【実施例】
【0026】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明の範囲がこれらの実施例にのみ限定されるものではない。
【0027】
[アルカリホスファターゼ染色]
培養したES細胞が未分化能を保っているかどうかを判定するため、下記の方法でLeukocyte Alkaline Phosphatase Kit (Sigma)を用いて細胞のアルカリホスファターゼ活性を測定した。
先ずES細胞を下記実施例1に示す方法で二日間培養した後、培地を除いてPBSで1回洗浄し、Fixative Solution(Citrate Concentration Solution78μL、超純水3.92ml、アセトン6ml)を加えて細胞を固定する(30秒)。次いで、超純水で2回洗浄し、染色液(Diazonium Salt Solution4.8ml、Naphthil AS-MX phosphate Alkaline Solution200μL)を加えて、室温で1時間静置する(遮光)。次いで、再び超純水で2回洗浄し、封入剤を滴下しカバーガラスで覆って顕微鏡で観察する。細胞の未分化能が保っている場合、高いアルカリホスファターゼ活性を示し、赤く染色される。逆に分化ES細胞では、アルカリホスファターゼ活性を示さず、染色されない。
【0028】
(参考例) EF細胞(フィーダー細胞)上でのES細胞培養例
直径35mmのポリスチレン製ディッシュ(FALCON35−3002)の底面を覆うようにゼラチン溶液を添加し、37℃のインキュベーター内で30分以上静置した後、Dishからゼラチン溶液を除去し、EF細胞(Balb/c由来胎児線維芽細胞)用培地(Dulbecco’s Modified Eagle’s Medium High-Glucose,10% Fetal Bovine Serum)で懸濁したEF細胞(フィーダー細胞)を播種して、5%二酸化炭素中、37℃で一晩培養を行った。次いで、DishからEF細胞用培地を除去し、予めES細胞用培地(Dulbecco's Modified Eagle's Medium High-Glucose,MEM Non Essential Amino Acid,10
-4M 2-Mercaptoethanol,1000U/mL ESGRO mLIF Medium Supplement,L-Glutamine,15% ES cell FBS)で懸濁したES細胞を0.5×10
6 cell/Dish播種し、5%二酸化炭素中、37℃で二日間培養を行った。次いで、D-PBSで培地を洗浄後、0.25% Trypsin−EDTAを用いて、ES細胞をDishから剥離回収し、ES用培地で細胞を懸濁しながら洗浄した後、再び予めEF細胞を培養したDish上に播種し、5%二酸化炭素中、37℃で培養を行った。上記操作(培養・回収)を15回繰り返してES細胞を培養した。各回二日間培養した細胞について、顕微鏡観察したところ、細胞が盛り上がって増殖し島状のコロニーとなり、輪郭が丸くはっきりしており、細胞の未分化能が保っていることが分かる。更に、アルカリホスファターゼ染色により、細胞が濃く染色され、高いアルカリホスファターゼ活性を示し、未分化能が保っていることが確認された。また、各回二日間培養した細胞数の累計を
図1に示した。増殖した細胞の数はほぼ直線的に増加し、15回繰り返し培養した結果、細胞数は約3×10
18個オーダーであった。
【0029】
(実施例1)
[メトキシエチルアクリレート(a)、無機材料(B)、水媒体(C)を含む反応溶液の調製]
メトキシエチルアクリレート(a)3.2g、無機材料(B)として水膨潤性粘土鉱物Laponite XLG(Rockwood Additives Ltd.社製)0.2g、水媒体(C)として水100g、を均一に混合して反応溶液(1)を調製した。
【0030】
[重合開始剤(D)を溶媒(E)に溶解させた溶液の調整]
溶媒(E)として、メタノール9.8g、重合開始剤(D)として1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン「イルガキュアー184」(チバガイギー社製)0.2gを、均一に混合して溶液(2)を調製した。
【0031】
[複合体(X)の分散液(L)の調製(第1工程)]
上記反応溶液(1)全量に、溶液(2)を250μl入れ、均一に分散させた後、365nmにおける紫外線強度が40mW/cm
2の紫外線を180秒照射し乳白色の複合体(X)の分散液(L1)を作製した。
【0032】
この反応系のRa=0.06、無機材料(B)の濃度(質量%)=0.20(%)<12.4Ra+0.05=0.79
【0033】
[培養基材(複合体(X)の薄層)の調製(第2工程)]
直径35mmのポリスチレン製シャーレ(IWAKIティッシュカルチャデイッシュ3000−035)に、上記複合体(X)の分散液(L1)を入れ、スピンコーターを用いて3000回転で該分散液をシャーレの表面に薄く塗布した後、80℃の熱風乾燥器中で10分間乾燥させ、次いで、滅菌水によりシャーレを洗浄した後、滅菌袋中でシャーレを40℃、5時間乾燥させて、細胞培養基材1を得た。
【0034】
[ES細胞の培養]
(イ)ES細胞の継代(準備)
直径35mmのポリスチレン製ディッシュ(FALCON35−3001)の底面を覆うようにゼラチン溶液を添加し、37℃のインキュベーター内で30分以上静置した後、Dishからゼラチン溶液を除去し、EF細胞(Balb/c由来胎児線維芽細胞)用培地(Dulbecco’s Modified Eagle’s Medium High-Glucose,10% Fetal Bovine Serum)で懸濁したEF細胞(フィーダー細胞)を播種して、5%二酸化炭素中、37℃で一晩培養を行った。次いで、DishからEF細胞用培地を除去し、予めES細胞用培地(Dulbecco’s Modified Eagle’s Medium High-Glucose,MEM Non Essential Amino Acid,10
-4M 2-Mercaptoethanol,1000U/mL ESGRO mLIF Medium Supplement,L-Glutamine,15% ES cell FBS)で懸濁したES細胞を0.5×10
6 cell/Dish播種し、5%二酸化炭素中、37℃で二日間培養を行った。次いで、D-PBSで培地を洗浄後、0.25% Trypsin-EDTAを用いて、ES細胞をDishから剥離回収し、ES用培地で細胞を懸濁しながら洗浄した後、再び予めEF細胞を培養したDish上に播種し、5%二酸化炭素中、37℃で培養を行った。上記操作(培養・回収)を3回繰り返して継代したES細胞を培養した。この細胞について、顕微鏡観察、アルカリホスファターゼ染色により、細胞の未分化能が保っていることを確認した。
【0035】
(ロ)フィーダー細胞を使用しないES細胞の培養試験
前記得られた細胞培養基材1を照射線量10kGyの電子線で滅菌した(日本照射サービス株式会社)後、前記3回継代した未分化のES細胞を0.5×10
6 cell/Dish播種し、5%二酸化炭素中、37℃で二日間培養を行った。次いで、(イ)と同様にして、培養細胞を基材1から剥離回収し、細胞数計測と顕微鏡観察及びアルカリホスファターゼ染色測定を行った後、再び電子線滅菌済みの細胞培養基材1に0.5×10
6 cell/Dish播種して、二日間培養を行う。この操作を11回(計22日間培養)繰り返した。各回二日間培養した細胞について、顕微鏡観察したところ、細胞が盛り上がって増殖し島状のコロニーとなり、輪郭が丸くはっきりしており、細胞の未分化能が保っていることが分かる。更に、アルカリホスファターゼ染色により、細胞が濃く染色され、高いアルカリホスファターゼ活性を示し、未分化能が保っていることが確認された。また、各回二日間培養した細胞数の累計を
図1に示した。増殖した細胞の数はほぼ直線的に増加し、11回繰り返し培養した結果、細胞数は約2×10
15個オーダーであった。
【0036】
(実施例2)
無機材料(B)として水膨潤性粘土鉱物Laponite XLG 0.8gを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、細胞培養基材2を製造した。
この反応系のRa=0.25、無機材料(B)の濃度(質量%)=0.79(%)<0.87Ra+2.17=2.39
【0037】
[ES細胞の培養]
実施例1と同様に、予めEF細胞(フィーダー細胞)上で3回継代したES細胞を用いて、10kGyの電子線滅菌済みの細胞培養基材2に0.5×10
6 cell/Dish播種して、繰り返し培養を行った。各回二日間培養した細胞について、顕微鏡観察したところ、細胞が盛り上がって増殖し島状のコロニーとなり、はっきりとした丸い輪郭が観察され、細胞の未分化能が保っていることが分かる。更に、アルカリホスファターゼ染色により、細胞が濃く染色され、高いアルカリホスファターゼ活性を示し、未分化能が保っていることが確認された。また、各回二日間培養した細胞数の累計を
図1に示した。増殖した細胞の数はほぼ直線的に増加し、11回繰り返し培養した結果、細胞数は約8×10
15個オーダーであった。
【0038】
以上の実施例1、2より、細胞培養基材中の無機材料含有量が増えるにつれ、細胞の培養性(増殖した細胞数)が増加することが理解できる。
【0039】
(実施例3)
[メトキシエチルアクリレート(a)、無機材料(B)、水媒体(C)を含む反応溶液の調製]
メトキシエチルアクリレート(a)3.2g、無機材料(B)として水膨潤性粘土鉱物Laponite XLG(Rockwood Additives Ltd.社製)0.4g、γ-ポリグルタミン酸(日本ポリグル株式会社製)1g、水媒体(C)として水100g、を均一に混合して反応溶液(3)を調製した。
【0040】
[複合体(X)の分散液(L)の調製(第1工程)]
上記反応溶液(3)全量に、溶液(2)を250μl入れ、均一に分散させた後、365nmにおける紫外線強度が40mW/cm
2の紫外線を180秒照射し乳白色の複合体(X)の分散液(L3)を作製した。
【0041】
この反応系のRa=0.10、無機材料(B)の濃度(質量%)=0.40(%)<12.4Ra+0.05=1.29
【0042】
[培養基材(複合体(X)の薄層)の調製(第2工程)]
直径35mmのポリスチレン製シャーレ(IWAKIティッシュカルチャデイッシュ3000−035)に、上記複合体(X)の分散液(L3)を入れ、スピンコーターを用いて3000回転で該分散液をシャーレの表面に薄く塗布した後、80℃の熱風乾燥器中で10分間乾燥させ、次いで、滅菌水によりシャーレを洗浄した後、滅菌袋中でシャーレを40℃、5時間乾燥させて、細胞培養基材3を得た。
【0043】
[ES細胞の培養]
実施例1と同様に、予めEF細胞(フィーダー細胞)上で3回継代したES細胞を用いて、10kGyの電子線滅菌済みの細胞培養基材3に0.5×10
6 cell/Dish播種して、繰り返し培養を行った。各回二日間培養した細胞について、顕微鏡観察したところ、細胞が盛り上がって増殖し島状のコロニーとなり、はっきりとした丸い輪郭が観察され、細胞の未分化能が保っていることが分かる。更に、アルカリホスファターゼ染色により、細胞が濃く染色され、高いアルカリホスファターゼ活性を示し、未分化能が保っていることが確認された。また、各回二日間培養した細胞数の累計を
図1に示した。増殖した細胞の数はほぼ直線的に増加し、11回繰り返し培養した結果、細胞数は約1×10
15個オーダーであった。
【0044】
(実施例4)
(参考例)
[メトキシエチルアクリレート(a)、無機材料(B)、水媒体(C)を含む反応溶液の調製]
メトキシエチルアクリレート(a)3.2g、無機材料(B)としてコロイダルシリカ20質量%水溶液(商品名スノーテックス20、日産化学工業株式会社製)1g(SiO
2=0.2g)水媒体(C)として水100g、を均一に混合して反応溶液(4)を調製した。
【0045】
[複合体(X)の分散液(L)の調製(第1工程)]
上記反応溶液(4)全量に、溶液(2)を250μl入れ、均一に分散させた後、365nmにおける紫外線強度が40mW/cm
2の紫外線を180秒照射し乳白色の複合体(X)の分散液(L4)を作製した。
【0046】
この反応系のRa=0.06、無機材料(B)の濃度(質量%)=0.20(%)<12.4Ra+0.05=0.79
【0047】
[培養基材(複合体(X)の薄層)の調製(第2工程)]
直径35mmのポリスチレン製シャーレ(IWAKIティッシュカルチャデイッシュ3000−035)に、上記複合体(X)の分散液(L4)を入れ、スピンコーターを用いて3000回転で該分散液をシャーレの表面に薄く塗布した後、80℃の熱風乾燥器中で10分間乾燥させ、次いで、滅菌水によりシャーレを洗浄した後、滅菌袋中でシャーレを40℃、5時間乾燥させて、細胞培養基材4を得た。
【0048】
[ES細胞の培養]
実施例1と同様に、予めEF細胞(フィーダー細胞)上で3回継代したES細胞を用いて、10kGyの電子線滅菌済みの細胞培養基材4に0.5×10
6 cell/Dish播種して、繰り返し培養を行った。各回二日間培養した細胞について、顕微鏡観察したところ、細胞が盛り上がって増殖し島状のコロニーとなり、はっきりとした丸い輪郭が観察され、細胞の未分化能が保っていることが分かる。更に、アルカリホスファターゼ染色により、細胞が濃く染色され、高いアルカリホスファターゼ活性を示し、未分化能が保っていることが確認された。また、各回二日間培養した細胞数の累計を
図1に示した。増殖した細胞の数はほぼ直線的に増加し、11回繰り返し培養した結果、細胞数は約5×10
13個オーダーであった。
【0049】
(実施例5)
(参考例)
[N−イソプロピルアクリルアミドの重合体水溶液の調製]
N―イソプロピルアクリルアミド(株式会社興人製)1.7g、水10g、溶液(2)140μl、を混合した後、該溶液を入れるガラス容器の周りを冷却しながら(約10℃)、365nmにおける紫外線強度が40mW/cm
2の紫外線を180秒照射し、N−イソプロピルアクリルアミドの重合体水溶液(PNIPA5)を調製した。この溶液に更に水を5g添加し、均一に混合した後、DIGITAL VISCOMATE粘度計(MODEL VM−100A、山一電機株式会社製)を用いてこの溶液の粘度を測定して、粘度は368mPa・sであった。測定時の溶液温度は24.2℃であった。
【0050】
また、Shodex GPC System−21装置(昭和電工株式会社製)で測定した結果、このポリN―イソプロピルアクリルアミドの重量平均分子量Mwは3.40×10
6であった。測定時の溶媒として10mmol/LのLiBrを含有するN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)溶液を使用した。分子量の計算に使用したポリスチレン標準物質としては、STANDARD SH−75とSM−105キット(昭和電工株式会社製)を使用した。
【0051】
[メトキシエチルアクリレート(a)、無機材料(B)、水媒体(C)を含む反応溶液の調製]
メトキシエチルアクリレート(a)3.2g、無機材料(B)としてコロイダルシリカ20質量%水溶液(商品名スノーテックス20、日産化学工業株式会社製)1g(SiO
2=0.2g)水膨潤性粘土鉱物Laponite XLG(Rockwood Additives Ltd.社製)0.2g、水媒体(C)として水100g、を均一に混合して反応溶液(5)を調製した。
【0052】
[複合体(X)の分散液(L)の調製(第1工程)]
上記反応溶液(5)全量に、溶液(2)を250μl入れ、均一に分散させた後、365nmにおける紫外線強度が40mW/cm
2の紫外線を180秒照射し乳白色の複合体(X)の分散液(L5)を作製した。
【0053】
この反応系のRa=0.06、無機材料(B)の濃度(質量%)=0.20(%)<12.4Ra+0.05=0.79
【0054】
[培養基材(複合体(X)の薄層)の調製(第2工程)]
上記分散液(L5)全量に、N-イソプロピルアクリルアミドの重合体水溶液(PNIPA5)を5g添加し、均一に混合した後、直径35mmのポリスチレン製シャーレ(IWAKIティッシュカルチャデイッシュ3000−035)に入れ、スピンコーターを用いて3000回転で該分散液をシャーレの表面に薄く塗布した後、80℃の熱風乾燥器中で10分間乾燥させ、次いで、滅菌水によりシャーレを洗浄した後、滅菌袋中でシャーレを40℃、5時間乾燥させて、細胞培養基材5を得た。
【0055】
[ES細胞の培養]
実施例1と同様に、予めEF細胞(フィーダー細胞)上で3回継代したES細胞を用いて、10kGyの電子線滅菌済みの細胞培養基材5に0.5×10
6 cell/Dish播種して、繰り返し培養を行った。各回二日間培養した細胞について、顕微鏡観察したところ、細胞が盛り上がって増殖し島状のコロニーとなり、はっきりとした丸い輪郭が観察され、細胞の未分化能が保っていることが分かる。更に、アルカリホスファターゼ染色により、細胞が濃く染色され、高いアルカリホスファターゼ活性を示し、未分化能が保っていることが確認された。また、各回二日間培養した細胞数の累計を
図1に示した。増殖した細胞の数はほぼ直線的に増加し、11回繰り返し培養した結果、細胞数は約9×10
12個オーダーであった。
【0056】
[ES細胞の剥離回収]
上記ES細胞培養において、最初の二日間、及び第11回目の二日間培養を行ったディッシュ中の培地を除いて、予め冷蔵庫で冷やした冷培地を入れ、10分間静置した後、ピペットで培地を吸ったり出したりするピペッティング操作を10回程行ったところ、大部分の細胞が培養基材5の表面から剥離されたことが観察された。剥離された細胞を回収し、更にD−PBSと0.25% Trypsin−EDTAを用いて、ディッシュに残ったES細胞を剥離回収して、それぞれ回収された細胞の数を計測し、下記式(3)により低温処理による細胞の回収率を求めたところ、細胞回収率はそれぞれ94%と96%であった。
式(3) 細胞回収率(%)={低温処理で回収された細胞の数/(低温処理で回収された細胞の数+Trypsin処理で回収された細胞の数)}×100
【0057】
(比較例1)
市販のコラーゲンIコートディッシュ(商品名:Collagen I Cellware、Becton Dickinson Labware社製)を用いて、実施例1と同様にして、予めEF細胞(フィーダー細胞)上で3回継代したES細胞を用いて、0.5×10
6 cell/Dish播種して、二日間の培養した後、剥離回収し、再び播種、培養の操作を計11回繰り返した。各回培養した細胞について、顕微鏡観察したところ、細胞が境界のはっきりした扁平な上皮様形態になり、分化してしまったことが分かる。更に、アルカリホスファターゼ染色により、細胞が殆ど染色されず、アルカリホスファターゼ活性を示さない、分化した状態であることが確認された。また、各回二日間培養した細胞数の累計を
図1に示した。増殖した細胞の数はほぼ直線的に増加し、11回繰り返し培養した結果、細胞数は約6×10
16個オーダーであった。
この比較例より、コラーゲンコートディッシュでは、ES細胞を未分化状態を保持したまま増殖させることはできないことが理解できる。
【0058】
(比較例2)
[メトキシエチルアクリレート(a)、水媒体(C)を含む反応溶液の調製]
メトキシエチルアクリレート(a)3.2g、水媒体(C)として水100g、を均一に混合して反応溶液(2’)を調製した。
【0059】
[複合体(X)の分散液(L)の調製(第1工程)]
上記反応溶液(2’)全量に、溶液(2)を250μl入れ、均一に分散させた後、365nmにおける紫外線強度が40mW/cm
2の紫外線を180秒照射し乳白色の複合体(X)の分散液(L2’)を作製した。
【0060】
この反応系のRa=0、無機材料(B)の濃度(質量%)=0(%)<12.4Ra+0.05=0.05
【0061】
[培養基材(複合体(X)の薄層)の調製(第2工程)]
直径35mmのポリスチレン製シャーレ(IWAKIティッシュカルチャデイッシュ3000−035)に、上記複合体(X)の分散液(L2’)を入れ、スピンコーターを用いて3000回転で該分散液をシャーレの表面に薄く塗布した後、80℃の熱風乾燥器中で10分間乾燥させ、次いで、滅菌水によりシャーレを洗浄した後、滅菌袋中でシャーレを40℃、5時間乾燥させて、細胞培養基材2’を得た。
【0062】
[ES細胞の培養]
実施例1と同様に、予めEF細胞(フィーダー細胞)上で3回継代したES細胞を用いて、10kGyの電子線滅菌済みの細胞培養基材2’に0.5×10
6 cell/Dish播種して、二日間培養したところ、細胞は殆ど増殖しなかった。
【0063】
(比較例3)
市販の直径35mmポリスチレン製ディッシュ(FALCON35−3001)を用いて、実施例1と同様にして、予めEF細胞(フィーダー細胞)上で3回継代したES細胞を用いて、0.5×10
6 cell/Dish播種して、二日間培養したところ、細胞が境界のはっきりした扁平な上皮様形態になり、分化してしまったことが分かる。更に、アルカリホスファターゼ染色により、細胞が殆ど染色されず、アルカリホスファターゼ活性を示さない、分化した状態であることが確認された。