(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
近年、半導体デバイスの高集積化が進むにつれて回路の配線が微細化し、配線間距離もより狭くなりつつある。特に0.5μm以下の光リソグラフィの場合、焦点深度が浅くなるためステッパーの結像面の平坦度を必要とする。そこで、半導体ウエハの表面を平坦化することが必要となるが、この平坦化法の一手段として研磨装置により研磨(ポリッシング)することが行われている。
【0003】
従来、この種の研磨装置は、上面に研磨布を貼り付けたターンテーブルと、被加工物としての半導体ウエハを保持可能なトップリングとを有している。ターンテーブルとトップリングは、各々独立した回転数で回転する。研磨装置は、研磨剤を含む液体(スラリー)をターンテーブルに貼られた研磨パッド上に流し、そこにトップリングにセットされた被加工物を押し当てて、該半導体ウエハの表面を平坦且つ鏡面に研磨する。
【0004】
この種の研磨装置の研磨速度は、前工程で発生する半導体ウエハの表面状態のばらつきや、研磨パッドの摩耗状態、スラリーの微妙な変化に影響されてばらつきが生じる。仮に、研磨が不十分であると回路間の絶縁がとれずショートする虞が生じる。一方、過研磨となった場合は、配線の断面積が減ることによる抵抗値の上昇や、配線自体が完全に除去され回路自体が形成されないなどの問題が生じる。このため、この種の研磨装置は、研磨終点検出装置を搭載して最適な研磨終了点の検出を行っている。
【0005】
上述した研磨装置の研磨終点検出手段の1つとして、研磨が異材質の物質へ移行した際の研磨摩擦力の変化を検知する方法が知られている。研磨対象物である半導体ウエハは、例えば、半導体、導体、絶縁体の異なる材質からなる積層構造を有しており、異材質層間で摩擦係数が異なるため、研磨が異材質層へ移行することによって生じる研磨摩擦力の変化を検知する方法である。この方法によれば、研磨が異材質層に達した時が研磨の終点となる。また、研磨装置は、被加工物の表面に凹凸がある状態から平坦になった際の研磨摩擦力の変化を検知することにより、被加工物の表面が平坦化されたことを検出することもできる。
【0006】
ここで、研磨摩擦力の変化は次のように検出される。研磨摩擦力はターンテーブル回転中心から偏心した位置に作用するため、回転するターンテーブルには負荷トルクとして作用する。このため、研磨摩擦力はターンテーブルに働くトルクとして検出することができる。ターンテーブルを回転駆動させる手段が電動モータの場合には、負荷トルクはモータに流れる電流として測定することができる。このため、モータ電流を電流計でモニタし、適当な信号処理を施すことによって研磨の終点が検出される。
【0007】
図8は、電動モータに入力する電流の変化により研磨終点を検出する方法の一構成例を示す。電動モータ500は、インバータ装置510を介して交流商用電源512により駆動される。インバータ装置510は、交流商用電源512をコンバータ部514により直流電源に変換し、コンデンサ516に直流電力を蓄積する。また、インバータ装置510は、コンデンサ516に蓄積された直流電力をインバータ部518で任意の周波数、電圧に逆変換して、3相ケーブル520を介して電動モータ500に交流電力を供給する。電動モータ500に交流電力を供給するインバータ装置510の3相ケーブルは、それぞれ
、電動モータ500の3相の界磁巻線に接続されている。電動モータ500に電力を供給する3相ケーブル520のうちの1相、例えばV相に電流変換器(CT)522を介在させて、モータ電流を検出する。電動モータ500への電流供給線に流れるモータ電流は、電流計524でV相に流れる電流値が検出され、図示しない研磨装置の制御回路の終点検出手段に送られ、その電流値の変化から研磨の終点が判定されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
近年、半導体デバイスの高集積化がますます進むにつれて回路の配線がより微細化し、配線間距離もこれまで以上に狭くなりつつあるため、被加工物をより精密に平坦化することが希求されている。
【0010】
この点、上述のように従来技術は、電動モータの3相ある内の1相(例えばV相)の電流を計測し、この電流の変化から電動モータのトルク変動を検出することによって研磨終点検出を行っていた。しかしながら、実際には、電動モータの各相の電流にはばらつきが生じ得る。これに加えて、電動モータの各相の電流のばらつきは、特定の相の電流がいつも高くなったり低くなったりするものではなく、電動モータ間のばらつき又は研磨装置間のばらつきに起因してまちまちに生じるおそれがある。
【0011】
このような状況において、電動モータの特定の1相の電流を計測して終点検出を行うと、検出電流がばらつくので、電動モータのトルク変動の検出にもばらつきが発生するおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願発明は、上記課題に鑑みなされたもので、被加工物の表面を平坦化するための研磨装置であって、
研磨テーブルと、
該研磨テーブルを回転駆動する第1の電動モータと、
被加工物を保持可能な基板保持部と、
該基板保持部を回転駆動する第2の電動モータとを備え、
前記第1の電動モータにより前記研磨テーブルを回転させると共に、前記第2の電動モータにより前記基板保持部を回転させて、前記被加工物を前記基板保持部で保持しつつ前記研磨テーブルに押圧し研磨して該被加工物の表面を平坦化できるようになっており、
前記第1及び第2の電動モータのうち少なくとも一方の電動モータは、複数相の巻線を備え、
前記研磨装置は、前記複数相のうちの少なくとも2相の電流を検出する電流検出部と、
前記電流検出部によって検出された少なくとも2相の電流に基づいて、合成電流を生成する合成電流生成部と、
前記合成電流生成部によって生成された合成電流の変化に基づいて、前記研磨により生じる前記電動モータのトルク変動を検出するトルク変動検出部と、
を備えたことを特徴とする。
【0013】
すなわち、本願発明は、第1及び第2の電動モータのうち少なくとも一方の電動モータの特定の1相(例えばV相)の電流を検出するのではなく、少なくとも2相の電流を検出する。そして、本願発明は、検出された少なくとも2相の電流に基づいて合成電流を生成し、生成された合成電流の変化に基づいて電動モータのトルク変動を検出する。
【0014】
これにより、電動モータ間でまちまちに発生する各相の電流のばらつきを吸収することができるので、トルク変動検出のばらつきを抑制することができる。
前記研磨装置において、さらに、前記検出部で検出された前記電動モータのトルク変動に基づいて、前記被加工物の表面の平坦化を示す研磨加工終点を検出する終点検出部を備えてもよい。
【0015】
また、前記研磨装置において、前記第1及び第2の電動モータのうち少なくとも一方の電動モータは、少なくともU相とV相とW相の3相の巻線を備えてもよい。
また、前記研磨装置において、前記第1の電動モータが、少なくともU相とV相とW相の3相の巻線を備えてもよい。
【0016】
また、前記研磨装置において、前記第1の電動モータは、同期式又は誘導式のACサーボモータから構成してもよい。
また、前記研磨装置において、さらに、
前記第1及び第2の電動モータのうち少なくとも一方の電動モータの回転位置の検出値に基づいて前記電動モータの回転角度を生成する電気角信号生成部を備え、
前記電流検出部は、前記電動モータのU相とV相とW相の3相のうち少なくとも2相の電流を検出し、
前記合成電流生成部は、前記合成電流として、前記電流検出部によって検出された少なくとも2相の電流と、前記電気角信号生成部によって検出された電動モータの回転角度とに基づいて、前記電動モータのトルクに相当する前記3相の合成実効電流を生成することもできる。
【0017】
また、前記研磨装置において、前記電流検出部は、前記電動モータのU相とV相とW相の3相のうち少なくとも2相の電流を検出し、
前記合成電流生成部は、前記合成電流として、前記電流検出部によって検出された少なくとも2相の電流に基づいて、前記前記3相の電流の平均電流を生成することもできる。
【0018】
また、前記研磨装置において、さらに、
前記第1及び第2の電動モータのうち少なくとも一方の電動モータを駆動するモータドライバを備え、
該モータドライバは、
前記電動モータの回転位置の検出値に基づいて前記電動モータの回転速度を求める演算器と、
入力インターフェースを介して入力された前記電動モータの回転速度の指令値と前記演算器によって求められた前記電動モータの回転速度との偏差に基づいて、前記電動モータへ供給する電流の指令信号を生成する速度補償器と、
前記電動モータの回転位置の検出値に基づいて前記電動モータの回転角度を生成する電気角信号生成部と、
前記各相のうちの少なくとも2つの相の電流指令値を生成する変換器と、を有し、
前記電流検出部は、前記電動モータのU相とV相とW相の3相のうち少なくとも2相の電流を検出し、
前記合成電流生成部は、前記合成電流として、前記電流検出部によって検出された少なくとも2相の電流と、前記電気角信号生成部によって検出された電動モータの回転角度とに基づいて、前記電動モータのトルクに相当する前記3相の合成実効電流を生成し、
前記変換器は、前記速度補償器によって生成された電流の指令信号と前記合成電流生成部によって生成された合成実効電流との偏差に基づいて、前記各相のうちの少なくとも2つの相の電流指令値を生成することもできる。
【発明の効果】
【0019】
かかる本願発明によれば、電動モータ間でまちまちに発生する各相の電流のばらつきを吸収することができるので、トルク変動検出のばらつきを抑制することができる。その結果、被加工物の研磨終点検出のばらつきを抑制することができるので、被加工物の平坦化のばらつきを抑制することができ、平坦化された被加工物の歩留まりも良くすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態に係る研磨装置を図面に基づいて説明する。
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る研磨装置の全体構成を示す図である。
【0022】
まず、研磨装置は、大きく分けると、半導体ウエハなどの被加工物を研磨して平滑化する研磨系10、研磨系10に含まれる電動モータを駆動する駆動系100、及び被加工物の研磨の終点を検出する研磨終点検出系200を備える。
【0023】
研磨系10は、研磨布11を上面に取付け可能なターンテーブル(研磨テーブル)12と、ターンテーブル12をギヤなどを介することなく直接的に回転駆動する第1の電動モータ14と、半導体ウエハ(被加工物)18を保持可能なトップリング(基板保持部)20と、トップリング20を回転駆動する第2の電動モータ22とを備えている。
研磨装置は、第1の電動モータ14によりターンテーブル12を回転させると共に、第2の電動モータ22によりトップリング20を回転させて、トップリング20により半導体ウエハ18を保持しつつ、ターンテーブル12に半導体ウエハ18を押圧して半導体ウエハ18の表面を研磨し、平坦化できるようになっている。
【0024】
トップリング20は、図示しない保持装置により、ターンーブル12に近づけたり遠ざけたりすることができるようになっている。半導体ウエハ18を研磨するときは、トップリング20をターンテーブル12に近づけることにより、トップリング20に保持された半導体ウエハ18を、ターンテーブル12に取り付けられた研磨布11に当接させる。なお、本実施形態においては、ターンテーブル12を直接的に回転駆動する第1の電動モータ14のトルクを検出して、半導体ウエハ18の研磨状態の終点を検出する例を示すが、トップリング20を回転駆動する第2の電動モータのトルクを検出して、半導体ウエハの研磨状態の終点を検出するようにしてもよい。
【0025】
半導体ウエハ18を研磨するときは、上面に研磨布11を張り付けたターンテーブル12が、第1の電動モータ14によって回転駆動された状態で、研磨対象物である半導体ウエハ18を保持したトップリング20により、半導体ウエハ18が研磨布11に押圧される。また、トップリング20は、ターンテーブル12の回転軸13とは偏心した軸線21
の回りに回転する。研磨する際は、研磨材を含む研磨砥液が、研磨材供給装置24から研磨布10の上面に供給され、そこに、トップリング20に保持された半導体ウエハ18が押圧される。
【0026】
第1の電動モータ14は、少なくともU相とV相とW相の3相の巻線を備えた同期式又は誘導式のACサーボモータであることが好ましい。第1の電動モータ14は、本実施形態においては、3相の巻線を備えたACサーボモータから構成されている。3相の巻線は、120度位相のずれた電流を電動モータ14内のロータ周辺に設けられた界磁巻線に流し、これにより、ロータが回転駆動されるようになっている。電動モータ14のロータは、モータシャフト15に接続されており、モータシャフト15によりターンテーブル12が回転駆動される。
【0027】
次に、駆動系100について説明する。駆動系100は、第1の電動モータ14を回転駆動するモータドライバ101と、第1の電動モータ14の回転位置を検出する位置検出センサ140と、キーボートやタッチパネルなどの入力インターフェースを介してオペレータから第1の電動モータ14の回転速度の指令信号を受け付け、受け付けた指令信号をモータドライバ101に入力する入力部150とを備えている。
【0028】
モータドライバ101は、微分器102と、速度補償器104と、2相‐3相変換器106と、電気角信号生成器(電気角信号生成部)108と、U相電流補償器110と、U相PWM変調回路112と、V相電流補償器114と、V相PWM変調回路116と、W相電流補償器118と、W相PWM変調回路120と、パワーアンプ130と、電流センサ132,134とを備えている。
【0029】
位置検出センサ140は、第1の電動モータ14の回転位置を検出し、検出した回転位置信号を微分器102、電気角信号生成器108、及び後述する電気角信号生成器210へ出力する。
【0030】
微分器102は、位置検出センサ140によって検出された回転位置信号を微分することによって第1の電動モータ14の実際の回転速度に相当する実速度信号を生成する。すなわち、微分器102は、第1の電動モータ14の回転位置の検出値に基づいて第1の電動モータ14の回転速度を求める演算器である。
【0031】
速度補償器104は、入力部150を介して入力された回転速度の指令信号(目標値)と微分器102によって生成された実速度信号との偏差に相当する速度偏差信号に基づいて、第1の電動モータ14の回転速度の補償を行う。すなわち、速度補償器104は、入力インターフェース(入力部150)を介して入力された第1の電動モータ14の回転速度の指令値と微分器102によって求められた第1の電動モータ14の回転速度との偏差に基づいて、第1の電動モータ14へ供給する電流の指令信号を生成する。
【0032】
速度補償器104は、例えばPID制御器で構成することができる。この場合、速度補償器104は、入力部150から入力された回転速度の指令信号と第1の電動モータの実速度信号との偏差に比例させて操作量を変える比例制御と、その偏差を足していきその値に比例して操作量を変える積分制御と、偏差の変化率(つまり偏差が変化する速度)を捉えこれに比例した操作量をだす微分制御とを行い、補償された回転速度に相当する電流指令信号を生成する。なお、速度補償器104は、PI制御器で構成することもできる。
【0033】
電気角信号生成器108は、位置検出センサ140によって検出された回転位置信号に基づいて、第1の電動モータ14のロータの回転角度に相当する電気角信号を生成する。
2相‐3相変換器106は、速度補償器104によって生成された電流指令信号と、電
気角信号生成器108によって生成された電気角信号とに基づいて、U相電流指令信号、及びV相電流指令信号を生成する。すなわち、2相‐3相変換器106は、第1の電動モータ14の回転位置の検出値に基づいて生成された電気角信号と速度補償器104によって生成された電流の指令信号とに基づいて、各相のうちの少なくとも2つの相の電流指令値を生成する変換器である。
【0034】
ここで、2相‐3相変換器106の処理について詳細に説明する。
図2は、2相‐3相変換器の処理内容を説明するための図である。2相‐3相変換器106には、速度補償器104から
図2に示すような電流指令信号Icが入力される。また、2相‐3相変換器106には、電気角信号生成器108から
図2に示すようなU相の電気角信号Sinφuが入力される。なお、
図2において図示は省略したが、2相‐3相変換器106には、V相の電気角信号Sinφvも入力される。
【0035】
例えばU相電流指令信号Iucを生成する場合を考える。この場合、2相‐3相変換器106は、入力された電流指令信号Ic、及びU相の電気角信号Sinφuに基づいてU相電流指令信号Iucを生成する。例えば、2相‐3相変換器106は、U相電流指令信号Iucを含む回転2座標系のdq信号を、電気角信号Sinφuを用いて逆dq変換(逆パーク変換)によって静止2座標系のαβ信号へ変換し、αβ信号を逆αβ変換(逆クラーク変換)によってU相電流指令信号へ変換することができる。
【0036】
また、V相電流指令信号Iucを生成する場合、2相‐3相変換器106は、U相の場合と同様に、入力された電流指令信号Ic、及びV相の電気角信号Sinφvに基づいて、V相電流指令信号Ivcを生成する。例えば、2相‐3相変換器106は、V相電流指令信号Iucを含む回転2座標系のdq信号を、電気角信号Sinφvを用いて逆dq変換(逆パーク変換)によって静止2座標系のαβ信号へ変換し、αβ信号を逆αβ変換(逆クラーク変換)によってV相電流指令信号へ変換することができる。
【0037】
電流センサ132は、パワーアンプ130のU相出力ラインに設けられ、パワーアンプ130から出力されたU相の電流を検出する。
U相電流補償器110は、2相‐3相変換器106から出力されたU相電流指令信号Iucと、電流センサ132によって検出されてフィードバックされたU相検出電流Iu*との偏差に相当するU相電流偏差信号に基づいて、U相の電流補償を行う。U相電流補償器110は、例えばPI制御器、又はPID制御器で構成することができる。U相電流補償器110は、PI制御又はPID制御を用いてU相電流の補償を行い、補償された電流に相当するU相電流信号を生成する。
【0038】
U相PWM変調回路112は、U相電流補償器110によって生成されたU相電流信号に基づいてパルス幅変調を行う。U相PWM変調回路112は、パルス幅変調を行うことによって、U相電流信号に応じた2系統のパルス信号を生成する。
【0039】
電流センサ134は、パワーアンプ130のV相出力ラインに設けられ、パワーアンプ130から出力されたV相の電流を検出する。
V相電流補償器114は、2相‐3相変換器106から出力されたV相電流指令信号Ivcと、電流センサ134によって検出されてフィードバックされたV相検出電流Iv*との偏差に相当するV相電流偏差信号に基づいてV相の電流補償を行う。V相電流補償器114は、例えばPI制御器、又はPID制御器で構成することができる。V相電流補償器114は、PI制御又はPID制御を用いてV相電流の補償を行い、補償された電流に相当するV相電流信号を生成する。
【0040】
V相PWM変調回路116は、V相電流補償器114によって生成されたV相電流信号
に基づいてパルス幅変調を行う。V相PWM変調回路114は、パルス幅変調を行うことによって、V相電流信号に応じた2系統のパルス信号を生成する。
【0041】
W相電流補償器118は、2相‐3相変換器106から出力されたU相電流指令信号Iuc及びV相電流指令信号Ivcに基づいて生成されたW相電流指令信号Iwcと、電流センサ132,134によって検出されてフィードバックされたU相検出電流Iu*及びV相検出電流Iv*との偏差に相当するW相電流偏差信号に基づいてW相の電流補償を行う。W相電流補償器118は、例えばPI制御器、又はPID制御器で構成することができる。W相電流補償器118は、PI制御又はPID制御を用いてW相電流の補償を行い、補償された電流に相当するW相電流信号を生成する。
【0042】
W相PWM変調回路120は、W相電流補償器118によって生成されたW相電流信号に基づいてパルス幅変調を行う。W相PWM変調回路118は、パルス幅変調を行うことによって、W相電流信号に応じた2系統のパルス信号を生成する。
【0043】
パワーアンプ130は、
図8で説明したインバータ装置510によって構成されている。パワーアンプ130(インバータ装置510)のインバータ部518には、U相PWM変調回路112、V相PWM変調回路116、及びW相PWM変調回路120によって生成された2系統のパルス信号がそれぞれ印加される。パワーアンプ130は、印加された各パルス信号に応じてインバータ部518の各トランジスタを駆動する。これにより、パワーアンプ130は、U相、V相、W相それぞれについて交流電力を出力し、この3相交流電力によって第1の電動モータ14を回転駆動する。
【0044】
次に、研磨終点検出系200について説明する。研磨終点検出系200は、U相電流検出器(電流検出部)202、V相電流検出器(電流検出部)204、センサアンプ206,208、電気角信号生成器(電気角信号生成部)210、3相‐2相変換器(合成電流生成部)220、及び終点検出装置(トルク変動検出部,終点検出部)230を備える。
【0045】
U相電流検出器202は、モータドライバ101と第1の電動モータ14との間のU相の電流路に設けられており、モータドライバ101から出力されたU相の電流を検出する。
【0046】
V相電流検出器204は、モータドライバ101と第1の電動モータ14との間のV相の電流路に設けられており、モータドライバ101から出力されたV相の電流を検出する。
【0047】
センサアンプ206は、V相電流検出器204によって検出された電流を増幅する。また、センサアンプ208は、U相電流検出器202によって検出された電流を増幅する。
電気角信号生成器210は、上述の電気角信号生成器108と同様の機能を有する。すなわち、電気角信号生成器210は、位置検出センサ140によって検出された回転位置信号に基づいて、第1の電動モータ14のロータの回転角度に相当する
図2に示すような電気角信号を生成する。
【0048】
3相‐2相変換器220には、センサアンプ206,208によってそれぞれ増幅されたV相,U相の検出電流、及び電気角信号生成器210によって生成された電気角信号が入力される。3相‐2相変換器220は、入力されたV相,U相の検出電流、及び電気角信号に基づいて、合成電流を生成する。
【0049】
例えば、3相‐2相変換器220は、V相検出電流と、U相検出電流と、V相検出電流及びU相検出電流に基づいて算出されるW相検出電流との3座標系の信号を、αβ変換(
クラーク変換)によって、静止2座標系のαβ信号へ変換する。続いて、3相‐2相変換器220は、αβ信号を、電気角信号生成器210によって生成された電気角信号を用いてdq変換(パーク変換)によって、回転2座標系のdq信号へ変換する。そして、3相‐2相変換器220は、dq信号のうち、第1の電動モータ14の回転トルク成分に相当するq信号を、V相,U相,W相の3相の合成電流として出力する。
【0050】
終点検出装置230は、3相‐2相変換器220から出力された合成電流信号に基づいて、半導体ウエハ18の研磨の終点を判定する。より具体的には、終点検出装置230は、3相‐2相変換器220から出力された合成電流信号の変化に基づいて、研磨により生じる電動モータのトルク変動を検出する。そして、終点検出装置230は、検出された電動モータのトルク変動に基づいて半導体ウエハ18の研磨の終点を判定する。
【0051】
終点検出装置230の研磨終点の判定について
図3を用いて説明する。
図3は、研磨の終点の検出態様の一例を示す図である。
図3において横軸は研磨時間の経過を示し、縦軸はトルク電流(I)及びトルク電流の微分値(ΔI/Δt)を示している。終点検出装置230は、例えば
図3のようにトルク電流30a(V相のモータ電流)が推移した場合、トルク電流30aがあらかじめ設定されたしきい値30bより小さくなったら、半導体ウエハ18の研磨が終点に達したと判定する。また、終点検出装置230は、トルク電流30aの微分値30cを求めて、あらかじめ設定された時間しきい値30dと30eとの間の期間において微分値30cの傾きが負から正に転じたことを検出したら、半導体ウエハ18の研磨が終点に達したと判定することもできる。すなわち、時間しきい値30dと30eは、経験則などによって研磨終点になると思われるおおよその期間に設定されており、終点検出装置230は、時間しきい値30dと30eとの間の期間において研磨の終点検出を行う。このため、終点検出装置230は、時間しきい値30dと30eとの間の期間以外では、たとえ微分値30cの傾きが負から正に転じたとしても、半導体ウエハ18の研磨が終点に達したとは判定しない。これは、例えば研磨の開始直後などに、研磨が安定していない影響によって微分値30cがハンチングして傾きが負から正に転じた場合に、研磨終点であると誤検出されるのを抑制するためである。以下、終点検出装置230の研磨終点の判定の具体例を示す。
【0052】
例えば、半導体ウエハ18が、半導体、導体、絶縁体等の異なる材質で積層されている場合を考える。この場合、異材質層間で摩擦係数が異なるため、研磨が異材質層へ移行した場合に第1の電動モータ14のモータトルクが変化する。この変化に応じて合成電流信号も変化する。終点検出装置230は、この合成電流信号(モータトルク)がしきい値より大きくなった又は小さくなったことを検出することにより半導体ウエハ18の研磨の終点を判定する。また、終点検出装置230は、合成電流信号の微分値の変化に基づいて半導体ウエハ18の研磨の終点を判定することもできる。
【0053】
また、例えば半導体ウエハ18の研磨面に凹凸がある状態から研磨によって研磨面が平坦化される場合を考える。この場合、半導体ウエハ18の研磨面が平坦化されると第1の電動モータ14のモータトルクが変化する。この変化に応じて合成電流信号も変化する。終点検出装置230は、この合成電流信号(モータトルク)がしきい値より小さくなったことを検出することにより半導体ウエハ18の研磨の終点を判定する。また、終点検出装置230は、合成電流信号の微分値の変化に基づいて半導体ウエハ18の研磨の終点を判定することもできる。
【0054】
次ぎに、本実施形態に係る研磨装置の作用を説明する。
オペレータは、入力部150を介して、第1及び第2の電動モータ14、22を駆動して、研磨装置を稼働させる。半導体ウエハ18の研磨状態に応じて、第1の電動モータ14に要求されるトルクが変動することになるが、ターンテーブル12は一定の速度で回転
させる必要がある。このため、速度補償器104は、PID制御などによって、第1の電動モータ14の各巻線に流す電流を制御する。速度補償器104は、半導体ウエハ18の研磨状態に応じて電動モータ14に要求されるトルクが変動しても、第1の電動モータ14を一定の速度で回転駆動するので、ターンテーブル12は一定の速度で回転する。すなわち、入力部150に設定された速度指令と、微分器102で生成された第1の電動モータ14の実際の速度との間の差分に基づき、速度補償器104は、PID制御などにより各相の巻線に流すべき電流指令値を演算し、各相の電流指令を出力する。
【0055】
また、U相電流補償器110,V相電流補償器114,及びW相電流補償器118はそれぞれ、U相,V相,W相の電流の指令信号と、各相の実際の電流との差分に基づいて、PID制御などにより各相の巻線に流すべき電流信号を演算する。
【0056】
パワーアンプ130は、U相電流補償器110,V相電流補償器114,及びW相電流補償器118によって演算された各相の電流信号に応じてインバータ部518の各トランジスタを駆動することによって、U相、V相、W相それぞれについて交流電力を出力し、第1の電動モータ14を回転駆動する。
【0057】
ここで、従前は、U相,V相,W相のうちの特定の1相(例えばV相)の電流を検出し、この1相の検出電流の変化に基づいて半導体ウエハ18の研磨の終点を判定していた。しかしながら、実際には、電動モータの各相の電流にはばらつきが生じ得る。これに加えて、電動モータの各相の電流のばらつきは、特定の相の電流がいつも高くなったり低くなったりするものではなく、電動モータ間のばらつき又は研磨装置間のばらつきに起因してまちまちに生じるおそれがある。このような状況において、電動モータの特定の1相の電流を計測して終点検出を行うと、検出電流がばらつくので、半導体ウエハ18の平坦化のばらつきが発生するおそれがある。
【0058】
これに対して、本実施形態では、U相,V相,W相のうちの少なくとも2相(実施形態では、U相及びV相)の電流を検出し、検出した少なくとも2相の電流に基づいて、合成電流を生成する。そして、生成された合成電流の変化に基づいて、研磨により生じる電動モータのトルク変動を検出する。これにより、電動モータ間でまちまちに発生する各相の電流のばらつきを吸収することができる。
【0059】
この点について、
図4,5を用いて説明する。
図4は、比較例における研磨終点検出用の電流の特性を示す図である。
図4は、4つの研磨装置のサンプルA,B,C,Dそれぞれについて、従来技術のように特定の1相(例えばV相)の電流を検出して研磨終点検出に用いる場合の検出電流の推移を示すものである。一方、
図5は、第1実施形態における研磨終点検出用の電流の特性を示す図である。
図5は、4つの研磨装置のサンプルA,B,C,Dそれぞれについて、第1実施形態に基づいて生成された研磨終点検出用の合成電流の推移を示すものである。
図4,5において、横軸は時間軸を示し、縦軸は研磨終点検出用の電流値を示している。
【0060】
まず、
図4(特定の1相を検出した場合)において、電流推移252,254,256,258はそれぞれ、サンプルA,B,C,Dに対応する電流推移である。例えば電流値が低めに検出されたサンプルAに対応する電流推移252と、電流値が高めに検出されたサンプルB,Dに対応する電流推移254,258とを比較すると、両者には2(A)程度の電流値の差があることがわかる。また、サンプルCに対応する電流推移256は両者のほぼ中間ぐらいの電流となっている。このように、特定の1相の電流を研磨終点検出用として検出した場合、サンプルA,B,C,Dの電流推移にばらつきが生じる。
【0061】
これに対して
図5に示すように、サンプルA,B,C,Dに対応する電流推移262,
264,266,268は、いずれもほぼ重なり合うようにプロットされている。このように、3相の合成電流を研磨終点検出用として生成した場合、サンプルA,B,C,Dの電動モータ間でまちまちに発生する各相の電流のばらつきを吸収することができる。
【0062】
したがって、電動モータのトルク変動の検出のばらつきを抑制することができるので、半導体ウエハ18の研磨終点検出のばらつきを抑制することができる。その結果、半導体ウエハ18の平坦化のばらつきを抑制することができ、平坦化された半導体ウエハ18の歩留まりも向上させることができる。
【0063】
なお、本実施形態では、V相検出電流と、U相検出電流と、V相検出電流及びU相検出電流に基づいて算出されるW相検出電流と、電気角信号とを用いて合成電流を生成する例を示したが、これには限られない。例えば、U相,V相,W相のうち、特定の2相の電流を検出して、これらの検出電流の平均値などの統計値を合成電流とすることもできる。
【0064】
また、本実施形態では、モータドライバ101と第1の電動モータ14との間のU相,V相の電流路にU相電流検出器202,V相電流検出器204を設けて、これらの検出器によって検出された電流を終点検出用の電流として用いる例を示したが、これには限られない。例えば、U相電流検出器202,V相電流検出器204を設けずに、モータドライバ101に内蔵された電流センサ132,134によって検出されたU相,V相の電流値をモータドライバ101から出力して終点検出用の電流として用いることもできる。
【0065】
また、本実施形態では、電気角信号生成器210を設ける例を示したが、これには限られない。例えば、電気角信号生成器210を設けずに、モータドライバ101に内蔵された電気角信号生成器108によって生成された電気角信号をモータドライバ101から出力して終点検出用の電気角信号として用いることもできる。
<第2実施形態>
図6は、本発明の第2実施形態に係る研磨装置の全体構成を示す図である。第2実施形態の研磨装置は、第1実施形態と比較して、研磨終点検出系の態様が異なるだけであり、その他の構成は第1実施形態と同様である。そこで、第2実施形態では、研磨終点検出系のみを説明し、その他の構成については説明を省略する。
【0066】
図6に示すように、研磨終点検出系300は、U相電流検出器302、V相電流検出器304、センサアンプ306,308、3相平均電流演算器(合成電流生成部)320、及び終点検出装置330を備える。
【0067】
U相電流検出器302は、モータドライバ101と第1の電動モータ14との間のU相の電流路に設けられており、モータドライバ101から出力されたU相の電流を検出する。
【0068】
V相電流検出器304は、モータドライバ101と第1の電動モータ14との間のV相の電流路に設けられており、モータドライバ101から出力されたV相の電流を検出する。
【0069】
センサアンプ306は、V相電流検出器304によって検出された電流を増幅する。また、センサアンプ308は、U相電流検出器302によって検出された電流を増幅する。
3相平均電流演算器320は、センサアンプ306,308から出力された少なくとも少なくとも2相の電流に基づいて、U相,V相,W相の3相の電流の平均電流を生成する。
【0070】
例えば、3相平均電流演算器320は、センサアンプ306から出力されたV相の検出
電流をIvとし、センサアンプ308から出力されたU相の検出電流をIuとし、W相の検出電流をIwとすると、Iw=−Iv−Iuという式によって、W相の検出電流を算出する。そして、3相平均電流演算器320は、V相の検出電流Iv,U相の検出電流Iu,W相の検出電流Iwそれぞれの電流の実効値を平均化することによって、3相の電流の合成電流を生成し、合成電流信号として終点検出装置330へ出力する。
【0071】
終点検出装置330は、3相平均電流演算器320から出力された合成電流信号に基づいて、半導体ウエハ18の研磨の終点を判定する。より具体的には、終点検出装置330は、3相平均電流演算器320から出力された合成電流信号の変化に基づいて、研磨により生じる電動モータのトルク変動を検出する。そして、終点検出装置330は、検出された電動モータのトルク変動に基づいて半導体ウエハ18の研磨の終点を判定する。
【0072】
第2実施形態のように、電動モータのU相とV相とW相の3相のうち少なくとも2相の電流を検出し、検出された少なくとも2相の電流に基づいて、3相の電流の平均電流を生成して研磨の終点検出用として用いる場合であっても、少なくとも2相の検出電流に基づいて研磨終点検出を行っているので、第1実施形態と同様に、電動モータ間でまちまちに発生する各相の電流のばらつきを吸収することができる。したがって、半導体ウエハ18の終点検出のばらつきを抑制することができる。その結果、半導体ウエハ18の平坦化のばらつきを抑制することができるので、平坦化された半導体ウエハ18の歩留まりも向上させることができる。
<第3実施形態>
図7は、本発明の第3実施形態に係る研磨装置の全体構成を示す図である。第3実施形態の研磨装置は、第1実施形態と比較して、研磨終点検出系が駆動系のモータドライバに内蔵される点が異なるだけであり、その他の構成は第1実施形態と同様である。そこで、第3実施形態では、第1実施形態と異なる点のみを説明し、その他の構成については説明を省略する。
【0073】
図7に示すように、駆動系400は、第1の電動モータ14を回転駆動するモータドライバ401と、第1の電動モータ14の回転位置を検出する位置検出センサ440と、キーボートやタッチパネルなどの入力インターフェースを介してオペレータから第1の電動モータ14の回転速度の指令信号を受け付け、受け付けた指令信号をモータドライバ401に入力する入力部450とを備えている。
【0074】
モータドライバ401は、微分器402と、速度補償器404と、2相‐3相変換器406と、電気角信号生成器408と、U相PWM変調回路412と、V相PWM変調回路416と、W相PWM変調回路420と、パワーアンプ430と、電流センサ432,434とを備えている。
【0075】
また、モータドライバ401は、センサアンプ436,438と、3相‐2相変換器440と、終点検出装置460とを備えている。
微分器402、速度補償器404、電気角信号生成器408、パワーアンプ430、電流センサ432,434は、第1実施形態でそれぞれ説明した微分器102、速度補償器104、電気角信号生成器108、パワーアンプ130、電流センサ132,134と同様である。
【0076】
2相‐3相変換器406は、速度補償器404によって生成された電流指令信号と3相‐2相変換器440から出力されたフィードバック電流信号との偏差に基づいて電流補償を行う。2相‐3相変換器406は、例えばPI制御器、又はPID制御器で構成することができる。
【0077】
また、2相‐3相変換器406は、補償された電流指令信号と、電気角信号生成器408によって生成された電気角信号とに基づいて、U相電流指令信号、及びV相電流指令信号を生成する。例えば、2相‐3相変換器406は、U相電流指令信号Iucを生成する場合、補償されたU相電流指令信号を含む回転2座標系のdq信号を、電気角信号Sinφuを用いて逆dq変換(逆パーク変換)によってαβ信号へ変換し、αβ信号を逆αβ変換(逆クラーク変換)によってU相電流指令信号Iucへ変換することができる。
【0078】
また、2相‐3相変換器406は、V相電流指令信号Ivcを生成する場合、補償されたV相電流指令信号Ivcを含む回転2座標系のdq信号を、電気角信号Sinφvを用いて逆dq変換(逆パーク変換)によってαβ信号へ変換し、αβ信号を逆αβ変換(逆クラーク変換)によってV相電流指令信号Ivcへ変換することもできる。
【0079】
U相PWM変調回路412は、2相‐3相変換器406によって生成されたU相電流指令信号に基づいてパルス幅変調を行う。U相PWM変調回路412は、パルス幅変調を行うことによって、U相電流指令信号に応じた2系統のパルス信号を生成する。
【0080】
V相PWM変調回路416は、2相‐3相変換器406によって生成されたV相電流指令信号に基づいてパルス幅変調を行う。V相PWM変調回路416は、パルス幅変調を行うことによって、V相電流指令信号に応じた2系統のパルス信号を生成する。
【0081】
W相PWM変調回路420は、2相‐3相変換器406によって生成されたU相電流指令信号とV相電流指令信号とに基づいて生成されたW相電流指令信号に基づいて、パルス幅変調を行う。W相PWM変調回路420は、パルス幅変調を行うことによって、W相電流信号に応じた2系統のパルス信号を生成する。
【0082】
センサアンプ436は、電流センサ432によって検出された電流を増幅する。また、センサアンプ438は、電流センサ434によって検出された電流を増幅する。
3相‐2相変換器440には、センサアンプ436,438によってそれぞれ増幅されたV相,U相の検出電流、及び電気角信号生成器408によって生成された電気角信号が入力される。3相‐2相変換器440は、入力されたV相,U相の検出電流、及び電気角信号に基づいて、V相,U相,W相の3相の合成電流を生成する。
【0083】
例えば、3相‐2相変換器440は、V相検出電流と、U相検出電流と、V相検出電流及びU相検出電流に基づいて算出されるW相検出電流との3座標系の信号を、αβ変換(クラーク変換)によって、静止2座標系のαβ信号へ変換する。続いて、3相‐2相変換器440は、αβ信号を、電気角信号生成器408によって生成された電気角信号を用いてdq変換(パーク変換)によって、回転2座標系のdq信号へ変換する。
【0084】
そして、3相‐2相変換器440は、dq信号をフィードバック電流信号として出力するとともに、dq信号のうち、第1の電動モータ14の回転トルク成分に相当するq信号を、V相,U相,W相の3相の合成電流として終点検出装置460へ出力する。
【0085】
終点検出装置460は、3相‐2相変換器440から出力された合成電流信号に基づいて、半導体ウエハ18の研磨の終点を判定する。より具体的には、終点検出装置460は、3相‐2相変換器440から出力された合成電流信号の変化に基づいて、研磨により生じる電動モータのトルク変動を検出する。そして、終点検出装置460は、検出された電動モータのトルク変動に基づいて半導体ウエハ18の研磨の終点を判定する。
【0086】
第3実施形態のように、モータドライバ401に研磨終点検出系を内蔵した場合であっても、少なくとも2相の検出電流に基づいて研磨終点検出を行っているので、第1実施形
態と同様に、電動モータ間でまちまちに発生する各相の電流のばらつきを吸収することができる。したがって、半導体ウエハ18の終点検出のばらつきを抑制することができる。その結果、半導体ウエハ18の平坦化のばらつきを抑制することができるので、平坦化された半導体ウエハ18の歩留まりも向上させることができる。
【0087】
なお、上記各実施形態においては、3相の巻線を備えた電動モータを用いたが、本願発明は必ずしもこれに限定されるものではなく、2相以上の巻線を備えた電動モータを用いても良い。
以上説明したように、本発明は以下の形態を有する。
[形態1]
被加工物の表面を平坦化するための研磨装置であって、
研磨テーブルと、
該研磨テーブルを回転駆動する第1の電動モータと、
被加工物を保持可能な基板保持部と、
該基板保持部を回転駆動する第2の電動モータとを備え、
前記第1の電動モータにより前記研磨テーブルを回転させると共に、前記第2の電動モータにより前記基板保持部を回転させて、前記被加工物を前記基板保持部で保持しつつ前記研磨テーブルに押圧し研磨して該被加工物の表面を平坦化できるようになっており、
前記第1及び第2の電動モータのうち少なくとも一方の電動モータは、複数相の巻線を備え、
前記研磨装置は、前記複数相のうちの少なくとも2相の電流を検出する電流検出部と、
前記電流検出部によって検出された少なくとも2相の電流に基づいて、合成電流を生成する合成電流生成部と、
前記合成電流生成部によって生成された合成電流の変化に基づいて、前記研磨により生じる前記電動モータのトルク変動を検出するトルク変動検出部と、
を備えたことを特徴とする研磨装置。
[形態2]
形態1に記載の研磨装置において、さらに、
前記トルク変動検出部で検出された前記電動モータのトルク変動に基づいて、前記被加工物の表面の平坦化を示す研磨加工終点を検出する終点検出部を備えたことを特徴とする、研磨装置。
[形態3]
形態1又は2に記載の研磨装置において、
前記第1及び第2の電動モータのうち少なくとも一方の電動モータは、少なくともU相とV相とW相の3相の巻線を備えたことを特徴とする、研磨装置。
[形態4]
形態3に記載の研磨装置において、
前記第1の電動モータが、少なくともU相とV相とW相の3相の巻線を備えたことを特徴とする、研磨装置。
[形態5]
形態4に記載の研磨装置において、
前記第1の電動モータは、同期式又は誘導式のACサーボモータであることを特徴とする、研磨装置。
[形態6]
形態1に記載の研磨装置において、さらに、
前記第1及び第2の電動モータのうち少なくとも一方の電動モータの回転位置の検出値に基づいて前記電動モータの回転角度を生成する電気角信号生成部を備え、
前記電流検出部は、前記電動モータのU相とV相とW相の3相のうち少なくとも2相の電流を検出し、
前記合成電流生成部は、前記合成電流として、前記電流検出部によって検出された少なくとも2相の電流と、前記電気角信号生成部によって検出された電動モータの回転角度とに基づいて、前記電動モータのトルクに相当する前記3相の合成実効電流を生成する
ことを特徴とする研磨装置。
[形態7]
形態1に記載の研磨装置において、
前記電流検出部は、前記電動モータのU相とV相とW相の3相のうち少なくとも2相の電流を検出し、
前記合成電流生成部は、前記合成電流として、前記電流検出部によって検出された少なくとも2相の電流に基づいて、前記3相の電流の平均電流を生成する
ことを特徴とする研磨装置。
[形態8]
形態1に記載の研磨装置において、さらに、
前記第1及び第2の電動モータのうち少なくとも一方の電動モータを駆動するモータドライバを備え、
該モータドライバは、
前記電動モータの回転位置の検出値に基づいて前記電動モータの回転速度を求める演算器と、
入力インターフェースを介して入力された前記電動モータの回転速度の指令値と前記演算器によって求められた前記電動モータの回転速度との偏差に基づいて、前記電動モータへ供給する電流の指令信号を生成する速度補償器と、
前記電動モータの回転位置の検出値に基づいて前記電動モータの回転角度を生成する電気角信号生成部と、
前記各相のうちの少なくとも2つの相の電流指令値を生成する変換器と、を有し、
前記電流検出部は、前記電動モータのU相とV相とW相の3相のうち少なくとも2相の電流を検出し、
前記合成電流生成部は、前記合成電流として、前記電流検出部によって検出された少なくとも2相の電流と、前記電気角信号生成部によって検出された電動モータの回転角度とに基づいて、前記電動モータのトルクに相当する前記3相の合成実効電流を生成し、
前記変換器は、前記速度補償器によって生成された電流の指令信号と前記合成電流生成部によって生成された合成実効電流との偏差に基づいて、前記各相のうちの少なくとも2つの相の電流指令値を生成する
ことを特徴とする研磨装置。