(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、半導体スイッチング素子を用いた従来の周波数変換装置においては、以下の問題点が指摘されている。
多数の半導体素子及び電子制御回路を用いているため、信頼性が低いという問題がある。
また、スイッチングにより電磁ノイズが発生するという問題がある。電磁ノイズは、周囲の電子機器の誤動作を引き起こす可能性がある。特に航空機内部においては航行機器への影響が心配される。電磁ノイズを伝搬、放射しないようにノイズ対策部品を用いると無用の重量増、部品点数の増加を引き起こす。
更に、交流から直流に変換し、そしてまた直流から交流へと2回の交流−直流変換、及び直流−交流変換を行うため、損失が発生する。またサイクロコンバータによる高周波のスイッチングにより損失が発生する。従って、従来の周波数変換装置は、周波数変換の効率が悪いという問題がある。
【0005】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、信頼性が高く電磁ノイズの少ない高効率の周波数変換装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る周波数変換装置は、多相交流電圧が印加される複数の巻線が特定の方向に沿って略等ピッチで配されている第1巻線と、該第1巻線に磁気結合しており、前記第1巻線と異なるピッチで前記特定の方向に沿って複数の巻線が配されている第2巻線と、磁気結合した前記第1及び第2巻線間の磁路上に配置してあり、前記特定の方向に沿って略等ピッチで複数の磁性体が配されている磁性体列とを備え、前記特定の方向における前記複数の磁性体の数と、前記第1及び第2巻線が有する複数の巻線の繰り返しパターンの数とが異なり、前記第2巻線に前記多相交流電圧の周波数と異なる周波数の交流電圧を誘起させるようにしてあることを特徴とする。
【0007】
本発明にあっては、多相交流が印加された第1巻線は交番磁界を生成する。該交番磁界の空間周波数は磁性体列によって変調される。変調された交番磁界によって、第2巻線に交流が誘起される。前記特定の方向における前記複数の磁性体の数と、前記第1及び第2巻線が有する複数の巻線の繰り返しパターンの数とが異なるため、第2巻線に誘起される交流の周波数と、第1巻線に印加される多相交流の周波数とは異なる。つまり、交流の周波数が変換される。
本発明では半導体スイッチング素子及び電子制御回路を用いずに、交流の周波数変換を行うことができるため、信頼性が高い。また、スイッチングノイズが発生しない。更に、交流−直流変換、及び直流−交流変換を行って周波数変換を行う方式に比べて、周波数変換効率が高い。
【0008】
本発明に係る周波数変換装置は、前記第1及び第2巻線並びに前記磁性体列は以下の式を満たすことを特徴とする。
P=L±H
但し、
P:前記特定の方向における、前記複数の磁性体の数
L:前記特定の方向における、前記第1巻線が有する複数の巻線の繰り返しパターンの数
H:前記特定の方向における、前記第2巻線が有する複数の巻線の繰り返しパターンの数
【0009】
本発明にあっては、変調された交番磁界は複数の周波数成分を含むが、P=L±Hの関係を満たした場合、主要な周波数成分の交番磁界が第2巻線が有する複数の巻線の繰り返しパターンの数に一致するため、交流の周波数変換効率をより向上させることができる。
【0010】
本発明に係る周波数変換装置は、多相交流電圧が印加される複数の巻線が特定の方向に沿って略等ピッチで配されている第1巻線と、該第1巻線に磁気結合しており、前記第1巻線と異なるピッチで前記特定の方向に沿って複数の磁極対が配されている磁石列と、磁気結合した前記第1巻線及び前記磁石列間の磁路上に配置してあり、前記特定の方向に沿って略等ピッチで複数の磁性体が配されている磁性体列と、複数の巻線が前記複数の磁性体間に配され、又は各磁性体に巻回されている第2巻線とを備え、前記特定の方向における前記複数の磁性体の数と、前記第1巻線が有する複数の巻線の繰り返しパターンの数及び前記磁石対の数とが異なり、前記第2巻線に前記多相交流電圧の周波数と異なる周波数の交流電圧を誘起させるようにしてあることを特徴とする。
【0011】
本発明にあっては、多相交流が印加された第1巻線は交番磁界を生成する。該交番磁界の空間周波数は磁性体列によって変調される。また磁石列の磁界も磁性体列によって変調される。変調された各磁界によって、第2巻線に交流が誘起される。前記特定の方向における前記複数の磁性体の数と、前記第1及び第2巻線が有する複数の巻線の繰り返しパターンの数とが異なるため、第2巻線に誘起される交流の周波数と、第1巻線に印加される多相交流の周波数とは異なる。つまり、交流の周波数が変換される。
本発明では半導体スイッチング素子及び電子制御回路を用いずに、交流の周波数変換を行うことができるため、信頼性が高い。また、スイッチングノイズが発生しない。更に、交流−直流変換、及び直流−交流変換を行って周波数変換を行う方式に比べて、周波数変換効率が高い。
【0012】
本発明に係る周波数変換装置は、前記第1巻線、前記磁石列及び前記磁性体列は以下の式を満たすことを特徴とする。
P=L±H
但し、
P:前記特定の方向における、前記複数の磁性体の数
L:前記特定の方向における、前記第1巻線が有する複数の巻線の繰り返しパターンの数
H:前記特定の方向における、前記磁石列の磁極対の数
【0013】
本発明にあっては、変調された交番磁界は複数の周波数成分を含むが、P=L±Hの関係を満たした場合、主要な周波数成分の交番磁界が第2巻線が有する複数の巻線の繰り返しパターンの数に一致するため、交流の周波数変換効率をより向上させることができる。
【0014】
本発明に係る周波数変換装置は、前記磁性体列を保持した円筒形状の保持部材を備え、前記特定の方向は前記保持部材の円周方向であり、前記第1巻線及び第2巻線は該円周方向に沿った周期的な磁界を生成する姿勢で配されていることを特徴とする。
本発明に係る周波数変換装置は前記第1巻線及び第2巻線は、巻回軸が前記保持部材の中心を向いた姿勢で配されていることを特徴とする。
【0015】
本発明にあっては、周波数変換装置を円筒状に構成することができる。
【0016】
本発明に係る周波数変換装置は、前記磁性体列を保持した円盤状の保持部材を備え、前記特定の方向は前記保持部材の円周方向であり、前記第1巻線及び第2巻線は該円周方向に沿った周期的な磁界を生成する姿勢で配されていることを特徴とする。
本発明に係る周波数変換装置は前記第1巻線及び第2巻線は、巻回軸が前記保持部材に対して略垂直な姿勢で配されていることを特徴とする。
【0017】
本発明にあっては、周波数変換装置を円盤状に構成することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、信頼性が高く電磁ノイズの少ない高効率の周波数変換を実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。
図1は、本実施の形態に係る周波数変換装置の一構成例を示した軸断面図である。本実施の形態に係る周波数変換装置は、三相交流電圧が印加され、交番磁界を生成する円筒形の交番磁界生成部1と、交番磁界生成部1の内側に間隙を有して同軸的に配され、交番磁界によって誘起された交流電圧を出力する円筒状の交流誘起部2とを備える。周波数変換装置は、交番磁界生成部1及び交流誘起部2の間に間隙を有して同軸的に配され、交番磁界の空間周波数を変調する円筒状の周波数変調部3を備える。
【0021】
交番磁界生成部1は、磁性体材料で構成された円筒状の外側ヨーク11を有する。外側ヨーク11の内周面には、中心方向へ突出した複数のティース11aが円周方向に沿って略等間隔に設けられている。外側ヨーク11は、例えば薄いケイ素鋼鈑を積層して構成されている。各ティース11a間のスロットには三相交流電圧が印加される1次巻線12が挿入されている。1次巻線12は、例えば、U相交流が印加される巻線12aと、V相交流が印加される巻線12bと、W相交流が印加される巻線12cとを有する。各巻線12a,12b,12cは分布巻きされている。1次巻線12の巻線配列周期L、即ち外側ヨーク11の円周方向に沿って配された各巻線12a,12b,12cの繰り返しパターンの数は、例えば8である。
【0022】
交流誘起部2は、磁性体材料で構成された内側ヨーク21を有する。内側ヨーク21は、中心部から放射状に突出した複数のティース21aを有する。内側ヨーク21は、例えば薄いケイ素鋼鈑を積層して構成されている。各ティース21a間のスロットには交番磁界によって交流電圧が誘起される2次巻線22が挿入されている。2次巻線22は、例えば、U相交流が誘起される巻線22aと、V相交流が誘起される巻線22bと、W相交流が誘起される巻線22cとを有する。各巻線22a,22b,22cは分布巻きされている。2次巻線22の巻線配列周期H、即ち内側ヨーク21の円周方向に沿って配された各巻線22a,22b,22cの繰り返しパターンの数は、例えば1であり、1次巻線12の巻線配列周期Lと異なっている。
【0023】
周波数変調部3は、円筒状をなし、交流誘起部2と、交番磁界生成部1との間に同軸的に配されている。周波数変調部3は、周方向に略等ピッチで配された複数の磁性体31と、該磁性体31を保持する保持部材32とを有する。磁性体31の数は、1次巻線12の巻線配列周期Lと、2次巻線22の巻線配列周期Hとの和である。磁性体31は、円筒の一部を長手方向に沿って切断したような形状をなし、保持部材32は各磁性体31を保持して、全体が円筒状をなしている。周波数変調部3には、交番磁界生成部1により生成され、変調された高調波成分を含む交番磁界が径方向に沿って交差する。磁性体31には、例えば、磁性金属、積層した複数の磁性板で構成された積層鋼板及び磁性粉の圧粉体等で形成された軟磁性体を用いるとよい。特に、磁性体31の材質としては、渦電流損を抑えることができるため、積層鋼板が好ましい。
【0024】
このように構成された周波数変換装置の動作を説明する。1次巻線12の各巻線12a,12b,12cにそれぞれ、U相交流、V相交流、W相交流が印加されると、外側ヨーク11の内側に、円周方向に回転する周期的な交番磁界が生成される。回転する交番磁界は、例えば論文誌(池田哲也・中村健二・一ノ倉理、「永久磁石式磁気ギアの効率向上に関する一考察」、磁気学会論文誌、2009年、33巻、2号、130−134頁参照)に記載の磁気ギアのように、L個の磁極対を円周方向に配置した磁気ギアの回転子を回転させた場合に発生する磁界と同様である。つまり、1次巻線12に3相交流を印加することは、前記回転子を回転させるのと等価である。
【0025】
1次巻線12により生成した交番磁界は、周波数変調部3の磁性体31との磁気的相互作用により、周波数が変調される。変調された交番磁界には、主要成分として周波数(P+L)成分、周波数(P−L)成分などが含まれる(池田哲也・中村健二・一ノ倉理、「永久磁石式磁気ギアの効率向上に関する一考察」、磁気学会論文誌、2009年、33巻、2号、130−134頁参照)。変調された交番磁界は2次巻線22に作用し、該2次巻線22に交流電圧が誘起される。2次巻線22の巻線配列周期は、下記式(1)を満たすため、変調された交番磁界の周波数成分(P−L)と、2次巻線22の巻線配列周期H=P−Lとが一致し、効率的に交流が2次巻線22に誘起される。周波数変換される交流の周波数の比はH対Lである。
P=L+H・・・(1)
但し、
P:円周方向における複数の磁性体31の配列周期
L:円周方向における1次巻線12の巻線配列周期
H:円周方向における2次巻線22の巻線配列周期
【0026】
実施の形態に係る周波数変換装置は、巻線(1次巻線12及び2次巻線22)とヨーク(周波数変調部3)で構成されており急峻な電圧電流の変化がない、かつ可動部分が無いことから高周波電磁ノイズが少なく高信頼性の周波数変換を実現することができる。
【0027】
また、上記式(1)を満たすため、変調された交番磁界の主要成分が2次巻線22に作用し、交流の周波数変換効率をより向上させることができる。
【0028】
なお、本実施の形態では、磁性体31の配列周期、巻線配列周期L,Hとして、上記式(1)を例示したが、これに限定されるものでは無く、下記式(2)を満たすように構成しても良い。
(2m−1)P=L±(2n−1)H・・・(2)
但し、m,nは自然数である。
【0029】
(変形例1)
変形例1に係る周波数変換装置は、実施の形態における交流誘起部2の構成が異なるため、以下では主に上記相異点を説明する。
図2は、変形例1に係る周波数変換装置の一構成例を示した軸断面図である。変形例1に係る周波数変換装置は、実施の形態1と同様の交番磁界生成部1と、交番磁界生成部1の内側に間隙を有して同軸的に配された円筒状の磁石列102と、交番磁界生成部1及び磁石列102の間に間隙を有して同軸的に配され、交番磁界の空間周波数を変調する円筒状の周波数変調部103と、周波数変調部103に設けられており、交番磁界によって誘起された交流電圧を出力する2次巻線132とを備える。
【0030】
磁石列102は、内側円柱部121を有する。内側円柱部121の外周面には、厚さ方向に着磁された外周面側N極の磁石122a及び外周面側S極の磁石122bを有する磁極対122が円周方向に沿っ
て1個配置されている。
【0031】
周波数変調部103は、実施の形態と同様、円筒状をなし、交番磁界生成部1と、磁石列102との間に同軸的に配されている。周波数変調部103は、周方向に略等ピッチで配された複数の磁性体131と、該磁性体131を保持する保持部材133とを有する。
【0032】
2次巻線132は、周波数変調部103の磁性体131間に配され、又は各磁性体131に巻回されている。つまり、2次巻線132の巻線配列周期が磁性体131の配列周期と同じになるように構成されている。
【0033】
このように構成された周波数変換装置の動作を説明する。
但し、円周方向における、複数の磁性体131の数P、円周方向における、1次巻線12が有する複数の巻線12aの繰り返しパターンの数L、円周方向における、磁石列102の磁極対122の数Hは、下記式(3)を満たす。
P=L±H…(3)
1次巻線12に3相交流電圧が印加されると、実施の形態で説明したように、円周方向に回転する周期的な交番磁界が生成される。
【0034】
1次巻線12により生成した交番磁界は、周波数変調部103の磁性体131との磁気的相互作用により、周波数が変調される。また、磁石列102が作る磁界も磁性体131との磁気的相互作用により、周波数が変調される。その結果、周波数変調部103には、周波数P成分を有する交番磁界が生成される。
磁気ギアの動作に置き換えて考えると以下のようになる。磁気ギアは、L個の磁極対を円周方向に配置した第1回転子と、該第1回転子と同軸的に配され、H個の磁極対を円周方向に配置した第2回転子と、第1及び第2回転子との間に間隙を有して同軸的に配された円筒状の磁性体列とを備えるとする。ここでは、第2回転子を静止させ、第1回転子を回転させた場合、第1及び第2回転子の間に配された磁性体列が回転する。つまり、磁性体列を回転させる回転磁界が磁性体列に作用していることが分かる。
従って、磁気ギアの磁性体列に、磁性体列の配列周期に合わせて2次巻線を設け、磁性体列を固定すれば、2次巻線に交流電圧が誘起されることが分かる。
【0035】
変形例1にあっても実施の形態と同様、信頼性が高く電磁ノイズの少ない高効率の周波数変換を実現することができる。
【0036】
(変形例2)
変形例2に係る周波数変換装置は、1次巻線を集中巻きとした点が変形例1と異なる。
図3は、変形例2に係る周波数変換装置の一構成例を示した軸断面図である。変形例2に係る周波数変換装置は、変形例1と同様の交番磁界生成部201、周波数変調部203、磁石列202、2次巻線232とを備える。
【0037】
交番磁界生成部201は、磁性体材料で構成された円筒状の外側ヨーク211を有し、外側ヨーク211の内周面には、中心方向へ突出した複数のティース211aが円周方向に沿って略等間隔に設けられている。各ティース211aには、1次巻線212が巻回されている。1次巻線212は、例えば、U相交流が印加される巻線212aと、V相交流が印加される巻線212bと、W相交流が印加される巻線212cとを有する。各巻線212a,212b,212cは集中巻きされている。
【0038】
磁石列202は、変形例1と同様、内側円柱部221を有する。内側円柱部221の外周面には、外周面側N極の磁石222a及び外周面側S極の磁石222bを有する磁極対222が円周方向に沿っ
て1個配置されている。
【0039】
周波数変調部203は、変形例1と同様の複数の磁性体231及び保持部材233を有し、2次巻線232は、周波数変調部203の磁性体231間に配され、又は各磁性体231に巻回されている。
【0040】
変形例2にあっては、分布巻きの構成に比べて周波数変換装置を小型化することができる。なお、ここでは変形例1に係る周波数変換装置の1次巻線を集中巻きの構成にした例を説明したが、言うまでも無く、実施の形態に係る周波数変換装置の1次巻線を集中巻きの構成にしても良い。
【0041】
(変形例3)
変形例3に係る周波数変換装置は、実施の形態における交番磁界生成部301、交流誘起部302及び周波数変調部303の形状及び配置が異なる。
【0042】
図4は、変形例3に係る周波数変換装置の一構成例を示した側断面図、
図5は、変形例3に係る周波数変換装置の一構成例を示した軸断面図である。変形例3に係る周波数変換装置は、実施の形態1と同様の機能を有する交番磁界生成部301、交流誘起部302及び周波数変調部303を備える。
【0043】
交番磁界生成部301は、磁性体材料で構成された円柱状の第1ヨークを有する。第1ヨークは、中心部から放射状に突出した複数のティースを有し、各ティース間のスロットには交番磁界によって交流電圧が誘起される1次巻線312が挿入されている。1次巻線312は、例えば、U相交流が印加される巻線312aと、V相交流が印加される巻線312bと、W相交流が印加される巻線312cとを有する。各巻線312a,312b,312cは分布巻きされている。
【0044】
交流誘起部302は、磁性体材料で構成された円柱状の第2ヨークを有し、交流誘起部302と、交番磁界生成部301とは、中心線に沿って対向するように並置されている。第2ヨークは、第1ヨークと同様の構成であり、中心部から放射状に突出した複数のティース321aを有し、各ティース321a間のスロットには交番磁界によって交流電圧が誘起される2次巻線322が挿入されている。2次巻線322は、例えば、U相交流が誘起される巻線322aと、V相交流が誘起される巻線322bと、W相交流が誘起される巻線322cとを有する。各巻線322a,322b,322cは分布巻きされている。
【0045】
周波数変調部303は、交番磁界生成部301及び交流誘起部302の外周を囲繞するような円筒状をなし、交番磁界生成部301及び交流誘起部302と同軸的に配されている。周波数変調部303は、非磁性体金属の筒体を備える。筒体の内周面には、
図4及び
図5に示すように、交番磁界生成部301及び交流誘起部302の外周を囲繞するように周方向に等配された複数の磁性体331が設けられている。
【0046】
このように構成された周波数変換装置の動作は、実施の形態で説明したものと同様であり、1次巻線312により生成した交番磁界は、周波数変調部303の磁性体331との磁気的相互作用により、周波数が変調され、2次巻線322に交流電圧が誘起される。
【0047】
変形例3にあっても実施の形態と同様、巻線(1次巻線312及び2次巻線322)とヨーク(周波数変調部303)で構成されており急峻な電圧電流の変化がない、かつ可動部分が無いことから高周波電磁ノイズが少なく高信頼性の周波数変換を実現することができる。
【0048】
(変形例4)
変形例4に係る周波数変換装置は、変形例3における交流誘起部302の構成が異なる。
図6は、変形例4に係る周波数変換装置の一構成例を示した側断面図である。変形例4に係る周波数変換装置は、変形例3と同様の交番磁界生成部401と、中心線に沿って交番磁界生成部401に対向するように並置されている円柱状の磁石列402と、周波数変調部403とを備える。
【0049】
交番磁界生成部401は、U相交流が印加される巻線412aと、V相交流が印加される巻線412bと、W相交流が印加される巻線412cとで構成された1次巻線412を有する。
【0050】
磁石列402は、図示しない内側円筒部を有する。内側円筒部の外周面には、厚さ方向に着磁された外周面側N極の磁石422a及び外周面側S極の磁石422bを有する磁極対422が円周方向に沿って略等間隔に複数配置されている。
【0051】
周波数変調部403は、交番磁界生成部401及び磁石列402の外周を囲繞するような円筒状をなし、交番磁界生成部401及び磁石列402と同軸的に配されている。周波数変調部403は、非磁性体金属の筒状保持部材433を備える。筒状保持部材433の内周面には、交番磁界生成部401及び磁石列402の外周を囲繞するように周方向に等配された複数の磁性体431が設けられている。磁性体431の内径は、交番磁界生成部401と、磁石列402との間隙に対応する部分が、他の部分に比べて大きくなっている。つまり、磁性体431の該部分が径方向外側に凹んでいる。
【0052】
2次巻線432は、交番磁界生成部401に対向する磁性体431の間に配され、又は各磁性体431に巻回されている。つまり、2次巻線432の巻線配列周期が磁性体431の配列周期と同じになるように構成されている。なお、ここでは、交番磁界生成部401に対向する磁性体431に2次巻線432を配する例を説明したが、磁石列402に対向する磁性体431に2次巻線432を配しても良い。
【0053】
このように構成された周波数変換装置によれば、変形例1,3と同様にして、1次巻線412に印加された多相交流と異なる周波数の交流電圧が2次巻線432に誘起される。
【0054】
変形例4にあっては、信頼性が高く電磁ノイズの少ない高効率の周波数変換を実現することができる。
【0055】
(変形例5)
変形例5に係る周波数変換装置は、実施の形態における交番磁界生成部501、交流誘起部502及び周波数変調部503の形状及び配置が異なる。
【0056】
図7は、変形例5に係る周波数変換装置の一構成例を示した側面図である。変形例5に係る周波数変換装置は、実施の形態1と同様の機能を有する交番磁界生成部501、交流誘起部502及び周波数変調部503を備える。
【0057】
交番磁界生成部501は、磁性体材料で構成された円盤状の第1ヨーク511を有する。第1ヨーク511は、一側面から略垂直に突出した複数のティースを有する。複数のティースは、第1ヨーク511の円周方向に沿って略等間隔に設けられている。各ティース間のスロットには交番磁界によって交流電圧が誘起される1次巻線512が挿入されている。1次巻線512は、例えば、U相交流が印加される巻線512aと、V相交流が印加される巻線512bと、W相交流が印加される巻線512cとを有する。各巻線512a,512b,512cは分布巻きされている。
【0058】
交流誘起部502は、磁性体材料で構成された円盤状の第2ヨーク521を有する。第2ヨーク521は、中心線が第1ヨーク511と略一致するように配されており、第1ヨーク511側の面から略垂直に突出した複数のティースを有する。複数のティースは、第2ヨーク521の円周方向に沿って略等間隔に設けられている。各ティース間のスロットには交番磁界によって交流電圧が誘起される2次巻線522が挿入されている。2次巻線522は、例えば、U相交流が誘起される巻線522aと、V相交流が誘起される巻線522bと、W相交流が誘起される巻線522cとを有する。各巻線522a,522b,522cは分布巻きされている。
【0059】
周波数変調部503は、円盤状をなし、中心線が略一致するように配され、交番磁界生成部501及び交流誘起部502との間で間隙を有している。周波数変調部503は、複数の磁性体531を保持する円盤状の保持部材532を備え、保持部材532には、複数の磁性体531が円周方向に沿って略等間隔に配されている。磁性体531は例えば扇形である。
【0060】
このように構成された周波数変換装置の動作は、実施の形態で説明したものと同様であり、1次巻線511により生成した交番磁界は、周波数変調部503の磁性体531との磁気的相互作用により、周波数が変調され、2次巻線522に交流電圧が誘起される。
【0061】
変形例5にあっても実施の形態と同様、信頼性が高く電磁ノイズの少ない高効率の周波数変換を実現することができる。
【0062】
(変形例6)
変形例6に係る周波数変換装置は、変形例5における交流誘起部2の構成が異なる。
図8は、変形例6に係る周波数変換装置の一構成例を示した側面図である。変形例6に係る周波数変換装置は、変形例5と同様の交番磁界生成部601と、中心線に沿って交番磁界生成部601に対向するように並置されている円盤状の磁石列602と、周波数変調部603とを備える。
【0063】
磁石列602は、磁性体材料で構成された図示しない円板621を有する。円板621の第1ヨーク611側の面には、第1ヨーク611側N極の磁石622a及び第1ヨーク611側S極の磁石622bを有する磁極対622が円周方向に沿って略等間隔に複数配置されている。
【0064】
周波数変調部603は、円盤状をなし、中心線が略一致するように配され、交番磁界生成部601及び磁石列602との間で間隙を有している。周波数変調部603は、変形例5と同様の構成であり、複数の磁性体631を保持する円盤状の保持部材632を備え、保持部材632には、複数の磁性体631が円周方向に沿って略等間隔に配されている。磁性体631は例えば扇形である。
【0065】
2次巻線632は、周波数変調部603の磁性体631間に配され、又は各磁性体631に巻回されている。つまり、2次巻線632の巻線配列周期が磁性体631の配列周期と同じになるように構成されている。
【0066】
変形例6にあっても実施の形態と同様、信頼性が高く電磁ノイズの少ない高効率の周波数変換を実現することができる。
【0067】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものでは無いと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味では無く、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。