(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
溶液を収容する容器と、マイクロ波を出力するマイクロ波発振器と、前記マイクロ波を前記溶液に与えてこの溶液内にプラズマを励起させる電極とを備えたマイクロ波液中プラズマ処理装置を用いて、前記溶液として、ナノ粒子担体と、アルカリ金属およびアルカリ土類金属から選ばれる少なくとも1種の金属イオンとを含有する溶液を前記容器に収容し、前記プラズマを励起することによって、前記アルカリ金属およびアルカリ土類金属から選ばれる少なくとも1種を前記ナノ粒子担体にドープしたアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属ドープナノ粒子を合成することを特徴とするアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属ドープナノ粒子の製造方法。
溶液を収容する容器と、マイクロ波を出力するマイクロ波発振器と、前記マイクロ波を前記溶液に与えてこの溶液内にプラズマを励起させる電極とを備えたマイクロ波液中プラズマ処理装置を用い、前記電極として、前記プラズマの励起によってナノ粒子担体となる金属で形成されたものを用いて、前記溶液として、アルカリ金属およびアルカリ土類金属から選ばれる少なくとも1種の金属イオンを含有する溶液を前記容器に収容し、前記プラズマを励起することによって、前記溶液中に前記ナノ粒子担体を生成させると共に、このナノ粒子担体に前記アルカリ金属およびアルカリ土類金属から選ばれる少なくとも1種をドープさせ、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属ドープナノ粒子を合成することを特徴とするアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属ドープナノ粒子の製造方法。
溶液を収容する容器と、マイクロ波を出力するマイクロ波発振器と、前記マイクロ波を前記溶液に与えてこの溶液内にプラズマを励起させる電極とを備えたマイクロ波液中プラズマ処理装置を用いて、前記溶液として、アルカリ金属およびアルカリ土類金属から選ばれる少なくとも1種の金属イオンと、前記プラズマの励起によってナノ粒子担体となる物質とを含有する溶液を前記容器に収容し、前記プラズマを励起することによって、前記溶液中に前記ナノ粒子担体を生成させると共に、このナノ粒子担体に前記アルカリ金属およびアルカリ土類金属から選ばれる少なくとも1種をドープさせ、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属ドープナノ粒子を合成することを特徴とするアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属ドープナノ粒子の製造方法。
アルカリ金属およびアルカリ土類金属から選ばれる少なくとも1種の金属イオンを溶液から除去する方法であって、前記溶液を収容する容器と、マイクロ波を出力するマイクロ波発振器と、前記マイクロ波を前記溶液に与えてこの溶液内にプラズマを励起させる電極とを備えたマイクロ波液中プラズマ処理装置を用いて、前記溶液に、ナノ粒子担体を含有させて、この溶液を前記容器に収容し、前記プラズマを励起することによって、前記アルカリ金属およびアルカリ土類金属から選ばれる少なくとも1種を前記ナノ粒子担体にドープさせる工程を含むことを特徴とする、アルカリ金属およびアルカリ土類金属から選ばれる少なくとも1種の金属イオンを溶液から除去する方法。
アルカリ金属およびアルカリ土類金属から選ばれる少なくとも1種の金属イオンを溶液から除去する方法であって、前記溶液を収容する容器と、マイクロ波を出力するマイクロ波発振器と、前記マイクロ波を前記溶液に与えてこの溶液内にプラズマを励起させる電極とを備えたマイクロ波液中プラズマ処理装置を用い、前記電極として、前記プラズマの励起によってナノ粒子担体となる金属で形成されたものを用いて、アルカリ金属およびアルカリ土類金属から選ばれる少なくとも1種の金属イオンを含有する前記溶液を前記容器に収容し、前記プラズマを励起することによって、前記溶液中に前記ナノ粒子担体を生成させると共に、このナノ粒子担体に前記アルカリ金属およびアルカリ土類金属から選ばれる少なくとも1種をドープさせさせる工程を含むことを特徴とする、アルカリ金属およびアルカリ土類金属から選ばれる少なくとも1種の金属イオンを溶液から除去する方法。
アルカリ金属およびアルカリ土類金属から選ばれる少なくとも1種の金属イオンを溶液から除去する方法であって、前記溶液を収容する容器と、マイクロ波を出力するマイクロ波発振器と、前記マイクロ波を前記溶液に与えてこの溶液内にプラズマを励起させる電極とを備えたマイクロ波液中プラズマ処理装置を用いて、アルカリ金属およびアルカリ土類金属から選ばれる少なくとも1種の金属イオンと、前記プラズマの励起によってナノ粒子担体となる物質とを含有する前記溶液を前記容器に収容し、前記プラズマを励起することによって、前記溶液中に前記ナノ粒子担体を生成させると共に、このナノ粒子担体に前記アルカリ金属およびアルカリ土類金属から選ばれる少なくとも1種をドープさせさせる工程を含むことを特徴とする、アルカリ金属およびアルカリ土類金属から選ばれる少なくとも1種の金属イオンを溶液から除去する方法。
前記ナノ粒子担体が金属酸化物であることを特徴とする、請求項5から7のいずれかに記載のアルカリ金属およびアルカリ土類金属から選ばれる少なくとも1種の金属イオンを溶液から除去する方法。
請求項1から4のいずれかに記載の方法により製造されたアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属ドープナノ粒子を質量分析用の試料基板に担持させた試料ホルダを得る工程と、分析対象の試料物質が溶解している試料液を前記試料ホルダの前記アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属ドープナノ粒子を担持した箇所に塗布したのち乾燥させることにより、前記試料物質を前記アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属ドープナノ粒子に被着させる工程と、その試料ホルダを表面支援レーザー脱離イオン化質量分析(SALDI−MS)質量分析装置にセットしたのちパルスレーザー光を照射することにより、前記アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属ドープナノ粒子をレーザー光吸収マトリクスとして機能させ、前記試料物質をイオン化する工程とを含むことを特徴とする質量分析方法。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明において、「マイクロ波液中プラズマ処理装置」には、上記の特許文献および非特許文献に開示された装置、およびこれらの開示に基づいて適宜の変更をした装置が少なくとも含まれる。
【0033】
また「ナノ粒子」は、一般の語義のとおり、直径が1〜100nm程度の微粒子をいう。ナノ粒子と呼ばれるものは通常、比表面積が極めて大きいこと、量子サイズ効果によって特有の物性を示すことなど、一般的な大きさの固体(バルク)の材料とは異なることから、様々な分野で研究・利用が進められている。
【0034】
図1は、本発明に使用されるマイクロ波液中プラズマ処理装置の構成の一例を示す正面図である。
【0035】
同図に示すように、マイクロ波液中プラズマ処理装置1は、マイクロ波発振器10と、導波管20と、容器30と、液中プラズマ源40とを有している。
【0036】
ここで、マイクロ波発振器10は、マグネトロンボックス11と、マイクロ波電源12と、マイクロ波電源コントローラ13とを有している。
【0037】
マグネトロンボックス11は、マイクロ波を生成して出力する。
【0038】
マイクロ波電源12は、マグネトロンボックス11にマイクロ波生成用の電力を供給する。
【0039】
マイクロ波電源コントローラ13は、マイクロ波電源12に信号を送って、マイクロ波の出力などを調整・制御する。
【0040】
なお、
図1においては、マグネトロンボックス11、マイクロ波電源12、マイクロ波電源コントローラ13をそれぞれ別構成で示したが、別構成に限るものではなく、これらを一体構成とすることができる。
【0041】
また、マイクロ波は、一般に、波長が100μm〜1m、周波数が300MHz〜3THzの電磁波をいう。
【0042】
導波管20は、マイクロ波発振器10から出力されたマイクロ波を容器30へ伝搬する。
【0043】
導波管20には、アイソレータ21、パワーメータ22、チューナ23などの立体回路を取り付けることができる。
【0044】
アイソレータ21は、負荷から反射してきたマイクロ波が再びマグネトロンへ戻らないように、ダミーロードで吸収し、熱に変換する。
【0045】
パワーメータ22は、出射、反射それぞれのマイクロ波電力を測定する。
【0046】
チューナ23は、負荷インピーダンスの整合を行う。
【0047】
チューナ23には、スリースタブチューナと、EHチューナがある。
【0048】
スリースタブチューナは、三本のスタブを調整して、負荷の消費電力を最大にする。
【0049】
EHチューナは、導波管20のE分岐とH分岐にプランジャを設け、これを出し入れすることで、チューニングをとる。
【0050】
なお、マイクロ波液中プラズマ処理装置1を実施する場合は、スリースタブチューナとEHチューナのいずれを用いてもよい。
【0051】
また、導波管20には、コーナ導波管24や終端プランジャ25などを用いることができる。
【0052】
さらに、導波管20は、同軸導波管変換器26を有している。
【0053】
この同軸導波管変換器26の構造については、後記の(液中プラズマ源)で詳述する。
【0054】
容器30は、液体を入れる器である。この容器30に収められた液体の中でプラズマを発生させる。
【0055】
この容器30の側面32(
図5参照)の一部には、液中プラズマ源40の支持体43(後述)を取り付けるための孔31(
図5参照)が穿設されている。
【0056】
支持体43は、後述するように、キャップ状に形成されており、スカート部43−1と天板部43−2とを有している。孔31は、天板部43−2とスカート部43−1の一部(天板部43−2の近傍)が嵌合可能な大きさに穿設されている。
【0057】
この容器30は、例えば、テフロン(登録商標)などの樹脂やガラスで形成することが望ましい。この理由としては、仮に、容器30が金属で形成されていたとすると、収められた液体が酸性水になるため、電池になって電気分解や腐食を起こす可能性があるからである。
【0058】
なお、テフロン(登録商標)製の容器30の外側に、ステンレス容器を備えたり、金属製の容器の内側にテフロン(登録商標)塗装を施して使用することもできる。金属製の容器を使うことにより、マイクロ波の漏洩を防止できる。
【0059】
この容器30には、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属ドープナノ粒子を製造するための溶液を入れることができる。
(液体への供給電力)
次に、液体(溶液)に供給される電力について、説明する。
【0060】
液体には、この液中にプラズマを発生させて金属担持物を生成するための電力が供給される。
【0061】
この電力は、直流パルスではなく、2.45GHz、5.8GHz、9.5GHz帯などの周波数スペクトルが単一のマイクロ波である。このため、共振構造、伝送路インピーダンスの最適化などにより、高い電力供給効率が可能となる。
【0062】
駆動電力をマイクロ波にすることで、電極42への負荷を小さくできる。すなわち、マイクロ波は単周波数なので、極めて効率的に電力を供給すること、および電極を誘電体で覆うなど無電極化することが可能になる。
【0063】
マイクロ波は、理論的には無反射にすることも可能であり、この場合の負荷への電力供給効率は、マグネトロンの発振効率のみが最も大きな損失となるだけなので、電力効率は、70%近くになる。この数値は、他の方法と比較して極めて高い効率である。
【0064】
また、直流パルスにおいては、液体の導電率を制御する必要がある。これは、導電率が低い場合は液体に余計な電解質を混入する必要があること、あるいは、既に導電率が必要よりも高い場合にはプラズマを得ることができないことを意味する。
【0065】
これに対して、マイクロ波は、水の大きな比誘電率(約80)と大きな誘電正接(約10)によりエネルギーを吸収させてプラズマを生じさせるので、このような導電率の制御は不要であり、よって、不純物を入れる必要もなく、多くの物質に適用できる。液体として、水が適当であることも、他方式に対する特徴となる。
【0066】
マイクロ波電力は、
図2に示すように、複数周期を一パルスとするパルス状であることが望ましい。
【0067】
定常的にプラズマ放電可能なマイクロ波電力をプラズマ源に投入すると、その電力により激しい発熱が生じ、電極42が破壊する。しかるに、プラズマが生じるための電力は高く、試作機では、2kW以上のピークパワーを必要とした。この相反する要求を同時に実現するためには、電力供給はマイクロ波パルスであることが必要になる。
【0068】
一方、マイクロ波パルスのパルス幅を1μ秒よりも短くすれば、プラズマはコロナ放電すなわち非熱平衡プラズマとなり、温度上昇が抑えられ、電極42の損耗は著しく少なくなる。しかし、液体に与えられるエネルギーは小さくなるため、反応速度が遅くなるか、または条件によっては金属担持物が生成されない可能性がある。
(液中プラズマ源)
次に、液中プラズマ源の構成について、
図3〜
図5を参照して説明する。
【0069】
図3は、液中プラズマ源の構成を示す断面図である。
図4は、液中プラズマ源を構成する支持部材を示した斜視図である。
図5は、液中プラズマ源を構成する電極およびその周囲を拡大した要部拡大図である。
【0070】
なお、この例においては、同軸導波管変換器26の同軸管41が液中プラズマ源40に含まれるものとする。
【0071】
液中プラズマ源40は、導波管20を伝搬してきたマイクロ波を液体に供給するための装置である。この液中プラズマ源40は、
図3に示すように、同軸管41と、電極42と、支持体43と、封止部材44と、絶縁部材45とを有している。
【0072】
同軸管41は、同軸導波管変換器26の一部を構成しており、導波管20からマイクロ波を受けて伝搬させる。
【0073】
一般に、同軸導波管変換器26では、導波管20(管体26−1)と同軸管41とが垂直に接続されている。このため、マイクロ波は、管体26−1から同軸管41に伝わるときに、その伝搬方向を垂直方向に変えて伝わっていく。
【0074】
この同軸管41は、同軸管構造で形成されており、同軸管外部導体41−1と、同軸管内部導体41−2とを有している。
【0075】
同軸管外部導体41−1は、同軸導波管変換器26の管体26−1の表面から外方に向かって突設された管状部材である。この同軸管外部導体41−1の中心軸方向は、同軸導波管変換器26の管体26−1の中心軸に対して垂直方向である。
【0076】
この同軸管外部導体41−1の内径は、特性インピーダンスが50Ωとなるような寸法にしてある。
【0077】
特性インピーダンスは、管の内外径比により変更できる。負荷(プラズマ)に整合するよう調整することも可能である。
【0078】
同軸管内部導体41−2は、棒状又は筒状の部材であって、同軸管外部導体41−1の中空に、同軸管外部導体41−1と同軸で配置されている。
【0079】
この同軸管内部導体41−2の一方の端部は、同軸導波管変換器26の管体26−1の内面(同軸管外部導体41−1が取り付けられている部分に対向する面)に当接している。また、他方の端部には電極42が延設されている。
【0080】
同軸管内部導体41−2が管体26−1に当接している部分には、支持部材50が取り付けられている。
【0081】
支持部材50は、
図3および
図4に示すように、第一支持部材51と、第二支持部材52とを有している。
【0082】
第一支持部材51は、頂部が截断された截頭錐体の形状に形成されており、底部51−1が管体26−1の孔26−2に嵌合している。また、底部51−1の中央から頂部截断面(截頭面51−2)の中央に向かって直線状に貫通孔51−3が穿設されている。この貫通孔51−3には、同軸管内部導体41−2の一方の端部が嵌合する。
【0083】
この第一支持部材51が截頭錐体の形状に形成してあるのは、次の理由による。方形導波管の伝送基本モードは、TEモードまたはTMモードである。一方、同軸線路の伝送基本モードは、TEMモードである。このように、方形導波管と同軸線路では、伝送モードが異なるが、同軸導波管変換器26は、それらの整合をとって、マイクロ波を伝搬可能にしている。
【0084】
整合の手法には様々なものがあるが、この例の同軸導波管変換器26は、第一支持部材51の形状により整合をとっている。
【0085】
第二支持部材52は、截頭錐体部52−1と、ネジ部52−2とを有している。
【0086】
截頭錐体部52−1は、頂部が截断された截頭錐体の形状に形成されており、底部52−3の中心から頂部截断面(截頭面)の中央に向かって直線状に貫通孔52−4が穿設されている。
【0087】
また、截頭錐体部52−1には、傾斜(テーパ)に沿って複数のスリット52−5が形成されており、一種のコレットチャックとなっている。スリット間にある歯部52−6は、貫通孔52−4に嵌合された同軸管内部導体41−2を支持する。
【0088】
ネジ部52−2は、截頭錐体部52−1の底部52−3から延設した円筒形状の部材であって、外周に雄ネジ52−7が形成されている。また、ネジ部52−2の中空52−8と截頭錐体部52−1の貫通孔52−4が連通している。
【0089】
一方、第一支持部材51の截頭面51−2の中央には貫通孔51−3が穿設されており、この貫通孔51−3には、雌ネジ51−4が形成されている。これにより、第二支持部材52の雄ネジ52−7が、第一支持部材51の雌ネジ51−4に螺入することができ、この螺入により、第二支持部材52の貫通孔52−4および中空52−8と、第一支持部材51の貫通孔51−3が連通する。
【0090】
なお、第一支持部材51の截頭面51−2の外縁の径は、第二支持部材52の底部52−3の外縁の径と同じである。これにより、第一支持部材51の雌ネジ51−4に第二支持部材52のネジ部52−2を螺入してもエッジが表れないので、放電を防止できる。
【0091】
電極42は、
図5に示すように、胴部が円柱形状に形成されるとともに、一方の端部が円錐形状に形成されており、他方の端部に同軸管内部導体41−2の他方の端部が取り付けられている。電極42の一端を円錐形状とするにより、この先端46に電界を集中させ、電界強度を上げることができる。
【0092】
そして、電極42の先端46を液中に露出させることで、この部分にプラズマを発生させることができる。
【0093】
この電極42は、金属などの導電体で形成されている。特に、先端46は、プラズマの熱を受け損傷するおそれがあるので、タングステンなど耐熱性の材料(高融点材料)で形成することが望ましい。ただし、必ずしも金属である必要はなく、例えば、誘電体を用いて作成することもできる。誘電体で電極42を作成すれば、金属が液中に露出しないので、金属不純物の混入を減少できる。
【0094】
支持体43は、同軸管外部導体41−1の一端(同軸導波管変換器26の管体26−1に接続していない方の端部)を蓋するように取り付けられたキャップ状部材である。
【0095】
この支持体43は、スカート部43−1と、天板部43−2とを有している。
【0096】
スカート部43−1の裾部43−3は、同軸管外部導体41−1の一端に接続している。スカート部43−1のうち天板部43−2の近傍は、容器30の孔31に嵌合されたときに、天板部43−2とともに容器30の内部に露出する。この露出したスカート部43−1の外周にはネジ溝43−4が形成されている。ここに止めリング43−5を螺合することで、支持体43が容器30の側面32に固定される。
【0097】
この孔31から露出した天板部43−2およびスカート部43−1の一部は、液体に浸される。
【0098】
また、支持体43は、中空部43−6を有している。中空部43−6は、同軸管外部導体41−1の中空と連通している。
【0099】
この中空部43−6は、スカート部43−1の内面から天板部43−2の中央に向かって次第に内径が小さくなるように、先細りのテーパ状に形成されている。そして、天板部43−2の中央には、小さい孔43−7が穿設されている。これにより、この孔43−7から電極42の先端46が少し突出する。
【0100】
さらに、支持体43の天板部43−2の表面には、耐熱部材43−8が取り付けられている。
【0101】
耐熱部材43−8は、プラズマ熱により支持体43が損耗し、孔43−7の径が大きくなるのを防ぐ。
【0102】
封止部材44は、支持体43の内面(中空部43−6の側面)と電極42との間に設けられた環状部材である。
【0103】
この封止部材44は、電極42を支持するとともに、同軸管41の内部に液体が流入するのを防止する。
【0104】
絶縁部材45は、支持体43の中空部43−6の側面と電極42との間であって、封止部材44と天板部43−2の孔43−7との間(つまり、容器30に液体を入れたときの封止部材44と液体との間)に設けられた環状部材である。
【0105】
この絶縁部材45は、電極42を支持する機能と、液体が同軸管41や導波管20に侵入しないように封止する機能と、封止部材44がプラズマに直接暴露して熱的損傷を受けるのを防止する機能とを有している。これにより、封止部材44の寿命を延ばして、液中プラズマ源40の延命を可能とする。
【0106】
封止部材44の材質は、変形して周囲の金属と密着する程度の弾力性があり、かつマイクロ波によって発熱しないように誘電損が小さい材質を使う必要がある。また、プラズマからの熱を多少受けるためにある程度の耐熱性を有することが望ましい。
【0107】
封止部材44としては、例えば、プラスチックを用い、その液体側を絶縁部材45としてのセラミックで覆い保護した二重構造とすることができる。
【0108】
プラスチックは、PTFEを使用する。これは、マイクロ波帯における誘電損が少なく、過大な誘電率がなく、なるべく高い耐熱性があるからである。ただし、これらの条件を満たす材料であれば、PTFEに限るものではない。
【0109】
セラミックは、アルミナ(Al
2O
3)を使用することができる。これは、PTFEと同様にマイクロ波帯における誘電損が少なく、過大な誘電率がなく、高い耐熱性と機械的強度があるからである。このような構造にすることによって、電極42の先端46のみが液体に露出し、かつプラズマを長時間維持できる耐熱構造を実現することが可能となる。ただし、これらの条件を満たす材料であれば、アルミナに限るものではない。
【0110】
本発明のアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属ドープナノ粒子の製造方法は、以上に説明した例のような、溶液を収容する容器と、マイクロ波を出力するマイクロ波発振器と、マイクロ波を溶液に与えてこの溶液内にプラズマを励起させる電極とを備えたマイクロ波液中プラズマ処理装置を用いて行われる。
【0111】
具体的には、溶液として、ナノ粒子担体と、アルカリ金属およびアルカリ土類金属から選ばれる少なくとも1種の金属イオンとを含有する溶液を容器に収容し、プラズマを励起する。上記の例では、溶液をマイクロ波液中プラズマ処理装置1の容器30に入れた後、マイクロ波液中プラズマ処理装置1のマイクロ波発振器10の電源を投入し、マグネトロンボックス11からマイクロ波を出力させる。マイクロ波は、導波管20を伝搬し、同軸導波管変換器26、そして液中プラズマ源40を介して溶液に与えられる。これにより、溶液内にプラズマが発生する。
【0112】
これによって、金属イオンを還元し、担体表面に金属として析出させて、アルカリ金属およびアルカリ土類金属から選ばれる少なくとも1種をナノ粒子担体にドープしたアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属ドープナノ粒子を合成する。
【0113】
ナノ粒子担体としては、例えば、無機酸化物ナノ粒子、金属ナノ粒子、カーボンブラック等のカーボンのナノ粒子等が挙げられる。
【0114】
無機酸化物ナノ粒子としては、例えば、金属酸化物を挙げることができ、金属酸化物を構成する金属の具体例としては、リチウム(Li)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、アルミニウム(Al)、イットリウム(Y)、インジウム(In)、セリウム(Ce)、ケイ素(Si)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、スズ(Sn)、ニオブ(Nb)、アンチモン(Sb)、タンタル(Ta)、ビスマス(Bi)、クロム(Cr)、タングステン(W)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、ルテニウム(Ru)およびこれらの合金が挙げられる。金属酸化物における酸素の組成は、金属の価数に応じて決定される。
【0115】
金属ナノ粒子としては、例えば、白金、金、パラジウム、銀等が挙げられる。
【0116】
アルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム等が挙げられる。アルカリ土類金属としては、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ラジウム等が挙げられる。
【0117】
アルカリ金属とアルカリ土類金属の塩におけるアニオンとしては、特に限定されないが、例えば、F
-、Cl
-、Br
-、I
-、OH
-、SO
42-、HSO
4-、H
2PO
4-、HPO
42-、PO
43-、NO
3-等の無機アニオン、HCOO
-、CH
3COO
-、C
6H
5COO
-、p-CH
3C
6H
4SO
3-等の有機アニオン等が挙げられる。
【0118】
また、本発明のアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属ドープナノ粒子の製造方法は、特許文献4のように、電極として、プラズマの励起によってナノ粒子担体となる金属で形成されたものを用いて行うこともできる。
【0119】
すなわち、この方法では、溶液を収容する容器と、マイクロ波を出力するマイクロ波発振器と、マイクロ波を前記溶液に与えてこの溶液内にプラズマを励起させる電極とを備えたマイクロ波液中プラズマ処理装置を用い、溶液として、アルカリ金属およびアルカリ土類金属から選ばれる少なくとも1種の金属イオンを含有する溶液を容器に収容し、プラズマを励起する。これによって、溶液中にナノ粒子担体を生成させると共に、このナノ粒子担体にアルカリ金属およびアルカリ土類金属から選ばれる少なくとも1種をドープさせ、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属ドープナノ粒子を合成することができる。
【0120】
あるいは、溶液として、アルカリ金属およびアルカリ土類金属から選ばれる少なくとも1種の金属イオンと、プラズマの励起によってナノ粒子担体となる物質とを含有する溶液を容器に収容し、プラズマを励起することによって、溶液中にナノ粒子担体を生成させると共に、このナノ粒子担体にアルカリ金属およびアルカリ土類金属から選ばれる少なくとも1種をドープさせ、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属ドープナノ粒子を合成することもできる。
【0121】
そして本発明によれば、上記のようなアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属ドープナノ粒子の合成によって、アルカリ金属およびアルカリ土類金属から選ばれる少なくとも1種の金属イオンを溶液から容易に除去することができる。すなわち、ナノ粒子にトラップされたアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属は、ナノ粒子を溶液から分離することによって溶液から除去することができる。
【0122】
以上のような方法で合成されたアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属ドープナノ粒子は、SALDI法におけるレーザー光吸収マトリクスに用いることができる。
【0123】
レーザー照射によって加熱されることは、いずれの試料物質に対しても同様であるはずで、脱離は生じているものと考えられる。そのとき、イオン化が生じなければ、検出できない。
【0124】
しかしアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属ドープナノ粒子は、ドーピングされたアルカリ金属イオンやアルカリ土類金属イオンが、イオン化を促進するための手助けをする。そのため、種々の有機化合物等を分析するのに用いることができ、特に、質量分析における検出感度が向上するため、従来検出が不可能であった試料物質についても質量分析が可能になる。
【0125】
このアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属ドープナノ粒子を用いて、これを質量分析用の試料基板に担持させた試料ホルダを作製する。ここで、試料ホルダは、分析対象の試料物質を保持した状態でSALDI分析装置に装填されるものであり、少なくとも導電性基板と、その基板に担持されたアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属ドープナノ粒子を構成要素として持つ。
【0126】
アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属ドープナノ粒子層を試料基板上に形成する手段については、特に制限されないが、例えば、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属ドープナノ粒子を溶剤に分散させて分散液を得て、この分散液を試料基板に塗布し、溶剤を乾燥させて形成することができる。
【0127】
アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属ドープナノ粒子を含んだ分散液を得る場合の溶剤については、揮発性溶媒であり、かつ、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属ドープナノ粒子を安定に分散させることができるものであれば特に制限はないが、例えば水のほか、メタノール、エタノール、プロパノール、2−プロパノール、ブタノールなどのアルコール類、アセトン、2−ブタノン、アセチルアセトン等のケトン類、酢酸エチル等のエステル類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)などのエーテル類、ヘキサン、石油エーテル等の脂肪族系炭化水素類、クロロホルム、塩化メチレン、クロロベンゼン等の脂肪族系および芳香族系ハロゲン化炭化水素類、ベンゼン、トルエン等の芳香族系炭化水素類等を挙げることができ、これらを単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0128】
また、分散液を得る際には、溶剤中にアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属ドープナノ粒子を加えながら分散させてもよく、無論、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属ドープナノ粒子と溶剤の2成分を同時に混合し、分散させるように調製してもよい。これらの分散操作は、常法によればよく、例えば通常の攪拌操作のほか、ペイントシェーカー、ボールミル、サンドミル、セントリミル、三本ロール等を用いて行うことができる。
【0129】
分散液を試料基板に塗布する手段については特に制限はなく、公知の方法を採用できる。例えば、単にピペットなどで分散液を試料基板に薄く載せて乾燥する方法の他、刷毛塗り、ロール塗り、グラビアコーター、ナイフコーター、ロールコーター、コンマコーター、スピンコーター、バーコーター、ディッピング塗布、スプレー塗布等の方法のほか、グラビア印刷、オフセット印刷、スクリーン印刷、シルク印刷、インクジェット印刷等の印刷法を用いてもよい。
【0130】
また、試料基板への塗布(または印刷)は、分析対象の試料物質を付着させる部分を選択して行ってもよい。分散液を試料基板に塗布した後は、乾燥させて(必要に応じて加熱して)溶剤を蒸発させ、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属ドープナノ粒子層を得るようにする。
【0131】
また、試料基板については、質量分析の手法上、導電性を備えるものであれば特に制限はなく、例えば不純物半導体であるシリコン(n型、p型)や金属等からなる基材が挙げられる。一般に、熱伝導率が小さい材質からなる基材を使用するとレーザーからのエネルギーが分析用基板に散逸し難いことから、比較的低いレーザーエネルギーで試料物質を分析することができ、分析対象の試料物質の破壊を抑えることができる点で好都合である。
【0132】
得られた試料ホルダを用いた質量分析は、一般的な方法で行うことができる。例えば分析対象の試料物質を揮発性の溶媒に溶解させ、この試料液を適量、試料ホルダのアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属ドープナノ粒子を担持した箇所に塗布した後、乾燥させることにより、分析対象の試料物質をアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属ドープナノ粒子に被着させる。
【0133】
ここで、試料物質を溶解する溶媒としては、先に説明したアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属ドープナノ粒子の分散液を得る際に用いられる溶媒と同様なものを例示することができる。また、分析対象の試料物質は、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属ドープナノ粒子の分散液と一緒に混合して試料基板上に塗布することで、試料ホルダを得ると同時に分析対象の試料物質を付着させるようにしてもよい。
【0134】
その試料ホルダを表面支援レーザー脱離イオン化質量分析(SALDI−MS)質量分析装置にセットしたのちパルスレーザー光を照射することにより、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属ドープナノ粒子をレーザー光吸収マトリクスとして機能させ、分析対象の試料物質をイオン化する。
【0135】
また、試料物質を付着した試料ホルダは、公知の質量分析装置を用いて分析することができる。分析条件については、適宜設定して行うことができるが、例えば照射するレーザーとしては、3〜10ns程度のパルスレーザー光(波長:337nm、520nm、または1020nm等)を照射することで、レーザー光がアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属ドープナノ粒子層に吸収されて急激な温度上昇が起こり、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属ドープナノ粒子層に付着した分析対象の試料物質がソフトにイオン化される。生じたイオンは、例えば飛行時間型、四重極型、イオントラップ型、セクター型、フーリエ変換型、またはこれらの複合型等からなる質量分離部の作用によりm/zの差で分離され、検出器で観測される。その結果、各m/zに相当する分子イオンピークから対象とする分子の構造解析や質量の算出が行える。
【実施例】
【0136】
以下に、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
<実施例1>
チタニアナノ粒子(石原産業 ST-01)1gを水500mLに分散させ、NaCl 10gを溶解させた。
【0137】
その後、この溶液を上記に例示した構成に準ずるマイクロ波液中プラズマ装置で30分間プラズマ処理した。処理後、ろ過した後、良く水で洗浄し付着した金属イオンを取り除いて真空乾燥した。
【0138】
プラズマ処理後のナノ粒子をX線光電子分光(XPS)によって分析した。XPSはJEOL JPS-9200(X線源:Al Kα線)で測定した。
【0139】
その結果を
図6、
図7に示す。
図6ではチタンのピークが検出されている。また
図7において、ナノ粒子にNaが取り込まれている(ドープされている)ことを確認した。
<実施例2>
チタニアナノ粒子(石原産業 ST-01)1gを水500mLに分散させ、NaOHを溶解させて、pHを10程度に上昇させた。
【0140】
その後、この溶液を上記に例示した構成に準ずるマイクロ波液中プラズマ装置で30分間プラズマ処理した。処理後、ろ過した後、良く水で洗浄し付着した金属イオンを取り除いて真空乾燥した。
【0141】
プラズマ処理後のナノ粒子をX線光電子分光(XPS)によって分析した。
【0142】
その結果を
図8、
図9に示す。
図8ではチタンのピークが検出されている。また
図9において、ナノ粒子にNaがドープされたことを確認した。
<実施例3>
1.0385gのCuOナノ粒子粉末を500mLの水に懸濁させた。NaOH濃厚溶液を加え、pHを10.4まで上げた。その後、この溶液をマイクロ波液中プラズマ装置で15分間プラズマ処理した。得られたCuOナノ粒子粉末をろ過、乾燥した後、X線光電子分光(XPS)によって分析したところ、実施例1、2と同様にNaがドープされたことを確認した。このNaドープCuOナノ粒子は、後述の実施例5に使用した。
<実施例4>
質量分析装置として、島津/KRATOS製AXIMA-CFRを用いた。SALDI-MS用ナノ粒子として、実施例1と同様の方法で得られたナノ粒子のプラズマ処理チタニアを用いた。
【0143】
ナノ粒子とサンプルをステンレス基板の上に置き、装置の中に導入して、N
2パルスレーザー(337nm)を照射して試料を脱離・イオン化させ、測定した。
【0144】
このナトリウムを取り込んだチタニアを用いて、バルビツール酸のSALDI-MS測定およびMALDI-MS測定を行った。
【0145】
SALDI-MS測定のサンプル作製では、ナトリウムがドープされたチタニアナノ粒子の水分散液をまず試料プレートに塗布し、減圧乾燥した後、100ppmのバルビツール酸水溶液をナノ粒子分散液を塗布した試料プレート上に塗布して減圧乾燥した。その試料を装置に導入し質量分析測定を行った。
【0146】
MALDI-MSの測定は、チタニアの代わりに有機マトリクスであるDHBA(2,5-ジヒドロ安息香酸)水溶液を塗布した。DHBA水溶液をサンプルプレートに塗布し、減圧乾燥した後、100ppmのバルビツール酸水溶液を塗布、減圧乾燥し、その後、MALDI装置に導入し質量分析を行った。
【0147】
その結果を
図10に示す。
【0148】
バルビツール酸の分子量は128.1であり、プロトン附加体は129、Na附加体は150にピークが出るはずである。
【0149】
同図の下のスペクトルがバルビツール酸のMALDIスペクトルで、マトリクスにDHBA(2,5-ジヒドロキシ安息香酸、154.12)を用いている。残念ながらバルビツール酸に対応するピークは見出せない。145にピークがあるが、バルビツール酸では説明できない。
【0150】
一方、TiO
2にプラズマ照射したものの場合、同図の上のスペクトルに示されるように150.3にピークを持ち、これはバルビツール酸のナトリウム附加体である。
【0151】
このようにMALDIでは見えない化合物のピークの検出が可能となった。
【0152】
なお、試料としてオカダ酸を用いて質量分析を行った場合も、有機マトリクスとしてDHBAを用いた場合のMALDI-MS測定ではオカダ酸のナトリウムイオンが附加されたピーク(物質の分子量+22)は観測されたが、ナトリウムドープのチタニアを用いることで、ナトリウムイオンが附加されたピークが容易に観測され、効率の良い脱離・イオン化が行われることが見出された。
【0153】
ほかにも、いくつかの有機化合物(アスピリンなど)で、ナトリウムドープチタニアを用いることで効率よく脱離・イオン化されることが見出され、有効なSALDI用ナノ粒子となりうることが判明した。
【0154】
特に、いままでのMALDI-MSやSALDI-MS法では検出できなかったバルビツール酸やアスピリンなどの化合物の検出も可能となり、安心・安全への大きな寄与が認められる。
<実施例5>
マイクロ波液中プラズマ処理したCuOナノ粒子粉末(実施例3)を用いても、Na附加体ピークであるm/z=150のピークが得られ、実施例4と同様にバルビツール酸が検出された(
図11)。
<実施例6>
アセトアミドフェノール(鎮痛解熱剤、分子量151.2)の質量分析測定を行った。
【0155】
SALDI-MS測定のサンプル作製では、実施例1のナトリウムがドープされたチタニアナノ粒子の水分散液をまず試料プレートに塗布し、減圧乾燥した後、100ppmのアセトアミドフェノール水溶液を、ナノ粒子分散液を塗布した試料プレート上に塗布して減圧乾燥した。その試料を装置に導入し質量分析測定を行った。
【0156】
MALDI-MSの測定は、チタニアの代わりに有機マトリクスであるDHBA(2,5-ジヒドロ安息香酸)水溶液を塗布した。DHBA水溶液をサンプルプレートに塗布し、減圧乾燥した後、100ppmのアセトアミドフェノール水溶液を塗布、減圧乾燥し、その後、MALDI装置に導入し質量分析を行った。
【0157】
その結果を
図12、
図13に示す。
図12(a)はMALDI測定(マトリクスDHAB レーザー強度100)であるが、対応するピークはない。
図12(b)はMALDI測定(マトリクスDHAB レーザー強度120)であり、137にピークは見られ、アセトアミドフェノールから末端のメチルが取れたフラグメントイオンの可能性がある。
【0158】
図13はSALDI測定で、実施例1と同様にして得たプラズマ処理したチタニアを使用した。レーザー強度100でも、アセトアミドフェノールのナトリウム附加体である173にピークが見られることが確認された。
<実施例7>
セシウムは水に非常によく溶けるために、そのまま捕捉することが困難であると考えられる。酸化セシウムとなっても水と反応してしまう。そこでマイクロ波液中プラズマ処理によって直接セシウムを捕捉できないか検討した。
【0159】
塩化セシウムの比較的濃厚な水溶液にプラズマを照射したところ、時間がたつと白く濁り、沈澱が生じた(
図14(a)、(b))。
【0160】
その沈殿をろ取し、乾燥した後、XRD観察したところ、
図15のようなパターンが得られ、これはタングステン酸にセシウムが捕捉されているものであることが分かった。
【0161】
この実施例のプラズマ装置では電極として融点の高いタングステンを用いており、それが高温プラズマ状態で部分的に酸化され、タングステン酸となり、セシウムを捕捉して沈澱したものと考えられる。