【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成する本発明の第1の態様は、
配電系統における変圧器の低圧側の各配電線に接続される負荷群毎に、個別に無効電力補償を行う無効電力補償装置を分散配置するとともに、前記各無効電力補償装置は、装置の無効電力の最大出力が出力される範囲まで、設置された箇所における電圧値が規程値の範囲になるような制御手段で、無効電力補償を行うように制御するものであることを特徴とする配電系統における需要家電圧安定化システムにある。
【0011】
本態様によれば、発想を転換して電圧変動を引き起こす原因の箇所、すなわち負荷群の直近にて必要な分のみの補償を施すことを第一の手段としている。すなわち、低圧側で所定の無効電力補償を行い得るシステムを構築している。これにより、電圧安定化の問題となる箇所のみにスポット的に対応できる。また、無効電力補償装置が低圧側に分散配置されているので、定格電圧や定格電流が小さい部品でも使用が可能になり、民生用の部品を使用できることから、無効電力補償装置を構成する素子等に安価なものを使用することができる。また、装置が補償すべき容量は、装置の接続される負荷群が引き起こす電圧変動に対応する容量のみでよい。これらの結果、当該無効電力補償装置の小型化及びコストを低減させることだけでなく、配電系統における設備計画の柔軟性向上や配電系統への設置導入コストを低減させることができる。また、補償が必要な箇所へ多数の無効電力補償装置が分散配置されているので、需要家電圧の安定化のみならず、配電系統全体の冗長性が高まり当該配電系統全体のロバスト性向上にも寄与させることができる。
【0012】
本発明の第2の態様は、
配電系統における変圧器の低圧側の各配電線に接続される負荷群毎に、個別に無効電力補償を行う無効電力補償装置を分散配置するとともに、前記各無効電力補償装置は、前記各無効電力補償装置の前記配電線への接続位置での配電系統の状態である系統状態および各負荷群の状態である負荷状態を推定する制御手段で、前記各負荷群による電圧変動分である補償量を決定し、前記無効電力補償装置毎に前記補償量を補償するように制御されるものであることを特徴とする配電系統における需要家電圧安定化システムにある。
【0013】
本態様によれば、無効電力補償装置を低圧側に配置しているので、定格電圧や定格電流が小さい部品でも使用可能になり、民生用の半導体素子及び受動部品で無効電力補償装置を構成することができる。また、装置が補償すべき容量は、装置の接続される負荷群が引き起こす電圧変動に対応する容量のみでよい。これらの結果、当該無効電力補償装置の小型化及びコストを低減させることだけでなく、配電系統における設備計画の柔軟性向上や配電系統への設置導入コストを低減させることが実現可能である。同時に、負荷群毎に対応させて当該無効電力補償装置を分散配置するとともに、各無効電力補償装置の前記配電線への接続位置での系統状態および各負荷群の負荷状態を推定して前記各負荷群による電圧変動分である補償量を決定するので、負荷群毎に必要な補償量に合わせて無効電力補償装置による適確な自律制御を行うことができる。また、分散配置した複数の無効電力補償装置により需要家電圧安定化のみならず、配電系統全体の冗長性が高まり、当該配電系統全体のロバスト性向上にも寄与させることができる。
【0014】
本発明の第3の態様は、
第2の態様に記載する配電系統における需要家電圧安定化システムにおいて、
前記無効電力補償装置は前記補償量を決定する制御手段で制御され、
前記制御手段は、
前記接続位置から見た、前記無効電力補償装置を停止させた状態、および前記無効電力補償装置で既値の電流である固定電流値を供給した状態もしくは前記無効電力補償装置に既知の負荷インピーダンスを挿入した状態での前記配電系統の各インピーダンスに基づき前記負荷群が引き起こす電圧変動値を演算し、
演算した前記電圧変動値がキャンセルされるように前記無効電力補償装置の補償量を決定するものであることを特徴とする配電系統における需要家電圧安定化システムにある。
【0015】
本態様によれば、制御手段により無効電力補償装置の低圧側の配電線への接続位置での系統状態および負荷群の負荷状態を推定して無効電力補償を行う前記負荷群毎に適確な補償量を決定することができる。
【0016】
本発明の第4の態様は、
第3の態様に記載する配電系統における需要家電圧安定化システムにおいて、
前記制御手段は、
前記接続位置から見た、前記無効電力補償装置を停止させた状態での前記配電系統を表わす等価回路に基づき第1の回路方程式を生成する停止状態演算部と、
前記接続位置から見た、前記無効電力補償装置で既値の電流である固定電流を供給した状態での前記配電系統を表わす等価回路に基づき第2の回路方程式を生成する接続状態演算部と、
前記第1および第2の回路方程式に基づき前記負荷群が引き起こした電圧変動値を演算するとともに、前記電圧変動値に基づき前記無効電力補償装置の補償量を演算する補償量演算部とを有し、
前記第1の回路方程式が、配電系統側の等価的な電圧源の電圧V
g、前記接続位置での実測電圧である電圧V
1、前記配電系統から前記接続位置に向かって流れる実測電流である電流I
1、前記負荷群から前記接続位置に向かって流れる実測電流である電流I
L、前記配電系統のインピーダンスZ
1、前記負荷群のインピーダンスZ
L、前記負荷群に設置された分散電源の等価的な電圧源の電圧V
pcsを用いて次式(1),(2),(3)で表わされ、
【0017】
【数1】
【0018】
前記接続状態演算部で生成される第2の回路方程式が、前記電圧V
g、前記接続位置での実測電圧である電圧V
1′、前記配電系統から前記接続位置に向かって流れる実測電流である電流I
1′、前記負荷群から前記接続位置に向かって流れる実測電流である電流I
L′、前記インピーダンスZ
1、前記インピーダンスZ
L、前記電圧V
pcs、前記固定電流である電流I
stを用いて次式(4),(5),(6)で表わされ、
【0019】
【数2】
【0020】
前記補償量演算部が、前記第1および第2の回路方程式から前記配電系統のインピーダンスZ
1および前記電圧V
gを式(7),式(8)に基づき演算するとともに、前記電圧変動値Δ|V|を式(9)により演算し、
【0021】
【数3】
【0022】
さらに前接続位置から配電側および負荷側をまとめて見た合成インピーダンスZ
iを式(10)に基づき演算するとともに、前記合成インピーダンスZ
iを実部rと虚部xとに分けてr+jxと表わして、前記電圧変動値Δ|V|をキャンセルするよう前記無効電力補償装置が補償すべき補償量x
stを式(11)もしくは式(12)で演算する
【0023】
【数4】
【0024】
ものであることを特徴とする配電系統における需要家電圧安定化システムにある。
【0025】
本態様によれば、停止状態演算部および電流源の挿入による接続状態演算部の所定の演算結果に基づき、さらに補償量演算部で前記低圧側の配電線への接続位置での系統状態および負荷群の負荷状態を具体的に推定して無効電力補償を行う前記負荷群毎に具体的な補償量を決定することができる。
【0026】
本発明の第5の態様は、
第3の態様に記載する配電系統における需要家電圧安定化システムにおいて、
前記制御手段は、
前記第1の回路方程式を生成する停止状態演算部と、
前記接続位置から見た、前記無効電力補償装置で既値の負荷インピーダンスを挿入した状態での前記配電系統を表わす等価回路に基づき第3の回路方程式を生成する接続状態演算部と、
前記第1および第3の回路方程式に基づき前記負荷群が引き起こした電圧変動値を演算するとともに、前記電圧変動値に基づき前記無効電力補償装置の補償量を演算する補償量演算部とを有し、
前記第1の回路方程式が、請求項4と同様に、式(13),(14),(15)で表わされ、
【0027】
【数5】
【0028】
前記接続状態演算部で生成される第3の回路方程式が、前記電圧V
g、前記接続位置での実測電圧である電圧V
1′、前記配電系統から前記接続位置に向かって流れる実測電流である電流I
1′、前記負荷群から前記接続位置に向かって流れる実測電流である電流I
L′、前記インピーダンスZ
1、前記インピーダンスZ
L、前記電圧V
pcsを用いて次式(16),(17)で表わされ、
【0029】
【数6】
【0030】
前記補償量演算部が、前記第1および第3の回路方程式から前記配電系統のインピーダンスZ
1および前記電圧V
gを式(18),(19)に基づき演算するとともに、前記電圧変動値Δ|V|を式(20)により演算し、
【0031】
【数7】
【0032】
さらに前接続位置から配電側および負荷側をまとめて見た合成インピーダンスZ
iを式(21)に基づき演算するとともに、前記合成インピーダンスZ
iを実部rと虚部xとに分けてr+jxと表わして、前記電圧変動値Δ|V|をキャンセルするよう前記無効電力補償装置が補償すべき補償量x
stを式(22)もしくは式(23)で演算する
【0033】
【数8】
【0034】
ものであることを特徴とする配電系統における需要家電圧安定化システムにある。
【0035】
本態様によれば、停止状態演算部および負荷インピーダンスの挿入による接続状態演算部の所定の演算結果に基づき、さらに補償量演算部で前記低圧側の配電線への接続位置での系統状態および負荷群の負荷状態を具体的に推定して無効電力補償を行う前記負荷群毎に具体的な補償量を決定することができる。
【0036】
本発明の第6の態様は、
第2の態様に記載する配電系統における需要家電圧安定化システムにおいて、
前記無効電力補償装置は前記補償量を決定する制御手段で制御され、
前記制御手段は、
商用周波数の整数倍以外の周波数に相当する電流である次数間高調波電流I
st_nを前記無効電力補償装置より出力し、当該無効電力補償装置の両端で計測される次数間高調波電圧をV
1_nおよび接続位置から配電系統側に向かって流れる次数間高調波電流をI
1_n接続位置から負荷側に向かって流れる次数間高調波電流をI
L_nとするとき、次数間高調波における配電系統側のインピーダンスZ
1_nを式(24)で求め、次数間高調波における負荷側のインピーダンスを式(25)で求め、
【0037】
【数9】
【0038】
さらに前記接続位置から配電側および負荷側をまとめて見た次数間高調波における合成インピーダンスZ
i_nを式(26)で求め、さらに前記合成インピーダンスZ
i_nを商用周波数に対応する値へ変換することにより前記合成インピーダンスZ
iを求め、該合成インピーダンスZ
iを実部rと虚部xとに分けてr+jxと表わして、前記電圧変動値Δ|V|をキャンセルするよう前記無効電力補償装置が補償すべき補償量x
stを式(27)もしくは式(28)で演算する
【0039】
【数10】
【0040】
ものであることを特徴とする配電系統における需要家電圧安定化システムにある。
【0041】
本態様によれば、次数間高調波注入方式を利用して、無効電力補償装置の低圧側の配電線への接続位置での系統状態および無効電力補償を行う負荷群の負荷状態を適確に推定して無効電力補償を行う前記負荷群毎に適確な補償量を決定することができる。
【0042】
本発明の第7の態様は、
配電系統における変圧器の低圧側の各配電線に接続される負荷群毎に、個別に無効電力補償を行う無効電力補償装置を分散配置するとともに、前記各無効電力補償装置は、前記各負荷群による電圧変動分に対する補償量を決定し、前記無効電力補償装置毎に前記補償量を補償するように制御手段により制御されるものである配電系統における需要家電圧安定化システムにおいて、
前記制御手段は、
前記配電系統側への送り出し電圧V
g、前記配電系統のインピーダンス(R+jX)、前記各配電線における負荷群および前記無効電力補償装置の接続位置における前記無効電力補償装置を停止させた状態での電圧V
1に基づき、前記無効電力補償装置が補償すべき補償量を前記電圧に対し90度の位相差を有する無効分電流I
STCとして次式(29)により算出し、
【0043】
【数11】
【0044】
上記無効分電流I
STCを出力するように前記無効電力補償装置を制御することにより、電圧変動をキャンセルするように構成したことを特徴とする配電系統における需要家電圧安定化システムにある。
【0045】
本態様によれば、無効電力補償装置で補償すべき補償量を無効分電流I
STCとして正確に求めることができ、かかる無効分電流I
STCを供給するように制御することで、負荷群毎に適切な無効電力補償を行うことができる。
【0046】
本発明の第8の態様は、
第7の態様に記載する配電系統における需要家電圧安定化システムにおいて、
前記電圧V
g、前記配電系統のインピーダンスの抵抗分Rおよびリアクタンス分Xは、既知のパラメータとしてメモリに記憶され上式(29)の演算には、前記メモリから読み出した各パラメータを表すデータと、実測した電圧V
1を表すデータとを用いることを特徴とする配電系統における需要家電圧安定化システムにある。
【0047】
本態様によれば、式(29)の演算に必要な、電圧V
g、配電系統のインピーダンスの抵抗分Rおよびリアクタンス分Xに関するデータを容易に得ることができる。
【0048】
本発明の第9の態様は、
第7または第8の態様に記載する配電系統における需要家電圧安定化システムにおいて、
前記電圧V
1は、前記無効電力補償装置を停止させた状態における前記接続位置から前記負荷群に向かって流れる電流Iに基づき次式(30)
【0049】
【数12】
【0050】
により算出することを特徴とする配電系統における需要家電圧安定化システムにある。
【0051】
本態様によれば、式(29)の演算に必要な電圧V
1を、実測した電流Iに基づき算出することができる。
【0052】
本発明の第10の態様は、
第7〜第9の態様の何れか一つに記載する配電系統における需要家電圧安定化システムにおいて、
前記配電系統のインピーダンスの抵抗分Rおよびリアクタンス分Xは、前記式(7)により推定したインピーダンスの実数部および虚数部の値を利用することを特徴とする配電系統における需要家電圧安定化システムにある。
【0053】
本態様によれば、式(7)に基づき推定したインピーダンスを利用して所望の抵抗分Rおよびリアクタンス分Xの情報を得ることができる。
【0054】
本発明の第11の態様は、
第7〜第9の態様の何れか一つに記載する配電系統における需要家電圧安定化システムにおいて、
前記配電系統のインピーダンスの抵抗分Rおよびリアクタンス分Xは、前記式(18)により推定したインピーダンスの実数部および虚数部の値を利用することを特徴とする配電系統における需要家電圧安定化システムにある。
【0055】
本態様によれば、式(18)に基づき推定したインピーダンスを利用して所望の抵抗分Rおよびリアクタンス分Xの情報を得ることができる。
【0056】
本発明の第12の態様は、
第7〜第9の態様の何れか一つに記載する配電系統における需要家電圧安定化システムにおいて、
前記配電系統のインピーダンスの抵抗分Rおよびリアクタンス分Xは、前記式(24)により推定したインピーダンスの実数部および虚数部の値を商用周波数に換算した値を利用することを特徴とする配電系統における需要家電圧安定化システムにある。
【0057】
本態様によれば、式(24)に基づき推定したインピーダンスを利用して所望の抵抗分Rおよびリアクタンス分Xの情報を得ることができる。
【0058】
本発明の第13の態様は、
第1〜第12の態様の何れか一つに記載する配電系統における需要家電圧安定化システにおいて、
前記負荷群には分散電源が発電した直流電力を所定の交流電力に変換するパワーコンディショナーが接続されている負荷を有することを特徴とする配電系統における需要家電圧安定化システムにある。
【0059】
本態様によれば、系統電圧の不安定要素が存在する配電系統においても適確な無効電力補償により需要家電圧の安定化を実現する事ができる。
【0060】
本発明の第14の態様は、
第1〜第13の態様の何れか一つに記載する配電系統における需要家電圧安定化システムにおいて、
前記各無効電力補償装置における連系用リアクトルの全部または一部として各変圧器の漏れリアクタンスや低圧配電線のリアクタンス、引込線のリアクタンスなどを利用したことを特徴とする配電系統における需要家電圧安定化システムにある。
【0061】
本態様によれば、無効電力補償装置の所定の機能を発揮させるために必要な連系用リアクトルを変圧器の二次側の漏れリアクタンスを利用しているので、その分装置構成が合理的なものとなる。