特許第5863684号(P5863684)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5863684プライマー組成物及びそれを用いた光半導体装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5863684
(24)【登録日】2016年1月8日
(45)【発行日】2016年2月17日
(54)【発明の名称】プライマー組成物及びそれを用いた光半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/56 20100101AFI20160204BHJP
   C09D 5/00 20060101ALI20160204BHJP
   C09D 7/12 20060101ALI20160204BHJP
   C09D 183/16 20060101ALI20160204BHJP
   C09D 133/04 20060101ALI20160204BHJP
【FI】
   H01L33/00 424
   C09D5/00 D
   C09D7/12
   C09D183/16
   C09D133/04
【請求項の数】7
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-21399(P2013-21399)
(22)【出願日】2013年2月6日
(65)【公開番号】特開2014-157849(P2014-157849A)
(43)【公開日】2014年8月28日
【審査請求日】2015年1月27日
(31)【優先権主張番号】特願2013-7387(P2013-7387)
(32)【優先日】2013年1月18日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(72)【発明者】
【氏名】小材 利之
【審査官】 高椋 健司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−179694(JP,A)
【文献】 特開2010−168496(JP,A)
【文献】 特開2012−144652(JP,A)
【文献】 特開昭60−163968(JP,A)
【文献】 特開2010−121077(JP,A)
【文献】 特開2003−020446(JP,A)
【文献】 特開2004−339450(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0108875(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00−33/64
C09D 1/00−10/00,101/00−201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光半導体素子を実装した基板と、前記光半導体素子を封止する付加反応硬化型シリコーン組成物の硬化物とを接着するプライマー組成物であって、
(A)1分子中に1個以上のシラザン結合を有するシラザン化合物又はポリシラザン化合物、
(B)1分子中に一つ以上のSiH基を含有するアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルのどちらか一方、もしくは両方を含むアクリル樹脂、
(C)溶剤、
を含有するものであることを特徴とするプライマー組成物。
【請求項2】
前記(A)成分が分岐構造を有するポリシラザン化合物であり、前記(C)成分の配合量が組成物全体の70質量%以上であることを特徴とする請求項1に記載のプライマー組成物。
【請求項3】
前記プライマー組成物が、さらに、
(D)シランカップリング剤、
を含有するものであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のプライマー組成物。
【請求項4】
光半導体素子を実装した基板と、前記光半導体素子を封止する付加反応硬化型シリコーン組成物の硬化物とを、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のプライマー組成物により接着してなるものであることを特徴とする光半導体装置。
【請求項5】
前記光半導体素子が、発光ダイオード用のものであることを特徴とする請求項4に記載の光半導体装置。
【請求項6】
前記基板の構成材料が、ポリアミド、セラミックス、シリコーン、シリコーン変性ポリマー、及び液晶ポリマーのいずれかであることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の光半導体装置。
【請求項7】
前記付加反応硬化型シリコーン組成物の硬化物が、ゴム状のものであることを特徴とする請求項4乃至請求項6のいずれか1項に記載の光半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光半導体素子を実装した基板と、前記光半導体素子を封止する付加反応硬化型シリコーン組成物の硬化物とを接着するプライマー組成物、及び該組成物を用いた光半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光半導体装置として知られるLEDランプは、光半導体素子として発光ダイオード(LED)を有し、基板に実装されたLEDを透明な樹脂からなる封止材で封止した構成である。このLEDを封止する封止材としては、従来からエポキシ樹脂ベースの組成物が汎用されていた。しかし、エポキシ樹脂ベースの封止材では、近年の半導体パッケージの小型化やLEDの高輝度化にともなう発熱量の増大や光の短波長化によってクラッキングや黄変が発生しやすく、信頼性の低下を招いていた。
【0003】
そこで、優れた耐熱性を有する点から、封止材としてシリコーン組成物が使用されている(例えば、特許文献1)。特に、付加反応硬化型のシリコーン組成物は、加熱により短時間で硬化するため生産性がよく、LEDの封止材として適している(例えば、特許文献2)。しかしながら、LEDを実装する基板と、付加反応硬化型シリコーン組成物の硬化物からなる封止材との接着性は十分と言えるものではない。
【0004】
一方、LEDを実装する基板として、機械的強度に優れる点からポリフタルアミド樹脂が多用されており、そこでその樹脂に対して有用なプライマーが開発されている(例えば、特許文献3)。しかしながら、ハイパワーな光量を必要とするLEDに関してはポリフタルアミド樹脂では耐熱性がもたず変色してしまい、最近はポリフタルアミド樹脂よりも耐熱性に優れるアルミナに代表されるセラミックスが基板となる場合が多くなってきている。このアルミナセラミックスから構成される基板と、該付加反応硬化型シリコーン組成物の硬化物との間では剥離を生じやすい。
【0005】
また、シリコーン組成物は、一般に気体透過性に優れるため、外部環境からの影響を受けやすい。LEDランプが大気中の硫黄化合物や排気ガス等に曝されると、硫黄化合物等がシリコーン組成物の硬化物を透過して、該硬化物で封止された基板上の金属電極、特にAg電極を経時的に腐食して黒変させる。これに対する対策としてSiH基を含有するアクリル酸エステルの重合体又は、アクリル酸エステルとの共重合体、メタクリル酸エステルとの共重合体、アクリル酸エステルとメタクリル酸エステルとの共重合体(特許文献4)、ポリシラザン化合物(特許文献5)を用いる事で黒変を抑えるプライマーが開発されている。しかしながら、SiH基を含有するアクリル重合体を用いると、プライマー膜の耐熱性が不充分であり、近年の高い電流が流れる半導体素子周辺で樹脂が劣化してしまう。これに対しポリシラザン化合物は耐熱性に優れるもののポリシラザンの膜が固い為、マルチチップと呼ばれる光半導体素子が多数搭載されている実装基板上に塗布すると、膜が割れてしまう。
尚、本発明に関連する従来技術として、上述した文献と共に下記文献(特許文献6〜8)を挙げることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−198930号公報
【特許文献2】特開2004−292714号公報
【特許文献3】特開2008−179694号公報
【特許文献4】特開2010−168496号公報
【特許文献5】特開2012−144652号公報
【特許文献6】特開2004−339450号公報
【特許文献7】特開2005−93724号公報
【特許文献8】特開2007−246803号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、光半導体素子を実装した基板と、光半導体素子を封止する付加反応硬化型シリコーン組成物の硬化物との接着性を向上させるとともに、基板上に形成された金属電極の腐食を防止し、かつプライマー自身の耐熱性・可とう性を向上させることのできるプライマー組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明は、
光半導体素子を実装した基板と、前記光半導体素子を封止する付加反応硬化型シリコーン組成物の硬化物とを接着するプライマー組成物であって、
(A)1分子中に1個以上のシラザン結合を有するシラザン化合物又はポリシラザン化合物、
(B)1分子中に一つ以上のSiH基を含有するアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルのどちらか一方、もしくは両方を含むアクリル樹脂、
(C)溶剤、
を含有するプライマー組成物を提供する。
【0009】
このようなプライマー組成物であれば、光半導体素子を実装した基板と、光半導体素子を封止する付加反応硬化型シリコーン組成物の硬化物との接着性を向上させるとともに、基板上に形成された金属電極の腐食を防止し、かつプライマー自身の耐熱性・可とう性を向上させることができる。
【0010】
このとき、前記(A)成分が分岐構造を有するポリシラザン化合物であり、前記(C)成分の配合量が組成物全体の70質量%以上であることが好ましい。
【0011】
このような(A)成分であれば、プライマー自身の耐熱性・可とう性をより向上させることができる。また、(C)成分を70質量%以上含有することで、プライマー組成物の作業性を良くすることができる。
【0012】
また、前記プライマー組成物が、さらに、
(D)シランカップリング剤、
を含有するものであることが好ましい。
【0013】
このようにシランカップリング剤を含有させることでプライマー組成物の接着性をより向上させることができる。
【0014】
また、本発明は、光半導体素子を実装した基板と、前記光半導体素子を封止する付加反応硬化型シリコーン組成物の硬化物とを、前記プライマー組成物により接着してなる光半導体装置を提供する。
【0015】
このような光半導体装置であれば、基板と付加反応硬化型シリコーン組成物の硬化物とが強固に接着され、基板上に形成された金属電極の腐食も防止することができるため、高い信頼性を有するものとなる。
【0016】
このとき、前記光半導体素子が、発光ダイオード用のものであることが好ましい。
【0017】
このように、本発明の光半導体装置は、発光ダイオード用として好適に用いることができる。
【0018】
また、前記基板の構成材料が、ポリアミド、セラミックス、シリコーン、シリコーン変性ポリマー、及び液晶ポリマーのいずれかであることが好ましい。
【0019】
本発明の光半導体装置は、プライマーの接着性が優れているため、このような基板であっても接着性を損なうことなく用いることができる。
【0020】
さらに、前記付加反応硬化型シリコーン組成物の硬化物が、ゴム状のものであることが好ましい。
【0021】
このような付加反応硬化型シリコーン組成物の硬化物であれば、より強固な接着性を有し、基板上に形成された金属電極、特にAg電極の腐食をより効果的に防止することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明のプライマー組成物であれば、光半導体素子を実装した基板と、光半導体素子を封止する付加反応硬化型シリコーン組成物の硬化物との接着性を向上させるとともに、基板上に形成された金属電極の腐食を防止することが可能で、かつプライマー自身の耐熱性・可とう性を向上させることができ、さらに該組成物を光半導体装置に用いることで、高信頼性を有するものを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明に係る光半導体装置の一例を示すLEDランプの断面図である。
図2】本発明の実施例における接着性試験用テストピースを説明する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、1分子中に1個以上のシラザン結合を含有するシラザン化合物又はポリシラザン化合物と、SiH基を含有するアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルを含むアクリル樹脂を組成物に配合することで、従来までのポリシラザン化合物の欠点であった脆さを克服し、かつ上記アクリル樹脂の欠点であった耐熱性の向上を図ることができることを見出した。さらに、光半導体素子を実装した基板と、この光半導体素子を封止する付加反応硬化型シリコーン組成物の硬化物との接着にこの組成物を用いれば、強固に接着させるとともに、基板上に形成された金属電極、特にAg電極の腐食を防止可能で、かつプライマー膜自身の耐熱性・可とう性を向上させることができることから、該組成物を用いた光半導体装置は高信頼性を有するものとなることを見出し、本発明をなすに至った。
【0025】
即ち、本発明のプライマー組成物は、
(A)1分子中に1個以上のシラザン結合を有するシラザン化合物又はポリシラザン化合物、
(B)1分子中に一つ以上のSiH基を含有するアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルのどちらか一方、もしくは両方を含むアクリル樹脂、
(C)溶剤、
を含有するものである。
以下、このプライマー組成物の各成分について説明する。
【0026】
<プライマー組成物>
[(A)成分]
本発明のプライマー組成物に含有される(A)成分は、1分子中に1個以上のシラザン結合を有するシラザン化合物又はポリシラザン化合物であり、例えば、LEDを実装する基板、特にセラミックス基板やポリアミド樹脂基板に対して十分な接着性を与えるとともに、強固な硬い膜を形成し、金属電極(特にAg電極)の経時的な腐食を抑制するものである。
【0027】
1分子中に1個以上のシラザン結合を有するシラザン化合物としては、下記に示す構造を有する化合物を挙げることができる。
【化1】
(式中、Rは水素原子又は1価の有機基を示す。)
【0028】
ここで、Rの1価の有機基としては、炭素数1〜10、特に炭素数1〜3の非置換又は置換1価炭化水素基が好ましい。1価炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、オクチル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基等のアルケニル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基等や、これらの基の水素原子の一部又は全部がフッ素、臭素、塩素等のハロゲン原子、シアノ基等で置換されたもの、例えばクロロメチル基、クロロプロピル基、ブロモエチル基、トリフルオロプロピル基、シアノエチル基等が挙げられる。Rとしては、水素原子、メチル基、エチル基が好ましく、水素原子が特に好ましい。
【0029】
1分子中に1個以上のシラザン結合を有するポリシラザン化合物としては、R’Si(NR)2/2単位及び/又はR’Si(NR)3/2単位(ここで、Rは上記と同じであり、R’は1価の有機基である。)を有するものを用いることができ、特に、R’Si(NR)3/2単位で示される分岐構造を有するポリシラザン化合物が好ましい。
【0030】
ここで、R’としては、上記Rの1価の有機基として例示した非置換又は置換1価炭化水素基と同様のものを例示できるほか、(メタ)アクリロキシプロピル基、(メタ)アクリロキシメチル基等の(メタ)アクリロキシ基含有基(本発明において「(メタ)アクリロキシ」は「アクリロイルオキシ」及び/又は「メタクリロイルオキシ」を示す。以下、同じ)、メルカプトプロピル基、メルカプトメチル基等のメルカプト基含有基、グリシドキシプロピル基、グリシドキシメチル基等のエポキシ基含有基等を例示できる。これらの中で、(メタ)アクリロキシ基含有基、メルカプト基含有基、エポキシ基含有基、アルケニル基が好ましく、特に(メタ)アクリロキシ基含有基が好ましい。また、R’は異なる2種以上のものを分子中に有していてもよい。
【0031】
上記ポリシラザン化合物のGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)測定による重量平均分子量は、200〜10,000であることが好ましく、より好ましくは500〜8,000、特に好ましくは1,000〜5,000である。分子量が200以上であれば、十分な被膜強度を得ることができ、10,000以下であれば、溶媒への溶解性が低下することがないため好ましい。
【0032】
上記ポリシラザン化合物の具体的な構造としては、例えば下記に示すものを挙げることができる。
【化2】
(式中、mは3〜8の整数であり、Aは(メタ)アクリロキシ基含有基、メルカプト基含有基、エポキシ基含有基又はビニル基であり、a1、b1は0≦a1<1、0<b1≦1で、a1+b1=1を満足する数、a2、b2は0<a2<1、0<b2<1で、a2+b2=1を満足する数、a3、b3は0≦a3<1、0<b3≦1で、a3+b3=1を満足する数である。)
【0033】
上記のポリシラザン化合物の例示の中でも下記に示すものが好ましい。
【化3】
(式中、A、a1、b1は上記と同じである。)
【0034】
(A)成分は、公知の方法により調製することができ、例えば、上記有機基を有したクロロシランにアンモニアガスを塩素のモル量に対して過剰量で反応させることにより調製することができる。
【0035】
(A)成分の配合量は、後述の(C)成分に対し溶解する量であれば特に限定されないが、組成物全体((A)、(B)、(C)成分の合計)の30質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.01〜20質量%であり、さらに好ましくは0.1〜10質量%、特に好ましくは0.2〜5質量%である。(A)成分を含有しないと接着性が不十分となる。また、含有量が30質量%以下であれば、表面に凹凸ができることによる膜の割れがなく、プライマーとしての十分な性能を得ることができる。
【0036】
[(B)成分]
本発明のプライマー組成物に含有される(B)成分は、1分子中に一つ以上のSiH基を含有するアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルのどちらか一方、もしくは両方を含むアクリル樹脂であり、例えばLEDを実装する基板、特にセラミックス基板やポリフタルアミド樹脂基板に対して十分な接着性を与えるとともに、該基板上に可とう性のある膜を形成し、金属電極(特にAg電極)の経時的な腐食を抑制する。
【0037】
このようなアクリル樹脂としては、1分子中に一つ以上のSiH基を含有するアクリル酸エステルの単独重合体、1分子中に一つ以上のSiH基を含有するメタクリル酸エステルの単独重合体、1分子中に一つ以上のSiH基を含有するアクリル酸エステルと1分子中に一つ以上のSiH基を含有するメタクリル酸エステルとの共重合体、1分子中に一つ以上のSiH基を含有するアクリル酸エステルと別の種類のアクリル酸エステルとの共重合体、1分子中に一つ以上のSiH基を含有するメタクリル酸エステルと別の種類のメタクリル酸エステルとの共重合体等を挙げることができる。
【0038】
1分子中に少なくとも一つ以上のSiH基を含有するアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルとしては、以下の構造をもつ化合物を挙げることができる。
【化4】
(式中、Rは水素又はメチル基、Rは1価の有機基、Rは2価の有機基を示す。nは0〜2の整数である。)
【0039】
また、ジオルガノポリシロキサン中に以下の単位を有する化合物も例示できる。
【化5】
(lは0を含む正数、mは0以外の正数である。)
【0040】
【化6】
(o、pは0以外の正数である。)
【0041】
別の種類のアクリル酸エステルとしては、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸イソペンチル、アクリル酸−n−ヘキシル、アクリル酸イソオクチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸−n−オクチル、アクリル酸イソノニル、アクリル酸−n−デシル、アクリル酸イソデシル等を挙げることができる。別の種類のメタクリル酸エステルとしては、例えばメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸−n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸イソペンチル、メタクリル酸−n−ヘキシル、メタクリル酸イソオクチル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸−n−オクチル、メタクリル酸イソノニル、メタクリル酸−n−デシル、メタクリル酸イソデシル等を挙げることができる。中でも、アルキル基の炭素原子数が1〜12、特にアルキル基の炭素原子数が1〜4のアクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸アルキルエステルが好ましく、1種単独又は2種以上のモノマーを併用してもよい。
【0042】
(B)成分のアクリル樹脂の合成方法としては、該当するモノマーをAIBN(2,2’−アゾビスイソブチロニトリル)等のラジカル重合開始剤で処理することによって得る方法を例示できる。
【0043】
(B)成分の配合量は、後述の(C)成分に対し溶解する量であれば特に限定されないが、組成物全体((A)、(B)、(C)成分の合計)の30質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.01〜20質量%であり、さらに好ましくは0.1〜10質量%、特に好ましくは0.2〜5質量%である。(B)成分を含有しないと耐熱性・可とう性が得られない。また、含有量が30質量%以下であれば、表面に凹凸ができることによる膜の割れがなく、プライマーとしての十分な性能を得ることができる。
【0044】
[(C)成分]
(C)成分の溶剤は、上記の(A)成分、(B)成分及び後述する任意成分を溶解するものであれば特に限定されるものではなく、公知の有機溶剤を使用することができる。該溶剤としては、例えば、キシレン、トルエン、ベンゼン等の芳香族炭化水素系溶剤、ヘプタン、ヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶剤、トリクロロエチレン、パークロロエチレン、塩化メチレン等のハロゲン化炭化水素系溶剤、酢酸エチル等のエステル系溶剤、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶剤、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール系溶剤、リグロイン、シクロヘキサノン、ジエチルエーテル、ゴム揮発油、シリコーン系溶剤等を挙げることができる。中でも酢酸エチル、へキサン、アセトンを好適に用いることができる。
【0045】
(C)成分は、プライマー塗布作業時の蒸発速度に応じて、1種を単独で用いても2種以上を組合せて混合溶剤として用いてもよい。
【0046】
(C)成分の配合量は、塗布時及び乾燥時の作業性に支障のない範囲であれば特に限定されないが、組成物全体((A)、(B)、(C)成分の合計)の70質量%以上であることが好ましく、より好ましくは80〜99.99質量%、さらに好ましくは90〜99.9質量%、特に好ましくは95〜99.8質量%である。(C)成分の配合量が70質量%以上であれば、プライマー組成物の作業性を良くすることができ、例えば、後述の基板上にプライマーを形成する際に均一にすることができ、表面に凹凸ができることによる膜の割れがなく、プライマーとしての十分な性能を得ることができる。
【0047】
[(D)成分]
本発明のプライマー組成物は、さらに(D)シランカップリング剤を配合することができる。該シランカップリング剤としては、一般的なシランカップリング剤であれば特に限定されることなく用いることができる。このようなシランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のビニル基含有シランカップリング剤、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のエポキシ基含有シランカップリング剤、メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン等の(メタ)アクリロキシ基含有シランカップリング剤、メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト基含有シランカップリング剤等を挙げることができる。中でもビニルトリメトキシシラン、メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランが好ましい。
【0048】
(D)成分を使用する場合の配合量としては、組成物全体((A)〜(D)成分の合計)の0.05〜10質量%であることが好ましく、より好ましくは0.1〜3質量%である。(D)成分の配合量が0.05質量%であれば、接着性向上効果が十分となり、10質量%を超えた値を配合しても更なる接着性向上効果が得られないので、10質量%以下であることが好ましい。
【0049】
[その他の成分]
本発明のプライマー組成物は、上記成分以外に、必要に応じて、その他の任意成分を配合することができる。例えば、金属腐食抑制剤として、ベンゾトリアゾール、ブチルヒドロキシトルエン、ハイドロキノン又はその誘導体を配合することができる。ベンゾトリアゾール、ジブチルヒドロキシトルエン、ハイドロキノン又はその誘導体は、LEDランプが過酷な外部環境に曝されて、例えば大気中の硫黄化合物が光半導体装置の封止材(付加反応硬化型シリコーン組成物の硬化物)を透過した場合に、この封止材で封止された基板上の金属電極、特にAg電極の腐食をより効果的に抑制する成分である。
【0050】
金属腐食抑制剤を添加する場合の配合量は、(A)、(B)、(C)成分の合計100質量部に対して0.005〜1質量部であることが好ましく、特に0.01〜0.5質量部であることが好ましい。
【0051】
さらに、その他の任意成分として、蛍光体、補強性充填剤、染料、顔料、耐熱性向上剤、酸化防止剤、接着促進剤等を添加してもよい。
【0052】
[プライマー組成物の製造方法]
本発明のプライマー組成物の製造方法としては、上記(A)、(B)、(C)成分及び必要に応じて任意成分を常温下で混合撹拌機により均一に混合する方法を挙げることができる。
【0053】
<光半導体装置>
本発明の光半導体装置は、光半導体素子を実装した基板と、前記光半導体素子を封止する付加反応硬化型シリコーン組成物の硬化物とを、上記プライマー組成物により接着してなるものであることが好ましい。
以下、本発明の光半導体装置の一態様について図面を参照して説明する。
【0054】
図1は、本発明に係る光半導体装置の一例を示す光半導体装置(LEDランプ)の断面図である。光半導体装置(LEDランプ)1は、光半導体素子としてLED3を実装した基板4と、LED3を封止する付加反応硬化型シリコーン組成物の硬化物5とを、上述したプライマー組成物2により接着したものである。このうち、基板4には、Ag電極等の金属電極6が形成されており、ボンディングワイヤ7でLED3の電極端子(図示せず)と金属電極6とが電気的に接続されている。
【0055】
基板4を構成する材料としては、ポリアミド、セラミックス、シリコーン、シリコーン変性ポリマー、及び液晶ポリマーのいずれかであることが好ましく、本発明においては、耐熱性が良好な点からセラミックスがより好ましく、特にはアルミナセラミックスが好ましい。従来は、上記の材料で構成された基板と、後述の付加反応硬化型シリコーン組成物の硬化物との接着性に問題があり、剥離が生じていた。しかし、本発明のプライマー組成物を用いて接着することで、剥離を引き起こすことなく強固に接着することができ、機械的強度、耐熱性等の良好な上記の材料を基板として光半導体装置を作製することができる。
【0056】
付加反応硬化型シリコーン組成物の硬化物5は、付加反応硬化型シリコーン組成物を硬化させることによって得られるものであり、透明な硬化物であることが好ましく、またゴム状であることが好ましい。該付加反応硬化型シリコーン組成物としては、公知のビニル基含有オルガノポリシロキサン、架橋剤であるオルガノハイドロジェンポリシロキサン及び付加反応触媒である白金系触媒を含有するものを用いることができ、また、該シリコーン組成物には、その他の任意成分として、反応抑制剤、着色剤、難燃性付与剤、耐熱性向上剤、可塑剤、補強性シリカ、接着性付与剤等を添加してもよい。
【0057】
図1に示す光半導体装置(LEDランプ)1の製造方法としては、以下の方法を例示できる。
予め、AgメッキでAg電極等の金属電極6が形成された基板4にLED3等の光半導体素子を接着剤で接合して、ボンディングワイヤ7によりLED3の電極端子(図示せず)と金属電極6とを電気的に接続しておき、この後、LED3が実装された基板4を必要に応じて清浄にしてから、スピンナー等の塗布装置や噴霧器等でプライマー組成物2を基板4に塗布した後、加熱、風乾等によりプライマー組成物2中の溶剤を揮発させ、好ましくは10μm以下、より好ましくは0.1〜5μmの厚さの被膜を形成する。プライマーの被膜を形成した後、付加反応硬化型シリコーン組成物をディスペンサー等で塗布し、室温で放置又は加熱硬化させてゴム状の硬化物5でLED3を封止する。
【0058】
このように、前述の(A)・(B)・(C)成分を含有する本発明のプライマー組成物を使用することで、LED等の光半導体素子を実装した基板と付加反応硬化型シリコーン組成物の硬化物とを強固に接着し、高い信頼性の光半導体装置、特にLEDランプを提供できる。
【0059】
また、LEDランプが過酷な外部環境に曝されて、大気中の硫黄化合物等が該シリコーン組成物の硬化物内に透過するような場合においても、このプライマー組成物を使用することで基板上の金属電極、特にAg電極の腐食を抑制することができる。
【0060】
尚、本発明の光半導体装置はLED用として好適に用いることができ、上記の一態様では、光半導体素子の一例としてLED用のものを用いて説明したが、これ以外に、例えば、フォトトランジスタ、フォトダイオード、CCD、太陽電池モジュール、EPROM、フォトカプラ等に適用することもできる。
【実施例】
【0061】
以下、合成例、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0062】
[合成例1] ポリシラザン化合物の合成
蛇管冷却器、温度計を備えた2Lの四つ口フラスコに、酢酸エチル1,000gを入れ、ここに、メタクリロイルオキシプロピルトリクロロシラン3.8g(0.015mol)、メチルトリクロロシラン41.5g(0.28mol)を投入し、氷浴下にて撹拌した。系内が10℃以下になった時点でアンモニアガス15g(0.89mol)を吹き込み、吹き込んだ後に3時間撹拌した。撹拌終了後、副生成物である塩化アンモニウムをろ別し、酢酸エチルの4質量%ポリシラザン溶液として仕上げた。
合成したポリシラザン化合物を29Si−NMR、H−NMRにより測定したところ、該ポリシラザンの構造は、下記に示すものであり、GPC測定(THF溶媒)による重量平均分子量は2,000であった。
【化7】
【0063】
[合成例2] ポリシラザン化合物の合成
蛇管冷却器、温度計を備えた2Lの四つ口フラスコに、酢酸エチル1,000gを入れ、ここに、ジメチルジクロロシラン19g(0.15mol)、メチルトリクロロシラン22.5g(0.15mol)を投入し、氷浴下にて撹拌した。系内が10℃以下になった時点でアンモニアガス14g(0.83mol)を吹き込み、吹き込んだ後に3時間撹拌した。撹拌終了後、副生成物である塩化アンモニウムをろ別し、酢酸エチルの4質量%ポリシラザン溶液として仕上げた。
合成したポリシラザン化合物を29Si−NMR、H−NMRにより測定したところ、該ポリシラザンの構造は、下記に示すものであり、GPC測定(THF溶媒)による重量平均分子量は2,000であった。
【化8】
【0064】
[合成例3] SiH含有メタクリル酸エステルの合成
蛇管冷却器、温度計を備えた500mlの四つ口フラスコにメタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン124g(0.5mol)、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン107g(0.8mol)を入れ、氷浴にて10℃以下にした。冷却後濃硫酸13.7gを投入し、20分混合した。混合後、水を14.4g(0.75mol)滴下し、加水分解・平衡化反応を行った。反応終了後、水を4.5g投入し廃酸分離し、10%芒硝水250gとトルエン220gを投入して、水洗により酸触媒成分を除去した。除去後、50℃/5mmHgにて濃縮により溶剤を取り除き、下記構造のSiH基含有メタクリル酸エステル152gを得た。
【化9】
【0065】
[合成例4] SiH含有メタクリル酸エステルの合成
蛇管冷却器、温度計を備えた1lの四つ口フラスコにオクタメチルシクロテトラシロキサン355g(1.2mol)、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン289g(1.2mol)、ジメタクリロキシプロピルテトラメチルジシロキサン39.7g(0.12mol)、ジビニルテトラメチルジシロキサン22.3g(0.12mol)、メタンスルホン酸2g(触媒量)を入れ、60〜70℃に昇温し6時間混合した。混合後室温まで温度を戻し重曹を24g入れ中和した。中和後ろ過し、ろ液を100℃/5mmHgにて濃縮により未反応成分を取り除き、下記構造のSiH基含有メタクリル酸エステル408gを得た
【化10】
【0066】
[合成例5] SiH基含有メタクリル酸エステル重合体の合成例
メタクリル酸メチル43質量部、合成例3で調製したSiH基含有メタクリル酸エステル22質量部、IPA(イソプロピルアルコール)と酢酸エチルの混合溶剤600質量部、AIBN(2,2’−アゾビスイソブチロニトリル)0.5質量部を80℃で3時間加熱攪拌し、SiH基含有メタクリル酸エステル重合体を含有する溶液を調整した。
【0067】
[合成例6] SiH基含有メタクリル酸エステル重合体の合成例
メタクリル酸メチル57質量部、合成例4で調製したSiH基含有メタクリル酸エステル24質量部、酢酸エチル600質量部、AIBN(2,2’−アゾビスイソブチロニトリル)0.5質量部を80℃で3時間加熱攪拌し、SiH基含有メタクリル酸エステル重合体を含有する溶液を調整した。
【0068】
[比較合成例1]
メタクリル酸メチル100質量部、酢酸エチル900質量部、AIBN(2,2’−アゾビスイソブチロニトリル)0.5質量部を80℃で3時間加熱撹拌し、メタクリル酸メチル重合体を含有する溶液を調製した。
メタクリル酸メチル83質量部、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン17質量部、酢酸エチル900質量部、AIBN(2,2’−アゾビスイソブチロニトリル)0.5質量部を80℃で3時間加熱撹拌し、メタクリル酸メチル重合体を含有する溶液を調製した。
【0069】
[実施例1]
上記合成例1で調製したポリシラザン化合物の酢酸エチル溶液100質量部に、合成例5で調製したSiH基含有メタクリル酸エステル重合体50質量部、ビニルトリメトキシシラン1.5質量部、ハイドロキノン0.15質量部を添加、撹拌し、プライマー組成物を得た。
得られたプライマー組成物を用いて光半導体装置を作製し、各種物性(外観、透過率、接着性(接着強度)及び耐腐食性)を下記に示す評価方法により測定し、結果を表1に示した。尚、表1に示した物性は、23℃において測定した値である。
【0070】
[外観]
得られたプライマー組成物をアルミナセラミックス板上に厚さ2μmとなるように刷毛塗りし、23℃で30分放置して乾燥させ、さらに150℃30分で乾燥処理を行った。このプライマー組成物上に付加反応硬化型シリコーンゴム組成物(信越化学工業株式会社製、KER−2700)を2mm厚で塗布して150℃で1時間硬化させて、その外観を観察した。
【0071】
[透過率試験]
得られたプライマー組成物をスライドガラス上に厚さ2μmとなるように刷毛塗りし、23℃で30分放置して乾燥させ、プライマー組成物被膜を形成した。このプライマー組成物被膜が形成されたスライドガラスの波長400nmにおける透過率を、空気をブランクとして測定した。また、上記プライマー組成物被膜が形成されたスライドガラスを150℃×1000時間耐熱劣化させ、この透過率を上記と同様に測定した。
【0072】
[接着性(接着強度)試験]
図2に示すような接着試験用のテストピース11を作製した。即ち、2枚のアルミナセラミックス基板12,13(ケーディーエス社製、幅25mm)のそれぞれの片面に、得られたプライマー組成物を厚さ0.01mmで塗布し、23℃で60分放置して乾燥させ、プライマー組成物被膜14,15を形成した。これらアルミナセラミックス基板をプライマー組成物被膜14,15が形成された面を対向させて、それらの端部が10mm重なるようにし、その間に付加反応硬化型シリコーンゴム組成物(信越化学工業株式会社製、KER−2700)を1mm厚で挟み込むようにして、150℃で2時間加熱することにより該付加反応硬化型シリコーンゴム組成物を硬化させ、シリコーンゴム組成物の硬化物16により接着(接着面積25mm×10mm=250mm)された2枚のアルミナセラミックス基板からなるテストピースを作製した。
このテストピースのアルミナセラミックス基板12,13のそれぞれの端部を反対方向(図2の矢印方向)に、引っ張り試験機(島津製作所製、オートグラフ)を用いて引張速度50mm/分で引っ張り、単位面積あたりの接着強度(MPa)を求めた。
【0073】
[腐食性試験]
得られたプライマー組成物を銀メッキ板上に厚さ2μmとなるように刷毛塗りし、23℃で30分放置して乾燥させた後、この上に付加反応硬化型シリコーンゴム組成物(信越化学工業株式会社製、KER−2700)を1mm厚で塗布し、150℃で1時間硬化させてシリコーンゴム層を有するテストピースを作製した。このテストピースを硫黄結晶0.1gとともに100ccガラス瓶に入れ、密閉して70℃で放置し、1日後、8日後、及び12日後の各時点でテストピースのシリコーンゴム層を剥がして、銀メッキ板の該シリコーンゴム層を剥がした部分の腐食の程度を目視で観察し、下記基準で評価した。
○:腐食(変色)なし
×:黒変
【0074】
[実施例2]
上記合成例2で調製したポリシラザン化合物の酢酸エチル溶液100質量部に、上記合成例6で調製したSiH基含有メタクリル酸エステル重合体100質量部添加した混合物をそのまま使用し、プライマー組成物を得た。この組成物を用いて光半導体装置を作製し、各種物性を実施例1と同様にして測定し、結果を表1に示した。
【0075】
[比較例1]
プライマー組成物を塗布せずに直接付加反応硬化型シリコーンゴム組成物(信越化学工業株式会社製、KER−2700)をアルミナセラミックス板及び銀メッキ板に塗布し、硬化した。このようにしてできあがった光半導体装置の接着性及び耐腐食性を実施例1と同様にして測定し、結果を表1に示した。
【0076】
[比較例2]
比較合成例1で調製したメタクリル酸メチルエステル重合体の酢酸エチル溶液100質量部に、ビニルトリメトキシシラン1質量部、ハイドロキノン0.1質量部を添加、撹拌し、プライマー組成物を得た。この組成物を用いて光半導体装置を作製し、各種物性を実施例1と同様にして測定し、結果を表1に示した。
【0077】
[比較例3]
比較合成例1で調製したメタクリル酸メチルエステル重合体の酢酸エチル溶液100質量部に、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン1質量部、テトラ−n−ブチルチタネート1質量部を添加、撹拌し、プライマー組成物を得た。この組成物を用いて光半導体装置を作製し、各種物性を実施例1と同様にして測定し、結果を表1に示した。
【0078】
[比較例4]
合成例1で調製したポリシラザン化合物の酢酸エチル溶液を用いて光半導体装置を作製し、各種物性を実施例1と同様にして測定し、結果を表2に示した。
【0079】
[比較例5]
合成例5で調製したSiH基含有メタクリル酸エステル重合体100質量部の酢酸エチル溶液を用いて光半導体装置を作製し、各種物性を実施例1と同様にして測定し、結果を表2に示した。
【0080】
【表1】
【0081】
【表2】
【0082】
表1の結果から明らかなように、ポリシラザン化合物とSiH基含有メタクリル酸エステル重合体を配合したプライマー組成物を用いた実施例1,2は、アルミナセラミックスと付加反応硬化型シリコーンゴム組成物のゴム状硬化物とを強固に接着している。また、スライドガラスに塗布したプライマー組成物被膜の耐熱性試験では、変色がなく、被膜自体の変化もなく、耐熱性も優れていた。さらに、アルミナセラミックスの代わりに、銀メッキ板を使用した腐食性試験では、実施例1,2のいずれも1日経過後で変色がなく、12日経過しても変色(腐食)抑制の効果があった。
【0083】
一方、表1の結果から明らかなように、プライマーを形成しなかった比較例1は、接着性が十分ではなく、腐食性試験において1日後には腐食が観察された。(B)成分の代わりにSiH基を含有しないメタクリル酸メチルエステル重合体を配合したプライマー組成物を用いた比較例2、3では、耐熱性、接着性、及び耐腐食性が低いものとなった。
また、表2の結果から明らかなように、(B)成分を配合しなかったプライマー組成物を用いた比較例4は、接着性、耐腐食性は良好であったものの、耐熱性が低いものとなった。(A)成分を配合しなかったプライマー組成物を用いた比較例5は、耐腐食性は良好であったものの、耐熱性は経時変化が生じ、接着性は十分ではなかった。
【0084】
上記の結果から、本発明のプライマー組成物であれば、光半導体素子を実装した基板と、光半導体素子を封止する付加反応硬化型シリコーン組成物の硬化物との接着性を向上させるとともに、基板上の金属電極の腐食を防止し、プライマーの耐熱性を向上させることができることが明らかになった。
【0085】
尚、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0086】
1…光半導体装置(LEDランプ)、 2…プライマー組成物、 3…LED、
4…基板、 5…付加反応硬化型シリコーン組成物の硬化物、 6…金属電極、
7…ボンディングワイヤ、 11…テストピース、
12、13…アルミナセラミックス基板、 14、15…プライマー組成物被膜、
16…付加反応硬化型シリコーンゴム組成物の硬化物。
図1
図2