【実施例】
【0034】
以下、実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、もちろん本発明はこれらに限定されるものではない。
【0035】
(実施例1)
GaP基板および高純度ガリウム(Ga)を、Ga溜め用石英ボート付きのエピタキシャル・リアクター内の所定の場所に、それぞれ設置した。GaP基板はテルル(Te)が3〜10×10
17/cm
3添加され、直径50mmの円形で、(100)面から〔011〕方向に10°偏位した面をもつGaP基板を用い、これらを同時にサセプター上に配置した。次に、窒素(N
2)ガスを該リアクター内に20分間導入し、空気を十分置換除去した後、キャリヤ・ガスとして高純度水素(H
2)を6500sccm導入し、N2の流れを止め昇温工程に入った。上記Ga入り石英ボート設置部分およびGaP単結晶基板設置部分の温度が、それぞれ800℃および930℃一定に保持されていることを確認した後、ピーク発光波長585±10nmのGaAs
1−x0P
x0エピタキシャル膜の気相成長を開始した。
【0036】
最初、濃度50ppmに水素ガスで希釈したn型不純物となる硫黄を導入するための硫化水素ガス(H
2S)を328sccm導入した。また周期律表第III族元素成分原料としてのGaClを118sccm生成させるため、高純度塩化水素ガス(HCl)を上記石英ボート中のGa溜に118sccm吹き込み、Ga溜上表面より吹き出させた。他方、周期律表第V族元素成分として、高純度りん化水素ガス(PH
3)を49sccm導入しながら、45分間にわたり第1層となるGaPバッファ層をGaP単結晶基板上に成長させた。
【0037】
次に、HClの導入量を変えることなく、高純度ひ化水素ガス(AsH
3)の導入を開始し、導入量を4.7sccmまで徐々に増加させ、また同時にH
2Sの導入量を191sccmに、PH
3の導入量を47sccmに減少させながら、42分間にわたり第2層となるGaAs
1−xP
xエピタキシャル層(n型層−組成変化層)を第1のGaPバッファ層上に成長させた。
【0038】
次に、HCl、AsH
3、PH
3の導入量を変えることなく、H
2Sの導入量を191sccmから65sccmまで徐々に減少させながら、32分間にわたり第3層となるGaAs
1−xP
xエピタキシャル層(n型層−組成一定層)を第2のGaAs
1−xP
xエピタキシャル層上に成長させた。
【0039】
次の30分間は、HCl、PH
3、AsH
3の導入量を変えることなく、これに窒素アイソ・エレクトロニック・トラップ添加用として161sccmまで導入量を漸増させて高純度アンモニアガス(NH
3)を窒素ドープ用ガスとして導入して、また同時にH2Sガスの導入を0sccmにして、第4層となるGaAs
1−xP
xエピタキシャル層(n型層−窒素ドープ層)を第3のGaAs
1−xP
xエピタキシャル層上に成長させた。このときの窒素ドープ量は3×10
18/cm
3であった。
【0040】
そして、次の100分間はHCl、PH
3、AsH
3の導入量を変えることなく、H
2ガスによって0.4%に希釈したDMZnガスをp型ドーパントドープ用ガスとして1.7sccm導入して、またNH
3ガスの導入量を0sccmまで徐々に減少させながら、第5層となるp型のGaAs
1−xP
xエピタキシャル層(第1p型層)を第4のGaAs
1−xP
xエピタキシャル層上に成長させた。
【0041】
そして、最後の30分間はHCl、PH
3、AsH
3の導入量を変えることなく、DMZnガスの導入量を200sccmに徐々に増加させながら、第6層となるp型のGaAs
1−xP
xエピタキシャル層(第2p型層)を第5のGaAs
1−xP
xエピタキシャル層上に成長させ、気相成長を終了し、エピタキシャルウェーハを作製した。
【0042】
作製したエピタキシャルウェーハの第1p型層、第2p型層のキャリア濃度、膜厚はそれぞれ2.0×10
17/cm
3、15μm、1.0×10
19/cm
3、4μmであった。また窒素濃度は第1p型層が3.0×10
18/cm
3〜0/cm
3、第2p型層が0/cm
3であった。
【0043】
このように作製したエピタキシャルウェーハの発光輝度および発光時間に対する発光輝度の残光率(発光開始時の発光輝度を1としたときの発光輝度の割合)を評価するため、以下のような手順の評価を行った。
【0044】
作製したエピタキシャルウェーハを取り出し、裏面ラップを行った。その後、ウェーハ裏面にn型電極を形成し、表面のエピ層にp型電極を形成した。そして、300μmピッチでChipサイズにカットした。その後、ウェーハの外周側から5mm付近(オリエンテーションフラット部(OF部)及びOF部の反対側の部分(反OF部))と、ウェーハ中心部の3箇所から2個ずつ計6個Chipを取り出した。取り出したChipからLEDランプを作製した。その後、室温、通常湿度状態で作製したLEDランプに直流電流20mAを流した時の全方位光出力(発光輝度)を積分球にて測定した。また、残光率の測定は、全方位光出力の測定が終了したLEDランプに室温、通常湿度状態にて直流電流95mAを流し、300時間経過後、直流電流20mAを流したときの全方位光出力を積分球にて測定し、先の作製直後の時の値と比較することによって行った。
【0045】
(比較例1)
実施例1において、第1p型層の形成を、キャリア濃度、膜厚はそれぞれ2.0×10
17/cm
3、6μmに設定した以外は実施例1と同様の条件でエピタキシャルウェーハの作製を行い、同様の評価を行った。
【0046】
発光輝度は、比較例1と実施例1とでほぼ同じであったが、6個のChipの平均の残光率は、比較例1が76.8%に対し、実施例1は、90.3%と大幅に改善できることが分かった。
【0047】
(他の実施例、比較例)
第1p型層のキャリア濃度を2.0×10
17/cm
3に固定し、第1p型層の厚さを4μm、6μm、10μm、15μm、20μmに変えたときに、残光率がどのようになるかを調べた。なお、第1p型層以外は実施例1と同様の条件でエピタキシャルウェーハの作製を行った。表1はその結果を示している。
【表1】
【0048】
表1で示すように、第1p型層の厚さが10μm、15μm、20μmのときには85%以上の高い残光率となる。これに対し、第1p型層の厚さが4μm、6μmのときには、第1p型層のキャリア濃度が好適範囲内の2.0×10
17/cm
3であるのにもかかわらず、残光率が80%を下回ってしまう。
【0049】
さらに、第1p型層の厚さを15μmに固定し、第1p型層のキャリア濃度を2.0×10
17/cm
3、5.0×10
17/cm
3、10.0×10
17/cm
3、30.0×10
17/cm
3に変えたときに、残光率がどのようになるかを調べた。なお、第1p型層以外は実施例1と同様の条件でエピタキシャルウェーハの作製を行った。表2はその結果を示している。
【表2】
【0050】
表2で示すように、第1p型層のキャリア能濃度が2.0×10
17/cm
3、5.0×10
17/cm
3のときには85%以上の高い残光率となる。これに対し、第1p型層のキャリア濃度は10.0×10
17/cm
3、30.0×10
17/cm
3のときには、第1p型層の厚さが好適範囲内の15μmであるのにもかかわらず、残光率が80%を下回ってしまう。
【0051】
図3は上記実験結果のグラフであり、具体的には、第1p型層のキャリア濃度及び厚さを変えたときの、各キャリア濃度ごとに厚さと残光率の関係をプロットしたグラフである。なお、第1p型層以外の条件は実施例1と同様である。
図3に示すように、残光率が85%を超えるときの第1p型層の条件は、
図3の破線で囲まれた領域50の条件、つまりキャリア濃度が2.0×10
17/cm
3、5.0×10
17/cm
3で、かつ厚さが10μm、15μm、20μmの条件である。これを一般化すると、第1p型層のキャリア濃度が2〜5×10
17cm
―3であって、かつ厚さが10〜20μmのときに、85%を超えるような高い残光率になる。なお、表1、表2、
図3の残光率は、6個のChipの残光率の平均値である。
【0052】
また、上記表1で示すように、厚さが15μmのときに特に高い残光率(表1では90%を超えている)となることから、10〜20μmの範囲の中でも特に15μm付近の範囲、具体的には13μm〜17μmとするのが好ましい。また、上記表2で示すように、第1p型層のキャリア濃度が2.0×10
17/cm
3のときに特に高い残光率(表2では90%を超えている)となることから、2〜5×10
17cm
―3の範囲の中でも特に2.0×10
17/cm
3付近の範囲、具体的には2.0〜3.0×10
17/cm
3とするのが好ましい。
【0053】
また、第1p型層のキャリア濃度2〜5×10
17cm
―3と第2p型層のキャリア濃度1.0×10
19/cm
3の比をとると、第2p型層のキャリア濃度は第1p型層のキャリア濃度の20〜50倍となる。よって、第2p型層のキャリア濃度は第1p型層のキャリア濃度よりも10〜100倍(20〜50倍を少し拡張した範囲)、好ましくは20〜50倍とするのが好ましい。
【0054】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。例えば、上記実施形態では、p型層、n型層としてGaAsPの例を説明したが、GaPでp型層、n型層を形成しても良い。