(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記多孔質状金属層(C)が、銅、金、銀、ニッケル、及びコバルトの中から選択される1種又は2種以上の元素を含むことを特徴とする、請求項1に記載の半導体装置。
前記耐熱性樹脂がポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、フッ素樹脂、エポキシ系樹脂、又はポリビニルピロリドン系樹脂であることを特徴とする、請求項3に記載の半導体装置。
基板(K)又はリードフレーム(L)に設けられたパッド部(P)上に、金属微粒子(M)と分散溶液(D)を含む金属微粒子分散材(A)からなるペースト状物を塗布又はパターニングして多孔質状金属層前駆体(B)を形成し、次に該前駆体(B)上に半導体素子(S)を搭載した後、該多孔質状金属層前駆体(B)を加熱・焼結して多孔質状金属層(C)を形成することにより、パッド部(P)と半導体素子(S)とを多孔質状金属層(C)を介して接合する工程(接合工程)、
該半導体素子(S)と他の電極端子(T)間を金属製ワイヤでワイヤボンディングする工程(ワイヤボンディング工程)、及び
前記パッド部(P)、多孔質状金属層(C)、半導体素子(S)、被覆樹脂部(I)、及び半導体素子(S)と電極端子(T)間を接続する金属製ワイヤを封止樹脂(H)で封止する工程(モールド工程)、
を含む半導体装置の製造方法であって、
前記接合工程において
(i)前記多孔質状金属層前駆体(B)を加熱・焼結する前に、多孔質状金属層前駆体(B)の外周側面の少なくとも一部、及び/又は半導体素子(S)の外周側面の少なくとも一部に被覆樹脂部(I)を構成する樹脂を被覆することにより、多孔質状金属層前駆体(B)の加熱・焼結後に多孔質状金属層(C)の外周側面の少なくとも一部、及び/又は半導体素子(S)の外周側面の少なくとも一部に被覆樹脂部(I)を配置する、又は
(ii)金属微粒子分散材(A)に更に予め樹脂(G)を溶解させておき、多孔質状金属層前駆体(B)を加圧下に加熱・焼結して多孔質状金属層(C)を形成する際に、多孔質状金属層(C)の外周側面の少なくとも一部、及び/又は半導体素子(S)の外周側面の少なくとも一部を樹脂(G)から形成されるフィレット状の被覆樹脂部(I)を配置する、
ことを特徴とする、半導体装置の製造方法。
【背景技術】
【0002】
従来のパワートランジスタの様な半導体装置は、一般に、リードフレームの素子担持部上に、半導体素子(ダイ)を接合するためのダイボンド材(ダイアタッチ材、又はダイマウント材ともいわれる)を形成する工程と、リードフレーム上のダイマウント材表面に半導体素子を搭載しリードフレームの素子担持部と半導体素子とを接合する工程と、半導体素子の電極部と、リードフレームの端子部とを電気的に接合するワイヤボンディング工程と、このようにして組み立てられた半導体装置を樹脂で封止するモールド工程を備えている。
半導体素子(ダイ)と、基板の金属層からなるパッド部を接合するダイボンド材は1980年以前の金−シリコン共晶に代わるダイボンド材として、樹脂接着法、テープ接着法、はんだ材又は導電性の樹脂系ペーストを用いた方法等が知られている。
【0003】
金Si共晶法は、約360℃で金Si共晶が生成するのを利用している。金はウェーハ裏面に金の薄い膜を蒸着又はスパッタなどで形成され、リードフレームとの接触抵抗が少ないことが必要な場合に用いられる。
樹脂接着法は、樹脂のペーストをシリンジからノズルを通してリード表面に塗布しチップを搭載後適切な加重で押し付けた状態で加熱する。この際、樹脂からでるガスがチップに付着しないようにチップ表面にドライエア又は窒素ガスを吹き付ける場合がある。
テープ接着法では、上記方法がチップの裏面で接合したのに対し、チップ表面とリードフレームを接合させるLOC構造の場合に用いられる方法であり、リードフレームの表面に接着テープを貼り、テープ裏面をこのテープの接着剤で固着する。銀ペーストと比較して硬化時間が不要となる利点はあるが接着テープの価格が問題となる。
はんだ材としては、例えば、鉛含有はんだである高融点はんだ(Pb−5Sn)や、非鉛含有はんだ、例えばAu−20Sn、Sn−8.5Sbが用いられている。
一方、導電性の樹脂系ペーストは、銀、金等の金属粒子と樹脂を混合したペーストが用いられている。近年、銀ペーストが最も汎用されている。
【0004】
ダイアタッチフィルム(テープ接着法)は、高温になると樹脂が劣化してしまうため、高い放熱性と導電性を要求される用途には適用できない。
ダイボンド材を素子担持部表面に付与する工程及び半導体素子搭載工程においては、ダイボンド材がはんだの場合は、はんだ個片(ペレット)、または、はんだワイヤを溶融切断して、リードフレームの素子担持部上に供給する。続いて、このはんだを加熱し溶融した後、半導体素子をマウントし冷却することで半導体素子とリードフレームの素子担持部を接合する。特許文献1には、半導体装置の電極部等の接合に使用されるはんだ付け方法、半導体装置の製造方法及びはんだ材に関し、特に、低融点はんだ層を利用したはんだ付け技術が開示されている。
【0005】
パワートランジスタのような、電力半導体装置は、素子駆動時の発熱が著しいことから、その接合層は、高耐熱性、高熱伝導性などにおいて優れていることが必要であり、さらに、半導体装置寿命の観点から高密着性であること、及び環境問題を配慮して鉛フリー化などが要求されている。 鉛フリー化については、はんだ材に替わる鉛レスのはんだ材があり、前述の如く、Au−20Sn、Sn−8.5Sb等の材料を用いることである。しかしながら、このようなはんだ材は、融点が300℃以下であるため、耐熱温度(300℃)が確保できない。また、Au−20Snはんだは応力緩和性に乏しく高価であること、Sn−8.5SbはんだはSbが環境負荷物質であること等の問題点がある。
【0006】
導電性の樹脂系ペーストは、銀、金等の金属粒子と樹脂を混合したペーストが用いられている(特許文献2、3参照)。銀ペーストは、耐熱温度が約300℃と高いため、鉛フリー化と耐熱性の課題は解決できる。しかし、従来の銀ペーストの組成では、はんだ材と比較して、熱伝導率が低い(10〜20W/mk)という問題点がある。一般に、銀ペーストの硬化後の銀粒子含有率は多いもので90質量%程度であり、残りの10質量%は熱伝導率が低い樹脂材料などからなっているため、銀ペースト硬化後の材料の熱伝導率は低くなる。銀ペーストは、例えば大きさが3〜10μm程度の球形もしくはフレーク状(燐片状)の銀粒子を70〜90質量%と、エポキシやフェノール等の熱硬化性樹脂を5〜20質量%と、テルピネオールやブチルカルビトール、エチレングリコール等の溶剤5〜10質量%で構成されている。
すなわち、銀ペーストの熱伝導のパスは、銀粒子同士および、銀粒子と被接合材(前記半導体素子裏面金属蒸着膜およびリードフレーム表面の金属メッキ)の機械的な接触によるため、伝導のパスが不安定で、はんだのように被接合材と全面で金属接合しているものと比較し、接触界面での熱抵抗が大きい。
【0007】
特許文献2には金属層を表面に持つリードフレームと金属層を裏面に持つ半導体素子の間を、鉛元素を含有しない材料を用いた3層からなる接合層を介して接合し、前記リードフレーム、前記半導体素子、接合層の隣り合ったいずれの界面でも金属接合させることにより、熱伝導性と、密着性を向上することが開示されている。
【0008】
特許文献3には、2つの構造素子を結合するために、発熱的に緻密化可能な金属ペーストを介して互いにボンディングするための、金属粉末、吸熱分解可能な金属化合物、及び溶剤を含有する金属ペーストが開示されている。
特許文献2、3に開示の金属微粒子を含む金属ペーストの焼結による接合では、鉛フリー化と耐熱性と熱伝導性の課題は解決できるが、耐電圧や他の特性を悪化する傾向がみられる。また、銀ペーストは、チップ側面にフィレットを形成するが、銀などの重金属は熱処理すると容易にチップ内部に拡散・固溶し,ドーパントとペアを形成したり重金属析出物や積層欠陥などを生成して,酸化膜耐圧の劣化やリーク電流の増加を引き起こす傾向があることがわかった。すなわち、チップ側面に金属成分が付着することにより、耐電圧や他の特性を悪化するおそれがあることがわかった。
【0009】
上記したように、従来の半導体装置で採用しているリードフレームと半導体素子の接合技術(ダイマウント技術)では、高耐熱性、高熱伝導性、高密着性、鉛フリー化をはじめ環境調和型であるという前記要求に応えることができなかった
。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明の〔1〕半導体装置、及び〔2〕その製造方法について説明する。
〔1〕半導体装置
本発明の半導体装置は、基板(K)またはリードフレーム(L)に設けられたパッド部(P)と、半導体素子(S)の金属層とが、多孔質状金属層(C)を介して接合され、該半導体素子(S)と他の電極端子(T)間とが金属製ワイヤで接続され、かつ前記パッド部(P)、多孔質状金属層(C)、半導体素子(S)、被覆樹脂部(I)、及び半導体素子(S)と電極端子(T)間を接続する金属製ワイヤが封止樹脂(H)で封止されている半導体装置であって、
前記多孔質状金属層(C)の外周側面の少なくとも一部、及び/又は半導体素子(S)の外周側面の少なくとも一部
に被覆樹脂部(I)が配置され、かつ、前記被覆樹脂部(I)
と前記封止樹脂(H)との間に界面が存在していることを特徴とする。
【0017】
本発明の実施態様である「半導体装置」の典型例は、
図1、2に示されている。
図1は、半導体素子(S)14と配線パターン34間が金属製ワイヤ31でワイヤボンディングされている例であり、(a)は半導体素子(S)14の外周側面が被覆樹脂部(I)23で被覆され、(b)は多孔質状金属層(C)16の外周側面が被覆樹脂部(I)23で被覆され、(c)は多孔質状金属層(C)16と半導体素子(S)14の外周側面が被覆樹脂部(I)23で被覆されている。
尚、多孔質状金属層(C)16は、裏面に金属板15を有する基板(K)11のパッド部(P)12上に形成され、封止樹脂(H)32で封止されている。
図2は、半導体素子(S)14とリードフレーム33間が金属製ワイヤ31でワイヤボンディングされている点を除いて
図1と同様である。
【0018】
(1)基板(K)またはリードフレーム(L)
本発明の半導体装置に使用する基板(K)は、セラミックス等の絶縁層の面上に銅板等の導体パターンを形成したDBC(Direct Bonded Copper)基板等が好適に使用できる。尚、セラミックスとしては、アルミナ(Al
2O
3)、窒化アルミ(AlN)、窒化ケイ素(Si
3N
4)などが例示できる。基板(K)としては上記DBC以外にリードフレーム(L)も使用することができるが、ここでは基板(K)を用いた場合を中心に説明する。
【0019】
(2)半導体素子(S)
半導体素子(S)は、半導体による電子部品、または電子部品の機能中心部の素子であり、外部接続用電極としての金属層を有する。
【0020】
(3)多孔質状金属層(C)
基板(K)のパッド部(P)と半導体素子(S)間を接合している多孔質状金属層(C)は、例えば、金属微粒子(M)と分散溶液(D)を含む金属微粒子分散材(A)を塗布又はパターニングして、パッド部(P)上に多孔質状金属層前駆体(B)を形成し、更に該前駆体(B)上に半導体素子(S)を搭載した後、該多孔質状金属層前駆体(B)を加熱・焼結して形成される。尚、多孔質状金属層(C)の金属が存在しない部分については、空孔であっても、樹脂が存在していてもよい。以下、金属微粒子(M)と分散溶液(D)を含む金属微粒子分散材(A)、及び多孔質状金属層前駆体(B)について説明する。
【0021】
(3−1)金属微粒子分散材(A)
金属微粒子分散材(A)は、金属微粒子(M)が分散溶液(D)に分散されたものである。この金属微粒子分散材(A)は、液状、ペースト状、固形状であるが、これを多孔質状金属層前駆体(B)としてパッド部(P)と半導体素子(S)間に配置して、加熱・焼結して該金属微粒子(M)を焼結することにより多孔質状金属層(C)を形成させて、パッド部(P)と半導体素子(S)間を接合するために用いられる。
【0022】
(3−2)金属微粒子(M)
金属微粒子(M)は、導電性と熱伝導性の高い、焼結性を有する微粒子であり、導電性、加熱処理(焼結性)、市場における入手の容易性等から、例えば金、銀、銅,白金、パラジウム、タングステン、ニッケル、鉄、コバルト、タンタル、ビスマス、鉛、インジウム、錫、亜鉛、チタン、又はアルミニウムが挙げられるが、これらの中でも、銅、金、銀、ニッケル、及びコバルトが好ましく、更にこれらの中でも導電性、熱伝導性、加工性、マイグレーションの防止等の点から銅がより好ましい。
【0023】
金属微粒子(M)は、導電性と熱伝導性が高く、焼結性を有する微粒子であり、平均一次粒子径がナノサイズのものが好ましい。具体的には、平均一次粒子径が1〜500nmの金属微粒子(M1)が好ましい。金属微粒子(M1)の一次粒子の平均粒子径が1nm以上で焼成により均質な粒子径と空孔を有する多孔質体を形成することが可能になり、一方、500nm以下で精密な導電パターンを形成することができる。
金属微粒子(M)として、平均一次粒子径が1〜500nmの金属微粒子(M1)に、更に平均一次粒子径が0.5〜50μmの金属微粒子(M2)を併用すると、金属微粒子(M2)間に金属微粒子(M1)が分散して安定に存在するので、金属微粒子(M1)の平均一次粒子径との粒子径の差が確保できて、加熱処理する際に金属微粒子(M1)の自由な移動を効果的に抑制することができ、前述の金属微粒子(M1)の分散性と安定性を向上させることができる。金属微粒子(M2)としては、金属微粒子(M1)と同種の金属を使用することが好ましい。
【0024】
ここで、一次粒子の平均粒子径とは、二次粒子を構成する個々の金属微粒子の一次粒子の直径の意味である。該一次粒子径は、電子顕微鏡を用いて測定することができる。また、平均粒子径とは、一次粒子の数平均粒子径を意味する。
【0025】
(3−3)分散溶液(D)
分散溶液(D)には、分子中に2以上のヒドロキシル基を有する1種又は2種以上のアルコールが含有されていることが好ましく、該アルコールの融点は30〜280℃であることがより好ましい。アルコールは、金属微粒子分散材(A)中で金属微粒子(M)を分散させ、かつ、加熱・焼結する際に脱水素化反応を受けて水素ラジカルを発生させて焼結を促進する作用を発揮する。
分散溶液(D)の成分としては、上記アルコール以外に、アミド基を有する有機溶媒、エーテル系化合物、ケトン系化合物、アミン系化合物等を配合することができる。
これらのアルコール以外の分散媒は分散溶液(D)中で併せて30体積%以下となるように配合されることが好ましい。
【0026】
(3−4)多孔質状金属層前駆体(B)
多孔質状金属層前駆体(B)は、金属微粒子分散材(A)をパッド部(P)上、又は樹脂シート(F)上に塗布又はパターニングして形成される形状物である。該多孔質状金属層前駆体(B)は、その後加熱・焼結して多孔質状金属層(C)を形成するので、多孔質状金属層(C)の前駆体である。なお、樹脂シート(F)は、被覆樹脂部(I)の前駆体であって、その融点は金属微粒子分散材(A)の融点以下であるものを用いる。
【0027】
パッド部(P)と半導体素子(S)間を、上述した多孔質状金属層(C)で接合すると、はんだ手段を用いた場合より高密着性、高耐熱性、及び高熱伝導性であり、応力緩和性に優れ、鉛フリー化などの環境問題の配慮が不要である。
【0028】
(4)被覆樹脂部(I)
本発明の態様における半導体装置において、被覆樹脂部(I)は、多孔質状金属層(C)の外周側面の少なくとも一部、及び/又は半導体素子(S)の外周側面の少なくとも一部を被覆している。被覆の態様としては
図1、2(a)、(b)、(c)に示す通り、半導体素子(S)の外周側面、多孔質状金属層(C)の外周側面、半導体素子(S)と多孔質状金属層(C)の外周側面をそれぞれ被覆する態様がある。この態様には、例えば下記(i)と(ii)の例がある。
【0029】
(i)前記多孔質状金属層(C)の外周側面の少なくとも一部、及び/又は半導体素子(S)の外周側面の少なくとも一部が多孔質状金属層前駆体(B)を加熱・焼結する前に形成された、被覆樹脂部(I)が配置されている。
(ii)金属微粒子分散材(A)中にさらに樹脂(G)を溶解させた多孔質状金属層前駆体(B)を塗布又はパターニング後、加圧下に加熱・焼結する際に樹脂(G)からなるフィレット状物として形成された被覆樹脂部(I)が、前記多孔質状金属層(C)の外周側面の少なくとも一部、及び/又は半導体素子(S)の外周側面の少なくとも一部に配置されている。
【0030】
この場合、前記多孔質状金属層(C)の外周側面の全表面、及び/又は半導体素子(S)の外周側面の全表面に被覆樹脂部(I)が配置されていることが望ましい。
被覆樹脂部(I)は耐熱性樹脂で形成されていることが望ましい。このような耐熱性樹脂として、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、フッ素系樹脂、エポキシ系樹脂、又はポリビニルピロリドン系樹脂が挙げられる。
この態様の半導体装置は、被覆樹脂部(I)が多孔質状金属層前駆体(B)を加熱・焼結する前、又は多孔質状金属層前駆体(B)を加熱・焼結する際に形成されるので、半導体素子(S)の側面から金属微粒子等が付着するのを防止でき、特性に優れている。
【0031】
(5)ワイヤボンディング、封止樹脂(H)
半導体素子(S)と他の電極端子(T)間を金属製ワイヤによるワイヤボンディング、パッド部(P)、多孔質状金属層(C)、半導体素子(S)、被覆樹脂部(I)、及び半導体素子(S)と電極端子(T)間を接続する金属製ワイヤの封止樹脂(H)による封止は、一般的な半導体装置と同様の工程で実現される。
【0032】
(6)被覆樹脂部(I)と封止樹脂(H)との間に形成される界面
本発明の「半導体装置」において、被覆樹脂部(I)は多孔質状金属層前駆体(B)を加熱・焼結する前、又は多孔質状金属層前駆体(B)を加熱・焼結する際に形成される一方、封止樹脂(H)は、前記多孔質状金属層前駆体(B)の加熱・焼結した後の更にワイヤボンディングした後に、基板(K)上のパッド部(P)、多孔質状金属層(C)、半導体素子(S)、被覆樹脂部(I)、及び金属製ワイヤが配置されている領域に封止樹脂を封入して形成される。従って、封止樹脂(H)は被覆樹脂部(I)が形成された後に形成されるので、封止樹脂(H)と被覆樹脂部(I)間には界面が存在することになる。このような界面は界面が形成される部分の断面を顕微鏡で観察すれば容易に確認することができる。
被覆樹脂部(I)と封止樹脂(H)との間にこのような界面が存在することは、被覆樹脂部(I)が樹脂封止前に形成されたことの可能性の確認になるので、このような界面を有する半導体装置は、半導体素子(S)の側面から金属微粒子等が付着するのを防止でき、特性に優れている。
【0033】
〔2〕本発明の半導体装置
の製造する方法
本発明の半導体装置
の製造方法は、基板(K)またはリードフレーム(L)に設けられたパッド部(P)上に、金属微粒子(M)と分散溶液(D)を含む金属微粒子分散材(A)からなるペースト状物を塗布又はパターニングして多孔質状金属層前駆体(B)を形成し、更に該前駆体(B)上に半導体素子(S)を搭載した後、該多孔質状金属層前駆体(B)を加熱・焼結して多孔質状金属層(C)を形成することにより、パッド部(P)と半導体素子(S)とを多孔質状金属層(C)を介して接合する工程(接合工程)、
その後該半導体素子(S)と他の電極端子(T)間を金属製ワイヤでワイヤボンディングする工程(ワイヤボンディング工程)、
及び、前記パッド部(P)、多孔質状金属層(C)、半導体素子(S)、被覆樹脂部(I)、及び半導体素子(S)と電極端子(T)間を接続する金属製ワイヤを封止樹脂(H)で封止する工程(モールド工程)、
を含む
半導体装置の製造
方法であって、
前記接合工程において
(i)前記多孔質状金属層前駆体(B)を加熱・焼結する前に、多孔質状金属層前駆体(B)の外周側面の少なくとも一部、及び/又は半導体素子(S)の外周側面の少なくとも一部に被覆樹脂部(I)を構成する樹脂を被覆することにより、多孔質状金属層前駆体(B)の加熱・焼結後に多孔質状金属層(C)の外周側面の少なくとも一部、及び/又は半導体素子(S)の外周側面の少なくとも一部に被覆樹脂部(I)を配置する、又は
(ii)金属微粒子分散材(A)に更に予め樹脂(G)を溶解させておき、多孔質状金属層前駆体(B)を加圧下に加熱・焼結して多孔質状金属層(C)を形成する際に、多孔質状金属層(C)の外周側面の少なくとも一部、及び/又は半導体素子(S)の外周側面の少なくとも一部を樹脂(G)から形成されるフィレット状の被覆樹脂部(I)を配置する、
こと
を特徴とする。
【0034】
上記方法で得られる半導体装置の典型例を
図1、2に示す。
図1は、半導体素子(S)14と配線パターン34間が金属製ワイヤ31でワイヤボンディングされている例であり、(a)は半導体素子(S)14の外周側面が被覆樹脂部(I)23で被覆され、(b)は多孔質状金属層(C)16の外周側面が被覆樹脂部(I)23で被覆され、(c)は多孔質状金属層(C)16と半導体素子(S)14の外周側面が被覆樹脂部(I)23で被覆されている。
尚、多孔質状金属層(C)16は、裏面に金属板15を有する基板(K)11のパッド部(P)12上に形成され、封止樹脂(H)32で封止されている。
図2は、半導体素子(S)14とリードフレーム33間が金属製ワイヤ31でワイヤボンディングされている例であり、(a)は半導体素子(S)14の外周側面が被覆樹脂部(I)23で被覆され、(b)は多孔質状金属層(C)16の外周側面が被覆樹脂部(I)23で被覆され、(c)は多孔質状金属層(C)16と半導体素子(S)14の外周側面が被覆樹脂部(I)23で被覆されている。
以下に、第1の態様における、接合工程、ワイヤボンディング工程、及び封止工程について説明する。尚、上記で説明済みの各構成要素も含めて、本発明の半導体装置の製造方法の観点から詳細に説明する。
【0035】
〔2−1〕接合工程
接合工程は、基板(K)またはリードフレーム(L)に設けられたパッド部(P)上に、金属微粒子(M)と分散溶液(D)を含む金属微粒子分散材(A)を配置して多孔質状金属層前駆体(B)を形成し、更に該前駆体(B)上に半導体素子(S)を搭載した後、該多孔質状金属層前駆体(B)を加熱・焼結して多孔質状金属層(C)を形成することにより、パッド部(P)と半導体素子(S)とを多孔質状金属層(C)を介して接合する工程である。
【0036】
(1)基板(K)またはリードフレーム(L)
本発明の半導体装置に使用する基板(K)は、セラミックス等の絶縁層の面上に銅板等の導体パターンを形成したDBC基板等が好適に使用できる。尚、セラミックスとしては、アルミナ(Al
2O
3)、窒化アルミ(AlN)、窒化ケイ素(Si
3N
4)などが例示できる。基板(K)としては上記DBC以外にリードフレーム(L)も使用することができるが、ここでは基板(K)を用いた場合を中心に説明する。
【0037】
(2)半導体素子(S)
半導体素子(S)は、半導体による電子部品、または電子部品の機能中心部の素子であり、外部接続用電極としての金属層を有する。
【0038】
(3)金属微粒子分散材(A)
金属微粒子分散材(A)は、金属微粒子(M)が分散溶液(D)に分散された金属微粒子分散材(A)からなる、ペースト状の多孔質状金属層前駆体(B)をパッド部(P)と半導体素子(S)間に配置して、加熱・焼結して該金属微粒子(M)を焼結することにより多孔質状金属層(C)を形成させて、パッド部(P)と半導体素子(S)間を接合するものである。
【0039】
(3−1)金属微粒子(M)
金属微粒子(M)は、導電性と熱伝導性の高い、焼結性を有する微粒子であり、導電性、加熱処理(焼結性)、市場における入手の容易性等から、例えば金、銀、銅,白金、パラジウム、タングステン、ニッケル、鉄、コバルト、タンタル、ビスマス、鉛、インジウム、錫、亜鉛、チタン、又はアルミニウムが挙げられるが、これらの中でも、銅、金、銀、ニッケル、及びコバルトが好ましく、更にこれらの中でも導電性、熱伝導性、加工性、マイグレーションの防止、コスト低減等の点から銅が特に好ましい。
【0040】
金属微粒子(M)は、導電性と熱伝導性が高く、焼結性を有する微粒子であり、平均一次粒子径がナノサイズのものが好ましい。具体的には、平均一次粒子径が1〜500nmの金属微粒子(M1)が好ましい。金属微粒子(M1)の一次粒子の平均粒子径が1nm以上で焼成により均質な粒子径と空孔を有する多孔質体を形成することが可能になり、一方、500nm以下で精密な導電パターンを形成することができる。金属微粒子(M1)の一次粒子の平均粒子径は5〜200nmであることが、より好ましい。
金属微粒子(M)として、平均一次粒子径が1〜500nmの金属微粒子(M1)に、更に平均一次粒子径が0.5〜50μmの金属微粒子(M2)を併用すると、金属微粒子(M2)間に金属微粒子(M1)が分散して安定に存在するので、金属微粒子(M1)の平均一次粒子径との粒子径の差が確保できて、加熱処理する際に金属微粒子(M1)の自由な移動を効果的に抑制することができ、前述の金属微粒子(M1)の分散性と安定性を向上させることができる。金属微粒子(M2)としては、金属微粒子(M1)に記載したと同種の金属粒子を使用することが好ましい。
【0041】
ここで、一次粒子の平均粒子径とは、二次粒子を構成する個々の金属微粒子の一次粒子の直径の意味である。該一次粒子径は、電子顕微鏡を用いて測定することができる。また、平均粒子径とは、一次粒子の数平均粒子径を意味する。
金属微粒子(M)は、はんだペーストの場合と異なり、少なくとも1種以上の高純度金属微粒子をそのまま使用することができるので、接合強度と導電性に優れる接合体を得ることが可能になる。一般にはんだペーストの場合、実装対象である基板の銅パッド部分の酸化を取り除くためにフラックス(有機成分)を含有しており、更に金属材料に含まれる不純物として少量ではあるがAl、Zn、Cd、As等の金属が含まれることが多い。
【0042】
(3−2)分散溶液(D)
分散溶液(D)には、分子中に2以上のヒドロキシル基を有する1種又は2種以上のポリオールが含有されていることが好ましく、該ポリオールの融点は30〜280℃であることがより好ましい。
ポリオールは、金属微粒子分散材(A)中で金属微粒子(M)を分散させ、かつ、加熱・焼結する際に脱水素化反応を受けて水素ラジカルを発生させて焼結を促進する作用を発揮する。
このようなポリオールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2−ブテン−1,4−ジオール、2,3−ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、グリセロール、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタン、2−エチル−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,3−ヘキサントリオール、1,2,4−ブタントリオール、トレイトール、エリトリトール、ペンタエリスリトール、ペンチトール、キシリトール、リビトール、アラビトール、ヘキシトール、マンニトール、ソルビトール、ズルシトール、グリセルアルデヒド、ジオキシアセトン、トレオース、エリトルロース、エリトロース、アラビノース、リボース、リブロース、キシロース、キシルロース、リキソース、グルコース、フルクトース、マンノース、イドース、ソルボース、グロース、タロース、タガトース、ガラクトース、アロース、アルトロース、ラクトース、キシロース、アラビノース、イソマルトース、グルコヘプトース、ヘプトース、マルトトリオース、ラクツロース、及びトレハロースから選択される1種又は2種以上が例示できる。
分散溶液(D)の成分としては、上記ポリオール以外に、アルコール、アミド基を有する化合物、エーテル系化合物、ケトン系化合物、アミン系化合物等を配合することができる。
これらのポリオール以外の分散媒は分散溶液(D)中で併せて30体積%以下となるように配合されることが好ましい。
【0043】
(4)多孔質状金属層前駆体(B)
多孔質状金属層前駆体(B)は、金属微粒子分散材(A)をパッド部(P)上、又は樹脂シート(F)上に塗布又はパターニングして形成される形状物である。該多孔質状金属層前駆体(B)は、その後加熱・焼結して多孔質状金属層(C)を形成するので、多孔質状金属層(C)の前駆体である。
【0044】
(5)多孔質状金属層前駆体(B)の加熱・焼結前の被覆樹脂部(I)の形成方法
接合工程において、多孔質状金属層前駆体(B)の形成後、該多孔質状金属層前駆体(B)の加熱・焼結前に、多孔質状金属層前駆体(B)の外周側面の少なくとも一部、及び/又は半導体素子(S)の外周側面の少なくとも一部に被覆樹脂部(I)を配置することができる。この場合、半導体素子(S)の特性を向上するためには多孔質状金属層前駆体(B)及び/又は半導体素子(S)の外周側面の全表面に被覆樹脂部(I)を配置する
。
【0045】
該被覆方法として、下記の実施形態1〜3(
図3〜5にそれぞれ示す)が挙げられるが本発明における、多孔質状金属層前駆体(B)の加熱・焼結前の被覆樹脂部(I)の形成方法はこれらの例示に限定されるものではない。
実施形態1〜3における操作の主な特徴は下記の通りである。
実施形態1:多孔質状金属層前駆体(B)及び/又は半導体素子(S)の外周側面の少なくとも一部に樹脂溶液(E)を塗布する。
実施形態2:多孔質状金属層前駆体(B)と半導体素子(S)間に樹脂シート(F)を配置する。
実施形態3:パッド部(P)と多孔質状金属層前駆体(B)間に樹脂シート(F)を配置する。以下、実施形態1〜3について説明する。
【0046】
(5−1)実施形態1
実施形態1は、パッド部(P)上に塗布又はパターニングされた多孔質状金属層前駆体(B)の外周側面の少なくとも一部、及び/又は半導体素子(S)の外周側面の少なくとも一部に樹脂溶液(E)を塗布して、該樹脂溶液(E)に含有されていた溶剤を除去、又は加熱硬化させて多孔質状金属層前駆体(B)の外周側面の少なくとも一部、及び/又は半導体素子(S)の外周側面の少なくとも一部に被覆樹脂部(I)を配置する方法である。
実施形態1は、
図3(a)から(c)に示す工程(実施形態1−1)と、
図3(d)から(f)と、(d)から(h)に示す工程(実施形態1−2)が挙げられる。
【0047】
(イ)実施形態1−1
図3に示す通り、基板(K)11のパッド部(P)12上に、金属微粒子分散材(A)からなるペースト状物を塗布又はパターニングして多孔質状金属層前駆体(B)13を形成し、更に該前駆体(B)上に、基板面の平行方向の外形形状が該前駆体(B)よりも小さい半導体素子(S)14を搭載して(a)に示す形状物を得る。次に半導体素子(S)14の外周側面に樹脂溶液(E)21を塗布して(b)に示す形状物を得る。
その後、該樹脂溶液(E)中の溶剤を蒸発させるか、又は該樹脂溶液(E)を該前駆体(B)の焼結温度よりも低い温度で加熱、硬化させて、半導体素子(S)の外周側面が被覆樹脂部(I)23で被覆された形状物を得る。
更に、該形状物は多孔質状金属層前駆体(B)が焼結する温度で加熱・焼結され、半導体素子(S)14が多孔質状金属層(C)16を介してパッド部(P)12に接合された(c)に示す形状物を得る。
この場合、上記(b)に示す形状物において、樹脂溶液(E)21を多孔質状金属層前駆体(B)13と半導体素子(S)14の双方の外周側面に塗布しておき、後述する
図4(e)に示すような形状物を得ることも可能である。
【0048】
(ロ)実施形態1−2
(i)
図3に示す(d)、(e)、(f)の工程
基板(K)のパッド部(P)12上に、上記(イ)に記載したと同様に塗布又はパターニングにより、多孔質状金属層前駆体(B)13を形成し、更に該前駆体(B)13上に、基板面の平行方向の外形形状が該前駆体(B)とほぼ同様の半導体素子(S)14を搭載して(d)に示す形状物を得る。次に該前駆体(B)の外周側面に樹脂溶液(E)を塗布して(e)に示す形状物を得る。
その後、該樹脂溶液(E)中の溶剤を蒸発させるか、又は該樹脂溶液(E)を該前駆体(B)の焼結温度よりも低い温度で加熱、硬化させて、該前駆体(B)の外周側面に被覆樹脂部(I)が配置された形状物を得る。
更に、該形状物は多孔質状金属層前駆体(B)が焼結する温度で加熱・焼結され、半導体素子(S)14が多孔質状金属層(C)16を介してパッド部(P)12に接合された(f)に示す形状物を得る。
(ii)
図3に示す(d)、(g)、(h)の工程
(d)に示す形状物に、多孔質状金属層前駆体(B)13及び半導体素子(S)14の外周側面に樹脂溶液(E)21を塗布して(g)に示す形状物を得る。
その後、該樹脂溶液(E)中の溶剤を蒸発させるか、又は該樹脂溶液(E)を該前駆体(B)の焼結温度よりも低い温度で加熱、硬化させて、多孔質状金属層前駆体(B)と半導体素子(S)の外周側面に被覆樹脂部(I)が配置された形状物を得る。
更に、該形状物は多孔質状金属層前駆体(B)が焼結する温度で加熱・焼結され、半導体素子(S)14が多孔質状金属層(C)16を介してパッド部(P)12に接合された(h)に示す形状物を得る。
【0049】
(5−2)実施形態2
実施形態2は、パッド部(P)上に塗布又はパターニングされた多孔質状金属層前駆体(B)上に樹脂シート(F)を配置し、更に該樹脂シート(F)上に半導体素子(S)を搭載して、半導体素子(S)の上部側から加圧下に加熱することにより樹脂シート(F)を溶融して、該前駆体(B)の外周側面の少なくとも一部、及び/又は半導体素子(S)の外周側面の少なくとも一部を樹脂シート(F)で被覆後、樹脂シート(F)に含有されていた溶剤を除去、又は加熱硬化させて多孔質状金属層前駆体(B)の外周側面の少なくとも一部、及び/又は半導体素子(S)の外周側面の少なくとも一部に被覆樹脂部(I)を配置する方法である。
実施形態2は、
図4(a)から(d)、(a)から(e)に示す工程(実施形態2−1)と、
図4(f)から(i)に示す工程(実施形態2−2)が挙げられる。
【0050】
(イ)実施形態2−1
(i)
図4(a)から(d)の工程
基板(K)11のパッド部(P)12上に、塗布又はパターニングにより多孔質状金属層前駆体(B)13を形成して(a)に示す形状物を得る。該前駆体(B)上に、基板面の平行方向の外形形状が該前駆体(B)より大きい樹脂シート(F)22を配置させて(b)に示す形状物を得る。
次に、該樹脂シート(F)22上に、基板面の平行方向の外形形状が該前駆体(B)よりも小さい半導体素子(S)14を搭載して(c)に示す形状物を得る。
次に、該樹脂シート(F)を加熱して、半導体素子(S)の外周側面を樹脂シート(F)からなる樹脂で被覆する。この場合、例えば、半導体素子(S)の外側からガイド(例えば半割り円筒状物を2つ組み合わせたガイド)で押し付けて、半導体素子(S)の外周側面を樹脂シート(F)からなる樹脂で被覆することが可能である。
更に該樹脂シート(F)中の溶剤を蒸発させるか、又は該樹脂シート(F)を該前駆体(B)の焼結温度よりも低い温度で加熱、硬化させて、半導体素子(S)の外周側面に被覆樹脂部(I)が配置された形状物を得る。
更に、該形状物は多孔質状金属層前駆体(B)が焼結する温度で加熱・焼結され、半導体素子(S)14が多孔質状金属層(C)16を介してパッド部(P)12に接合された(d)に示す形状物を得る。
【0051】
(ii)
図4(a)から(e)の工程
図4(a)から(c)までの工程は、上記(i)と同様である。
次に、該樹脂シート(F)22を加熱して、必要に応じて前記ガイド等を用いて多孔質状金属層前駆体(B)と半導体素子(S)の外周側面を樹脂シート(F)からなる樹脂で被覆する。
更に該樹脂シート(F)中の溶剤を蒸発させるか、又は樹脂シート(F)からなる樹脂を該前駆体(B)の焼結温度よりも低い温度で加熱、硬化させて、該前駆体(B)及び半導体素子(S)の外周側面に被覆樹脂部(I)が配置された形状物を得る。
更に、該形状物は多孔質状金属層前駆体(B)が焼結する温度で加熱・焼結され、半導体素子(S)14が多孔質状金属層(C)16を介してパッド部(P)12に接合された(e)に示す形状物を得る。
【0052】
(ロ)実施形態2−2
(i)
図4(f)から(i)の工程
基板(K)11のパッド部(P)12上に、塗布又はパターニングにより多孔質状金属層前駆体(B)13を形成して(f)に示す形状物を得る。該前駆体(B)13上に、基板面の平行方向の外形形状が該前駆体(B)より大きい樹脂シート(F)22を配置させて(g)に示す形状物を得る。該樹脂シート(F)22上に半導体素子(S)14を搭載して(h)に示す形状物を得る。
次に、該樹脂シート(F)中の溶剤を蒸発させるか、又は樹脂シート(F)からなる樹脂を該前駆体(B)の焼結温度よりも低い温度で加熱、硬化させて、必要に応じて前記ガイド等を用いることにより、該前駆体(B)13と半導体素子(S)14の外周側面を樹脂シート(F)からなる樹脂で被覆された形状物を得る。
更に、該形状物は多孔質状金属層前駆体(B)が焼結する温度で加熱・焼結され、半導体素子(S)14が多孔質状金属層(C)16を介してパッド部(P)12に接合された(j)に示す形状物を得る。
【0053】
(5−3)実施形態3
実施形態3は、パッド部(P)上に、樹脂シート(F)を配置し、該樹脂シート(F)上に塗布又はパターニングされた多孔質状金属層前駆体(B)上に半導体素子(S)を搭載して、半導体素子(S)の上部側から加圧下に加熱することにより樹脂シート(F)を溶融して、多孔質状金属層前駆体(B)の外周側面の少なくとも一部、及び/又は半導体素子(S)の外周側面の少なくとも一部を樹脂シート(F)で被覆後、樹脂シート(F)に含有されていた溶剤を除去、又は加熱硬化させて多孔質状金属層前駆体(B)の外周側面の少なくとも一部、及び/又は半導体素子(S)の外周側面の少なくとも一部に被覆樹脂部(I)を配置する方法である。
実施形態3は、
図5(a)から(e)、(a)から(f)に示す工程が挙げられる。
【0054】
(i)
図5(a)から(e)の工程
図5(a)に示す基板(K)11のパッド部(P)12上に、基板面の平行方向の外形形状が多孔質状金属層前駆体(B)より大きい樹脂シート(F)22を配置させて(b)に示す形状物を得る。前記樹脂シート(F)22上に塗布又はパターニングにより多孔質状金属層前駆体(B)13を形成して(c)に示す形状物を得る。該前駆体(B)上に、基板面の平行方向の外形形状が該前駆体(B)とほぼ同様である半導体素子(S)14を搭載して(d)に示す形状物を得る。
次に、該樹脂シート(F)を加熱して、必要に応じて前記ガイド等を用いて、該前駆体(B)の外周側面を樹脂シート(F)からなる樹脂で被覆する。
更に該樹脂シート(F)中の溶剤を蒸発させるか、又は樹脂シート(F)からなる樹脂を該前駆体(B)の焼結温度よりも低い温度で加熱、硬化させて、該前駆体(B)の外周側面に被覆樹脂部(I)が配置された形状物を得る。
更に、該形状物は多孔質状金属層前駆体(B)が焼結する温度で加熱・焼結され、半導体素子(S)14が多孔質状金属層(C)16を介してパッド部(P)12に接合された(e)に示す形状物を得る。
【0055】
(ii)
図5(a)から(f)の工程
図5(a)から(d)までの工程は、上記(i)と同様である。
次に、該樹脂シート(F)22を加熱して、必要に応じて前記ガイド等を用いて、該前駆体(B)13と半導体素子(S)14の外周側面を樹脂シート(F)からなる樹脂で被覆する。その後、該樹脂シート(F)に含有されていた溶剤を蒸発させるか、又は樹脂シート(F)からなる樹脂を該前駆体(B)の焼結温度よりも低い温度で加熱、硬化させて、該前駆体(B)及び半導体素子(S)の外周側面に被覆樹脂部(I)が配置された形状物を得る。
更に、該形状物は多孔質状金属層前駆体(B)が焼結する温度で加熱・焼結され、半導体素子(S)14が多孔質状金属層(C)16を介してパッド部(P)12に接合された(f)に示す形状物を得る。
【0056】
(6)被覆樹脂部(I)の形成材料
被覆樹脂部(I)を形成する材料としては、耐熱性樹脂であることが望ましい。該耐熱性樹脂としてはポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、フッ素樹脂、エポキシ系樹脂、及びポリビニルピロリドン系樹脂から選択される1種又は2種以上が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
尚、ポリビニルピロリドン系樹脂は、ポリビニルピロリドンを不溶化処理することにより形成される架橋ポリビニルピロリドンとして使用することがより望ましい。該不溶化処理は、γ線、電子線、加熱、化学的方法等の公知の方法で実施することができる。例えば、加熱の場合、ポリビニルピロリドンの熱分解温度などを考慮する必要があるが、150〜200℃が好ましく、160〜180℃が更に好ましい。処理時間は、1〜6時間程度が好ましい。
【0057】
被覆樹脂部(I)の形成方法は、前述の(i)樹脂溶液(E)と(ii)樹脂シート(F)、及び後述する(iii)樹脂(G)等から形成することができるがこれらに限定されるものではない。
(i)樹脂溶液(E)
樹脂溶液(E)として、プレポリマー溶液(E1)、高粘度の樹脂溶液(E2)を使用できる。熱硬化性樹脂のプレポリマー溶液(E1)を多孔質状金属層前駆体(B)、及び/又は半導体素子(S)の外周側面の少なくとも一部に付着させた後に、プレヒートして硬化させ被覆樹脂部(I)を形成する。
プレポリマー溶液(E1)の成分としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂系、ポリイミドプレポリマー溶液等が挙げられる。1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂系としてはグルシジルエーテルタイプ、グルシジルアミンタイプ、グルシジルエステルタイプ、オレフィン酸化(脂環式)タイプ等が使用できる。
【0058】
ポリイミドプレポリマー溶液としては、ジアミン成分とテトラカルボン酸二無水物成分から得られるプレポリマー及び/又はこれらの混合物を有機溶媒に溶解して得られる。
これらのプレポリマー溶液は、プレヒートにより硬化させることができる。有機溶媒としては酸無水物類とジアミン類のいずれか一方又は双方を溶解するものであり、具体的にはN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、クレゾール、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピから選択される1種又は2種以上を組み合わせで用いることができる。その他、シリコン樹脂、アミドイミド樹脂、マレイミド樹脂等のプレポリマーを使用することが可能であり、また、耐熱性樹脂を溶媒に溶解させて高粘度の樹脂液を使用することも可能である。
【0059】
(ii)樹脂シート(F)
樹脂シート(F)を形成する成分としては、被覆樹脂部(I)の成分、および金属微粒子分散材(A)の分散溶液(D)と同様の有機溶媒等が挙げられる。
上記樹脂シート(F)を配置して、半導体素子(S)の上部からプレスして、多孔質状金属層前駆体(B)、及び/又は半導体素子(S)の外周側面の少なくとも一部を被覆させた膜、その後被覆樹脂部(I)を形成する。この場合、樹脂シート(F)は、多孔質状金属層前駆体(B)を構成する金属微粒子分散材(A)の融点以下の樹脂(又は樹脂溶液)からなる。
【0060】
(7)多孔質状金属層(C)
多孔質状金属層(C)は、金属微粒子(M)が分散溶液(D)に分散された金属微粒子分散材(A)からなる多孔質状金属層前駆体(B)をパッド部(P)と半導体素子(S)間に配置して、加熱・焼結して該金属微粒子(M)を焼結することにより形成される。該多孔質状金属層(C)が形成されることにより、パッド部(P)と半導体素子(S)間が接合される。
【0061】
多孔質状金属層前駆体(B)を加熱・焼結する際に、前記実施形態1〜3に記載したのとは別に、以下の実施形態4に示すように、多孔質状金属層(C)及び/又は半導体素子(S)の少なくとも一部に被覆樹脂部(I)を配置することができる。
この場合、半導体素子(S)の特性を向上するためには多孔質状金属層(C)及び/又は半導体素子(S)の外周側面の全表面に被覆樹脂部(I)を配置することが好ましい。
【0062】
(i)実施形態4
実施形態4は、金属微粒子分散材(A)に更に予め樹脂(G)を溶解させておき、多孔質状金属層前駆体(B)を加圧下に加熱・焼結して多孔質状金属層(C)を形成する際に、多孔質状金属層(C)の外周側面の少なくとも一部、及び/又は半導体素子(S)の外周側面の少なくとも一部を樹脂(G)から形成されるフィレット状に被覆樹脂部(I)を配置することができる。実施形態4を
図6を用いて説明する。
図6(a)に示す基板(K)11のパッド部(P)12上に、金属微粒子分散材(A)からなるペースト状物を塗布又はパターニングして多孔質状金属層前駆体(B)13を形成し、更に該前駆体(B)上に、基板面の平行方向の外形形状が該前駆体(B)とほぼ同様の半導体素子(S)14を搭載して
図6(a)に示す形状物を得る。次に該形状物は多孔質状金属層前駆体(B)が焼結する温度で加熱・焼結して、半導体素子(S)14が多孔質状金属層(C)16を介してパッド部(P)12に接合され、かつ多孔質状金属層(C)16と半導体素子(S)14がフィレット状に被覆樹脂部(I)が配置された
図6(b)に示す形状物を得る。
上記加熱・焼結の際に真空プレス工程で、半導体素子(S)の上面側から加圧(プレス)すると、金属微粒子分散材(F)中から外周側に押し出される現象が生じ、多孔質状金属層(A)の前駆体(B)、及び/又は半導体素子(S)の外周側面の少なくとも一部を被覆するようになる。
この場合、例えば、多孔質状金属層前駆体(B)13と半導体素子(S)14の外側からガイド(例えば半割り円筒状物を2つ組み合わせたガイド)で押し付けて、
図6(b)に示すようなフィレット状の被覆樹脂部(I)を形成することも可能である。
【0063】
(ii)被覆樹脂部(I)の形成材料
実施形態4で被覆樹脂部(I)の形成に使用できる樹脂(G)としては、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリテトラフルオロエチレン系樹脂、エポキシ系樹脂、及びポリビニルピロリドン系樹脂から選択される1種又は2種以上が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、金属微粒子分散材(A)中の樹脂(G)の濃度が0.3〜5.0質量%となるように添加することが望ましい。
【0064】
〔2−2〕ワイヤボンディング工程
半導体素子(S)と他の電極間を金属製ワイヤによりワイヤボンディングする際に、金属製ワイヤを半導体素子(S)に接合する手段は、超音波振動などによる接合、バンプを介した接合等が挙げられるが、本発明においては、ワイヤボンディングの手段はこれらに限定されない。
尚、
図1、2で本発明における半導体装置として、半導体素子(S)14とリードフレーム33、配線パターン34がそれぞれ接合されている例が示されている。
【0065】
〔2−3〕モールド工程
封止樹脂は、通常、エポキシ樹脂を用いるが、これに限定するものではなく、シリコン樹脂やポリイミド樹脂、アクリル樹脂などを用いることもできる。
また、通常はAl
2O
3、SiO
2などのセラミック粉を添加して用いるが、これに限定するものではなく、AlN、BN、Si
3N
4、ダイアモンド、SiC、B
2O
3などを添加しても良く、シリコン樹脂やアクリル樹脂などの樹脂製の粉を添加しても良い。
粉形状は、球状を用いることが多いが、これに限定するものではなく、破砕状、粒状、リン片状、凝集体などを用いても良い。粉体の充填量は、必要な流動性や絶縁性や接着性が得られる量が充填されていれば良い。
尚、
図1、2で本発明における半導体装置で、パッド部(P)12、多孔質状金属層(C)16、半導体素子(S)14、被覆樹脂部(I)23、及び半導体素子(S)14と電極端子(T)(リードフレーム(33)又は配線パターン(34))間を接続する金属製ワイヤが封止樹脂(H)で封止されている例が示されている。
【実施例】
【0066】
次に、実施例により本発明をより具体的に説明する。尚、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例、比較例で使用した(1)原材料、(2)装置、及び(3)評価方法を以下に記載する。
(1)原材料
(イ)基板
DBC基板(Cu/アルミナ/Cu)を使用した。Cu板の厚みは0.1mm/セラミック板厚み0.635mm/Cu板の厚み0.1mmである。
【0067】
(ロ)金属微粒子分散材
平均一次粒子径20μmの銅微粒子がジエチレングリコール中に80質量%の濃度で分散している銅微粒子分散材を使用した。尚、該金属微粒子分散材には、高分子分散剤としてポリビニルピロリドンが0.3質量%配合されている。
(ハ)半導体素子
半導体素子のサイズは5mm×5mmで厚みは150μmであり、その接合面はNi−Ti−Au合金でメタライズされている。
(ニ)被覆樹脂部を形成する材料
(i)樹脂溶液(実施例1):T693/R3000シリーズ(ナガセケムテックス(株)製)
(ii)樹脂シート(実施例2、3):T693/R6000シリーズ(ナガセエレックス(株)製)
(iii)樹脂(G)として、ポリビニルピロリドンを使用した。
【0068】
(2)装置
図8に示す焼結炉を使用した。該装置を用いて多孔質状金属層前駆体を以下の操作により焼結して多孔質状金属層を形成した。
図8(a)に示す、レイアップ用のプレス板42を用意して、ワーク41をそのプレス板45上にレイアップし、真空プレス機43の下熱盤44上にセットする。その後、
図8(b)に示すように、チャンバー45を閉じてチャンバー45内を真空状態にする。そして、
図8(c)に示すように、加圧シリンダー46により圧力を加えた状態で、ワーク41を上熱盤47と下熱盤44とで挟持して、加熱する。
これにより、多孔質状金属層前駆体が焼結されて、多孔質状金属層が形成される。
【0069】
(3)評価方法
金属微粒子分散材焼結後におけるCu焼結粒子の半導体素子側面への付着程度をDBC基板と半導体素子間の漏れ電流と遮断電流の測定により評価した。
電流−電圧カーブの測定には、カーブトレーサ(米国アジレント・テクノロジーズ社製、型式:B1505A)を用いた。
半導体素子として、シリコンN型電界効果トランジスター(MOSFET)を使用した。
測定条件は下記の通りである。
オン抵抗:R
DS(ON)=2.0Ω
ドレイン・ソース間電圧 V
DSS=900V
ドレイン電流(パルス) I
DP=15A
許容損失(TC=25℃) P
D=150W
デバイスをセラミックス基板上にダイボンディングし、
評価サンプルとして樹脂コートしたものと、しないものの2種類をn=50ずつ作成した。
その後、更にワイヤボンディングで基板上のパッドに接続した。
そのパッドにカーブトレーサをつなぎゲート漏れ電流とドレイン遮断電流を測定した。
測定条件と評価基準は下記のとおりである。
(i)ゲート漏れ電流
V
GS=+−30V,V
DS=0Vとして、I
GSS 10μAを超えた場合をNGとした。
(ii)ドレイン遮断電流
V
DS=720V、V
GS=0Vとして、I
DSS 100μAを超えた場合をNGとした。
【0070】
[実施例1]
(1)多孔質状金属層前駆体の形成、樹脂溶液の塗布
DBC基板の銅板上に5.5mm×5.5mmで厚みは300μmの金属微粒子分散材を表1に示すに示す面にそれぞれパターニングし、該金属微粒子分散材上に更に半導体素子を搭載した。
多孔質状金属層前駆体と半導体素子の外周側面のそれぞれ少なくとも1つの面の全体に樹脂溶液(T693/R3000シリーズ:ナガセケムテックス(株)製)を厚みが100μmになるように塗布した。なお、外周側面のすべての面に塗布しない場合は、多孔質状金属層前駆体の側面への塗布した場合、直上の半導体素子の側面には極力塗布しないようにした。
【0071】
(2)多孔質状金属層前駆体の加熱・焼結
前記DBC基板を加熱炉内に配置して、減圧雰囲気下(真空圧力1kPa)で、半導体素子上に厚み30μmの離型材(PTFEシート)を3枚重ねて圧力10MPaで加圧しながら、同時に10℃/minで加熱を開始し、300℃まで昇温後、該温度で20分間保持した。その後、冷却して除荷した。上記焼結により、厚さ100μmの多孔質状金属層が形成されるとともに、半導体素子が該多孔質状金属層を介してDBC基板上の銅板に接合された。
多孔質状金属層と半導体素子の外周側面は樹脂により被覆された状態になっていた。
(3)ワイヤボンディング、モールド
その後、半導体素子と他の電極端子とを金属製ワイヤで接合し、さらにシリコーンゲルを用いて封止し、半導体装置を作製した。
(4)評価
得られた半導体装置の半導体素子と他の電極端子間の電流−電圧カーブから、ゲート漏れ電流とドレイン遮断電流の測定を行った。
表1に評価結果を示す。半導体素子の被覆樹脂部による被覆面は、半導体素子表面の上部側からみて時計方向周りにA、B、C、D面とし、対応する多孔質状金属層の被覆樹脂部による被覆面をa、b、c、d側面として、被覆樹脂部の各被覆パターンごとに各500個のサンプルを評価した。評価結果がNGとなった数を表1に示す。
尚、表1中の評価結果は、[ゲート漏れ電流/ドレイン遮断電流]として表示する。
【0072】
【表1】
【0073】
[実施例2]
(1)多孔質状金属層前駆体の形成、樹脂溶液の塗布
DBC基板の銅板上に5mm×5mmで厚みは300μmの金属微粒子分散材をパターニングして多孔質状金属層前駆体を形成し、該多孔質状金属層前駆体上にサイズ6mm×6mmで厚み100μmの樹脂シート(T693/R6000シリーズ:ナガセエレックス(株)製)を配置し、該樹脂シート上に半導体素子を搭載した。
その後、半導体素子上に厚み30μmの離型材(PTFEシート)を3枚重ねて圧力10MPaで加圧しながら、180℃に加熱して、ペーストと半導体素子の外周側面の全面を、樹脂シートからなる樹脂により被覆した。
(2)多孔質状金属層前駆体の加熱・焼結
前記DBC基板を加熱炉内に配置して、減圧雰囲気下(真空圧力1kPa)で、半導体素子上に厚み30μmの離型材(PTFEシート)を3枚重ねて圧力10MPaで加圧しながら、同時に10℃/minで加熱を開始し、300℃まで昇温後、該温度で20分間保持した。その後、冷却して除荷した。
上記焼結により、厚さ100μmの多孔質状金属層が形成されるとともに、半導体素子が該多孔質状金属層を介してDBC基板上の銅板に接合された。
多孔質状金属層と半導体素子の外周側面は樹脂により被覆された状態になっていた。
【0074】
(3)ワイヤボンディング、モールド
その後、半導体素子と他の電極端子とを金属製ワイヤで接合し、さらにシリコーンゲルを用いて封止し、半導体装置を作製した。
(4)評価
実施例1と同様に、得られた半導体装置の半導体素子と他の電極端子間の電流−電圧カーブから、ゲート漏れ電流とドレイン遮断電流の測定を行った。500個のサンプルを評価し、ゲート漏れ電流とドレイン遮断電流の評価結果がNGとなった数はゼロであった。
【0075】
[実施例3]
(1)多孔質状金属層前駆体の形成、樹脂溶液の塗布
DBC基板の銅板上にサイズ6mm×6mmで厚み100μmの実施例2で使用したのと同様の樹脂シートを配置した。
該樹脂シート上に5mm×5mmで厚みは300μmの金属微粒子分散材をパターニングして多孔質状金属層前駆体を形成し、該多孔質状金属層前駆体上に更に半導体素子を搭載した。
その後、半導体素子上に厚み30μmの離型材(PTFEシート)を3枚重ねて圧力10MPaで加圧しながら、300℃に加熱して、多孔質状金属層と半導体素子の外周側面の全面を、樹脂シートからなる樹脂により被覆した。
(2)多孔質状金属層前駆体の加熱・焼結
前記DBC基板を加熱炉内に配置して、減圧雰囲気下(真空圧力1kPa)で、半導体素子上に厚み30μmの離型材(PTFEシート)を3枚重ねて圧力10MPaで加圧しながら、同時に10℃/minで加熱を開始し、300℃まで昇温後、該温度で20分間保持した。その後、冷却して除荷した。
上記焼結により、厚さ100μmの銅微粒子多孔質状金属層が形成されるとともに、半導体素子が該銅微粒子多孔質状金属層を介してDBC基板上の銅板に接合された。銅微粒子多孔質状金属層と半導体素子の外周側面は樹脂により被覆された状態になっていた。
【0076】
(3)ワイヤボンディング、モールド
その後、半導体素子と他の電極端子とを金属製ワイヤで接合し、さらにシリコーンゲルを用いて封止し、半導体装置を作製した。
(4)評価
実施例1と同様に、得られた半導体装置の半導体素子と他の電極端子間の電流−電圧カーブから、ゲート漏れ電流とドレイン遮断電流の測定を行った。500個のサンプルを評価し、ゲート漏れ電流とドレイン遮断電流の評価結果がNGとなった数はゼロであった。
【0077】
[実施例4]
(1)多孔質状金属層前駆体の形成、樹脂溶液の塗布
平均一次粒子径20μmの銅微粒子がジエチレングリコール中に80質量%の濃度で分散している銅微粒子分散材に更に、ポリビニルピロリドンをペースト中の濃度が2質量%になるように溶解して、樹脂含有金属微粒子分散材を調製した。
DBC基板の銅板上に5mm×5mmで厚みは300μmの樹脂含有金属微粒子分散材をパターニングして多孔質状金属層前駆体を形成し、該多孔質状金属層前駆体上に更に半導体素子を搭載した。
(2)多孔質状金属層前駆体の加熱・焼結
前記DBC基板を加熱炉内に配置して、減圧雰囲気下(真空圧力1kPa)で、半導体素子上に厚み30μmのPTFEシートを3枚重ねて圧力10MPaで加圧しながら、同時に10℃/minで加熱を開始し、300℃まで昇温後、該温度で20分間保持した。
その後、冷却して除荷した。
上記焼結により、厚さ100μmの銅微粒子多孔質状金属層が形成されるとともに、半導体素子が該銅微粒子多孔質状金属層を介してDBC基板上の銅板に接合された。銅微粒子多孔質状金属層と半導体素子の外周側面は樹脂により被覆された状態になっていた。
【0078】
(3)ワイヤボンディング、モールド
その後、半導体素子と他の電極端子とを金属製ワイヤで接合し、さらにシリコーンゲルを用いて封止し、半導体装置を作製した。
(4)評価
実施例1と同様に、得られた半導体装置の半導体素子と他の電極端子間の電流−電圧カーブから、ゲート漏れ電流とドレイン遮断電流の測定を行った。500個のサンプルを評価し、ゲート漏れ電流とドレイン遮断電流の評価結果がNGとなった数はゼロであった。
【0079】
[比較例1]
ペーストと半導体素子の外周側面に樹脂溶液を塗布しなかった以外は実施例1に記載したと同様に、(1)多孔質状金属層前駆体の形成、(2)多孔質状金属層前駆体の加熱・焼結、(3)ワイヤボンディング、モールドを行い、半導体装置を作製した。
実施例1と同様に、得られた半導体装置の半導体素子と他の電極端子間の電流−電圧カーブから、ゲート漏れ電流とドレイン遮断電流の測定を行った。
評価結果は下記の通りである。500個のサンプルを評価し、ゲート漏れ電流とドレイン遮断電流の評価結果がNGとなった数は、表1に示される通り、それぞれ5個および3個となった。