特許第5862736号(P5862736)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5862736電子デバイス用基板、その製造方法、これを用いた電子デバイス、その製造方法及び有機LED素子用基板
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5862736
(24)【登録日】2016年1月8日
(45)【発行日】2016年2月16日
(54)【発明の名称】電子デバイス用基板、その製造方法、これを用いた電子デバイス、その製造方法及び有機LED素子用基板
(51)【国際特許分類】
   H05B 33/02 20060101AFI20160202BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20160202BHJP
   H05B 33/26 20060101ALI20160202BHJP
   H05B 33/22 20060101ALI20160202BHJP
   H05B 33/10 20060101ALI20160202BHJP
【FI】
   H05B33/02
   H05B33/14 A
   H05B33/26 Z
   H05B33/22 Z
   H05B33/10
【請求項の数】8
【全頁数】53
(21)【出願番号】特願2014-185637(P2014-185637)
(22)【出願日】2014年9月11日
(62)【分割の表示】特願2010-532893(P2010-532893)の分割
【原出願日】2009年10月2日
(65)【公開番号】特開2015-8159(P2015-8159A)
(43)【公開日】2015年1月15日
【審査請求日】2014年9月11日
(31)【優先権主張番号】特願2008-259948(P2008-259948)
(32)【優先日】2008年10月6日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】旭硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100090343
【弁理士】
【氏名又は名称】濱田 百合子
(74)【代理人】
【識別番号】100192474
【弁理士】
【氏名又は名称】北島 健次
(74)【代理人】
【識別番号】100105474
【弁理士】
【氏名又は名称】本多 弘徳
(72)【発明者】
【氏名】中村 伸宏
(72)【発明者】
【氏名】青木 由美子
(72)【発明者】
【氏名】和田 直哉
【審査官】 素川 慎司
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第97/034447(WO,A1)
【文献】 特開2006−222028(JP,A)
【文献】 特開2004−296438(JP,A)
【文献】 特開2006−221976(JP,A)
【文献】 特開2007−066886(JP,A)
【文献】 特開2007−080579(JP,A)
【文献】 特開2008−146026(JP,A)
【文献】 特表2004−513483(JP,A)
【文献】 特表2004−513484(JP,A)
【文献】 特表2006−524419(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 51/50
H05B 33/02
H05B 33/10
H05B 33/22
H05B 33/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
相対向する第1および第2の主面を具備したガラス基板の前記第1の主面側に電極配線が形成される電子デバイス用基板であって、
前記ガラス基板の前記第1の主面上に形成された補助配線パターンと、
前記補助配線パターンを含み前記第1の主面上を覆うように、前記ガラス基板表面に形成された透光性のガラス層とを具備し、
前記補助配線パターン上の前記ガラス層の一部に前記補助配線パターンを露呈するスルーホールが形成され、
前記ガラス層は、透過する光の少なくとも1波長に対して第1の屈折率を有するベース材と、前記ベース材中に分散された、前記ベース材と異なる第2の屈折率を有する散乱物質とを具備したガラスからなる散乱性のガラス層であり、
前記電子デバイス用基板は更に、前記ガラス層上に形成され、前記第1の屈折率と同じ若しくはより低い第3の屈折率を有する透光性電極を具備し、
前記散乱物質の前記ガラス層内の密度分布が、前記ガラス層の前記透光性電極側の表層からの距離0.5μmの位置から前記透光性電極にむかって、小さくなっていることを特徴とする電子デバイス用基板。
【請求項2】
請求項1に記載の電子デバイス用基板であって、前記補助配線パターンが、縦横に配列された格子状パターンである電子デバイス用基板。
【請求項3】
ガラス基板と、
前記ガラス基板上に設けられる導電性配線と、
ガラスからなり、第1面と前記第1面に対向する第2面とを貫通する複数の貫通孔を有し、前記第2面が前記ガラス基板及び前記導電性配線に対面するように前記ガラス基板及び前記導電性配線上に形成される散乱層と、
前記散乱層の前記第1面上に形成される電極とを備える電子デバイス用基板であって、
前記散乱層は、透過する光の少なくとも1波長に対して第1の屈折率を有するベース材と、前記ベース材中に分散された、前記ベース材と異なる第2の屈折率を有する散乱物質とを具備し、
前記電子デバイス用基板は更に、前記散乱層上に形成され、前記第1の屈折率と同じ若しくはより低い第3の屈折率を有する透光性電極を具備し、
前記散乱物質の前記散乱層内の密度分布が、前記散乱層の前記透光性電極側の表層からの距離0.5μmの位置から前記透光性電極にむかって、小さくなっていることを特徴とする電子デバイス用基板。
【請求項4】
ガラス基板の第1の主面上に補助配線パターンを形成する工程と、
前記補助配線パターンを含み前記第1の主面上を覆うように、前記ガラス基板表面にガラス層を形成する工程と、
前記補助配線パターン上の一部のガラス層を除去して前記補助配線パターンを露呈してスルーホールを形成する工程とを含み、
前記補助配線パターンの一部が露呈したスルーホールを有するガラス層を有する電子デバイス用基板を製造し、
前記ガラス層は、透過する光の少なくとも1波長に対して第1の屈折率を有するベース材と、前記ベース材中に分散された、前記ベース材と異なる第2の屈折率を有する散乱物質とを具備したガラスからなる散乱性のガラス層であり、
前記ガラス層上に、前記第1の屈折率と同じ若しくはより低い第3の屈折率を有する透光性電極を形成する工程を更に具備し、
前記散乱物質の前記ガラス層内の密度分布が、前記ガラス層の前記透光性電極側の表層からの距離0.5μmの位置から前記透光性電極にむかって、小さくなっていることを特徴とする電子デバイス用基板の製造方法。
【請求項5】
ガラス基板と、
前記ガラス基板の第1の主面上に形成された補助配線パターンと、
スルーホールを構成する部分を除き前記補助配線パターンを含み前記第1の主面上を覆うように形成された透光性のガラス層とを具備してなる電子デバイス用基板と、
前記ガラス層上に形成された機能素子とを具備した電子デバイスであって、
前記機能素子が、前記ガラス層の一部に形成されたスルーホールを介して前記補助配線パターンに導電接続され、
前記ガラス層は、透過する光の少なくとも1波長に対して第1の屈折率を有するベース材と、前記ベース材中に分散された、前記ベース材と異なる第2の屈折率を有する散乱物質とを具備したガラスからなる散乱性のガラス層であり、
前記電子デバイスは更に、前記ガラス層上に形成され、前記第1の屈折率と同じ若しくはより低い第3の屈折率を有する透光性電極を具備し、
前記散乱物質の前記ガラス層内の密度分布が、前記ガラス層の前記透光性電極側の表層からの距離0.5μmの位置から前記透光性電極にむかって、小さくなっていることを特徴とする電子デバイス。
【請求項6】
ガラス基板と、
前記ガラス基板上に設けられる導電性配線と、
ガラスからなり、第1面と前記第1面に対向する第2面とを貫通する複数の貫通孔を有し、前記第2面が前記ガラス基板及び前記導電性配線に対面するように前記ガラス基板及び前記導電性配線上に形成される散乱層と、
前記散乱層の前記第1面上に形成される電極とを備える有機LED用基板であって、
前記散乱層は、透過する光の少なくとも1波長に対して第1の屈折率を有するベース材と、前記ベース材中に分散された、前記ベース材と異なる第2の屈折率を有する散乱物質とを具備し、
前記有機LED用基板は更に、前記散乱層上に形成され、前記第1の屈折率と同じ若しくはより低い第3の屈折率を有する透光性電極を具備し、
前記散乱物質の前記散乱層内の密度分布が、前記散乱層の前記透光性電極側の表層からの距離0.5μmの位置から前記透光性電極にむかって、小さくなっていることを特徴とする有機LED用基板。
【請求項7】
前記散乱層は、Pを必須成分として含有しNb、Bi、TiO、WO、の一成分以上を含有するガラス、B、ZnOおよびLaを必須成分として含有しNb、ZrO、Ta、WOの一成分以上を含有するガラス、SiOを必須成分として含有しNb、TiOの一成分以上を含有するガラス及びBiを主成分として含有しネットワーク形成成分としてSiO及びBを含有するガラスからなるグループのうちいずれか一つであることを特徴とする請求項6に記載の有機LED用基板。
【請求項8】
ガラス基板の第1の主面上に補助配線パターンを形成する工程と、
前記補助配線パターンを含み前記第1の主面上を覆うように、前記ガラス基板表面にガラス層を形成する工程と、
前記補助配線パターン上の一部のガラス層を除去して前記補助配線パターンを露呈してスルーホールを形成する工程と、
前記ガラス層上に機能素子を形成する工程と、
前記機能素子と前記補助配線パターンとを電気的に接続する工程とを備え、
前記ガラス層は、透過する光の少なくとも1波長に対して第1の屈折率を有するベース材と、前記ベース材中に分散された、前記ベース材と異なる第2の屈折率を有する散乱物質とを具備したガラスからなる散乱性のガラス層であり、
前記ガラス層上に、前記第1の屈折率と同じ若しくはより低い第3の屈折率を有する透光性電極を形成する工程を更に具備し、
前記散乱物質の前記ガラス層内の密度分布が、前記ガラス層の前記透光性電極側の表層からの距離0.5μmの位置から前記透光性電極にむかって、小さくなっていることを特徴とする電子デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子デバイス用基板、その製造方法、これを用いた電子デバイスおよびその製造方法に係り、特に、有機LED(Organic Light Emitting Diode)などの電子デバイス用の基板に関する。
【背景技術】
【0002】
有機LED素子は、有機層を電極間に挟み、電極間に電圧を印加して、ホール、電子を注入し、有機層内で再結合させて、発光分子が励起状態から基底状態に至る過程で発生する光を素子外部へ取り出している。
一般的に、有機層で生成された光が電極へと伝わりガラス基板との界面に到達する。しかし、電極とガラス基板との屈折率差が大きいため、電極を伝わった光がガラス基板で反射され、再び電極・有機層へ戻るという現象が生じる。そのため、有機LED素子の外部に取り出せる光の量は、発光光の20%足らずになっているのが現状である。
そこで、基板の片面に光散乱層を設け、光取り出し効率を向上させることを提案している文献がある(特許文献1)。
また、ガラス基板とガラス層との間に、電極を設けることを提案している文献がある(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】日本国特許第2931211号公報
【特許文献2】日本国特開平08−92551号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、いずれの文献も大面積化という点については何ら開示及び示唆がない。
本発明は、光取り出し効率が高く、かつ、大面積化に対応した基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで本発明は、相対向する第1および第2の主面を具備したガラス基板の前記第1の主面側に電極配線が形成される電子デバイス用基板であって、前記ガラス基板の前記第1の主面上に形成された補助配線パターンと、前記補助配線パターンを含み前記第1の主面上を覆うように、前記ガラス基板表面に形成された透光性のガラス層とを具備し、前記補助配線パターン上の前記ガラス層の一部に前記補助配線パターンを露呈するスルーホールが形成されたことを特徴とする。
この構成によれば、スルーホールから露呈する接続用領域を除く、補助配線パターン全体をガラス層で封じ込めているため、補助配線パターンの劣化のおそれがなく、安定でかつ長寿命の補助配線パターンを提供することができる。また、酸化物、カルコゲン物、ハロゲン化物あるいはこれらの混合物などからなるガラス原料を塗布し焼成することによって得られたガラス層の表面は平滑であり、この上層に形成される電極配線をはじめとする機能層の膜厚を安定して均一なものとすることができる。ここでガラスとは、ガラス原料を加熱により溶融または軟化させたものを冷却して得られる非晶質無機物をいうものとする。
【0006】
また、本発明は、上記電子デバイス用基板において、前記スルーホール内に導電性部材が充填され、前記ガラス層表面と前記導電性部材の表面が略同一面を構成するものを含む。
この構成によれば、スルーホールの領域も含めて表面の平坦化を図ることができるため、上層に形成される機能層のさらなる均一化をはかることが可能となる。
【0007】
また、本発明は、上記電子デバイス用基板において、前記ガラス層は、透過する光の少なくとも1波長に対して第1の屈折率を有するベース材と、前記ベース材中に分散された、前記ベース材と異なる第2の屈折率を有する散乱物質とを具備したガラスからなる散乱性のガラス層であり、前記散乱性のガラス層上に形成され、前記第1の屈折率と同じ若しくはより低い第3の屈折率を有する透光性電極とを具備している。
さらに、望ましくは、上記構成/に加えて、前記散乱物質の前記散乱性のガラス層内分布が、前記散乱性のガラス層の前記透光性電極側の表層からの距離0.5μmの位置から前記透光性電極にむかって、小さくなっているものを含む。
この構成によれば、光の取り出し効率の向上を図ることができる。
【0008】
また、本発明は、上記電子デバイス用基板において、前記散乱性のガラス層の前記透光性電極側の表面からの距離x(x≦0.2μm)における散乱物質の密度ρが、ガラス層中心部における前記散乱物質の密度ρに対し、ρ>ρを満たすものを含む。
この構成によれば、散乱性を有しながらも表面が平滑で、この基板上に形成される素子の信頼性の向上を図ることができる。
【0009】
また、本発明は、上記電子デバイス用基板において、前記ガラス層表面の表面粗さRaが30nm以下であるものを含む。
【0010】
また、本発明は、上記電子デバイス用基板において、前記ガラス層中における前記散乱物質の含有率は少なくとも1vol%であるものを含む。
【0011】
また、本発明は、上記電子デバイス用基板において、前記散乱物質は気泡であるものを含む。
【0012】
また、本発明は、上記電子デバイス用基板において、前記散乱物質は前記ベース層とは異なる組成をもつ材料粒子であるものを含む。
【0013】
また、本発明は、上記電子デバイス用基板において、前記散乱物質は前記ベース層を構成するガラスの析出結晶であるものを含む。
【0014】
また、本発明は、上記電子デバイス用基板において、前記散乱物質の前記ガラス層1mm当たりの数は、少なくとも1×10個であるものを含む。
【0015】
また、本発明は、上記電子デバイス用基板において、前記散乱物質のうち、最大長さが5μm以上である散乱物質の割合が15vol%以下であるものを含む。
【0016】
また、本発明は、上記電子デバイス用基板において、前記ガラス層は、前記ガラス基板上に所望のパターンを構成するように選択的に形成されたものを含む。
【0017】
また、本発明は、上記電子デバイス用基板において、波長λ(430nm<λ<650nm)のうち少なくとも一つの波長における前記第1の屈折率は1.8以上であるものを含む。
【0018】
また、本発明は、上記電子デバイス用基板において、前記ガラス層の、100℃から400℃における平均熱膨張係数が、70×10−7(℃−1)から95×10−7(℃−1)であり、且つガラス転移温度が、450℃から550℃であるものを含む。
【0019】
また、本発明は、上記電子デバイス用基板において、前記ガラス層が、Pが20〜30mol%、Bが、3〜14mol%、LiOとNaOとKOの合量が10〜20mol%、Biが10〜20mol%、TiOが3〜15mol%、Nbが10〜20mol%、WOが5〜15mol%を含む。
【0020】
また、本発明は、上記電子デバイス用基板において、前記補助配線パターンは、厚膜配線パターンであるものを含む。
【0021】
また、本発明は、上記電子デバイス用基板において、前記補助配線パターンは、保護層で被覆され、前記保護層の上層に前記ガラス層が形成されたものを含む。
【0022】
また、本発明は、上記電子デバイス用基板において、前記補助配線パターンは、縦横に配列された格子状パターンであるものを含む。
【0023】
また、本発明は、上記電子デバイス用基板において、前記補助配線パターンは、櫛歯状パターンであるものを含む。
【0024】
また、本発明は、上記電子デバイス用基板において、前記スルーホールは、前記格子状パターンに対し、等間隔で形成された複数の開口で構成されるものを含む。
【0025】
また、本発明は、上記電子デバイス用基板において、前記補助配線パターンは、遮光性パターンであるものを含む。
【0026】
また、本発明は、上記電子デバイス用基板において、前記スルーホールは、前記補助配線パターンから離間するに従い口径が大きくなるテーパ状断面をもつものを含む。
【0027】
また、本発明は、上記電子デバイス用基板において、前記スルーホールは、断面が前記第1の主面に対して垂直であるものを含む。
【0028】
また、本発明は、ガラス基板の第1の主面上に補助配線パターンを形成する工程と、前記補助配線パターンの一部を除いた全面を含み前記第1の主面上を覆うように、前記ガラス基板表面にガラス層を形成する工程とを含み、前記補助配線パターンの一部が露呈したスルーホールを有するガラス層を有する電子デバイス用基板を製造することを特徴とする。
【0029】
また、ガラス基板の第1の主面上に補助配線パターンを形成する工程と、前記補助配線パターンを含み前記第1の主面上を覆うように、前記ガラス基板表面にガラス層を形成する工程と、前記補助配線パターン上の一部のガラス層を除去して前記補助配線パターンを露呈してスルーホールを形成する工程とを含み、前記補助配線パターンの一部が露呈したスルーホールを有するガラス層を有する電子デバイス用基板を製造することを特徴とする。
【0030】
また、本発明は、上記電子デバイス用基板の製造方法において、前記ガラス層表面と前記導電性部材の表面が略同一面を構成するように、前記スルーホール内に導電性部材を充填する工程を含むものを含む。
【0031】
また、本発明は、上記電子デバイス用基板の製造方法において、前記充填する工程後に、表面を研磨する工程を含むものを含む。
【0032】
また、本発明の電子デバイスは、ガラス基板と、前記ガラス基板の第1の主面上に形成された補助配線パターンと、スルーホールを構成する部分を除き前記補助配線パターンを含み前記第1の主面上を覆うように、前記ガラス基板表面に形成されたガラス層とを具備してなる電子デバイス用基板と、前記ガラス層上に形成された機能素子とを具備し、前記機能素子が、前記ガラス層の一部に形成されたスルーホールを介して前記補助配線パターンに導電接続されたことを特徴とするものを含む。
【0033】
また、本発明は、上記電子デバイスにおいて、前記スルーホール内に導電性部材が充填され、前記機能素子と導電接続され、前記ガラス層表面と前記導電性部材の表面が略同一面を構成するものを含む。
【0034】
また、本発明は、上記電子デバイスにおいて、前記補助配線パターンは、縦横に配列された格子状パターンであるものを含む。
【0035】
また、本発明は、上記電子デバイスにおいて、前記補助配線パターンは、遮光性パターンであり、ブラックマトリックスを構成するものを含む。
【0036】
また、本発明は、上記電子デバイスにおいて、前記補助配線パターンは、櫛歯状パターンであるものを含む。
【0037】
また、本発明は、上記電子デバイス用基板において、前記スルーホールは、前記補助配線パターンに沿って等間隔で配列されたものを含む。
【0038】
また、本発明は、上記電子デバイスにおいて、前記ガラス層は、透過する光の少なくとも1波長に対して第1の屈折率を有するベース材と、前記ベース材中に分散された、前記ベース材と異なる第2の屈折率を有する複数の散乱物質とを具備したガラスからなるガラス層であり、前記ガラス層上に形成された前記機能素子が、前記第1の屈折率と同じ若しくはより低い第3の屈折率を有する透光性電極とを具備し、前記透光性電極が前記スルーホール内の導電性部材に導電接続されたものを含む。
さらに、望ましくは、前記散乱物質の前記ガラス層内分布が、前記ガラス層の前記透光性電極側の表層からの距離0.5μmの位置から前記透光性電極にむかって、小さくなっているものを含む。
【0039】
また、本発明は、上記電子デバイスにおいて、前記機能素子が、前記透光性電極上に有機層からなる発光機能を有した層と、前記透光性電極と対向するように形成された第2の電極とを具備した有機LED素子であり、前記第2の電極が、前記スルーホール上を避けて形成されている。すなわち、スルーホール上には存在していないようなパターンに形成されている。
この構成により、平坦でない表面には、第2の電極が形成されておらず、発光領域を形成しないため、電界集中による透光性電極および第2の電極間の短絡を生じるのを防ぐことができる。
【0040】
また、本発明は、上記電子デバイスにおいて、外部取り出し端子が前記スルーホール上に形成されたものを含む。
【0041】
また、本発明は、上記電子デバイスにおいて、前記補助配線パターンは、ストライプ状に形成されており、前記透光性電極が前記補助配線パターンに接続されており、前記透光性電極上に形成された発光機能を有する層と、前記発光機能を有する層上に形成され、前記補助配線パターンとは直交する方向に配列された反射性電極とを具備したものを含む。
【0042】
また、本発明は、上記電子デバイス用基板において、前記補助配線パターンの上層または下層に形成され、前記補助配線パターンよりも幅広の遮光性部材を具備したものを含む。
【0043】
また、本発明は、上記電子デバイス用基板において、前記遮光性部材は、前記補助配線パターンを覆うように形成された保護層であるものを含む。
【0044】
また、本発明は、ガラス基板の第1の主面上に補助配線パターンを形成する工程と、前記補助配線パターンの一部をスルーホール形成用に除いた前記補助配線パターンの全面を含み前記第1の主面上を覆うように、前記ガラス基板表面にスルーホールを設けたガラス層を形成する工程と、前記ガラス層上に、前記ガラス層の一部に形成されたスルーホールを介して前記補助配線パターンに接続するように機能素子を形成する工程とを含むことを特徴とする。
【0045】
また、本発明は、上記電子デバイスの製造方法において、前記スルーホール内に、前記ガラス層表面と略同一面を構成する導電性部材を充填する工程を含み、前記機能素子を形成する工程は、前記導電性部材に当接するように前記機能素子の電極を形成する工程を含む。
【0046】
また、本発明は、相対向する第1および第2の主面を具備したガラス基板の前記第1の主面側に電極配線が形成される電子デバイス用基板であって、前記ガラス基板の前記第1の主面上に形成された補助配線パターンと、前記補助配線パターンを含み前記第1の主面上を覆うように、前記ガラス基板表面に形成された透光性のガラス層とを具備し、前記補助配線パターン上の前記ガラス層の一部に前記補助配線パターンを露呈するスルーホールが形成され、前記ガラス層は、透過する光の少なくとも1波長に対して第1の屈折率を有するベース材と、前記ベース材中に分散された、前記ベース材と異なる第2の屈折率を有する散乱物質とを具備したガラスからなる散乱性のガラス層であり、前記電子デバイス用基板は更に、前記ガラス層上に形成され、前記第1の屈折率と同じ若しくはより低い第3の屈折率を有する透光性電極を具備し、前記散乱物質の前記ガラス層内の密度分布が、前記ガラス層の前記透光性電極側の表層からの距離0.5μmの位置から前記透光性電極にむかって、小さくなっていることを特徴とする電子デバイス用基板を提供する。
【0047】
また、本発明の上記電子デバイス用基板は、上記電子デバイス用基板において、前記補助配線パターンが、縦横に配列された格子状パターンであるものを含む。
【0048】
また、本発明の上記電子デバイス用基板は、ガラス基板と、前記ガラス基板上に設けられる導電性配線と、ガラスからなり、第1面と前記第1面に対向する第2面とを貫通する複数の貫通孔を有し、前記第2面が前記ガラス基板及び前記導電性配線に対面するように前記ガラス基板及び前記導電性配線上に形成される散乱層と、前記散乱層の前記第1面上に形成される電極とを備える電子デバイス用基板であって、前記散乱層は、透過する光の少なくとも1波長に対して第1の屈折率を有するベース材と、前記ベース材中に分散された、前記ベース材と異なる第2の屈折率を有する散乱物質とを具備し、前記電子デバイス用基板は更に、前記散乱層上に形成され、前記第1の屈折率と同じ若しくはより低い第3の屈折率を有する透光性電極を具備し、前記散乱物質の前記散乱層内の密度分布が、前記散乱層の前記透光性電極側の表層からの距離0.5μmの位置から前記透光性電極にむかって、小さくなっていることを特徴とする。
【0049】
また、本発明は、ガラス基板の第1の主面上に補助配線パターンを形成する工程と、前記補助配線パターンを含み前記第1の主面上を覆うように、前記ガラス基板表面にガラス層を形成する工程と、前記補助配線パターン上の一部のガラス層を除去して前記補助配線パターンを露呈してスルーホールを形成する工程とを含み、前記補助配線パターンの一部が露呈したスルーホールを有するガラス層を有する電子デバイス用基板を製造し、前記ガラス層は、透過する光の少なくとも1波長に対して第1の屈折率を有するベース材と、前記ベース材中に分散された、前記ベース材と異なる第2の屈折率を有する散乱物質とを具備したガラスからなる散乱性のガラス層であり、前記ガラス層上に、前記第1の屈折率と同じ若しくはより低い第3の屈折率を有する透光性電極を形成する工程を更に具備し、前記散乱物質の前記ガラス層内の密度分布が、前記ガラス層の前記透光性電極側の表層からの距離0.5μmの位置から前記透光性電極にむかって、小さくなっていることを特徴とする電子デバイス用基板の製造方法を提供する。
【0050】
また、本発明は、ガラス基板と、前記ガラス基板の第1の主面上に形成された補助配線パターンと、スルーホールを構成する部分を除き前記補助配線パターンを含み前記第1の主面上を覆うように形成された透光性のガラス層とを具備してなる電子デバイス用基板と、 前記ガラス層上に形成された機能素子とを具備した電子デバイスであって、前記機能素子が、前記ガラス層の一部に形成されたスルーホールを介して前記補助配線パターンに導電接続され、前記ガラス層は、透過する光の少なくとも1波長に対して第1の屈折率を有するベース材と、前記ベース材中に分散された、前記ベース材と異なる第2の屈折率を有する散乱物質とを具備したガラスからなる散乱性のガラス層であり、前記電子デバイスは更に、前記ガラス層上に形成され、前記第1の屈折率と同じ若しくはより低い第3の屈折率を有する透光性電極を具備し、前記散乱物質の前記ガラス層内の密度分布が、前記ガラス層の前記透光性電極側の表層からの距離0.5μmの位置から前記透光性電極にむかって、小さくなっていることを特徴とする電子デバイスを提供する。
【0051】
また、本発明は、ガラス基板と、前記ガラス基板上に設けられる導電性配線と、ガラスからなり、第1面と前記第1面に対向する第2面とを貫通する複数の貫通孔を有し、前記第2面が前記ガラス基板及び前記導電性配線に対面するように前記ガラス基板及び前記導電性配線上に形成される散乱層と、前記散乱層の前記第1面上に形成される電極とを備える有機LED用基板であって、前記散乱層は、透過する光の少なくとも1波長に対して第1の屈折率を有するベース材と、前記ベース材中に分散された、前記ベース材と異なる第2の屈折率を有する散乱物質とを具備し、前記有機LED用基板は更に、前記散乱層上に形成され、前記第1の屈折率と同じ若しくはより低い第3の屈折率を有する透光性電極を具備し、前記散乱物質の前記散乱層内の密度分布が、前記散乱層の前記透光性電極側の表層からの距離0.5μmの位置から前記透光性電極にむかって、小さくなっていることを特徴とする有機LED用基板を提供する。
【0052】
また、本発明の上記有機LED用基板は、上記有機LED用基板において、前記散乱層は、Pを必須成分として含有しNb、Bi、TiO、WO、の一成分以上を含有するガラス、B、ZnOおよびLaを必須成分として含有しNb、ZrO、Ta、WOの一成分以上を含有するガラス、SiOを必須成分として含有しNb、TiOの一成分以上を含有するガラス及びBiを主成分として含有しネットワーク形成成分としてSiO及びBを含有するガラスからなるグループのうちいずれか一つであるものを含む。
【0053】
また、本発明は、ガラス基板の第1の主面上に補助配線パターンを形成する工程と、前記補助配線パターンを含み前記第1の主面上を覆うように、前記ガラス基板表面にガラス層を形成する工程と、前記補助配線パターン上の一部のガラス層を除去して前記補助配線パターンを露呈してスルーホールを形成する工程と、前記ガラス層上に機能素子を形成する工程と、前記機能素子と前記補助配線パターンとを電気的に接続する工程とを備え、前記ガラス層は、透過する光の少なくとも1波長に対して第1の屈折率を有するベース材と、前記ベース材中に分散された、前記ベース材と異なる第2の屈折率を有する散乱物質とを具備したガラスからなる散乱性のガラス層であり、前記ガラス層上に、前記第1の屈折率と同じ若しくはより低い第3の屈折率を有する透光性電極を形成する工程を更に具備し、 前記散乱物質の前記ガラス層内の密度分布が、前記ガラス層の前記透光性電極側の表層からの距離0.5μmの位置から前記透光性電極にむかって、小さくなっていることを特徴とする電子デバイスの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0054】
本発明によれば、光取り出し効率が高く、かつ、大面積化に対応した基板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
図1】本発明の実施の形態1の電子デバイス用基板および有機LED素子の構造を示す図、(a)は電子デバイス用基板の平面図、(b)は有機LED素子の断面図である。
図2】本発明の実施の形態1の有機LED素子の製造工程図である。
図3】本発明の実施の形態2の電子デバイス用基板および有機LED素子の構造を示す図、(a)は電子デバイス用基板の平面図、(b)は有機LED素子の断面図である。
図4】本発明の実施の形態3の電子デバイス用基板および有機LED素子の構造を示す図、(a)は電子デバイス用基板の平面図、(b)は有機LED素子の断面図である。
図5】本発明の実施の形態3の有機LED素子の製造工程図である。
図6】本発明の実施の形態3の電子デバイス用基板の変形例を示す図である。
図7】本発明の実施の形態4の電子デバイス用基板および有機LED素子の構造を示す図、(a)は電子デバイス用基板の平面図、(b)は有機LED素子の断面図である。
図8】本発明のガラス層の表面にうねりを設けた例の断面説明図、(a)はうねりの状態を示す断面説明図、(b)は、有機LED素子とした状態での断面説明図である。
図9】本発明の実施例1および比較例の電子デバイス用基板を用いて形成した有機LED素子の電圧―電流特性を示す図である。
図10】本発明の実施例1および比較例の電子デバイス用基板を用いて形成した有機LED素子の電流―輝度特性を示す図である。
図11】比較例の有機LED素子の発光輝度と発光色の角度依存性のスペクトルデータを示す図である。
図12】比較例の有機LED素子の発光輝度と発光色の角度依存性のスペクトルデータを示す図である。
図13】本発明の実施例1の有機LED素子の発光輝度と発光色の角度依存性のスペクトルデータを示す図である。
図14】本発明の実施例1の有機LED素子の発光輝度と発光色の角度依存性のスペクトルデータを示す図である。
図15】本発明の実施例1の有機LED素子の発光輝度と発光色の角度依存性の色座標を示す図である。
図16】本発明の実施例1の有機LED素子のガラス層における深さと気泡の数との関係を示す図である。
図17】本発明の実施例2の配線抵抗測定で用いられる配線パターンを示す図である。
図18】本発明の実施例3の配線・ITOのコンタクト抵抗測定で用いられるパッドを示す図である。
図19】本発明の実施例3の配線・ITOのコンタクト抵抗測定で用いられる開口部を有するガラス層パターンを示す図である。
図20】本発明の実施例3の配線・ITOのコンタクト抵抗測定で用いられる配線パターンとガラス層パターンの重ね合わせた状態を示す図である。
図21】本発明の実施例3の配線・ITOのコンタクト抵抗測定で用いられるITOを示す図である。
図22】本発明の実施例4の格子状補助配線付きITOの抵抗測定で用いられる格子状の配線パターンを示す図である。
図23】本発明の実施例4の格子状補助配線付きITOの抵抗測定で用いられる開口部を有するガラス層を示す図である。
図24】本発明の実施例4の格子状補助配線付きITOの抵抗測定で用いられる配線と開口部の位置関係を示す図である。
図25】本発明の実施例4の格子状補助配線付きITOの抵抗測定で用いられる補助配線パターンを示す図である。
図26】本発明の実施例4の格子状補助配線付きITOの抵抗測定における測定点を示す図である。
図27】本発明の実施例4の格子状補助配線付きITOの抵抗測定における補助配線の配置例を示す図である。
図28】本発明の実施例4の格子状補助配線付きITOの抵抗測定における補助配線の配置例の変形例を示す図である。
図29】本発明の実施例4の格子状補助配線付きITOの抵抗測定における補助配線の配置例の変形例を示す図である。
図30】本発明の実施例4の格子状補助配線付きITOの抵抗測定における補助配線の配置例の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0056】
(実施の形態1)
以下、図面を用いて、本発明の実施の形態1の電子デバイス用基板およびこれを用いた有機LED素子について説明する。図1(a)は、本発明の実施の形態の電子デバイス用基板を示す平面図であり、図1(b)はこの電子デバイス用基板上に形成された有機LED素子を示すE−E’面での断面図である。
【0057】
本発明の有機LED素子を形成するための電子デバイス用基板は、図1(a)および図1(b)に示すように、ガラス基板101と、ガラス基板101の第1の主面上に格子状をなすように形成された補助配線パターン(導電性配線)200と、補助配線パターン200を含み前記第1の主面上を覆うように、ガラス基板表面に形成された透光性のガラス層102とを具備し、ガラス層102の一部に補助配線パターン200を露呈するスルーホールHが形成されている。
【0058】
このスルーホールHは、1つの格子を構成する縦横Aの辺上にそれぞれ3個ずつ等間隔で設けられている。各スルーホールHは、ガラス層102に断面テーパ状に形成され、この上に透光性電極103としてのITO層が全面に一体的に設けられている。従って、透光性電極103への通電は、このスルーホールを介して補助配線パターン200から行なわれ、発光領域300を構成し、ガラス基板101側に光を取り出す、ボトムエミッション型の有機LED素子である。この発光領域300は透光性電極103とこの上層に形成される有機層からなる発光機能を有する層110と、さらにこの上層に形成される反射性電極120との重なり合った領域であるが、発光領域300全体がスルーホールHから一定距離内に配置されるため、電圧降下を少なくすることができる。ここでC,Dはそれぞれ、位置を示す。
【0059】
次に、この電子デバイス用基板およびこれを用いた電子デバイスの製造方法について説明する。図2(a)〜(d)は、本発明の第1の製造方法の例を工程別に表す断面図であり、図1(b)に相当する断面である。
まず、ガラス基板101を用意し、必要に応じて表面研磨を行ったのち、銀ペーストを用いてスクリーン印刷により、図2(a)に示すように、たとえば、ペースト膜厚10μm、ライン幅200μmで、10cm×10cmの格子状の銀を主成分とする補助配線パターン200を形成する。
【0060】
この補助配線パターンは、配線材料の比抵抗、膜厚、配線幅、それに接続される機能素子に必要とされる電流値、電子デバイスの大きさ等により、必要な範囲に設定すれば良い。目安としては、補助配線の膜厚は0.5〜30μm、配線幅は0.05〜2mm、補助配線の間隔は2〜50cmであることが好ましい。なお、本実施の態様の製造例では、補助配線の膜厚は0.5〜20μmとしておく方が段差ができにくく望ましい。補助配線の膜厚は比抵抗を低減するためには厚い方がよく、0.5μm以上であるのが望ましいが、30μmを超えると段差被覆性が低下して、実用上は問題が多い。
【0061】
この例では、補助配線のパターンを図1のように格子状としたが、ストライプ状、櫛歯状、ストライプの直線から直交する方向に枝が出ているような形状、抵抗の記号のように折れ線でつながった形状、円弧がつながったような形状等種々の形状が可能である。
【0062】
この後、スクリーン印刷によりスルーホールを形成する部分を除いてガラスペーストを印刷し、スルーホールHを有するガラス層102を形成する。
そして、焼成を行い、図2(b)に示すように、補助配線パターン200をスルーホール付きのガラス層102で被覆した電子デバイス用基板を形成する。なお、外部に取り出される補助配線200の端部の部分にはガラス層102が形成されていなくてもよい。
【0063】
このスルーホールは、この例ではスルーホールの軸に平行な面(基板面に垂直方向方向)の断面が斜めになるテーパ状に形成されているが、断面が垂直になる円筒状や角柱状のスルーホールとしてもよい。ただし、この例のようにこの上に直接電極層を形成する場合には、スルーホールはテーパ状に形成されている方が上に形成する電極と補助配線の導電接続の断線を生じにくいので望ましい。
【0064】
スルーホールは、電圧降下による悪影響がでないように適宜設ければよいが、補助配線が格子状の場合には格子の各辺に最低1箇所設けるものであり、各辺に2か所以上設けることが望ましい。ただし、あまり数を増やすと、表面の凹凸が多くなることもあるので、各辺2〜5程度にすることが望ましい。補助配線がストライプ状の場合には、ストライプの間隔と同じ間隔に1〜5個程度設ければよい。
【0065】
スルーホールの平面での形状は、円形、楕円形、長方形等の形状が使用できるが、補助配線の長手方向に対して開口が大きくなる楕円形や長方形の形状が望ましい。特に、長軸や長辺が短軸や短辺に比して1.5倍以上の楕円形や長方形の形状が望ましい。これは、補助配線の面抵抗<透光性電極の面抵抗から、実質的にはスルーホールの端に電流が多く流れるためである。
【0066】
このガラス層102については、焼成により透光性のガラス層が形成される材料であればよく、これについては後で詳述する。ガラス層の厚みは、基板として完成した時点での補助配線の膜厚の1.1倍〜10倍程度の厚みでよく、2〜200μm程度とされればよい。
【0067】
この後、このスルーホール部分Hおよびガラス層102の上に透光性電極103としてITO膜を全面に形成し、図2(c)に示すように、電極付電子デバイス用基板100を得る。
そして、図2(d)に示すように、正孔注入層、発光層、電子注入層などの発光機能を有する層110をたとえば蒸着法で形成する。
【0068】
有機LED素子の場合、第1の電極と第2の電極との間に、通常、発光機能を有する層すなわち、正孔注入層、発光層、電子注入層を挟持して用いており、ここではこれが機能性素子を構成する。なおこれら発光機能を有する層は、蒸着法などのドライプロセスに限定されることなく、塗布法などのウェットプロセスで形成するものにも適用可能であることはいうまでもない。もちろん本発明はこの5層構造に限定されるものではないし、有機LED素子にも限定されるものではなく、少なくとも基板側に電極を有する機能性素子であればよい。
【0069】
正孔注入層、発光層、電子注入層などは公知の材料や構造が用いられる。第1の電極は透光性電極とされるが、第2の電極は透光性電極でも反射性電極でもよい。
透光性電極は、前記したITOの他に酸化錫や他の材料でも使用できる。反射性電極は、各種金属性の電極が使用できるが、代表的な材料としては、アルミニウム、AgMg合金、Caなどが考えられる。
【0070】
この例のように、スルーホールがテーパ状に形成されている場合には、反射性電極パターンはスルーホール上には形成されないようにすることが反射性電極と補助配線または透光性電極との短絡を防止するためには望ましい。このような反射性電極は、たとえば、マスクを用いてそのようなパターンを形成することが可能である。
【0071】
なお、上記の説明では、補助配線パターンを銀ペーストのスクリーン印刷で形成したが、他の印刷法、ディップ法、メッキ法、蒸着法、スパッタ法などでも形成可能であり、材料としては、Au、Ag、Cu、Al、Cr、Mo、Pt、W、Ni、Ruなどの金属、金属化合物、金属ペーストなどが適用可能である。必要に応じて適宜選択すればよい。
【0072】
ただし、大面積に膜厚の厚い補助配線を生産性良く、低コストで製造するためには、上記したようなスクリーン印刷での製造が適しており、ガラス層を焼成によって形成すると同時に補助配線が形成できるという点からは金属ぺーストの使用が有利である。
【0073】
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2の電子デバイス用基板およびこれを用いた有機LED素子について説明する。図3(a)は、本発明の実施の形態の電子デバイス用基板の平面図であり、図3(b)はこの電子デバイス用基板に形成された有機LED素子を示すF−F’面の断面図である。
【0074】
本発明の有機LED素子を形成するための電子デバイス用基板は、図3(a)および図3(b)に示すように、ガラス基板101と、前記ガラス基板101の前記第1の主面上に櫛歯状をなすように形成された第1の補助配線パターン200aおよび第2の補助配線パターン200bと、前記第1および第2の補助配線パターン200a、200bを含み前記第1の主面の上を覆うように、前記ガラス基板表面に形成された透光性のガラス層102とを具備し、前記ガラス層102の一部に前記第1および第2の補助配線パターン200a,200bを露呈するスルーホールH、Hが形成されている。
【0075】
このスルーホールH、Hは、櫛歯を構成する各辺上にそれぞれ等間隔で設けられている。第1の補助配線パターン200aに接続するための各スルーホールHは、断面テーパ状に形成され、この上に第1の透光性電極103aとしてのITO層が、相対向する櫛歯状パターンに形成されたスルーホールH上を避けて、一体的に設けられている。従って、第1の透光性電極103aへの補助配線パターン200aからの通電は、このスルーホールHを介して行なわれる。また、第2の補助配線パターン103bに接続するための各スルーホールHは、断面テーパ状に形成され、この上に第2の透光性電極103bとしてのITO層が、相対向する櫛歯状パターンに形成されたスルーホールH上を避けて、一体的に設けられている。従って、第2の透光性電極103bへの補助配線パターン200bからの通電は、このスルーホールHを介して行なわれる。
【0076】
この有機LED素子は、発光領域300を構成し、ガラス基板101側および上方に光を取り出す、ボースエミッション型の有機LED素子である。この発光領域300は第1および第2の透光性電極103a、103bとこの間に形成される発光機能を有する層110との重なり合った領域であるが、発光領域300全体がスルーホールH、Hから一定距離内に配置されるため、電圧降下を少なくすることができる。
この構成によっても、電圧降下を低減し、高効率の有機LED素子を提供することができる。また第2の電極が金属を用いた反射性電極の場合でも、発光面積が大きくなった場合は同様に電圧降下による発光ムラが考えられる為、本手法は第2の電極が透光性である場合と同様に有効と考えられる。
製造に際しては、図2(a)乃至(d)に示した方法と同様である。
【0077】
(実施の形態3)
次に、本発明の実施の形態3の電子デバイス用基板およびこれを備えた有機LED素子について説明する。図4(a)は、本発明の実施の形態の電子デバイス用基板の平面図であり、図4(b)はこの電子デバイス用基板に形成された有機LED素子を示すG−G’面の断面図である。
【0078】
本発明の有機LED素子を形成するための電子デバイス用基板は、スルーホールの形状が異なるもので、前記実施の形態1では断面テーパ状であったが、本実施の形態では断面垂直なスルーホールHを形成し、これに導電性ペースト201を充填している。他は前記実施の形態1と同様である。
【0079】
この構成により、スルーホールHの形成に要する面積を低減することができ、占有面積の低減を図ることが可能となる。
【0080】
製造に際しては、スルーホールを有するガラス層パターンを印刷し、仮焼成を行った後、このスルーホールH内に導電性ペースト201を充填し、本焼成を行い、この後表面研磨を行い、段差のない平滑な表面を得る。導電ペースト201を充填して焼成した際にガラス層102の表面との段差がほとんどなければ、表面研磨は不要であるが、段差がある場合には、表面研磨を行う方が電子デバイスにした際に電極間短絡や発光ムラを生じにくく望ましい。ただし、表面研磨を行う場合は表面の荒れに起因する微細な凹凸を生成しないような方法をとる必要がある。
そしてこれを出発材料として表面に電極を形成し電子デバイスを形成する。
【0081】
次に、この電子デバイス用基板およびこれを用いた電子デバイスの製造方法について説明する。
まず、ガラス基板101を用意し、必要に応じて表面研磨を行ったのち、スクリーン印刷により、前記実施の形態1と同様に、ペースト膜厚80μm、ライン幅200μmの銀を主成分とする補助配線パターン200を形成する。
この例では後でガラス層101の表面を研磨するため、補助配線の膜厚は0.5〜5μm程度が望ましい。
【0082】
この後、スクリーン印刷によりガラス基板101の全面にガラスペーストを印刷し、ガラス層102を形成する。
そして、焼成を行い、図5(a)に示すように、補助配線パターンをガラス層で被覆した電子デバイス用基板を形成する。この時点では、補助配線200はガラス層102により覆われている。なお、外部に取り出される補助配線200の端部の部分にはガラス層102が形成されていなくてもよい。
【0083】
この後、図5(b)に示すように、レーザにより、補助配線パターン部分のガラス層102に80μmΦのスルーホールHを形成する。
【0084】
そして、図5(c)に示すように、スルーホールH内に導電ペースト201として銀ペーストを充填し、焼成後に表面を研磨し平滑な表面を得る。
【0085】
この後、この上層に透光性電極103としてITO膜を全面に形成し、図5(d)に示すように、電極付電子デバイス用基板100を得る。
【0086】
そして、図5(e)に示すように、正孔注入層、発光層、電子注入層、第2の電極などの発光機能を有する層110を塗布法等により形成する。
そして最後に、スパッタリング法により第2の電極としてアルミニウム層を形成した後、必要に応じてフォトリソグラフィによりスルーホールH上のアルミニウム層を除去し、発光機能を有する層110上に反射性電極120としてアルミニウム電極を形成する。
また、マスクスパッタなどでスルーホールH上にはアルミニウム層が形成されないようにスパッタしてもよい。スルーホールH上には第2の電極が形成されていない方が電極間の短絡を生じにくいので望ましい。
【0087】
本実施の形態によれば、レーザで形成したスルーホールに導電性部材を充填し、必要に応じて表面研磨によって表面を平滑化した後、この平滑なガラス層の表面に透光性電極を形成することで透光性電極とスルーホールとの電気的接続を行うことができる。
この構成によれば、スルーホールの微細化により発光面積の増大をはかることができるだけでなく、表面をより平滑化することができるため、有機LED素子を形成するとき、平滑な表面全体に一体的に信頼性の高い素子形成を行うことが可能となる。
【0088】
なお、本実施の形態の電子デバイス用配線基板において、スルーホールは規則的に表面の補助配線上に所定の間隔で形成してもよいが、この上に形成するデバイスにあわせて、スルーホールを形成し、このスルーホールの一部に導電部材を形成してもよい。
【0089】
一方、この変形例として図6(a)に示すように、スルーホールHを所定の間隔で形成した補助配線付きガラス基板を形成しておくようにしておいてもよい。そして、図6(b)に示すように、上に形成する機能性素子によって、電気的接続を行なう箇所では導電部材201を埋め込むとともに電気的接続を行なわない箇所では絶縁部材202を埋め込むようにし、ガラス層の焼成後あるいはガラス層の焼成と同時に焼成するようにしてもよい。そして最後に表面研磨を行うことで、表面の平滑化を高めることも可能である。これにより、この上層に形成される電子デバイスの特性の向上および長寿命化をはかることができる。
【0090】
(実施の形態4)
次に、本発明の実施の形態4として、電子デバイス用基板を備えた有機LED素子について説明する。図7(a)は、本発明の実施の形態の電子デバイス用基板の平面図であり、図7(b)はこの電子デバイス用基板に形成された有機LED素子を示すI−I’断面図である。
【0091】
本発明の有機LED素子を形成するための電子デバイス用基板は、実施の形態1で説明した電子デバイス用基板と同様に形成されているが、封止部の外側に導出される外部接続端子(図示せず)もスルーホールHoutを介して形成されている。
他部については前記実施の形態1と同様に形成される。
この構成により、素子領域から封止部を超えてガラス基板の端縁近傍に形成された外部接続端子部が、内部のスルーホールHと同一工程で同様に形成されている。
他は前記実施の形態1と同様である。なお外部接続端子としてはめっき層を形成し、ボンディング可能となるようにしてもよいし、バンプを形成することも可能である。
【0092】
この構成により、外部接続が容易でかつ信頼性の高いものとなる。
【0093】
製造に際しては、補助配線パターンおよびスルーホールの形成位置を調整するのみで、外部接続が容易に可能となる。
【0094】
なお、ここで、ガラス層に用いられるガラスとしては、B−SiO−ZnO系、B−SiO−PbO系、B−P−ZnO系などのガラスが挙げられる。一方で、発光機能を有する層として用いられる有機層の屈折率は430nmで1.8〜2.1程度である。一方、例えば、透光性電極層の屈折率は、1.9〜2.1程度が一般的である。このように有機層と透光性電極層の屈折率は近く、発光光は有機層と透光性電極層間で全反射することなく、透光性電極層と透光性基板の界面に到達する。一般的なガラス基板の屈折率は1.5〜1.6程度であり、有機層あるいは透光性電極層よりも低屈折率である。
【0095】
ガラス基板に浅い角度で進入しようとした光は全反射で有機層方向に反射され、反射性電極で再度反射され再び、ガラス基板の界面に到達する。この時、ガラス基板への入射角度は変わらないため、反射を有機層、透光性電極層内で繰り返し、ガラス基板から外に取り出すことができない。
【0096】
従って、有機LED素子の外部に取り出せる光の量は、発光光の20%足らずになっているのが現状である。本発明のガラス層に光散乱性を持たせることで、上記の光取り出し効率を改善することができる。なぜなら、素子内部を伝播する光を散乱により方向を変え、外部に放出する確率が増えるからである。また外部に取り出せない角度で素子内を伝播する場合でも、反射性電極で反射し再び光がガラス散乱層に到達するので、これを繰り返すうちに光を外部に取り出せるのである。この場合、ガラス散乱層の屈折率は、それが接する透光性電極の屈折率と同じかそれ以上が望ましい。
【0097】
具体的には、ガラス散乱層のガラスの屈折率がある発光波長で1.8以上が望ましい。
この場合のガラス材料として望ましくは、ネットワークフォーマとしては、例えば、P、SiO、B、GeO、TeOから選ばれる一種類または二種類以上の成分を、高屈折率成分として、TiO、Nb、WO、Bi、La、Gd、Y、ZrO、ZnO、BaO、PbO、Sbから選ばれる一種類または二種類以上の成分を含有する高屈折率ガラスを使用することが出来る。
【0098】
散乱物質としては、気泡、結晶析出物などが考えられる。またガラス表面にうねりを持たせることで、反射電極の映りこみを防止することもできる。有機LED素子では、通常素子形成薄膜が、下地のうねりをトレースして形成される為、基板が平らである場合、反射性電極を用いると、鏡面状となり、映り込みを生じてしまう。そこでガラス層の表面にうねりを持たせることで、反射性電極をうねらせ、映り込みを抑制できる。
【0099】
図8はガラス層の表面にうねりを設けた例の断面説明図である。図8(a)は波長λと表面粗さRaとの関係を説明するためのガラス基板101とガラス層102のうねりの状態を示す断面説明図であり、分かりやすくするために、補助配線は図示されていない。図8(b)は、有機LED素子とした状態での断面説明図であり、ガラス基板101、ガラス層102、透光性電極103、散乱物質104、正孔注入層111、正孔輸送層112、発光層113、電子輸送層114、電子注入層115、反射性電極120、補助配線パターン200とを示している。
【0100】
電極付き透光性基板100は、ガラス基板101、散乱物質104を含むガラス層102と補助配線パターン200とからなり、その表面はうねりを有している。また、その上に形成された有機層110は、発光機能を有する層であり、正孔輸送層112、発光層113、電子輸送層114、電子注入層115と反射性電極120とからなり、各層ともうねりを有している。
【0101】
具体的には、カットオフ波長10μmにおいて、このガラス散乱層表面の表面粗さRa(JIS B0601−1994)の、表面のうねりの波長Rλaに対する比Ra/Rλaが1.0×10−6以上3.0×10−5以下であるのが望ましい。この範囲にとることで、ガラス層102の散乱特性が十分でなくても、うねりにより、散乱特性を高めることができ、消灯時に反射性電極120が見えにくく外観の向上を図ることができる。詳細については後述する。
【0102】
また、有機LED素子の電極間の短絡を防ぐために散乱層表面は平滑であることが望ましく、うねりを構成する表面の表面粗さRaが30nm以下であることが望ましく、特に、10nm以下であることが望ましい。この有機LED素子は、電子デバイス用基板としてのうねりを有する補助配線および透光性電極付き透光性基板100と、有機層110と、反射性電極120とにより構成される。電極付き透光性基板100は、透光性のガラス基板からなる基板101と、ガラス層102と、透光性電極103とにより構成される。
この範囲に採ることで、透光性電極103の膜厚を均一にすることができ、電極間距離を均一にすることができる。したがって、電界集中を抑制することができ、素子の長寿命化をはかることができる。
【0103】
本発明で用いられる(電子デバイス用基板としての)補助配線および透光性電極付き透光性基板100は、透光性のガラス基板101と、前記ガラス基板上に形成された散乱特性を有するガラス層102と透光性電極103を具備していることが望ましい。すなわち、前記ガラス層が、透過する光の1波長に対して第1の屈折率を有するベース材と、前記ベース材中に分散された、前記ベース材と異なる第2の屈折率を有する複数の散乱物質104とを具備して、散乱性を有していることが望ましい。特に、前記散乱物質の前記ガラス層内分布が、前記ガラス層の前記透光性電極側の表層からの距離0.5μmの位置から前記透光性電極にむかって、小さくなっていることが望ましい。そして、この透光性電極103は、前記第1の屈折率と同じ若しくはより低い第3の屈折率を有することが望ましい。
【0104】
この構成により、発光光をガラス基板側に効率よく導き、光の取り出し特性を向上することができる。
【0105】
前記したように有機LED素子の電極間の短絡を防ぐために散乱性を有するガラス層表面は平滑であることが望ましく、そのためには散乱層の主表面から散乱物質が突出していることは望ましくない。散乱物質がガラス層の表面から突出しないためにも、散乱物質がガラス層の表面から0.2μm以内に存在していないことが望ましい。このため、ガラス層102の半分の厚さ(δ/2)における散乱物質の密度ρと、前記透光性電極と接する側のガラス層の表面に近い部分における散乱物質の密度ρとは、ρ>ρを満たすことが望ましい。この構成により、表面の平滑性を維持しつつ散乱性を高めることができる。
【0106】
特に、ガラス層の透光性電極側表面に近い部分である、透光性電極側表面からの距離x(x≦0.2μm)においては、散乱物質は存在していないことが望ましい。
【0107】
なお、ガラス層はガラス基板上に直接形成されているが、例えばガラス基板上にスパッタ法によってシリカ薄膜を形成した後、ガラス層を形成するなど、バリア層を介して形成してもよい。しかし、ガラス基板上に接着剤や有機層を介する事無くガラス層を形成することで、極めて安定でかつ平坦な表面を得ることができる上、無機物質のみで構成することで、熱的に安定で長寿命の光デバイスを形成することが可能となる。
【0108】
このような透光性基板の持つ特性について詳細に説明する。
ガラス層をガラス粉末を焼成して形成する場合、ガラス粉末を適切な方法で、ガラス基板上に塗布すればよい。例えば、溶剤あるいは樹脂と溶剤を混合したものにガラス粒子を分散させ、所望の厚さに塗布することで得られる。例えば、ガラス粒子の大きさは最大長さで0.1から10μm程度のものを用いる。樹脂と溶剤を混合した場合には、ガラス粒子が分散した樹脂膜を加熱し、樹脂を分解すると、ガラス粒子の間には、隙間が空いている状態となる。
【0109】
さらに温度を上げると、ガラスの軟化温度より10℃から20℃低い温度で、ガラス粒子同士が融着し始める。ガラス粒子同士が融着すると、ガラス粒子の間に形成された隙間はガラスが軟化することで変形し、ガラス中に閉空間を形成する。ガラス粒子の最上層では、ガラス粒子同士が融着することで、ガラス層の表面を形成する。この表面では閉空間にならない隙間は、凹みとして残る。
【0110】
更に温度を上げるとガラスの軟化、流動が進み、ガラス内部の隙間は球形の気泡を形成する。一方、ガラス層の表面では、ガラス粒子の隙間に起因する凹みは平滑化されていく。なお、ガラス粒子の隙間による気泡だけでなく、ガラスが軟化する際にガスが発生し、気泡を形成する場合もある。例えば、ガラス層の表面に有機物が付着している場合には、それが分解してCOを生じ気泡を生じる場合もある。またこのように熱で分解する物質を導入し積極的に気泡を発生させてもよい。このような状態は通常軟化温度付近で得られる。ガラスの粘度は、軟化温度で107.6ポアズと高く、気泡の大きさが数μm以下であれば、表面に浮上しにくい。従って、小さな気泡を発生するように材料組成を調整するとともに、焼成温度を調整して、保持時間を長くするかで、気泡の浮上を抑えつつ、表面をさらに平滑にすることが可能である。このようにして、表面を平滑にした状態から冷却すると、散乱物質の密度が、ガラス層内部よりも表面で小さく、表面が平滑な散乱性を有するガラス層が得られる。
【0111】
このように、ガラス層を形成するための材料組成および焼成温度を調整することにより、ガラス層中には気泡を残しつつ、かつガラス層表面には、気泡や、凹みの発生を抑制することが可能である。つまり、散乱物質の上昇を防ぎ、ガラス層に残留させて表面まで上昇しないように、焼成温度プロファイルを調整すると共に焼成時間を調整することで、散乱特性に優れ、表面平滑性の高い、電極付き透光性基板を提供することが可能となる。なお、材料、ガラス層厚、焼成条件等の選択により、散乱性がほとんどない透光性のガラス層とすることも可能である。
【0112】
また、この時に、ガラス層最表面はうねりをもつ湾曲面を形成することもできる。ここでうねりとは、うねりの波長の周期λが、10μm以上のものである。うねりの大きさは、Raで0.01μmから5μm程度である。このようなうねりが存在している場合でもミクロな平滑性は保たれている。ここでうねりを形成するためには、処理温度、ガラス材料組成、ガラス粒子の大きさ、基板材料などを選択する必要がある。処理温度が低い場合では、ガラス層の表面にミクロな凹部が残る場合があるが、焼成時間を長くとることで、凹部の形状は、緩やかになる。ここで、緩やかとは凹部の開口部の径≧内部の空間の径であることを言う。このように緩やかである場合には、この凹部により有機LED素子が電極間短絡を起こす可能性は低いと言える。焼成温度はガラス転移温度から、40℃から60℃程度高いことが望ましい。あまり温度が低すぎると、焼結不足となり表面が平滑にならないので、焼成温度はガラス転移温度から、50℃から60℃程度高いことが更に望ましい。
【0113】
また、ガラス層は、表面が湾曲面を構成するうねりを形成することで、上層に形成する有機LED素子が反射性電極である場合には、映り込みによる美観の低下を抑制することができる。反射性電極を用いる場合には、非発光時に反射性電極による映りこみが生じてしまい、美観を損ねることが課題であったが、本発明によれば、ガラス層を形成する際に、条件を好適化することで、上層に形成するパターンの精度を低下させたり、電極間距離にばらつきを生ぜしめたりすることがなく、かつ、電極と発光機能を有する層との接触面積を増大することができるため、実効的な素子面積を増大することができ、長寿命で高輝度の有機LED素子を形成することができる。
【0114】
透光性基板上に有機LED素子を形成する場合、例えば透光性電極は薄く形成する必要があるが、この透光性電極が下地の影響を受ける事無く形成できるのは、表面粗さが30nm以下、望ましくは10nm以下である。表面粗さが30nmを越えると、その上に形成される有機層の被覆性が悪くなる場合があり、ガラス層上に形成される透光性電極ともう一方の電極との間で短絡が発生する場合がある。電極間短絡により、素子は不灯となるが、過電流を印加することにより、修復することが可能な場合がある。修復を可能とするうえで、ガラス層の粗さは望ましくは10nm以下であり、さらに望ましくは、3nm以下である。
材料系によって最適な焼成条件は異なるが、散乱物質の種類や大きさをコントロールすることで、散乱物質が最表面に存在するのを抑制し、表面平滑性に優れたガラス層を得ることができる。
【0115】
また、散乱物質の大きさは、ガラス層中に気泡がある場合、気泡が大きくなると、焼成などのガラス層形成プロセスで浮力が大きくなり、浮上し易くなり、ガラス層の表面に到達すると気泡が破裂し、表面平滑性を著しく低下させることになる可能性がある。また、相対的にその部分の散乱物質の数が少なくなるため、その部分のみ散乱性が低下することにもなる。このように大きな気泡が凝集すれば、むらとなって視認されることにもなる。
このため、直径が5μm以上の気泡の割合が15vol%以下であるのが望ましく、さらに望ましくは、10vol%以下であり、さらに望ましくは7vol%以下である。また、散乱物質が気泡以外の場合でも、相対的にその部分の散乱物質の数が少なくなるため、その部分のみ散乱性が低下することになる。従って散乱物質の最大長さが5μm以上のものの割合が15vol%以下であるのが望ましく、望ましくは10vol%以下であり、さらに望ましくは7vol%以下である。
【0116】
また、反射性電極を用いる場合には、非発光時に反射性電極による映りこみが生じてしまい、美観を損ねることが課題であったが、ガラス層を形成する際に条件を最適化することで、ガラス層表面にうねり形状を形成して、映り込みを低減することができる。
【0117】
また、結晶化しやすいガラスを用いることで、ガラス層内部に結晶を析出させることが可能である。この時、結晶の大きさが0.1μm以上であれば、光散乱物質として機能する。焼成温度を適切に選ぶことで、ガラス層の表面での結晶析出を抑制しつつかつ、ガラス層の内部に結晶を析出させることが可能となる。具体的には、ガラス転移温度から60℃から100℃程度温度が高くするのが望ましい。この程度の温度上昇であれば、ガラスの粘性が高く、気泡が浮上しにくい。
【0118】
温度が高すぎる場合には、ガラス層の表面でも結晶が析出してしまい、表面の平滑性が失われるため、望ましくない。従って、焼成温度はガラス転移温度から60℃から80℃度程度高くすることがより望ましく、さらには60℃から70℃高くすることが最も望ましい。このような手法によりガラス層中に、気泡や析出結晶を散乱物質として存在させ、ガラス層の表面ではそれらの発生を抑制することが可能である。これらが可能であるのは、ガラスがある温度範囲で自らが平坦化し、かつ気泡は浮上しない高粘性を実現できる、あるいは結晶を析出できるためである。樹脂では上述のような高粘性でプロセスを制御するのは困難であり、また結晶を析出させることも困難である。
【0119】
このように、材料組成や焼成条件を調整することで、ガラス層の表面の散乱物質の密度が、ガラス層の内部の散乱物質の密度より小さい透光性基板を得ることができる。
また、ガラス層の半分の厚さにおける散乱物質の密度ρと、ガラス層の表面に近い部分の散乱物質の密度ρとが、ρ>ρを満たすような透光性基板を用いることで、十分な散乱特性を有しかつ平滑な表面を持つ透光性基板を得ることが可能となる。
【0120】
また、散乱物質としては、気泡である場合と、ベース層とは異なる組成をもつ材料粒子である場合と、ベース層の析出結晶である場合とがあり、これら単体でもよいし、混合でもよい。
散乱物質が気泡である場合には、焼成温度などの焼成条件を調整することで、気泡の大きさや気泡分布や密度を調整可能である。
散乱物質がベース層とは異なる組成をもつ材料粒子である場合には、材料組成物の調整、焼成温度などの焼成条件を調整することで、散乱物質の大きさや分布や密度を調整可能である。
前記散乱物質が前記ベース層を構成するガラスの析出結晶である場合には、焼成温度などの焼成条件を調整することで、気泡の大きさや気泡分布や密度を調整可能である。
【0121】
また、波長λ(430nm<λ<650nm)のうち少なくとも一つの波長におけるベース層の第1の屈折率は1.8以上であるのが望ましい。高屈折率材料層を形成するのは困難であるが、ガラス材料の材料組成を調整することで、屈折率の調整が容易となる。
【0122】
以下各部材について詳細に説明する。
<基板>
透光性基板の形成に用いられる透光性の基板としては、ガラス基板が用いられる。ガラス基板の材料としては、アルカリガラス、無アルカリガラスまたは石英ガラスなどの無機ガラスがある。ガラス基板101の厚さは、0.1mm〜2.0mmが望ましい。但し、あまり薄いと強度が低下するので、0.5mm〜1.0mmであることが特に望ましい。
【0123】
なお、ガラス層をガラスフリットで作製するには、歪の問題等が生じるので、熱膨張係数は50×10−7/℃以上、望ましくは70×10−7/℃以上、より望ましくは80×10−7/℃以上が望ましい。
【0124】
また、さらにはガラス層の100℃から400℃における平均熱膨張係数が、70×10−7(℃−1)から95×10−7(℃−1)であり、且つガラス転移温度が、450℃から550℃であるのが望ましい。
【0125】
<ガラス層>
ガラス層表面のうねりについてはすでに説明したとおりである。また続いて、ガラス層の構成、作製方法、特性および屈折率の測定方法について、詳細に説明する。なお、詳細は後述するが、有機LED素子の主眼である光取り出し効率の向上を実現するためには、ガラス層の屈折率は、透光性電極材料の屈折率よりも同等若しくは高くすることが望ましい。
【0126】
(構成)
本実施の形態では、ガラス層102は、前述したように、塗布などの方法でガラス基板上にガラス粉末を形成し、所望の温度で焼成することで形成される。形成されたガラス層は、第1の屈折率を有するベース材102と、前記ベース材102中に分散された、前記ベース材と異なる第2の屈折率を有する散乱物質104とを具備している。このガラス層では、内部から表面にむかって、前記ガラス層中の前記散乱物質の層内分布が、小さくなっており、ガラス層を用いることで前述したように、優れた散乱特性を有しつつも表面の平滑性を維持することがでる。これにより、発光デバイスなどの光出射面側に用いることで極めて高効率の光取り出しを実現することができる。
また、ガラス層としては、コーティングされた主表面を有する光透過率の高い材料(ベース材)が用いられる。ベース材としては、各種ガラス、結晶化ガラスが用いられる。なお、ベース材の内部には、散乱性物質104(例えば、気泡、析出結晶、ベース材とは異なる材料粒子、分相ガラスがある。)が形成されている。ここで、粒子とは固体の小さな物質をいい、例えば、フィラーやセラミックスがある。また、気泡とは、空気若しくはガスの物体をいう。また、分相ガラスとは、2種類以上のガラス相により構成されるガラスをいう。なお、散乱物質が気泡の場合、散乱物質の径とは空隙の長さをいう。
【0127】
また、本発明の主たる目的である光取り出し効率の向上を実現するためには、ベース材の屈折率は、透光性電極材料の屈折率と同等若しくは高くすることが望ましい。屈折率が低い場合、ベース材と透光性電極材料との界面において、全反射による損失が生じてしまうためである。ベース材の屈折率は、少なくとも発光層の発光スペクトル範囲における一部分(例えば、赤、青、緑など)において上回っていればよいが、発光スペクトル範囲全域(430nm〜650nm)に亘って上回っていることが望ましく、可視光の波長範囲全域(360nm〜830nm)に亘って上回っていることがより望ましい。
【0128】
また、有機LEDの電極間の短絡を防ぐ為にガラス層主表面は平滑であることが望ましい。そのためにはガラス層の透光性電極に接する側の表面から散乱物質が突出していることは望ましくない。散乱物質がガラス層の表面から突出しないためにも、散乱物質がガラス層の表面から0.2μm以内に存在していないことが望ましい。このため、ガラス層の表面の平均粗さ(Ra)は30nm以下が望ましく、10nm以下であることがより望ましく、1nm以下が特に望ましい。散乱物質とベース材の屈折率はいずれも高くても構わないが、屈折率の差(Δn)は、少なくとも発光層の発光スペクトル範囲における一部分において0.2以上であることが望ましい。十分な散乱特性を得るために、屈折率の差(Δn)は、発光スペクトル範囲全域(430nm〜650nm)若しくは可視光の波長範囲全域(360nm〜830nm)に亘って0.2以上であることがより望ましい。
【0129】
最大の屈折率差を得るためには、上記高光透過率材料としては高屈折率ガラス、散乱物質としては気体の物体すなわち気泡という構成とすることが望ましい。この場合、ベース材の屈折率はできるだけ高いことが望ましいため、ベース材を高屈折率のガラスとすることが望ましい。高屈折率のガラスの成分として、ネットワークフォーマとしてはP、SiO、B、GeO、TeOから選ばれる一種類または二種類以上の成分を、高屈折率成分として、TiO、Nb、WO、Bi、La、Gd、Y、ZrO、ZnO、BaO、PbO、Sbから選ばれる一種類または二種類以上の成分を含有する高屈折率ガラスを使用することが出来る。その他に、ガラスの特性を調整する意味で、アルカリ酸化物、アルカリ土類酸化物、フッ化物などを屈折率に対して要求される物性を損なわない範囲で使用してもよい。具体的なガラス系としてはB−ZnO−La系、P−B−R’O−R”O−TiO−Nb−WO−Bi系、TeO−ZnO系、B−Bi系、SiO−Bi系、SiO−ZnO系、B−ZnO系、P−ZnO系、などが挙げられる。ここで、R’はアルカリ金属元素、R”はアルカリ土類金属元素を示す。なお、以上は例であり、上記の条件を満たすような構成であれば、この例に限定されるものではない。
【0130】
ベース材に特定の透過率スペクトルを持たせることにより、発光の色味を変化させることもできる。着色剤としては、遷移金属酸化物、希土類金属酸化物、金属コロイドなどの公知のものを、単独であるいは組み合わせて使うことができる。
【0131】
(ガラス層の作製方法)
ガラス層の作製方法は、塗布および焼成により行うが、特に、10〜100μmの厚膜を大面積にうねりを形成するように、均一かつ迅速に形成するという観点から、ガラスをフリットペースト化して作製する方法が望ましい。フリットペースト法を活用するために、ガラス基板の熱変形を抑制するために、ガラス層のガラスの軟化点(Ts)がガラス基板の歪点(SP)よりも低く、かつ熱膨張係数αの差が小さいことが望ましい。軟化点と歪点の差は30℃以上であることが望ましく、50℃以上であることがより望ましい。また、ガラス層とガラス基板の膨張率差は、±10×10−7(1/K)以下であることが望ましく、±5×10−7(1/K)以下であることがより望ましい。ここで、フリットペーストとは、ガラス粉末が樹脂、溶剤、フィラーなどに分散したものを指す。フリットペーストをスクリーン印刷などのパターン形成技術を用いてパターニング、焼成することで、ガラス層被覆が可能となる。以下技術概要を示す。
【0132】
(フリットペースト材料)
1.ガラス粉末
ガラス粉末粒径は1μm〜10μmである。焼成された膜の熱膨張を制御するため、フィラーを入れることがある。フィラーは、具体的には、ジルコン、シリカ、アルミナなどが用いられ、粒径は0.1μm〜20μmである。
【0133】
以下にガラス材料について説明する。
本発明では、前記ガラス層として、たとえば、Pが20〜30mol%、Bが、3〜14mol%、LiOとNaOとKOの合量が10〜20mol%、Biが10〜20mol%、TiOが3〜15mol%、Nbが10〜20mol%、WOが5〜15mol%を含み、以上成分の合量が、90mol%以上であるものを用いる。
【0134】
ガラス層を形成するガラス組成としては、所望の散乱特性が得られ、フリットペースト化して焼成可能であれば特に限定はされないが、取り出し効率を最大化するためには、例えば、Pを必須成分として含有し、さらにNb、Bi、TiO、WO、の一成分以上を含有する系、B、ZnOおよびLaを必須成分として含み、Nb、ZrO、Ta、WOの一成分以上を含有する系、SiOを必須成分として含み、Nb、TiOの一成分以上を含有する系、Biを主成分として含有し、ネットワーク形成成分としてSiO、Bなどを含有する系などが挙げられる。
【0135】
なお、本発明においてガラス層として使用する全てのガラス系において、環境に対して悪影響を及ぼす成分である、As、PbO、CdO、ThO、HgOについては、原料由来の不純物としてやむを得ず混入する場合を除いて含まなくすることができる。
【0136】
を含み、Nb、Bi、TiO、WO、の一成分以上を含有するガラス層は、mol%表記で、P 15〜30%、SiO 0〜15%、B 0〜18%、Nb 5〜40%、TiO 0〜15%、WO 0〜50%、Bi 0〜30%、ただし、Nb+TiO+WO+Bi 20〜60%、LiO 0〜20%、NaO 0〜20%、KO 0〜20%、ただしLiO+NaO+KO 5〜40%、MgO 0〜10%、CaO 0〜10%、SrO 0〜10%、BaO 0〜20%、ZnO 0〜20%、Ta 0〜10%の組成範囲のガラスが望ましい。
【0137】
各成分の効果は、mol%表記で、以下の通りである。
は、このガラス系の骨格を形成しガラス化させる必須成分であるが、含有量が小さすぎる場合、ガラスの失透性が大きくなりガラスを得ることができなくなるため、15%以上が望ましく、18%以上がより望ましい。一方、含有量が大きすぎると屈折率が低下するため、発明の目的を達成することができなくなる。従って、含有量は30%以下が望ましく、28%以下がより望ましい。
【0138】
は、ガラス中に添加することにより耐失透性を向上させ、熱膨張率を低下させる成分である任意成分であるが、含有量が大きすぎる場合、屈折率が低下してしまうため、18%以下が望ましく、15%以下がより望ましい。
【0139】
SiOは、微量を添加することによりガラスを安定化させ、耐失透性を向上させる成分である任意成分であるが、含有量が大きすぎる場合、屈折率が低下してしまうため、15%以下が望ましく、10%以下がより望ましく、8%以下が特に望ましい。
【0140】
Nbは、屈折率を向上させ、耐侯性を高める効果も同時に有する必須成分である。そのため、含有量は、5%以上が望ましく、8%以上がより望ましい。一方、含有量が大きすぎると、失透性が強まりガラスが得られなくなってしまうため、その含有量は40%以下が望ましく、35%以下がより望ましい。
【0141】
TiOは、屈折率を向上させる任意成分であるが、含有量が大きすぎるとガラスの着色が強くなり、ガラス層における損失が大きくなってしまい、光取り出し効率の向上という目的を達成することができなくなってしまう。そのため含有量は15%以下が望ましく、13%以下であるとさらに望ましい。
【0142】
WOは、屈折率を向上させ、ガラス転移温度を低下させ焼成温度を低下させる任意成分であるが、過度に導入するとガラスが着色してしまい、光取り出し効率の低下をもたらすため、その含有量は50%以下が望ましく、45%以下がさらに望ましい。
【0143】
Biは屈折率を向上させる成分であり、ガラスの安定性を維持しながら比較的多量にガラス中に導入することができる。しかしながら過度に導入することにより、ガラスが着色し、透過率が低下してしまうという問題点が発生するため、含有量は30%以下が望ましく、25%以下がより望ましい。
【0144】
屈折率を所望の値よりも高くするためには、上記Nb、TiO、WO、Biのうちの一成分またはそれ以上を必ず含まなくてはならない。具体的には(Nb+TiO+WO+Bi)の合量が20%以上であることが望ましく、25%以上であることがより望ましい。一方これらの成分の合量が大きすぎる場合、着色したり、失透性が強くなりすぎるため、60%以下であることが望ましく、55%以下であることがより望ましい。
【0145】
Taは屈折率を向上させる任意成分であるが、添加量が大きすぎる場合、耐失透性が低下してしまうことに加え、価格が高いことから、その含有量は10%以下が望ましく、5%以下がより望ましい。
【0146】
LiO、NaO、KO等のアルカリ金属酸化物(RO)は、溶融性を向上させ、ガラス転移温度を低下させる効果をもつと同時に、ガラス基板との親和性を高め、密着力を高める効果を有する。そのため、これらの1種類または2種類以上を含有していることが望ましい。LiO+NaO+KOの合量として5%以上を含むことが望ましく、10%以上であることがより望ましい。しかしながら、過剰に含有させると、ガラスの安定性を損なってしまうのに加え、いずれも屈折率を低下させる成分であるため、ガラスの屈折率が低下してしまい、所望の光取り出し効率の向上が望めなくなってしまう。そのため、合計の含有量は40%以下であることが望ましく、35%以下であることがより望ましい。
【0147】
LiOは、ガラス転移温度を低下させ、溶解性を向上させるための成分である。しかしながら、含有量が多すぎると失透性が高くなりすぎ、均質なガラスを得ることができなくなる。また、熱膨張率が大きくなりすぎ、基板との膨張率差が大きくなってしまうとともに、屈折率も低下し所望の光取出し効率の向上を達成できなくなる。そのため、含有量は20%以下であることが望ましく、15%以下であることがさらに望ましい。
【0148】
NaO、KOはいずれも溶融性を向上させる任意成分であるが、過度の含有により、屈折率が低下し、所望の光取り出し効率を達成できなくなってしまう。そのため、含有量はそれぞれ20%以下であることが望ましく、15%以下であることがより望ましい。
【0149】
ZnOは、屈折率を向上させ、ガラス転移温度を低下させる成分であるが、過剰に添加するとガラスの失透性が高くなり均質なガラスを得ることができなくなる。そのため、含有量は20%以下であることが望ましく、18%以下がより望ましい。
【0150】
BaOは、屈折率を向上させると同時に、溶解性を向上させる成分であるが、過剰に添加するとガラスの安定性を損なうため、その含有量は20%以下であることが望ましく、18%以下であることがより望ましい。
MgO、CaO、SrOは、溶融性を向上させる任意成分であるが、同時に屈折率を低下させる成分であるため、いずれも10%以下であることが望ましく、8%以下であることがより望ましい。
【0151】
高屈折率かつ安定なガラスを得るためには、上記成分の合量は、90%以上であることが望ましく、93%以上であることがより望ましく、95%以上であることがさらに望ましい。
【0152】
以上に記載の成分の他に、必要なガラスの特性を損なわない範囲で、清澄剤やガラス化促進成分、屈折率調整成分、波長変換成分などを少量添加しても良い。具体的には、清澄剤としてはSb、SnOが挙げられ、ガラス化促進成分としては、GeO、Ga、In、屈折率調整成分としては、ZrO、Y、La、Gd、Yb、波長変換成分としては、CeO、Eu、Erなどの希土類成分などが挙げられる。
【0153】
、Laを必須成分として含み、Nb、ZrO、Ta、WO、の一成分以上を含有するガラス層は、mol%表記で、B 20〜60%、SiO 0〜20%、LiO 0〜20%、NaO 0〜10%、KO 0〜10%、ZnO 5〜50%、La 5〜25%、Gd 0〜25%、Y 0〜20%、Yb 0〜20%、ただし、La+Gd+Y+Yb 5%〜30%、ZrO 0〜15%、Ta 0〜20%、Nb 0〜20%、WO 0〜20%、Bi 0〜20%、BaO 0〜20%の組成範囲のガラスが望ましい。
【0154】
各成分の効果は、mol%表記で、以下の通りである。
は、ネットワーク形成酸化物であり、このガラス系における必須成分である。
含有量が少なすぎる場合、ガラス形成しなくなるか、ガラスの耐失透性の低下をもたらすため、20%以上含有することが望ましく、25%以上であることがより望ましい。一方、含有量が多すぎると、屈折率が低下し、さらに対抗性の低下を招くため、含有量は60%以下に制限され、より望ましくは55%以下である。
【0155】
SiOは、この系のガラス中に添加されるとガラスの安定性を向上させる成分であるが、導入量が大きすぎる場合、屈折率の低下やガラス転移温度の上昇をもたらす。そのため、含有量は20%以下が望ましく、18%以下がより望ましい。
LiOは、ガラス転移温度を低下させる成分である。しかしながら、導入量が大きすぎる場合、ガラスの耐失透性が低下してしまう。そのため、含有量は20%以下が望ましく、18%以下がより望ましい。
【0156】
NaOおよびKOは溶解性を向上させるが、導入により耐失透性の低下や屈折率の低下がもたらされるため、それぞれ10%以下が望ましく、8%以下がより望ましい。
ZnOは、ガラスの屈折率を向上させるとともに、ガラス転移温度を低下させる必須成分である。そのため、導入量は5%以上が望ましく、7%以上がより望ましい。一方、添加量が大きすぎる場合、耐失透性が低下してしまい均質なガラスが得られなくなってしまうため、50%以下であることが望ましく、45%以下であることがより望ましい。
【0157】
Laは高屈折率を達成し、かつB系ガラスに導入すると耐侯性を向上させる必須成分である。そのため、含有量は5%以上であることが望ましく、7%以上であることがより望ましい。一方、導入量が大きすぎる場合、ガラス転移温度が高くなったり、ガラスの耐失透性が低下し、均質なガラスが得られなくなってしまう。そのため、含有量は25%以下が望ましく、22%以下がさらに望ましい。
【0158】
Gdは高屈折率を達成し、かつB系ガラスに導入すると耐侯性を向上させ、Laと共存させることにより、ガラスの安定性を向上させる成分であるが、導入量が大きすぎる場合、ガラスの安定性が低下してしまうため、その含有量は25%以下が望ましく、22%以下がさらに望ましい。
およびYbは高屈折率を達成し、かつB系ガラスに導入すると耐侯性を向上させ、Laと共存させることにより、ガラスの安定性を向上させる成分であるが、導入量が大きすぎる場合、ガラスの安定性が低下してしまうため、含有量はそれぞれ20%以下であることが望ましく、18%以下であることが望ましい。
【0159】
La、Gd、Y、Yb、といった希土類酸化物は、高屈折率を達成し、かつガラスの耐侯性を向上させるためには必須の成分であるため、これらの成分の合量、La+Gd+Y+Ybは5%以上であることが望ましく、8%以上であることがより望ましい。しかしながら、導入量が大きすぎる場合、ガラスの耐失透性が低下し、均質なガラスを得ることができなくなるため、30%以下であることが望ましく、25%以下であることがより望ましい。
【0160】
ZrOは屈折率を向上させるための成分であるが、含有量が大きすぎると耐失透性が低下したり、液相温度が過度に向上してしまうため、含有量は15%以下であることが望ましく、10%以下であることがより望ましい。
【0161】
Taは屈折率を向上させるための成分であるが、含有量が大きすぎると耐失透性が低下したり、液相温度が過度に向上してしまうため、含有量は20%以下であることが望ましく、15%以下であることがより望ましい。
【0162】
Nbは屈折率を向上させるための成分であるが、含有量が大きすぎると耐失透性が低下したり、液相温度が過度に向上してしまうため、含有量は20%以下であることが望ましく、15%以下であることがより望ましい。
【0163】
WOは屈折率を向上させるための成分であるが、含有量が大きすぎると耐失透性が低下したり、液相温度が過度に向上してしまうため、含有量は20%以下であることが望ましく、15%以下であることがより望ましい。
【0164】
Biは屈折率を向上させるための成分であるが、含有量が大きすぎると耐失透性が低下したり、ガラスに着色が生じ透過率の低下をもたらし取り出し効率を低下させてしまうため、含有量は20%以下であることが望ましく、15%以下であることがより望ましい。
【0165】
BaOは屈折率を向上させる成分であるが、含有量が大きすぎると耐失透性が低下してしまうため、20%以下であることが望ましく、15%以下であることがより望ましい。
【0166】
高屈折率かつ安定性(耐湿性)を保持するためには、以上に記載の成分の合量は90%以上であることが望ましく、95%以上であることがさらに望ましい。以上に記載の成分以外であっても、清澄、溶解性向上などの目的で本発明の効果を損なわない範囲で添加しても良い。このような成分として、例えば、Sb、SnO、MgO、CaO、SrO、GeO、Ga、In、フッ素が挙げられる。
【0167】
SiOを必須成分として含み、Nb、TiO、Biのうち一成分以上を含有するガラス層は、mol%表記で、SiO 20〜50%、B 0〜20%、Nb 1〜20%、TiO 1〜20%、Bi 0〜15%、ZrO 0〜15%、Nb+TiO+Bi+ZrO 5〜40%、LiO 0〜40%、NaO 0〜30%、KO 0〜30%、LiO+NaO+KO 1〜40%、MgO 0〜20%、CaO 0〜20%、SrO 0〜20%、BaO 0〜20%、ZnO 0〜20%の組成範囲のガラスが望ましい。
【0168】
SiOはガラス形成をさせるためのネットワークフォーマとして働く必須成分であり、その含有量が少なすぎるとガラスを形成しなくなってしまうため20%以上であることが望ましく、22%以上であることがより望ましい。
【0169】
はSiOと比較的少量添加することによりガラス形成を助け失透性を低下させるが、含有量が多すぎると、屈折率の低下をもたらすため、その含有量は20%以下であることが望ましく、18%以下であることがより望ましい。
【0170】
Nbは屈折率を向上させるための必須成分であり、その含有量は1%以上であることが望ましく、3%以上であることがより望ましい。しかしながら、過剰に添加することによりガラスの耐失透性を低下させ、均質なガラスを得ることができなくなるため、その含有量は20%以下であることが望ましく、18%以下であることがより望ましい。
【0171】
TiOは屈折率を向上させるための必須成分であり、その含有量は1%以上であることが望ましく、3%以上であることがより望ましい。しかしながら、過剰に添加することによりガラスの耐失透性を低下させ、均質なガラスを得ることができなくなり、さらに着色をもたらし、ガラス層を光が伝播する際の吸収による損失を大きくしてしまう。そのため、その含有量は20%以下であることが望ましく、18%以下であることがより望ましい。
【0172】
Biは屈折率を向上させるための成分であるが、過剰に添加することによりガラスの耐失透性を低下させ、均質なガラスを得ることができなくなり、さらに着色をもたらし、ガラス層を光が伝播する際の吸収による損失を大きくしてしまう。そのため、その含有量は15%以下であることが望ましく、12%以下であることがより望ましい。
【0173】
ZrOは着色度を悪化させること無く屈折率を向上させる成分であるが、含有量が大きすぎる場合、ガラスの耐失透性が低下し、均質なガラスが得られなくなってしまう。そのため、含有量は15%以下が望ましく、10%以下がより望ましい。
高屈折率のガラスを得るためには、Nb+TiO+Bi+ZrOが5%以上であることが望ましく、8%以上であることがより望ましい。一方、この合量が大きすぎると、ガラスの耐失透性が低下したり、着色を生じたりするため、40%以下が望ましく、38%以下がより望ましい。
【0174】
LiO、NaO、KOは溶解性を向上させるとともにガラス転移温度を低下させる成分であり、さらにガラス基板との親和性を高める成分である。そのためこれらの成分の合量LiO+NaO+KOは、1%以上であることが望ましく、3%以上であることがより望ましい。一方、アルカリ酸化物成分の含有量が大きすぎる場合、ガラスの耐失透性が低くなり、均質なガラスが得られなくなるため、その含有量は、40%以下であることが望ましく、35%以下であることがより望ましい。
【0175】
BaOは屈折率を向上させると同時に溶解性を向上させる成分であるが、過度に含有した場合、ガラスの安定性を損ない、均質なガラスを得ることができなくなるため、その含有量は20%以下が望ましく、15%以下がより望ましい。
【0176】
MgO、CaO、SrO、ZnOはガラスの溶解性を向上させる成分であり、適度に添加するとガラスの耐失透性を低下させることができるが、過度に含有すると失透性が高くなってしまい均質なガラスを得ることができなくなるため、その含有量はそれぞれ20%以下が望ましく、15%以下がより望ましい。
【0177】
また、高屈折率かつ安定性(耐湿性)を保持するためには、以上に記載の成分の合量は90%以上であることが望ましい。また、以上に記載の成分以外であっても、清澄、溶解性向上などの目的で本発明の効果を損なわない範囲で添加しても良い。このような成分として、例えば、Sb、SnO、GeO、Ga、In、WO、Ta、La、Gd、Y、Ybが挙げられる。
【0178】
Biを主成分として含有し、ガラス形成助剤としてSiO、Bなどを含有するガラス層は、mol%表記で、Bi 10〜50%、B 1〜40%、SiO 0〜30%、ただし、B+SiO 10〜40%、P 0〜20%、LiO 0〜15%、NaO 0〜15%、KO 0〜15%、TiO 0〜20%、Nb 0〜20%、TeO 0〜20%、MgO 0〜10%、CaO 0〜10%、SrO 0〜10%、BaO 0〜10%、GeO 0〜10%、Ga 0〜10%の組成範囲のガラスが望ましい。
【0179】
各成分の効果は、mol%表記で、以下の通りである。
Biは、高屈折率を達成し、かつ多量に導入しても安定にガラスを形成する必須成分である。そのため、その含有量は、10%以上が望ましく、15%以上がより望ましい。一方、過剰に添加すると、ガラスに着色が生じ、本来透過すべき光を吸収してしまい、取り出し効率が低下してしまうことに加え、失透性が高くなり、均質なガラスを得ることができなくなってしまう。そのため、含有量は50%以下が望ましく、45%以下がより望ましい。
は、Biを多量に含むガラスにおいて、ネットワークフォーマとして働き、ガラス形成を助ける必須成分であり、その含有量は、1%以上が望ましく、3%以上がより望ましい。しかしながら、添加量が大きすぎる場合、ガラスの屈折率が低下してしまうため、40%以下が望ましく、38%以下がより望ましい。
【0180】
SiOは、Biをネットワークフォーマとしてガラス形成を助ける働きをする成分であるが、含有量が大きすぎる場合、屈折率の低下をもたらすため、30%以下が望ましく、25%以下がより望ましい。
【0181】
とSiOは、組み合わせることによってガラス形成を向上させるため、その合量は5%以上であることが望ましく、10%以上であることがより望ましい。一方、導入量が大きすぎる場合、屈折率が低下してしまうため、40%以下であることが望ましく、38%であることがより望ましい。
【0182】
は、ガラス形成を助けるとともに、着色度の悪化を抑制する成分であるが、含有量が大きすぎる場合、屈折率の低下をもたらすため、20%以下が望ましく、18%以下がより望ましい。
【0183】
LiO、NaO、KOは、ガラス溶解性を向上させ、さらにガラス転移温度を低下させるための成分であるが、過度に含有するとガラスの耐失透性が低下し、均質なガラスを得ることができなくなってしまう。このため、それぞれ15%以下が望ましく、13%以下がより望ましい。また、以上のアルカリ酸化物成分の合量、LiO+NaO+KOが大きすぎると屈折率の低下を招き、さらにガラスの耐失透性を低下させるため、30%以下が望ましく、25%以下がより望ましい。
【0184】
TiOは、屈折率を向上させる成分であるが、含有量が大きすぎる場合、着色を生じたり、耐失透性が低下し、均質なガラスを得ることができなくなってしまう。そのため、含有量は20%以下が望ましく、18%以下がより望ましい。
【0185】
Nbは屈折率を向上させる成分であるが、導入量が大きすぎるとガラスの耐失透性が低下し、安定なガラスが得られなくなってしまう。そのため、含有量は20%以下であることが望ましく、18%以下であることがさらに望ましい。
【0186】
TeOは着色度を悪化させずに屈折率を向上させる成分であるが、過度の導入により、耐失透性が低下し、フリット化したのちに焼成した時の着色の原因となるため、その含有量は20%以下が望ましく、15%以下がより望ましい。
【0187】
GeOは、屈折率を比較的高く維持しつつ、ガラスの安定性を向上させる成分であるが、極めて高価であるため、含有量は10%以下が望ましく、8%以下であることがより望ましく、含まないことがさらに望ましい。
【0188】
Gaは、屈折率を比較的高く維持しつつ、ガラスの安定性を向上させる成分であるが、極めて高価であるため、含有量は10%以下が望ましく、8%以下であることがより望ましく、含まないことがさらに望ましい。
【0189】
十分な散乱特性を得るためには、以上に記載の成分の合量は90%以上であることが望ましく、95%以上であることがさらに望ましい。以上に記載の成分以外であっても、清澄、溶解性向上、屈折率調整などの目的で本発明の効果を損なわない範囲で添加しても良い。このような成分として、例えば、Sb、SnO、In、ZrO、Ta、WO、La、Gd、Y、Yb、Alが挙げられる。
【0190】
2.樹脂
樹脂は、スクリーン印刷後、塗膜中のガラス粉末、フィラーを支持する。具体例としては、エチルセルロース、ニトロセルロース、アクリル樹脂、酢酸ビニル、ブチラール樹脂、メラミン樹脂、アルキッド樹脂、ロジン樹脂などが用いられる。
【0191】
3.溶剤
溶剤は、樹脂を溶解しかつ印刷に必要な粘度を調整する。また印刷中には乾燥せず、乾燥工程では、すばやく乾燥することが望ましい。沸点200℃から230℃のものが望ましい。粘度、固形分比、乾燥速度調整のためブレンドして用いる。具体例としては、スクリーン印刷時のペーストの乾燥適合性からエーテル系溶剤(ブチルカルビトール(BC)、ブチルカルビトールアセテート(BCA)、ジエチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールブチルエーテル、トリプロピレングリコールブチルエーテル、酢酸ブチルセロソルブ)、アルコール系溶剤(α−テルピネオール、パインオイル、ダワノール)、エステル系溶剤(2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート)、フタル酸エステル系溶剤(DBP(ジブチルフタレート)、DMP(ジメチルフタレート)、DOP(ジオクチルフタレート))がある。主に用いられているのは、α−テルピネオールや2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート)である。
【0192】
4.その他
粘度調整、ガラス粉末分散促進の為、界面活性剤を使用しても良い。ガラス粉末表面改質の為、シランカップリング剤を使用しても良い。
【0193】
(ガラスペースト膜の作製方法)
(1)ガラスペースト
ガラス粉末とビヒクルを準備する。ここで、ビヒクルとは、樹脂、溶剤、界面活性剤を混合したものをいう。具体的には、50℃〜80℃に加熱した溶剤中に樹脂、界面活性剤などを投入し、その後4時間から12時間程度静置したのち、ろ過し、得られる。
次に、ガラス粉末とビヒクルとを、プラネタリーミキサーで混合した後、3本ロールで均一分散させる。その後粘度調整のため、混練機で混練する。通常ガラス粉末70〜80wt%に対してビヒクル20〜30wt%とする。
【0194】
(2)印刷
(1)で作製したガラスペーストをスクリーン印刷機を用いて印刷する。スクリーン版のメッッシュ荒さ、乳剤の厚み、印刷時の押し圧、スキージ押し込み量などで形成されるガラスペースト膜の膜厚を制御できる。印刷後乾燥させる。
【0195】
(3)焼成
焼成は、ガラスペースト中の樹脂を分解・消失させる脱バインダ処理とガラス粉末を焼結、軟化させる焼成処理からなる。脱バインダ温度は、エチルセルロースで350℃〜400℃、ニトロセルロースで200℃〜300℃であり、30分から1時間大気雰囲気で加熱する。その後温度を上げて、ガラスを焼結、軟化させる。焼成温度は軟化温度から軟化温度より20℃高い温度が普通である。焼成温度により内部に残存する気泡の形状、大きさが異なる。その後、冷却して基板上にガラス層が形成される。得られる膜の厚さは、一般的なスクリーン印刷機を使用する場合には通常、5μm〜30μmであるが、印刷時に積層することでさらに厚いガラス層が形成可能である。
【0196】
なお、PETフィルム等の上に、ドクターブレード印刷法、ダイコート印刷法などを用いてガラスペースト膜を形成した後、乾燥するとグリーンシートが得られる。次いでグリーンシートを基板上に熱圧着し、同様の焼成行程を経てガラス層を得ることもできる。この方法で得られるガラス層の厚さは、50μm〜400μmであるが、グリーンシートを積層して用いることにより、さらに厚いガラス層が形成可能である。
【0197】
次に、散乱層としてのガラス層の特性を得るために、光学シミュレーションを行い、それぞれのパラメータについて、その取り出し効率に与える影響を調べた。用いた計算ソフトはOPTIS社製、ソフト「SPEOS」(商品名)である。本ソフトは光線追跡ソフトであると同時に、ガラス層はMie散乱の理論式を適用することが可能である。ここでガラス散乱層は膜厚30μm、屈折率を2.0とした。電荷注入・輸送層、発光層などの発光機能を有する層として用いられる有機層の厚さは、実際は合計0.1μmから0.3μm程度であるが、光線追跡では光線の角度は厚さを変えても変わらないことから、ソフトで許される最小厚さ1μmとした。ガラス基板およびガラス層の合計厚さも同様の理由から100μmとした。
また計算を簡単にする為、有機層および透光性電極を電子注入層および発光層、正孔注入・輸送層、および透光性電極の3つに分けて計算した。計算ではこれらの屈折率を同じとしているが、有機層と透光性電極の屈折率は同程度の値であり、計算結果を大きく変えるものではない為、いずれの場合も屈折率は1.9とした。
また有機層が薄いことから、厳密に考えると干渉による導波路モードが立つが、幾何光学的に扱っても、大きく結果を変えることはないので、今回の発明の効果を計算で見積もるには十分である。有機層では、合計6面から指向性を持たずに発光光が出射するものとする。また簡単の為に陰極の反射率は100%とした。全光束量を1000lmとし、光線本数を10万本あるいは100万本として計算した。透光性基板から出射した光は、透光性基板の上部10μmに設置した受光面で捕らえ、その照度から取り出し効率を算出した。
【0198】
(ガラス層内の散乱物質の密度と散乱物質の径)
ガラス層中における散乱物質の含有率は、1vol%以上が望ましい。散乱物質の大きさで挙動が異なるが、ガラス層中における散乱物質の含有率が1vol%あれば、光取り出し効率を40%以上にすることができる。また、ガラス層中における散乱物質の含有率が5vol%以上であれば、光取り出し効率を65%以上にすることができるので、より望ましい。また、ガラス層中における散乱物質の含有率が10vol%以上であれば、光取り出し効率を70%以上に向上することができるので、さらに望ましい。また、ガラス層中における散乱物質の含有率が15vol%近傍であれば、光取り出し効率を80%以上に向上することができるので、特に望ましい。なお、ガラス層の量産を考えると、製造ばらつきの影響を受けにくい10vol%〜15vol%が望ましい。
【0199】
なお、散乱物質の径が1μmであれば、散乱物質の含有率が1vol%〜20vol%の範囲でも、光取り出し効率を70%以上にすることができ、特に、散乱物質の含有率が2vol%〜15vol%の範囲であれば光取り出し効率を80%以上にすることができる。また、散乱物質の径が2μmであれば、散乱物質の含有率が1vol%〜20vol%の範囲でも、光取り出し効率を65%以上にすることができ、特に、散乱物質の含有率が5vol%以上であれば光取り出し効率を80%以上にすることができる。また、散乱物質の径が3μmであれば、散乱物質の含有率が1vol%〜20vol%の範囲でも、光取り出し効率を60%以上にすることができ、特に、散乱物質の含有率が5vol%以上であれば光取り出し効率を80%以上にすることができる。また、散乱物質の径が5μmであれば、散乱物質の含有率が1vol%〜20vol%の範囲でも、光取り出し効率を50%以上にすることができ、特に、散乱物質の含有率が10vol%以上であれば光取り出し効率を80%以上にすることができる。また、散乱物質の径が7μmであれば、散乱物質の含有率が1vol%〜20vol%の範囲でも、光取り出し効率を45%以上にすることができ、特に、散乱物質の含有率が10vol%以上であれば光取り出し効率を80%以上にすることができる。また、散乱物質の径が10μmであれば、散乱物質の含有率が1vol%〜20vol%の範囲でも、光取り出し効率を40%以上にすることができ、特に、散乱物質の含有率が15vol%以上であれば光取り出し効率を80%以上にすることができる。以上から、散乱物質の径が大きい場合、含有率が多くなるほど光取り出し効率が向上することがわかる。一方、散乱物質の径が小さい場合、含有率が少なくても光取り出し効率が向上する。
【0200】
(散乱物質の屈折率)
光取り出し効率(%)と散乱物質の屈折率との関係を計算により求めた。ここでも計算を簡略にするため、有機層および透光性電極を電子注入・輸送層および発光層、正孔注入・輸送層、および透光性電極の3つに分けて計算した。ここで、電子注入・輸送層(厚さ:1μm、屈折率:1.9)、発光層(厚さ:1μm、屈折率:1.9)、正孔注入・輸送層(厚さ:1μm、屈折率:1.9)、ガラス層(厚さ:30μm、ベース材の屈折率:2.0、散乱物質の径:2μm、散乱物質の数:約3600万個、散乱物質の含有量:15vol%)、ガラス基板(厚さ:100μm、屈折率:1.54)、光束1000lmを10万本に分割して計算した(波長550nm)。この結果、ベース材の屈折率(2.0)と散乱物質の屈折率との差が0.2以上(散乱物質の屈折率が1.8以下)であれば、光取り出し効率を80%以上にすることができるので、特に望ましい。なお、ベース材の屈折率と散乱物質の屈折率との差が0.1であっても(散乱物質の屈折率が1.9)、光取り出し効率を65%以上にすることができる。
【0201】
(ガラス層の厚さ)
上記と同じ構成で、ガラス層のΔnを1.0とした。この場合、ガラス層中における散乱物質の含有率が1vol%以上であれば、ガラス層の厚さが約15μmであっても、光取り出し効率を55%以上にすることができるので、望ましい。また、ガラス層中における散乱物質の含有率が5vol%〜15vol%あれば、ガラス層の厚さが15μm以下や60μm以上であっても、光取り出し効率を80%以上にすることができるので、特に望ましい。
【0202】
(散乱物質の数)
上記と同じ構成で、ガラス層のΔnを1.0とした。この場合、ガラス層1mm当たりの散乱物質の数が1×10個以上あれば、光取り出し効率を55%以上にすることができるので、望ましい。また、ガラス層1mm当たりの散乱物質の数が2.5×10個以上あれば、光取り出し効率を75%以上にすることができるので、より望ましい。また、ガラス層1mm当たりの散乱物質の数が5×10〜2×10個あれば、光取り出し効率を80%以上にすることができるので、特に望ましい。
【0203】
透光性電極の屈折率がガラス層の屈折率よりも大きい場合、ガラス層の表面で全反射が発生し、ガラス層に進入する光の量が減る。よって、光の取り出し効率が低下する。従って、本発明のガラス層の屈折率は、透光性電極の屈折率と同等若しくはそれ以上であることが望ましい。
【0204】
(ガラス層の屈折率の測定方法)
ガラス層の屈折率を測定するには、下記の2つの方法がある。
一つは、ガラス層の組成を分析し、その後、同一組成のガラスを作製し、プリズム法にて屈折率を評価する。他の一つは、ガラス層を1〜2μmまで薄く研磨し、泡のない10μmΦ程度の領域で、エリプソ測定し、屈折率を評価する。なお、本発明では、プリズム法にて屈折率を評価することを前提としている。
【0205】
(ガラス層の表面粗さ)
ガラス層は、透光性電極が設けられる表面を有している。上述したように、本発明のガラス層は、散乱物質を含有していることもある。上述したように、散乱物質の径としては、大きければ大きいほど含有量が少なくても光取り出し効率の向上が図れる。しかし、発明者の実験によれば、径が大きければ大きいほど、ガラス層の主表面から突出した場合にガラス層の主表面の算術平均粗さ(Ra)が大きくなる傾向にある。上述したように、ガラス層の主表面には透光性電極が設けられる。そのため、ガラス層の主表面の算術平均粗さ(Ra)が大きいほど、短絡が発生しやすくなり、有機LED素子が発光しないという問題が生じやすい。
【0206】
<透光性電極>
透光性電極(陽極)103は、有機層110で発生した光を外部に取り出すために、80%以上の透光性があることが望ましい。また、多くの正孔を注入するため、仕事関数が高いものが要求される。具体的には、ITO、SnO、ZnO、IZO(Indium Zinc Oxide)、AZO(ZnO−Al:アルミニウムがドーピングされた亜鉛酸化物)、GZO(ZnO−Ga:ガリウムがドーピングされた亜鉛酸化物)、NbドープTiO、TaドープTiOなどの材料が用いられる。透光性電極103の厚さは、100nm以上が望ましい。なお、透光性電極103の屈折率は、1.9〜2.2である。ここで、ITOを例にとり説明すると、キャリア濃度を増加させると、ITOの屈折率を低下させることができる。市販されているITOは、SnOが10wt%が標準となっているが、これより、Sn濃度を増やすことで、ITOの屈折率を下げることができる。但し、Sn濃度増加により、キャリア濃度は増加するが、移動度および透過率の低下があるため、これらのバランスをとって、Sn量を決める必要がある。
なお、透光性電極を陰極としても良いことは言うまでもない。
【0207】
<有機層(発光機能を有する層)>
有機層110は、発光機能を有する層であり、正孔注入層111と、正孔輸送層112と、発光層113と、電子輸送層114と、電子注入層115とにより構成される。有機層110の屈折率は、1.7〜1.8である。これら正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層および電子注入層は、通常の有機LEDに使用される材料や構成が使用されればよい。また、一部の層を設けない、一部の層を2層にする、他の層を付加するなど、種々の公知の応用をしてもよい。
【0208】
<反射性電極>
反射性電極(陰極)120は、仕事関数の小さな金属またはその合金が用いられる。陰極120は、具体的には、アルカリ金属、アルカリ土類金属および周期表第3属の金属などが挙げられる。このうち、安価で化学的安定性の良い材料であることから、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)またはこれらの合金などが望ましく用いられる。また、Al、MgAgの共蒸着膜、LiFまたはLi20の薄膜蒸着膜の上にAlを蒸着した積層電極等が用いられる。また、高分子系では、カルシウム(Ca)またはバリウム(Ba)とアルミニウム(Al)の積層等が用いられる。
なお、反射性電極を陽極としても良いことは言うまでもない。また、陽極と陰極の両方とも透光性電極とすることもできる。
【0209】
さらに、耐久性を向上させるために、封止用の対向基板を有機LED発光素子に重ね合わせて封止したものについて説明する。まず。対向基板として、素子基板とは別のガラス基板を用意する。このガラス基板を必要に応じて加工して捕水材を収納するための捕水材収納部を形成する。捕水材収納部はガラス基板にレジストを塗布し、露光、現像により基板の一部を露出させる。この露出部分をエッチングにより薄くすることにより捕水材収納部を形成する。
【0210】
この捕水材収納部酸化カルシウム等の捕水材を配置した後、有機LED素子を形成した基板と対抗基板とを重ね合わせて接着する。たとえば、対向基板の捕水材収納部が設けられた面に、ディスペンサを用いてシール材を塗布する。シール材として、例えば、エポキシ系紫外線硬化性樹脂を用いることができる。また、シール材は、有機LED素子と対向する領域の外周全体に塗布する。二枚の基板を位置合わせして対向させた後、紫外線を照射してシール材を硬化させ、基板同士を接着する。この後、シール材の硬化をより促進させるために、例えば、80℃のクリーンオーブン中で1時間の熱処理を施す。この結果、シール材および一対の基板によって、有機LED素子が存在する基板間と、基板の外部とが隔離される。捕水材を配置することにより、封止された空間に残留または侵入してくる水分等による有機LED素子の劣化を防止することができる。
【0211】
必要に応じて、基板の外周付近の不要部分を切断除去し、透光性電極と反射性電極とを駆動回路に接続する。陽極と陰極ともに透光性電極にした場合には、両方の透光性電極を駆動回路に接続する。
【0212】
なお前記実施の形態では、透光性電極と反射性電極とで有機層を挟んだ構成について説明したが、両方の電極を透光性にし、両面発光型の有機EL層を構成するようにしてもよい。
また本発明の透光性電極付き透光性基板は、有機LED素子に限定されることなく、無機LED素子、液晶など、種々の発光デバイス、あるいは光量センサ、太陽電池などの受光デバイスなど光デバイスの高効率化に有効である。
【実施例】
【0213】
(実施例1)
ガラス基板101は、旭硝子株式会社製ガラス基板「PD200」(商品名)を用いた。このガラスは歪点570℃、熱膨張係数83×10−7(1/℃)である。図1に示すように、ガラス基板101に、銀ペーストを用いてスクリーン印刷により、図2(a)に示すように、たとえば、ペースト膜厚10μm、ライン幅200μmで、10cm×10cmの格子状の銀を主成分とする補助配線パターン200を形成する。
【0214】
ガラス層102は、高屈折率ガラスフリットペーストを焼成した層である。ここでは、ガラス層102として、表1に示す組成を有するガラスを用いる。このガラスのガラス転移温度は483℃、屈服点は528℃、熱膨張係数は83×10−7(1/℃)である。
このガラスのF線(486.13nm)での屈折率nFは2.03558、d線(587.56nm)での屈折率ndは1.99810、C線(656.27nm)での屈折率nCは1.98344である。屈折率は、屈折率計(カルニュー光学工業社製、商品名:KRP−2)で測定した。ガラス転移点(Tg)および屈服点(At)は、熱分析装置(Bruker社製、商品名:TD5000SA)で熱膨張法により、昇温速度5℃/分で測定した。
【0215】
【表1】
【0216】
以下の手順で、ガラス層102を形成した。表1の比率で示される組成となるように、粉末原料を調合した。調合した粉末原料をアルミナ製のボールミルで12時間乾式粉砕し、平均粒径(d50、積算値50%の粒度、単位μm)が1〜3μmであるガラス粉末を作製した。そして、得られたガラス粉末75gを、有機ビヒクル(α―テルピネオール等にエチルセルロースを10質量%程度溶解したもの)25gと混練してペーストインク(ガラスペースト)を作製した。
【0217】
このガラスペーストを、ガラス基板101上に、スルーホールHを形成する部分を除いて、焼成後の膜厚が15μm、30μm、60μm、120μmとなるよう均一に印刷する。スルーホールの形状は、楕円形で、補助配線に接する部分で補助配線の長手方向に長軸(100μm)、それに直交する方向に短軸(50μm)がくるように5cm間隔で設ける。また、スルーホールの側面は上方に向けて広がる形状とする。次いで、これを150℃で30分間乾燥した後、一旦室温に戻し、450℃まで45分で昇温し、450℃で10時間保持し、その後、550℃まで12分で昇温し、550℃で30分間保持し、その後、室温まで3時間で降温し、ガラス基板上にガラス層を形成する。膜厚120μmのガラス層については、膜厚が60μmとなるまで表面を研磨する。このようにして形成される、ガラス膜中には、多くの気泡が含まれており、これによる散乱が生じる。一方でガラス層最表面には、うねりはあるものの、気泡が開口するなど、有機LEDの電極間短絡の原因となるような局所的な凹凸は見られない。これにより、図2(b)に示すように、補助配線パターン200をスルーホールH付きのガラス層102で被覆した電子デバイス用基板を形成する。
【0218】
ガラス層のスルーホールH近辺を除いた表面のうねりによるガラス層の斜面の角度は、最大27°程度とすることができ、この角度は、パッシブ型有機LEDパネルに用いられる開口絶縁膜のエッジ部のテーパ角(40〜50°)よりも小さく、有機膜、金属膜などのカバレージに支障はないと考えられる。
【0219】
また、ここでは、フリット作製時にガラス粒子の分級をしておらず、大きな粒子が入っている。このうねりは、焼成時に大きな粒子の部分がうねりとなって残ることが原因と考えられる。したがって、他の条件が同じである場合、粒子の大きさを小さくかつ均一にすることで、うねりは小さくなり、粒子の大きさを大きくすることでうねりを大きくするように調整することができるものと思われる。
【0220】
また、局所的な粗さについて、補助配線パターンを形成していないガラス基板について測定した。なお、局所的な粗さについては、ガラス層の表面を研磨していない場合には、ガラス層の表面の算術平均粗さRaは31.0nmであり、研磨された場合には、ガラス層の表面の算術平均粗さRaは23.5nmであった。これらはいずれもガラス層の表面には局所的な突起は見られず、研磨されていないガラス層の表面の測定結果は、鏡面研磨されたガラス層の表面の測定結果と似た凹凸形状になっていた。これはガラス層中の散乱体が気泡であり、かつ気泡が表面には存在しないためと思われる。有機材料に散乱材を混ぜた場合(ベース材として樹脂を、散乱材として固形粒子を用いた場合)では、散乱材が表面に露出する場合があるため、散乱材表面の粗さを平滑にして、有機LED素子の短絡を防ぐ必要がある。
【0221】
一方研磨をしたものは、平滑な表面が形成されている。
各電子デバイス用ガラス基板(ガラス層付き基板)の全光透過率とヘイズ値を測定した。測定装置として、スガ試験機ヘーズメータHGM−2を用いた。リファレンスとして、上述したガラス基板「PD200」の素板を測定した。測定した結果を表2に示す。
【0222】
【表2】
【0223】
このように散乱性を有するガラス層(散乱層)の膜厚が厚くなるにつれて、散乱性が強くなっているのが分かる。
【0224】
次に、上記で形成した電子デバイス用ガラス基板のうち、厚さ30μmのものを用いて、図1に示したような有機LED素子を製造する。なおここでは、散乱性のガラス層の評価のために、補助配線パターンを形成していない電子デバイス用ガラス基板においてガラス層の焼成温度については550℃のもののほか、570℃、580℃のものについても実験を行った。まず、散乱性のガラス層102および散乱性のガラス層102が形成されていないガラス基板101上に透光性電極103としてのITO膜を膜厚が150nmとなるように、スパッタにより成膜する。スパッタは室温で実施し、Ar 99.5SCCM、O 0.5SCCM、圧力 0.47Pa、投入電力 2.35W/cmとする。またここではメタルマスクを用いてマスク成膜を行なう。ついで、純水を用いた超音波洗浄を行い、その後エキシマUV発生装置で紫外線を照射し、表面を清浄化した。ついで、真空蒸着装置を用いて、透光性電極103としてのITO膜上に、発光機能を有する有機膜としてα−NPD(N,N’−diphenyl−N,N’−bis(l−naphthyl)−l,l’biphenyl−4,4’’diamine)を100nm、Alq(tris8−hydroxyquinoline aluminum)を60nm、電極としてLiFを0.5nm、反射性電極としてAlを80nmを蒸着する。このとき、α−NPDとAlqはマスクを用いて直径12mmの円形パターンとし、LiFとAlは上記有機膜を介してITOパターン上に2mm□の領域を持つようなマスクを用いてパターンを形成し、有機LED素子を完成させる。
【0225】
その後、対向基板としてPD200にサンドブラストで凹部を形成し、凹部周辺の土手には周辺シール用に感光性エポキシ樹脂を塗布する。次にグローブボックス内に、素子基板と対向基板を入れ、対向基板凹部に、CaOを含有した捕水材を貼り付け、次いで素子基板と対向基板とを貼り合わせ、紫外線を照射し、周辺シール用の樹脂を硬化させた。ここでも実験は補助配線パターンを形成していない電子デバイス用ガラス基板を用いて有機LED素子を形成した。各素子での電極間短絡の発生状況を表3に示す。ここで自己修復とは、素子に10mAの過電流を流し、短絡部をそのジュール熱で自己修復させることを指す。
【0226】
【表3】
【0227】
素子が発光している様子を、観察した。散乱性ガラス層がない素子では、ITOパターンとAlパターンが交わって形成される概2mm□の領域のみから発光が確認されるが、散乱性のガラス層上に作製した素子では、上記の概2mm□領域だけでなく周辺のガラス層形成部からも光が大気中に取り出されている。
【0228】
その後ガラス層を570℃で焼成した素子の特性評価を行った。全光束測定は、浜松ホトニクス社製EL特性測定機C9920−12を用いた。ガラス層がある素子とない素子での電流電圧特性を図9に示す。このように、ほぼ同程度の特性が得られており、ガラス層上に形成した素子でも、大きなリーク電流が存在しないことが分かる。次に電流輝度特性を図10に示す。このように散乱性のガラス層の有無に関わらず、光束量が電流に比例しており、散乱性のガラス層がある場合には、ない場合と比較して光束量は15%アップした。これは、ガラス層の屈折率が、Alq3の発光波長(450nmから700nm)において透光性電極であるITOの屈折率より高い為、Alq3のEL発光光が、ITOと散乱性のガラス層の界面で全反射するのを抑制し、効率よく光が大気中に取り出すことが可能であることを示している。
【0229】
次に色味の角度依存性を評価した。光学測定には浜松ホトニクス社製マルチチャンネル分光器(商品名:C10027)を用い、その分光器に対して素子を回転させながら測定を行うことで、発光輝度と発光色の角度依存性の測定を行った。角度の定義は、素子の法線方向と素子から分光器に向かう方向とのなす角を測定角度θ[°]とした。つまり、素子の正面に分光器を設置した状態が0°となる。
【0230】
得られたスペクトルデータを図11乃至図14に示す。図11は散乱性のガラス層のない有機LED素子の測定結果であり、図12は更にそれぞれの測定角度で最大輝度を示す波長での輝度を1として規格化したものである。図12より測定角度によってスペクトルにズレが生じていることが分かる。
【0231】
次に、図13は散乱性のガラス層がある素子の測定結果であり、図14は更にそれぞれの測定角度で最大輝度を示す波長での輝度を1として規格化したものである。図14より測定角度が変わってもスペクトルのズレが殆ど生じていないことが分かる。さらに上記スペクトルを色度座標に変換した結果を表4と図15に示す。
【表4】
【0232】
散乱性のガラス層なしの素子が測定角度によって色度が大きく変わっているのに対し、散乱性のガラス層ありの素子では変化が少ないことが分かる。以上より、素子に散乱性のガラス層を付与することによって、本来の目的である光取り出し効率の改善の効果以外にも、色の角度変化の緩和という更なる効果が得られることが分かった。色の角度変化が少ないということは、発光素子としては、見る角度が限定されないという大きな長所となる。
【0233】
上述した評価実験からわかるように、本発明のシミュレーションが正しいことがわかった。
【0234】
なお、ここで用いた散乱性のガラス層のうち、570℃および580℃で焼成したものの断面を研磨し、倍率1万倍でSEM写真を撮り、その写真から、気泡の数と気泡のガラス層表面からの距離の関係を調べた。SEM写真の横手方向の長さは12.5μmであった。SEM写真にガラス層表層から0.25μm刻みでラインを引き、この0.25μm×12.5μmの枠中に確認できる泡の数をカウントした。ここで複数の枠にまたがって存在する泡は、下の枠にあるものとしてカウントした。その結果を図16に示す。ここでX軸は、ガラス層表面からの距離を示しているが、例えば、0.5μmの点はガラス層表面から測って0.25μm〜0.5μmの枠で確認された泡の数である。またX=0は、図14あるいは図15に示したようにガラス散乱層表面に存在している凹みの数を示している。このように焼成温度570℃の場合では、曲線aに示すように、表面から0.5μmから、580℃の場合では、曲線bに示すように、表面から1.25μmから表面に近づくに従って、泡数が減少していることが確認できる。また表面にはいずれの場合においても凹みは確認されなかった。
【0235】
さらに、図16から、ガラス層の表面からの距離x(x≦0.2μm)における散乱物質の密度ρが、距離x=2μmにおける前記散乱物質の密度ρに対し、ρ>ρを満たす点も明らかである。また、図16では焼成温度570℃および580℃の場合について示したが、焼成温度を若干変化させても同様の結果を得ることができた。
【0236】
さらにまた、図16から、ガラス層の表面からの距離x(x≦0.2μm)における散乱物質の密度ρが、距離x=5μmにおける前記散乱物質の密度ρに対し、ρ>ρを満たす点についても明らかである。
【0237】
なお、580℃焼成品の泡数は570℃焼成品より多い傾向にあるが、原因は断定できない。可能性として、以下の2つが考えられる。
(1)580℃焼成品の方が、温度が高い分だけ泡が膨張しており、カウントし易くなっている、
(2)ガラス粉末に付着した有機系の残渣物の分解が580℃でより進んでいて、泡数が多くなった。
【0238】
次に析出結晶の発生有無を調べた。散乱性のガラス層表面に結晶が析出している場合は、光学顕微鏡で容易に視認できる。なぜなら結晶が析出していない場合には、ガラス層表面は極めて平滑であり、特異的な点は目立つからである。結晶か異物かの区別はその形の対称性などから容易に判断可能である。また散乱性のガラス層内部にある析出結晶もその形から容易に気泡、異物と区別できる。結果を表5に示す。570℃焼成のように適切な焼成条件を選ぶことによって、結晶をガラス層内部のみに析出させ、表面での発生を抑制することが可能である。
【0239】
【表5】
【0240】
なお、気泡と結晶は別のメカニズムで発生するため、ガラス材料、粉末粒径、表面状態、焼成条件(雰囲気、圧力)などを制御することで、気泡のみあるいは結晶のみを発生させることが可能である。例えば、ガラスのネットワークフォーマを増やしたり、結晶析出を抑制するアルカリ酸化物成分を増やすことで、結晶析出は抑制され、減圧下で焼成すれば、気泡発生は抑制される。
【0241】
次に、今回作製したガラス層中の気泡の粒度分布を測定した。ガラス層の厚みが、15μmのものであれば顕微鏡下でガラス層内のすべての気泡が識別できる。90.5μm×68.1μmの視野内の気泡を画像処理によって識別、カウントした。ガラス層の任意の3ケ所での計測した結果を表6に示す。
【0242】
【表6】
【0243】
また、気泡直径分布は、いずれも気泡直径は2μm以下のものが多く、平均直径は1.3〜1.4μmであった。またガラス層1mm当たりの気泡数は1.1×10個から2.2×10個であった。上述した計測結果(ガラス層の厚さが15μm)を利用してガラス層の厚さが30μmおよび60μmの場合を比例計算すると、ガラス層の厚さが30μmの場合における気泡数は2.2×10個〜4.4×10個、厚さが60μmの場合における気泡数は4.4×10個〜8.8×10個となる。
【0244】
光の取り出し効率を測定したところ、上記の気泡の場合、約20万個/mmあれば光の取り出し効率は、散乱物質を添加しない場合に比べて15%向上していることがわかった。
【0245】
(実施例2)
(配線抵抗の測定)
平均粒径1μmのAg粉末87.2gと、Bi−Zn―B系ガラスフリット2.7g、有機ビヒクル(α−テルピネオールにエチルセルロースを10重量%溶解した溶液)10gとを混練して、Agペーストを作成した。
シリカ膜で表面コートされた大きさ5cm角、厚さ0.55mmのソーダライムガラス基板上に、図17に示されるような配線パターンを、スクリーン印刷法により形成した。ここで、Xは線幅であり、マスク寸法で100μm、200μm、500μmとした。なお、図中における数字の単位は、mmである。
【0246】
これを150℃で30分間乾燥した後、一旦室温に戻し、450℃まで30分で昇温し、450℃で30分間保持して、有機ビヒクルの樹脂を分解・消失させた。その後、575℃まで12分で昇温し、575℃で30分間保持して、Ag粉を焼結させた。その後、室温まで3時間で降温し、ソーダライムガラス基板上にAg配線パターンを形成した。
【0247】
また、平均粒径1μmのAu粉末88.5gと、Bi系ガラスフリット1.5g、有機ビヒクル(α−テルピネオールにエチルセルロースを10重量%溶解した溶液)10gとを混練して、Auペーストを作成した。このAuペーストを用いて、Agペーストと同じ方法で、Au配線パターンを形成した。
【0248】
形成した配線パターンの抵抗を測定した。測定には、SANWAのテスターCD−782Cを用いて、2端子法で測定した。プローブと配線との接触抵抗は、プローブを近接したときの値を用いて、実測値から差し引き補正した。配線寸法と抵抗測定結果を表7に示す。
【0249】
【表7】
【0250】
(実施例3)
(配線・ITOのコンタクト抵抗測定)
次に、透光性電極と補助配線のコンタクト特性を評価するTEG(Test Element Group)を作製した。上述の方法で得られたAgペースト及びAuペーストを用いて、図18に示すパッドを形成した。ここで、図中の数字の単位は、mmである。Ag及びAuパターンの膜厚は、それぞれ11.5μmと5.0μmであった。次に、以下の手順で、ガラス層を形成した。表8のモル%で示される組成となるように、P、B、LiO、Bi、Nb、WO、ZnOの各粉末原料を合計で200gとなるよう秤取し、混合した。その後、混合した粉末原料を、白金坩堝を用いて1050℃で1時間溶解し、続けて950℃で1時間溶解して融液を得た。この融液の半量をカーボン鋳型に流し出し、バルク状のガラスを得た。次に、残りの融液を双ロールの隙間に流し出して急冷し、フレーク状のガラスを得た。また、バルク状ガラスは500℃の電気炉に入れ、1時間あたり100℃の速度で室温まで温度を下げることにより、歪みを取り除いた。作製したフレークをアルミナ製のボールミルで1時間乾式粉砕して、ガラスの粉末を得た。得られたガラスの粉末の質量平均粒径は、いずれも、3μmであった。
【0251】
得られたガラスについて屈折率(n)、ガラス転移点(T)、50℃〜300℃における平均線膨張係数(α50−300)、ガラス軟化点(T)を以下のようにして測定した。結果を表8に示す。
【0252】
【表8】
【0253】
1.屈折率(n
ガラスを研磨した後、カルニュー社製精密屈折計KPR−2000によって、Vブロック法で、測定波長587.6nmで25℃で測定した。
【0254】
2.ガラス転移点(T
ガラスを直径5mm長さ200mmの丸棒状に加工した後、ブルッカー・エイエックスエス社製熱膨張計TD5000SAによって、昇温速度を5℃/minにして測定した。
【0255】
3.50℃〜300℃における平均線膨張係数(α50−300
ガラスを直径5mm長さ200mmの丸棒状に加工した後、ブルッカー・エイエックスエス社製熱熱膨張計TD5000SAによって、昇温速度を5℃/minにして測定した。50℃におけるガラス棒の長さをL50とし、300℃におけるガラス棒の長さをL300としたとき、50℃〜300℃における平均線膨張係数(α50−300)は、α50−300={(L300/L50)―1}/(300−50)によって求めた。
【0256】
4.ガラス軟化点(T
ガラスをめのう乳鉢で粉砕した後、粒径74μmから106μmまでのガラス粉末を篩い分け、この120mgを白金パンに入れ、エスアイアイ・ナノテクノロジー社製熱TG/DTA EXSTAR6000によって昇温速度を10℃/minにして測定し、ガラス転移点(T)よりも高温側に現れる軟化流動に伴うDTA曲線の屈曲点における温度をガラス軟化点(T)とした。
【0257】
次いで、ガラスフリット75gと、有機ビヒクル(α−テルピネオールにエチルセルロースを10質量%溶解したもの)25gとを混練してガラスペーストを作製した。このガラスペーストを用いて、図19に示すような開口部を有するガラス層パターンを図18に示した配線パターン上に、スクリーン印刷法により形成した。ここで、Yは正方形である開口部の一辺の長さを示す。図20に配線パターンとガラス層パターンの重ね合わせた状態を示す。なお、図中の数字の単位は、mmである。ここで、Ag配線パターン上に形成したガラス層の膜厚は20μmであり、Au配線パターン上に形成したガラス層の膜厚は17μmである。次に、ITOをマスクスパッタ法により図21に示すように成膜した。なお、図中の数字の単位は、mmである。スパッタは室温で実施し、Ar:99.5SCCM、O:0.5SCCM、圧力:0.47Pa、投入電力:2.35W/cmであり、膜厚は150nmである。その後、ITOの透過率向上及び抵抗低下するために、200℃1時間大気雰囲気でアニールした。アニール後のITOのシート抵抗は33Ω/□であった。これにより、ガラス層開口部を介して6つのITOと配線金属のコンタクトを有するTEGが形成された。このコンタクトTEGの両端の抵抗を測定し、その値からITOの抵抗を差し引くことにより、コンタクト抵抗を算出した。ITOの抵抗はシート抵抗(33Ω/□)及び、コンタクト間距離、及びITOパターン幅3mmより算出した。コンタクトホール径はITO幅(3mm)よりも小さいため、ITOの抵抗は上述の値よりも大きいことが予想され、その誤差はコンタクト径が小さいほど大きくなる。従って、コンタクト径が小さい場合には、実際のコンタクト抵抗は、算出値よりも小さいことが予想される。結果を表9に示す。
【0258】
【表9】
【0259】
このように、Ag、Auいずれの場合も、コンタクト径が大きくなるに従って、コンタクト抵抗が小さくなるが、500μmと1000μmとでは、ほぼ同等な値とあることが分かった。
【0260】
(実施例4)
(格子状補助配線付きITOの抵抗測定)
次に格子状の補助配線パターン上にガラス層の開口部を介してITOを接続するテストパターンを形成して、ITOが補助配線との電気的接続により低抵抗化しているか調べた。上述のガラス基板、Agペースト及びAuペーストを用いて図22に示す格子状の配線パターンを形成した。ここで、Ag配線パターンの膜厚は13.5μmであり、Au配線パターンの膜厚は7μmである。なお、図中の数字の単位は、mmである。ついで上述のガラスペーストを用いて、図23に示す格子状配線パターン上に500μm□の開口部を有するガラス層を形成した。ここで、Ag配線パターン上に形成したガラス層の膜厚は20μmであり、Au配線パターン上に形成したガラス層の膜厚は15μmである。こうして作製されたガラス層付き基板の全光透過率は85.0、ヘイズ値は71.0であった。測定装置はスガ試験機社製ヘーズコンピュータ(商品名:HZ−2)を用い、リファレンスとしてガラス基板PD200の素板を用いて測定した。図24に配線と開口部の位置関係を示す。なお、図中の数字の単位は、mmである。ついでITOをマスクスパッタする。形成されたITOのパターンは、一辺の長さが31mmの正方形でガラス層の開口部を被覆するように形成する。その後上述と同じ熱処理を施して、ITOの低抵抗化、高透過率化を行った。これにより、格子状のAg配線およびAu配線で電気的に補助されたITOが形成された。ITOの低抵抗化の度合いを調査するために、図25の点1から点5の位置のITOに千住金属社製セラソルザを半田ごてで加熱、付着させ、テスタとのコンタクト抵抗を低下させた上で各点と左下端子部との間の抵抗を測定した。
【0261】
なお、図中の数字の単位は、mmである。ここで、点1から点4は各格子の中心に位置している。リファレンスとして、アニール処理を施した一辺が31mmのITOパターンに図26のようにセラソルザを付着させ、点0と点1から点5との間の各抵抗を測定した。結果を表10に示す。
【0262】
【表10】
【0263】
このように、補助配線のないリファレンスの場合には、点0と距離が離れるにしたがって抵抗値が上がり好ましくない。一方、Ag或いはAuの補助配線を設けたものは、点0と距離が離れても抵抗値がほぼ一定であり、その上、リファレンスと比較して低抵抗になっている。通常スパッタで形成されるAl系、Ag系補助配線ではシート抵抗が50mΩ/□〜100mΩ/□であることから、この1/10以上の低抵抗補助配線が実現していることが分かる。この配線の段差はその上に形成されたガラス層で平坦化されるため配線部でのITOの断線などの不具合は認められない。実施例3の結果からマスク寸法500μm□のコンタクト抵抗は、Ag配線の場合には32Ωで、Au配線の場合には17Ωである。この実施例では、一つの補助配線格子に500μm□の開口部が16ケ配置されているので、補助配線とのコンタクト抵抗は、Agの場合には、2.0ΩでAuの場合には、1.1Ωとなり、ITOのシート抵抗より十分小さくなっている。
【0264】
また、作製した基板上に有機EL素子を作製する場合、ガラス層開口部に素子を形成すると、開口部補助配線の表面が荒れているため、素子が短絡する可能性がある。この場合には、開口部に陰極を成膜しないようにする、或いは開口部を平滑・絶縁化する為に樹脂を充填するなどの方法を用いれば、開口部での素子の短絡を防止することが可能である。
【0265】
本発明は、以下に示すように、OLED素子の大面積化に有効である。ここで例えばシート抵抗が10Ω/□のITOを補助する場合を考える。このシート抵抗のITOを用いて均一発光できる正方形の大きさは5cm□程度と考えられる。この5cm□のITOに図27(ガラス層、及びその開口部は省略する)のように、幅125μmの補助配線をITOの辺に沿って設けると開口率はおよそ1%低下する。補助配線のシート抵抗を3mΩ/□とすると一辺の補助配線の抵抗は3mΩ/□×400□=1.2Ωとなる。これを図28のように格子状に配置すると、見かけのシート抵抗は0.6Ω/□となる。仮に10Ω/□で5cm均一発光が得られるなら、この補助配線を用いて一辺が83cm(5cm×10/0.6≒83cm)の均一発光が可能であると推定される。開口率で1%のロスがあるが、ガラス層を高屈折率ガラス散乱層にすれば、光取り出しは大幅に改善されるため、問題とならない。またこの程度の配線線であれば、外観上も気にならないか、もしくは、パネル外面に散乱フィルムを貼れば、視認されなくなる。また補助配線線幅をさらに増やせば、更なる大型化が可能となる。一方、従来法として使われているスパッタアルミ膜などでは、シート抵抗は0.1Ω/□程度である。5cm□のITOに幅125μmのこの補助配線を設けた場合には、0.1Ω/□×400□=40Ωとなり、補助配線として機能しない。補助配線として機能させるため、例えば格子上に配置したときのシート抵抗を1Ωとするために必要な線幅は2.5mmとなり(図29)、開口率はおよそ20%も低下してしまう(図30)。この場合には、光の利用効率が低下するだけでなく、格子状の外観が問題になる場合もある。以上のように高屈折率ガラス散乱層とその下に埋め込まれ散乱層開口部を介して透光性電極にコンタクトした厚膜補助配線を用いれば、従来技術では不可能であった大面積有機LED素子と高い光取り出し効率を同時に実現できる。
【0266】
なおこの実施の形態では、有機LED素子について説明したが、有機LED素子の場合には、トップエミッション構造あるいはバックエミッション構造いずれにも有効であり、また上記構造に限定されることなく、無機LED素子をはじめ、太陽電池などの光デバイスだけでなく、DRAMなどの電子デバイスへの適用も有効である
【0267】
本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。
【0268】
本出願は、2008年10月6日出願の日本特許出願(特願2008−259948)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
【産業上の利用可能性】
【0269】
以上説明してきたように、本発明の電子デバイス用基板は、補助配線をガラス層で被覆し、平滑な表面を有しているため、長寿命で信頼性の高い電子デバイスを提供することが可能である。また、うねりを有することで反射性電極の視認性を抑制することができる。
また、光散乱性が良好でありかつ安定で信頼性の高い散乱性のガラス層を用いることで、光の取り出し効率あるいは取り込み効率を増大することができ、発光デバイス、受光デバイスなどをはじめ電子デバイス全般に適用可能である。
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