(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
−第1の実施の形態−
図面を参照して、本発明による第1の実施の形態におけるカメラを説明する。
図1はデジタルカメラ1の要部構成を示す図である。デジタルカメラ1は、カメラボディ100と、交換レンズ200とにより構成され、交換レンズ200が図示しないマウント部を介してカメラボディ100に装着される。
【0009】
交換レンズ200には、撮影レンズ201、絞り202等が設けられている。撮影レンズ201は、ズーミングレンズやフォーカシングレンズ等の複数の光学レンズ群から構成され、被写体からの光束をその焦点面近傍に結像する。なお、
図1では撮影レンズ201を説明の都合上1枚のレンズで代表して示している。絞り202は、光量調整のために撮影レンズ201の光軸中心に開口径が可変な開口を形成する。
【0010】
カメラボディ100には、撮像素子101、制御回路102、液晶表示素子駆動回路103、液晶表示素子104、接眼レンズ105、操作部106、メモリカード107等が設けられている。撮像素子101には、たとえばCCDやCMOSにより構成される光電変換素子(画素)が二次元状に配置されている。撮像素子101は、後述する制御回路102の制御に応じて駆動して交換レンズ200を通過した光束により形成された被写体像を撮像し、撮像して得た画素信号を出力する。
【0011】
撮像素子101は、たとえば、ISO100相当〜ISO1600相当の範囲内において撮像感度(露光感度)を所定のステップで変更可能、すなわち撮像素子101からの画素信号の信号出力の動作状態が変更可能に構成されている。撮像感度とは、撮像素子101に蓄積される電荷の検出感度、もしくは不図示の増幅回路の増幅利得を変化させる被制御量のことをいう。撮像素子101の撮像感度を変更する操作(ゲイン変更操作)は、ユーザにより後述の操作部106を用いて行われる。なお、撮像素子101については詳細を後述する。
【0012】
制御回路102は、図示しないCPU、ROM、RAMなどを有し、デジタルカメラ1の各構成要素を制御したり、各種のデータ処理を実行する演算回路である。
図2に示すように、制御回路102は、撮像制御部102aと、画像処理部102bとを機能的に備える。撮像制御部102aは、撮像素子101の駆動制御および撮像素子101からの画素信号の読み出し、すなわち撮像素子101の電荷蓄積量を制御する。画像処理部102bは、撮像素子101から出力された画素信号に対して、ホワイトバランス処理、ガンマ補正処理、色補間処理、輪郭強調、ビネット補正などの画像処理を施して画像データを生成する。また、制御回路102は、撮像素子101から出力された画素信号に基づいて、焦点検出演算と交換レンズ200の焦点調節とを行うとともに、画素信号を用いて被写体の輝度値を演算し、適正な露光量が得られるようにシャッタ秒時(露光時間)と絞りの値とを演算する。なお、撮像制御部102aの詳細については説明を後述する。
【0013】
図1に示す液晶表示素子駆動回路103は、電気的なビューファインダとして機能する。液晶表示素子駆動回路103は、撮像素子101から読み出された画素信号を用いて制御回路102により生成された画像データに対応するスルー画像を液晶表示素子104に表示させる。その結果、ユーザは接眼レンズ105を介してスルー画像を観察することができる。メモリカード107は、制御回路102により生成された画像データを記録する、不揮発性の記録媒体である。
【0014】
操作部106は、ユーザの操作を受け付けるスイッチである。操作部106には、電源スイッチ、レリーズスイッチ、その他の設定メニューの表示切換スイッチ、設定メニュー決定ボタン、上述した撮像感度を変更させるゲイン変更操作のための感度設定スイッチなどが含まれる。
【0015】
図3を参照しながら、第1の実施の形態の撮像素子101について説明する。なお、
図3は、説明の都合上、撮像素子101の構造を模式化して概念的に示すものである。撮像素子101は、複数の光電変換部を有する画素を有し、各画素に蓄積された過剰な電荷を公知の垂直オーバーフロードレイン方式により排出して電荷蓄積量が制御可能に構成されている。
図3は、撮像素子101を構成する複数の画素のうちの一部の画素の断面構造を模式的に示す図である。
図3に示すように、画素150は、基板上に形成された光電変換部151と、第1排出部152とを有している。光電変換部151は、交換レンズ200を介して入射した光束の入射光量に応じて電荷を生成し、生成した電荷を蓄積するフォトダイオードである。
【0016】
第1排出部152は、光電変換部151に所定の蓄積量を超えて過剰に蓄積された電荷を基板上に排出する。すなわち、
図3(a)に示すように、蓄積された電荷が所定の蓄積量Thを超えた場合に、電荷の排出が行われる。本実施の形態においては、第1排出部152は、撮像制御部102aの制御に従って、第1の蓄積量と第2の蓄積量との間で切替可能に構成されている。
図3(b)は第1の蓄積量Th1が設定された場合を示し、
図3(c)は第2の蓄積量Th2が設定された場合を示している。
図3(b)、(c)に示すように、第2の蓄積量Th2は第1の蓄積量Th1よりも大きな蓄積量となるように設定される。すなわち、第2の蓄積量Th2が設定された場合には、第1の蓄積量Th1が設定された場合よりも、光電変換部151に蓄積される電荷の量が多くなる。
【0017】
上述した第1の蓄積量Th1と第2の蓄積量Th2とは、予め、試験や実験等の結果を用いて、光電変換部151の露光時間、すなわちシャッタ秒時と撮像感度と基づいて決定される。第1の蓄積量Th1は、たとえば撮像感度がデジタルカメラ1の取りうる最低感度(本実施の形態ではISO100)、かつシャッタ秒時が長秒時(たとえば1秒以上)に設定された場合に、光電変換部151に蓄積された電荷が隣接する画素150に漏れ出さない値として決定される。第2の蓄積量Th2は、撮像感度がISO100、かつシャッタ秒時が短秒時(たとえば1秒未満)に設定された場合に、光電変換部151に蓄積された電荷が隣接する画素150に漏れ出さない値として決定される。
【0018】
以下、撮像制御部102aによる所定の蓄積量の切替処理について説明する。以下の説明では、次の(1)〜(3)の3つの場合に分けて行う。
(1)撮像感度が最低感度に設定され、かつシャッタ秒時が長秒時(シャッタ速度が低速)の場合。
(2)撮像感度が最低感度に設定され、かつシャッタ秒時が短秒時(シャッタ速度が高速)の場合。
(3)最低感度以外の撮像感度に設定された場合。
【0019】
(1)撮像感度が最低感度に設定され、かつシャッタ秒時が長秒時の場合
撮像制御部102aは、ユーザが操作部106を操作して撮像感度が最低感度であるISO100に設定されたか否かを判定する。すなわち、撮像制御部102aは、ユーザにより撮像感度をISO100に設定する操作が行われたことを示す操作信号が操作部106から出力されたか否かを判定する。操作部106から操作信号が出力された場合、撮像制御部106は撮像素子101の撮像感度をISO100に設定する。そして、撮像制御部102aは、制御回路102により算出されたシャッタ秒時が1秒以上の長秒時、すなわち露光時間が長い場合に、撮像素子101に対して電荷の蓄積量を第1の蓄積量Th1に設定することを指示する第1指示信号を出力する。
【0020】
撮像素子101は、撮像制御部102aから第1指示信号を入力すると、光電変換部151の電荷蓄積量を第1の蓄積量Th1に設定する。その結果、撮像素子101を構成する全ての画素150が有する第1排出部152は、
図3(b)に示すように設定される。したがって、露光時間が長い場合には暗電流により光電変換部151の電荷の蓄積量が多くなるので、第1の蓄積量Th1に設定して、蓄積電荷の排出量を多くすることにより隣接する画素150へ電荷が漏れ出すブルーミング現象の発生を抑制する。
【0021】
(2)撮像感度が最低感度に設定され、かつシャッタ秒時が短秒時の場合
撮像制御部102aは、ユーザにより撮像感度をISO100に設定する操作が行われたことを示す操作信号が操作部106から出力されたと判定した場合、撮像制御部30は撮像素子101の撮像感度をISO100に設定する。そして、撮像制御部102aは、制御回路102により算出されたシャッタ秒時が1秒未満の短秒時、すなわち露光時間が短い場合に、撮像素子101に対して電荷の蓄積量を第2の蓄積量Th2に設定することを指示する第2指示信号を出力する。
【0022】
撮像素子101は、撮像制御部102aから第2指示信号を入力すると、光電変換部151の電荷蓄積量を第2の蓄積量Th2に設定する。その結果、撮像素子101を構成する全ての画素150が有する第1排出部152は、
図3(c)に示すように設定される。したがって、露光時間が短い場合には暗電流の発生量が少ないため露光時間が長い場合よりも光電変換部151の電荷の蓄積量が少なくなるので、第2の蓄積量Th2に設定して、ブルーミング現象の発生を抑制しつつダイナミックレンジを確保する。
【0023】
(3)撮像感度が最低感度以外に設定された場合
撮像制御部102aは、ユーザにより撮像感度をISO100以外に設定する操作が行われたことを示す操作信号が操作部106から出力されたか否かを判定する。操作部106から操作信号が出力された場合、撮像制御部102aは撮像素子101の撮像感度をユーザの設定操作に応じた撮像感度に設定する。そして、撮像制御部102aは、撮像素子101に対して電荷の蓄積量を第1の蓄積量Th1に設定することを指示する第1指示信号を出力する。すなわち、撮像制御部102aは、露光時間の長短に関わらず、光電変換部151の電荷蓄積量を第1の蓄積量Th1に設定させる。その結果、撮像素子101を構成する全ての画素150が有する第1排出部152は、
図3(b)に示すように設定される。最低撮像感度以外の場合には光電変換部151に蓄積された電荷を後段の処理で増幅するので、第1の蓄積量Th1に設定することにより、光電変換部151の電荷の蓄積量を少なくして、ブルーミング現象を抑制しつつダイナミックレンジを確保する。
【0024】
以上で説明した第1の実施の形態によるデジタルカメラ1によれば、以下の作用効果が得られる。
撮像素子101は、入射光量に応じて電荷を生成し、生成した電荷を蓄積する光電変換部151を有する。第1排出部152は、蓄積中の電荷が所定の蓄積量を超えた場合に、光電変換部151に蓄積された電荷を排出する。制御回路102は、撮像素子101の露光時間を設定し、操作部106の操作に応じて、撮像素子101の撮像感度を設定する。撮像制御部102aは、光電変換部151の電荷蓄積量を、露光時間と撮像感度とに基づいて切り替える。すなわち、撮像制御部102aは、撮像感度が最低感度に設定されかつ露光時間が長秒時に設定された場合には、または撮像感度が最低感度以外に設定された場合には、光電変換部151の電荷蓄積量を第1の蓄積量Th1に設定するようにした。さらに、撮像制御部102aは、撮像感度が最低感度に設定されかつ露光時間が短秒時に設定された場合には、光電変換部151の電荷蓄積量を第1の蓄積量Th1よりも大きい第2の蓄積量Th2に設定するようにした。したがって、露光時間が長秒時であっても光電変換部151の電荷蓄積量が低く設定されるので、蓄積した電荷が隣接画素へ漏れ出すブルーミング現象を抑制し、画像に巨大な白点が出現することによる画質の劣化を抑えることができる。また、露光時間が短秒時の場合には、光電変換部151の電荷蓄積量が高く設定されるので、ブルーミング現象を抑制するとともに、光電変換部151のダイナミックレンジを確保できる。
【0025】
−第2の実施の形態−
図5を参照して、本発明の第2の実施の形態によるデジタルカメラ1を説明する。以下の説明では、第1の実施の形態と同じ構成要素には同じ符号を付して相違点を主に説明する。特に説明しない点については、第1の実施の形態と同じである。本実施の形態では、光電変換部に過剰に蓄積された電荷の排出方法としてFD部へ間欠的に排出する方式を用いる点で、垂直オーバードレイン方式を用いる第1の実施の形態とは異なる。
【0026】
図5を参照しながら、第2の実施の形態の撮像素子101について説明する。なお、
図5は、説明の都合上、撮像素子101の構造を模式化して概念的に示すものである。撮像素子101は、たとえばCMOS等により構成される複数の光電変換部(画素)を有し、光電変換により生成された電荷の一部を排出しながら電荷を蓄積するFDへ間欠的に排出する方式により、電荷蓄積量が制御可能に構成されている。
図5は、撮像素子101を構成する複数の画素のうちの一部の画素の断面構造を模式的に示す図である。
図5に示すように、画素150は、基板上に形成された光電変換部151と、第2排出部153とを有している。
【0027】
第2排出部153は、光電変換部151による電荷の蓄積を行いながら、蓄積された電荷のうちの一部の電荷をFD部へ排出することにより、所定の蓄積量を超えて過剰に電荷が蓄積されること防止している。すなわち、
図5(a)に示すように、単位時間当たり所定の排出量で蓄積された電荷が排出される。本実施の形態においては、第2排出部153は、撮像制御部102aの制御に従って、第1の排出量と第2の排出量との間で切替可能に構成されている。
図5(b)は第1の排出量Ex1が設定された場合を示し、
図5(c)は第2の蓄積量Ex2が設定された場合を示している。この場合、第1の排出量Ex1は第2の排出量Ex2よりも、単位時間当たりの排出量が大きな値となるように設定される。すなわち、第2の排出量Ex2が設定された場合には、第1の排出量Ex1が設定された場合よりも、光電変換部151に蓄積される電荷の量が多くなる。なお、
図5(b)、
図5(c)においては、第2排出部153の太さを変えて描くことにより、第1の排出量Ex1が第2の排出量Ex2よりも大きな値であることを模式的に示している。
【0028】
上述した第1の排出量Ex1と第2の排出量Ex2とは、予め、試験や実験等の結果を用いて、光電変換部151の露光時間、すなわちシャッタ秒時と撮像感度と基づいて決定される。第1の排出量Ex1は、たとえば撮像感度がデジタルカメラ1の取りうる最低感度(ISO100)、かつシャッタ秒時が長秒時(1秒以上)に設定された場合に、光電変換部151に蓄積された電荷が隣接する画素150に漏れ出さない値として決定される。換言すると、第1の排出量Ex1は、光電変換部151の電荷蓄積量が第1の蓄積量Th1を超えないように決定される。第2の排出量Ex2は、撮像感度がISO100、かつシャッタ秒時が短秒時(1秒未満)に設定された場合に、光電変換部151に蓄積された電荷が隣接する画素150に漏れ出さない値として決定される。換言すると、第2の排出量Ex2は、光電変換部151の電荷蓄積量が第2の蓄積量Th2を超えないように決定される。
【0029】
撮像制御部102aは、撮像感度が最低感度に設定され、かつシャッタ秒時が長秒時に設定された場合、撮像素子101に対して電荷の排出量を第1の排出量Ex1に設定することを指示する第3指示信号を出力する。撮像素子101は、撮像制御部102aから第3指示信号を入力すると、第2排出部153の排出量を第1の排出量Ex1に設定する。その結果、撮像素子101を構成する全ての画素150が有する第2排出部153は、
図5(b)に示すように設定される。
【0030】
撮像制御部102aは、撮像感度が最低感度に設定され、かつシャッタ秒時が短秒時に設定された場合、撮像素子101に対して電荷の排出量を第2の排出量Ex2に設定することを指示する第4指示信号を出力する。撮像素子101は、撮像制御部102aから第4指示信号を入力すると、第2排出部153の排出量を第2の排出量Ex2に設定する。その結果、撮像素子101を構成する全ての画素150が有する第2排出部153は、
図5(c)に示すように設定される。
【0031】
撮像制御部102aは、撮像感度が最低感度のISO100以外に設定する操作が行われた場合、撮像素子101に対して電荷の排出量を第1の排出量Ex11に設定することを指示する第3指示信号を出力する。すなわち、撮像制御部102aは、露光時間の長短に関わらず、第2排出部153の電荷蓄積量を第1の排出量Ex1に設定させる。その結果、撮像素子101を構成する全ての画素150が有する第2排出部153は、
図5(b)に示すように設定される。
【0032】
以上で説明した第2の実施の形態によるデジタルカメラ1においても、第1の実施の形態によるデジタルカメラ1により得られた作用効果と同様の作用効果が得られる。すなわち、露光時間が長秒時であってもブルーミング現象を抑制し、画像に巨大な白点が出現することによる画質の劣化を抑えることができる。また、露光時間が短秒時の場合には、ブルーミング現象を抑制するとともに、光電変換部151のダイナミックレンジを確保できる。
【0033】
以上で説明した第1および第2の実施の形態のデジタルカメラ1を以下のように変形できる。
(1)撮像制御部102aは、露光時間のみに応じて第1の蓄積量Th1と第2の蓄積量Th2とを切り替えてもよい。すなわち、撮像制御部102aは、撮像感度に関わらず、シャッタ秒時が長秒時の場合には第1の蓄積量Th1に、シャッタ秒時が短秒時の場合には第2の蓄積量Th2に設定すればよい。
【0034】
(2)撮像素子101の温度にも応じて第1の蓄積量Th1と第2の蓄積量Th2とを切り替えてもよい。この場合、図示しない温度センサにより検出された撮像素子101の温度が所定の温度よりも高温の場合には、撮像制御部102aは第1の蓄積量Th1に設定し、所定の温度未満の場合には、第2の蓄積量Th2に設定すればよい。この結果、撮像素子101の温度が高温の場合には、光電変換部151の電荷蓄積量を低くしてブルーミング現象の発生を抑制できる。
【0035】
(3)撮像制御部102aが光電変換部151の電荷蓄積量を第1の蓄積量Th1と第2の蓄積量Th2との間で切り替えるものに代えて、より複数の蓄積量との間で切替を行ってもよい。たとえば、露光時間が中秒時となるように算出された場合には、撮像制御部102aは、第1の蓄積量Th1よりも大きく第2の蓄積量Th2よりも小さい第3の蓄積量に設定してもよい。
【0036】
また、本発明の特徴を損なわない限り、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の形態についても、本発明の範囲内に含まれる。説明に用いた実施の形態および変形例は、それぞれを適宜組合わせて構成しても構わない。