【実施例】
【0028】
<実施例1:水素化処理触媒a>
(1)担体の調製
1LビーカーにAl
2O
3濃度換算で22質量%のアルミン酸ナトリウム水溶液90.9gを入れ、イオン交換水を添加して400gとし、更にこの溶液に26質量%のグルコン酸ナトリウム溶液2.2gを加え、攪拌しながら60℃に加温し、Al
2O
3濃度換算で5質量%のアルミン酸ナトリウム水溶液を得た。別途、500mlの容器にAl
2O
3濃度換算で7質量%の硫酸アルミニウム水溶液138.6gをいれ、60℃の温水を添加して、2.5質量%の硫酸アルミニウム水溶液400gを得た。
次に、前期アルミン酸ナトリウム水溶液中に、前期硫酸アルミニウム水溶液を一定速度(40ml/分)で添加し、10分でpHが7.1となるようにした。得られた懸濁スラリーを攪拌しながら60℃で1時間熟成した。懸濁スラリーはAl
2O
3濃度換算で10質量%であった。
熟成後の懸濁スラリーを脱水し、60℃の温水1.5Lで洗浄して得たケーキ状スラリーを得た。次いで、このケーキ状スラリーにAl
2O
3濃度換算で10質量%になるようにイオン交換水を添加し、これを攪拌しながら95℃で10時間熟成した。熟成終了後のスラリーをスチームジャケット付の双腕式ニーダーで練りながら加温し、所定の水分量(45質量%)まで濃縮した後、加熱を停止し、更に30分間捏和した。得られた捏和物を押し出し成型機で1.8mmの円柱状に成型した後、110℃で乾燥させた。乾燥したペレットを電気炉中で550℃の温度で3時間焼成し、多孔性無機酸化物であるγ―アルミナ担体を得た。該担体の表面積は195m
2/g及び細孔容積は0.80cm
3/gであった。
(2)含浸溶液の調製
200mlビーカーにイオン交換水150ml、三酸化モリブデン[太陽鉱工(株)製:MoO
3として99.9%]29.1gを加え、95℃で10時間攪拌した。次いで炭酸コバルト[(株)田中化学研究所製:CoOとして61.1%]11.8gを加え、95℃で5時間攪拌した。この混合物にリンゴ酸[扶桑化学工業(株)製:99.9%]13.5g[リンゴ酸/コバルト=1/1(mol/mol)]を加えて同温で5時間攪拌した。得られた溶液を80mlまで濃縮し、含浸溶液を得た。
【0029】
[第1工程:担持工程]
調製したアルミナ担体に上記含浸溶液をポアフィリング法によって含浸させた。続いて得られた担体と活性金属成分の原料との混合物は、大気中110℃で2時間の乾燥し、更に大気中550℃にて焼成し、活性金属担持体aを得た。
[第2工程:含浸工程]
100gの活性金属担持体aに、キレート剤含有水溶液として50%グルコン酸水溶液46.4g(グルコン酸/モリブデン=0.8/1[mol/mol])を加え細孔容積が飽和するまで含浸し、含浸担持体aを得た。
[第3工程:熟成工程]
含浸担持体aを、混合し温度110℃、圧力0.10MPa(1atm)の飽和水蒸気雰囲気にある密閉容器(オートクレーブ)内で2時間熟成し、熟成後の熟成担持体aを得た。
第3工程終了後に熟成担持体aの一部を取り出し、その質量(W2)を測定したところ15.61gであり、これを500℃で乾燥させた触媒の質量(W1)は9.94gであった。ここで、(1)式より、熟成担持体aにおけるグルコン酸水溶液の含液量は57質量%であった。
含液量[質量%]={(W2−W1)/W1}×100・・・(1)
[第4工程:乾燥工程]
次に約150℃の温度の空気中で約2時間の乾燥を行い、水素化処理触媒aを得た。表1に水素化処理触媒aの性状等を示す。
【0030】
<実施例2:水素化処理触媒b>
第2工程終了後の含浸担持体aを室温雰囲気下で30分静置の上乾燥させて水分を調整した後、第3工程を行った以外は実施例1と同様にして、水素化処理触媒bを得た。ここで、熟成担持体bのグルコン酸水溶液の含液量は50質量%であった。表1に水素化処理触媒bの性状等を示す。
【0031】
<実施例3〜7:水素化処理触媒c〜g>
第3工程において、熟成温度をそれぞれ80℃、90℃、100℃、120℃、140℃とした点以外は実施例1と同様にして水素化処理触媒c〜gを得た。ここで、熟成担持体c〜gのグルコン酸水溶液の含液量は、それぞれ60質量%、58質量%、57質量%、54質量%、51質量%であった。表1に水素化処理触媒c〜gの性状等を示す。
【0032】
<実施例8:水素化処理触媒h>
熟成温度を80℃とし、熟成時間を8時間とした点以外は実施例1と同様にして水素化処理触媒hを得た。熟成担持体hにおけるグルコン酸水溶液の含液量は55質量%であった。表1に水素化処理触媒hの性状等を示す。
【0033】
<実施例9:水素化処理触媒i>
熟成温度を90℃とし、熟成時間を5時間とした点以外は実施例1と同様にして水素化処理触媒iを得た。熟成担持体iにおけるグルコン酸水溶液の含液量は58質量%であった。表1に水素化処理触媒iの性状等を示す。
【0034】
<実施例10〜16:水素化処理触媒j〜p>
第3工程において、熟成時の圧力条件を、それぞれ0.08MPa(0.8atm)、0.12MPa(1.2atm)、0.18MPa(1.8atm)、0.22MPa(2.2atm)、0.25MPa(2.5atm)、0.43MPa(4.2atm)、0.62MPa(6.1atm)とした点以外は実施例1と同様にして水素化処理触媒j〜pを得た。ここで、熟成担持体j〜pにおけるグルコン酸水溶液の含液量はそれぞれ53質量%、56質量%、56質量%、61質量%、52質量%、54質量%、57質量%であった。表1に水素化処理触媒j〜pの性状等を示す。
【0035】
<実施例17:水素化処理触媒q>
熟成時の圧力条件を0.25MPa(2.5atm)とし、熟成時間を1時間とした点以外は実施例1と同様にして水素化処理触媒qを得た。熟成担持体qにおけるグルコン酸水溶液の含液量は55質量%であった。表1に水素化処理触媒qの性状等を示す。
【0036】
<実施例18:水素化処理触媒r>
酸化コバルトに換算して、水素化処理触媒の質量の0.5質量%に相当する、61.1質量%の炭酸コバルト0.82gをグルコン酸水溶液に添加した点以外は実施例1と同様にして水素化処理触媒rを得た。熟成担持体rにおけるグルコン酸水溶液の含液量は56質量%であった。表1に水素化処理触媒rの性状等を示す。
【0037】
<実施例19:水素化処理触媒s>
酸化コバルトに換算して、水素化処理触媒の質量の1.0質量%に相当する、61.1質量%の炭酸コバルト1.64gをグルコン酸水溶液に添加した点以外は実施例1と同様にして水素化処理触媒sを得た。熟成担持体におけるグルコン酸水溶液の含液量は53質量%であった。表1に水素化処理触媒sの性状等を示す。
【0038】
<実施例20:水素化処理触媒t>
酸化コバルトに換算して、水素化処理触媒の質量の1.5質量%に相当する、61.1質量%の炭酸コバルト2.45gをグルコン酸水溶液に添加した点以外は実施例1と同様にして水素化処理触媒tを得た。熟成担持体tにおけるグルコン酸水溶液の含液量は53質量%であった。表1に水素化処理触媒tの性状等を示す。
【0039】
<実施例21:水素化処理触媒u>
酸化ニッケルに換算して、水素化処理触媒の質量の0.5質量%に相当する、55.0質量%の酸化ニッケル0.91gをグルコン酸水溶液に添加した点以外は実施例1と同様にして水素化処理触媒uを得た。熟成担持体uにおけるグルコン酸水溶液の含液量は57質量%であった。表1に水素化処理触媒uの性状等を示す。
【0040】
<実施例22:水素化処理触媒v>
酸化ニッケルに換算して、水素化処理触媒の質量の1.0質量%に相当する、55.0質量%の酸化ニッケル1.82gをグルコン酸水溶液に添加した点以外は実施例1と同様にして水素化処理触媒vを得た。熟成担持体vにおけるグルコン酸水溶液の含液量は57質量%であった。表1に水素化処理触媒vの性状等を示す。
【0041】
<実施例23:水素化処理触媒w>
酸化ニッケルに換算して、水素化処理触媒の質量の1.5質量%に相当する、55.0質量%の酸化ニッケル2.74gをグルコン酸水溶液に添加した点以外は実施例1と同様にして水素化処理触媒wを得た。熟成担持体wにおけるグルコン酸水溶液の含液量は54質量%であった。表1に水素化処理触媒wの性状等を示す。
【0042】
<比較例1:水素化処理触媒x>
含浸担持体aを熟成させずに乾燥をした(すなわち、第3工程を経ない)点以外は実施例1と同様にして水素化処理触媒xを得た。表1に水素化処理触媒xの性状等を示す。
【0043】
<比較例2:水素化処理触媒y>
熟成温度を60℃とした点以外は実施例1と同様にして水素化処理触媒yを得た。熟成担持体yにおけるグルコン酸水溶液の含液量は59質量%であった。表1に水素化処理触媒yの性状等を示す。
【0044】
<比較例3:水素化処理触媒z>
熟成温度を70℃とした点以外は実施例1と同様にして水素化処理触媒を得た。熟成担持体zにおけるグルコン酸水溶液の含液量は58質量%であった。表1に水素化処理触媒zの性状等を示す。
【0045】
<比較例4:水素化処理触媒a1>
熟成温度を160℃とした点以外は実施例1と同様にして水素化処理触媒a1を得た。熟成担持体a1におけるグルコン酸水溶液の含液量は51質量%であった。表1に水素化処理触媒a1の性状等を示す。
【0046】
<比較例5:水素化処理触媒a2>
熟成温度を60℃とし、熟成時間を8時間とした点以外は実施例1と同様にして水素化処理触媒a2を得た。熟成担持体a2におけるグルコン酸水溶液の含液量は53質量%であった。表1に水素化処理触媒a2の性状等を示す。
【0047】
<比較例6:水素化処理触媒a3>
熟成温度を70℃とし、熟成時間を10時間とした点以外は実施例1と同様にして水素化処理触媒a3を得た。熟成担持体a3におけるグルコン酸水溶液の含液量は51質量%であった。表1に水素化処理触媒a3の性状等を示す。
【0048】
<比較例7:水素化処理触媒a4>
熟成工程前の含浸触媒を室温雰囲気下で60分静置の上乾燥させた以外は実施例1と同様にして水素化処理触媒a4を得た。熟成担持体a4におけるグルコン酸水溶液の含液量は43質量%であった。表1に水素化処理触媒a4の性状等を示す。
【0049】
[試験例1:安定性評価試験]
60メッシュ以下に粉砕した評価対象の水素化処理触媒を約0.02g秤取り、これを石英製のセルに充填した後、400℃に加熱して硫化水素5容量%/水素95容量%のガスを0.2L/minの流量で流通させて、硫化処理を行った。この硫化処理の時間を1時間、5時間と変化させて、処理時間の変化に伴う反応活性点の変化量を計測した。
各触媒の反応活性点の量は、反応活性点に一酸化窒素を吸着させてその吸着量を計測するNO吸着量測定法により計測した。NO吸着量測定には全自動触媒ガス吸着量測定装置(大倉理研製)を用い、前記条件にて硫化処理行った水素化処理触媒に、HeとNOの混合ガス(NO濃度10容量%)をパルスで導入し、水素化処理触媒1gあたりのNO分子吸着量を測定した。測定されたNO分子吸着量に基づき、下記(3)式に基づいてNO吸着量変化率[%]を算出した。この変化率が小さい程、実際に触媒が使用される高温高圧雰囲気下での触媒反応の性能低下が小さい安定性の高い水素化処理触媒であると評価できる。
NO吸着量変化率[%]={(A5−A1)/A1}×100・・・(3)
但し、A1は、400℃で1時間の硫化処理を行った水素化処理触媒におけるNO吸着量であり、A5は、400℃で5時間の硫化処理を行った水素化処理触媒におけるNO吸着量である。
【0050】
[試験例2:水素化処理活性評価試験]
評価対象の水素化処理触媒にて硫黄及び窒素化合物を含む芳香族炭化水素油を処理し、その水素化脱硫活性を評価した。該水素化処理触媒を粉砕後26〜60メッシュに篩分け、そこから0.25gを取り出して外径1/4インチのリアクター(SUS316)に充填した。しかる後、当該触媒を360℃に加熱して硫化水素5容量%/水素95%のガスを0.2L/minの流量で通流させて、6時間、硫化処理(予備硫化)を行った。
硫化処理後の水素化処理触媒に、4,6−ジメチルジベンゾチオフェン(硫黄分として1000質量ppm相当量)/n−ブチルアミン(窒素分として質量20ppm)/テトラリン(30容量%)/n−ドデカン(約70容量%)を混合した混合油を、反応温度320℃に加熱した触媒層に水素ガスと共に通流させて水素化処理を行った。反応条件は、反応圧力4.0MPa、質量空間速度16h
−1、水素/原料油比500Nm
3/m
3とした。
この水素化処理により得られた生成油中の硫黄分の含有量を紫外蛍光法(三菱化学、TS−100V)にて計測し、その減少量に基づいて水素化処理活性(脱硫活性)を算出した。水素化処理活性は、水素化処理触媒x(比較例1)の脱硫活性との相対値として下記(4)式から算出した(以下、相対脱硫活性という)。この相対脱硫活性が110%以上であれば、良好な水素化処理触媒が得られたものと触媒と判断した。
水素化処理触媒の相対脱硫活性(%)=(Da/Df)×100 ・・・(4)
但し、Daは、製造した水素化処理触媒を用いて処理した混合油の硫黄分減少量であり、Dfは、水素化処理触媒x(比較例1)を用いて処理した混合油の硫黄分減少率である。
【0051】
【表1】
【0052】
相対脱硫活性を測定した実施例では110%を超える結果が得られており、十分な活性向上結果が得られた。これに対して比較例の相対脱硫活性は、実用上要求される101〜105%の範囲であり、実施例の相対脱硫活性を下回っている。
ここで、熟成時間、熟成圧力を一定(2時間、0.10MPa(1atm))とし、熟成温度を変化させた実施例1、3〜7、比較例2〜4についての高温処理時の安定性(NO吸着量変化率の絶対値)の変化を
図1にひし形のプロットで示し、実施例1、3、4、6、7比較例2についての脱硫活性(相対脱硫活性)の変化を
図2にひし形のプロットで示す。これらの図によれば、活性向上処理を行った水素化処理触媒の安定性は、熟成温度に対して下に突の傾向線を描き、脱硫活性は上に突の傾向線を描くことが分かる。そして、熟成温度が100〜140℃の範囲では、相対脱硫活性が120%を超え、NO吸着量変化率も10%を下回っており、高活性で安定な活性向上結果が得られたといえる。
【0053】
一方、実施例3(熟成温度80℃)は、熟成時間が2時間の場合には120%を超える相対脱硫活性が得られなかったが、実施例8(熟成温度80℃)では、熟成時間を8時間に伸ばすことで、121%の相対脱硫活性が得られており、高温処理時の安定性も向上している。熟成温度が90℃の場合にも熟成時間を長くすることによって同様の結果が得られると考えられる。例えば熟成時間が10時間以内で110%以上の相対的脱硫活性が得られれば、例えば特許文献6と比較しても十分に短時間で、良好な安定性を持つ活性向上処理が行われていると評価できる。
また、比較例7によれば、熟成後に計測したグルコン酸水溶液の含液量が50質量%未満の値(43質量%)となっている比較例7ではNO吸着量の変化率も10%を大きく上回り、相対脱硫活性も100%と低い。
【0054】
次に、熟成温度、熟成時間を一定(110℃、2時間)とし、熟成時の圧力を変化させた実施例1、10〜16についての使用時の硫化処理及び触媒反応時を想定した条件下における触媒の活性点の量的変化(NO吸着量変化率の絶対値)を
図3にひし形のプロットで示し、実施例1、10、11、14〜16についての脱硫活性(相対脱硫活性)の変化を
図4にひし形のプロットで示す。これらの図によれば、活性向上処理を行った水素化処理触媒のNOが吸着した活性点の量は、熟成時の圧力に対して下に突の傾向線を描き、脱硫活性は上に突の傾向線を描くことが分かる。そして、熟成時の圧力が0.10〜0.43MPa(1〜4.2atm)の範囲では、相対脱硫活性が110%を超え、NO吸着量変化率も10%を下回っており、高活性で安定な活性向上結果が得られたといえる。
最後に活性金属成分としてコバルト原料を添加した実施例18〜20、ニッケル原料を添加した実施例21〜23では、いずれの活性金属成分においても、酸化物換算で0.5〜1.0質量%の範囲の活性金属成分を添加した場合には、NO吸着量変化率は10%を下回った。また、実施例19、21では相対脱硫活性が120%を超えている。これに対して活性金属成分の添加量が1.5質量%になると、NO吸着量変化率は10%を超え、相対脱硫活性は120%を下回った。
また、熟成後の含液量が50質量%となるように調製した実施例2の結果によれば、NO吸着量変化率(絶対値)は10%を下回り、相対脱硫活性は127%であった。これにより、熟成後の含液量が50質量%以上あれば、NO吸着量変化率(絶対値)や相対脱硫活性が目標値を満たす再生結果が得られることを確認できた。
【0055】
<実施例24:水素化処理触媒A>
[第一工程:含浸工程]
水素化処理触媒x(比較例1)を大気中550℃で焼成した焼成触媒(使用前の水素化処理触媒)100gに、キレート剤含有水溶液として50%グルコン酸水溶液46.4g(グルコン酸/モリブデン=0.8/1[mol/mol])を加え細孔容積が飽和するまで含浸し、含浸触媒Aを得た。
[第二工程:熟成工程]
含浸触媒Aを、混合し温度110℃、圧力0.10MPa(1atm)の飽和水蒸気雰囲気にある密閉容器(オートクレーブ)内で2時間熟成し、熟成触媒Aを得た。
第二工程終了後に熟成触媒Aの一部を取り出し、その質量(W4)を測定したところ15.85gであり、これを500℃で乾燥させた触媒の質量(W3)は9.97gであった。ここで、(1)式より、熟成触媒Aにおけるグルコン酸水溶液の含液量は59質量%であった。
含液量[質量%]={(W4−W3)/W3}×100・・・(2)
[第三工程:乾燥工程]
次に約150℃の温度の空気中で約2時間の乾燥を行い、水素化処理触媒(改良触媒)Aを得た。表2に水素化処理触媒Aの性状等を示す。
【0056】
<実施例25:水素化処理触媒B>
含浸触媒Aを室温雰囲気下で30分静置の上乾燥させて水分を調整した後、第二工程を行った以外は実施例24と同様にして、水素化処理触媒Bを得た。ここで、熟成触媒Bのグルコン酸水溶液の含液量は50質量%であった。表2に水素化処理触媒Bの性状等を示す。
【0057】
<実施例26〜30:水素化処理触媒C〜G>
第二工程において、熟成温度をそれぞれ80℃、90℃、100℃、120℃、140℃とした点以外は実施例24と同様にして水素化処理触媒C〜Gを得た。ここで、熟成触媒C〜Gのグルコン酸水溶液の含液量は、それぞれ54質量%、59質量%、58質量%、54質量%、56質量%であった。表2に水素化処理触媒C〜Gの性状等を示す。
【0058】
<実施例31:水素化処理触媒H>
熟成温度を80℃とし、熟成時間を8時間とした点以外は実施例24と同様にして水素化処理触媒Hを得た。熟成触媒Hにおけるグルコン酸水溶液の含液量は58質量%であった。表2に水素化処理触媒Hの性状等を示す。
【0059】
<実施例32:水素化処理触媒I>
熟成温度を90℃とし、熟成時間を5時間とした点以外は実施例24と同様にして水素化処理触媒Iを得た。熟成触媒Iにおけるグルコン酸水溶液の含液量は59質量%であった。表2に水素化処理触媒Iの性状等を示す。
【0060】
<実施例33〜39:水素化処理触媒J〜P>
第3工程において、熟成時の圧力条件を、それぞれ0.08MPa(0.8atm)、0.12MPa(1.2atm)、0.18MPa(1.8atm)、0.22MPa(2.2atm)、0.25MPa(2.5atm)、0.43MPa(4.2atm)、0.62MPa(6.1atm)とした点以外は実施例24と同様にして水素化処理触媒J〜Pを得た。ここで、熟成触媒J〜Pにおけるグルコン酸水溶液の含液量はそれぞれ55質量%、60質量%、56質量%、55質量%、57質量%、54質量%、58質量%であった。表2に水素化処理触媒J〜Pの性状等を示す。
【0061】
<実施例40:水素化処理触媒Q>
熟成時の圧力条件を0.25MPa(2.5atm)とし、熟成時間を1時間とした点以外は実施例24と同様にして水素化処理触媒Qを得た。熟成触媒Qにおけるグルコン酸水溶液の含液量は59質量%であった。表2に水素化処理触媒Qの性状等を示す。
【0062】
<実施例41:水素化処理触媒R>
酸化コバルトに換算して、水素化処理触媒の質量の0.5質量%に相当する、61.1質量%の炭酸コバルト0.82gをグルコン酸水溶液に添加した点以外は実施例24と同様にして水素化処理触媒Rを得た。熟成触媒Rにおけるグルコン酸水溶液の含液量は55質量%であった。表2に水素化処理触媒Rの性状等を示す。
【0063】
<実施例42:水素化処理触媒S>
酸化コバルトに換算して、水素化処理触媒の質量の1.0質量%に相当する、61.1質量%の炭酸コバルト1.64gをグルコン酸水溶液に添加した点以外は実施例24と同様にして水素化処理触媒Sを得た。熟成触媒Sにおけるグルコン酸水溶液の含液量は56質量%であった。表2に水素化処理触媒Sの性状等を示す。
【0064】
<実施例43:水素化処理触媒T>
酸化コバルトに換算して、水素化処理触媒の質量の1.5質量%に相当する、61.1質量%の炭酸コバルト2.45gをグルコン酸水溶液に添加した点以外は実施例24と同様にして水素化処理触媒Tを得た。熟成触媒Tにおけるグルコン酸水溶液の含液量は57質量%であった。表2に水素化処理触媒Tの性状等を示す。
【0065】
<実施例44:水素化処理触媒U>
酸化ニッケルに換算して、水素化処理触媒の質量の0.5質量%に相当する、55.0質量%の酸化ニッケル0.91gをグルコン酸水溶液に添加した点以外は実施例24と同様にして水素化処理触媒Uを得た。熟成触媒Uにおけるグルコン酸水溶液の含液量は58質量%であった。表2に水素化処理触媒Uの性状等を示す。
【0066】
<実施例45:水素化処理触媒V>
酸化ニッケルに換算して、水素化処理触媒の質量の1.0質量%に相当する、55.0質量%の酸化ニッケル1.82gをグルコン酸水溶液に添加した点以外は実施例24と同様にして水素化処理触媒Vを得た。熟成触媒Vにおけるグルコン酸水溶液の含液量は55質量%であった。表2に水素化処理触媒Vの性状等を示す。
【0067】
<実施例46:水素化処理触媒W>
酸化ニッケルに換算して、水素化処理触媒の質量の1.5質量%に相当する、55.0質量%の酸化ニッケル2.74gをグルコン酸水溶液に添加した点以外は実施例24と同様にして水素化処理触媒Wを得た。熟成触媒Wにおけるグルコン酸水溶液の含液量は54質量%であった。表2に水素化処理触媒Wの性状等を示す。
【0068】
<比較例8:水素化処理触媒X>
グルコン酸水溶液を含浸させた水素化触媒を熟成させずに、直ちに乾燥を開始した点以外は実施例24と同様にして水素化処理触媒Xを得た。表2に水素化処理触媒Xの性状等を示す。
【0069】
<比較例9:水素化処理触媒Y>
熟成温度を60℃とした点以外は実施例24と同様にして水素化処理触媒Yを得た。熟成触媒Yにおけるグルコン酸水溶液の含液量は61質量%であった。表2に水素化処理触媒Yの性状等を示す。
【0070】
<比較例10:水素化処理触媒Z>
熟成温度を70℃とした点以外は実施例24と同様にして水素化処理触媒Zを得た。熟成触媒Zにおけるグルコン酸水溶液の含液量は57質量%であった。表2に水素化処理触媒Zの性状等を示す。
【0071】
<比較例11:水素化処理触媒A1>
熟成温度を160℃とした点以外は実施例24と同様にして水素化処理触媒A1を得た。熟成触媒A1におけるグルコン酸水溶液の含液量は58質量%であった。表2に水素化処理触媒A1の性状等を示す。
【0072】
<比較例12:水素化処理触媒A2>
熟成温度を60℃とし、熟成時間を8時間とした点以外は実施例24と同様にして水素化処理触媒A2を得た。熟成触媒A2におけるグルコン酸水溶液の含液量は52質量%であった。表2に水素化処理触媒A2の性状等を示す。
【0073】
<比較例13:水素化処理触媒A3>
熟成温度を70℃とし、熟成時間を10時間とした点以外は実施例24と同様にして水素化処理触媒A3を得た。熟成触媒A3におけるグルコン酸水溶液の含液量は51質量%であった。表2に水素化処理触媒A3の性状等を示す。
【0074】
<比較例14:水素化処理触媒A4>
熟成工程前の含浸触媒を室温雰囲気下で60分静置の上乾燥させた以外は実施例24と同様にして水素化処理触媒A4を得た。表2に水素化処理触媒A4の性状等を示す。
【0075】
触媒A〜触媒Z、触媒A1〜触媒A4について、前記した安定性評価試験及び水素化処理活性評価試験を行った結果を表2に示す。
【0076】
【表2】
【0077】
実施例24〜46においては、相対脱硫活性が110%を超える結果が得られており、十分な活性向上結果が得られた。これに対して比較例の相対脱硫活性は、実用上要求される100〜105%の範囲であり、実施例の相対脱硫活性を下回っている。
ここで、熟成時間、熟成圧力を一定(2時間、0.10MPa(1atm))とし、熟成温度を変化させた実施例24、26〜30、比較例9〜11についての高温処理時の安定性(NO吸着量変化率の絶対値)の変化を
図1に丸のプロットで示し、実施例24、26、28、30、比較例9についての脱硫活性(相対脱硫活性)の変化を
図2に丸のプロットで示す。これらの図によれば、活性向上処理を行った水素化処理触媒の安定性は、熟成温度に対して下に突の傾向線を描き、脱硫活性は上に突の傾向線を描くことが分かる。そして、熟成温度が100〜140℃の範囲では、相対脱硫活性が120%を超え、NO吸着量変化率も10%を下回っており、高活性で安定な活性向上結果が得られたといえる。
【0078】
一方、実施例26(熟成温度80℃)は、熟成時間が2時間の場合には120%を超える相対脱硫活性が得られなかったが、実施例31(熟成温度80℃)では、熟成時間を8時間に伸ばすことで、120%の相対脱硫活性が得られており、高温処理時の安定性も向上している。熟成温度が90℃の場合にも熟成時間を長くすることによって同様の結果が得られると考えられる。例えば熟成時間が10時間以内で110%以上の相対的脱硫活性が得られれば、十分に短時間で、良好な安定性を持つ活性向上処理が行われていると評価できる。
また、比較例14は、熟成後に計測したグルコン酸水溶液の含液量が50質量%未満(44質量%)となっており、NO吸着量の変化率も10%を大きく上回り、相対脱硫活性も102%と低い。
【0079】
次に、熟成温度、熟成時間を一定(110℃、2時間)とし、熟成時の圧力を変化させた実施例24、33〜39についての使用時の硫化処理及び触媒反応時を想定した条件下における触媒の活性点の量的変化(NO吸着量変化率の絶対値)を
図3に丸のプロットで示し、また、実施例24、33、34、37〜39についての脱硫活性(相対脱硫活性)の変化を
図4に丸のプロットで示す。これらによれば、活性向上処理を行った水素化処理触媒のNOが吸着した活性点の量は、熟成時の圧力に対して下に突の傾向線を描き、脱硫活性は上に突の傾向線を描くことが分かる。そして、熟成時の圧力が0.10〜0.42MPa(1〜4.2atm)の範囲では、相対脱硫活性が110%を超え、NO吸着量変化率も10%を下回っており、高活性で安定な活性向上結果が得られたといえる。
最後に活性金属成分としてコバルト原料を添加した実施例41〜43、ニッケル原料を添加した実施例44〜46では、いずれの活性金属成分においても、酸化物換算で0.5〜1.0質量%の範囲の活性金属成分を添加した場合には、NO吸着量変化率は10%を下回った。また、実施例41、45では相対脱硫活性が120%を超えている。これに対して活性金属成分の添加量が1.5質量%になると、NO吸着量変化率は10%を超え、相対脱硫活性は120%を下回った。
また、熟成後の含液量が50質量%となるように調製した実施例25は、NO吸着量変化率(絶対値)が10%を下回り、相対脱硫活性が123%であった。これにより、熟成後の含液量が50質量%以上あれば、NO吸着量変化率(絶対値)や相対脱硫活性が目標値を満たす再生結果が得られることを確認できた。