【実施例】
【0119】
(参考例1)
本参考例1における混合粉末およびターゲットの組成の目標は(50Fe−50Pt)−30vol%SiO
2である。即ち、金属成分の組成の目標は50at%Fe−50at%Ptであり、金属酸化物(SiO
2)の含有量の目標は、ターゲット全体に対して30vol%である。なお、金属酸化物(SiO
2)の含有量をvol%ではなくmol%で表示すると、本参考例1における混合粉末およびターゲットの組成の目標は(50Fe−50Pt)−11.27mol%SiO
2である。
【0120】
合金組成がFe:50at%、Pt:50at%となるようにバルク状の各金属を秤量し、高周波で加熱して1800℃のFe−Pt合金溶湯とし、アルゴンガスを用いたガスアトマイズ法により50at%Fe−50at%Pt合金粉末を作製した。得られた合金粉末の平均粒径を日機装株式会社製のマイクロトラックMT3000により測定したところ、50μmであった。
【0121】
作製した50at%Fe−50at%Pt合金粉末1100.00gに、SiO
2の含有量が粉末全体に対して30vol%となるように平均粒径0.7μmで嵩密度2.20g/cm
3のSiO
2粉末を66.91g添加し、ボールミルでその回転回数が累計で3,741,120回に達するまで混合して混合粉末を作製した。以下、ボールミルの累計の回転回数を、ボールミル累計回転回数または単に回転回数と記すことがある。
【0122】
混合中、混合容器のふたは閉じ、混合容器内を混合ガス(Ar+O
2)で密閉した雰囲気中で、50at%Fe−50at%Pt合金粉末とSiO
2粉末との混合を行った。
【0123】
ボールミル累計回転回数が935,280回、1,870,560回、2,805,840回、3,741,120回の各時点で混合容器を開放して、目視で発火の有無について確認したが、いずれの場合も発火は確認されなかった。
【0124】
また、ボールミル累計回転回数が1,870,560回、2,805,840回、3,741,120回の各時点での混合粉末30.00gを用いて、雰囲気:20Pa未満の真空中でホットプレスを行い、直径30mmの円板状の焼結体を作製した。下記表1に、ホットプレス条件(焼結温度、焼結圧力、焼結時間)と得られた焼結体の相対密度を記す。なお、焼結体の理論密度は11.51g/cm
3である。
【0125】
【表1】
【0126】
焼結体の相対密度は96%を超えており、得られた焼結体の空孔は少なかった。
【0127】
また、ボールミル累計回転回数が3,741,120回の時点の混合粉末中の酸素、窒素の含有量をLECO社製のTC−600型酸素窒素同時分析装置で測定した。また、ボールミル累計回転回数が3,741,120回の混合粉末を用いて作製した焼結体中の酸素、窒素の含有量をLECO社製のTC−600型酸素窒素同時分析装置で測定した。下記表2にその測定結果を示す。
【0128】
【表2】
【0129】
焼結体中の酸素含有量および窒素含有量は、どちらも混合粉末中の含有量と比較して減少しているが、酸素含有量の減少の程度は窒素含有量の減少の程度と比べて小さい。これは、混合粉末中および焼結体中のどちらにも金属酸化物であるSiO
2が含まれているためだと思われる。
【0130】
また、ボールミル累計回転回数が3,741,120回の混合粉末を用いて作製した焼結体の組織観察を走査型電子顕微鏡(SEM)で行った。
図2−
図5に該焼結体のSEM写真を示す。
図2は撮影時の写真倍率が1000倍のSEM写真(写真中の縮尺目盛りは10μm)で、
図3は撮影時の写真倍率が3000倍のSEM写真(写真中の縮尺目盛りは1μm)で、
図4は撮影時の写真倍率が5000倍のSEM写真(写真中の縮尺目盛りは1μm)で、
図5は撮影時の写真倍率が10000倍のSEM写真(写真中の縮尺目盛りは1μm)である。
図2−
図5において黒色の部分がSiO
2相であり、白色の部分がFePt合金相である。
図2−
図5からわかるように、組織全体に微細なSiO
2相が分散した構造となっていることがわかる。
【0131】
撮影時の写真倍率が10000倍の
図5のSEM写真を用いて、インターセプト法によってSiO
2相の平均の大きさを求めた。
【0132】
具体的には、
図5のSEM写真に、上下に3等分するように左右方向に2本の水平線を引くとともに、左右に4等分するように上下方向に3本の垂直線を引き、合計5本の直線を、
図5のSEM写真に引いた。
【0133】
そして、SiO
2相の上を横切った部分の線分の長さの合計と、横切ったSiO
2相の数を、前記5本の直線それぞれについて求め、前記5本の直線についてSiO
2相の上を横切った部分の線分の長さの平均値を計算(SiO
2相の上を横切った部分の線分の長さの合計を横切ったSiO
2相の数で除す)により求め、その値をインターセプト法によって求めたSiO
2相の平均の大きさとした。インターセプト法によって求めたSiO
2相の平均の大きさは0.34μmであった。
【0134】
(参考例2)
本参考例2における混合粉末およびターゲットの組成の目標は(50Fe−50Pt)−30vol%TiO
2である。即ち、金属成分の組成の目標は50at%Fe−50at%Ptであり、金属酸化物(TiO
2)の含有量の目標は、ターゲット全体に対して30vol%である。なお、金属酸化物(TiO
2)の含有量をvol%ではなくmol%で表示すると、本参考例2における混合粉末およびターゲットの組成の目標は(50Fe−50Pt)−15.34mol%TiO
2である。
【0135】
参考例1と同様にして作製した50at%Fe−50at%Pt合金粉末1100.00gに、TiO
2の含有量が粉末全体に対して30vol%となるように平均粒径0.07μmで嵩密度4.11g/cm
3のTiO
2粉末を126.85g添加し、ボールミルでその回転回数が累計で3,741,120回に達するまで混合して混合粉末を作製した。
【0136】
混合中、混合容器のふたは閉じ、混合容器内を混合ガス(Ar+O
2)で密閉した雰囲気中で、50at%Fe−50at%Pt合金粉末とTiO
2粉末との混合を行った。
【0137】
ボールミル累計回転回数が935,280回、1,870,560回、2,805,840回、3,741,120回の各時点で混合容器を開放して、目視で発火の有無について確認したが、いずれの場合も発火は確認されなかった。
【0138】
また、ボールミル累計回転回数が1,870,560回、2,805,840回、3,741,120回の各時点での混合粉末30.00gを用いて、雰囲気:20Pa未満の真空中でホットプレスを行い、直径30mmの円板状の焼結体を作製した。下記表3に、ホットプレス条件(焼結温度、焼結圧力、焼結時間)と得られた焼結体の相対密度を記す。なお、焼結体の理論密度は12.10g/cm
3である。
【0139】
【表3】
【0140】
焼結体の相対密度は96%を超えており、得られた焼結体の空孔は少なかった。
【0141】
また、ボールミル累計回転回数が3,741,120回の時点の混合粉末中の酸素、窒素の含有量をLECO社製のTC−600型酸素窒素同時分析装置で測定した。また、ボールミル累計回転回数が3,741,120回の混合粉末を用いて作製した焼結体中の酸素、窒素の含有量をLECO社製のTC−600型酸素窒素同時分析装置で測定した。下記表4にその測定結果を示す。
【0142】
【表4】
【0143】
焼結体中の酸素含有量および窒素含有量は、どちらも混合粉末中の含有量と比較して減少しているが、酸素含有量の減少の程度は窒素含有量の減少の程度と比べて小さい。これは、混合粉末中および焼結体中のどちらにも金属酸化物であるTiO
2が含まれているためだと思われる。
【0144】
また、ボールミル累計回転回数が3,741,120回の混合粉末を用いて作製した焼結体の組織観察を走査型電子顕微鏡(SEM)で行った。
図6〜
図9に該焼結体のSEM写真を示す。
図6は撮影時の写真倍率が1000倍のSEM写真(写真中の縮尺目盛りは10μm)で、
図7は撮影時の写真倍率が3000倍のSEM写真(写真中の縮尺目盛りは1μm)で、
図8は撮影時の写真倍率が5000倍のSEM写真(写真中の縮尺目盛りは1μm)で、
図9は撮影時の写真倍率が10000倍のSEM写真(写真中の縮尺目盛りは1μm)である。
図6〜
図9において黒色の部分がTiO
2相であり、白色の部分がFePt合金相である。
図6〜
図9からわかるように、組織全体に微細なTiO
2相が分散した構造となっていることがわかる。
【0145】
撮影時の写真倍率が10000倍の
図9のSEM写真を用いて、インターセプト法によってTiO
2相の平均の大きさを求めた。具体的な方法は参考例1の方法と同様である。
【0146】
インターセプト法によって求めたTiO
2相の平均の大きさは0.28μmであった。
【0147】
(参考例3)
本参考例3における混合粉末およびターゲットの組成の目標は(50Fe−50Pt)−36.63vol%B
2O
3である。即ち、金属成分の組成の目標は50at%Fe−50at%Ptであり、金属酸化物(B
2O
3)の含有量の目標は、ターゲット全体に対して36.63vol%である。なお、金属酸化物(B
2O
3)の含有量をvol%ではなくmol%で表示すると、本参考例3における混合粉末およびターゲットの組成の目標は(50Fe−50Pt)−11mol%B
2O
3である。
【0148】
参考例1と同様にして作製した50at%Fe−50at%Pt合金粉末1100.00gに、B
2O
3の含有量が粉末全体に対して36.63vol%となるようにB
2O
3粉末を75.44g添加し、ボールミルでその回転回数が累計で5,736,960回に達するまで混合して混合粉末を作製した。
【0149】
混合中、混合容器のふたは閉じ、混合容器内を混合ガス(Ar+O
2)で密閉した雰囲気中で、50at%Fe−50at%Pt合金粉末とB
2O
3粉末との混合を行った。
【0150】
ボールミル累計回転回数が935,280回、2,535,840回、4,136,400回、5,736,960回の各時点で混合容器を開放して、目視で発火の有無について確認したが、いずれの場合も発火は確認されなかった。
【0151】
また、ボールミル累計回転回数が4,136,400回、5,736,960回の時点での混合粉末30.00gを用いて、雰囲気:20Pa未満の真空中でホットプレスを行い、直径30mmの円板状の焼結体を作製した。下記表5に、ホットプレス条件(焼結温度、焼結圧力、焼結時間)と得られた焼結体の相対密度を記す。なお、焼結体の理論密度は10.50g/cm
3である。この焼結体の理論密度10.50g/cm
3に基づき焼結体の相対密度を算出したところ、下記表5に示すように、103.95%(ボールミル累計回転回数4,136,400回)、105.22%(ボールミル累計回転回数5,736,960回)となった。
【0152】
【表5】
【0153】
焼結体の相対密度は105.22%と、100%を超えており、得られた焼結体の空孔は少なかった。
【0154】
また、ボールミル累計回転回数が5,736,960回の混合粉末を用いて作製した焼結体中の酸素、窒素の含有量をLECO社製のTC−600型酸素窒素同時分析装置で測定した。下記表6にその測定結果を示す。
【0155】
【表6】
【0156】
また、ボールミル累計回転回数が5,736,960回の混合粉末を用いて作製した焼結体中のFe、Pt、Bの含有量をICPで分析した。下記表7にその分析結果を焼結前の混合粉末におけるFe、Pt、Bの含有量とともに示す。焼結前の混合粉末におけるFe、Pt、Bの含有量は、ICPで分析した結果ではなく、混合粉末作製のために配合した原料粉末の量から算出した計算値(理論値)である。
【0157】
【表7】
【0158】
また、ボールミル累計回転回数が5,736,960回の混合粉末を用いて作製した焼結体の組織観察を走査型電子顕微鏡(SEM)で行った。
図10−
図13に該焼結体のSEM写真を示す。
図10は撮影時の写真倍率が1000倍のSEM写真(写真中の縮尺目盛りは10μm)で、
図11は撮影時の写真倍率が3000倍のSEM写真(写真中の縮尺目盛りは1μm)で、
図12は撮影時の写真倍率が5000倍のSEM写真(写真中の縮尺目盛りは1μm)で、
図13は撮影時の写真倍率が10000倍のSEM写真(写真中の縮尺目盛りは1μm)である。
図10−
図13において黒色の部分がB
2O
3相であり、灰色の部分がFePt合金相である。
図10−
図13からわかるように、組織全体に微細なB
2O
3相が分散した構造となっていることがわかる。
【0159】
撮影時の写真倍率が10000倍の
図13のSEM写真を用いて、インターセプト法によってB
2O
3相の平均の大きさを求めた。具体的な方法は参考例1の方法と同様である。
【0160】
インターセプト法によって求めたB
2O
3相の平均の大きさは0.22μmであった。
【0161】
(参考例4)
本参考例4における混合粉末およびターゲットの組成の目標は(50Fe−50Pt)−12.07vol%B
2O
3−24.68vol%SiO
2である。即ち、金属成分の組成の目標は50at%Fe−50at%Ptであり、金属酸化物であるB
2O
3の含有量の目標は、ターゲット全体に対して12.07vol%であり、金属酸化物であるSiO
2の含有量の目標は、ターゲット全体に対して24.68vol%である。なお、B
2O
3およびSiO
2の含有量をvol%ではなくmol%で表示すると、本参考例4における混合粉末およびターゲットの組成の目標は(50Fe−50Pt)−3.53mol%B
2O
3−10mol%SiO
2である。
【0162】
参考例1と同様にして作製した50at%Fe−50at%Pt合金粉末970.00gに、B
2O
3の含有量が粉末全体に対して12.07vol%となるようにのB
2O
3粉末を21.97g添加し、SiO
2の含有量が粉末全体に対して24.68vol%となるように平均粒径0.7μmで嵩密度2.20g/cm
3のSiO
2粉末を53.72g添加し、ボールミルでその回転回数が累計で3,852,360回に達するまで混合して混合粉末を作製した。
【0163】
混合中、混合容器のふたは閉じ、混合容器内を混合ガス(Ar+O
2)で密閉した雰囲気中で、50at%Fe−50at%Pt合金粉末とB
2O
3粉末とSiO
2粉末との混合を行った。
【0164】
ボールミル累計回転回数が1,046,520回、1,981,800回、2,917,080回、3,852,360回の各時点で混合容器を開放して、目視で発火の有無について確認したが、いずれの場合も発火は確認されなかった。
【0165】
また、ボールミル累計回転回数が3,852,360回の時点での混合粉末30.00gを用いて、雰囲気:20Pa未満の真空中でホットプレスを行い、直径30mmの円板状の焼結体を作製した。下記表8に、ホットプレス条件(焼結温度、焼結圧力、焼結時間)と得られた焼結体の相対密度を記す。なお、焼結前の混合粉末と焼結後の焼結体とで含有されるB、Siの量に変動がない場合、焼結体の理論密度は10.57g/cm
3であるが、焼結体をICPで分析した結果、Bの含有量が焼結前の混合粉末よりも0.01質量%減少し、Siの含有量が焼結前の混合粉末よりも0.04質量%減少していた(表10参照)。これらを考慮するとともに、焼結体中のBは全てB
2O
3となっており焼結体中のSiは全てSiO
2となっていると仮定して、焼結体の理論密度を算出したところ、10.59g/cm
3となった。この焼結体の理論密度10.59g/cm
3に基づき焼結体の相対密度を算出したところ、下記表8に示すように100.38%となった。
【0166】
【表8】
【0167】
焼結体の相対密度は100%程度であり、得られた焼結体の空孔は少なかった。なお、上記表8に示す焼結体の相対密度は100.38%であり、100%を超えているが、これは測定誤差であると思われる。
【0168】
また、ボールミル累計回転回数が3,852,360回の混合粉末を用いて作製した焼結体中の酸素、窒素の含有量をLECO社製のTC−600型酸素窒素同時分析装置で測定した。下記表9にその測定結果を示す。
【0169】
【表9】
【0170】
また、ボールミル累計回転回数が3,852,360回の混合粉末を用いて作製した焼結体中のFe、Pt、B、Siの含有量をICPで分析した。その分析結果を下記表10に焼結前の混合粉末におけるFe、Pt、B、Siの含有量とともに示す。
【0171】
【表10】
【0172】
また、ボールミル累計回転回数が3,852,360回の混合粉末を用いて作製した焼結体の組織観察を走査型電子顕微鏡(SEM)で行った。
図14−
図17に該焼結体のSEM写真を示す。
図14は撮影時の写真倍率が1000倍のSEM写真(写真中の縮尺目盛りは10μm)で、
図15は撮影時の写真倍率が3000倍のSEM写真(写真中の縮尺目盛りは1μm)で、
図16は撮影時の写真倍率が5000倍のSEM写真(写真中の縮尺目盛りは1μm)で、
図17は撮影時の写真倍率が10000倍のSEM写真(写真中の縮尺目盛りは1μm)である。
図14−
図17において黒色の部分が金属酸化物相(B
2O
3相およびSiO
2相)であり、灰色の部分がFePt合金相である。
図14−
図17からわかるように、組織全体に微細な金属酸化物相(B
2O
3相およびSiO
2相)が分散した構造となっていることがわかる。
【0173】
撮影時の写真倍率が10000倍の
図17のSEM写真を用いて、インターセプト法によって金属酸化物相(B
2O
3相およびSiO
2相を合わせた相)の平均の大きさを求めた。具体的な方法は参考例1の方法と同様である。
【0174】
インターセプト法によって求めた金属酸化物相(B
2O
3相およびSiO
2相を合わせた相)の平均の大きさは0.27μmであった。
【0175】
(参考例5)
本参考例5における混合粉末およびターゲットの組成の目標は(50Fe−50Pt)−6vol%C−24vol%SiO
2である。即ち、金属成分の組成の目標は50at%Fe−50at%Ptであり、Cの含有量の目標は、ターゲット全体に対して6vol%であり、金属酸化物(SiO
2)の含有量の目標は、ターゲット全体に対して24vol%である。なお、Cおよび金属酸化物(SiO
2)の含有量をvol%ではなくmol%で表示すると、本参考例5における混合粉末およびターゲットの組成の目標は(50Fe−50Pt)−10.60mol%C−8.25mol%SiO
2である。
【0176】
参考例1と同様にして作製した50at%Fe−50at%Pt合金粉末1100.00gに、Cの含有量が粉末全体に対して5.7vol%となるように平均粒径35μmで嵩密度0.25g/cm
3のC粉末を13.72g添加し、SiO
2の含有量が粉末全体に対して23.4vol%となるように平均粒径0.7μmで嵩密度2.20g/cm
3のSiO
2粉末を53.44g添加し、ボールミルでその回転回数が累計で3,741,120回に達するまで混合して混合粉末を作製した。
【0177】
混合中、混合容器のふたは閉じ、混合容器内を混合ガス(Ar+O
2)で密閉した雰囲気中で、50at%Fe−50at%Pt合金粉末とC粉末とSiO
2粉末との混合を行った。
【0178】
ボールミル累計回転回数が935,280回、1,870,560回、2,805,840回、3,741,120回の各時点で混合容器を開放して、目視で発火の有無について確認したが、いずれの場合も発火は確認されなかった。
【0179】
また、ボールミル累計回転回数が3,741,120回の時点での混合粉末30.00gを用いて、雰囲気:20Pa未満の真空中でホットプレスを行い、直径30mmの円板状の焼結体を作製した。下記表11に、ホットプレス条件(焼結温度、焼結圧力、焼結時間)と得られた焼結体の相対密度を記す。なお、焼結体の理論密度は11.51g/cm
3であるが、この値は、混合時および焼結時に減少した炭素量を考慮して算出した値(表12に示す焼結体中の炭素含有量を用いて算出した値)であり、この理論密度に基づき焼結体の相対密度を算出した。
【0180】
【表11】
【0181】
焼結体の相対密度は97%を超えており、得られた焼結体の空孔は少なかった。
【0182】
また、ボールミル累計回転回数が3,741,120回の時点の混合粉末中の酸素、窒素の含有量をLECO社製のTC−600型酸素窒素同時分析装置で測定し、炭素の含有量をHORIBA社製の炭素硫黄分析装置で測定した。また、ボールミル累計回転回数が3,741,120回の混合粉末を用いて作製した焼結体中の酸素、窒素の含有量をLECO社製のTC−600型酸素窒素同時分析装置で測定し、炭素の含有量をHORIBA社製の炭素硫黄分析装置で測定した。下記表12にその測定結果を示す。
【0183】
【表12】
【0184】
焼結体中の酸素含有量および窒素含有量は、どちらも混合粉末中の含有量と比較して減少しているが、酸素含有量の減少の程度は窒素含有量の減少の程度と比べて小さい。これは、混合粉末中および焼結体中のどちらにも金属酸化物であるSiO
2が含まれているためだと思われる。
【0185】
また、焼結体中の酸素含有量および窒素含有量を混合粉のそれと比較すると、本参考例5の焼結による酸素含有量および窒素含有量の減少の程度は、参考例1、2の場合と比べて大きくなっている。これは、本参考例5の混合粉にはC粉末が含まれるため、このC粉末の表面に酸素および窒素が吸着していたことに起因すると思われる。
【0186】
また、ボールミル累計回転回数が3,741,120回の混合粉末を用いて作製した焼結体の組織観察を走査型電子顕微鏡(SEM)で行った。
図18−
図21に該焼結体のSEM写真を示す。
図18は撮影時の写真倍率が1000倍のSEM写真(写真中の縮尺目盛りは10μm)で、
図19は撮影時の写真倍率が3000倍のSEM写真(写真中の縮尺目盛りは1μm)で、
図20は撮影時の写真倍率が5000倍のSEM写真(写真中の縮尺目盛りは1μm)で、
図21は撮影時の写真倍率が10000倍のSEM写真(写真中の縮尺目盛りは1μm)である。
図18−
図21において黒色の部分がC相およびSiO
2相であり、白色の部分がFePt合金相である。
図18−
図21からわかるように、組織全体に微細なC相およびSiO
2相が分散した構造となっていることがわかる。
【0187】
撮影時の写真倍率が10000倍の
図21のSEM写真を用いて、インターセプト法によってC相およびSiO
2相を合わせた相の平均の大きさを求めた。具体的な方法は参考例1の方法と同様である。なお、C相およびSiO
2相を合わせた相とは、C相およびSiO
2相を区別せず同一の相と考えて選び出した相のことである。
【0188】
インターセプト法によって求めたC相およびSiO
2相を合わせた相の平均の大きさは0.28μmであった。
【0189】
(参考例6)
本参考例6における混合粉末およびターゲットの組成の目標は(50Fe−50Pt)−9vol%C−21vol%SiO
2である。即ち、金属成分の組成の目標は50at%Fe−50at%Ptであり、Cの含有量の目標は、ターゲット全体に対して9vol%であり、金属酸化物(SiO
2)の含有量の目標は、ターゲット全体に対して21vol%である。なお、Cおよび金属酸化物(SiO
2)の含有量をvol%ではなくmol%で表示すると、本参考例6における混合粉末およびターゲットの組成の目標は(50Fe−50Pt)−15.24mol%C−6.92mol%SiO
2である。
【0190】
参考例1と同様にして作製した50at%Fe−50at%Pt合金粉末1100.00gに、Cの含有量が混合粉末全体に対して8.8vol%となるように平均粒径35μmで嵩密度0.25g/cm
3のC粉末を20.57g添加し、SiO
2の含有量が粉末全体に対して21.2vol%となるように平均粒径0.7μmで嵩密度2.20g/cm
3のSiO
2粉末を47.73g添加し、ボールミルでその回転回数が累計で3,741,120回に達するまで混合して混合粉末を作製した。
【0191】
混合中、混合容器のふたは閉じ、混合容器内を混合ガス(Ar+O
2)で密閉した雰囲気中で、50at%Fe−50at%Pt合金粉末とC粉末とSiO
2粉末との混合を行った。
【0192】
ボールミル累計回転回数が935,280回、1,870,560回、2,805,840回、3,741,120回の各時点で混合容器を開放して、目視で発火の有無について確認したが、いずれの場合も発火は確認されなかった。
【0193】
また、ボールミル累計回転回数が3,741,120回の時点での混合粉末30.00gを用いて、雰囲気:20Pa未満の真空中でホットプレスを行い、直径30mmの円板状の焼結体を作製した。下記表13に、ホットプレス条件(焼結温度、焼結圧力、焼結時間)と得られた焼結体の相対密度を記す。なお、焼結体の理論密度は11.51g/cm
3であるが、この値は、混合時および焼結時に減少した炭素量を考慮して算出した値(表14に示す焼結体中の炭素含有量を用いて算出した値)であり、この理論密度に基づき焼結体の相対密度を算出した。
【0194】
【表13】
【0195】
焼結体の相対密度は97%を超えており、得られた焼結体の空孔は少なかった。
【0196】
また、ボールミル累計回転回数が3,741,120回の時点の混合粉末中の酸素、窒素の含有量をLECO社製のTC−600型酸素窒素同時分析装置で測定し、炭素の含有量をHORIBA社製の炭素硫黄分析装置で測定した。また、ボールミル累計回転回数が3,741,120回の混合粉末を用いて作製した焼結体中の酸素、窒素の含有量をLECO社製のTC−600型酸素窒素同時分析装置で測定し、炭素の含有量をHORIBA社製の炭素硫黄分析装置で測定した。下記表14にその測定結果を示す。
【0197】
【表14】
【0198】
焼結体中の酸素含有量および窒素含有量は、どちらも混合粉末中の含有量と比較して減少しているが、酸素含有量の減少の程度は窒素含有量の減少の程度と比べて小さい。これは、混合粉末中および焼結体中のどちらにも金属酸化物であるSiO
2が含まれているためだと思われる。
【0199】
また、焼結体中の酸素含有量および窒素含有量を混合粉末のそれと比較すると、本参考例6の焼結による酸素含有量および窒素含有量の減少の程度は、参考例1、2の場合と比べて大きくなっている。これは、本参考例6の混合粉末にはC粉末が含まれるため、このC粉末の表面に酸素および窒素が吸着していたことに起因すると思われる。
【0200】
また、ボールミル累計回転回数が3,741,120回の混合粉末を用いて作製した焼結体の組織観察を走査型電子顕微鏡(SEM)で行った。
図22−
図25に該焼結体のSEM写真を示す。
図22は撮影時の写真倍率が1000倍のSEM写真(写真中の縮尺目盛りは10μm)で、
図23は撮影時の写真倍率が3000倍のSEM写真(写真中の縮尺目盛りは1μm)で、
図24は撮影時の写真倍率が5000倍のSEM写真(写真中の縮尺目盛りは1μm)で、
図25は撮影時の写真倍率が10000倍のSEM写真(写真中の縮尺目盛りは1μm)である。
図22−
図25において黒色の部分がC相およびSiO
2相であり、白色の部分がFePt合金相である。
図22−
図25からわかるように、組織全体に微細なC相およびSiO
2相が分散した構造となっていることがわかる。
【0201】
撮影時の写真倍率が10000倍の
図25のSEM写真を用いて、インターセプト法によってC相およびSiO
2相を合わせた相の平均の大きさを求めた。具体的な方法は参考例1の方法と同様である。なお、C相およびSiO
2相を合わせた相とは、C相およびSiO
2相を区別せず同一の相と考えて選び出した相のことである。
【0202】
インターセプト法によって求めたC相およびSiO
2相を合わせた相の平均の大きさは0.23μmであった。
【0203】
(参考例7)
本参考例7における混合粉末およびターゲットの組成の目標は(50Fe−50Pt)−12vol%C−18vol%SiO
2である。即ち、金属成分の組成の目標は50at%Fe−50at%Ptであり、Cの含有量の目標は、ターゲット全体に対して12vol%であり、金属酸化物(SiO
2)の含有量の目標は、ターゲット全体に対して18vol%である。なお、Cおよび金属酸化物(SiO
2)の含有量をvol%ではなくmol%で表示すると、本参考例7における混合粉末およびターゲットの組成の目標は(50Fe−50Pt)−19.53mol%C−5.70mol%SiO
2である。
【0204】
参考例1と同様にして作製した50at%Fe−50at%Pt合金粉末1100.00gに、Cの含有量が混合粉末全体に対して8.8vol%となるように平均粒径35μmで嵩密度0.25g/cm
3のC粉末を27.44g添加し、SiO
2の含有量が粉末全体に対して21.2vol%となるように平均粒径0.7μmで嵩密度2.20g/cm
3のSiO
2粉末を40.07g添加し、ボールミルでその回転回数が累計で3,741,120回に達するまで混合して混合粉末を作製した。
【0205】
混合中、混合容器のふたは閉じ、混合容器内を混合ガス(Ar+O
2)で密閉した雰囲気中で、50at%Fe−50at%Pt合金粉末とC粉末とSiO
2粉末との混合を行った。
【0206】
ボールミル累計回転回数が935,280回、1,870,560回、2,805,840回、3,741,120回の各時点で混合容器を開放して、目視で発火の有無について確認したが、いずれの場合も発火は確認されなかった。
【0207】
また、ボールミル累計回転回数が3,741,120回の時点での混合粉末30.00gを用いて、雰囲気:20Pa未満の真空中でホットプレスを行い、直径30mmの円板状の焼結体を作製した。下記表15に、ホットプレス条件(焼結温度、焼結圧力、焼結時間)と得られた焼結体の相対密度を記す。なお、焼結体の理論密度は11.52g/cm
3であるが、この値は、混合時および焼結時に減少した炭素量を考慮して算出した値(表16に示す焼結体中の炭素含有量を用いて算出した値)であり、この理論密度に基づき焼結体の相対密度を算出した。
【0208】
【表15】
【0209】
焼結体の相対密度は96%を超えており、得られた焼結体の空孔は少なかった。
【0210】
また、ボールミル累計回転回数が3,741,120回の時点の混合粉末中の酸素、窒素の含有量をLECO社製のTC−600型酸素窒素同時分析装置で測定し、炭素の含有量をHORIBA社製の炭素硫黄分析装置で測定した。また、ボールミル累計回転回数が3,741,120回の混合粉末を用いて作製した焼結体中の酸素、窒素の含有量をLECO社製のTC−600型酸素窒素同時分析装置で測定し、炭素の含有量をHORIBA社製の炭素硫黄分析装置で測定した。下記表16にその測定結果を示す。
【0211】
【表16】
【0212】
焼結体中の酸素含有量および窒素含有量は、どちらも混合粉末中の含有量と比較して減少しているが、酸素含有量の減少の程度は窒素含有量の減少の程度と比べて小さい。これは、混合粉末中および焼結体中のどちらにも金属酸化物であるSiO
2が含まれているためだと思われる。
【0213】
また、焼結体中の酸素含有量および窒素含有量を混合粉末のそれと比較すると、本参考例7の焼結による酸素含有量および窒素含有量の減少の程度は、参考例1、2の場合と比べて大きくなっている。これは、本参考例7の混合粉にはC粉末が含まれるため、このC粉末の表面に酸素および窒素が吸着していたことに起因すると思われる。
【0214】
また、ボールミル累計回転回数が3,741,120回の混合粉末を用いて作製した焼結体の組織観察を走査型電子顕微鏡(SEM)で行った。
図26−
図29に該焼結体のSEM写真を示す。
図26は撮影時の写真倍率が1000倍のSEM写真(写真中の縮尺目盛りは10μm)で、
図27は撮影時の写真倍率が3000倍のSEM写真(写真中の縮尺目盛りは1μm)で、
図28は撮影時の写真倍率が5000倍のSEM写真(写真中の縮尺目盛りは1μm)で、
図29は撮影時の写真倍率が10000倍のSEM写真(写真中の縮尺目盛りは1μm)である。
図26−
図29において黒色の部分がC相およびSiO
2相であり、白色の部分がFePt合金相である。
図26−
図29からわかるように、組織全体に微細なC相およびSiO
2相が分散した構造となっていることがわかる。
【0215】
撮影時の写真倍率が10000倍の
図29のSEM写真を用いて、インターセプト法によってC相およびSiO
2相を合わせた相の平均の大きさを求めた。具体的な方法は参考例1の方法と同様である。なお、C相およびSiO
2相を合わせた相とは、C相およびSiO
2相を区別せず同一の相と考えて選び出した相のことである。
【0216】
インターセプト法によって求めたC相およびSiO
2相を合わせた相の平均の大きさは0.30μmであった。
【0217】
(参考例8)
本参考例8における混合粉末およびターゲットの組成の目標は(50Fe−50Pt)−15vol%C−15vol%SiO
2である。即ち、金属成分の組成の目標は50at%Fe−50at%Ptであり、Cの含有量の目標は、ターゲット全体に対して15vol%であり、金属酸化物(SiO
2)の含有量の目標は、ターゲット全体に対して15vol%である。なお、Cおよび金属酸化物(SiO
2)の含有量をvol%ではなくmol%で表示すると、本参考例8における混合粉末およびターゲットの組成の目標は(50Fe−50Pt)−23.48mol%C−4.57mol%SiO
2である。
【0218】
参考例1と同様にして作製した50at%Fe−50at%Pt合金粉末1100.00gに、Cの含有量が混合粉末全体に対して15vol%となるように平均粒径35μmで嵩密度0.25g/cm
3のC粉末を34.37g添加し、SiO
2の含有量が粉末全体に対して15vol%となるように平均粒径0.7μmで嵩密度2.20g/cm
3のSiO
2粉末を33.46g添加し、ボールミルでその回転回数が累計で3,741,120回に達するまで混合して混合粉末を作製した。
【0219】
混合中、混合容器のふたは閉じ、混合容器内を混合ガス(Ar+O
2)で密閉した雰囲気中で、50at%Fe−50at%Pt合金粉末とC粉末とSiO
2粉末との混合を行った。
【0220】
ボールミル累計回転回数が935,280回、1,870,560回、2,805,840回、3,741,120回の各時点で混合容器を開放して、目視で発火の有無について確認したが、いずれの場合も発火は確認されなかった。
【0221】
また、ボールミル累計回転回数が1,870,560回、2,805,840回、3,741,120回の各時点での混合粉末30.00gを用いて、雰囲気:20Pa未満の真空中でホットプレスを行い、直径30mmの円板状の焼結体を作製した。下記表17に、ホットプレス条件(焼結温度、焼結圧力、焼結時間)と得られた焼結体の相対密度を記す。なお、焼結体の理論密度は11.51g/cm
3であるが、この値は、混合時および焼結時に減少した炭素量を考慮して算出した値(表18に示す焼結体中の炭素含有量を用いて算出した値)であり、この理論密度に基づき焼結体(ボールミル累計回転回数が3,741,120回の時点での混合粉末を用いて作製した焼結体)の相対密度を算出した。
【0222】
【表17】
【0223】
焼結体の相対密度は95%を超えており、得られた焼結体の空孔は少なかった。
【0224】
また、ボールミル累計回転回数が3,741,120回の時点の混合粉末中の酸素、窒素の含有量をLECO社製のTC−600型酸素窒素同時分析装置で測定し、炭素の含有量をHORIBA社製の炭素硫黄分析装置で測定した。また、ボールミル累計回転回数が3,741,120回の混合粉末を用いて作製した焼結体中の酸素、窒素の含有量をLECO社製のTC−600型酸素窒素同時分析装置で測定し、炭素の含有量をHORIBA社製の炭素硫黄分析装置で測定した。下記表18にその測定結果を示す。
【0225】
【表18】
【0226】
焼結体中の酸素含有量および窒素含有量は、どちらも混合粉末中の含有量と比較して減少しているが、酸素含有量の減少の程度は窒素含有量の減少の程度と比べて小さい。これは、混合粉末中および焼結体中のどちらにも金属酸化物であるSiO
2が含まれているためだと思われる。
【0227】
また、焼結体中の酸素含有量および窒素含有量を混合粉末のそれと比較すると、本参考例8の焼結による酸素含有量および窒素含有量の減少の程度は、参考例1、2の場合と比べて大きくなっている。これは、本参考例8の混合粉末にはC粉末が含まれるため、このC粉末の表面に酸素および窒素が吸着していたことに起因すると思われる。
【0228】
また、ボールミル累計回転回数が3,741,120回の混合粉末を用いて作製した焼結体の組織観察を走査型電子顕微鏡(SEM)で行った。
図30−
図33に該焼結体のSEM写真を示す。
図30は撮影時の写真倍率が1000倍のSEM写真(写真中の縮尺目盛りは10μm)で、
図31は撮影時の写真倍率が3000倍のSEM写真(写真中の縮尺目盛りは1μm)で、
図32は撮影時の写真倍率が5000倍のSEM写真(写真中の縮尺目盛りは1μm)で、
図33は撮影時の写真倍率が10000倍のSEM写真(写真中の縮尺目盛りは1μm)である。
図30−
図33において黒色の部分がC相およびSiO
2相であり、白色の部分がFePt合金相である。
図30−
図33からわかるように、組織全体に微細なC相およびSiO
2相が分散した構造となっていることがわかる。
【0229】
撮影時の写真倍率が10000倍の
図33のSEM写真を用いて、インターセプト法によってC相およびSiO
2相を合わせた相の平均の大きさを求めた。具体的な方法は参考例1の方法と同様である。なお、C相およびSiO
2相を合わせた相とは、C相およびSiO
2相を区別せず同一の相と考えて選び出した相のことである。
【0230】
インターセプト法によって求めたC相およびSiO
2相を合わせた相の平均の大きさは0.20μmであった。
【0231】
(参考例9)
本参考例9における混合粉末およびターゲットの組成の目標は(50Fe−50Pt)−15vol%C−15vol%TiO
2である。即ち、金属成分の組成の目標は50at%Fe−50at%Ptであり、Cの含有量の目標は、ターゲット全体に対して15vol%であり、金属酸化物(TiO
2)の含有量の目標は、ターゲット全体に対して15vol%である。なお、Cおよび金属酸化物(TiO
2)の含有量をvol%ではなくmol%で表示すると、本参考例9における混合粉末およびターゲットの組成の目標は(50Fe−50Pt)−23.04mol%C−6.39mol%TiO
2である。
【0232】
参考例1と同様にして作製した50at%Fe−50at%Pt合金粉末1100.00gに、Cの含有量が混合粉末全体に対して15vol%となるように平均粒径35μmで嵩密度0.25g/cm
3のC粉末を34.38g添加し、TiO
2の含有量が粉末全体に対して15vol%となるように平均粒径0.07μmで嵩密度4.11g/cm
3のTiO
2粉末を63.41g添加し、ボールミルでその回転回数が累計で3,741,120回に達するまで混合して混合粉末を作製した。
【0233】
混合中、混合容器のふたは閉じ、混合容器内を混合ガス(Ar+O
2)で密閉した雰囲気中で、50at%Fe−50at%Pt合金粉末とC粉末とSiO
2粉末との混合を行った。
【0234】
ボールミル累計回転回数が935,280回、1,870,560回、2,805,840回、3,741,120回の各時点で混合容器を開放して、目視で発火の有無について確認したが、いずれの場合も発火は確認されなかった。
【0235】
また、ボールミル累計回転回数が1,870,560回、2,805,840回、3,741,120回の各時点での混合粉末30.00gを用いて、雰囲気:20Pa未満の真空中でホットプレスを行い、直径30mmの円板状の焼結体を作製した。下記表19に、ホットプレス条件(焼結温度、焼結圧力、焼結時間)と得られた焼結体の相対密度を記す。なお、焼結体の理論密度は12.45g/cm
3であるが、この値は、混合時および焼結時に減少した炭素量を考慮して算出した値(表20に示す焼結体中の炭素含有量を用いて算出した値)であり、この理論密度に基づき焼結体(ボールミル累計回転回数が3,741,120回の時点での混合粉末を用いて作製した焼結体)の相対密度を算出した。
【0236】
【表19】
【0237】
焼結体の相対密度は95%であり、得られた焼結体の空孔は少なかった。
【0238】
また、ボールミル累計回転回数が3,741,120回の時点の混合粉末中の酸素、窒素の含有量をLECO社製のTC−600型酸素窒素同時分析装置で測定し、炭素の含有量をHORIBA社製の炭素硫黄分析装置で測定した。また、ボールミル累計回転回数が3,741,120回の混合粉末を用いて作製した焼結体中の酸素、窒素の含有量をLECO社製のTC−600型酸素窒素同時分析装置で測定し、炭素の含有量をHORIBA社製の炭素硫黄分析装置で測定した。下記表20にその測定結果を示す。
【0239】
【表20】
【0240】
焼結体中の酸素含有量および窒素含有量は、どちらも混合粉末中の含有量と比較して減少しているが、酸素含有量の減少の程度は窒素含有量の減少の程度と比べて小さい。これは、混合粉末中および焼結体中のどちらにも金属酸化物であるTiO
2が含まれているためだと思われる。
【0241】
また、焼結体中の酸素含有量および窒素含有量を混合粉末のそれと比較すると、本参考例9の焼結による酸素含有量および窒素含有量の減少の程度は、参考例1、2の場合と比べて大きくなっている。これは、本参考例9の混合粉末にはC粉末が含まれるため、このC粉末の表面に酸素および窒素が吸着していたことに起因すると思われる。
【0242】
また、ボールミル累計回転回数が3,741,120回の混合粉末を用いて作製した焼結体の組織観察を走査型電子顕微鏡(SEM)で行った。
図34−
図37に該焼結体のSEM写真を示す。
図34は撮影時の写真倍率が1000倍のSEM写真(写真中の縮尺目盛りは10μm)で、
図35は撮影時の写真倍率が3000倍のSEM写真(写真中の縮尺目盛りは1μm)で、
図36は撮影時の写真倍率が5000倍のSEM写真(写真中の縮尺目盛りは1μm)で、
図37は撮影時の写真倍率が10000倍のSEM写真(写真中の縮尺目盛りは1μm)である。
図34−
図37において黒色の部分がC相およびTiO
2相であり、白色の部分がFePt合金相である。
図34−
図37からわかるように、組織全体に微細なC相およびTiO
2相が分散した構造となっていることがわかる。
【0243】
撮影時の写真倍率が10000倍の
図37のSEM写真を用いて、インターセプト法によってC相およびTiO
2相を合わせた相の平均の大きさを求めた。具体的な方法は参考例1の方法と同様である。なお、C相およびTiO
2相を合わせた相とは、C相およびTiO
2相を区別せず同一の相と考えて選び出した相のことである。
【0244】
インターセプト法によって求めたC相およびTiO
2相を合わせた相の平均の大きさは0.29μmであった。
【0245】
(実施例1)
本実施例1における混合粉末およびターゲットの組成の目標は(50Fe−45Pt−5Cu)−20.3vol%B
2O
3である。即ち、金属成分の組成の目標は50at%Fe−45at%Pt−5at%Cuであり、金属酸化物(B
2O
3)の含有量の目標は、ターゲット全体に対して20.3vol%である。なお、金属酸化物(B
2O
3)の含有量をvol%ではなくmol%で表示すると、本実施例1における混合粉末およびターゲットの組成の目標は(50Fe−45Pt−5Cu)−5.11mol%B
2O
3である。
【0246】
合金組成がFe:50at%、Pt:45at%、Pt:5at%となるようにバルク状の各金属を秤量し、高周波で加熱して1800℃のFe−Pt−Cu合金溶湯とし、アルゴンガスを用いたガスアトマイズ法により50at%Fe−45at%Pt−5at%Cu合金粉末を作製した。得られた合金粉末の平均粒径を日機装株式会社製のマイクロトラックMT3000により測定したところ、50μmであった。
【0247】
作製した50at%Fe−45at%Pt−5at%Cu合金粉末1030.00gに、B
2O
3の含有量が混合粉末全体に対して20.3vol%となるようにB
2O
3粉末を32.49g添加し、ボールミルでその回転回数が累計で3,852,360回に達するまで混合して混合粉末を作製した。
【0248】
混合中、混合容器のふたは閉じ、混合容器内を混合ガス(Ar+O
2)で密閉した雰囲気中で、50at%Fe−45at%Pt−5at%Cu合金粉末とB
2O
3粉末との混合を行った。
【0249】
ボールミル累計回転回数が1,046,520回、1,981,800回、2,917,080回、3,852,360回の各時点で混合容器を開放して、目視で発火の有無について確認したが、いずれの場合も発火は確認されなかった。
【0250】
また、ボールミル累計回転回数が3,852,360回の時点での混合粉末30.00gを用いて、雰囲気:20Pa未満の真空中でホットプレスを行い、直径30mmの円板状の焼結体を作製した。下記表21に、ホットプレス条件(焼結温度、焼結圧力、焼結時間)と得られた焼結体の相対密度を記す。表23に後記するように、ICP分析結果においてBの含有量が焼結させる前の混合粉末の状態よりも0.04質量%だけ増加していたが、ICP分析まで含む一連の工程において直接B
2O
3が混入する工程はないと考えられるので、このBの含有量の増加は考慮に入れずに焼結体の理論密度を算出したところ、焼結体の理論密度は12.22g/cm
3となった。理論密度12.22g/cm
3に基づき焼結体(ボールミル累計回転回数が3,852,360回の時点での混合粉末を用いて作製した焼結体)の相対密度を算出したところ、100.09%となった。
【0251】
【表21】
【0252】
焼結体の相対密度は100%を超えており、得られた焼結体の空孔は少なかった。
【0253】
また、ボールミル累計回転回数が3,852,360回の混合粉末を用いて作製した焼結体中の酸素、窒素の含有量をLECO社製のTC−600型酸素窒素同時分析装置で測定した。下記表22にその測定結果を示す。
【0254】
【表22】
【0255】
また、ボールミル累計回転回数が3,852,360回の混合粉末を用いて作製した焼結体中のFe、Pt、Cu、Bの含有量をICPで分析した。その分析結果を下記表23に焼結前の混合粉末におけるFe、Pt、Cu、Bの含有量とともに示す。焼結前の混合粉末におけるFe、Pt、Cu、Bの含有量は、ICPで分析した結果ではなく、混合粉末作製のためにに配合した原料粉末の量から算出した計算値(理論値)である。
【0256】
【表23】
【0257】
また、ボールミル累計回転回数が3,852,360回の混合粉末を用いて作製した焼結体の組織観察を走査型電子顕微鏡(SEM)で行った。
図41−
図44に該焼結体のSEM写真を示す。
図41は撮影時の写真倍率が1000倍のSEM写真(写真中の縮尺目盛りは10μm)で、
図42は撮影時の写真倍率が3000倍のSEM写真(写真中の縮尺目盛りは1μm)で、
図43は撮影時の写真倍率が5000倍のSEM写真(写真中の縮尺目盛りは1μm)で、
図44は撮影時の写真倍率が10000倍のSEM写真(写真中の縮尺目盛りは1μm)である。
図41−
図44において黒色の部分がB
2O
3相であり、白色の部分がFePtCu合金相である。
図41−
図44からわかるように、組織全体に微細なB
2O
3相が分散した構造となっていることがわかる。
【0258】
撮影時の写真倍率が10000倍の
図44のSEM写真を用いて、インターセプト法によってB
2O
3相の平均の大きさを求めた。具体的な方法は参考例1の方法と同様である。
【0259】
インターセプト法によって求めたB
2O
3相の平均の大きさは0.14μmであった。
【0260】
(実施例2)
本実施例2における混合粉末およびターゲットの組成の目標は(45Fe−45Pt−10Cu)−15vol%C−15vol%SiO
2である。即ち、金属成分の組成の目標は45at%Fe−45at%Pt−10at%Cuであり、Cの含有量の目標は、ターゲット全体に対して15vol%であり、金属酸化物(SiO
2)の含有量の目標は、ターゲット全体に対して15vol%である。なお、Cおよび金属酸化物(SiO
2)の含有量をvol%ではなくmol%で表示すると、本実施例2における混合粉末およびターゲットの組成の目標は(45Fe−45Pt−10Cu)−24mol%C−5mol%SiO
2である。
【0261】
合金組成がFe:45at%、Pt:45at%、Pt:10at%となるようにバルク状の各金属を秤量し、高周波で加熱して1800℃のFe−Pt−Cu合金溶湯とし、アルゴンガスを用いたガスアトマイズ法により45at%Fe−45at%Pt−10at%Cu合金粉末を作製した。得られた合金粉末の平均粒径を日機装株式会社製のマイクロトラックMT3000により測定したところ、50μmであった。
【0262】
作製した45at%Fe−45at%Pt−10at%Cu合金粉末1020.00gに、Cの含有量が混合粉末全体に対して15vol%となるように平均粒径35μmで嵩密度0.25g/cm
3のC粉末を44.63g添加し、SiO
2の含有量が粉末全体に対して15vol%となるように平均粒径0.7μmで嵩密度2.20g/cm
3のSiO
2粉末を32.56g添加し、ボールミルでその回転回数が累計で5,736,960回に達するまで混合して混合粉末を作製した。
【0263】
混合中、混合容器のふたは閉じ、混合容器内を混合ガス(Ar+O
2)で密閉した雰囲気中で、45at%Fe−45at%Pt−10at%Cu合金粉末とC粉末とSiO
2粉末との混合を行った。
【0264】
ボールミル累計回転回数が935,280回、2,535,840回、4,136,400回、5,736,960回の各時点で混合容器を開放して、目視で発火の有無について確認したが、いずれの場合も発火は確認されなかった。
【0265】
また、ボールミル累計回転回数が5,736,960回の時点での混合粉末30.00gを用いて、雰囲気:20Pa未満の真空中でホットプレスを行い、直径30mmの円板状の焼結体を作製した。下記表24に、ホットプレス条件(焼結温度、焼結圧力、焼結時間)と得られた焼結体の相対密度を記す。なお、焼結体の理論密度は11.11g/cm
3であるが、この値は、混合時および焼結時に減少した炭素量を考慮して算出した値(表25に示す焼結体中の炭素含有量を用いて算出した値)であり、この理論密度に基づき焼結体(ボールミル累計回転回数が5,736,960回の時点での混合粉末を用いて作製した焼結体)の相対密度を算出した。
【0266】
【表24】
【0267】
焼結体の相対密度は93%を超えており、得られた焼結体の空孔は少なかった。
【0268】
また、ボールミル累計回転回数が5,736,960回の混合粉末を用いて作製した焼結体中の酸素、窒素の含有量をLECO社製のTC−600型酸素窒素同時分析装置で測定し、炭素の含有量をHORIBA社製の炭素硫黄分析装置で測定した。下記表25にその測定結果を示す。
【0269】
【表25】
【0270】
また、ボールミル累計回転回数が5,736,960回の混合粉末を用いて作製した焼結体の組織観察を走査型電子顕微鏡(SEM)で行った。
図38−
図40に該焼結体のSEM写真を示す。
図38は撮影時の写真倍率が3000倍のSEM写真(写真中の縮尺目盛りは1μm)で、
図39は撮影時の写真倍率が5000倍のSEM写真(写真中の縮尺目盛りは1μm)で、
図40は撮影時の写真倍率が10000倍のSEM写真(写真中の縮尺目盛りは1μm)である。
図38−
図40において黒色の部分がC相およびSiO
2相であり、白色の部分がFePtCu合金相である。
図38−
図40からわかるように、組織全体に微細なC相およびSiO
2相が分散した構造となっていることがわかる。
【0271】
撮影時の写真倍率が10000倍の
図40のSEM写真を用いて、インターセプト法によってC相およびSiO
2相を合わせた相の平均の大きさを求めた。具体的な方法は参考例1の方法と同様である。なお、C相およびSiO
2相を合わせた相とは、C相およびSiO
2相を区別せず同一の相と考えて選び出した相のことである。
【0272】
インターセプト法によって求めたC相およびSiO
2相を合わせた相の平均の大きさは0.27μmであった。
【0273】
(比較例1)
本比較例1における混合粉末およびターゲットの組成の目標は(50Fe−50Pt)−30vol%Cである。即ち、金属成分の組成の目標は50at%Fe−50at%Ptであり、Cの含有量の目標は、ターゲット全体に対して30vol%である。なお、Cの含有量をvol%ではなくat%で表示すると、本比較例1における混合粉末およびターゲットの組成の目標は(50Fe−50Pt)−40at%Cである。
【0274】
SiO
2粉末ではなくC粉末を用いたこと、混合容器内をアルゴン(Ar)にして密閉しその中でFePt粉末とC粉末を混合したこと、ボールミル累計回転回数を変えたこと、混合途中で混合容器を開放して新鮮な大気を導入する回数とタイミングを変えたこと、および焼結体作製時の焼結温度を1100℃としたこと以外は参考例1と同様にして、混合粉末、焼結体の作製を行った。
【0275】
ボールミル累計回転回数が209,520回、608,040回、1,006,560回、1,405,080回、1,803,600回、2,202,120回、2,816,640回の各時点で混合容器を開放して、目視で発火の有無について確認したところ、ボールミル累計回転回数が2,202,120回の時点まではいずれの場合も発火が確認されなかったが、ボールミル累計回転回数が2,816,640回の時点で発火が確認された。
【0276】
混合時の混合容器内の雰囲気は、正確には、混合開始後の初期(ボールミル累計回転回数が209,520回まで)のみ密閉した混合ガス(Ar+O
2)雰囲気であり、それ以降は密閉したアルゴン(Ar)雰囲気である。混合開始後の初期(ボールミル累計回転回数が209,520回まで)のみ密閉した混合ガス(Ar+O
2)雰囲気で混合したが、最終的なボールミル累計回転回数2816640回のうちの7.4%にすぎず、混合開始後の初期(ボールミル累計回転回数が209520回まで)の混合でC粉末表面に吸着する酸素は少量であると考えられる。したがって、本比較例1は、ある一定以下の酸素が吸着したC粒子とFePt粉末とをアルゴン(Ar)雰囲気で、2,816,640−209,520=2,607,120回混合した実験例であると言うことができる。
【0277】
ボールミル累計回転回数が1,405,080回の混合を行った混合粉末30.00gを、温度:1100℃、圧力:25MPa、時間:45min、雰囲気:5×10
-2Pa以下の真空中の条件でホットプレスを行って、直径30mmの円板状の焼結体を作製した。
【0278】
作製した焼結体の密度をアルキメデス法により測定し、それぞれの測定値を理論密度で除して相対密度を求めた。その結果を下記の表26に示す。なお、本比較例1では参考例5−9、実施例2のように、焼結時に減少した炭素量を考慮して理論密度を算出することはしていない。
【0279】
【表26】
【0280】
焼結体の相対密度は71.1%と低く、空孔の多い焼結体であった。焼結時に減少した炭素量を考慮して理論密度を算出して相対密度を算出すれば、本比較例1の相対密度は71.1%よりもさらに小さくなると考えられる。
【0281】
(考察)
参考例1−9、実施例1、2および比較例1についての主要な実験データを下記の表27にまとめて示す。なお、表27において、相の平均の大きさは、参考例1−4、実施1では金属酸化物相の平均の大きさのことであり、参考例5−9、実施例2ではC相および金属酸化物相を合わせた相の平均の大きさのことである。
【0282】
【表27】
【0283】
参考例1−9、実施例1、2についてはボールミル累計回転回数が3,000,000回以上に達しても発火は確認されなかった。
【0284】
参考例1−9については、FeをPtと合金化させてFePt合金粉末としており、実施例1、2については、FeをPt、Cuと合金化させてFePtCu合金粉末としているので、粉末状態であってもFeの活性を低くすることができ、金属酸化物粉末との混合中または金属酸化物粉末およびC粉末との混合中のFeの酸化および発火を抑えることができたと考えられる。
【0285】
また、参考例5−9、実施例2については、混合粉末中にC粉末が含まれるが、混合粉末作製時の雰囲気は混合ガス(Ar+O
2)であり酸素が含まれているので、混合中にC粉末の表面に酸素がある程度吸着する。このため、C粒子表面にはすでにある程度の酸素が吸着しているので、混合終了後に混合容器を開放して大気を導入しても、C粒子表面に急激に酸素が吸着してC粒子が発火するということは起こりにくく、金属酸化物だけでなくCも含有するFePt系スパッタリングターゲットであっても、安定的に製造することができたと考えられる。
【0286】
これに対し、ボールミル累計回転回数が209,521回−2,816,640回の間、酸素の存在しないアルゴン雰囲気下でFePt粉末とC粉末との混合を行った比較例1では、ボールミル累計回転回数2,816,640回で混合容器を開放したところ、発火が確認された。これは、比較例1では、ボールミル累計回転回数が209,521回−2,816,640回の間、酸素の存在しないアルゴン雰囲気下でFePt粉末とC粉末との混合を行ったことに加え、C粉末の含有量が30vol%と大きかったためと思われる。
【0287】
また、参考例1−9、実施例1、2ではボールミル累計回転回数が3,000,000回以上であり、参考例1−9、実施例1、2では、いずれも十分な混合を行って混合粉末を作製している。このため、参考例1−9、実施例1、2では、混合粉末中の金属酸化物粉末、C粉末は十分に小さくなり、参考例1−9、実施例1、2で作製した焼結体中の、インターセプト法によって測定した金属酸化物相の大きさ、またはC相およびSiO
2相を合わせた相の平均の大きさは、0.14〜0.34μmと小さくなり、また、得られた焼結体の相対密度がいずれも90%以上と大きくなったものと思われる。
【0288】
これに対して、比較例1では、ボールミル累計回転回数が1,405,080回の混合を行った混合粉末を用いて焼結体を作製したが、作製した焼結体の相対密度は71.1%と小さかった。比較例1の焼結温度が1100℃と低かったことも影響したと思われるが、ボールミル累計回転回数が少なく、焼結体作製に用いた混合粉末中のC粉末の粒径が十分に小さくなっていなかったため、燒結体中の空孔が大きくなり、焼結体の相対密度が小さくなったものと思われる。