(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のシリカの製造方法は、回転式撹拌翼を有する反応装置の反応器内で、加水分解触媒、水及び有機溶媒を含む反応液中で、原料の
珪素アルコキシドを供給し、加水分解及び重縮合を行うことによりシリカを合成する、いわゆるゾルゲル法を基本としている。
本発明において使用する反応器は、撹拌機を有する反応器が特に制限無く使用される。上記撹拌機の撹拌翼としても、公知のものが特に制限無く使用されるが、代表的なものを例示すれば、傾斜パドル翼、タービン翼、三枚後退翼、アンカー翼、フルゾーン翼、ツインスター翼、マックスブレンド翼などが挙げられる。
【0013】
また、このような撹拌機を有する反応器としては、半球状、または平底あるいは丸底の円筒状の一般的な形状の反応器、更にこれら反応器内に邪魔板を設置したものが特に限定されずに使用できる。また、反応器の材質も特に限定されず、ガラス製、ステンレススチールなどの金属製(ガラスコートあるいは樹脂コートされたものを含む)、または樹脂製のものが使用できる。
【0014】
本発明で使用する反応器の撹拌効率は特に制限されるものではないが、反応器の撹拌効率の指標である無次元混合時間nθm(ここで、nは撹拌翼回転数(1/s)、θmは混合時間(s))が、55〜100の範囲の反応器を使用する場合に、本発明の方法は特に効果的である。
【0015】
即ち、無次元混合時間nθmが55より低い場合は、反応器の撹拌効率が高く、反応液の撹拌が十分可能であることより、本発明の方法による効果が現れ難く、一方、無次元混合時間nθmが100を超える場合は、反応器の撹拌効率が極めて低くなり、混合が不十分であり、反応液が不均一となり癒着粒子や凝集粒子が多く生成し易くなる。
【0016】
前記反応器の撹拌効率の範囲は、一般に、後述する工業的な実施において、50L以上反応液を扱う反応器の撹拌効率がこれに該当する場合が多い。
【0017】
上記無次元混合時間nθmは、撹拌翼回転数n(1/s)と混合時間θm(s)の積を意味し、撹拌レイノルズ数が一定であれば、反応器のスケールに因らず一義的に決まり、撹拌効率を示すのに非常に有用な指標である。また、混合時間θmは、一般に、トレーサー物質が均一に混合するまでの時間を意味するが、該混合時間θmは、反応器の形状、邪魔板の設置の有無やその配置状況、撹拌翼の種類や回転数、混合される液体の粘弾性特性などにより影響を受ける。
【0018】
本発明において、使用する加水分解触媒としては、アルコキシシラン類を代表とする
珪素アルコキシドの加水分解を促進する機能を有するものであれば特に限定されないが、更には、重縮合反応をも促進する機能を有するものが特に好ましい。通常、酸や塩基が使用できるが、球状で単分散性の高い粒子が得られるという理由から、塩基触媒を使用するのが好適である。本発明で好適に使用できる塩基触媒を例示すれば、アンモニア、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの無機塩基;メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、ジプロピルアミン、トリプロピルアミン、ピリジン、イミダゾール、ピペリジン、キノリン、ピロール、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデ−7−セン、水酸化テトラメチルアンモニウム、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどの有機塩基;を挙げることができる。これらの中でも、アンモニアやアミンのように金属を含まない塩基を使用した場合、製造したシリカを焼成することにより、粒子中に塩基性分や金属成分が残留しないため、このような触媒を使用するのが特に好適である。
【0019】
触媒の添加量は、用いる触媒の種類や反応液中の水と有機溶媒の種類や配合比率、更には使用する
珪素アルコキシドの量によって異なるために一概には言えないが、反応の開始から終了までpHが10以上、好ましくは11以上になるように添加するのが好ましい。触媒として最も好適なアンモニアの場合には、反応の開始から終了まで反応液中の濃度が2〜15質量%、好ましくは3〜7質量%の範囲となるように保つことが好適である。アンモニアの濃度を上記範囲に保つためには、添加する
珪素アルコキシドの量を相対的に少なくするか、あるいは反応中にアンモニア水を適宜添加すれば良い。
【0020】
本発明の製造方法において、
珪素アルコキシドは一旦加水分解されてから重縮合するため、反応系には水が必要である。そのため、本発明では、上記反応液は、水を含有する。反応液中において、水は後述の有機溶媒と水との総量を基準として3〜40質量%、特に5〜20質量%の割合で使用するのが好ましい。
【0021】
また、上記水の反応系への供給は、反応初期に反応器に予め仕込んでおき、その後前記濃度が維持できる量を適宜供給することにより行うことが望ましい。また、前記加水分解触媒は、一般に水溶性であるため、該加水分解触媒は、水に溶解した状態で反応系に供給することが好ましい。
【0022】
本発明において、有機溶媒としては、水と相溶性のある有機溶媒が好適に使用される。好適に使用できる有機溶媒を具体的に示せば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、s−ブタノール、t−ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのアルコール類;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類;ジオキサン、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシシエタンなどのエーテル類;炭酸エチレンなどのエステル類;これらの混合物を挙げることができる。これらの中でも、水との相溶性が特に高く、更に粘度が低いために取り扱いやすいという理由から、メタノール、エタノール、イソプロパノールのような低級アルコール類が特に好適に使用される。有機溶媒の使用量は、反応に使用する
珪素アルコキシドの合計100質量部に対して、通常は10〜1000質量部であり、好適には20〜500質量部である。
【0023】
本発明で使用する
珪素アルコキシドとしては、前記の有機溶媒と水との混合液中で加水分解及び重縮合を受けてシリカになるものであれば公知の化合物が何ら制限なく採用される。例示すると、式Si(OR)
4またはSiR’n(OR)
4−nで示されるアルコキシシラン類、またはアルコキシシランを部分的に加水分解・重縮合して得られる低縮合物が工業的に入手しやすく、その1種または2種以上の混合物が好ましく用いられる。なお、上記式において、R及びR’はエーテル結合、エステル結合を含んでも良い有機基であり、nは1〜3の整数である。1分子中に含まれる複数のRまたはR’は互いに異なっていても良いが、原料の入手が容易であるため、通常は1分子中に含まれる複数のRまたはR’は同じである化合物が好適に使用される。R及びR’は上記有機基のものが制限なく使用できるが、原料の入手が容易であるという理由からアルキル基であるのが好適であり、有機溶媒への相溶性が良好であるという理由から、メチル基、エチル基、イソプロピル基、ブチル基などの低級アルキル基であるのが特に好適である。
【0024】
本発明で好適に使用できるアルコキシシラン類を例示すれば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、及びこれらの加水分解物、部分加水分解物、ならびにこれら加水分解物または部分加水分解物の低縮合物(珪素原子を2〜8個含む縮合物)を挙げることができる。
【0025】
また、本発明においては、上記のアルコキシシラン類と共に珪素以外の金属アルコキシドを添加しても良く、こうすることにより珪素と他の金属との複合酸化物からなるシリカ系酸化物粒子を得ることができる。このとき使用する他の金属アルコキシドとしては、特に制限なく使用することができ、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、ゲルマニウム、ハフニウム、鉄、スズまたは鉛などの金属のアルコキシドが使用できる。それらの中でもチタンやジルコニウムの金属アルコキシドは、球形度の高いシリカ系酸化物粒子が得やすく、好適である。
【0026】
本発明で好適に使用できるアルコキシシラン類以外の金属アルコキシド(他の金属アルコキシドともいう)を例示すれば、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラブトキシド、
ジルコニウムテトラブトキシド、及びこれらの加水分解物、部分加水分分解物、ならびにこれら加水分解物または部分加水分解物の低縮合物(金属素原子を2〜8個含む縮合物)を挙げることができる。
【0027】
これら他の金属アルコキシドの使用量は、得ようとするシリカ系酸化物粒子の組成に応じて決定すれば良い。ただし、得られる粒子の球形度を高く保つという観点から、他の金属アルコキシドの使用量はアルコキシシラン類の合計モル数を1モルとしたときに0.001〜5モル、特に0.01〜3モルとなるような量を使用するのが好適である。
【0028】
本発明において、反応液への
珪素アルコキシドの供給は、液状で供給される態様をすべて含むが、
珪素アルコキシドを有機溶媒に溶解し、
珪素アルコキシド溶液とした状態で供給することが好ましい。
【0029】
上記有機溶媒としては、前記例示した有機溶媒が好適に使用されるが、中でも、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどの低級アルコールが好ましい。
なお、反応液のスラリー濃度を上げるためには、
珪素アルコキシド溶液における
珪素アルコキシド濃度を50%以上とするのが好ましく、全く希釈せずに添加しても良い。
また、原料
珪素アルコキシドの供給量は、反応液中の原料
珪素アルコキシド濃度が5.0質量%以下となるように供給するのが好適である。原料
珪素アルコキシド濃度がそれ以上となると
珪素アルコキシドの自己分解反応が生じ、小玉や癒着粒子が生成し易くなる。
【0030】
本発明の製造方法において、
珪素アルコキシド溶液の反応液への供給は、反応容器に設けた供給管より、反応液中にアルコキシド溶液を供給するように行われる。一般的には、該供給管を反応液中に挿入し、
珪素アルコキシド溶液を供給する。上記供給管の設置方法も特に限定されないが、供給管の本数は、1本または複数本であり、そして反応器上部から供給管を挿入する方法や反応器側面から供給管を挿入する方法などがある。また、供給管の材質も特に限定されず、ステンレススチールなどの金属製や樹脂製のものが使用できる。
【0031】
本発明において、好適な反応方法を示せば、反応器内に所定量の触媒を含有する水及び有機溶媒からなる反応媒体、更には必要に応じて種粒子を導入した後に、撹拌を開始し、
珪素アルコキシド溶液を連続的または断続的に添加し混合する方法を挙げることができる。なお、反応開始時に反応系内に導入する触媒量を少なめにしておき、
珪素アルコキシドの添加を開始してから触媒を連続的あるいは断続的に添加することもできる。
本発明において、反応時の反応液の温度は10〜55℃、特に20〜50℃とするのが好適である。
【0032】
本発明の特徴は、上述の反応において、上記反応器の反応液中に該
珪素アルコキシド溶液を吐出線速度30〜1000mm/s、好ましくは、100〜700mm/s、更に好ましくは、400〜600mm/sで供給することにある。
【0033】
即ち、上記吐出線速度が30mm/sよりも小さい場合、反応液中において、シリカ粒子が2、3個癒着した粒子や数10個のシリカ粒子が凝集した凝集粒子及び大部分の揃った粒子よりも小さい小玉のシリカ粒子の生成が顕著となり、本発明の目的を達成できない。一方、吐出線速度は高いほど効果はあるが、1000mm/sを超えた場合、効果が頭打ちとなるばかりでなく、装置的にも高価となるため工業的でない。
【0034】
上記
珪素アルコキシド溶液の吐出線速度は、従来採用されていない極めて速い条件であり、また、かかる条件において、シリカ粒子が2、3個癒着した粒子や数10個のシリカ粒子が凝集した凝集粒子及び大部分の揃った粒子よりも小さい小玉のシリカ粒子の生成が効果的に抑制されることは、本発明者らによって初めて見出されたことである。
【0035】
尚、本発明において、前記吐出線速度は、単位時間当たりの
珪素アルコキシド溶液の供給量と供給管の断面積から算出した値である。
【0036】
本発明において、吐出線速度を上記範囲に調整する方法は特に制限されない。一般には、
珪素アルコキシド溶液の供給量が設定されている場合、吐出線速度を高めるためには、供給管の径を小さくしてポンプ等を用いて
珪素アルコキシド溶液を供給することにより行うことができる。
【0037】
本発明において、前期特定の吐出線速度で
珪素アルコキシド溶液を供給する方法は、前記反応器において、加水分解反応を終了するまでに、反応液量が50L以上、好ましくは、100L以上となる反応に対して特に有効である。
【0038】
ここで、加水分解反応を終了するまでに、反応液量が50L以上となるとは、反応を終了するまでに反応液量が50L以上となる態様を含むものである。例えば、反応初期において反応液量が50L以上の場合、
珪素アルコキシド溶液等の供給によって、反応の途中で反応液量が50L以上となる場合を含む。
【0039】
尚、前記反応液量の上限は特に制限されないが、30m
3程度である。
【0040】
本発明において、その他の態様は、ゾルゲルシリカの製造方法において公知の方法が特に制限無く採用される。
【0041】
例えば、単分散性の高いシリカを製造する場合には、効率性の観点から、前記
珪素アルコキシドの加水分解及び重縮合をシリカ種粒子の存在下で行うのが好ましい。
【0042】
前記種粒子を使用して製造する場合、種粒子としては特に制限なく各種の酸化物粒子が使用できる。好適には、ゾルゲル法で別途製造した、単分散性の高い球状シリカ系酸化物粒子が使用できる。もちろん、本発明の方法で製造したシリカ系酸化物粒子を種粒子として用い、更に本発明の方法で粒子径を大きくすることもできる。しかしながら、製造効率及び最終的に得られる粒子の単分散性の観点から、粒子径の変動係数が0.1〜30%、特に1〜10%の球状粒子を使用するのが好適である。種粒子を成長させるのに、成長部分が種粒子と異なる組成の原料を使用し、コアシェル型のシリカ系酸化物粒子を製造することも可能である。
【実施例】
【0043】
以下、本発明の実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら制限されるものではない。
【0044】
各物性及び混合時間θmの測定方法
各実施例、比較例で用いた合成後シリカの各物性及び混合時間θmは以下の方法で測定した。
【0045】
・平均粒子径及び変動係数
合成後シリカの平均粒子径及び粒子径の変動係数は、合成後スラリーを用い、レーザー回折散乱法粒度分布測定装置(ベックマンコールター社製、LS−230)により測定した。
【0046】
・粒子形状
粒子形状は合成後シリカスラリー中のシリカをSEM(日本電子データム社製、JSM−6060)により、倍率10000倍で観察し、合成後シリカ中のシリカ粒子2,3個癒着した粒子(双子、三つ子)、大部分の揃った粒子よりも小さい粒子(小玉)及び数10個のシリカ粒子が凝集した凝集粒子を目視でカウントした。上記各粒子数は、5視野を任意にサンプリングして上記各粒子の個数をカウントし、それぞれの合計個数で示した。
【0047】
・無次元混合時間nθm
使用する反応器内に水を最大容積の50%満たし、任意の撹拌回転数n(1/s)で撹拌下、ヨード澱粉の呈色をチオ硫酸ナトリウムで還元脱色する混合実験において、呈色状態のヨード澱粉水溶液に当該水溶液を脱色するのに必要十分量のチオ硫酸ナトリウムを添加し、添加開始直後から脱色が完了するまでの時間を測定し、これを混合時間θm(s)とし、上記混合時間θmと前記撹拌回転数nとの積により求めた。
【0048】
実施例1
内容積1000Lのジャケット付きガラスライニング製反応器(内径1200mm)に、マックスブレンド翼(翼径345mm)を有した反応器を使用し、初期反応液としてメタノール75kg、イソプロパノール30kg及びアンモニア水(25質量%)25kgを仕込み(初期反応液量:150L)、反応温度を40℃に設定し、52rpmで撹拌した。その後、原料としてテトラエトキシシラン3.0kgとメタノール7.0kg、イソプロパノール2.0kgの混合物を反応媒体に投入し、シリカの種粒子を作製した。
【0049】
上記反応器の無次元混合時間nθmは78であった。
【0050】
次に、テトラメトキシシラン350kgとメタノール100kgの原料を51mm/sの吐出線速度で反応媒体中に供給し、同時に150kgのアンモニア水(25質量%)を0.8kg/minの速度で供給し、加水分解及び重縮合を行わせしめてシリカを合成した。最終的な反応液量は750Lであった。
【0051】
供給終了後1時間撹拌を続けた後、得られたシリカスラリー中の個々の粒子は真球状で、平均粒子径0.74μm、変動係数21.9%であった。また、シリカスラリー中の双子・三つ子玉は1個、小玉は0個、凝集粒子は0個であった。そして、前記シリカスラリーを目開き5μmのフィルターでろ過した。スラリーはフィルターが詰まることなくろ過が可能であった。
【0052】
実施例2
実施例1において、原料吐出線速度を98mm/sと変えた。他は実施例1と同様にしてシリカの合成及び評価を行った。評価結果は、平均粒子径0.77μm、変動係数20.1%であった。また、シリカスラリー中の双子・三つ子玉は0個、小玉は1個、凝集粒子は0個であった。そして、シリカスラリーを目開き5μmのフィルターでろ過した。スラリーはフィルターが詰まることなくろ過が可能であった。
【0053】
実施例3
実施例1において、原料吐出線速度を263mm/sと変えた。他は実施例1と同様にしてシリカの合成及び評価を行った。評価結果は、平均粒子径0.79μm、変動係数22.1%であった。また、シリカスラリー中の双子・三つ子玉は1個、小玉は0個、凝集粒子は0個であった。そして、シリカのスラリーを目開き5μmのフィルターでろ過した。スラリーはフィルターが詰まることなくろ過が可能であった。
【0054】
実施例4
実施例1において、原料吐出線速度を497mm/sと変えた。他は実施例1と同様にしてシリカの合成及び評価を行った。評価結果は、平均粒子径0.75μm、変動係数19.9%であった。また、シリカスラリー中の双子・三つ子玉は0個、小玉は0個、凝集粒子は0個であった。そして、シリカのスラリーを目開き5μmのフィルターでろ過した。スラリーはフィルターが詰まることなくろ過が可能であった。
【0055】
実施例5
内容積500Lジャケット付きガラスライニング製反応器(内径900mm)に、ツインスター翼(翼径300mm)を有した反応器を使用した。初期反応液としてメタノール65kg、イソプロパノール25kg及びアンモニア水(25質量%)15kgを仕込み(初期反応液量:130L)、反応温度を40℃に設定し、150rpmで撹拌した。その後、原料としてテトラエトキシシラン4.0kgとメタノール8.0kg、イソプロパノール4.0kgの混合物を反応媒体に投入し、シリカの種粒子を作製した。
【0056】
上記反応器の無次元混合時間nθmは88であった。
【0057】
次に、テトラメトキシシラン150kgとメタノール50kgの原料を188mm/sの吐出線速度で反応媒体中に供給し、同時に50kgのアンモニア水(25質量%)を0.6kg/minの速度で供給し、シリカを成長、合成させた。最終的な反応液量は380Lであった。
【0058】
供給終了後1時間撹拌を続けた後、得られたシリカは真球状で、平均粒子径0.80μm、変動係数18.7%であった。また、シリカスラリー中の双子・三つ子玉は0個、小玉は1個、凝集粒子は0個であった。そして、シリカのスラリーを目開き5μmのフィルターでろ過した。スラリーはフィルターが詰まることなくろ過が可能であった。
【0059】
実施例6
内容積4000Lのジャケット付きガラスライニング製反応器(内径1700mm)に、マックスブレンド翼(翼径500mm)を有した反応器を使用し、初期反応液としてメタノール400kg、イソプロパノール150kg及びアンモニア水(25質量%)180kgを仕込み(初期反応液量:900L)、反応温度を40℃に設定し、52rpmで撹拌した。その後、原料としてテトラエトキシシラン24.0kgとメタノール30.0kg、イソプロパノール15.0kgの混合物を反応媒体に投入し、シリカの種粒子を作製した。
【0060】
上記反応器の無次元混合時間nθmは95であった。
【0061】
次に、テトラメトキシシラン2000kgとメタノール250kgの原料を393mm/sの吐出線速度で反応媒体中に供給し、同時に600kgのアンモニア水(25質量%)を2.0kg/minの速度で供給し、シリカを成長、合成させた。最終的な反応液量は3600Lであった。
【0062】
供給終了後1時間撹拌を続けた後、得られたシリカは真球状で、平均粒子径0.74μm、変動係数21.6%であった。また、シリカスラリー中の双子・三つ子玉は1個、小玉は1個、凝集粒子は0個であった。そして、シリカのスラリーを目開き5μmのフィルターでろ過した。スラリーはフィルターが詰まることなくろ過が可能であった。
【0063】
比較例1
実施例1において、原料吐出線速度を23mm/sと変えた。他は実施例1と同様にしてシリカの合成及び評価を行った。評価結果は、平均粒子径0.89μm、変動係数44.3%であった。また、シリカスラリー中の双子・三つ子玉は14個、小玉は5個、凝集粒子は2個であった。このとき、合成後のスラリーをろ過する際、5μmのフィルターが詰まり、ろ過に時間がかかった。
【0064】
比較例2
実施例6において、原料吐出速度を23mm/sに変えた以外は実施例6と同様にしてシリカの合成及び評価を行った。評価結果は、平均粒子径0.88μm、変動係数45.2%であった。また、シリカスラリー中の双子・三つ子玉は53個、小玉は21個、凝集粒子は6個であった。このとき、合成後のスラリーをろ過する際、5μmのフィルターが詰まり、ろ過に時間がかかった。
【0065】
実施例1〜6及び比較例1、2の合成条件及び合成粒子性状を表1にまとめて示す。
【0066】
【表1】
【0067】
原料吐出線速度が30mm/s〜1000mm/sの範囲にある実施例1〜実施例6では粗粒、凝集粒子が少なく、またろ過性が良好であったのに対し、原料吐出線速度の条件を満たさない比較例1、2では粗粒、凝集粒子数が多く、ろ過性が悪かった。特に、この結果は、大量の反応液量を扱うことにより、反応器の無次元混合時間nθmが55〜100の範囲となる条件において顕著である。