(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記判定部は、固定値としての閾値、前記励起光もしくは前記レーザ光の強度の設定値に応じて変動する閾値、または、前記励起光を生成するレーザダイオードに流れる電流値に応じて変動する閾値に基づいて前記光ファイバの異常の発生を判定することを特徴とする請求項3に記載のファイバレーザ装置。
前記光ファイバに前記励起光を導入する励起光合波器は複数の励起光導入ポートに空きポートを有し、前記レーザ光の出力側と反対側の終端部および空きポートのうち、少なくとも一方が可視光導入ポートとされることを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項に記載のファイバレーザ装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1に開示されている、ファイバヒューズ自身の光、あるいはそれに起因する温度変化を検出するには、ファイバヒューズが伝播すると考えられる箇所全てにモニタ機構を設置する必要があり、コストが増大する。また、モニタ機構の設置箇所が少ない場合にはレーザ停止までに時間を要し、また、レーザを停止するまでは光学素子を破壊してしまうことから、修理コストが増大するという問題点がある。
【0007】
一方で、特許文献2に開示されている、励起光を検知する方法では次のような問題点がある。すなわち、DCF(Double Clad Fiber)を用いて構成されたファイバレーザ装置では励起光はクラッドを伝播するため、コアのみを損傷させるファイバヒューズが生じたとしても励起光が伝播し続ける可能性があるため、ファイバヒューズの発生を検出できない恐れがある。
【0008】
そこで、本発明の課題は、ファイバヒューズをはじめ、ファイバの断線などのファイバに発生した異常を確実に検出することが可能なファイバレーザ装置およびファイバレーザ装置の異常検出方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明のファイバレーザ装置において、光ファイバに励起光を導入してレーザ光を生成するファイバレーザ装置において、前記光ファイバのコアから漏れる信号光としての漏れ信号光を検出する検出部と、前記検出部によって検出された前記漏れ信号光の強度が減少した場合に、ファイバの異常が発生したと判定する判定部と、前記判定部によって前記ファイバの異常が発生したと判定された場合に、前記励起光の前記光ファイバへの導入を停止する停止部と、を有することを特徴とする。
このような構成によれば、ファイバヒューズをはじめ、ファイバの断線などのファイバに発生した異常を確実に検出することが可能となる。
【0010】
また、他の発明は、上記発明に加えて、前記検出部は、前記光ファイバ同士の接続部から漏れる前記漏れ信号光を検出することを特徴とする。
このような構成によれば、信号光の強度を検出するための新たな光学部品を追加する必要がなくなるので、製造コストを低減することができる。
【0011】
また、他の発明は、上記発明に加えて、前記接続部は前記光ファイバ同士が融着された融着部であり、前記検出部は前記融着部から漏れ出る前記漏れ信号光を検出することを特徴とする。
このような構成によれば、信号光の強度を検出するための新たな光学部品を追加する必要がなくなるので、製造コストを低減することができるとともに、漏れ信号光の強度が比較的安定している融着部を用いることで、確実かつ安定してファイバの異常の発生を検出することができる。
【0012】
また、他の発明は、上記発明に加えて、前記接続部は前記光ファイバ同士が所定の距離を隔てて配置されており、前記検出部は前記ファイバ同士の間から拡散して漏れ出る前記漏れ信号光を検出することを特徴とする。
このような構成によれば、信号光の強度を検出するための新たな光学部品を追加する必要がなくなるので、製造コストを低減することができるとともに、このような接続部は比較的サイズが大きいことから、検出部の設置場所を容易に確保することができる。
【0013】
また、他の発明は、上記発明に加えて、前記接続部は、前記レーザ光が出力される出力端の最も近くに位置している接続部であることを特徴とする。
このような構成によれば、装置内のいずれの位置においてファイバの異常が発生した場合でもこれを検出して進行を停止させることができる。
【0014】
また、他の発明は、上記発明に加えて、前記検出部は、前記レーザ光の出力側と反対側に設けられた全反射ファイバグレーティングから漏れ出る前記漏れ信号光を検出することを特徴とする。
このような構成によれば、全反射ファイバグレーティングから漏れ出る信号光によって発生するファイバの異常を検出し、進行を停止させることが可能になる。
【0015】
また、他の発明は、上記発明に加えて、前記検出部は、前記レーザ光を透過させ、前記励起光を減衰させる減衰部を介して前記漏れ信号光を検出することを特徴とする。
このような構成によれば、漏れ信号光に励起光が混入している場合であっても、ファイバの異常の発生を確実に検出することができる。
【0016】
また、他の発明は、上記発明に加えて、前記検出部はフォトダイオードによって構成され、前記フォトダイオードの温度を検出し、検出された温度に基づいて前記フォトダイオードの検出信号を更正する更正部を有する、ことを特徴とする。
このような構成によれば、周囲温度によるフォトダイオードの検出誤差を更正し、誤検出の発生を防止することが可能になる。
【0017】
また、他の発明は、上記発明に加えて、前記レーザ光を光ファイバによって増幅する増幅部をさらに有し、前記検出部は、前記増幅部から出力される前記レーザ光が前記光ファイバのコアから漏れ出る漏れ信号光を検出することを特徴とする。
このような構成によれば、増幅部が存在する場合であっても、ファイバの異常の発生を確実に検出して進行を停止させることができる。
【0018】
また、他の発明は、上記発明に加えて、前記漏れ信号光の強度の減少を検出してから前記励起光を停止するまでの時間を示す情報を記憶する記憶部を有することを特徴とする。
このような構成によれば、ファイバの異常がどこまで進行したかを知ることが可能になるため、修理または交換の対象となる光学部品を迅速に知ることができる。
【0019】
また、他の発明は、上記発明に加えて、前記判定手段は、固定値としての閾値、前記励起光もしくは前記レーザ光の強度の設定値に応じて変動する閾値、または、前記励起光を生成するレーザダイオードに流れる電流値に応じて変動する閾値に基づいて前記ファイバの異常の発生を判定することを特徴とする。
このような構成によれば、使用目的等に応じて閾値を設定することにより、使用目的等によらずファイバの異常の発生を確実に検出することができる。
【0020】
また、他の発明は、上記発明に加えて、前記判定手段は、前記レーザ光がパルス光である場合には、複数の周期における前記漏れ信号光の強度の平均値に基づいて前記ファイバの異常の発生を判定することを特徴とする。
このような構成によれば、パルスレーザ光を発生する場合であっても、ファイバの異常の発生を確実に検出することができる。
【0021】
また、他の発明は、上記発明に加えて、前記光ファイバに前記励起光を導入する励起光合波器は複数の励起光導入ポートに空きポートを有し、前記レーザ光の出力側と反対側の終端部および前記空きポートのうち、少なくとも一方が可視光導入ポートとされることを特徴とする。
このような構成によれば、これらの可視光導入ポートを利用して、異常の発生箇所を迅速に特定することができる。
【0022】
また、本発明のファイバレーザ装置の異常検出方法は、光ファイバに励起光を導入してレーザ光を生成するファイバレーザ装置の異常検出方法において、前記ファイバのコアから漏れる信号光としての漏れ信号光を検出し、検出された前記漏れ信号光の強度が減少した場合に、ファイバの異常が発生したと判定し、前記ファイバの異常が発生したと判定された場合に、前記励起光の前記光ファイバへの導入を停止することを特徴とする。
このような方法によれば、ファイバの異常の発生を確実に検出することが可能となる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、ファイバヒューズやファイバの断線等によるファイバの異常の発生を確実に検出することが可能なファイバレーザ装置およびファイバレーザ装置の異常検出方法を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
次に、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の実施形態ではファイバヒューズが発生した場合に、その進行を停止させる各形態について記載しているが、これに限られない。本発明はファイバの断線等、ファイバに発生した異常全般を検知する機能を有する。
【0026】
(A)第1実施形態
図1は、本発明の第1実施形態の構成例を示す図である。この図に示すように、第1実施形態に係るファイバレーザ装置1は、終端部11、光ファイバ12、励起光合波器(TFB(Tapered Fiber Bundle))13,17、HR14、増幅用光ファイバ15、OC16、励起用LD(Laser Diode)18,20、励起用LD駆動電源19,21(請求項中の「停止部」に対応)、制御部40(請求項中の「判定部」に対応)、PD(Photo Diode)50(請求項中の「検出部」に対応)、励起光カットフィルタ51(請求項中の「減衰部」に対応)、および、出力光学部60を主要な構成要素としている。なお、終端部11、光ファイバ12、励起光合波器13,17、HR14、増幅用光ファイバ15、OC16、励起用LD18,20、および、励起用LD駆動電源19,21はレーザ発振装置10を構成するものとする。
【0027】
ここで、終端部11は、例えば、種光を発生する種光源、漏れ光を検出するPD、または、光ファイバを巻回した減衰部等によって構成されている。光ファイバ12は、例えば、シングルモードファイバによって構成され、信号光としてのレーザ光を伝播する。励起光合波器13は、励起用LD18から出力されるレーザ光を、光ファイバのクラッドに励起光として導入する。HR14は、HR−FBG(High Reflectivity Fiber Bragg Grating)と呼ばれる全反射ファイバグレーティングであり、周期的に光ファイバの屈折率を変化させて形成され、増幅用光ファイバ15からの信号光を100%に近い反射率で反射する。増幅用光ファイバ15は、例えば、Er(Erbium)、Yb(Ytterbium)等の希土類のイオンがシングルモードコアに添加されたDCF(Double Clad Fiber)によって構成され、例えば、1080nmの信号光を発振して出力する。なお、DCFは、クラッドが2層になっており、励起光は内側のクラッドを伝播するように構成されている。
【0028】
OC16は、OC−FBG(Output Coupler Fiber Bragg Grating)と呼ばれ、HR14と同様に、周期的に光ファイバの屈折率を変化させて形成され、増幅用光ファイバ15からの信号光の一部(例えば、10%)を通過させるとともに、残りを反射する。なお、HR14、OC16、および、増幅用光ファイバ15によって光ファイバ共振器が構成される。
【0029】
励起光合波器17は、励起用LD20から出力されるレーザ光を、光ファイバのクラッドに励起光として導入する。励起用LD18,20は、例えば、波長が915nmで、数W以上の出力光強度を有する、1または複数のマルチモードレーザダイオードによって構成される。励起用LD駆動電源19,21は、励起用LD18,20のそれぞれを、制御部40の制御に応じて駆動する。なお、
図1に示すように、各光学部品は、光ファイバによって構成されている。融着部31〜36は、各光学部品が有する光ファイバ12を融着する際に生成される接続部分である。なお、融着の種類にもよるが、光ファイバ同士を接続するためには、各光部品の光ファイバ長は、数十cmの長さを有していることが望ましい。逆に、光ファイバ長を長くすると非線形光学効果によって、信号光の周波数からおよそ14THz低周波数に尖頭値を持つラマン散乱光が顕著に現れるようになる。ラマン散乱光は目的とする信号周波数と異なることから、なるべく抑制することが望ましく、光ファイバ長を長く取り過ぎない方が望ましい。したがって、増幅用光ファイバ15を除いた各光部品のファイバ長は、例えば、1m程度に抑えた構成を取る。
【0030】
制御部40は、
図2に示すように、CPU(Central Processing Unit)41、ROM(Read Only Memory)42、RAM(Random Access Memory)43(請求項中の「記憶部」に対応)、タイマ44、表示部45、I/F(Interface)46、および、バス47を主要な構成要素としている。ここで、CPU41は、ROM42に格納されているプログラム42aおよびデータ42bに基づいて各部を制御する。ROM42は、不揮発性の半導体記憶装置であり、プログラム42aおよびデータ42bを記憶する。RAM43は、揮発性の半導体記憶装置であり、CPU41がプログラムを実行する際のワークエリアとして動作する。タイマ44は、日時情報を生成して出力する。表示部45は、CPU41から供給された情報を表示する。I/F46は、例えば、DAC(Digital Analog Converter)およびADC(Analog Digital Converter)等によって構成され、CPU41から供給されたデジタルデータを、アナログ信号に変換して励起用LD駆動電源19,21に供給するとともに、PD50から出力されるアナログ信号をデジタルデータに変換してCPU41に供給する。バス47は、CPU41、ROM42、RAM43、タイマ44、表示部45、および、I/F46を相互に接続し、これらの間でデータの授受を可能にするための信号線群である。
【0031】
図1に戻って、PD50は、光ファイバ12のコアを伝播される信号光(この例では1080nmのレーザ光)のうち、融着部36を介して漏れ出る漏れ信号光を電気信号に変換して制御部40に供給する。励起光カットフィルタ51は、漏れ信号光に含まれる励起光(この例では915nmのレーザ光)を減衰させ、信号光を通過させる光学フィルタである。出力光学部60は、光ファイバ12から出力される信号光を、加工対象物の加工面に集光する機能を有している。
【0032】
つぎに、第1実施形態の動作について説明する。
図3は、
図1に示す第1実施形態において実行される処理の一例を説明するためのフローチャートである。このフローチャートの処理は、
図2に示すプログラム42aがCPU41に読み出されて実行されることにより実現される。このフローチャートでは、融着部36から漏れ出る漏れ信号光の強度Lpが所定の閾値Thよりも小さい場合には、光ファイバ12においてファイバヒューズが発生したとして、励起光を停止する。このフローチャートの処理が開始されると、以下のステップが実行される。
【0033】
ステップS10:CPU41は、現在、レーザ光の出力動作中であるか否かを判定し、出力動作中である場合(ステップS10:Yes)にはステップS11に進み、それ以外の場合(ステップS10:No)には処理を終了する。具体的には、レーザ光の出力動作中には、CPU41は、要求される光出力に応じた駆動データをROM42のデータ42bから取得し、当該駆動データに基づいて励起用LD駆動電源19,21を制御する。このため、励起用LD駆動電源19,21を制御している場合にはステップS11に進む。
【0034】
ステップS11:CPU41は、I/F46を介してPD50の出力信号を入力し、漏れ信号光の強度Lpを検出する。具体的には、ファイバレーザ装置1が出力動作中である場合、励起光合波器17から出力された信号光は、出力光学部60を介して加工対象物の加工面に対して照射される。このとき、光ファイバ12のコアを伝播する信号光は、コアの媒質が一部不連続となっている融着部36を通過する際に、その一部(例えば、0.数%程度)が漏れ信号光となって外部に漏れ出る。なお、このとき、クラッドから励起光の一部が外部に漏れ出るが、励起光カットフィルタ51によって励起光については影響がないレベルまで減衰される。融着部36から漏れ出た光信号は、前述したように、励起光カットフィルタ51によって励起光が減衰された後、PD50に入射される。PD50は入射された漏れ信号光を対応する電気信号に変換して、制御部40に供給する。制御部40では、I/F46がPD50から供給される漏れ信号光の強度に対応するアナログ信号を、デジタルデータに変換して、CPU41に供給する。
【0035】
ステップS12:CPU41は、ステップS11で検出した漏れ信号光の強度Lpと、閾値Thとを比較し、漏れ信号光の強度Lpが閾値Thよりも小さい場合(ステップS12:Yes)にはファイバヒューズが発生している可能性が高いとしてステップS13に進み、それ以外の場合(ステップS12:No)にはステップS11に戻って前述の場合と同様の処理を繰り返す。具体的には、ファイバヒューズが発生した場合、光ファイバ12のコアが損傷することから、信号光がコアを伝播しなくなる。このため、融着部36から漏れ出る漏れ信号光も減衰する。そこで、漏れ信号光の強度Lpが閾値Thよりも小さくなった場合には、ファイバヒューズが発生している可能性が高いと判定することができる。なお、閾値Thの求め方としては、以下の3種類を具体例として挙げることができる。
【0036】
(1)出力光の強度に拘わらず一定の値を閾値として使用する方法。
ファイバレーザ装置1では、加工対象の種類や加工目的に応じて、出力光の強度を変更することが可能である場合が多いが、第1番目の例としては、出力光の強度に拘わらず、閾値を常に一定(固定値)とすることが考えられる。なお、この場合の閾値の設定方法としては、例えば、ファイバレーザ装置1の出力強度が最も低い場合における漏れ信号光の強度をLpminとした場合に、Th=γ×Lpmin(ここで、γ<1(例えば、γ=0.1))として決定することができる。
【0037】
(2)出力光の設定値に応じた閾値を使用する方法。
ファイバレーザ装置1が出力光の強度を変更可能である場合、制御部40は出力光の設定値に応じて励起用LD駆動電源19,21を駆動する。したがって、設定値が分かれば光出力値が分かり、また、漏れ信号光の強度もある程度推定できる。漏れ信号光の強度が推定できれば、推定された漏れ信号光の強度を所定の割合だけ低い値に設定することにより閾値を得ることができる。すなわち、第2番目の例としては、例えば、設定値と閾値とを対応付けしたテーブルを作成し、設定値に応じた閾値をテーブルから読み出して使用することが考えられる。なお、設定値Svと漏れ信号光の強度Lpとの間に一定の関係(例えば、Lp=f(Sv)(f()は所定の関数))が存在する場合には、テーブルを使用するのではなく、閾値Thを、Th=α×f(Sv)として求めるようにしてもよい。ここで、α<1である。
【0038】
(3)電流モニタ値に応じた閾値を使用する方法。
制御部40は、励起用LD18,20に流れる電流をモニタしている。モニタされる電流値は、その時点における光出力を正確に反映する値である。そこで、モニタされる電流値Imを、前述した(2)の設定値Svと同様に用いることにより、閾値Thを求めることができる。具体的には、モニタされる電流値Imと閾値Thを対応付けしたテーブルを作成したり、あるいは、閾値Thを、Th=β×f(Im)として求めたりするようにしてもよい。ここで、β<1である。あるいは、モニタを2つ用意し、一方を励起光パワーモニタ(ファイバレーザ出力波長のカットフィルタを有するモニタ、もしくは、フィルタなしのモニタ)とし、他方をファイバレーザのパワーモニタ(ファイバレーザ波長のみを透過フィルタを有するモニタ)として、両者の比等の関係を用いて閾値を設定してもよい。
【0039】
なお、以上の例では、信号光がCW(Continuous Wave)である場合を想定したが、パルス状である場合には、例えば、1周期または複数の周期に亘って漏れ信号光の強度の平均値Laを求め、当該平均値Laに基づいて判断するようにしてもよい。なお、その場合の閾値については、CWの場合に比較し、パルスのデューティ比に応じて小さな値とすることができる。例えば、デューティ比が50%である場合には、閾値Thの50%の値とすることができる。また、40%である場合には、閾値Thの40%の値とすることができる。
【0040】
ステップS13:CPU41は、タイマ44から現在日時Tsを取得する。なお、タイマ44から出力される情報は、年、月、日、時刻(時、分、秒)を有するものとし、また、秒については、例えば、1/100秒単位の情報を含んでいるものとする。
【0041】
ステップS14:CPU41は、励起用LD駆動電源19,21の動作を停止させる。この結果、励起用LD18,20に駆動電流が供給されなくなるので、励起用LD18,20から励起光が出力されなくなり、ファイバレーザ装置1からの信号光の出力が停止される。例えば、融着部36近傍でファイバヒューズが発生した場合、このファイバヒューズは、励起光合波器17に向けて(図の左側に向けて)進行する。ステップS14の処理により、励起光が停止されると、ファイバヒューズに対して信号光の供給が停止されるので、ファイバヒューズは進行が停止する。
【0042】
ステップS15:CPU41は、タイマ44から現在日時Teを取得する。なお、タイマ44から出力される情報は、ステップS13の場合と同様である。
【0043】
ステップS16:CPU41は、ステップS13およびステップS15で取得したTsおよびTeを、RAM43に格納する。このようにして格納されたTsおよびTeは、表示部45に表示して視認可能としてもよい。これらのTsおよびTeを知ることにより、ファイバヒューズが発生した日時と、発生してから進行が停止するまでの時間を知ることができる。これにより、例えば、ファイバヒューズがいつ発生したかを知ることができるだけでなく、進行が停止するまでの時間を知ることでファイバヒューズがどこまで進行したかを知ることができる。より詳細には、ファイバヒューズは、約1m/secの速度で光ファイバ中を伝播することが知られており、また、ファイバヒューズは、信号光の強度が高い部分であって媒質が不連続となる部分(例えば、光ファイバ12と出力光学部60の接続部分等)で多く生じることが知られている。このため、TsとTeの差が、例えば、0.05秒である場合には、出力光学部60の接続部分から5cmの付近までファイバヒューズが進行していると推定することができることから、どの光学部品が損傷したかを知ることで、交換対象となる部品を迅速に知ることができる。もちろん、正確に知るためには、光ファイバ12のコアに可視レーザ光を入射して、伝播されなくなる点を見つけることが望ましい。また、これを行うために、励起光合波器(TFB)の空きポートや終端部11などを利用して、ファイバレーザ装置1に可視レーザ光導入部を設けておいても良い。こうすることで、損傷部の診断をより簡便にかつ迅速に行うことができ、修理に要する時間を最小限に抑えてファイバレーザ装置1の稼働率を向上させることができる。
【0044】
以上に説明したように、本発明の第1実施形態によれば、光ファイバ12の融着部36からの漏れ信号光を検出し、この漏れ信号光の強度Lpが所定の閾値Thよりも小さくなった場合にはファイバヒューズが発生したと判定するようにしたので、ファイバヒューズの発生を確実に検出することができる。また、第1実施形態では、PD50を1つだけ設けることにより、ファイバレーザ装置1の任意の部分に発生したファイバヒューズを検出することができるので、少ないコストでファイバヒューズの発生を確実に検出することができる。
【0045】
なお、各光部品の光ファイバ長は前述したように数十cmであるので、他の部品へのファイバヒューズの伝播を防ぐためには、ファイバヒューズの発生から励起用LDの停止までの時間は、例えば、100ms以内となるようにすることが望ましい。そのためには、例えば、
図3に示すフローチャートのステップS11〜S14の処理を、例えば、100ms以内に終了できる速度を有する制御部40を用いることが望ましい。もちろん、
図3に示すステップS11,S12の処理は、数ms以内に繰り返すことが望ましい。一般的な数値を示すと、ファイバヒューズの発生箇所からモニタ箇所(融着部36)までのファイバ長が20mとすると、発生から1μsより十分早くモニタ箇所に光強度低下の影響が伝播し、光量変化からPD50の電気信号の変化までが1μsのオーダであり、障害発生の判定までの時間が10ms程度、電流駆動停止信号発出から励起光強度低下までが1msのオーダである。したがって、全体でおよそ10ms強の時間で駆動を停止することが可能となることから、ファイバヒューズによる光ファイバの破損長はおよそ1cmで済むことになる。駆動方法や検出方法によっては誤検出防止の観点から障害発生の判定に遅延時間を設ける必要もあり、前述したように、例えば、パルス状の信号光を出力する場合、1周期または複数の周期分の遅延時間を設ける必要がある。例えば、100Hzのパルス状出力の場合、2周期分の遅延を設けるとすると、0.02秒程度の遅延時間を設ければよい。
【0046】
このようにすることで、ファイバヒューズが発生したとしても、適切なタイミングで励起用LDを停止させてファイバヒューズの進行を抑制することができる。従って、本発明によれば、光部品の故障を最小限に抑え、修理が必要な場合でもそのコストを抑えることが可能である。特に、融着点からファイバヒューズが始まった場合には、全ての光部品を再利用することも可能である。
【0047】
以上の実施形態のように、ファイバレーザの光出力異常の発生から励起光の遮断までの時間が10ms程度の場合、ファイバヒューズの進行は1cm程度で停止する。このとき、各部品のファイバ長が5cm程度以上あれば、ファイバヒューズの発生箇所を切断し、残存ファイバの融着を行うことで、光部品を再利用することができる。この場合、各光部品の光ファイバ長が5〜30cm程度であれば、ファイバヒューズ発生後の再利用が可能かつラマン散乱も効果的に抑制されるので好ましい。
【0048】
更に、とりわけCW駆動のファイバレーザにおいて、前述した障害発生の判定までの時間がDCFのコアに添加されたドーパントの緩和時間(1ms程度)より短くなると、ファイバレーザ光出力異常の発生から当該出力停止までの時間において、緩和時間が支配的になる。この場合、ファイバヒューズは1mm程度で停止するので、融着に必要なファイバ長を例えば5mm程度とすれば、各部品のファイバ長としては1cm程度以上、より具体的には1〜5cm程度とすることで、ラマン散乱を抑制しつつ、各光部品の再利用も可能にできるので好ましい。
【0049】
以上の関係をまとめると、次のようになる。光部品のファイバ長(片端)Lとし、融着に必要な光部品の最小ファイバ長をLminとし、ファイバヒューズの進行速度をv(v>0)とし、ヒューズ発生から遮断までの時間をτ(τ=検出時間+判定時間+光強度低下時間)とした場合、以下の式が成立する。なお、「⇔」はその左右の式が等価であることを示している。
【0050】
Lmin<L−v×τ ⇔ τ<(L−Lmin)/v ⇔ τ<Δ/v
ここで、Δ=L−Lmin(Δ>0)である。
【0051】
すなわち、各光部品の光ファイバ長は、ファイバヒューズ発生から停止までの間に進行する長さ(v×τ)だけ減少したときに、融着に必要な光部品の最小ファイバ長Lminより長く残存するように設定される。または、時間τは、ファイバヒューズが長さΔだけ進行するより短い時間に設定される。
【0052】
(B)第2実施形態
図4は、本発明の第2実施形態の構成例を示すブロック図である。この図において、
図1と対応する部分には同一の符号を付してその説明を省略する。
図4に示す第2実施形態のファイバレーザ装置1Aでは、
図1の場合と比較して、励起用LD20、励起用LD駆動電源21、および、励起光合波器17が除外されている。つまり、
図1の実施形態では、双方向励起方式が採用されているが、第2実施形態では前方励起方式が採用されている。また、PD50は、OC16と出力光学部60の間の融着部71からの漏れ信号光を検出する。
【0053】
第2実施形態では、励起方法が第1実施形態と異なっているが、第1実施形態と同様に
図3に示す処理によって、ファイバヒューズを検出して進行を停止させることができる。なお、第2実施形態では、励起用LD20が存在しないので、それに応じて、ステップS12の閾値Thを設定することが望ましい。
【0054】
(C)第3実施形態
図5は、本発明の第3実施形態の構成例を示すブロック図である。この図において、
図1と対応する部分には同一の符号を付してその説明を省略する。
図5に示す第3実施形態のファイバレーザ装置1Bでは、
図1の場合と比較して、励起用LD18、励起用LD駆動電源19、および、励起光合波器13が除外されている。つまり、
図1の実施形態では、双方向励起方式が採用されているが、第3実施形態では後方励起方式が採用されている。後方励起方式の場合、励起光は融着部36側には出力されないので、励起光カットフィルタ51は除外されている。
【0055】
第3実施形態では、励起方法が第1実施形態と異なっているが、第1実施形態と同様に
図3に示す処理によって、ファイバヒューズを検出して進行を停止させることができる。なお、第3実施形態の場合、励起用LD18が存在しないので、それに応じて、ステップS12の閾値Thを設定することが望ましい。
【0056】
(D)第4実施形態
図6は、本発明の第4実施形態の構成例を示すブロック図である。
図6に示す第4実施形態のファイバレーザ装置1Cでは、
図1,4,5に示すレーザ発振装置10,10A,10Bがレーザ発振装置70として記載されている。レーザ発振装置70から出力された信号光は、後段のレーザ増幅装置110に入力され、光強度が増幅された後、出力光学部60を介して出力される。ここで、レーザ増幅装置110は、光ファイバ112、励起光合波器113,117、増幅用光ファイバ115、励起用LD118,120、および、励起用LD駆動電源119,121を主要な構成要素としている。融着部131〜134は、各光部品が有する光ファイバ112が融着されて形成されたものである。制御部40は、励起用LD駆動電源119,121を制御するとともに、レーザ発振装置70に内蔵されている励起用LD駆動電源を制御する。
【0057】
第4実施形態では、レーザ発振装置70から出力された信号光が光ファイバ112のコアに入射され、クラッドには励起用LD118,120から出力される励起光が入射される。増幅用光ファイバ115は、コアに入射された信号光を、クラッドに入射された励起光に基づいて増幅し、出力光学部60から出力する。融着部134からの漏れ信号光は、励起光カットフィルタ51を介してPD50に入射される。PD50は、漏れ信号光を電気信号に変換して制御部40に供給する。
【0058】
つぎに、第4実施形態の動作について説明する。第4実施形態では、レーザ発振装置70およびレーザ増幅装置110の双方において、ファイバヒューズが発生する可能性がある。仮に、レーザ増幅装置110の出力側においてファイバヒューズが発生した場合、ファイバヒューズは、レーザ増幅装置110内を図の右から左へと伝播するため、ファイバヒューズよりも右側へは信号光は伝播しない状態となる。このため、
図3の処理により、前述した各実施形態と同様の動作によって、ファイバヒューズを検出して進行を停止させることができる。一方、レーザ発振装置70の出力側でファイバヒューズが発生した場合も同様に、レーザ発振装置70内を図の右から左へと光ファイバ12を伝播するため、ファイバヒューズよりも右側へは信号光は伝播しない状態となるため、
図3の処理により、ファイバヒューズを検出することができる。なお、ステップS14の処理においては、レーザ発振装置70およびレーザ増幅装置110の双方の励起用LDを停止させることにより、ファイバヒューズの進行を停止させることができる。また、第4実施形態の場合、レーザ増幅装置110は2つの励起用LD118,120を有し、レーザ発振装置70は少なくとも1つの励起用LDを有するので、これらの励起用LDの個数に応じて閾値Thを設定することが望ましい。
【0059】
(E)第5実施形態
図7は、本発明の第5実施形態の構成例を示すブロック図である。なお、
図7において、
図6と対応する部分には同一の符号を付してあるのでその説明を省略する。
図7に示す第5実施形態のファイバレーザ装置1Dでは、
図6の場合と比較して、励起光合波器117、励起用LD120、および、励起用LD駆動電源121が除外されている。また、PD150は、融着部171からの漏れ信号光を検出する。それ以外の構成は、
図6の場合と同様である。
【0060】
第5実施形態では、第4実施形態の場合と同様に、
図3の処理に基づいて、ファイバヒューズを検出し、励起用LDを停止して、ファイバヒューズの進行を停止させることができる。なお、第5実施形態では、レーザ増幅装置110Aは、励起用LD118のみを有することから、ステップS14の処理では、レーザ発振装置70が有する励起用LD駆動電源とともに、励起用LD駆動電源119を停止させる。また、閾値Thについては、励起用LDの個数等に応じて設定することが望ましい。
【0061】
(F)第6実施形態
図8は、本発明の第6実施形態の構成例を示すブロック図である。なお、
図8において、
図6と対応する部分には同一の符号を付してあるのでその説明を省略する。
図8に示す第6実施形態のファイバレーザ装置1Eでは、
図6の場合と比較して、励起光合波器113、励起用LD118、および、励起用LD駆動電源119が除外されている。それ以外の構成は、
図6の場合と同様である。
【0062】
第6実施形態では、第4実施形態の場合と同様に、
図3の処理に基づいて、ファイバヒューズを検出し、励起用LDを停止して、ファイバヒューズの進行を停止させることができる。第9実施形態では、レーザ増幅装置110Eは、励起用LD120のみを有することから、ステップS14の処理では、レーザ発振装置70が有する励起用LD駆動電源とともに、励起用LD駆動電源121を停止させる。なお、
図8の例では、PD50と融着部134の間には、励起光カットフィルタ51を設けるようにしたが、レーザ発振装置70が後方励起方式である場合には、励起光は融着部134には到達しないことから、励起光カットフィルタ51を除外することができる。
【0063】
(G)第7実施形態
図9は、本発明の第7実施形態の構成例を示すブロック図である。
図9に示す第7実施形態のファイバレーザ装置1Fは、制御部40、PD50,150、励起光カットフィルタ51,151、出力光学部60、レーザ発振装置70、レーザ増幅装置80、および、光ファイバ112を主要な構成要素としている。ここで、レーザ発振装置70は、
図1,4,5に記載されているレーザ発振装置10,10A,10Bのいずれかによって構成されている。また、レーザ増幅装置80は、
図6,7,8に記載されているレーザ増幅装置110,110A,110Bのいずれかによって構成されている。PD50は融着部134からの漏れ信号光を励起光カットフィルタ51を介して検出し、PD150は融着部131からの漏れ信号光を励起光カットフィルタ151を介して検出する。
【0064】
第7実施形態では、
図3と同様の処理によって動作するが、PD50,151のそれぞれについてステップS11,S12の処理が実行される。具体的には、PD50,151のそれぞれの漏れ信号光の強度Lp1,Lp2がステップS11で検出され、ステップS12でそれぞれの閾値Th1,Th2と比較され、Lp1<Th1およびTh2<Lp2のいずれか一方、または、双方が満たされる場合にはステップS13に進む。そして、ステップS14では、制御部40はレーザ発振装置70およびレーザ増幅装置80の双方の励起用LDを停止する。これにより、レーザ発振装置70またはレーザ増幅装置80のいずれでファイバヒューズが発生した場合でも、励起用LDを停止して、ファイバヒューズの進行を停止させることができる。また、第7実施形態では、ステップS16において、TsおよびTeともに、Lp1およびLp2を格納しておけば、レーザ発振装置70およびレーザ増幅装置80のどちらでファイバヒューズが発生したかを知ることができる。具体的には、Lp1<Th1およびTh2<Lp2の双方が成立する場合には、融着部131よりも左(図の左)側でファイバヒューズが発生したと判定することができる。また、Th1<Lp1のみが成立する場合には、融着部131と融着部134の間でファイバヒューズが発生したと判定することができる。
【0065】
(H)第8実施形態
図10は、本発明の第8実施形態の構成例を示すブロック図である。
図10において
図1と対応する部分には同一の符号を付してあるのでその説明は省略する。
図10に示す第8実施形態のファイバレーザ装置1Gでは、
図1の場合と比較して、融着部31からの漏れ信号光を検出するためのPD250および励起光カットフィルタ251が設けられ、PD250は制御部40に接続されている。その他の構成は、
図1の場合と同様である。
【0066】
図10に示す第8実施形態では、励起光合波器13の左側で発生するファイバヒューズについても検出の対象とすることができる。すなわち、HR14は、99%近い信号光を反射して増幅用光ファイバ15に戻すが、例えば、1%程度の信号光を漏れ信号光として通過してしまう。ここで、ファイバレーザ装置1Gの出力が1kW程度である場合、漏れ信号光は10W程度となる。このため、励起光合波器13の左側においてもファイバヒューズが発生することが想定される。そこで、第8実施形態では、融着部31から漏れ出る漏れ信号光をPD250によって検出し、漏れ信号光の強度が閾値Thよりも小さくなった場合には励起光合波器13の左側でファイバヒューズが発生したと判定して励起用LD18,20を停止することができる。具体的に説明すると、ファイバヒューズが発生していない正常な状態においては、増幅用光ファイバ15からの信号光の一部が漏れ信号光としてHR14の左側に出力されるので、この漏れ信号光は励起光合波器13を介して出力され、融着部31に設けられたPD250によって検出される。このため、正常状態では、PD250によって漏れ信号光の強度Lpが検出される。ここで、終端部11の近傍でファイバヒューズが発生したとすると、このファイバヒューズは、図の右側に向かって進行する。ファイバヒューズが融着部31よりも右側に移動したとすると、このファイバヒューズによってHR14からの漏れ信号光が遮断されるので、PD250によって検出される漏れ信号光の強度Lpが低下する。このため、
図3のステップS12の処理により、Yesと判定されてステップS13以降の処理に進み、励起用LD18,20の駆動が停止されるため、ファイバヒューズの進行が停止する。なお、
図10の実施形態では、閾値Thとしては、例えば、HR14の左側に出力される漏れ信号光の強度の、例えば、1/10程度とすることができる。もちろん、これ以外の値でもよい。
【0067】
(I)第9実施形態
図11は、本発明の第9実施形態の構成例を示すブロック図である。
図11において
図10と対応する部分には同一の符号を付してあるのでその説明は省略する。
図11に示す第9実施形態のファイバレーザ装置1Hでは、
図10の場合と比較して、終端部11がPD11Aに置換され、また、PD250および励起光カットフィルタ251が除外されている。その他の構成は
図10の場合と同様である。
【0068】
図11に示す第9実施形態では、
図10の場合と同様に、HR14の左側に漏れ出てくる漏れ信号光をPD11Aで検出し、漏れ信号光の強度Lpが所定の閾値Thよりも小さくなった場合にはファイバヒューズが発生したと判定し、励起用LD18,20の駆動を停止する。これにより、
図10の場合と同様に、励起光合波器13の左側で発生するファイバヒューズについても検出の対象として、ファイバヒューズの進行を停止させることができる。なお、閾値Thの設定方法としては、第8実施形態の場合と同様に設定することができる。
【0069】
(J)第10実施形態
図12は、本発明の第10実施形態の構成例を示すブロック図である。
図12において
図9と対応する部分には同一の符号を付してあるのでその説明は省略する。
図12に示す第10実施形態のファイバレーザ装置1Iでは、
図9の場合と比較して、PD50に対してサーミスタ52が熱的に結合されて配置されるとともに、サーミスタ52が制御部40に接続されている。また、PD150に対してサーミスタ152が熱的に結合されて配置されるとともに、サーミスタ152が制御部40に接続されている。その他の構成は、
図9の場合と同様である。
【0070】
図12に示す第10実施形態では、制御部40はPD50,150からの検出信号をサーミスタ52,152によって更正する。すなわち、PD50,150の検出電圧は、周囲温度に逆比例することから、制御部40はサーミスタ52,152によって検出された温度に基づいて検出電圧を周囲温度に依存しないように更正する。これにより、PD50,150により、漏れ信号光の強度を周囲温度によらず正確に検出することが可能になる。
【0071】
第10実施形態では、第7実施形態の場合と同様に、レーザ発振装置70またはレーザ増幅装置80のいずれにおいてファイバヒューズが発生したかを知ることができるとともに、
図10,11の場合と同様に、HR14の左側に漏れ出る漏れ信号光によって発生するファイバヒューズも検出することができる。すなわち、レーザ発振装置70の図示せぬ終端部11の近辺でファイバヒューズが発生し、
図12の右側に進行し、励起光合波器13に到達すると、励起光合波器13が破壊され、励起用LD18からの励起光の入射が遮断される。このため、例えば、レーザ発振装置70およびレーザ増幅装置80において使用される励起用LDが同じ光強度とし、励起光合波器13における励起光の入射が完全に絶たれたとすると、信号光の強度は融着部131においては1/2に減衰し、融着部134においては3/4に減衰する。そこで、漏れ信号光の強度が前述のように1/2および3/4に減衰した場合には、終端部11の近辺でファイバヒューズが発生したと判定することができる。このとき、PD50,150の検出信号は、サーミスタ52,152によって更正されているので、周囲温度の変化によらず、検出信号の変化を確実に検出することができる。また、第10実施形態では、励起用LDから励起光合波器の間におけるファイバヒューズの発生に関しても検出することができる。例えば、励起用LD18と励起光合波器13の間でファイバヒューズが発生した場合、PD150とPD50の出力が減少する。例えば、各励起用LDが5個のLDで形成されている場合、1つの励起用LDの光ファイバにおいてファイバヒューズが発生したときは、PD150では1/10だけ出力が減少し、PD50では1/20だけ出力が減少する。したがって、漏れ信号光の強度を正確に検出することで、励起用LDと励起光合波器の間で発生するファイバヒューズを検出して進行を停止させることができる。
【0072】
なお、以上では、PD50,150の双方に対してサーミスタ52,152を設けるようにしたが、何れか一方に対して設けるようにし、前述した漏れ信号光の強度変化のいずれかを検出した場合に、励起用LDを遮断するようにしてもよい。
【0073】
また、以上の各実施形態において、閾値Thとして、駆動する励起LDの個数に略比例した値を設定したり、駆動する励起LDの個数とその駆動電流により与えられる出力光の強度に対応した値を設定してもよい。これにより、例えば1つの励起LDにファイバヒューズが発生して、本来得られるべきファイバレーザの出力光強度の範囲を逸脱した場合でも、そのわずかな出力光変動からファイバヒューズを検知して適切にその進行を停止することができる。
【0074】
また、特に実施形態4〜7、10のMOPA構成の場合には、第10実施形態に示したように、レーザ発振装置とレーザ増幅装置のそれぞれについて異なる比例定数を与え、上記駆動する励起LDの個数に略比例した値や、駆動する励起LDの個数とその駆動電流により得られる出力光の強度に対応する値を乗じ、それらを総合して得られる出力光の強度に対応する閾値を設定することもできる。このようにすることで、ファイバレーザの動作状態に対応した閾値をより精密に設定でき、精度の高いファイバヒューズ検知を行うことができる。
【0075】
また、第7、第9実施形態などのように、レーザ発振装置とレーザ増幅装置のそれぞれにおいて出力光をモニタしてファイバヒューズの発生箇所を判定する場合、第7実施形態に記載された判定プロセスを行う判定部を設け、これを制御部40内に配置したり外部に接続することで、判定を自動的に行うことができる。さらに、その判定結果を表示する表示部を設けても良く、外部装置(PC等)に信号出力する出力装置を設けても良い。
【0076】
(K)変形実施形態
なお、上記の各実施形態は、一例であって、これ以外にも各種の変形実施態様が存在する。例えば、以上の各実施形態では、融着部からの漏れ信号光を検出するようにしたが、
図13に示すように、光学系(光ファイバまたは集光レンズ等)同士が所定の距離を隔てて光学的に接続されている部分からの漏れ信号光を検出するようにしてもよい。
図13の例では、信号光は接続部160を経由し、光ファイバ164を通過し、出力光学部165を介して加工対象物に対して照射される。ここで、接続部160は、出力光学部161と入力光学部162を有しており、出力光学部161と入力光学部162は所定の間隔を隔てて配置されている。PD163は、出力光学部161のコアから漏れ出る漏れ信号光を入射し、対応する電気信号に変換して制御部40に供給する。このように、融着部以外であっても、融着部に限定されることなく、コアからの漏れ信号光が検出することができる。
【0077】
また、以上の各実施形態では、励起光カットフィルタによって励起光を減衰させるようにしたが、例えば、融着部の前段にコア光以外の光を外部に逃がすための光ファイバを光ファイバ12に融着し、これによって励起光を減衰させることも可能である。もちろん、これ以外の方法であってもよい。
【0078】
また、以上の各実施形態では、励起用LDは励起用LD駆動電源によって駆動するようにしたが、制御部40が各励起用LDを直接駆動するようにしたり、あるいは、制御部からの制御信号に基づいてFET(Field Effect Transistor)を制御し、当該FETにより各励起用LDに流れる電流を制御するようにしたりしてもよい。
【0079】
また、以上の各実施形態では、ファイバヒューズが発生した場合には、全ての励起用LDの動作を停止するようにしたが、一部の励起用LDの動作を停止することでファイバヒューズの進行を停止できる場合には、一部の励起用LDの動作を停止するようにしてもよい。
【0080】
また、以上の各実施形態では、
図2に示す制御部40によって、ファイバヒューズの発生を判定するようにしたが、これ以外にも、例えば、ロジック回路を用いたハードウエアを用いたり、あるいは、FPGA(Field-Programmable Gate Array)を用いたりしてもよい。