実施例7で得た被膜形成組成物(PSV1−FBArg)を用いた以外は実施例48と同様に製膜し、測定した。
【0293】
<実施例55>
実施例8で得た被膜形成組成物(PSV1−FBOrn)を用いた以外は実施例48と同様に製膜し、測定した。
【0294】
<実施例56>
実施例9で得た被膜形成組成物(PSV1−FFOrn)を用いた以外は実施例48と同様に製膜し、測定した。
【0295】
<比較例38>
合成例1で得たポリシロキサンワニス(PSV1)をスピンコート後、室温で溶剤を乾燥し除去した後、露光せずに、被膜を削り取り、KBr法でFT−IRスペクトルを測定した。
【0296】
<比較例39>
合成例1で得たポリシロキサンワニス(PSV1)を被膜形成組成物にしてスピンコート後、室温で溶剤を乾燥し除去した後、UV照射装置で1J/cm
2の露光量(250n
mのエネルギー換算)で大気中にて露光し、露光後の被膜を削り取り、KBr法でFT−IRスペクトルを測定した。
【0297】
<比較例40>
合成例1で得たポリシロキサンワニス(PSV1)を被膜形成組成物にしてスピンコート後、室温で溶剤を乾燥し除去した後、UV照射装置で2J/cm
2の露光量(250n
mのエネルギー換算)で大気中にて露光し、露光後の被膜を削り取り、KBr法でFT−IRスペクトルを測定した。
【0298】
<比較例41>
合成例1で得たポリシロキサンワニス(PSV1)を被膜形成組成物にしてスピンコート後、室温で溶剤を乾燥し除去した後、UV照射装置で5J/cm
2の露光量(250n
mのエネルギー換算)で大気中にて露光し、露光後の被膜を削り取り、KBr法でFT−IRスペクトルを測定した。
【0299】
<比較例42>
合成例1で得たポリシロキサンワニス(PSV1)を被膜形成組成物にしてスピンコート後、室温で溶剤を乾燥し除去した後、UV照射装置で10J/cm
2の露光量(250
nmのエネルギー換算)で大気中にて露光し、露光後の被膜を削り取り、KBr法でFT−IRスペクトルを測定した。
【0300】
実施例48乃至56及び比較例38乃至42で測定したFT−IRの結果を
図47乃至55及び
図76乃至80に示す。図では、Si−OHのOH伸縮振動に起因する3500cm
-1付近のピークに着目した。
図47乃至55において、ポリシロキサンワニス(PSV1)に光アミノ酸発生剤を加えた被膜形成組成物を用いた膜を1J/cm
2露光した膜のSi−OHは減少していた。
光アミノ酸発生剤の中でも実施例49、54乃至56で用いたアルギニン及びオルニチンではSi−OHのピークの減少に効果的であることを確認した。
また、比較例38のポリシロキサンワニス(PSV1)を被膜形成組成物として用いた膜はSi−OHが非常に残留しており、比較例39乃至42のとおり、露光量の増大を経てもSi−OHが消失しないことが分かった。
【0301】
[露光量によるSi−OHの減少挙動]
最もSi−OHの低減に効果があったBoc−Argを光アミノ酸発生剤として用いた時の露光量依存性を確認した。
製膜はスピンコート法によって行い、条件は2000rpmで20秒とした。スピンコート後、室温で溶剤を乾燥し除去した後、露光装置はUV照射装置を用い、大気中で露光した。膜厚は500nmとした。基材には4インチのシリコンウェハを用いた。
【0302】
<実施例57>
実施例2で得た被膜形成組成物(PSV1−BArg)をスピンコート後、室温で溶剤を乾燥し除去した後、UV照射装置で100mJ/cm
2の露光量(250nmのエネル
ギー換算)で大気中にて露光し、露光後の被膜を削り取り、KBr法でFT−IRスペクトルを測定した。
【0303】
<実施例58>
実施例2で得た被膜形成組成物(PSV1−BArg)をスピンコート後、室温で溶剤を乾燥し除去した後、UV照射装置で200mJ/cm
2の露光量(250nmのエネル
ギー換算)で大気中にて露光し、露光後の被膜を削り取り、KBr法でFT−IRスペクトルを測定した。
【0304】
<実施例59>
実施例2で得た被膜形成組成物(PSV1−BArg)をスピンコート後、室温で溶剤を乾燥し除去した後、UV照射装置で500mJ/cm
2の露光量(250nmのエネル
ギー換算)で大気中にて露光し、露光後の被膜を削り取り、KBr法でFT−IRスペクトルを測定した。
【0305】
<比較例43>
合成例1で得たポリシロキサンワニス(PSV1)を被膜形成組成物としてスピンコート後、室温で溶剤を乾燥し除去した後、UV照射装置で100mJ/cm
2の露光量(2
50nmのエネルギー換算)で大気中にて露光し、露光後の被膜を削り取り、KBr法でFT−IRスペクトルを測定した。
【0306】
<比較例44>
合成例1で得たポリシロキサンワニス(PSV1)を被膜形成組成物としてスピンコート後、室温で溶剤を乾燥し除去した後、UV照射装置で200mJ/cm
2の露光量(2
50nmのエネルギー換算)で大気中にて露光し、露光後の被膜を削り取り、KBr法でFT−IRスペクトルを測定した。
【0307】
<比較例45>
合成例1で得たポリシロキサンワニス(PSV1)を被膜形成組成物としてスピンコート後、室温で溶剤を乾燥し除去した後、UV照射装置で500mJ/cm
2の露光量(2
50nmのエネルギー換算)で大気中にて露光し、露光後の被膜を削り取り、KBr法でFT−IRスペクトルを測定した。
【0308】
実施例49及び実施例57乃至59の結果を
図48及び
図56乃至58に、比較例38及び比較例43乃至45の結果を
図76及び
図81乃至83に示す。
図48及び
図58の結果から、Boc−Argをアミノ酸発生剤としてポリシロキサンワニスに添加して得られた被膜形成組成物を基材に塗布することによって得られた膜は、露光量が500mJ/cm
2からSi−OHの低減に効果があることが分かった。
一方で、ポリシロキサンワニス(PSV1)単独を被膜形成組成物として基材に塗布する事によって得られた膜の露光量依存性は露光量を増大させても、Si−OHの低減に効果がないことが確認された。
【0309】
[光アミノ酸発生剤の添加量によるSi−OHの減少挙動]
最もSi−OHの低減に効果があったBoc−Argを光アミノ酸発生剤として用いた時の添加量依存性を確認した。
製膜はスピンコート法によって行い、条件は2000rpmで20秒とした。スピンコート後、室温で溶剤を乾燥し除去した後、露光装置はUV照射装置を用い、大気中で露光した。膜厚は500nmとした。基材には4インチのシリコンウェハを用いた。
【0310】
<実施例60>
Boc−Argを0.1phr(即ち、ポリシロキサンワニスPSV1中のSiO
2の
100質量部に対してBoc−Argを0.1質量部を含有している。)とした以外は実施例2と同様の手順で、被膜形成組成物(以下、「PSV1−BArg−0.1phr」と略す)を調製した。得られた被膜形成組成物(PSV1−BArg−0.1phr)をスピンコート後、室温で溶剤を乾燥し除去した後、UV照射装置で1J/cm
2の露光量
(250nmのエネルギー換算)で大気中にて露光し、露光後の被膜を削り取り、KBr
法でFT−IRスペクトルを測定した。
【0311】
<実施例61>
Boc−Argを0.5phr(即ち、ポリシロキサンワニスPSV1中のSiO
2の
100質量部に対してBoc−Argを0.5質量部を含有している。)とした以外は実施例2の手順で、被膜形成組成物(以下、「PSV1−BArg−0.5phr」と略す)を調製した。得られた被膜形成組成物(PSV1−BArg−0.5phr)をスピンコート後、室温で溶剤を乾燥し除去した後、UV照射装置で1J/cm
2の露光量(25
0nmのエネルギー換算)で大気中にて露光し、露光後の被膜を削り取り、KBr法でFT−IRスペクトルを測定した。
【0312】
<実施例62>
Boc−Argを1.0phr(即ち、ポリシロキサンワニスPSV1中のSiO
2の
100質量部に対してBoc−Argを1.0質量部を含有している。)とした以外は実施例2の手順で、被膜形成組成物(以下、「PSV1−BArg−1.0phr」と略す)を調製した。得られた被膜形成組成物(PSV1−BArg−1.0phr)をスピンコート後、室温で溶剤を乾燥し除去した後、UV照射装置で1J/cm
2の露光量(25
0nmのエネルギー換算)で大気中にて露光し、露光後の被膜を削り取り、KBr法でFT−IRスペクトルを測定した。
【0313】
<実施例63>
Boc−Argを2.5phr(即ち、ポリシロキサンワニスPSV1中のSiO
2の
100質量部に対してBoc−Argを2.5質量部を含有している。)とした以外は実施例2の手順で、被膜形成組成物(以下、「PSV1−BArg−2.5phr」と略す)を調製した。得られた被膜形成組成物(PSV1−BArg−2.5phr)をスピンコート後、室温で溶剤を乾燥し除去した後、UV照射装置で1J/cm
2の露光量(25
0nmのエネルギー換算)で大気中にて露光し、露光後の被膜を削り取り、KBr法でFT−IRスペクトルを測定した。
【0314】
実施例49及び実施例60乃至62までの結果を
図48及び
図59乃至62に示す。
図48、
図61及び
図62に示したように、最もSi−OHの低減に効果があったBoc−Argを用い、ポリシロキサンワニスへの添加量を変更させた被膜形成組成物を用いて作製した膜のFT−IRは、1.0phr加えたものではSi−OHの低減に効果がないが、2.5phrから効果が発現し、Si−OHの低減に効果があることが分かった。
非常に少量な2.5phrで効果が発現することから、ポリシロキサンの性質を大きく変化させることなく、Si−OHの量を劇的に低減させることができる。
【0315】
[共重合したポリシロキサンの焼成条件によるSi−OHの減少挙動]
共重合したポリシロキサンワニスに関しても、光アミノ酸発生剤を用いることでSi−OHを低減できるかを検討した。
製膜はスピンコート法によって行い、条件は2000rpmで20秒とした。スピンコート後、室温で溶剤を乾燥し除去した後、露光装置はUV照射装置を用い、大気中で露光した。膜厚は500nmとした。基材には4インチのシリコンウェハを用いた。基材には4インチのシリコンウェハを用いた。
【0316】
<実施例64>
合成例2で得たポリシロキサンワニスPSV2に実施例1と同様にBoc−Argを添加し、被膜形成組成物(以下、「PSV2−BArg」と略す)を調製した。被膜形成組成物(PSV2−BArg)をスピンコート後、室温で溶剤を乾燥し除去した後、UV照射装置で1J/cm
2の露光量(250nmのエネルギー換算)で大気中にて露光し、露
光後の被膜を削り取り、KBr法でFT−IRスペクトルを測定した。
【0317】
<実施例65>
合成例2で得たポリシロキサンワニスPSV2に実施例1と同様にBoc−Lysを添加し、被膜形成組成物(以下、「PSV2−BLys」と略す)を調製した。被膜形成組成物(PSV2−BLys)をスピンコート後、室温で溶剤を乾燥し除去した後、UV照射装置で1J/cm
2の露光量(250nmのエネルギー換算)で大気中にて露光し、露
光後の被膜を削り取り、KBr法でFT−IRスペクトルを測定した。
【0318】
<実施例66>
合成例2で得たポリシロキサンワニスPSV2に実施例1と同様にBoc−Hisを添加し、被膜形成組成物(以下、「PSV2−BHis」と略す)を調製した。被膜形成組成物(PSV2−BHis)をスピンコート後、室温で溶剤を乾燥し除去した後、UV照射装置で1J/cm
2の露光量(250nmのエネルギー換算)で大気中にて露光し、露
光後の被膜を削り取り、KBr法でFT−IRスペクトルを測定した。
【0319】
<実施例67>
合成例3で得たポリシロキサンワニスPSV3に実施例1と同様にBoc−Argを添加し、被膜形成組成物(以下、「PSV3−BArg」と略す)を調製した。被膜形成組成物(PSV3−BArg)をスピンコート後、室温で溶剤を乾燥し除去した後、UV照射装置で1J/cm
2の露光量(250nmのエネルギー換算)で大気中にて露光し、露
光後の被膜を削り取り、KBr法でFT−IRスペクトルを測定した。
【0320】
<実施例68>
合成例3で得たポリシロキサンワニスPSV3に実施例1と同様にBoc−Lysを添加し、被膜形成組成物(以下、「PSV3−BLys」と略す)を調製した。被膜形成組成物(PSV3−BLys)をスピンコート後、室温で溶剤を乾燥し除去した後、UV照射装置で1J/cm
2の露光量(250nmのエネルギー換算)で大気中にて露光し、露
光後の被膜を削り取り、KBr法でFT−IRスペクトルを測定した。
【0321】
<実施例69>
合成例3で得たポリシロキサンワニスPSV3に実施例1と同様にBoc−Hisを添加し、被膜形成組成物(以下、「PSV3−BHis」と略す)を調製した。被膜形成組成物(PSV3−BHis)をスピンコート後、室温で溶剤を乾燥し除去した後、UV照射装置で1J/cm
2の露光量(250nmのエネルギー換算)で大気中にて露光し、露
光後の被膜を削り取り、KBr法でFT−IRスペクトルを測定した。
【0322】
<実施例70>
合成例4で得たポリシロキサンワニスPSV4に実施例1と同様にBoc−Argを添加し、被膜形成組成物(以下、「PSV4−BArg」と略す)を調製した。被膜形成組成物(PSV4−BArg)をスピンコート後、室温で溶剤を乾燥し除去した後、UV照射装置で1J/cm
2の露光量(250nmのエネルギー換算)で大気中にて露光し、露
光後の被膜を削り取り、KBr法でFT−IRスペクトルを測定した。
【0323】
<実施例71>
合成例4で得たポリシロキサンワニスPSV4に実施例1と同様にBoc−Lysを添加し、被膜形成組成物(以下、「PSV4−BLys」と略す)を調製した。被膜形成組成物(PSV4−BLys)をスピンコート後、室温で溶剤を乾燥し除去した後、UV照射装置で1J/cm
2の露光量(250nmのエネルギー換算)で大気中にて露光し、露
光後の被膜を削り取り、KBr法でFT−IRスペクトルを測定した。
【0324】
<実施例72>
合成例4で得たポリシロキサンワニスPSV4に実施例1と同様にBoc−Hisを添加し、被膜形成組成物(以下、「PSV4−BHis」と略す)を調製した。被膜形成組成物(PSV4−BHis)をスピンコート後、室温で溶剤を乾燥し除去した後、UV照射装置で1J/cm
2の露光量(250nmのエネルギー換算)で大気中にて露光し、露
光後の被膜を削り取り、KBr法でFT−IRスペクトルを測定した。
【0325】
<比較例46>
合成例2で得たポリシロキサンワニスPSV2を被膜形成組成物として用い、スピンコート後、室温で溶剤を乾燥し除去した後、露光せずに、被膜を削り取り、KBr法でFT−IRスペクトルを測定した。
【0326】
<比較例47>
合成例2で得たポリシロキサンワニスPSV3を被膜形成組成物として用い、スピンコート後、室温で溶剤を乾燥し除去した後、UV照射装置で1J/cm
2の露光量(250
nmのエネルギー換算)で大気中にて露光し、露光後の被膜を削り取り、KBr法でFT−IRスペクトルを測定した。
【0327】
<比較例48>
合成例2で得たポリシロキサンワニスPSV3を被膜形成組成物として用い、スピンコート後、室温で溶剤を乾燥し除去した後、UV照射装置で5J/cm
2の露光量(250
nmのエネルギー換算)で大気中にて露光し、露光後の被膜を削り取り、KBr法でFT−IRスペクトルを測定した。
【0328】
<比較例49>
合成例3で得たポリシロキサンワニスPSV4を被膜形成組成物として用い、スピンコート後、室温で溶剤を乾燥し除去した後、露光せずに、被膜を削り取り、KBr法でFT−IRスペクトルを測定した。
【0329】
<比較例50>
合成例3で得たポリシロキサンワニスPSV4を被膜形成組成物として用い、スピンコート後、室温で溶剤を乾燥し除去した後、UV照射装置で1J/cm
2の露光量(250
nmのエネルギー換算)で大気中にて露光し、露光後の被膜を削り取り、KBr法でFT−IRスペクトルを測定した。
【0330】
<比較例51>
合成例3で得たポリシロキサンワニスPSV3を被膜形成組成物として用い、スピンコート後、室温で溶剤を乾燥し除去した後、UV照射装置で5J/cm
2の露光量(250
nmのエネルギー換算)で大気中にて露光し、露光後の被膜を削り取り、KBr法でFT−IRスペクトルを測定した。
【0331】
<比較例52>
合成例4で得たポリシロキサンワニスPSV4を被膜形成組成物として用い、スピンコート後、室温で溶剤を乾燥し除去した後、露光せずに、被膜を削り取り、KBr法でFT−IRスペクトルを測定した。
【0332】
<比較例53>
合成例4で得たポリシロキサンワニスPSV4を被膜形成組成物として用い、スピンコート後、室温で溶剤を乾燥し除去した後、UV照射装置で1J/cm
2の露光量(250
nmのエネルギー換算)で大気中にて露光し、露光後の被膜を削り取り、KBr法でFT−IRスペクトルを測定した。
【0333】
<比較例54>
合成例4で得たポリシロキサンワニスPSV4を被膜形成組成物として用い、スピンコート後、室温で溶剤を乾燥し除去した後、UV照射装置で5J/cm
2の露光量(250
nmのエネルギー換算)で大気中にて露光し、露光後の被膜を削り取り、KBr法でFT−IRスペクトルを測定した。
【0334】
実施例64乃至66及び比較例46乃至48の結果を
図63乃至65及び
図84乃至86に、実施例67乃至69及び比較例49乃至51の結果を
図66乃至68及び
図87乃至89に、実施例70乃至72及び比較例52乃至54の結果を
図69乃至71及び
図90乃至92に示す。
図63乃至71に示したように、特にポリシロキサンの重縮合を促進させる能力が高いアルギニンを光アミノ酸発生剤としてポリシロキサンワニスに添加した被膜形成組成物から得られた膜は、ポリシロキサンワニスPSV2乃至4においてもPSV1と同様にSi−OHの消化に有効であることが分かった。この結果は、4官能のシランモノマー(4つの加水分解基を有する加水分解性シランモノマー)から合成したポリシロキサンワニスPSV1、4官能及び3官能のシランモノマー(4つの加水分解基を有する加水分解性シランモノマーと3つの加水分解基を有する加水分解性シランモノマー)の共重合で得られたポリシロキサンワニスPSV2、4官能、3官能及び2官能のシランモノマー(4つの加水分解基を有する加水分解性シランモノマーと3つの加水分解基を有する加水分解性シランモノマーと2つの加水分解基を有する加水分解性シランモノマー)の共重合で得られたポリシロキサンワニスPSV3、3官能のシランモノマー(3つの加水分解基を有する加水分解性シランモノマー)から合成したポリシロキサンワニスPSV4のいずれも効果があることを示し、一般的なポリシロキサンポリマーであれば1J/cm
2程度の露光量で
Si−OHを減少できることを示唆している。
また、光アミノ酸発生剤を添加していないポリシロキサンワニスによる被膜形成組成物の場合、PSV2又はPSV3であれば5J/cm
2露光してもSi−OHは残留するこ
とが分かった。
【0335】
[溶媒置換後の効果]
合成例1乃至4で得たポリシロキサンワニスの合成時溶媒を溶媒置換した後に、光アミノ酸発生剤を添加しても同様の効果が得られるかを検討した。
製膜はスピンコート法によって行い、条件は2000rpmで20秒とした。スピンコート後、150℃で5分間の乾燥を行い溶剤を除去した後、露光装置はUV照射装置を用い、大気中で露光した。膜厚は500nmとした。なお、150℃で5分間の焼成は溶媒であるPGMEAを完全に除去するための工程であり、この時、光アミノ酸発生剤は分解しないことを確認している。即ち、150℃で5分の焼成条件ではSi−OH同士の重縮合が促進されず、後の光照射時にのみ重縮合が促進される。基材には4インチのシリコンウェハを用いた。
【0336】
<実施例73>
合成例1で得たポリシロキサンワニスPSV1に、加水分解と縮合反応時に溶剤として使用したエタノールと同量の94.84gのプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以下、「PGMEA」と略す)を加え、その後、エバポレータを用いて、水浴が20℃の条件で減圧下にて6時間、溶媒置換を行った。
得られた溶媒置換後のポリシロキサンワニスにBoc−Argを実施例1と同様に添加し、被膜形成組成物(以下、「PSV1−BArg−PGMEA」と略す)を得た。
得られた被膜形成組成物(PSV1−BArg−PGMEA)をスピンコート後、150
℃で5分間の乾燥を行い溶剤を除去した後、UV照射装置で1J/cm
2の露光量(25
0nmのエネルギー換算)で大気中にて露光し、露光後の被膜を削り取り、KBr法でFT−IRスペクトルを測定した。
【0337】
<実施例74>
合成例2で得たポリシロキサンワニスPSV2を用いて、実施例73と同様にPGMEAに溶媒置換し、Boc−Argを添加した。
得られた被膜形成組成物(以下、「PSV2−Boc−Arg−PGMEA」と略す。)をスピンコート後、150℃で5分間の乾燥を行い溶剤を除去した後、UV照射装置で1J/cm
2の露光量(250nmのエネルギー換算)で大気中にて露光し、露光後の被
膜を削り取り、KBr法でFT−IRスペクトルを測定した。
【0338】
<実施例75>
合成例3で得たポリシロキサンワニスPSV3を用いて、実施例73と同様にPGMEAに溶媒置換し、Boc−Argを添加した。
得られた被膜形成組成物(以下、「PSV3−Boc−Arg−PGMEA」と略す。)をスピンコート後、150℃で5分間の乾燥を行い溶剤を除去した後、UV照射装置で1J/cm
2の露光量(250nmのエネルギー換算)で大気中にて露光し、露光後の被
膜を削り取り、KBr法でFT−IRスペクトルを測定した。
【0339】
<実施例76>
合成例4で得たポリシロキサンワニスPSV4を用いて、実施例73と同様にPGMEAに溶媒置換し、Boc−Argを添加した。
得られた被膜形成組成物(以下、「PSV4−Boc−Arg−PGMEA」と略す。)をスピンコート後、150℃で5分間の乾燥を行い溶剤を除去した後、UV照射装置で1J/cm
2の露光量(250nmのエネルギー換算)で大気中にて露光し、露光後の被
膜を削り取り、KBr法でFT−IRスペクトルを測定した。
【0340】
<比較例55>
合成例1で得たポリシロキサンワニスPSV1に、加水分解と縮合反応時に溶媒として使用したエタノールと同量の94.84gのPGMEAを加え、その後、エバポレータを用いて、水浴が20℃の条件で減圧下にて6時間、溶媒置換を行った。
得られた溶媒置換後の被膜形成組成物(以下、「PSV1−PGMEA」と略す)をスピンコート後、150℃で5分間の乾燥を行い溶剤を除去した後、UV照射装置で1J/cm
2の露光量(250nmのエネルギー換算)で大気中にて露光し、露光後の被膜を削
り取り、KBr法でFT−IRスペクトルを測定した。
【0341】
<比較例56>
合成例2で得たポリシロキサンワニスPSV2を用いて、比較例55と同様にPGMEAに溶媒置換した。
得られた被膜形成組成物(以下、「PSV2−PGMEA」と略す。)をスピンコート後、150℃で5分間の乾燥を行い溶剤を除去した後、UV照射装置で1J/cm
2の露
光量(250nmのエネルギー換算)で大気中にて露光し、露光後の被膜を削り取り、KBr法でFT−IRスペクトルを測定した。
【0342】
<比較例57>
合成例3で得たポリシロキサンワニスPSV3を用いて、比較例55と同様にPGMEAに溶媒置換した。
得られた被膜形成組成物(以下、「PSV3−PGMEA」と略す。)をスピンコート後、150℃で5分間の乾燥を行い溶剤を除去した後、UV照射装置で1J/cm
2の露
光量(250nmのエネルギー換算)で大気中にて露光し、露光後の被膜を削り取り、KBr法でFT−IRスペクトルを測定した。
【0343】
<比較例58>
合成例4で得たポリシロキサンワニスPSV4を用いて、比較例55と同様にPGMEAに溶媒置換した。
得られた被膜形成組成物(以下、「PSV3−PGMEA」と略す。)をスピンコート後、150℃で5分間の乾燥を行い溶剤を除去した後、UV照射装置で1J/cm
2の露
光量(250nmのエネルギー換算)で大気中にて露光し、露光後の被膜を削り取り、KBr法でFT−IRスペクトルを測定した。
【0344】
実施例73乃至76及び比較例55乃至58の結果を
図72乃至75及び
図93乃至96に示す。
図72乃至75に示したように、ポリシロキサンワニスの溶媒を加水分解と縮合反応時に使用した溶媒のエタノールから、PGMEAに溶媒置換したポリシロキサンワニスにおいても、光アミノ酸発生剤の効果は発現し、異なった溶媒種を用いた場合でも、膜中のSi−OHを著しく消化できることが分かった。
【0345】
以上、上記の結果から、ポリシロキサンワニスに光アミノ酸発生剤を加えたポリシロキサン組成物がポリシロキサンワニスの保存安定性を良好に保持し、且つ焼成時に重縮合を促進させ、且つ残留Si−OHを著しく低減でき、被膜形成用組成物として有効であることを確認できた。
【0346】
[架橋性化合物を含むポリシロキサンワニスの調整]
<実施例77>
合成例2で得た100gのPSV2(SiO
2固形分換算濃度が12質量%)に有機系
架橋性化合物として三井サイテック(株)製グリコールウリル化合物(商品名パウダーリンク1174)を0.12g(1phr)加え、室温で約2時間攪拌させ、完全に溶解させた。そして、無色透明な溶液として有機系架橋性化合物を含むポリシロキサン組成物(以下、「PSV2−PWL1phr」と略す)を調整した。
【0347】
<実施例78>
合成例2で得た100gのPSV2(SiO
2固形分換算濃度が12質量%)に有機系
架橋性化合物として三井サイテック(株)製グリコールウリル化合物(商品名パウダーリンク1174)を0.60g(5phr)加え、室温で約2時間攪拌させ、完全に溶解させた。そして、無色透明な溶液として有機系架橋性化合物を含むポリシロキサン組成物(以下、「PSV2−PWL5phr」と略す)を調整した。
【0348】
<実施例79>
合成例2で得た100gのPSV2(SiO
2固形分換算濃度が12質量%)に有機系
架橋性化合物として三井サイテック(株)製グリコールウリル化合物(商品名パウダーリンク1174)を1.20g(10phr)加え、室温で約2時間攪拌させ、完全に溶解させた。そして、無色透明な溶液として有機系架橋性化合物を含むポリシロキサン組成物(以下、「PSV2−PWL10phr」と略す)を調整した。
【0349】
<実施例80>
合成例2で得た100gのPSV2(SiO
2固形分換算濃度が12質量%)に有機系
架橋性化合物として三井サイテック(株)製グリコールウリル化合物(商品名パウダーリンク1174)を2.40g(20phr)加え、室温で約2時間攪拌させ、完全に溶解させた。そして、無色透明な溶液として有機系架橋性化合物を含むポリシロキサン組成物
(以下、「PSV2−PWL20phr」と略す)を調整した。
【0350】
[via内埋め込み性確認]
<測定例1>
合成例2で得たポリシロキサンワニス(PVS2)及び実施例77乃至80で得られたポリシロキサン組成物を被膜形成組成物として、via基板にスピン塗布しホットプレートを使用し大気中で400℃で5分間焼成しSEMによる観測を行った。スピン塗布の条件は、2000rpmで30秒間行った。
【0351】
<測定例2>
実施例78で得られたポリシロキサン組成物を被膜形成組成物として、via基板にスピン塗布しホットプレートを使用し、大気中、400℃で15分、30分又は60分焼成しSEMによる観測を行った。スピン塗布の条件は、2000rpmで30秒間行った。
【0352】
焼成後via基板内の埋め込み性の一例を図に示した。
図97は埋め込み性が良好である断面図であり、
図98はスリットを伴う埋め込みの断面図であり好ましくない。
【0353】
【表3】
【0354】
<実施例81>
合成例2で得た100gのポリシロキサンワニスPSV2(SiO
2固形分換算濃度が
12質量%)に有機系架橋性化合物として三井サイテック(株)製グリコールウリル化合物(商品名パウダーリンク1174)を1.20g(10phr)加え、アミノ酸発生剤として、上記式(A−2)に表す、N−α, N−ω1, N−ω2−トリ−t−ブトキシカルボニル−L−アルギニン(以下、「Boc−Arg」と略す。Dはアミノ基の保護基である。)を0.12g(1phr、即ちSiO
2の100質量部に対して1質量部を含
有している。)加え、室温で30分攪拌させ、Boc−Argを完全に溶解させた。そして、無色透明な溶液として有機系架橋性化合物及びアミノ酸発生剤を含むポリシロキサン組成物を調製し、被膜形成組成物(以下、「PSV2−PWL−BArg」と略す)とした。
【0355】
<実施例82>
アミノ酸発生剤として、上記式(A−6)に表す、N−α, N−ε−ジ−t−ブトキ
シカルボニル−L−リシン(以下、「Boc−Lys」と略す。Dはアミノ基の保護基である。)を用いた以外は実施例81と同様に有機系架橋性化合物及びアミノ酸発生剤を含むポリシロキサン組成物を調製し、被膜形成組成物(以下、「PSV2−PWL−BLys」と略す)とした。
【0356】
<実施例83>
アミノ酸発生剤として、上記式(A−8)に表す、N−α−t−ブトキシカルボニル−N−δ−(9−フルオレニルメトキシカルボニル)−L−オルニチン(以下、「FB−Orn」と略す。D
1、D
2はアミノ基の保護基である。)を用いた以外は実施例81と同様に有機系架橋性化合物及びアミノ酸発生剤を含むポリシロキサン組成物を調製し、被膜形成組成物(以下、「PSV2−PWL−FBOrn」と略す)とした。
【0357】
[焼成条件によるSi−OHの減少挙動]
アミノ酸発生剤を含むポリシロキサン組成物を用いて被膜形成組成物を作成し、基板に被覆し被膜を作製する際の焼成条件の違いによるSi−OHの減少挙動の相違を確認した。
製膜の作成は被膜形成組成物の基板(基材)へのスピンコートによって行い、条件は2000rpmで20秒とした。スピンコート後、焼成機器はホットプレートを用い、大気中で焼成した。膜厚は500nmとした。基材には4インチのシリコンウェハを用いた。
【0358】
<実施例84>
実施例81で得た被膜形成組成物(PSV2−PWL−BArg)をスピンコート後、250℃で5分間焼成した。焼成後の被膜を削り取り、KBr法でFT−IRスペクトルを測定した。
【0359】
<実施例85>
実施例82で得た被膜形成組成物(PSV2−PWL−BLys)を用いた以外は実施例84と同様に製膜し、測定した。
【0360】
<実施例86>
実施例83で得た被膜形成組成物(PSV2−PWL−FBOrn)を用いた以外は実施例84と同様に製膜し、測定した。
【0361】
<比較例59>
合成例2で得たポリシロキサンワニス(PSV2)を被膜形成組成物にした以外は実施例84と同様に製膜し測定した。
【0362】
<比較例1>
実施例79で得たポリシロキサン組成物(PSV2−PWL10phr)を被膜形成組成物にした以外は実施例8と同様に成膜し測定した。
【0363】
実施例84乃至86、比較例59及び参考例1で測定したFT−IRの結果を
図99乃至103に示す。図では、Si−OHのOH伸縮振動に起因する3500cm
-1付近のピークに着目した。
図99乃至101において、ポリシロキサンワニス(PSV2)にアミノ酸発生剤を加えた被膜形成組成物を用いた膜を250℃で5分間焼成した膜のSi−OHは著しく減少していた。
また
図102において、比較例59のポリシロキサンワニス(PSV2)を被膜形成組成物として用いた膜、及び
図103として参考例1の被膜形成組成物(PSV2−PWL
10phr)を用いた膜を250℃で5分間焼成した膜はSi−OHが非常に残留していた。
以上、上記の結果から、ポリシロキサンワニスにアミノ酸発生剤を加えたポリシロキサン組成物が焼成時に重縮合を促進させ、且つ残留Si−OHを著しく低減でき、被膜形成用組成物として有効であることを確認できた。
【0364】
以上示した結果から、ポリシロキサンワニスに有機系架橋性化合物を加えたポリシロキサン組成物は埋め込み性が良好であることが確認された。さらにポリシロキサンワニスに有機系架橋性化合物とアミノ酸発生剤を加えたポリシロキサン組成物は埋め込み性が良好であり、更に焼成時に重縮合を促進させ、且つ残留Si−OHを著しく低減でき、被膜形成用組成物として有効であることを確認できた。これによりvia内への埋め込み性を向上させ、且つ残留Si−OHを著しく低減できることから各種ポリシロキサン組成物の設計が可能であり、プロセスマージンを拡大できるため、電子デバイス、特に固体撮像素子の一部材として好適に用いることができる。